説明

電子部品のハンダ付け、取り外し装置

【課題】電了部品を選択的に、かつ対象電子部品を均一に加熱して熱ストレスを可及的に抑制しつつ、半田付け、又は回路基板からの取り外すこと。
【解決手段】電子部品を吸引するパキュームビット12と、これの近傍に赤外線を照射する加熱手段13と、バキュームビット12及び加熱手段13を昇降させる昇降手段11と、回路基板Pを保持して水平方向に移動するテーブル3と、電子部品Dの表面温度を検出するための温度検出手段16と、加熱手段6の下方に配置されて電子部品D及び回路基板Pとを電子部品Dの温度の方が高くなるように加熱手段13からの赤外線を制限する赤外線照射制限手段40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を回路基板に半田付けしたり、また回路基板に半田付けされている部品を取り外すための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンダ付け装置は、プリント回路基板上にICをとりつける場合には、たとえば、特許文献1、特許文献2に見られるように昇降可能な熱風噴射装置の先端のバキュームビットにICを吸着きせて、ICを吸着しクリームハンダの塗布されたプリント基板上の該当する導電パターン上に降下、載置して一定温度に制御された熱風をノズルから噴射して加熱するように構成されている。
また、プリント回路基板にハンダ付けされたICの取り外しは、ノズルを基坂上のICに接触させ加熱、ノズル内のバキュームビットに吸着して基板から取り外す方法に行われている。
しかしながら、熱風を加熱手段とした場合、CSP(チップサイズパッケージ)、マイクロBGA(Ball Grid Array)等の微細電子部品においてはその表面を均一に加熱することが不可能であり、表面温度に偏差が生じ、これ起因して加熱時の熱膨張差により装置内部(のボンディング領域)が簡単に破損するという問題がある。
また、熱伝導率、比熱ともに著しく低い空気を熱伝達媒体に使用するため、単位時間に大量の加熱空気を供給する必要があり加熱時に発生する半田由来の汚染物の回収が困難である。
加えて熱風供給ノズルから漏洩する熱風が取り外し、半田付け対象部品に隣接する電子部品を破損する恐れがあり、仮にこれら熱風を完全に遮蔽して上部側に排気しようとして廃棄ダクトを設けると、電子部品間に著しく大きな間隔が必要となり、適用できないプリント基板も発生する。
このような熱風を加熱媒体とする装置の問題を解消するために、特許文献3、4に見られるような赤外線を熱源とした装置を使用することも考えられるが、これら装置は半田付け領域(リード部)が部品本体の側部に設けられた電子部品を対象とするものであるから、本体の背面(裏面)を半田付け領域とするCSP、マイクロBGAの電子部品に適用できるとは言えない。
【特許文献1】特開平8-46351号公報
【特許文献2】特開2002-164646号公報
【特許文献3】特開平5-315739号公報
【特許文献4】特開平5-102654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、電了部品を選択的に、かつ対象電子部品を均一に加熱して熱ストレスを可及的に抑制くしつつ、半田付け、又は回路基板からの取り外すことができる電子部品のハンダ付け、取り外し装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はこのような課題を達成するために、電子部品を吸引するパキュームビットと、前記パキュームビットの近傍に赤外線を照射する加熱手段と、前記バキュームビット及び前記加熱手段を昇降させる昇降手段と、少なくとも電子部品の表面温度を検出するための温度検出手段と、前記加熱手段の下方に配置されて前記電子部品及び前記回路基板とを前記電子部品の温度が高くなるように前記加熱手段からの赤外線を制限する赤外線照射制限手段とを備え、前記電子部品の周囲の前記回路基板を加熱しつつ前記電子部品の半田付け領域を半田の溶融温度まで加熱する。
【発明の効果】
【0005】
半田を溶融させるべき半導体装置の領域には十分な赤外線を供給しつつ、その周囲の回路基板には加熱されている半導体装置の熱放散を防止でき、かつ回路基板を損傷しない程度の赤外線をそれぞれ選択的に供給できる。
また、熱風により加熱する場合のように半導体装置に作用する風圧がないので、安定した半田付けを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
そこで以下に本発明の詳細を実施例に基づいて説明する。
図1(イ)、(ロ)は、それぞれ本発明の電子部品のハンダ付け、取り外し装置の一実施例を示すものであって、水平基台1と垂直基台2とを備え、水平基台1には回路基板Pの平面位置を設定するX−Yテーブル3が設けられ、テーブル3の上部にはスライドカバー4、5が設けられている。
一方、垂直基台2には赤外線照射装置6、タッチパネル式ディスプレイ7、及び非常停止指令スイッチ8が設けられている。
【0007】
図2は、同上装置の概要を示すものであって、赤外線照射装置6は、エンコーダ10に接続されたサーボモータ11により水平基台1に対して上下方向に移動できるように垂直基台2に取付けられている。
【0008】
赤外線照射装置6は、下端に負圧により半導体装置を吸着するバキュームビット12が着脱可能に取付けられ、またバキュームビット12の先端領域に赤外線を照射する赤外線発生手段13と、バキュームビット12に負圧を供給するバキュームパイプ14と、バキュームパイプ12の上部を支持し、バキュームビット12に作用する圧力を検出するロードセル15、及び温度検出手段、この実施例では熱電対16を収容して構成されている。
【0009】
ロードセル15は、図3に示したように水平面内での揺動を防止しつつ、上下方向に弾性変形可能な支持体30、この実施例では、十字状の枝部31を有する弾性板の中心にバキュームパイプ14を貫通させて固定するとともに、枝部31にストレインゲージ32を貼着して構成されている。
【0010】
また熱電対16は、2本の熱電対線34、35をバキュームパイプ14の上端から下端まで貫通させて、図4に示したようにバキュームビット12に保持されている半導体装置Dの上面に当接する熱接点を形成して構成されている。
なお、温度検出点16aは、図3(ハ)に示したように耐熱熱伝導性粘着剤S、例えばシリコングリースを介して半導体装置Dに接触させることにより、被加熱半導体装置の温度を正確に検出することができる。
【0011】
バキュームビット12を取り囲むように後述する照射領域制限手段40が配置されている。バキュームビット12の下方には、バキュームビット12に把持された半導体装置Dの裏面、及び回路基板Pの表面を撮影する撮像装置17が進退可能に配置されている。この撮像装置17は、特開平7-115300号公報に見られるようにビームスプリツタと、矩形状に配置された発光素子と、撮像素子とを備え、ビームスプリッタにより上下の画像を合成してCCDにより電気信号に変換するように構成されている。また必要に応じてX−Yテーブル3の裏面と基台1との間には、回路基板Pの裏面のバキュームビット12に対向する位置に、回路基板Pの裏面を加熱する赤外線照射装置が配置されている。
【0012】
図5は、前述の赤外線照射制限手段40の一実施例を示すものであって、半田付け、もしくは取り外しの対象となる電子部品Dの投影面とほぼ同等のサイズに透過窓41を区画する赤外線遮蔽壁42により構成され、赤外線遮蔽壁42には透過窓41の周囲を取り囲むように貫通孔42aが複数形成されている。
【0013】
これら貫通孔42aは、回路基板Pの、取り付け、または取り外しの対象となる電子部品Dの周囲を補助的に加熱するために赤外線を照射するための照射孔であって、対象外の電子部品を無用に加熱することなく、かつ対象となる電子部品からの熱放散を可及的に抑制できる密度となるように形成されている。
【0014】
さらに好ましくは、図6、図7に示したように照射制限手段40の先端には電子部品の周囲を取り囲むフード50が配置され、電子部品に図示しない加熱手段により加熱された窒素などの不活性ガスを供給口51から供給して噴出口52から加熱された不活性ガスにより少なくとも取り付け、または取り外しの対象となる電子部品Dの包囲するように構成されている。
【0015】
この実施例において、タッチパネル7により半田付すべき半導体装置Dに適した加熱プロフィールを設定ボタンにより設定するか、または予め登録されている加熱プロフィールのデータを呼び出す。熱風半田付けすべき半導体装置Dがパーツフィーダ20により所定位置に搬送されてくると、レーザー測離装置21によりパーツフィーダ20のベースと半導体装置Dの表面との距離L1、L2を測定して半導体装置Dの厚み(L1−L2)を検出する。
【0016】
パーツフィーダ20により半導体装置Dをバキュームビット12の直下に搬送してバキュームビット12に保持させる。この状態では、図2に示したように半導体装置Dの表面に熱電対の熱接点が接触して半導体装置Dの表面温度が信号として制御装置23に入力している。
【0017】
ついで、図示しないセンタリング装置に移動させてバキュームビット12と半導体装置との相対位置を規制し、またX−Yテーブル3を移動させて回路基板Pの所定の導電パターンをバキュームビット12の直下に移動させる。なお、センタリング装置は、例えば特開平5-48299号公報に示されているように、半導体装置の4辺を規制する爪を中心方向に付勢手段により付勢して構成することができる。
【0018】
必要に応じて撮像装置17をこの領域に移動させて半導体装置Dの底面と回路基板Pの導電パターンとの画像をハーフミラーにより合成させて、タッチパネル7の画像表示領域50に映し出し、図示しない微動装置によりX−Yテーブル3の位置を微調整する。
【0019】
位置合わせが終了した段階で、カバー4、5を閉じてボタンを押圧すると、サーボモータ11が高速作動して赤外線照射装置6が降下し、その高さがエンコーダ10により検出される。所定位置まで降下した段階で、サーボモータ11が低速回転してさらに降下を続行する。半導体装置Dの底面が回路基板Pに接触すると、バキュームパイプ14に反力が作用してロードセル15から荷重信号が出力する。荷重が所定の値、例えば0.1gに到達した時点で、サーボモータ11が停止する。これにより、半導体装置Dが回路基板Pに半田付けに適した圧力で位置決めされる。
【0020】
ついで、タッチパネル7により加熱を指令すると、半導体装置Dの表面に接触している熱接点により検出される温度の時間的変化が、予め設定された状態となるように赤外線源13への電力が制御される。
【0021】
赤外線源13からの赤外線(図4における矢印)は、赤外線照射制限手段40の照射窓41を通過して電子部品Dを上面から加熱し、同時に貫通孔42aを透過した赤外線が回路基板Pの、電子部品取り付け領域の周囲を加熱する。これにより、赤外線で加熱された電子部品Dから回路基板への熱伝導を可及的に抑制しつつ電子部品の裏面の半田を溶融温度まで急速に加熱することができる。
【0022】
この加熱にともなう半導体装置D、また回路基板Pが熱膨張してバキュームビット12への反力(圧力)が上昇すると、バキュームパイプ14を介してロードセル15の荷重も増加するので、サーボモータ11が逆転して半導体装置Dの押圧力を一定に維持する。
【0023】
これにより、半導体装置Dが回路基板Pに常に一定の圧力で押圧されるため、半導体装置Dの破損や、また半田つぶれによる短絡を防止することができる。このようにして回路基板Pに塗布された半田クリーム、または半導体装置Dの半田粒子が溶融した時点で、赤外線源13への電力の供給を停止し、半田が固化した時点でサーボモータ11を逆転させ、赤外線照射装置6を上昇させて元の位置に復帰させる。
【0024】
なお、半田付け時に、必要に応じてボトムヒータにより回路基板Pの裏面の温度を管理しながら補助加熱することにより、半導体装置Dの過熱を防止して確実に半田付けを行うことができる。
【0025】
一方、回路基板Pに半田付けされている半導体装置Dを交換のために取り外す場合には、
位置合わせが終了した段階で、赤外線照射装置6を降下させてバキュームビット12を半導体装置Dに所定荷重で接触させる。
【0026】
ついで、半導体装置Dの温度が規定の時間パターンで上昇するように赤外線源13への電力を制御して半導体装置Dを固定している半田を溶融させる。ついで、サーボモータ11を逆転駆動すると、半導体装置Dがバキュームビット12に把持されて回路基板Pから剥がれる。
【0027】
この取り外し時も、上述したように赤外線源13からの赤外線(図4における矢印)は、赤外線照射制限手段40の照射窓41を通過して電子部品Dを上面から加熱し、同時に貫通孔42aを透過した赤外線が回路基板Pの、電子部品取り付け領域の周囲を加熱する。これにより、赤外線で加熱された電子部品Dから回路基板への熱伝導を可及的に抑制しつつ電子部品の裏面の半田を溶融温度まで急速に加熱することができる。
【0028】
なお、このときロードセル15から負の荷重信号が出力した場合には、未溶融の半田が存在することを意味するからサーボーモータ11を正転させて、再び半田を再加熱する。これにより、半導体装置Dや回路基板Pに無理な負荷を作用させることなく、安全、確実に半導体装置を取り外すことができる。
【0029】
図8は、本発明の他の実施例を示すものであって、この実施例においては赤外線照射装置6の外周領域の回路基板の表裏から加熱するための赤外線補助加熱手段13’、13
”が配置されている。なお、図中符号14’、14”は熱電対を示す。
【0030】
この実施例によれば、サイズが小さいために熱放散が大きくなる半導体装置Dであっても、半導体装置と、その周囲との温度差を可及的に小さくし、かつ対象となる半導体装置以外の温度を可及的に抑制しつつ回路基板の裏面の半田を短時間で所要の温度に加熱でき作業を効率的に行うことができる。
【0031】
また、上述の実施例においては半導体装置の半田付け、取り外しに例を採って説明したが、抵抗素子などのさらに小型の電子部品に適用しても同様の作用を奏することは明らかである。
さらに、上述の実施例においては、熱電対により半導体装置や回路基板の温度を測定しているが、抵抗測温素子や赤外線センサーを使用しても同様の作用を奏することは明らかである。
【0032】
なお、上述の実施例においては赤外線照射制限手段が、板材に貫通孔を設けて回路基板加熱用の赤外線を制限しつつ放出させているが、図9に示したように赤外線吸収フィルタ板40’に照射窓41’を形成すると、照射窓41’からは半導体装置を加熱するのに十分な赤外線を放出させ、また周囲のフィルタ板により回路基板の、半導体装置の周囲に熱放散を防止できる程度の赤外線を放出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図(イ)、(ロ)は、それぞれ本発明の装置の一実施例をカバーを閉じた状態、及びカバーを明けた状態で示す図である。
【図2】本発明の装置の一実施例を示す構成図である。
【図3】図(イ)乃至(ハ)は、それぞれ同上装置を構成するロードセルの一実施例を示す断面図、上面図、及び温度計測点を拡大して示す図である。
【図4】同上装置を構成する赤外線照射装置の一実施例をバキュームビット近傍の構造で示す図である。
【図5】同上赤外線照射装置を構成する赤外線照射制限手段の一実施例を示す斜視図である。
【図6】同上装置を構成する赤外線照射装置の一実施例をバキュームビット近傍の構造で示す図である。
【図7】同上赤外線照射装置を構成する赤外線照射制限手段の一実施例を示す斜視図である。
【図8】本発明の赤外線照射装置を適用した電子部品のハンダ付け、取り外し装置の他の実施例を示す図である。
【図9】赤外線照射制限手段の他の実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
6 赤外線照射装置
12 バキュームビット
13 赤外線源、13’、13”
14 バキュームパイプ
15 ロードセル
16、16’、16”18 熱電対
23 制御装置
40 赤外線照射制限手段
41 透過窓
42 赤外線遮蔽壁
42a 貫通孔
50 フード
51 ガス供給口
52 噴出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を吸引するパキュームビットと、前記パキュームビットの近傍に赤外線を照射する加熱手段と、前記バキュームビット及び前記加熱手段を昇降させる昇降手段と、少なくとも電子部品の表面温度を検出するための温度検出手段と、前記加熱手段の下方に配置されて前記電子部品及び前記回路基板とを前記電子部品の温度が高くなるように前記加熱手段からの赤外線を制限する赤外線照射制限手段とを備え、前記電子部品の周囲の前記回路基板を加熱しつつ前記電子部品の半田付け領域を半田の溶融温度まで加熱することを特徴とする電子部品のハンダ付け、取り外し装置。
【請求項2】
前記電子部品の周囲に加熱された不活性ガスを供給する手段を有する請求項1に記載の電子部品のハンダ付け、取り外し装置。
【請求項3】
前記赤外線照射制限手段が、前記電子部品に対応する領域に赤外線透過窓を、また前記赤外線透過窓の周囲に赤外線制限用の貫通孔を設けて構成されている請求項1に記載の電子部品のハンダ付け、取り外し装置。
【請求項4】
前記赤外線照射制限手段が、前記電子部品に対応する領域に赤外線透過窓が形成された赤外線吸収フィルタ板により構成されている請求項1に記載の電子部品のハンダ付け、取り外し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−294958(P2006−294958A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115379(P2005−115379)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(505136376)
【Fターム(参考)】