説明

電子部品および電子部品の製造方法

【課題】電子部品を小型化しても外部電極の電極厚みおよび電極側面幅のばらつきを抑えることができ、なおかつ外部電極を薄層化することができる電子部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】素子本体を準備する工程と、外部電極用ペーストを固化させる工程と、前記固化された外部電極用ペーストを溶解することにより前記素子本体の少なくとも一部に外部電極用ペーストを塗布する工程と、を有することを特徴とする電子部品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサなどの電子部品および当該電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に実装される電子部品の一例としては、積層型セラミック電子部品が例示され、コンデンサ、バンドパスフィルタ、インダクタ、積層三端子フィルタ、圧電素子、PTCサーミスタ、NTCサーミスタ、またはバリスタ等が知られている。
【0003】
これら積層型セラミック電子部品は、たとえば誘電体層と内部電極層とが交互に積層されて構成される直方体形状の素子本体を有し、この素子本体の両端に焼成後に外部電極となる外部電極用ペーストを塗布し、焼成することにより得られる。
【0004】
ここで、素子本体に外部電極用ペーストを塗布する方法としては、従来、スラリー状の外部電極用ペーストに素子本体の端面を浸漬させる方法が用いられている。
【0005】
しかし、浸漬した後、素子本体を引き上げる際、塗布された外部電極用ペーストには、塗布厚みおよび塗布側面幅のばらつきが生じ、その結果、外部電極の電極厚みおよび電極側面幅のばらつきが生じる。このような外部電極の電極厚みおよび電極側面幅のばらつきは、近年の電子部品の小型化の傾向にともない、より顕著に表れるようになっている。さらに、規格内での大容量化のため、外部電極に対する薄層化の要求が高まっており、外部電極用ペーストを薄く、均一に塗布する技術がより一層求められている。
【0006】
たとえば、特許文献1には、一旦、素子本体に外部電極用ペーストを塗布し、その後、素子本体に塗布された外部電極用ペーストのうち、外側に盛り上がった部分を余剰ペーストとし、この余剰ペーストを取り除くことにより外部電極の電極厚みを均一にするという方法が開示されている。しかし、この方法では、ペーストのぼりを防止することが困難であり、それによる外部電極の電極側面幅のばらつきを解消することはできない。なお、「ペーストのぼり」については後述する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−32832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、電子部品を小型化しても外部電極の電極厚みおよび電極側面幅のばらつきを抑えることができ、なおかつ外部電極を薄層化することができる電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明に係る電子部品の製造方法は、
素子本体を準備する工程と、
外部電極用ペーストを固化させる工程と、
前記固化された外部電極用ペーストを溶解することにより前記素子本体の少なくとも一部に外部電極用ペーストを塗布する工程と、
を有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、外部電極用ペーストを素子本体に過剰に塗布することを防ぐことができるため、外部電極を薄層化することができる。しかも、本発明では、外部電極用ペーストの塗布厚みおよび塗布側面幅のばらつきを抑えることができる。このため、小型化しても外部電極の電極厚みおよび電極側面幅のばらつきを抑えることができる電子部品の製造方法を提供することができる。
【0011】
好ましくは、前記素子本体の少なくとも一部を固化された前記外部電極用ペーストに接触させることにより、前記外部電極用ペーストを溶解させる。
【0012】
好ましくは、加熱した素子本体を、前記固化された外部電極用ペーストに接触させることにより前記素子本体に前記外部電極用ペーストを塗布する。
【0013】
好ましくは、前記固化された外部電極用ペーストの表面が平坦である。
【0014】
好ましくは、前記素子本体の少なくとも一部に外部電極用ペーストを塗布した後に、前記固化された外部電極用ペーストを溶解する工程と、
前記溶解された外部電極用ペーストの表面を平坦化した後に、前記溶解された外部電極用ペーストを再度固化させる工程と、を有する。
【0015】
好ましくは、冷却することにより前記外部電極用ペーストを固化させる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略斜視図である。
【図2】図2は、図1のII−II線に沿う概略断面図である。
【図3a】図3aは、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造に用いる素子本体に外部電極用ペーストを塗布する工程を示す工程概略図である。
【図3b】図3bは、図3aの続きの工程を示す工程概略図である。
【図3c】図3cは、図3bの続きの工程を示す工程概略図である。
【図3d】図3dは、図3cの続きの工程を示す工程概略図である。
【図3e】図3eは、図3dの続きの工程を示す工程概略図である。
【図4】図4(A)は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図、図4(B)は、図4(A)に示す積層セラミックコンデンサのコーナー部分IVBを拡大した拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施例における外部電極用ペースト中の導電性粉末の含有率に対する電極厚みTの関係を示したグラフである。
【図6】図6(A)は、本発明の実施例における外部電極用ペースト中のバインダをエチルセルロース樹脂とした場合の各試料の膜厚比を示すグラフ、図6(B)は、本発明の実施例における外部電極用ペースト中のバインダをアクリル樹脂とした場合の各試料の膜厚比を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明の実施例における外部電極用ペースト中の導電性粉末の含有率に対する膜厚比の関係を示すグラフである。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0018】
本実施形態に係る電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、圧電素子、チップインダクタ、チップバリスタ、チップサーミスタ、チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部品などが例示される。本実施形態では、電子部品の一例として、積層セラミックコンデンサについて説明する。
【0019】
積層セラミックコンデンサの全体構成
図1に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、素子本体10を有する。前記素子本体10は、図2に示すように、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構造である。素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。図1に示すように、前記素子本体10の両側端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。
【0020】
(内部電極層)
内部電極層3の厚みは用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常、0.1〜3.0μm、特に0.2〜2.0μm程度であることが好ましい。
【0021】
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層2の構成材料として、耐還元性を有する材料を使用する場合には、卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、Ni、Cu、Ni合金またはCu合金が好ましい。内部電極層3の主成分をNiにした場合には、誘電体が還元されないように、低酸素分圧還元雰囲気で焼成するという方法がとられている。
【0022】
(外部電極)
外部電極4は導電性粉末により構成される。導電性粉末としては例えば卑金属が挙げられるが特に限定されず、Cu、Ag、Niまたはこれらの合金を用いることができるが、より好ましくはCuである。
【0023】
図1および図2に示す外部電極4の電極側面4bの電極側面幅βは、用途により適宜決定されればよいが、好ましくは90〜250μm、より好ましくは100〜150μmである。
【0024】
(誘電体層)
前記誘電体層2の厚みは、好ましくは2μm以下であり、積層数は、2〜300程度である。
【0025】
前記誘電体層2は主成分としては、例えば組成式(Ba1−xCa(Ti1−yZr)Oで表される誘電体酸化物が挙げられる。この際、酸素(O)量は、上記式の化学量論組成から若干偏倚してもよい。
【0026】
上記式中、xは、好ましくは0≦x≦0.15である。xはCaの原子数を表し、記号x、すなわちCa/Ba比を変えることで結晶の相転移点を任意にシフトさせることが可能となる。そのため、容量温度係数や比誘電率を任意に制御することができる。
【0027】
上記式中、yは、好ましくは0≦y≦1.00である。yはTi原子数を表すが、TiOに比べ還元されにくいZrOを置換していくことにより耐還元性がさらに増していく傾向がある。
【0028】
上記式中、mは、好ましくは0.995≦m≦1.020である。mを0.995以上にすることにより還元雰囲気下での焼成に対して半導体化を生じることが防止され、mを1.020以下にすることにより焼成温度を高くしなくても緻密な焼結体を得ることができる。
【0029】
前記誘電体層2の副成分としては、例えば、以下の第1〜第4副成分を含有してもよい。すなわち、MgO,CaO,BaOおよびSrOから選択される少なくとも1種を含む第1副成分と、酸化シリコンを主成分として含む第2副成分と、V,MoOおよびWOから選択される少なくとも1種を含む第3副成分と、Rの酸化物(ただし、RはSc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,YbおよびLuから選択される少なくとも1種)を含む第4副成分と、を有する。
【0030】
積層セラミックコンデンサの製造方法
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサは、素子本体に外部電極ペーストを塗布して焼成することにより得られる。素子本体の製造方法としては、たとえば、従来の方法と同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成することにより得られるが、その製造方法は特に限定されない。以下、製造方法の一例を具体的に説明する。
【0031】
(内部電極層用ペースト)
本発明の実施形態に係る内部電極層用ペーストは導電性粒子を有機ビヒクルまたは水系ビヒクルとともに混練することにより塗料化して調整される。なお、内部電極層用ペーストに含まれる成分としては特に限定されず、導電性粒子の他に共材としてセラミック粒子を含んでいてもよい。
【0032】
前記導電性粒子としては、特に限定されないが、焼成後に上記した導電材となる各種導電性金属、合金、各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等が挙げられる。
【0033】
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、ターピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
【0034】
また、水系ビヒクルに用いる水溶性バインダも特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
【0035】
(誘電体層用ペースト)
誘電体層用ペーストは、セラミック粒子を前記有機ビヒクルまたは前記水系ビヒクルとともに混練することにより塗料化して調整される。
【0036】
前記セラミック粒子の組成は、特に限定されず、例えば、焼成後に上記した誘電体粒子となるような組成が挙げられる。
【0037】
また、セラミック粒子は例えば、上記した誘電体粒子の主成分または副成分の酸化物やその混合物、複合酸化物を混合することにより得られるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、例えば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合することによっても得られる。
【0038】
(グリーンチップ)
次いでグリーンシートと内部電極パターン層が複数積層されたグリーンシートを作製する。
【0039】
グリーンシートは、たとえばPETフィルムなどで構成される支持体の表面に、ドクターブレード法などで誘電体層用ペーストを塗布することにより形成される。次いで、支持体上に形成されたグリーンシートの表面に、内部電極層用ペーストを所定のパターンに塗布して、内部電極パターン層を形成する。
【0040】
前記グリーンシートは、焼成後に図2に示す誘電体層2となり、内部電極パターン層は、焼成後に図2に示す内部電極層3となる。
【0041】
内部電極パターン層の形成方法は、層を均一に形成できる方法であれば特に限定されず、たとえば内部電極層用ペーストを用いたスクリーン印刷法あるいはグラビア印刷法などの厚膜形成方法、あるいは蒸着、スパッタリングなどの薄膜法が例示される。
【0042】
本実施形態では、グリーンシートの表面に、内部電極パターン層を形成した後、またはその前に、内部電極パターン層が形成されていないグリーンシートの表面隙間(余白パターン部分)に、内部電極パターン層と実質的に同じ厚みの余白パターン層を形成してもよい。余白パターン層を形成するのは、グリーンシートの上で内部電極パターン層間に段差を生じさせないためである。
【0043】
上記のようにしてグリーンシートと内部電極パターン層を交互に積層させ、積層体を得て、この積層体を格子状に切断することによりグリーンチップが複数形成される。
【0044】
(グリーンチップの焼成)
グリーンチップはバレル研磨等された後、水で洗浄され、乾燥され、焼成される。なお、焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。
【0045】
グリーンチップ焼成時の雰囲気は、内部電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、10−7〜10−3Paとすることが好ましい。
【0046】
また、焼成時の保持温度は、たとえば、1100〜1400℃である。
【0047】
還元性雰囲気中で焼成した場合、素子本体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これによりIR寿命を著しく長くすることができるので、信頼性が向上する。
【0048】
脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
【0049】
上記のようにして得られた焼結体に、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し素子本体を得る。
【0050】
(外部電極用ペーストの塗布)
次いで、素子本体に外部電極用ペーストを塗布するが、本実施形態では、固化された外部電極用ペーストに、たとえば素子本体を接触させることにより外部電極用ペーストを部分的に溶解させ、外部電極用ペーストを素子本体に塗布する。
【0051】
なお、外部電極用ペーストに含有される外部電極用ペーストは、上記した導電性粉末、後述する有機ビヒクルおよび溶剤を混練し、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
【0052】
本実施形態では上記したように、素子本体の両端部に外部電極が形成されるように外部電極用ペーストを塗布するため、素子本体の端面を前記固化された外部電極用ペーストに接触させる。
【0053】
素子本体を外部電極用ペーストに接触させる方法としては特に限定されず、例えば、保持具や、剥離粘着剤が塗布された工業用両面テープなどに素子本体を固定して、この保持具やテープを操作する方法などが挙げられる。以下では、保持具を用いる方法について説明する。
【0054】
まず、図3aに示す保持具30を準備する。保持具30はゴム板31からなり、保持具30の平坦性を確保するために補強板32が内蔵されており、等間隔の貫通孔33を有する。ゴム板31の厚みは特に限定されず、素子本体10の厚みに応じて適宜決定される。なお、保持具30は、必要に応じてゴム板31を周囲で支持する枠を有していてもよい。
【0055】
次いで、素子本体10を前記貫通孔33に、端部が所定長さ突き出るように挿入する(図3b)。突き出しの長さとしては、特に限定されず、外部電極用ペースト塗布後に形成される外部電極4の電極側面幅βに応じて決定される。
【0056】
次に、固化された外部電極用ペースト40を準備する。外部電極用ペーストを固化させる方法としては特に限定されないが、例えば、金属板上に外部電極用ペーストを流し込み、冷却する方法などが例示される。
【0057】
本実施形態の外部電極用ペーストに含まれる溶剤としては−5〜−10℃で固体化するものが好ましく、具体的には、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ブチラールまたはヘキサンが好ましく、より好ましくはターピネオールである。
【0058】
外部電極用ペーストの溶剤としてこれらの溶剤を用いる場合には、冷却温度は、好ましくは−5℃以下、より好ましくは−10〜−5℃である。
【0059】
外部電極用ペースト中の溶剤、導電性粉末および有機ビヒクルの合計含有量を100重量部としたとき、外部電極用ペースト中の溶剤の含有量は好ましくは10〜35重量部、より好ましくは13〜20重量部である。溶剤の含有量をこの範囲とすることで、溶解後の外部電極用ペーストが適度な粘性になり、素子本体への外部電極用ペーストの塗布性が良好なものとなる。
【0060】
固化された外部電極用ペースト40は図3bに示すように表面が平坦であることが好ましい。固化された外部電極用ペースト40の表面が平坦であることにより、たとえば、複数の素子本体10を同時に浸漬させる際に、外部電極用ペースト40に接触させて突き出し深さを調整することができる。これにより複数の素子本体10を均一な深さで外部電極用ペースト40に浸漬させることができる。また、傾いている素子本体を外部電極用ペースト40に対して垂直になるように直すこともできる。
【0061】
金属板34上に流し込まれ、固化された外部電極用ペースト40の厚みは電極側面幅βと同等以上の厚みを有し、電極側面幅βよりも好ましくは0〜30μm、より好ましくは5〜10μm厚い。固化された外部電極用ペースト40の厚みをこの範囲内にすることで、固化された外部電極用ペースト内における組成のばらつきを抑えることができるとともに、十分な電極厚みおよび電極側面幅をもつ外部電極を形成することができる。
【0062】
次いで、上記保持具30で保持された素子本体10を固化された外部電極用ペースト40に接触させる。固化された外部電極用ペースト40は素子本体10との接触により一部溶解するため、素子本体10に外部電極用ペースト40aが塗布される(図3c)。そして、所定時間(接触時間)経過後、素子本体10を引き上げる(図3d)。なお、接触時間については後述する。これらの工程により、適度な量の外部電極用ペーストを素子本体10に塗布することができる。
【0063】
素子本体10を固化された外部電極用ペースト40に接触させる際には、上記したように、複数の素子本体10が均一な深さで外部電極用ペーストに浸漬するように、各素子本体10の突き出しの長さを調整することが好ましい。
【0064】
本実施形態では固化された外部電極用ペーストを用い、素子本体の少なくとも一部を溶解させて塗布することにより、外部電極用ペーストの過剰な塗布を防ぐことができる。
【0065】
また、従来のように、容器に入ったスラリー状の外部電極用ペーストに素子本体を浸漬させて塗布する方法では、浸漬した後、素子本体を引き上げる際に、塗布された外部電極用ペーストはその粘度により、容器に残された外部電極用ペーストに引っ張られる。このため、素子本体に塗布された外部電極ペーストは、図1に示す電極端面4aの中央部に集まり、電極端面4aの中央部の外部電極層が厚くなる傾向にあった。
【0066】
しかし、本実施形態では、上記のとおり外部電極用ペーストが過剰に塗布されず、また、容器に残された外部電極用ペーストは固化しているため、外部電極用ペーストが電極端面4aの中央部に集まるのを防ぐことができる。
【0067】
さらに、上記の従来の塗布方法では、素子本体に塗布された外部電極用ペーストは、外部電極用ペーストの濡れ性により、素子本体の内側に向かって広がり、図1および図2に示す電極側面幅βが広くなる傾向にあった。なお、この現象を、「ペーストのぼり」という。このペーストのぼりは、外部電極のコーナー部間の中央に顕著に表れる。
【0068】
しかし、本実施形態では、外部電極用ペーストの過剰な塗布を防ぐことができるため、ペーストのぼりを防ぐことができる。
【0069】
これらの理由から、本実施形態では、電子部品を小型化しても外部電極の電極厚みおよび電極側面幅を一定にすることができ、外部電極を薄層化することができる。本実施形態では、素子本体10を長さ:0.6〜1.6(mm)×幅:0.3〜0.8(mm)×厚み:0.3〜0.8(mm)と小型化しても、外部電極4の電極厚みおよび電極側面幅を正確に制御することができる。
【0070】
また、外部電極用ペースト中の溶剤、導電性粉末および有機ビヒクルの合計含有量を100重量部としたとき、本実施形態における外部電極用ペースト中の導電性粉末の含有量は好ましくは60〜85重量部、より好ましくは80〜85重量部である。外部電極用ペースト中の導電性粉末の含有率が高いと、焼成後に外部電極がポーラスになるのを防ぐことができ、湿気などに対するシールド性を高めることができるため、信頼性が向上するという効果がある。
【0071】
しかし、従来のようにスラリー状の外部電極用ペースト素子本体を浸漬させて素子本体に外部電極用ペーストを塗布する方法の場合には、外部電極用ペースト中の導電性粉末の含有率が高いと、外部電極4の電極端面中央部での電極厚みが厚くなる傾向にあった。
【0072】
これは、外部電極用ペースト中の導電性粉末の含有率が高いほど、外部電極用ペーストの粘度が高くなるため、素子本体を浸漬した後、素子本体を引き上げる際に、電極端面4aの中央部に外部電極用ペーストが集まるからである。
【0073】
しかし、本実施形態では、上記のように、適度な量の外部電極用ペーストを素子本体に塗布することができるため、外部電極用ペースト中の導電性粉末の含有率を高くしても、外部電極の電極厚みのばらつきを抑えることができる。このため、本実施形態では、上記したように、外部電極用ペースト中の導電性粉末の含有率を比較的多めにしても、外部電極のシールド性を高めるという効果を得つつ、外部電極の電極厚みのばらつきを抑えることができる。
【0074】
また、本実施形態では、外部電極用ペーストのバインダとして好ましくは、エチルセルロース、アクリル樹脂、ブチラール樹脂である。外部電極用ペーストのバインダとしてアクリル樹脂を用いると、焼成工程において還元性雰囲気でなくても分解するため水素を導入する必要がなく、コストの上でメリットがある。
【0075】
しかし、従来のように、素子本体にスラリー状の外部電極用ペーストを塗布する場合、バインダとしてアクリル樹脂を用いると、電極端面4aの中央部での外部電極ペーストの塗布厚みが厚くなり、外部電極の電極厚みのばらつきが生じるという問題があった。
【0076】
これに対して、本実施形態では、上記のように、適度な量の外部電極用ペーストを素子本体に塗布することができるため、外部電極用ペーストにバインダとしてアクリル樹脂を用いても、焼成工程において水素を導入する必要がないというコストメリットを確保しつつ、外部電極の電極厚みのばらつきを抑えることができる。
【0077】
また、外部電極用ペースト中の溶剤、導電性粉末および有機ビヒクルの合計含有量を100重量部としたとき、外部電極用ペースト中のバインダの含有量は好ましくは1〜5重量部、より好ましくは1.5〜3.0重量部である。バインダの含有量をこの範囲とすることで、溶解後の外部電極用ペーストが適度な粘性になり、素子本体への外部電極用ペーストの塗布性が良好なものとなる。
【0078】
前記外部電極用ペーストには、上記の他、ガラス粉を添加してもよい。外部電極用ペースト中の溶剤、導電性粉末および有機ビヒクルの合計含有量を100重量部としたとき、外部電極用ペースト中のガラス粉の含有量は好ましくは2〜15重量部、より好ましくは5〜8重量部である。ガラス粉の含有量をこの範囲とすることで、端子表面にガラス浮きが無く、かつチップ界面との密着性を確保できる。
【0079】
上記の工程において、固化された外部電極用ペーストに素子本体を接触させ、圧力をかけることによっても外部電極用ペーストは溶解するが、素子本体を加熱し、素子本体の熱により外部電極用ペーストを溶解することが好ましい。素子本体の加熱温度としては、好ましくは40〜60℃である。
【0080】
素子本体の加熱温度をこの範囲内とすることで、素子本体に過剰の圧力をかけずに外部電極用ペーストを溶解させることができる。また、外部電極用ペーストは一般的には温度が上がると粘度が低下するため、濡れ性が高まり、ペーストのぼりが起こりやすくなるが、素子本体を上記の温度範囲とすることで、外部電極用ペーストの粘度を適度なものにすることができるため、ペーストのぼりを抑えることができる。
【0081】
素子本体の加熱の方法としては、オーブン、遠赤外線ヒーターなどで加熱する方法が挙げられる。また、上記の加熱方法はバッチ式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。
【0082】
固化された外部電極用ペーストへの素子本体の接触時間は、素子本体が常温の場合には好ましくは3〜5秒間、素子本体が60℃の場合には好ましくは0.5〜2秒間である。外部電極用ペーストへの素子本体の接触時間がこの範囲の場合、適度な量の外部電極用ペーストを溶解させることができ、素子本体に過剰な外部電極ペーストを塗布することを防ぐことができる。
【0083】
素子本体に外部電極用ペーストを塗布した後に、固化された外部電極用ペーストを再度加熱し、溶解させ、平坦にし、再度固化させることにより、図3bに示す固化された外部電極用ペーストとして何度も用いることができる。
【0084】
外部電極用ペーストを平坦にする方法としては特に限定されないが、たとえば外部電極用ペーストの表面にPETフィルムを敷き、その上からアイロンなど加熱した金属板でならす方法や、加熱した溶剤を外部電極ペーストの表面にかける方法などが挙げられる。
【0085】
また、図3aに示す保持具30のように貫通孔33の間隔が十分ある場合には、図3eに示すように保持具30をずらすことによっても、固化された外部電極用ペースト40のうち平坦な凸部40bに素子本体10を接触させることができ、素子本体10に外部電極用ペーストを塗布することができる。
【0086】
また、素子本体10のうち外部電極用ペースト40aが塗布された部分に、上記図3b〜3dに示す工程を行い、さらに外部電極用ペーストを塗布し外部電極を二層以上で形成してもよい。
【0087】
なお、一層目の外部電極を形成する外部電極用ペーストは上記図3b〜3dに示す工程により塗布し、二層目以降は、従来の方法のように、スラリー状の外部電極用ペーストに素子本体の一部を浸漬することにより外部電極用ペーストを塗布してもよい。二層目以降の外部電極はその下層の外部電極用ペーストの存在により、ペーストのぼりが抑えられるからである。
【0088】
また、一層目は外部電極用ペーストを比較的薄く塗布し、二層目でコーナー部に重点的に外部電極用ペーストを塗布してもよい。これにより、外部電極を薄層化しつつ、コーナー部の外部電極の電極厚みを確保し、信頼性を向上させることができる。この場合、一層目は、外部電極用ペーストの組成の均一性の観点から、金属板上に流し込まれ固化された外部電極用ペーストは上記したように薄い方が好ましいが、二層目以降で本実施形態に係る方法を用いる場合には、金属板上に流し込まれ固化された外部電極用ペーストの電極厚みは厚くてもよい。
【0089】
このように、外部電極を二層以上で形成する場合、外部電極用ペーストを塗布した後は、必要に応じて後述する乾燥工程を行ったうえで、次の層を形成する外部電極用ペーストを塗布する。
【0090】
外部電極用ペーストを塗布した後は乾燥工程を行う場合には、乾燥温度としては、好ましくは120〜150℃、乾燥時間としては、好ましくは20分〜1時間である。なお、上記のように、素子本体が加熱されていると、素子本体の熱によっても外部電極用ペーストが乾燥されるため乾燥工程の時間を短縮できたり、特に上記の条件により乾燥工程を設けなくても、5〜10分放置するのみで十分乾燥させることができる。
【0091】
さらに、従来、外部電極用ペーストを乾燥機により乾燥する場合には外部電極用ペーストの外側から乾燥するため、外部電極用ペーストを焼成する際の爆ぜの原因となることがあった。これに対して、本実施形態では、素子本体を加熱するため外部電極用ペーストが内側からも乾燥するため、爆ぜを抑えることができる。
【0092】
外部電極用ペーストを乾燥した後、焼成し、外部電極4を形成する。外部電極用ペーストの焼成条件は、例えば、加湿したNとHとの混合ガス中で600〜800℃ にて10分間〜1時間程度とすることが好ましい。そして、必要に応じ、外部電極4表面に、めっき等により被覆層を形成する。
【0093】
このようにして製造された本発明の実施形態に係る積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
【0094】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0095】
たとえば、上述した実施形態では、電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明の実施形態に係る電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、誘電体層および内部電極層を有する電子部品であれば何でも良い。
【実施例】
【0096】
試料1a
(誘電体層用ペースト)
セラミック粒子を作製するための出発原料として、主成分原料(BaTiO)および副成分原料を用意した。
【0097】
副成分原料としては、MgOおよびMnOの原料には炭酸塩(第1副成分:MgCO、第5副成分:MnCO)を用い、他の原料には酸化物(第2副成分:(Ba0.6Ca0.4)SiO、第3副成分:V、第4副成分:Yb+Y、第6副成分:CaZrO、その他の副成分:Alを用いた。
【0098】
第2副成分である(Ba0.6Ca0.4)SiOは、BaCO,CaCOおよびSiOをボールミルにより16時間湿式混合し、乾燥後、1150℃で空気中において焼成し、さらに、ボールミルにより100時間湿式粉砕することにより製造した。第5副成分であるCaZrOは、CaCOおよびZrOをボールミルにより16時間湿式混合し、乾燥後、1150℃ にて空気中で焼成し、さらにボールミルにより24時間湿式粉砕することにより製造した。
【0099】
これらの原料を、焼成後の組成が、主成分であるBaTiO 100モルに対して、MgCO:1モル、(Ba0.6Ca0.4)SiO:3モル、V:0.1モル、Yb:1.75モル、Y:2モル、MnCO:0.374モル、CaZrO:2.0モル、Al:1モル、となるように配合して、ボールミルにより16時間湿式混合し、乾燥させセラミック原料粒子を得た。
【0100】
得られたセラミック原料粒子をボールミルで15時間、湿式粉砕し、乾燥し、0.2μmのセラミック粒子を得た。次いで、これらと、アクリル樹脂4.8重量部と、酢酸エチル100重量部と、ミネラルスピリット6重量部と、トルエン4重量部とをボールミルで混合してペースト化し、誘電体層用ペーストを得た。
【0101】
(内部電極層用ペースト)
平均粒径が0.4μmのNi粒子100重量部に対して、セラミック粒子を20重量部と、有機ビヒクル(エチルセルロース樹脂8重量部をブチルカルビトール92重量部に溶解したもの)40重量部と、ブチルカルビトール10重量部と、を3本ロールにより混練してペースト化し内部電極層用ペーストを得た。
【0102】
(積層体製造工程)
得られた誘電体層用ペーストを用いて、PETフィルム上に、ドクターブレード法によりシート成形を行い、乾燥することにより、グリーンシートを形成した。このとき、グリーンシートの厚みは、5μmとした。この上に内部電極層用ペーストを印刷した後、PETフィルムを剥離した。次いで、これらのグリーンシートと内部電極パターン層との積層物を複数積層することにより積層体を得た。
【0103】
次いで、積層体を所定サイズに切断しグリーンチップを得た後、脱バインダ処理、焼成及びアニールを行って、素子本体を得た。
【0104】
脱バインダ処理は、昇温時間15℃/時間、保持温度280℃、保持時間2時間、空気雰囲気の条件で行った。
【0105】
焼成は、昇温速度200℃/時間、保持温度1260〜1340℃、保持時間2時間、冷却速度300℃/時間、加湿したN+H混合ガス雰囲気(酸素分圧は10−6Pa)の条件で行った。
【0106】
アニールは、保持温度1200℃、温度保持時間2時間、冷却速度300℃/時間、窒素雰囲気の条件で行った。なお、脱バインダ処理及び焼成の際の雰囲気ガスの加湿には、水温を35℃としたウェッターを用いた。
【0107】
(外部電極の形成)
このようにして得た素子本体に、サンドブラスト等にて端面研磨を施し、図3aに示す保持具を準備した。保持具はゴム板からなり、補強板が内蔵されており、等間隔に貫通孔があけられている。この保持具の貫通孔にゴム板から700μm突き出すようにして素子本体を挿入し、保持具ごとオーブンに入れ、素子本体を60℃に加熱した。
【0108】
また、上記の工程と並行して、以下の手順により外部電極用ペーストを得た。まず、バインダをエチルセルロース樹脂として、エチルセルロース樹脂15重量部をターピネオール85重量部に溶解した有機ビヒクルを準備した。次いで導電性粉末を平均粒径0.5μmのCu粒子、溶剤をターピネオールとし、外部電極用ペースト中の溶剤、導電性粉末および有機ビヒクルの合計含有量を100重量部としたとき、を導電性粉末が75重量部、有機ビヒクルが22重量部、溶剤が3重量部、ガラス粉が7重量部となるように混練してペースト化し、外部電極用ペーストを得た。
【0109】
金属板に外部電極用ペーストを厚みが190μmとなるように流し込み(図3b)、−5℃にして冷却し、静置し、表面が平坦になるように固化させた。
【0110】
次いで、前記加熱した素子本体を前記固化させた外部電極用ペーストに1秒間接触させ、外部電極用ペーストを溶解し(図3b、c)、その後引き上げた(図3d)。
【0111】
なお、通常、積層セラミックコンデンサは素子本体の両端に外部電極ペーストを塗布して得られるが、本実施例では、外部電極の電極厚みおよび電極側面幅を測定することを目的としたため、外部電極用ペーストは素子本体の一端にのみ塗布した。
【0112】
素子本体に塗布された外部電極用ペーストは塗布直後から乾燥が始まり、塗布後10分後には外観上、完全に乾燥していたため、特に乾燥工程は設けなかった。
【0113】
次いで、素子本体に塗布された外部電極用ペーストを焼成した。焼成条件としては、加湿したNとHとの混合ガス中で600〜800℃ にて10分間〜1時間程度とした。このようにして外部電極4を一方にのみ有する試料1aを得た。
【0114】
得られた試料1aのサイズは、1.6mm×0.8mm×0.8mmであり、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は380であり、1層あたりの誘電体層の厚み(層間厚み)は、2μmであった。
【0115】
試料1b〜1d
外部電極用ペーストを表1に示す組成のものに代えた以外は試料1aと同様にして、試料1b〜1dを作成した。
【0116】
【表1】

【0117】
試料2a〜2d
室温(25℃)の外部電極用ペーストを厚みが190μmになるように金属板上に流し込み、室温の素子本体を外部電極ペーストに10秒間浸漬し、引き上げ、素子本体を乾燥機で150℃、30分間乾燥させた後に焼成を行った以外は試料2a〜2dはそれぞれ試料1a〜1dと同様にして試料を作成した。試料2a〜2dの外部電極用ペーストの組成を表1に示す。
【0118】
(電極厚みT制御)
試料1a〜1dおよび試料2a〜2dについて、外部電極の電極厚みTを測定した。電極厚みTとは、図4(A)に示すように、外部電極の電極端面4aの中央部の電極厚みである。結果を図5に示す。
【0119】
図5より、外部電極用ペーストを固化させた試料1a〜1dでは、外部電極用ペーストに含まれる導電性粉末の含有量を変化させても電極厚みTはほとんど変わらないことが確認できた。これに対し、外部電極用ペーストを固化させなかった試料2a〜2dでは、外部電極用ペーストに含まれる導電性粉末の含有量が多くなると電極厚みTが厚くなる傾向にあることが確認できた。
【0120】
また、試料1a〜1dにおいては、10分放置し、自然乾燥のみを行ったのにも関わらず、焼成しても爆ぜは起こらなかった。このことから、試料1a〜1dは短時間の自然乾燥のみで十分に乾燥できることが確認できた。
【0121】
さらに、試料1aおよび2aについては、それぞれ50個のサンプルを準備し、電極厚みTのばらつきを求めた。電極厚みTのばらつきは、サンプルの電極厚みTの平均値Thを求め、サンプルの電極厚みTとThとの差が最大になるサンプルの電極厚みTをTmとし、|Th−Tm|/Thで表わされる。
【0122】
その結果、試料1aの電極厚みTのばらつきは3.6%であるのに対し、試料2aの電極厚みTのばらつきは10%となり、外部電極用ペーストを固化させる方法は電極厚みTのばらつきを抑えるのに効果的であることが確認できた。
【0123】
(電極厚みの均一性)
外部電極用ペーストに含まれる導電性粉末をCuに代えてAgにした以外は試料31a、32aおよび31bはそれぞれ試料1a、2aおよび1bと同様にして試料を作成した。試料31a、32aおよび31bの外部電極用ペーストの組成を表1に示す。
【0124】
外部電極用ペーストに含まれる有機ビヒクルとして、エチルセルロース樹脂に代えてアクリル樹脂を用いた以外は、試料41a、42a、431a、432a、41bおよび431bは、それぞれ試料1a、2a、31a、32a、1bおよび31bと同様にして試料を作成した。試料41a、42a、431a、432a、41bおよび431bの外部電極用ペーストの組成を表1に示す。
【0125】
上記した試料1a、2a、31a、32a、1b、31b、41a、42a、431a、432a、41bおよび431bについて、図4(A)に示す外部電極の三か所の電極厚み(電極厚みT、電極厚みF、電極厚みR)を測定した。なお、電極厚みTは上記のとおりであり、電極厚みFは、最も外側に積層された内部電極層の部分の電極厚みである。また、電極厚みRは、素子本体のコーナー部の電極厚みであり、図4(B)に示すように、積層方向の接線aと各層に並行な線bの交点cを通り、前記接線aとの鋭角δの角度が45℃となる部分の電極厚みを示す。そして、電極厚みTに対する電極厚みFおよび電極厚みRの比率(膜厚比:F/T,R/T)を算出した。結果を図6(A)および図6(B)に示す。
【0126】
また、試料1a〜1dおよび2a〜2dについても同様にして電極厚みT、電極厚みFおよび電極厚みRを測定し、膜厚比(F/T,R/T)を算出した。結果を図7に示す。
【0127】
F/TおよびR/Tは、1に近いほど外部電極の電極厚みが均一であることを意味する。図6(A)より、試料1aと試料31a、試料2aと試料32aを比較すると、外部電極用ペーストを固化させた試料1aおよび試料2aは、外部電極用ペーストを固化させなかった試料31a、32aに比べてF/TおよびR/Tが1に近く、外部電極の電極厚みが均一であることが確認できた。
【0128】
また、図6(B)より、外部電極用ペーストに含まれるバインダをエチルセルロース樹脂に代えてアクリル樹脂にした場合でも、同様の傾向となることが確認できた。
【0129】
さらに、図7より、外部電極用ペーストを固化させた場合には、外部電極用ペースト中の導電性粉末の含有量が高くなるほど外部電極の電極厚みが均一になることが確認できた(試料1a〜1d)。これに対し、外部電極用ペーストを固化させなかった場合には、外部電極用ペースト中の導電性粉末の含有量が高くなるほど外部電極の電極厚みの均一性が低下することが確認できた(試料2a〜2d)。
【0130】
(ペーストのぼり制御)
試料1aと試料2aについて、電極側面幅βmaxおよび電極側面幅βminを測定し、(βmax−βmin)/βminで表わされるβばらつきを求めた。なお、図8に示すように、電極側面幅βminとは外部電極の最も広い電極側面幅であり、電極側面幅βminとは素子本体の積層方向の端部の外部電極の電極側面幅である。
【0131】
まず、外部電極用ペーストが塗布された素子本体を目視により確認したところ、試料2aには三日月型のペーストのぼりが確認できた。これに対し、試料1aにはペーストのぼりは確認できなかった。
【0132】
また、試料1aでは電極側面幅βmaxが50.5μm、電極側面幅βminが47.6μmでありβばらつきは0.06であった。これに対し、試料2aでは電極側面幅βmaxが72.6μm、電極側面幅βminが63.1μmでありβばらつきは0.15であった。以上より、試料1aは試料2aに比べペーストのぼりによる外部電極の電極側面幅のばらつきが改善されていることが確認できた。
【符号の説明】
【0133】
1… 積層セラミックコンデンサ
10… 素子本体
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極
4a… 電極端面
4b… 電極側面
30… 保持具
31… ゴム板
32… 補強板
33… 貫通孔
34… 金属板
40、40b… 固化された外部電極用ペースト
40a… 外部電極用ペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子本体を準備する工程と、
外部電極用ペーストを固化させる工程と、
前記固化された外部電極用ペーストを溶解することにより前記素子本体の少なくとも一部に外部電極用ペーストを塗布する工程と、
を有することを特徴とする電子部品の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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