説明

電子部品加工用粘着テープ

【課題】高い粘着力と剥離性とを有し、かつ、電子部品加工時に当該電子部品の横ズレの発生しない電子部品加工用粘着テープを提供する。
【解決手段】基材の一方の面に粘着剤層が形成された電子部品加工用粘着テープであって、前記粘着剤層は、総厚さが20μm以下、基材側の内層と表面側の外層との二層構造からなり、前記内層は、非硬化性の粘着剤と、刺激により気体を発生する気体発生剤とを含有し、かつ、ゲル分率が80%以下であり、上記外層は、光及び/又は熱による刺激により架橋する硬化性の粘着剤を含有する電子部品加工用粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い粘着力と剥離性とを有し、かつ、電子部品加工時に当該電子部品の横ズレの発生しない電子部品加工用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
基材の少なくとも一方の面に粘着剤層が形成された粘着テープが、電子部品の加工において用いられている。例えば、積層セラミックコンデンサは、セラミックグリーンシートを数十〜数百層に積層して加圧、加熱して押し固めて積層体を形成し、該積層体をダイシングした後、800〜1000℃に加熱して焼結させる方法により製造される。このセラミックグリーンシート積層体をダイシングする工程において、ダイシングテープと呼ばれる粘着テープが用いられている。
【0003】
ダイシングテープには、ダイシング時の衝撃によっても剥離が生じない程度の高い粘着力と、ダイシング後に不要となったときにセラミックグリーンシートを損傷することなく剥離できる剥離性とが要求される。このようなダイシングテープとして、基材の片面に熱膨張性マイクロカプセル等の発泡剤を含有した粘着剤層を有する発泡性粘着テープが提案されている(例えば、特許文献1等)。このような発泡性粘着テープは、充分な粘着力を発揮する一方、ダイシング後に加熱することにより熱膨張性マイクロカプセルが膨張することにより粘着剤層が大きく発泡する。これにより、粘着剤層の表面に凹凸が生じることから、被着体であるセラミックグリーンシートと粘着剤層との接着面積が減少して、容易に剥離することができる。特許文献1に記載された発泡性粘着テープは、セラミックグリーンシートのダイシング用とのみならず、電子部品の加工用として広く用いられるようになってきている。
【0004】
近年、ますます電子部品の小型化が求められるようになってきている。例えば、上述の積層セラミックグリーンコンデンサの場合でも、0.6×0.3mm角や0.4mm×0.2mm角等の、極端に小型化したものが求められるようになってきた。このような極端に小型化した電子部品の製造に従来の発泡性粘着テープを用いた場合、製品歩留まりが悪化してしまうことがあるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−43851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、従来の発泡性粘着テープを用いて小型の積層セラミックグリーンコンデンサを製造した場合に、製品歩留まりが悪化する原因を検討した。その結果、従来の発泡性粘着テープの粘着剤層の厚みに問題があることを突き止めた。極端に小型化した積層セラミックグリーンコンデンサでは、ダイシング時にもセラミックグリーンシートに対して極めて高精度なカッティングが要求される。ところが、ダイシングテープの粘着剤層が厚い場合には、粘着剤層の変形によって横ズレが発生してしまい、カッティング精度を低下させ、歩留まりの低下につながっていたものと考えられる。しかしながら、発泡性粘着テープの粘着剤層は、熱膨張性マイクロカプセルを含有させる必要があることから、ある程度の厚み(通常は45μm程度)が必要となる。粘着剤層に起因する横ズレを防止した両面粘着テープが求められていた。
【0007】
本発明は、高い粘着力と剥離性とを有し、かつ、電子部品加工時に当該電子部品の横ズレの発生しない電子部品加工用粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材の一方の面に粘着剤層が形成された電子部品加工用粘着テープであって、前記粘着剤層は、総厚さが20μm以下、基材側の内層と表面側の外層との二層構造からなり、前記内層は、非硬化性の粘着剤と気体発生剤とを含有し、かつ、ゲル分率が80%以下であり、上記外層は、光及び/又は熱による刺激により架橋する硬化性の粘着剤を含有する電子部品加工用粘着テープ。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ダイシング時の横ズレの発生が主に粘着テープの粘着剤層の厚さに依存していることを見出した。即ち、横ズレの発生を防止するためには、粘着テープの粘着剤層の厚さを20μm以下にする必要がある。
しかし、厚さ20μm以下の粘着剤層中に、熱膨張性マイクロカプセルを均一に分散させることは難しい。そこで、本発明者らは、熱膨張性マイクロカプセルに代えて、刺激により気体を発生する気体発生剤を用いることとした。刺激により気体を発生する気体発生剤は、熱膨張性マイクロカプセルのように粘着剤層を発泡させる機能を発揮できる一方、熱膨張性マイクロカプセルに比べてより粒子径を小さくすることも、粘着剤層中に溶解させることもできる。従って、気体発生剤を用いれば、熱膨張性マイクロカプセルを用いる場合に比べて、より粘着剤層を薄くすることができる。
【0010】
しかし、刺激により気体を発生する気体発生剤は、熱膨張性マイクロカプセルに比べると粘着剤層を発泡させる機能が小さく、充分に接着面積を減少させて粘着力を低減できるほどには凹凸が形成され難い。そこで、本発明者らは、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する内層上に、更に、光及び/又は熱による刺激により架橋する硬化性の粘着剤からなる外層を設けた。上記外層は、光及び/又は熱による刺激により架橋して、粘着力が低下する。従って、被着体(電子部品)との粘接着面に外層が直接接触する構成であれば、刺激を与えることにより、気体発生剤から気体が発生して表面に凹凸が形成され接着面積が低減するとともに、残る接着面積自体の粘接着力が低減していることから、極めて容易に被着体を剥離することができる。
【0011】
本発明の電子部品加工用粘着テープは、基材の一方の面に粘着剤層が形成された粘着テープである。
上記基材は特に限定されず、例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の透明な樹脂からなるシート、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート等が挙げられる。
【0012】
上記粘着剤層は、基材側の内層と表面側の外層との二層構造からなる。
上記内層は、非硬化性の粘着剤と、刺激により気体を発生する気体発生剤とを含有する。上記非硬化性の粘着剤層中で、上記気体発生剤に刺激を与えて気体を発生させれば、内層全体が発泡する。該内層の発泡により、粘着剤層の表面に凹凸が形成され、被着体(電子部品)との接着面積が減少する。
【0013】
上記非硬化性の粘着剤は、例えば、アクリル系、ゴム系、ウレタン系、シリコーン系等を粘着主成分とする粘着剤等が挙げられる。なかでもアクリル系粘着剤が、物性及び経済性の点で好適である。
上記アクリル系粘着剤は特に限定されないが、粘着性と凝集性のバランス等から、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が−50℃以下の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを主成分とし、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の低級のアルコールの(メタ)アクリル酸エステルモノマーを添加したモノマー組成物を(共)重合してなるアクリル系粘着剤が好適である。
【0014】
上記ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が−50℃以下の(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、例えば、炭素数1〜12のアルキル基を有するアルコールの(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。なかでも、炭素数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好適である。具体的には、(メタ)アクリル酸nーブチル、(メタ)アクリル酸2ーエチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸nーオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルモノマーは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0015】
上記アクリル系粘着剤は、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外に、これらと共重合可能な他のモノマーが共重合されたものでもかまわない。
上記他のモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマー又はその無水物や、2ーヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4ーヒドロオキシブチルアクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、カプロラクトン変成(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー等が挙げられる。これらの他のモノマーは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
上記アクリル系粘着剤は、上記モノマー組成物を溶媒中で(共)重合した溶剤型アクリル粘着剤であってもよいし、上記モノマー組成物を水中で(共)重合したエマルジョン系粘着剤であってもよい。また、上記モノマー組成物に紫外線照射してなる、塊状重合型粘着剤であってもよい。
【0017】
上記内層は、凝集力を向上させる目的で、更に架橋成分を含有してもよい。
上記架橋成分は、例えば、脂肪族イソシアネート類や、ポリイソシアネート類や、メラミン、メチロール類等が挙げられる。
【0018】
上記刺激により気体を発生する気体発生剤は特に限定されないが、例えば、アゾ化合物、アジド化合物が好適に用いられる。アゾ化合物、アジド化合物は、光、熱等による刺激により窒素ガスを発生する。また、上記非硬化性の粘着剤としてアクリル系粘着剤を用いた場合、該アクリル系粘着剤に溶解可能であることから、上記内層を極めて薄くすることができる。更に、これらの気体発生剤は光による刺激によっても気体を発生することから、剥離時の刺激として光照射を選択することが可能になる。剥離時に加熱処理が不要であることから、剥離後のカットしたセラミックグリーンシートの再密着が発生するのを防止することもできる。
なお、本明細書において気体発生剤は、刺激により気体を発生する化合物を意味する。例えば、熱膨張性マイクロカプセルは、加熱によりシェル層内に封入された易揮発性化合物が揮発してシェル層を押し広げるものである。熱膨張性マイクロカプセルからは気体は発生しないことから、本明細書における気体発生剤には熱膨張性マイクロカプセルは含まれない。
【0019】
上記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルプロピル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−プロピル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−エチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドロレート、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラハイドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾイリン−2−イル]プロパン}ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミダイン)ハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシアシル)−2−メチル−プロピオンアミダイン]、2,2’−アゾビス{2−[N−(2−カルボキシエチル)アミダイン]プロパン}、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス(4−シアンカルボニックアシッド)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。
【0020】
上記アジド化合物としては、例えば、3−アジドメチル−3−メチルオキセタン、テレフタルアジド、p−tert−ブチルベンズアジド等や、3−アジドメチル−3−メチルオキセタンを開環重合することにより得られるグリシジルアジドポリマー等のアジド基を有するポリマー等が挙げられる。これらのアジド化合物は、光、熱及び衝撃等による刺激により窒素ガスを発生する。
【0021】
上記内層における上記気体発生剤の含有量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は50重量%である。上記気体発生剤の含有量が10重量%未満であると、刺激を与えても充分に上記内層を発泡させることができないことがあり、50重量%を超えると、上記内層を形成できないことがある。上記気体発生剤の含有量のより好ましい下限は20重量%、より好ましい上限は30重量%である。
【0022】
上記内層は、ゲル分率が80%以下である。上記内層のゲル分率が80%を超えると、刺激を与えても充分に発泡させることができないことがある。好ましくは65%以下である。ゲル分率の下限については特に限定されないが、好ましい下限は20%である。上記内層のゲル分率が20%未満になると、内層の凝集力が不充分となり、粘着剤層全体としての粘着力が低下することがある。
なお、本明細書においてゲル分率とは、ゲル分の含有量のことを意味する。上記ゲル分率は、例えば、上記内層をテトラヒドロフランに浸漬した後、乾燥させたものの重量と、浸漬前の内層の重量との比を測定することにより求めることができる。
【0023】
上記外層は、光及び/又は熱による刺激により架橋する硬化性の粘着剤を含有する。硬化性粘着剤を含有することにより、刺激を与えることにより弾性率が上昇し、被着体(電子部品)に対する粘接着力が著しく低下する。
【0024】
上記光及び/又は熱による刺激により架橋する硬化性の粘着剤は、例えば、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有するアクリル酸アルキルエステル系及び/又はメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーとを主成分とし、必要に応じて光重合開始剤を含有する光硬化型粘着剤や、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有するアクリル酸アルキルエステル系及び/又はメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーとを主成分とし、熱重合開始剤を含有する熱硬化型粘着剤等が挙げられる。このような光硬化型粘着剤又は熱硬化型粘着剤等の後硬化型粘着剤は、光の照射又は加熱により粘着剤層の全体が均一にかつ速やかに重合架橋して一体化するため、重合硬化による弾性率の上昇が著しくなり、粘接着力が大きく低下する。
【0025】
上記外層は、更に、上記気体発生剤を含有することが好ましい。上記外層は、上記硬化性の粘着剤からなることから、硬化後に気体発生剤から気体を発生させても上記外層はほとんど発泡しない。上記外層内で発生した気体は、上記外層を発泡させることなく、上記外層と被着体(電子部品)との界面に放出され、外層と被着体との接着面の少なくとも一部を剥離する。従って、上記外層が気体発生剤を含有する場合には、更に容易に被着体を剥離できることが期待できる。
【0026】
本発明の電子部品加工用粘着テープの、上記内層と外層とを合わせた総厚さの上限は20μmである。上記総厚さが20μmを超えると、横ズレの発生を抑えることができない。総厚さの好ましい上限は15μmである。
上記内層の厚さの好ましい下限は5μm、好ましい上限は15μmである。上記内層の厚さが5μm未満であると、上記内層を発泡させても充分な凹凸が形成されず、容易に剥離できないことがある。上記内層の厚さが15μmを超えると、総厚さを20μm以下とすることが困難となる。上記内層の厚さのより好ましい下限は9μm、より好ましい上限は11μmである。
上記外層の厚さの好ましい下限は1μm、好ましい上限は10μmである。上記外層の厚さが1μm未満であると、実質的に均一な外層を形成することが困難である。上記外層の厚さが10μmを超えると、上記内層が発泡しても、表面に充分等凹凸が形成されず、容易に剥離できないことがある。上記外層の厚さのより好ましい下限は4μm、より好ましい上限は6μmである。
【0027】
本発明の電子部品加工用粘着テープを製造する方法は特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の基材の一方の面に、内層を構成する粘着剤をコンマコーター、ドクターナイフやスピンコーター等を用いて塗工し、仕掛かり原反を作製する工程と、離型処理を施したポリエチレンテレフタレートの離型シート等に外層を構成する粘着剤をコンマコーター、ドクターナイフやスピンコーター等を用いて塗工する工程と、上記基材上に内層が塗工された仕掛かり原反と、上記外層が塗工された離型シートとを、粘着剤面同士が重なるようにしてラミネートとする工程を有する方法により製造することができる。
【0028】
本発明の電子部品加工用粘着テープは、高い粘着力と剥離性とを有する。また、例えば小型の積層セラミックグリーンコンデンサを製造する際のダイシングテープとして用いた場合でも、横ズレが発生することなく、高い歩留まりで製造することができる。
本発明の電子部品加工用粘着テープは、積層セラミックグリーンコンデンサ用のダイシングテープのほか、広範囲に一般的に行われている半導体チップのダイシング用テープ等の用途に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、高い粘着力と剥離性とを有し、かつ、電子部品加工時に当該電子部品の横ズレの発生しない電子部品加工用粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
(1)内層用粘着剤1の調製
下記の化合物を酢酸エチルに溶解させ、紫外線を照射して重合を行い、重量平均分子量60万のアクリル共重合体を得た。
・2−エチルへキシルアクリレート 97.5重量部
・2−ヒドロキシエチルアクリレート 2.5重量部
・アクリル酸 2.0重量部
・光重合開始剤 0.2重量部
更に、反応後のアクリル共重合体を含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、ベンゾフェノン0.5重量部、ポリイソシアネート1.0重量部、グリシジルアジドポリマー(GAP5003;日本油脂社製)を20重量部、2,4−ジエチルチオキサントン5重量部を混合して、アジド化合物を含有する内層用粘着剤1の酢酸エチル溶液を調製した。
【0032】
(2)外層用粘着剤1の調製
下記の化合物を酢酸エチルに溶解させ、紫外線を照射して重合を行い、重量平均分子量70万のアクリル共重合体からなる光硬化性粘着剤の酢酸エチル溶液を得た。
・2エチルヘキシルアクリレート 91重量部
・ブチルアクリレート 3重量部
・アクリル酸 2重量部
・2−ヒドロキシエチルアクリレート 4重量部
・光重合開始剤 0.2重量部
(イルガキュア651、50%酢酸エチル溶液)
・ラウリルメルカプタン 0.01重量部
得られた光硬化性粘着剤の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2−イソシアナトエチルメタクリレート3.5重量部を加えて反応させ、更に、反応後の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、光重合開始剤(イルガキュア651)5重量部、ポリイソシアネート1.0重量部を混合し外層用粘着剤1の酢酸エチル溶液を調製した。
【0033】
(3)粘着テープの作製
内層用粘着剤1の酢酸エチル溶液を、片面にコロナ処理を施した厚さ50μmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのコロナ処理を施した面上に乾燥皮膜の厚さが約10μmとなるようにドクターナイフで塗工し、110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。乾燥後に粘着剤層の表面に離型処理が施されたPETフィルムをラミネートした。このときの粘着剤のゲル分率は50%であった。
【0034】
一方、外層用粘着剤1の酢酸エチル溶液を、表面に離型処理が施されたPETフィルムの離型処理面上に乾燥皮膜の厚さが約3μmとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。
【0035】
次いで、得られた内層用粘着剤付き仕掛り原反の離型処理PETフィルムを剥がし、内層用粘着剤層上に外層用粘着剤層を積層するように貼り合わせた。その後、40℃、3日間静置して養生を行った。これにより粘着剤が2層構成で設けられ、その表面を離型処理施されたPETフィルムで保護された粘着テープを得た。
【0036】
(実施例2)
実施例1で用いた内層用粘着剤1に配合したグリシジルアジドポリマー(GAP5003;日本油脂社製)の代わりに2,2’−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)を20重量部配合した以外は実施例1と同様の方法により粘着テープを得た。
このときの内層用粘着剤のゲル分率は55%であった。
【0037】
(実施例3)
共重合後の外層用粘着剤溶液に2,2’−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)を15重量部配合した以外は実施例1と同様の方法により粘着テープを得た。このときの内層用粘着剤のゲル分率は50%であった。
【0038】
(実施例4)
内層用粘着剤1の乾燥皮膜の厚さを15μmにした以外は実施例1と同様の方法により粘着テープを得た。このときの内層用粘着剤1のゲル分率は50%であった。
【0039】
(実施例5)
内層用粘着剤1に配合しているポリイソシアネート量を0.5重量部にした以外は実施例1と同様の方法により粘着テープを得た。このときの内層用粘着剤1のゲル分率は25%であった。
【0040】
(実施例6)
内層用粘着剤1に配合しているポリイソシアネート量を4.0重量部にした以外は実施例1と同様の方法により粘着テープを得た。このときの内層用粘着剤1のゲル分率は80%であった。
【0041】
(実施例7)
内層用粘着剤1に配合しているポリイソシアネート量を0.5重量部とし、また外層用粘着剤の乾燥皮膜の厚さを10μmとした以外は実施例1と同様の方法により粘着テープを得た。このときの内層用粘着剤1のゲル分率は25%であった。
【0042】
(実施例8)
内層用粘着剤1の乾燥皮膜の厚さを5μm、外層用粘着剤1の乾燥皮膜の厚さを10μmとした以外は実施例1と同様の方法により粘着テープを得た。このときの内層用粘着剤1のゲル分率は50%であった。
【0043】
(実施例9)
内層用粘着剤1の乾燥皮膜の厚さを5μm、外層用粘着剤1の乾燥皮膜の厚さを2μmとした以外は実施例1と同様の方法により粘着テープを得た。このときの内層用粘着剤のゲル分率は50%であった。
【0044】
(比較例1)
下記の化合物を酢酸エチルに溶解させ、紫外線を照射して重合を行い、重量平均分子量60万のアクリル共重合体を得た。
・2−エチルへキシルアクリレート 97.5重量部
・2−ヒドロキシエチルアクリレート 2.5重量部
・アクリル酸 2.0重量部
・光重合開始剤 0.2重量部
更に、反応後のアクリル共重合体を含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、ポリイソシアネート1重量部、熱膨張性微粒子「松本油脂工業(株)製:マイクロスフィア「F−50D」30重量部を混合して、酢酸エチル溶液を調製した。これを片面にコロナ処理を施した厚さ50μmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのコロナ処理を施した面上に乾燥皮膜の厚さが約45μmとなるようにドクターナイフで塗工し、110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。 乾燥後の粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。乾燥後に粘着剤層の表面に離型処理が施されたPETフィルムをラミネートして粘着テープを得た。このときの粘着剤のゲル分率は50%であった。
【0045】
(比較例2)
内層用粘着剤1に配合しているポリイソシアネート量を5重量部とした以外は実施例1と同様の方法により粘着テープを得た。このときの内層用粘着剤1のゲル分率は88%であった。
【0046】
(比較例3)
内層用粘着剤1が乾燥皮膜の厚さが15μm、外層粘着剤層1が乾燥皮膜の厚さが10μmとなるように作成した以外は実施例1と同様の方法により粘着テープを得た。このときの内層用粘着剤1のゲル分率は50%であった。
【0047】
(比較例4)
内層用粘着剤1が乾燥皮膜の厚さが10μm、外層粘着剤層1が乾燥皮膜の厚さが15μmとなるように作成した以外は実施例1と同様の方法により粘着テープを得た。このときの内層用粘着剤1のゲル分率は50%であった。
【0048】
(比較例5)
内層用粘着剤1を用いて乾燥皮膜の厚さが15μmとなるようにコロナ処理PETフィルムのコロナ処理面に実施例1と同一方法にて塗工し、外層用粘着剤1を積層しない単一粘着剤層の粘着テープを得た。このときの粘着剤のゲル分率は50%であった。
【0049】
(比較例6)
外層用粘着剤1を用いて乾燥皮膜の厚さが15μmとなるようにコロナ処理PETフィルムのコロナ処理面に塗工し、粘着剤面に離型処理PETをラミネートして単一粘着剤層の粘着テープを得た。このときの外層用粘着剤1のゲル分率は60%であった。
【0050】
(評価)
実施例及び比較例にて製造した粘着テープについて、以下の方法により評価を行った。
結果を表1に示した。
【0051】
(1)横ズレ防止性の評価
得られた粘着テープの各々をグリーンシートに貼り合わせた。これを1005サイズに押切法にてカットして100個のカット済グリーンシートを得た。各々のカット済グリーンシートをメジャー付き顕微鏡にて観察し、横方向のサイズを測定した。横方向のサイズが50±5μmを逸脱しなかったものの数が全体の80%以上であった場合を「○」、80%未満であるた場合を「×」として評価した。
【0052】
(2)剥離性の評価
得られた粘着テープの各々をグリーンシートに貼り合わせた。これを1005サイズに押切法にてカットして100個のカット済グリーンシートを得た。各々のカット済グリーンシートを下側にし、粘着テープ面側から波長365nmにおける照度が50mW/cmとなるように高強度紫外線を40秒間照射した。照射終了後に落下したカット済グリーンシート数を計数し、90%以上がテープから剥離して落下していた場合を「○」、落下したカット済グリーンシートの数が90%未満であった場合を「×」として評価した。
【0053】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、高い粘着力と剥離性とを有し、かつ、電子部品加工時に当該電子部品の横ズレの発生しない電子部品加工用粘着テープを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に粘着剤層が形成された電子部品加工用粘着テープであって、
前記粘着剤層は、総厚さが20μm以下、基材側の内層と表面側の外層との二層構造からなり、
前記内層は、非硬化性の粘着剤と、刺激により気体を発生する気体発生剤とを含有し、かつ、ゲル分率が80%以下であり、
上記外層は、光及び/又は熱による刺激により架橋する硬化性の粘着剤を含有する
ことを特徴とする電子部品加工用粘着テープ。
【請求項2】
気体発生剤は、アゾ化合物又はアジド化合物であることを特徴とする請求項1記載の電子部品加工用粘着テープ。
【請求項3】
外層は、更に、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品加工用粘着テープ。

【公開番号】特開2010−202833(P2010−202833A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52311(P2009−52311)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】