説明

電子部品搭載装置

【課題】一つのZ軸駆動源で二つの搭載ヘッドの被駆動軸を昇降駆動するヘッド部を備えた電子部品搭載装置を提供する。
【解決手段】ヘッド部9は、一つのZ軸モータ28−1と、モータ回転軸に固設されたピニオンと、ピニオンを挟んで対向配置された2本のラック51−1、51−2と、これらのラックにそれぞれレール係合部材53−1、53−2、連結ブラケット52−1、52−2、移動ブラケット38−1、38−2を介して常に連結され、回転自在に保持される2つのスプライン軸37−1、37−2及びスプライン軸先端にそれぞれ備えられた2つの搭載ヘッド36を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品をプリント基板に搭載する電子部品搭載装置に係わり、更に詳しくは、一つのZ軸駆動源で二つ搭載ヘッドの被駆動軸を昇降駆動するヘッド部を備えた電子部品搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント基板(以下、単に基板という)にIC、抵抗、コンデンサ等多数のチップ状電子部品(以下、単に部品という)を搭載する電子部品搭載装置がある。このような電子部品搭載装置は、一般に、本体装置の基台上方の空間を前後左右に自在に移動するヘッド部を備えている。
【0003】
このヘッド部には、通常、上下に昇降可能で360度方向に回転可能な複数の搭載ヘッドが備えられ、これら複数の搭載ヘッドをそれぞれ個別に昇降駆動するモータが搭載ヘッドの数だけ備えられている。
【0004】
ヘッド部は、Y軸モータに駆動されるY軸レールとX軸モータに駆動されるX軸レールとにより、本体装置の基台上方を前後左右に高速に移動し、複数の搭載ヘッドにより部品供給装置から電子部品を取り出して、その電子部品をプリント基板上の所定の位置に搭載する。
【0005】
ところで、従来は、搭載ヘッドの被駆動軸のZ軸方向の駆動(昇降駆動)では、一つのZ軸駆動源(通常はサーボモータ、又はステッピンモータ)で一つの被駆動軸を動かすことが多かった。
【0006】
しかし、近年では、一つのZ軸駆動源で複数の被駆動軸を駆動するものが知られている。この場合、回転テーブルに保持した複数の被駆動軸の中から回転テーブルの回転位置によって所望の一つの被駆動軸を選択する、又はソレノイドを用いて複数の被駆動軸の中から所望の一つの被駆動軸を選択して被駆動位置に設定するなどが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一つのZ軸駆動源で一つの被駆動軸を駆動するのは、被駆動軸の数が増えると、それに応じて駆動源も増えるから、ヘッド部の製造コストばかりでなく、重量も増える。近年、ヘッド部には高速移動が要求されるから、ヘッド部の重量が増えると高速移動が阻害されると言う問題がある。
【0008】
また、一つのZ軸駆動源で複数の被駆動軸を駆動するものは、駆動源の数は一つであるからヘッド部の軽量化に有効であるとは言うものの、回転テーブル式にしてもソレノイド式であっても、所望の被駆動軸を選択する構造が複雑で、ヘッド部の大型化を招く点では上記と同様である。
【0009】
また、駆動源と被駆動軸との連結と連結解除の機構には、各部材間に間隙やガタが必然的に生じるので、早期に経時劣化が現れ、耐久性の点で劣るという問題がある。
【0010】
本発明の課題は、上記従来の実情に鑑み、一つのZ軸駆動源で二つの搭載ヘッドの被駆動軸を昇降駆動するヘッド部を備えた電子部品搭載装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電子部品搭載装置は、一つの回転駆動源と、該一つの回転駆動源に駆動伝達部材を介して常に連結されている二つの駆動伝達系と、該駆動伝達系に連結部材を介して連結された二つの被駆動体と、を有し、上記二つの被駆動体は、上記回転駆動源の回転方向の正逆切替により上記駆動伝達系を介して、一方が有効動作、他方が待機動作に、選択的に切り替えられるように構成される。
【0012】
この電子部品搭載装置において、例えば、上記二つの被駆動体の上記有効動作と上記待機動作は、それぞれ逆向きに移動する動作であるように構成される。
【0013】
そして、上記被駆動体は、例えば、電子部品をプリント基板に搭載する搭載ヘッドを含み、上記有効動作は、上記搭載ヘッドの上記電子部品を部品供給装置から取り出すときの昇降動作及び上記プリント基板へ上記電子部品を搭載するとき又はノズル交換するときの昇降動作であるように構成される。
【0014】
また、例えば、上記二つの被駆動体、及びこれら二つの被駆動体にそれぞれ対応する上記駆動伝達系及び上記連結部材は、ほぼ同重量になるように構成されるのが好ましい。
【0015】
また、この電子部品搭載装置において、例えば、上記回転駆動源は、モータであり、上記駆動伝達部材は、上記モータの回転軸に固設されたピニオンであり、上記駆動伝達系は、上記ピニオンを挟んで左右に配置され該ピニオンに噛合する2本のラックと、該2本のラックにそれぞれ対応する上記二つの被駆動体との間を連結するブラケットであるように構成してもよい。
【0016】
また、この電子部品搭載装置において、例えば、上記駆動伝達部材は上下のいずれか一つがモータの回転軸に直接固定され他の一つが装置のフレームに位置固定された2つのプーリであり、上記駆動伝達系は上記上下のプーリに掛け渡された歯付ベルトと該歯付ベルトと上記二つの被駆動体との間を連結するブラケットであるように変更することもできる。
【0017】
また、例えば、上記駆動伝達部材及び上記駆動伝達系は、上記モータの回転軸に直接固定したリンク部材と該リンク部材と上記二つの被駆動体との間を連結するブラケットであるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、一つのZ軸駆動源で二つ被駆動軸を駆動するので、軽量化に寄与するヘッド部を備えた電子部品搭載装置を提供することが可能となる。
【0019】
また、駆動源と被駆動軸との間に連結と連結解除を切り替える機構が無いので、間隙やガタによる経時劣化が少なく、したがって使用寿命の長いヘッド部を備えた電子部品搭載装置を提供することが可能となる。
【0020】
また、同様に駆動源と被駆動軸との間に連結と連結解除を切り替える機構が無いので駆動源の回転方向の切替だけで動作の切替を迅速に行うことができ、これにより、電子部品搭載のタクトが短縮化されて作業能率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、一実施の形態における電子部品搭載装置の外観斜視図である。同図に示すように、電子部品搭載装置(以下、本体装置という)1は、下保護カバー2に囲まれ上保護カバー3に覆われた基台4の内部及び上部に各種の装置が配設される。
【0022】
基台4の内部には、特には図示しないが各部を制御する制御回路や、搬入されてくるプリント基板(以下、単に基板という)を下から支持する支持プレート装置等を備えている。上保護カバー3の前面には液晶ディスプレイとタッチパネルからなる入力表示装置5が配設されており、外部操作により各種の指示を入力することができる。
【0023】
基台4の上には、中央に、固定と可動の1対の平行する基板案内レール6a及び6bが基板の搬送方向(X軸方向)に水平に延在して配設される。これらの基板案内レール6a及び6bの下部に接して、ループ状の複数のコンベアベルトが走行可能に配設される。
【0024】
コンベアベルトは、それぞれ数ミリ幅のベルト脇部を基板案内レール6a又は6bの下から基板搬送路に覗かせて、ベルト駆動モータにより駆動され、基板搬送方向に走行し、基板の裏面両側を下から支持しながら基板を搬送する。
【0025】
上記1対の基板案内レール6a及び6bを跨いで、基板搬送方向(X軸方向)と直角の方向(Y軸方向)に平行に延在する左右一対の固定レール(Y軸レール)7a及び7bが配設されている。これらY軸レール7a及び7bに長尺の移動レール(X軸レール)8が滑動自在に係合し、このX軸レール8に、基板に電子部品(以下、単に部品という)を搭載する作業を行うヘッド部9が滑動自在に懸架されている。
【0026】
上記のX軸レール8には、X軸モータ11が配設され、上記一方のY軸レール7aの端部には、Y軸モータ12が配設されている。X軸モータ11は、ヘッド部9をX軸レール8の長手方向(X軸方向)に進退移動させせるX軸方向駆動用のサーボモータである。
【0027】
また、Y軸モータ12は、X軸レール8をY軸レール7a及び7bに沿って前後(Y軸方向)に進退移動させるY軸方向駆動用のサーボモータである。これらのX軸モータ11及びY軸モータ12が制御回路からの指示により正逆両方向に自在に回転することにより、ヘッド部9がX軸方向及びY軸方向に自在に進退する。
【0028】
ヘッド部9には、詳しくは後述する複数の搭載ヘッドが備えられている。搭載ヘッドは上下方向に自在に昇降可能であると共に360度方向に回転可能な機構を備えている。この搭載ヘッドの先端には、部品吸着ノズル10が着脱自在に装着されている。
【0029】
また、基台4上の前部と後部には、夫々部品供給ステージ13a及び13bが配設されている。この部品供給ステージ13a及び13bには、特には図示しないが、多数の部品を保持したテープを巻着したリールを着脱自在に備えたテープカートリッジ方式の部品供給装置が多数載設される。
【0030】
あるいは、テープカートリッジ方式の部品供給装置に代えて、複数枚のパレットを備えたトレイ方式の部品供給装置の部品供給部がステージ上方に挿入されて本体装置に係合する。
【0031】
この部品供給ステージ13aと基板案内レール6aの間に、複数の部品吸着ノズル10を交換可能に保持するツールチェンジャーとも呼称されるノズル交換器14が基台4に固定して配置され、そのノズル交換器14に隣接して、部品吸着ノズル10に吸着された部品を画像認識するための照明具付き部品認識用カメラ15が配置されている。
【0032】
上記のヘッド部9は、屈曲自在で内部が空洞な帯状のチェーン体16a及び16bに保護かつ収容されている複数本の不図示の信号コードによって本体装置の中央制御部と連結されている。ヘッド部9は、これらの信号コードを介して中央制御部からは電力及び制御信号を供給され、中央制御部へは基板上の部品搭載位置の情報を示す画像データを送信する。
【0033】
このヘッド部9は、上述した移動レール8と固定レール7a及び7bにより、前後左右に自在に移動し、ノズル交換器14上で一時停止し、搭載ヘッドの先端に、これから吸着すべき部品に対応する所望の部品吸着ノズル10を交換装着する。
【0034】
次に、ヘッド部9は、搭載ヘッドの先端に着脱自在に装着した上記の部品吸着ノズル10により、部品供給ステージ13a又は13b上に載設または係合する部品供給装置から所望の部品を吸着(または把持)して、その部品を、本体装置1内に自動搬入されて所定の位置に位置決め固定されている基板上に搭載する。
【0035】
このとき、ヘッド部9は、上記部品の搭載に先立って、基板案内レール6aと部品供給ステージ13aの間に在ってノズル交換器14と並んで配設されている照明具付きの部品認識用カメラ15の上に移動し、その部品認識用カメラ15により、保持している部品の保持状態を撮像させ、その撮像された画像データを中央制御部に送信する。
【0036】
更に、ヘッド部9は、ヘッド部9内に配設されている基板認識用カメラ(図では見えない)により基板の位置マークを撮像して、その撮像データを中央制御部へ転送する。
【0037】
中央制御部は、部品認識用カメラ15により撮像された画像データと予め定められている部品の保持状態とに基づいて、ヘッド部9に部品の保持状態の補正を指示し、更に上記撮像された基板の位置マークの位置に基づいて、部品搭載実行時の補正を指示する。
【0038】
ヘッド部9は、中央制御部からの補正指示に従って保持状態を補正した部品を、基板上の所定の搭載位置に、指示された補正値にしたがって搭載する。
【0039】
図2は、上記のように構成される電子部品搭載装置1のシステム構成を示すブロック図である。同図に示すように、電子部品搭載装置1は、CPU20と、このCPU20にバス21で接続されたi/o(入出力)制御ユニット22及び画像処理ユニット23からなる制御部を備えている。
【0040】
上記のCPU20にはメモリ24が接続され、このメモリ24は、特には図示しないがプログラム領域とデータ領域を備えている。また、i/o制御ユニット22には、画像処理ユニット23を介して、基板照明装置25や部品照明装置26が接続されている。
【0041】
基板照明装置25は、画像認識用カメラ27と共にヘッド部6に備えられている。基板照明装置25は、画像認識用カメラ26が画像認識のために撮像する図1では図示していなかった基板17の部品搭載位置を照明する。
【0042】
また、部品照明装置26は、図1に示した照明具付き部品認識用カメラ15の照明具である。部品照明装置26は、部品認識用カメラ15が画像認識のために撮像する部品吸着ノズル10の先端に吸着された部品18を照明する。
【0043】
更に、i/o制御ユニット22には、それぞれのアンプ(AMP)を介して1個のX軸モータ11、1個のY軸モータ12、4個のZ軸モータ28、及び1個のθ軸モータ29が接続されている。
【0044】
X軸モータ11及びY軸モータ12の動作及びその駆動伝達系は前述した通りである。またZ軸モータ28及びθ軸モータ29の動作と駆動伝達系の詳細については後述する。
【0045】
上記の各アンプには、特には図示しないが、それぞれエンコーダが配設されており、これらのエンコーダにより各モータ(X軸モータ11、Y軸モータ12、Z軸モータ28、θ軸モータ29)の回転に応じたエンコーダ値がi/o制御ユニット22を介してCPU20に入力する。これにより、CPU20は、後述する各搭載ヘッドの前後、左右、上下の現在位置、及び回転角を認識することができる。
【0046】
更に、上記のi/o制御ユニット22には、バキュームユニット31が接続されている。バキュームユニット31はバキュームチューブ32を介して搭載ヘッドの部品吸着ノズル10に空気的に接続されている。
【0047】
このバキュームチューブ32には空圧センサ33が配設されている。バキュームユニット31は、部品吸着ノズル10に対しバキュームによって部品18を吸着させ、又はバキューム解除とエアブローとバキュームブレイク(真空破壊)によって吸着を解除させる。
【0048】
このとき、空圧センサ33からバキュームチューブ32内の空気圧データが電気信号としてi/o制御ユニット22を介しCPU20に出力される。
【0049】
これにより、CPU20は、バキュームチューブ32内の空気圧の状態を知って、部品吸着ノズル10によって部品18を吸着する準備が出来ているか否かを認識することができると共に、吸着された部品18が正常に吸着されているかを認識することができる。
【0050】
更に、上記のi/o制御ユニット22には、位置決め装置、ベルト駆動モータ、基板センサ、異常表示ランプ等が、それぞれのドライバを介して接続されている。
【0051】
位置決め装置は、前述したように電子部品搭載装置1の基台4内部において基板案内レール6aと6bの下方に配置され、装置内に案内されてくる基板17の位置決めを行う。
【0052】
ベルト駆動モータは案内レール6a及び6bに一体的に配設されている搬送ベルトを循環駆動する。基板センサは基板17の搬入と搬出を検知する。
【0053】
異常表示ランプは電子部品搭載装置1の動作異常や作業領域内の異物進入等の異常時に点灯又は点滅して異常発生を現場作業者に報知する。また、点滅又は点灯によって部品補充時期の接近したことを警告報知する。
【0054】
また、i/o制御ユニット22には、通信i/oインターフェース34、図1に示した入力表示装置5、記録装置35が接続されている。
【0055】
通信i/oインターフェース34は、例えばティーチング処理などを、例えばパーソナルコンピュータ等の他の処理装置で行う場合などに、これらの処理装置と有線又は無線で接続してCPU20との通信が可能であるようにする。
【0056】
記録装置35は、例えばハードディスク、MO、FD、CD−ROM/RW、フラッシュメモリ装置等の各種の記録媒体を装着可能であり、電子部品搭載装置1の部品搭載処理、その事前に行なわれる部品マスター作成処理、部品搭載ティーチング処理、部品搭載処理中における部品補充タイミングの監視処理等のプログラムや、部品ライブラリのデータ、CADからのNCデータ等の各種のデータを記録して保持している。
【0057】
次に、上記のように構成されて上記のように動作する本例の電子部品搭載装置1におけるヘッド部9の内部構成及び動作について説明する。
【0058】
図3は、上記実施の形態における電子部品搭載装置1のヘッド部9の内部構成を示す斜視図である。図3に示すヘッド部9は、8個の搭載ヘッド36を備えている。図1及び図2に示した部品吸着ノズル10は、搭載ヘッド36の先端に保持されている。
【0059】
各搭載ヘッド36はそれぞれ専有のスプライン軸37と一体になっている。各スプライン軸37は、詳しくは後述するが、それぞれ専有の移動ブラケット38により回転自在に保持され且つ上下位置を制御され、これも専有の軸ナット39により昇降自在に保持され且つ360度方向の回転を制御されるようになっている。
【0060】
ここで、先ず、スプライン軸37の構成及び動作について詳述する。
図4(a) は、1個のスプライン軸37とθ軸モータ29のみを取り出して示す側面図であり、同図(b) は、そのA−A´断面矢視図である。このスプライン軸37の構成及び動作を、先の図3及びこの図4(a),(b) を用いて説明する。
【0061】
上記の軸ナット39は、上板41及び下板42から成る固定ブラケット43(図1参照)により回転可能に且つ上下位置を固定されて支持されている。そして、軸ナット39には、それら上板41及び下板42の間において、歯付きプーリ44が一体に取り付けらている。尚、歯付きプーリ44は、軸ナット39と共に初めから旋盤等で一体に形成してもよい。
【0062】
歯付きプーリ44には歯付きベルト45が係合している。この歯付きベルト45は、図3では陰になって見えない(図4(a),(b) では図示省略)複数のアイドルプーリを介して8個全ての搭載ヘッド36の歯付きプーリ44と、θ軸モータ29の駆動軸46とに掛け回されている。
【0063】
スプライン軸37には、表面の軸方向に沿った2箇所にスプライン47が穿設されている。そして、軸ナット39の内面には、上記のスプライン47に対向する軸方向位置に適宜の間隔で複数箇所に、横断面が半円状のボール溝48が形成されている。
【0064】
このボール溝48に対応して、少なくとも1個のボール49が設けられている。各ボール49は、球のほぼ1/2をボール溝48に嵌入させ、残る球の1/2をスプライン47に係合させている。これにより、スプライン軸37は、軸ナット39に対して昇降自在に係合しながら、軸ナット39の回転に伴われて360度方向に所望の角度で回転する。
【0065】
図5は、図3に示すヘッド部9の右上部分の拡大図である。
図6は、図3に示すヘッド部9のZ軸モータ28の配設部分以外の部分をほぼ真上から見た斜視図である。以下、再び図3を用い、これらの図5及び図6も参照しながら、スプライン軸37(つまり搭載ヘッド36)の昇降機構について説明する。
【0066】
図3に示すように、下端に搭載ヘッド36を一体に取り付けられたスプライン軸37の上部は、移動ブラケット38等により回転自在に保持されている。移動ブラケット38は後述する他の連結部材を介してラック51(51−1〜51−8)に係合している。
【0067】
スプライン軸37は、図3に番号37を付与して示す2本(図5では37−1、37−2として示している)のほかに、更に6本のスプライン軸37(つまり搭載ヘッド36)がヘッド9に備えられている。
【0068】
合計8本のスプライン軸37は照明具付き基板認識用カメラ40を間にして4本ずつ左右に分かれて2つのブロックを形成している。図5に示す拡大斜視図は、基板認識用カメラ40の右側にあるブロックの4本のスプライン軸37の上部近傍の構成を示している。
【0069】
尚、図5には、4本のスプライン軸37のうち右側の前後2本一組に番号37−1、37−2を付与して示している。以下に説明するスプライン軸37回りの構成は、1ブロック内では左右対称な構成となっており、2つのブロック間ではそれぞれ同一の構成であるので、以下の説明では、代表的にプライン軸37−1、37−2について説明する。
【0070】
各ブロックの4本のスプライン軸37のうち、前後の2本のスプライン軸37(図5、図6の37−1、37−2)が一組となって後方の2本のラック51(図5、図6の51−1、51−2)にそれぞれ係合して、互いに逆方向に昇降する。
【0071】
図3に示す合計8本のラック51(51−1〜51〜8)は、2本一組となって、それぞれ1個のZ軸モータ28(28−1、28−2、28−3、28−4)により互いに逆方向に昇降駆動される。
【0072】
ラック51−1とスプライン軸37−1は(以下、図5、図6も参照)、移動ブラケット38−1、連結ブラケット52−1及びレール係合部材53−1を介して一体に連結されている。レール係合部材53−1は、鉛直方向に立設された案内レール54−1に、上下に摺動可能に嵌合している。
【0073】
ラック51−2とスプライン軸37−2についても、各ブラケットの形状は上記とやや異なるものの、上記と同様に、移動ブラケット38−2、連結ブラケット52−2及びレール係合部材53−2を介して一体に連結されている。レール係合部材53−2は、案内レール54−2に、上下に摺動可能に嵌合している。
【0074】
案内レール54(54−1、54−2、・・・)は、2本が一組となり、ヘッド部フレーム55(図3、図5参照)に固定されて鉛直方向に立設されたレール保持部材56(図3、図5、図6参照)の左右両面に固定して取り付けられている。
【0075】
これにより、ラック51−1が昇降すると、ラック51−1に連結されているレール係合部材53−1が案内レール54−1に案内されて上下に摺動する。レール係合部材53−1が上下に摺動することにより、これに連結されている連結ブラケット52−1及び移動ブラケット38−1を介してスプライン軸37−1が昇降する。
【0076】
ラック51−2とスプライン軸37−2の動作状態も、ラック51−1とスプライン軸37−1の場合と同様である。
【0077】
図7は、ラック51(51−1〜51−8)の、2本一組となって動作する動作状態を説明する図である。尚、図7には、動作が分かりやすいように、ラック51とZ軸モータ28(28−1〜28−4)の駆動軸、及びラック51に係合するピニオンのみを取り出して示している。
【0078】
図7に示すように、2本一組となっているラック51−1と51−2、51−3と51−4、51−5と51−6、及び51−7と51−8は、それぞれ歯面57を対向させて配置されている。
【0079】
この4箇所で対向する歯面に、4個のZ軸モータ28(28−1〜28−4、図3、図5参照)の回転軸58(58−1〜58−4)の先端にそれぞれ固設された4個のピニオン59(59−1〜59−4)が噛合している。
【0080】
同図において、右端の1組のラック51(51−1、51−2)及び左端の1組のラック51(51−7、51−8)は、それぞれ静止状態である。そして、中央にある2組のラック51(5−3と51−4及び51−5と51−6)は、これらのラック51の対向する歯面57に噛合するピニオン59−2及び59−3が、Z軸モータ28−2及び28−3の回転軸58−2及び58−3にそれぞれ回転駆動されたことにより、昇降動作中である。
【0081】
これら動作中のラック51のうち、左右の静止状態のラック51−1、51−2、51−7及び51−8よりも、高い位置にあるラック51−3と51−6は、対応する搭載ヘッド36が部品搭載作業に従事していない「待機動作」中である。
【0082】
そして、左右の静止状態のラック51−1、51−2、51−7及び51−8よりも、低い位置にあるラック51−4と51−5は、対応する搭載ヘッド36が部品搭載作業にしていて「有効動作」中である。
【0083】
有効動作中の搭載ヘッド36に対応するラック51−4と51−5は、搭載ヘッド36による部品吸着時または部品搭載時には、図7に示すように降下する。ラック51−4の場合はピニオン59−2が反時計回り方向に回転したことにより降下しており、ラック51−5の場合はピニオン59−3が時計回り方向に回転したことにより降下している。
【0084】
また、これらのラック51−4と51−5は、搭載ヘッド36が部品吸着のため又は部品登載のために移動中は、静止状態と同位置に戻る。ラック51−4の場合はピニオン59−2が時計回り方向に回転することにより静止位置に戻り、ラック51−5の場合はピニオン59−3が反時計回り方向に回転することにより静止位置に戻る。
【0085】
有効動作中の搭載ヘッド36に対応するラック51は、動作中は静止位置より上に移動することはなく、静止位置と静止位置よりも下方の位置との間で昇降動作する。逆に、待機動作中の搭載ヘッド36に対応するラック51は、動作中は静止位置より下に移動することはなく、静止位置と静止位置よりも上方の位置との間で昇降動作する。
【0086】
いずれにしても、二つの被駆動体である2つの搭載ヘッド36の有効動作と待機動作はピニオン59を間に挟んで対向配置された2つのラック51により、それぞれ逆向きに移動する動作となる。
【0087】
また、このように一組となってそれぞれ逆向きに上下移動する二つの搭載ヘッド36、及びこれら二つの搭載ヘッド36にそれぞれ対応する駆動伝達系及び連結部材においては、上下移動の切替の際に、1つの駆動源から2つに別れる駆動伝達系に加わる反動を低減することができるように、ほぼ同重量になるように構成することが好ましい。
【0088】
このように、本実施の形態によれば、一つの回転駆動源、例えばZ軸モータ28−1等に、駆動伝達部材、例えばピニオン59−1等を介して、常に連結されている駆動伝達系、例えばラック51−1、51−2等と、この駆動伝達系に連結部材、例えばレール係合部材53−1、53−2、連結ブラケット52−1、52−2、移動ブラケット38−1、38−2等を介して連結された二つの被駆動体、例えばスプライン軸37−1、37−2、2つの搭載ヘッド36等と、を有し、二つの被駆動体は、回転駆動源の回転方向の正逆切替により駆動伝達系を介して、一方が有効動作、他方が待機動作に、選択的に切り替えられる。
【0089】
上記のような、例えばラック51(つまり搭載ヘッド36)の有効動作と待機動作の選択的な切り替えは、ピニオン59の所定方向への回転量により決定されると共に、その後の部品吸着と部品搭載の動作、及び部品供給装置と基板との間の移動の動作は、上記決定された位置からのピニオン59による正逆両方向の回転によって達成される。
【0090】
これらピニオン59の回転方向及び回転量の制御は、図2に示したCPU20によってi/o(入出力)制御ユニット22を介して行われるZ軸モータ28への回転制御によって実行される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】一実施の形態における電子部品搭載装置の外観斜視図である。
【図2】一実施の形態における電子部品搭載装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図3】一実施の形態における電子部品搭載装置のヘッド部の内部構成を示す斜視図である。
【図4】(a) はヘッド部の1個のスプライン軸とθ軸モータのみを取り出して示す側面図、(b) はそのA−A´断面矢視図である。
【図5】図3に示すヘッド部の右上部分の拡大図である。
【図6】図3に示すヘッド部のZ軸モータの配設部分以外の部分をほぼ真上から見た斜視図である。
【図7】ラックの2本一組となって動作する動作状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0092】
1 電子部品搭載装置(本体装置)
2 下保護カバー
3 上保護カバー
4 基台
5 入力表示装置
6a、6b 基板案内レール
7a、7b 固定レール(Y軸レール)
8 移動レール(X軸レール)
9 ヘッド部
10 部品吸着ノズル
11 X軸モータ
12 Y軸モータ
13a、13b 部品供給ステージ
14 ノズル交換器
15 照明具付き部品認識用カメラ
16a、16b 帯状チェーン体
17 基板
18 部品
20 CPU
21 バス
22 i/o(入出力)制御ユニット
23 画像処理ユニット
24 メモリ
25 基板照明装置
26 部品照明装置
27 画像認識用カメラ
28(28−1、28−2、28−3、28−4) Z軸モータ
29 θ軸モータ
31 バキュームユニット
32 バキュームチューブ
33 空圧センサ
34 通信i/oインターフェース
35 記録装置
36 搭載ヘッド
37(37−1〜37−8) スプライン軸
38(38−1〜38−8) 移動ブラケット
39 軸ナット
41 上板
42 下板
43 固定ブラケット
44 歯付きプーリ
45 歯付きベルト
46 駆動軸
47 スプライン
48 ボール穴
49 ボール
51(51−1〜51−8) ラック
52(52−1〜52−8) 連結ブラケット
53(53−1〜53−8) レール係合部材
54(54−1〜54−8) 案内レール
55 ヘッド部フレーム
56 レール保持部材
57 歯面
58(58−1〜58−4) 回転軸
59(59−1〜59−4) ピニオン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの回転駆動源と、
該一つの回転駆動源に駆動伝達部材を介して常に連結されている2つの駆動伝達系と、
該駆動伝達系に連結部材を介して連結された二つの被駆動体と、
を有し、
前記二つの被駆動体は、前記回転駆動源の回転方向の正逆切替により前記駆動伝達系を介して、一方が有効動作、他方が待機動作に、選択的に切り替えられる、
ことを特徴とする電子部品搭載装置。
【請求項2】
前記二つの被駆動体の前記有効動作と前記待機動作は、それぞれ逆向きに移動する動作である、ことを特徴とする請求項1記載の電子部品搭載装置。
【請求項3】
前記被駆動体は、電子部品をプリント基板に搭載する搭載ヘッドを含み、
前記有効動作は、前記搭載ヘッドの前記電子部品を部品供給装置から取り出すときの昇降動作及び前記プリント基板へ前記電子部品を搭載するとき又はノズル交換するときの昇降動作である、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品搭載装置。
【請求項4】
前記二つの被駆動体、及びこれら二つの被駆動体にそれぞれ対応する前記駆動伝達系及び前記連結部材は、ほぼ同重量になるように構成される、ことを特徴とする請求項1、2又は3記載の電子部品搭載装置。
【請求項5】
前記回転駆動源は、モータであり、
前記駆動伝達部材は、前記モータの回転軸に固設されたピニオンであり、
前記駆動伝達系は、前記ピニオンを挟んで左右に配置され該ピニオンに噛合する2本のラックと、該2本のラックと該2本のラックにそれぞれ対応する前記二つの被駆動体との間を連結するブラケットである、
ことを特徴とする請求項1記載の電子部品搭載装置。
【請求項6】
前記駆動伝達部材は上下のいずれか一つがモータの回転軸に直接固定され他の一つが装置のフレームに位置固定された2つのプーリであり、前記駆動伝達系は前記上下のプーリに掛け渡された歯付ベルトと該歯付ベルトと前記二つの被駆動体との間を連結するブラケットである、
ことを特徴とする請求項1記載の電子部品搭載装置。
【請求項7】
前記駆動伝達部材及び前記駆動伝達系は、前記モータの回転軸に直接固定したリンク部材と該リンク部材と前記二つの被駆動体との間を連結するブラケットである、
ことを特徴とする請求項1記載の電子部品搭載装置。

【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−170767(P2009−170767A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9112(P2008−9112)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000178022)山形カシオ株式会社 (65)
【Fターム(参考)】