説明

電子部品の製造方法

【課題】電極の膜厚を所定厚みに容易に調整することができ、かつ外観形状も良好で安定した電気特性を得ることができる電子部品の製造方法を実現する。
【解決手段】導電性ペーストが、導電性粉末と、加熱により粘度が低下するバインダ樹脂と、溶剤とを含有する。部品素体1を第1の保持部材2に保持させ、溶剤が揮発しないような所定温度に加熱して高温状態とする(図4(a))。部品素体1の端部1aを平板6上のペースト層7に所定時間、接触させ、端部1aに導電性ペーストを塗布し、次いで、部品素体1をペースト層7から引き離し、端部1aに導電膜8aを形成する(図4(b)、図4(c))。その後、導電膜8aを乾燥させて外部電極9aを得る(図4(d))。部品素体1を反転させ、同様の方法で端部1bにも外部電極を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品の製造方法に関し、より詳しくは部品素体の端部に電極が形成された積層セラミックコンデンサ等の電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサ等の電子部品では、一般に部品素体の両端部に外部電極が形成されている。そして、この外部電極の製造方法については、従来より、種々の方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、チップ部品の端面にペースト状電極材を塗布し、次に、このチップ部品の端面とこのペースト状電極材との界面が直線状となった時点で乾燥させて、この界面の形状を固定するチップ部品の端子電極形成方法が提案されている。
【0004】
この特許文献1では、図9に示すような方法で外部電極を形成している。
【0005】
すなわち、図9(a)に示すように、所定厚みの導電性ペーストからなるペースト層101を平板102上に形成し、次いで図9(b)に示すように、セラミック材料からなる部品素体103を、矢印aに示すように、ペースト層101に浸漬してペースト状電極材を前記部品素体103の端部に塗布し、その後、図9(c)に示すように、部品素体103を矢印b方向に引き上げ、部品素体103と導電膜(ペースト状電極材)105との界面104が直線状になった時点で乾燥させ、焼き付けて外部電極を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−236891号公報(請求項1、段落番号〔0008〕、及び図2〜図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、ますます小型で大容量化が積層セラミックコンデンサでは、端面の外部電極の膜厚が厚いと、部品素体の大きさを小さくする必要があり、このため取得容量が小さくなる。取得容量を大きくするためには、外部電極が薄膜であるのが望ましく、このためには外部電極の膜厚を薄く調整する必要がある。
【0008】
そして、外部電極の膜厚調整は、部品素体103をペースト層102から引き上げた後、部品素体101の端面に塗布された導電膜105を掻き取ることにより行うことができる。
【0009】
しかしながら、特許文献1のような従来の方法で所定膜厚の外部電極を得ようとする場合、浸漬→引き上げ→掻き取りの一連の動作を複数回繰り返す必要があり、斯かる一連の処理に長時間を要するため、生産性に劣るという問題点があった。
【0010】
さらに、特許文献1のように部品素体101をペースト層102に浸漬させた場合、図10(a)に示すように、部品素体101をペースト層102から引き上げる際に導電性ペースト102aが糸状に部品素体101に連なり、このため図10(b)に示すように、導電膜105の外表面に突起部105dが形成され、その結果、乾燥後の外部電極の外表面にも突起部が形成されるおそれがある。
【0011】
また、積層セラミックコンデンサの場合、図11に示すように、部品素体101に多数の内部電極106が埋設されており、該内部電極106の引き出し部106aが互い違いとなるように一方の外部電極107及び他方の外部電極(不図示)に接続されている。
【0012】
しかしながら、外部電極107の厚みを所定膜厚に調整するために、上述した掻き取り処理を行うと、外部電極107は端面中央部の膜厚は所望の薄膜になるものの、内部電極106の最外層に位置する部分や部品素体101の角部付近の導電膜も掻き取られるため、これら最外層部dや角部eの電極膜厚も薄くなり、品質劣化を招くおそれがある。特に、最外層部dの導電膜が過度に掻き取られると、内部電極106が表面露出してしまうおそれがある。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、電極の膜厚を所定厚みに容易に調整することができ、かつ外観形状も良好で安定した電気特性を得ることができる電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明に係る電子部品の製造方法は、略直方体形状に形成された部品素体の端部に導電性ペーストを塗布し、該端部に電極を形成する電子部品の製造方法であって、前記導電性ペーストが、導電性粉末と、加熱により粘度が低下するバインダ樹脂と、溶剤とを含有し、前記部品素体を、前記溶剤の沸点以下であって前記バインダ樹脂のガラス転移点以上の所定温度に加熱して高温状態とした後、前記部品素体の端部を前記導電性ペーストに所定時間接触させ、前記端部に前記導電性ペーストを塗布して前記電極を形成することを特徴としている。
【0015】
また、本発明の電子部品の製造方法は、前記溶剤の沸点は、150℃以下であって前記バインダ樹脂のガラス転移点の温度は、50℃以上であるのが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の電子部品の製造方法は、前記所定時間が、前記高温状態の前記部品素体が放熱を終了して略常温状態に戻るまでの時間であるのが好ましい。
【0017】
さらに、本発明の電子部品の製造方法は、前記所定時間が、2〜4秒であるのが好ましい。
【0018】
また、本発明の電子部品の製造方法は、前記導電性ペーストからなる所定厚みのペースト層を平板上に形成し、前記部品素体を前記ペースト層に浸漬させて前記部品素体と前記導電性ペーストとを接触させるのが好ましい。
【0019】
また、本発明の電子部品の製造方法は、所定方向に回転駆動するローラの表面に前記導電性ペーストからなるペース層を形成し、前記部品素体の前記端部を前記ローラの接線方向に添わせるような形態で前記端部を前記ペースト層に接触させるのも好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電子部品の製造方法によれば、略直方体形状に形成された部品素体の端部に導電性ペーストを塗布し、該端部に電極を形成する電子部品の製造方法であって、前記導電性ペーストが、導電性粉末と、加熱により粘度が低下するバインダ樹脂と、溶剤とを含有し、前記部品素体を、前記溶剤の沸点以下であって前記バインダ樹脂のガラス転移点以上の所定温度に加熱して高温状態とした後、前記部品素体の端部を前記導電性ペーストに所定時間接触させ、前記端部に前記導電性ペーストを塗布して前記電極を形成するので、電極表面に突起部が形成されることもなく所望の電気特性を有する電子部品を容易に製造することができる。
【0021】
すなわち、導電性ペースト中には加熱により粘度が低下するバインダ樹脂を含有していることから、溶剤が揮発しないような所定温度にまで部品素体を加熱して高温状態とし、該部品素体の端部を導電性ペーストに接触させると、該端部近傍の導電性ペーストの粘度が低下して端部への付着量が減少する。したがって、前記所定温度を調整することにより、端部への付着量を調整することができ、電極の膜厚を調整することが可能となる。また、上述したように導電性ペーストは加熱により粘度が低下することから、部品素体を導電性ペーストから引き離した場合に、導電材が部品素体端部から垂れて突起部が形成されるのを回避することができる。
【0022】
したがって、容易に膜厚調整をすることができ、電極表面に突起部が形成されることもなく外観形状が良好で所望の電気特性を有する電子部品を製造することができる。
【0023】
また、前記所定温度は、前記溶剤の沸点以下であって前記バインダ樹脂のガラス転移点以上の温度(例えば、50〜150℃)とすることにより、溶剤は揮発することもなく粘度を低下させることができ、所望粘度に低下した導電性ペーストでもって部品素体の端部に電極を形成することができる。
【0024】
さらに、前記所定時間が、前記高温状態の前記部品素体が放熱を終了して略常温状態に戻るまでの時間(例えば、2〜4秒)である場合は、部品素体の放熱が終了するまでに塗布処理が終了することとなり、上述した所望の作用効果を奏することができる。
【0025】
また、導電性ペーストからなる所定厚みのペースト層を平板上に形成し、前記部品素体を前記ペースト層に浸漬させて前記部品素体と前記導電性ペーストとを接触させたり、或いは所定方向に回転駆動するローラの表面に前記導電性ペーストからなるペースト層を形成し、前記部品素体の前記端部を前記ローラの接線方向に添わせるような形態で前記端部を前記ペースト層に接触させることにより、所望厚みに膜厚調整されかつ外観形状も良好で安定した電気特性を有する積層セラミックコンデンサ等の電子部品を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】部品素体の一例を示す斜視図である。
【図2】部品素体を第1の保持部材に保持させた状態を示す正面図である。
【図3】第1の加熱工程の概略構成図である。
【図4】第1の塗布・乾燥工程の概略構成図である。
【図5】第2の加熱工程の概略構成図である。
【図6】第2の塗布・乾燥工程の概略構成図である。
【図7】本発明の製造方法により製造された積層セラミックコンデンサの一例を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る電子部品の製造方法の他の実施の形態を示す要部詳細図である。
【図9】特許文献1に記載された従来の電子部品の製造方法を示す図である。
【図10】特許文献1の課題(その1)を示す図である。
【図11】特許文献1の課題(その2)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づき詳説する。
【0028】
図1は、本発明の製造方法に供される積層セラミックコンデンサ用の部品素体の一例を示す斜視図である。
【0029】
この部品素体1は、BaTiO等を主成分とするセラミック層とNi、Cu、Ag等を含有した内部電極層(不図示)が交互に複数積層された積層体を焼成した焼結体からなり、略直方体形状に形成されている。また、前記複数の内部電極層は、外部電極と電気的に接続可能となるように、一方の端面又は他方の端面に互い違いに表面露出されている。
【0030】
そして、本発明の製造方法により、部品素体1の両端部1a、1bに外部電極が形成される。
【0031】
以下、本発明の電子部品としての積層セラミックコンデンサの製造方法について詳述する。
【0032】
まず、導電性ペーストを作製する。
【0033】
すなわち、導電性粉末、バインダ樹脂、及び有機溶剤を用意する。
【0034】
導電性粉末としては、特に限定されるものではなく、Ni、Cu、Ni−Cu合金、Ag、Ag−Pd、Au等の各種導電性粉末を使用することができるが、低コストで良導電性を有するNi、Cu、Ni−Cu合金等の卑金属系材料が好んで使用される。
【0035】
また、バインダ樹脂としては、加熱により粘度が低下するものであれば特に限定されるものではないが、エチルセルロ−ス樹脂やアクリル樹脂を好んで使用することができる。これらのバインダ樹脂は、ガラス転移点が50〜60℃と低く、斯かるガラス転移点に達すると粘度が急激に低下することから好ましい。
【0036】
また、有機溶剤についても、特に限定されるものではなく、例えば、α−ターピネオール、キシレン、トルエン、ブチルカルビトール、カルビトールアセテート等を使用することができる。
【0037】
そして、これらバインダ樹脂と有機溶剤とを、例えば体積比率で、1〜3:7〜9となるように調製し、これにより有機ビヒクルが作製される。
【0038】
次いで、導電性粉末の含有量が、例えば10〜40体積%となるように導電性粉末を有機ビヒクル中に分散させ、三本ロールミル等で混練し、これにより導電性ペーストを作製する。
【0039】
次に、図2〜図9に示す工程に従い、積層セラミックコンデンサを作製する。
【0040】
まず、図2に示すように、部品保持工程で複数の部品素体1を第1の保持部材2に保持する。
【0041】
第1の保持部材2は、粘着面2aを有し、該粘着面2aに電極形成用の部品素体1の端面1bが貼着される。すなわち、粘着面2aは、部品素体1を貼着させるためのものであり、したがって粘着性を有していれば、その構成は特に限定されるものではない。例えば、両面テープを貼着させてもよいし、シリコン性の弾性体に粘着剤を含侵させても良い。また、発泡性の粘着テープでもよく、このような発泡性の粘着テープを使用した場合は、熱により発泡させることで部品素体1の第1の保持部材2からの離脱を容易に行うことができる。
【0042】
次に、第1の保持部材2を第1の加熱工程に搬送し、部品本体1を加熱する。
【0043】
すなわち、この第1の保持部材2を、図3に示すようにレール状部材3に摺動自在に取り付け、ヒータ4a、4bが内壁面に配された加熱炉5内を矢印A方向に搬送する。そして、これにより第1の保持部材2に固定された部品素体1を導電性ペーストの溶剤が揮発しないような所定温度に加熱し、該部品本体1を高温状態とする。
【0044】
前記所定温度は、具体的には、通常使用される溶剤の沸点以下であってバインダ樹脂のガラス転移点以上の温度、例えば50〜150℃程度が好ましい。
【0045】
次いで、部品素体1を第1の塗布・乾燥工程に搬送し、塗布処理及び乾燥処理を行う。
【0046】
塗布処理では、図4(b)に示すように、導電性ペーストが、昇降機能(不図示)を有する平板6上に塗布され、所定膜厚のペースト層7が予め前記平板6上に形成されている。
【0047】
そして、図4(a)に示す高温状態の部品素体1を、矢印B方向に搬送し、図4(b)に示すように、部品素体1をペースト層7に浸漬させるような形態で接触させ、部品素体1の端部に導電性ペーストを塗布する。
【0048】
次いで、部品素体1の放熱が終了するまでの所定時間(例えば、2〜4秒)、部品本体の端部1aをペースト層7に接触させる。そしてこの後、部品素体1を矢印C方向に搬送し、図4(c)に示すように、部品素体1をペースト層7から引き離し、これにより、部品素体1の端部1aに導電膜8aを形成する。すなわち、高温状態の部品素体1の端部1aをペースト層7に接触させると、該端部1a近傍のペースト層7の粘度が低下し、端部1aへの導電性ペーストの付着量を低減させることができ、これにより膜厚が薄くなるように膜厚調整することが可能となる。しかも、導電性ペーストの粘度が低下することから、導電性ペーストが糸状に連なることもなく、電極外表面に突起部が形成されるのを回避することができる。
【0049】
ただし、部品素体1の放熱が終了すると、ペースト層7における導電性ペーストの粘度も略常温状態に戻ることから、端部1a近傍のペースト層7の粘度を低下させるという作用を奏さなくなり、薄膜に膜厚調整するのが困難となり、また完成後の外部電極に突起部が形成されるおそれがある。
【0050】
したがって、上述したように部品素体1とペースト層7との接触時間を部品素体1が放熱を終了しない所定時間に設定するのが好ましい。尚、この所定時間は、部品素体1の搬送方向におけるペースト層7と第1の保持部材2の搬送速度によって決定することができる。
【0051】
次に、乾燥処理に進み、図4(d)に示しように 熱風や遠赤外線ヒータ等で導電膜8aを乾燥させ、これにより部品素体1の端部1aに外部電極9aを形成する。
【0052】
次いで、上記部品素体1を反転させ、上述と同様の方法で、部品素体1の他方の端部にも外部電極を形成する。
【0053】
すなわち、まず、部品素体1を保持している第1の保持部材2を適宜の方法で反転させ、部品素体1を第1の保持部材2から第2の保持部材に移し替える。この移し替えは、第2の保持部材を第1の保持部材2の粘着力よりも大きくなるような粘着テープを使用することにより、容易に移し替えることができる。また、第1の保持部材2を加熱して発砲させ、これにより粘着力を失わせ、これにより部品素体1を第1の保持部材2から第2の保持部材に容易に移し替えることができる。
【0054】
そして、図5に示すように、第2の加熱工程で部品素体1を第2の保持部材10に保持させて加熱する。すなわち、第2の保持部材10は、第1の保持部材2と同様、粘着面10aを有してレール状部材3に摺動自在に取り付けられている。そして、部品素体1は第1の保持部材2から第2の保持部材10に移し替え、ヒータ11a、11bが内壁面に配された加熱炉12を矢印E方向に搬送し、第1の加熱工程と同様に部品素体1を加熱する。
【0055】
続く、第2の塗布・乾燥工程では、図6(a)に示す高温状態の部品素体1を、矢印F方向に搬送し、図6(b)に示すように、部品素体1を平板13上のペースト層14に浸漬させるような形態で接触させ、部品素体1の端部1bに導電性ペーストを塗布する。
【0056】
次いで、部品素体1を放熱が終了しない所定時間(例えば、2〜4秒)接触させた後、部品素体1を矢印G方向に搬送し、図6(c)に示すように、部品素体1をペースト層14から引き離し、これにより、部品素体1の端部1bにも導電膜8bを形成する。
【0057】
次に、図6(d)に示しように 熱風や遠赤外線ヒータ等で導電膜9bを乾燥させ、これにより部品素体1の他方の端部に外部電極9bを形成する。
【0058】
そして、最後に部品素体1を第2の保持部材10から離脱させ、これにより積層セラミックコンデンサが得られる。
【0059】
図7は、上述のようにして作製されたに積層セラミックコンデンサの斜視図であって、該積層セラミックコンデンサ15は、部品素体1の両端部1a、1bに第1及び第2の外部電極9a、9bが形成される。
【0060】
このように本実施の形態では、導電性ペーストが、導電性粉末と、加熱により粘度が低下するバインダ樹脂と、溶剤とを含有し、部品素体1を、溶剤が揮発しないような所定温度、すなわち、前記溶剤の沸点以下であって前記バインダ樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱して高温状態とした後、該部品素体1の端部1a、1bを導電性ペーストに所定時間、例えば高温状態の部品素体1が放熱を終了して略常温状態に戻るまでの時間、接触させ、端部1a、1bに導電性ペーストを塗布して外部電極9a、9bを形成するので、外部電極9a、9bの表面に突起部が形成されることもなく所望膜厚を有する電子部品を容易に製造することができる。
【0061】
すなわち、導電性ペースト中には加熱により粘度が低下するバインダ樹脂を含有していることから、部品素体1を溶剤が揮発しないような所定温度にまで加熱して高温状態とし、該部品素体の端部を導電性ペーストに接触させると、該端部近傍の導電性ペーストの粘度が低下して端部への付着量が低減する。したがって、溶剤が揮発しないように所定温度を調整することにより、端部への付着量を調整することができ、電極の膜厚を調整することが可能となる。また、上述したように導電性ペーストは加熱により粘度が低下することから、部品素体を導電性ペーストから引き離した場合に、導電膜が部品素体端部から垂れて突起部が形成されるのを回避することができる。
【0062】
そして、導電性ペーストからなる所定厚みのペースト層7を平板6上に形成し、部品素体1をペースト層7に浸漬させて部品素体1と前記導電性ペーストとを接触させているので、所望厚みに膜厚調整されかつ外観形状も良好で安定した電気特性を有する積層セラミックコンデンサ等の電子部品を製造することが可能となる。
【0063】
図8は本発明の他の実施の形態を示す要部詳細図であって、本第2の実施の形態では、回転駆動するローラと部品本体の端部とが接触するようにし、これにより部品素体1の両端部に外部電極を形成している。
【0064】
すなわち、本実施の形態では、塗布処理装置が、矢印I方向に回転駆動するローラ16と、導電性ペースト17が貯留されたペースト槽18と、ローラ16の近傍に配されたブレード19とを有している。
【0065】
そして、ローラ16を矢印I方向に回転させることにより、該ローラ16の外周には導電性ペーストが堆積されてペースト層が形成されると共に、ブレード19でペースト層の層厚が調整される。
【0066】
本実施の形態では、加熱炉5で加熱された高温状態の部品素体1を矢印J方向に搬送し、矢印I方向に回転するローラ16上のペースト層に浸漬するような形態で端部1aを接触させ、放熱し終わるまでに部品素体1をペースト層から引き離し、矢印K方向へと部品素体1を搬送させる。尚、この場合、第1の保持部材2とローラ16の回転速度とを同期させることにより、より一層の生産性向上を図ることが可能となる。
【0067】
そして、その後は第1の実施の形態と同様、乾燥させた後、部品素体1を反転させ、端部1bについても同様に導電性ペースト17を塗布して、外部電極を形成し、これにより外表面に突起部が形成されることなく所望膜厚に調整された積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0068】
このように本第2の実施の形態によれば、矢印I方向に回転駆動するローラ16の表面に前記導電性ペースト17からなるペースト層を形成し、部品素体1の端部1a、1bをローラ16の接線方向に添わせるような形態で前記端部を前記ペースト層に接触させているので、第1の実施の形態と同様、所望厚みに膜厚調整されかつ外観形状も良好で安定した電気特性を有する積層セラミックコンデンサ等の電子部品を製造することが可能となる。
【0069】
しかも、第1の保持部材2及び第2の保持部材10の搬送速度とローラ16の回転速度とを同期させることにより、より一層の生産性向上を図ることが可能となる。
【0070】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態では、第1及び第2の保持部材2、10は、表面に粘着面2a、10aを有するようにしているが、長尺状テープで形成してもよい。また、孔を形成した板状の金属フレームを弾性体で被覆して第1及び第2の保持部材2、10aを形成し、該孔に部品素体を挿入し、前記弾性体の弾性力で部品素体1を保持するようにしてもよい。
【0071】
また、上記実施の形態では、導電性ペーストは、導電性粉末、加熱により粘度が低下するバインダ樹脂、及び溶剤を含有しているが、必要に応じてガラス成分等のその他の添加成分を含有させてもよい。
【0072】
また、上記実施の形態で、塗布処理後に乾燥処理を行っているが、乾燥処理を半乾燥、又は乾燥処理を行わずに複数回の塗布処理を行ってもよい。特に、1回の塗布処理で形成される膜厚が薄いため、塗布処理の回数を調整することにより部品素体1の角部や最外層の膜厚を調整することが可能となる。
【0073】
また、上記実施の形態では、電子部品として積層セラミックコンデンサについて例示的に説明したが、外部電極を有する電子部品に広範に適用可能であり、例えば、単板型のセラミックコンデンサ、コイル部品、LC複合部品、圧電部品等にも同様に適用できるのはいうまでもない。
【0074】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例】
【0075】
まず、縦1.6mm、横0.8mm、厚み0.8mmの部品素体を用意した。
【0076】
また、導電性粉末にNi、バインダ樹脂にエチルセルロース樹脂(ガラス転移点:50℃)、溶剤にテレビン油(沸点:150℃)を用意し、これらを混合・分散させて導電性ペーストを作製した。
【0077】
そして、部品素体を50℃、100℃、160℃に加熱した。尚、加熱温度は、サーモグラフィで非接触で測定した。
【0078】
次いで、図4に示すように部品素体を保持部材に保持し、平板上に導電性ペーストが塗布されてペースト層に4秒間浸漬させ、ペースト層から引き離して乾燥させた。そして、形成された電極の膜厚を、部品素体を研磨した後、光学顕微鏡にて測定した。
【0079】
その結果、加熱温度が50℃の場合で膜厚は120μm、加熱温度が100℃の場合で膜厚は90μm、加熱温度が160℃の場合で膜厚は170μmであった。また、常温状態(25℃)の部品素体についても同様にして膜厚を測定したところ、150μmであった。
【0080】
以上より部品素体の加熱温度で膜厚を制御することができることが確認された。また、加熱温度が160℃の場合に膜厚が170μmとなって常温時よりも厚膜になった。これは溶剤の沸点を超える高温に部品素体を加熱したため、導電性ペーストの粘度が過度に高くなり、このため部品素体端部への付着量が増大したためと思われる。
【0081】
尚、ペースト層に浸漬する時間は、部品素体が放熱するまでの時間であることから部品素体の大きさに依存する。すなわち、より小型の部品素体、例えば縦0.4mm、横0.2mm、厚み0.2mmの場合は、ペースト層に浸漬する時間は2秒間で十分であることを別途確認した。
【産業上の利用可能性】
【0082】
電極の膜厚を所定厚みに容易に調整することができ、かつ外観形状も良好で安定した電気特性を有する積層セラミックコンデンサ等の電子部品を製造することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 部品素体
1a、1b 端部
6、13 平板
7、14 ペースト層(導電性ペースト)
9a、9b 外部電極(電極)
16 ローラ
17 導電性ペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略直方体形状に形成された部品素体の端部に導電性ペーストを塗布し、該端部に電極を形成する電子部品の製造方法であって、
前記導電性ペーストが、導電性粉末と、加熱により粘度が低下するバインダ樹脂と、溶剤とを含有し、
前記部品素体を、前記溶剤の沸点以下であって前記バインダ樹脂のガラス転移点以上の所定温度に加熱して高温状態とした後、前記部品素体の端部を前記導電性ペーストに所定時間接触させ、前記端部に前記導電性ペーストを塗布して前記電極を形成することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記所定温度は、50〜150℃であることを特徴とする請求項1記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記所定時間は、前記部品素体が放熱を終了して略周囲の雰囲気の温度に戻るまでの時間であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記所定時間は、2〜4秒であることを特徴とする請求項3記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記導電性ペーストからなる所定厚みのペースト層を平板上に形成し、前記部品素体を前記ペースト層に浸漬させて前記部品素体と前記導電性ペーストとを接触させることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
所定方向に回転駆動するローラの表面に前記導電性ペーストからなるペース層を形成し、
前記部品素体の前記端部を前記ローラの接線方向に添わせるような形態で前記端部を前記ペースト層に接触させることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−42081(P2013−42081A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179637(P2011−179637)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】