説明

電子部品の接続構造

【課題】電子部品間の信号用ライン配線によって生じるリターンロスの劣化を簡単な構造で改善を図る。
【解決手段】信号用ライン2aの両側にGND部2bを備えた伝送路基板2と、信号用ライン3aの両側にGND部3bを備えた半導体デバイス3の各々の信号用ライン2a,3a間が導電体4によって配線接続された電子部品の接続構造であり、伝送路基板2と半導体デバイス3の少なくとも一方において、信号用ライン上を跨がって通過するように当該信号用ラインの両側のGND部間が別の導電体5で接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトランジスタ、IC、ダイオード等の能動素子、終端器等の受動素子、マイクロストリップライン、コプレーナライン、グランド付きコプレーナライン等の伝送線路、コネクタ等の配線部品からなる各種電子部品の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高周波信号を伝達するための2つの基板間の接続方法として、下記特許文献1に開示されるものが知られている。この特許文献1に開示される接続方法では、プリント基板とチップ間の準平面型導波路のマイクロ波の信号伝送をボンディングで行う場合に、インピーダンス不整合によるリターンロスが生じる課題を解決するため、プリント基板とチップの準平面型導波路の両側のグランドを互いに信号線の上を接触しないようにわずかな空間を空けてクロス状にボンディングしていた。具体的には、図6に示すように、金属線21の上を金属線22および金属線23をクロス状にボンディングしていた。これにより、キャパシタンスを稼ぎ、インピーダンスの上昇を防ぎ、マイクロ波のリターンロスを減少させている。
【特許文献1】特開2007−312229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した特許文献1に開示される従来の接続方法(図6の接続構成)において、十分な容量性を持たせるためには、信号配線に極めて近接させる必要があり、例えば振動、衝撃、温度サイクルなどによるショートの危険性があった。
【0004】
また、同一基板同士の配線であれば、基板厚さなどもほぼ同一なので、配線面の高さがほぼ同じになるが、半導体デバイスと伝送路基板の接続の場合は、それぞれの厚さ公差により配線面の高さに差が生じる場合も多い。その場合には、上述した従来の図6に示すような接続方法では、金属線21の上を金属線22および金属線23を近接させて配線することはさらに難しくなる。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、簡単な構成により電子部品間の接続部分の前後で特性改善を図ることができる電子部品の接続構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された電子部品の接続構造は、各々信号用ライン2a,3aを有する第1の電子部品2と第2の電子部品3の少なくとも一方の前記信号用ラインの両側にGND部2b,3bを備え、前記第1の電子部品と前記第2の電子部品の各々の信号用ライン間が導電体4によって配線接続された電子部品の接続構造において、
前記第1の電子部品と前記第2の電子部品の少なくとも一方における信号用ラインの両側のGND部間は、当該信号用ライン上を跨がって通過する別の導電体5によって接続されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載された電子部品の接続構造は、信号用ライン2aの両側にGND部2bを備えた伝送路基板2と、信号用ライン3aの両側にGND部3bを備えた半導体デバイス3の各々の信号用ライン間が導電体4によって配線接続された電子部品の接続構造において、
前記伝送路基板と前記半導体デバイスの少なくとも一方における信号用ラインの両側のGND部間は、当該信号用ライン上を跨がって通過する別の導電体5によって接続されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載された電子部品の接続構造は、信号用ライン2aを備えた伝送路基板2と、信号用ライン3aの両側にGND部3bを備えた半導体デバイス3の各々の信号用ライン間が導電体4によって配線接続された電子部品の接続構造において、
前記半導体デバイスにおける前記信号用ラインの両側のGND部間は、当該信号用ライン上を跨がって通過する別の導電体5によって接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各電子部品の信号用ラインを跨がって通過するようにGND部間を導電体で接続する簡単な構成により、電子部品間の接続部分の前後で特性改善を図ることができる。また、電子部品間に段差がある場合でも、各電子部品面での接続であるためその段差による影響を受けることなく特性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら具体的に説明する。図1は本発明に係る電子部品の接続構造の一例を示す概略斜視図、図2は図1における電子部品間の部分拡大平面図、図3は本発明に係る電子部品の接続構造の各形態における反射特性S11のシミュレーション結果を示す図、図4は本発明に係る電子部品の接続構造の各形態におけるインピーダンス特性のシミュレーション結果を示す図、図5は信号用ライン両側のGND部間の接続構造のシミュレーション条件を示す図である。
【0011】
本発明に係る電子部品の接続構造は、2つの電子部品の信号ライン間が導電体により配線接続される構造に採用され、少なくとも一方の電子部品の信号用ラインの両側にGND部を備え、少なくとも一方の電子部品における信号用ラインの両側のGND部間が、信号用ライン上を跨がって通過するように別の導電体で接続された構成である。
【0012】
以下、本発明に係る電子部品の接続構造の一例について図1及び図2を参照しながら説明する。図1に示す電子部品の接続構造では、伝送路基板(第1の電子部品)2と半導体デバイス(第2の電子部品)3が、配線面が同じ高さになる様に半導体デバイス3の搭載面が堀り込まれた金属ベース1の上に搭載され、この伝送路基板2と、半導体デバイス3との間が部品間接続用導電体4により配線接続されている。
【0013】
伝送路基板2は、グランド付きコプレーナラインを形成している。さらに説明すると、伝送路基板2には、図1に示すように、信号を伝送するための基板側信号用ライン2aが表面中央の長手方向に形成されている。また、基板側信号用ライン2aの両側には、所定間隔をおいて基板側GND部2bが形成されている。なお、基板側面部を金属メッキすることにより金属ベース1と基板側GND部2bは導通されている。
【0014】
半導体デバイス3は、例えばトランジスタ、IC、ダイオードなどからなる。半導体デバイス3には、信号を伝送するためのデバイス側信号用ライン3aが伝送路基板2の基板側信号用ライン2aと対向するように形成されている。また、デバイス側信号用ライン3aの両側には、所定間隔をおいてデバイス側GND部3bが形成されている。
【0015】
そして、図1及び図2に示すように、伝送路基板2と半導体デバイス3の各々の信号用ライン2a,3a間および各々のGND部2b,3b間は、例えば金ワイヤ、アルミワイヤ、金リボンなどの金属線材からなる部品間接続用導電体4によって接続されている。そして、伝送路基板2の基板側GND部2b,2b間は、GND部間接続用導電体5によって接続されている。また、半導体デバイス3のデバイス側GND部3b,3b間も、同様のGND部間接続用導電体5で接続されている。これらGND部間接続用導電体5は、伝送路基板2と半導体デバイス3との接続部分の近傍において、信号用ライン2a,3aと接触せず、信号用ライン2a,3aを跨がって通過するようにGND部2b,3b間を配線接続している。なお、GND部間接続用導電体5は、部品間接続用導電体4と同様の金属線材が用いられている。
【0016】
ここで、本例における電子部品(第1の電子部品2、第2の電子部品3)は、能動素子、受動素子、配線部品からなる。具体的に、能動素子としては、例えばトランジスタ、IC、ダイオード等が挙げられる。また、受動素子としては、終端抵抗(終端器)等が挙げられる。さらに、配線部品としては、例えば伝送線路やコネクタ等が挙げられる。
【0017】
また、上記配線部品に含まれる伝送線路の種類としては、例えばマイクロストリップライン、コプレーナライン、グランド付きコプレーナライン等が挙げられる。
【0018】
従って、本発明に係る電子部品の接続構造は、図1に示すように、グランド付きコプレーナラインの伝送路基板2と半導体デバイス3との組合せによる構造に限定されるものではない。
【0019】
例えば図1における半導体デバイス3を伝送路基板とし、伝送路基板同士の組合せでも良い。また、半導体デバイス3(集積回路)のGND部3bがスルーホールで接地されている場合には、伝送路基板2と半導体デバイス3(集積回路)間のGND配線がない組合せでも良い。さらに、半導体デバイス3(集積回路)側の補正構造のみで実施する場合には、伝送路基板2がマイクロストリップラインなどでGND部2bがないものと半導体デバイス3の組合せでも良い。
【0020】
このように、本例の電子部品の接続構造は、第1の電子部品2と第2の電子部品3との間が部品間接続用導電体4により配線接続される構造(GND部の配線が無いものを含む)において、少なくとも一方の電子部品(2および/または3)の信号用ライン(2aおよび/または3)の両側にGND部2b、3bを備え、信号用ライン2a(および/または3a)上を跨がって通過するように信号用ライン2a(および/または3a)の両側のGND部2b(および/または3b)間がGND部間接続用導電体5で接続された構成である。これにより、電子部品間の接続部分の前後で特性改善を図っている。
【0021】
次に、本発明に係る電子部品の接続構造によるシミュレーション結果として、図3に損失特性、図4にインピーダンス特性を示す。なお、図5は図3及び図4のシミュレーション条件である信号用ライン両側のGND部間の接続構造の説明図である。
【0022】
図3及び図4におけるシミュレーション条件は、以下の通りである。
・伝送路基板:石英ガラス(t=0.1mm)、グランド付きコプレーナライン構造(表裏導通方法:側面メッキ)
・集積回路(半導体デバイス):インジウム燐(InP)(t=0.6mm)、50Ω終端条件
・配線(導電体):φ20μm金ワイヤ
・搭載面:伝送路基板と集積回路の厚み差が0.5mmあるため集積回路搭載面を0.5mm掘り下げ
・入力端と伝送路基板間の距離:25μm
・伝送路基板と集積回路間の距離:50μm
【0023】
そして、図5は信号用ライン2a,2a両側のGND部2b,2b間の接続構造のシミュレーション条件を示す。図3及び図4における符号A〜Hは以下に説明する電子部品の接続構造の各形態に対応した特性を示している。
A:コネクタ接続部10+伝送路基板2(伝送路基板2を直接50Ω終端)
B:コネクタ接続部10+伝送路基板2+半導体デバイス3(本発明に係る電子部品の接続構造の要部であるGND部間配線用導電体5が無い構成)
C:Bの接続構造において、伝送路基板2側に1本のGND部間配線用導電体5(5a−1)のみを配線した構成(GND部間配線用導電体5の高さは0.045mm)
D:Cの接続構造において、伝送路基板2側にGND部間配線用導電体5(5a−2)を追加して配線した構成(GND部間配線用導電体5a−2の高さは0.035mm)
E:Dの接続構造において、半導体デバイス3側に1本のGND部間配線用導電体5(5b−1)を追加して配線した構成(GND部間配線用導電体5b−1の高さは0.035mm)
F:Eの接続構造において、伝送路基板2側にGND部間配線用導電体5(5a−3)を追加して配線した構成(GND部間配線用導電体5a−3の高さは0.035mm)
G:Fの接続構造において、4本の各GND部間配線用導電体5(5a−1,5a−2,5a−3,5b−1)の高さを0.005mm下げた構成(図5)
H:Gの接続構造において、半導体デバイス3側の1本のGND部間配線用導電体5(5b−1)を内側に0.03mm移動した構成
【0024】
GND部間配線用導電体5を備えた電子部品の接続構造によれば、図3の反射特性S11のシミュレーション結果に示すように、GND部間配線用導電体5が無い構造に比べて、反射特性S11の改善を図ることができる。なお、図3からも判るように、接続構造の各形態C〜Hでは、各々改善効果が異なる。実際に設計する場合は、これらの改善効果と製造性や信頼性などを考慮して、仕様を満足できる構成を選択することとなる。
【0025】
また、図4のインピーダンス特性のシミュレーション結果では、GND部間配線用導電体5を追加することにより、電子部品の信号用ライン間の導電体配線によるインピーダンスの増加が抑制されていることが判る。これにより、反射特性S11の改善がされていることが判る。
【0026】
このように、本発明に係る電子部品の接続構造によれば、信号用ラインを跨がって通過するようにGND部間をGND部間接続用導電体5で接続する簡単な構成により、電子部品間の接続部分の前後で特性改善を図ることができる。つまり、同一部品面にてGND部間接続用導電体5が配線されるため作業性が良く、特に電子部品間の配線面の高さが異なったとしてもその影響を受けることなく特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る電子部品の接続構造の一例を示す概略斜視図である。
【図2】図1における電子部品間の部分拡大平面図である。
【図3】本発明に係る電子部品の接続構造の各形態における反射特性S11のシミュレーション結果を示す図である。
【図4】本発明に係る電子部品の接続構造の各形態におけるインピーダンス特性のシミュレーション結果を示す図である。
【図5】信号用ライン両側のGND部間の接続構造のシミュレーション条件を示す図である。
【図6】特許文献1に開示される配線接続方法を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 金属ベース
2 伝送路基板(第1の電子部品)
2a 基板側信号用ライン(信号用ライン)
2b 基板側GND部(GND部)
3 半導体デバイス(第2の電子部品)
3a デバイス側信号用ライン(信号用ライン)
3b デバイス側GND部(GND部)
4 部品間接続用導電体
5 GND部間接続用導電体
10 コネクタ接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々信号用ライン(2a,3a)を有する第1の電子部品(2)と第2の電子部品(3)の少なくとも一方の前記信号用ラインの両側にGND部(2b,3b)を備え、前記第1の電子部品と前記第2の電子部品の各々の信号用ライン間が導電体(4)によって配線接続された電子部品の接続構造において、
前記第1の電子部品と前記第2の電子部品の少なくとも一方における信号用ラインの両側のGND部間は、当該信号用ライン上を跨がって通過する別の導電体(5)によって接続されていることを特徴とする電子部品の接続構造。
【請求項2】
信号用ライン(2a)の両側にGND部(2b)を備えた伝送路基板(2)と、信号用ライン(3a)の両側にGND部(3b)を備えた半導体デバイス(3)の各々の信号用ライン間が導電体(4)によって配線接続された電子部品の接続構造において、
前記伝送路基板と前記半導体デバイスの少なくとも一方における信号用ラインの両側のGND部間は、当該信号用ライン上を跨がって通過する別の導電体(5)によって接続されていることを特徴とする電子部品の接続構造。
【請求項3】
信号用ライン(2a)を備えた伝送路基板(2)と、信号用ライン(3a)の両側にGND部(3b)を備えた半導体デバイス(3)の各々の信号用ライン間が導電体(4)によって配線接続された電子部品の接続構造において、
前記半導体デバイスにおける前記信号用ラインの両側のGND部間は、当該信号用ライン上を跨がって通過する別の導電体(5)によって接続されていることを特徴とする電子部品の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−284238(P2009−284238A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134449(P2008−134449)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】