説明

電子部品用シートおよびその製造方法

【課題】電磁波シールドと放熱の両方の性能が優れた電子部品用シートおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】例えばフェライトやセンダスト等の磁性体粉末、例えばアルミナや窒化アルミニウム等の熱伝導性粉末および樹脂を含む電磁波吸収放熱層2と、電磁波吸収放熱層2上に積層された、例えば銅箔やアルミニウム箔等の金属箔、またはカーボン等の導電性粉末と樹脂を含む導電層であるシールド層3とを有する電子部品用シート1およびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電磁波の吸収およびシールドと、放熱促進の機能を有する電子部品用シートおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】パーソナルコンピュータや携帯電話等の各種電子機器の動作周波数は、ますます高周波化されている。これに伴い、これらの電子機器から発生する不要輻射ノイズの周波数もMHz帯からGHz帯へ高周波化されてきている。したがって、従来のノイズ対策部分ではノイズ減衰効果が不十分となってきている。
【0003】また、電子機器の小型化・軽量化が急速に進んでいることから、不要輻射が筐体内の部品に及ぼす影響についても問題となってきている。例えば、金属等の導電性材料からなる筐体を有する電子機器の場合、筐体に収納された部品から放射される不要輻射が筐体によって反射され、部品の動作に干渉することがある。さらに、筐体内の部品間隔も縮小されていることから、部品間での不要輻射の相互干渉がより顕著となっている。
【0004】これまで、多様なノイズ対策部品が開発されているが、電子機器の小型化により、ノイズ対策部品の設置スペースを確保することも困難となってきている。したがって、より高性能で設置スペースの少ないノイズ対策部品が望まれている。一方、電子機器の小型化・軽量化が急速に進行するのに伴い、上記のようなノイズの問題だけでなく、電子機器の発熱の問題が深刻化している。発熱により、電子部品が誤作動したり、電子機器の寿命が短くなったりする場合がある。
【0005】電磁波シールドと放熱の両方の作用をもつ電子部品用部材としては、例えば、特開平10−313191号公報に開示された電子部品用放熱材兼シールド材が挙げられる。この電子部品用放熱材兼シールド材は、一方の面から他方の面に連通する多数の微小孔が形成されたカーボン材と、ホットメルト型接着剤によりカーボン材に接着された金属箔層とを有する。この電子部品用放熱材兼シールド材は、金属箔層側を電子部品側にして電子部品に取り付けられる。
【0006】カーボン材としては、例えば炭素繊維の板状体が用いられる。カーボン材は電磁波シールド層と放熱層の両方として機能する。また、カーボン材の微小孔により放熱が促進される。一方、金属箔層としては、熱伝導性を考慮するとアルミニウムや銅が好適であることが記載されている。
【0007】また、特開2000−133985号公報には、電磁波シールド効果および放熱効果を有する電子部品用シールドカバーが開示されている。この電子部品用シールドカバーは導電性を有する筐体と、筐体表面に形成された電磁波損失材料からなる電磁波吸収層とを有する。
【0008】さらに、筐体には少なくとも一つの通気孔が設けられ、通気孔の直径は例えば、遮断しようとする電磁波の波長の1/4以下に設定される。電子部品用シールドカバーに収納される電子部品から発生する熱は、通気孔を介して筐体外部に放出される。
【0009】特開2000−101004号公報には、熱伝導率が高く、かつ電磁波シールド特性を有する放熱シートが開示されている。この放熱シートは、金属繊維を含むスラリーを湿式抄造および焼結した金属繊維シートに、熱伝導性接着剤を含浸、充填、または片面もしくは両面に積層して加工処理したものである。
【0010】金属繊維としては例えばステンレス繊維、チタン繊維、ニッケル繊維、真鍮繊維、銅繊維、アルミニウム繊維等が用いられる。また、熱伝導性接着剤はマトリクス樹脂に熱伝導性フィラーを混合したものであり、熱伝導性フィラーとしては例えばアルミニウム、金、銀、銅等の金属や、アルミナ、シリカ等の金属酸化物、あるいは窒化ボロン、窒化アルミニウム等が挙げられている。
【0011】特開2000−101004号公報には、金属繊維シートの片面または両面に熱伝導性接着剤を積層させた場合に比較して、金属繊維シートに熱伝導性接着剤を含浸または充填させた場合に、放熱シートの熱伝導の効率をより高くできることが記載されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の特開平10−313191号公報記載の電子部品用放熱材兼シールド材によれば、電磁波シールド層として例えばアルミニウムや銅からなる金属箔層が用いられており、特に高周波ノイズの遮断に適した磁性損失材料を用いることは記載されていない。
【0013】また、特開2000−133985号公報記載の電子部品用シールドカバーによれば、筐体に形成された通気孔を介して放熱が行われる。したがって、通気孔部分では電磁波が遮断されない。また、特に小型の電子機器の場合には、通気孔の面積が筐体の表面積に対して占める割合が大きくなり、電子部品の保護という筐体の本来の機能が果たせなくなる。
【0014】さらに、通気孔の周囲に均一かつ容易に電磁波吸収層を形成するためには、電磁波吸収層が塗膜であることが望ましい。例えば貼付等、塗布以外の方法で電磁波吸収層を形成する場合、通気孔を塞がないように電磁波吸収層を形成するか、あるいは、電磁波吸収層を形成後、通気孔部分の電磁波吸収層に開口部を形成する必要がある。
【0015】一方、特開2000−101004号公報記載の放熱シートによれば、金属繊維を加工した金属繊維シートが用いられる。したがって、金属繊維シートには細線加工が可能な金属を用いる必要がある。このような金属として、特開2000−101004号公報にはステンレス、チタン、ニッケル等が挙げられているが、耐熱性、耐錆性も考慮するとステンレスが特に好適であることが記載されている。一般に、フェライトの細線加工は困難であることから、特開2000−101004号記載の放熱シートにおいて、フェライト等の磁性損失材料を用いることは難しい。
【0016】上記の各種の電子部品用部材の他に、軟磁性体粉末をポリマー中に分散させたシート状のノイズ対策部品も開発されている。これは、磁性体の磁気損失を利用してノイズを効果的に吸収・抑制するものである。このようなノイズ対策部品の熱伝導率は十分に高くなく、一般に放熱特性が低い。放熱特性を改善する目的で、軟磁性体粉末に熱伝導性粒子を混合した電磁波吸収放熱シートも開発されている。
【0017】以上のように、電磁波シールドと放熱の両方の機能をもつ電子部品用部材が各種開発されているが、特に高周波ノイズを低減し、かつ放熱効率の高い製品は得られていない。本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、したがって本発明は、電磁波シールドと放熱の両方の性能が優れた電子部品用シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の電子部品用シートは、磁性体粉末、熱伝導性粉末および樹脂を含む電磁波吸収放熱層と、前記電磁波吸収放熱層上に積層された、導電性のシールド層とを有することを特徴とする。本発明の電子部品用シートは、好適には、前記電磁波吸収放熱層と前記シールド層との層間に接着剤層をさらに有することを特徴とする。
【0019】本発明の電子部品用シートは、好適には、前記磁性体粉末は軟磁性体粉末を含むことを特徴とする。本発明の電子部品用シートは、さらに好適には、前記磁性体粉末はフェライトを含むことを特徴とする。あるいは、本発明の電子部品用シートは、さらに好適には、前記磁性体粉末はセンダストを含むことを特徴とする。
【0020】本発明の電子部品用シートは、好適には、前記熱伝導性粉末はアルミナを含むことを特徴とする。あるいは、本発明の電子部品用シートは、好適には、前記熱伝導性粉末は窒化アルミニウムを含むことを特徴とする。本発明の電子部品用シートは、好適には、前記シールド層は金属箔を含むことを特徴とする。本発明の電子部品用シートは、さらに好適には、前記金属箔は銅箔を含むことを特徴とする。あるいは、本発明の電子部品用シートは、さらに好適には、前記金属箔はアルミニウム箔を含むことを特徴とする。あるいは、本発明の電子部品用シートは、好適には、前記シールド層はカーボン粉末と樹脂を含むことを特徴とする。
【0021】これにより、例えば電子部品の内部から外部に向かって放射される不要輻射を有効に低減することが可能となる。本発明の電子部品用シートは、例えば、電子回路を内蔵する筐体の外側に貼付したり、あるいは、半導体チップが実装された絶縁性基板に直接貼付したりすることが可能である。また、上記の本発明の電子部品用シートによれば、電磁波吸収放熱層とシールド層が適度な柔軟性をもつことから、曲面上に貼付したり、貼付箇所の形状に合わせて折り曲げたりすることも容易である。
【0022】上記の目的を達成するため、本発明の電子部品用シートは、磁性体粉末、熱伝導性粉末および樹脂を含む第1の電磁波吸収放熱層と、前記電磁波吸収放熱層上に積層された、導電性のシールド層と、前記シールド層上に積層された、磁性体粉末、熱伝導性粉末および樹脂を含む第2の電磁波吸収放熱層をさらに有することを特徴とする。
【0023】本発明の電子部品用シートは、好適には、前記第1の電磁波吸収放熱層と前記シールド層との層間に第1の接着剤層をさらに有することを特徴とする。本発明の電子部品用シートは、好適には、前記第2の電磁波吸収放熱層と前記シールド層との層間に第2の接着剤層をさらに有することを特徴とする。
【0024】本発明の電子部品用シートは、好適には、前記磁性体粉末は軟磁性体粉末を含むことを特徴とする。本発明の電子部品用シートは、さらに好適には、前記磁性体粉末はフェライトを含むことを特徴とする。あるいは、本発明の電子部品用シートは、さらに好適には、前記磁性体粉末はセンダストを含むことを特徴とする。
【0025】本発明の電子部品用シートは、好適には、前記熱伝導性粉末はアルミナを含むことを特徴とする。あるいは、本発明の電子部品用シートは、好適には、前記熱伝導性粉末は窒化アルミニウムを含むことを特徴とする。本発明の電子部品用シートは、好適には、前記シールド層は金属箔を含むことを特徴とする。本発明の電子部品用シートは、好適には、前記金属箔は銅箔を含むことを特徴とする。あるいは、本発明の電子部品用シートは、好適には、前記金属箔はアルミニウム箔を含むことを特徴とする。あるいは、本発明の電子部品用シートは、好適には、前記シールド層はカーボン粉末と樹脂を含むことを特徴とする。
【0026】これにより、電子部品の内部から外部に向かって放射される不要輻射と、電子部品の外部から内部に向かって侵入し、電子部品の動作に影響を与えるようなノイズとの両方を有効に低減することが可能となる。したがって、本発明の電子部品用シートは、例えば、電子回路を内蔵する筐体の内側または外側等、電磁波が両面から入射するような箇所に貼付することができる。また、上記の本発明の電子部品用シートによれば、第1および第2の電磁波吸収放熱層とシールド層が適度な柔軟性を有することから、曲面上に貼付したり、貼付箇所の形状に合わせて折り曲げたりすることも容易である。
【0027】上記の目的を達成するため、本発明の電子部品用シートの製造方法は、少なくとも磁性体粉末と熱伝導性粉末を樹脂と混練し、第1の混練物を調製する工程と、前記第1の混練物をシート状に延伸して硬化させ、電磁波吸収放熱層を形成する工程と、導電性のシールド層を形成する工程と、前記電磁波吸収放熱層と前記シールド層とを積層させる工程とを有することを特徴とする。
【0028】本発明の電子部品用シートの製造方法は、好適には、前記電磁波吸収放熱層と前記シールド層とを積層させる工程は、接着剤を用いて前記電磁波吸収放熱層と前記シールド層とを接着する工程を含むことを特徴とする。本発明の電子部品用シートの製造方法は、好適には、前記シールド層を形成する工程は、金属箔を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0029】本発明の電子部品用シートの製造方法は、好適には、前記シールド層を形成する工程は、少なくとも導電性粉末を樹脂と混練し、第2の混練物を調製する工程と、前記第2の混練物を延伸して硬化させる工程とを含むことを特徴とする。本発明の電子部品用シートの製造方法は、好適には、前記シールド層の前記電磁波吸収放熱層が形成されていない側の面に、少なくとも磁性体粉末、熱伝導性粉末および樹脂を含む第2の電磁波吸収放熱層を形成する工程をさらに有することを特徴とする。これにより、例えば電子部品の内部から外部に向かって放射される不要輻射を有効に低減できる電子部品用シートを、簡略な工程で製造することが可能となる。
【0030】また、上記の目的を達成するため、本発明の電子部品用シートの製造方法は、少なくとも磁性体粉末と熱伝導性粉末を樹脂と混練し、第1の混練物を調製する工程と、少なくとも導電性粉末を樹脂と混練し、第2の混練物を調製する工程と、前記第1および第2の混練物をそれぞれシート状に延伸しながら積層する工程と、延伸され積層された前記第1および第2の混練物を硬化させる工程とを有することを特徴とする。
【0031】本発明の電子部品用シートの製造方法は、好適には、前記シールド層の前記電磁波吸収放熱層が形成されていない側の面に、少なくとも磁性体粉末、熱伝導性粉末および樹脂を含む第2の電磁波吸収放熱層を形成する工程をさらに有することを特徴とする。
【0032】これにより、電子部品の内部から外部に向かって放射される不要輻射と、電子部品の外部から内部に向かって侵入し、電子部品の動作に影響を与えるようなノイズとの両方を有効に低減できる電子部品用シートを、簡略な工程で製造することが可能となる。
【0033】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の電子部品用シートおよびその製造方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(実施形態1)図1は本実施形態の電子部品用シートの断面図である。電子部品用シート1は電磁波吸収放熱層2とシールド層3とを有する。通常、電子部品用シート1は電磁波吸収放熱層2が不要輻射の発生源に近い側となり、シールド層3が不要輻射の発生源から遠い側となるように、電子部品に配置される。
【0034】電磁波吸収放熱層2は軟磁性体粉末および熱伝導性粉末を樹脂に混練して作製される。シールド層3は金属箔、あるいは導電性粉末を含有する層である。電磁波吸収放熱層2とシールド層3は、別途にシート状に形成してから接着剤を用いて貼り合わせる。あるいは、それぞれの材料を延伸しながら積層させ、その後、一体化された状態で硬化させることもできる。
【0035】電磁波吸収放熱層2は軟磁性体粉末として、例えばフェライトやセンダスト等を含有する。また、電磁波吸収放熱層2は熱伝導性粉末として、例えばアルミナや窒化アルミニウムを含有する。シールド層3は電磁波を反射する導電性材料を含有する。例えば、銅あるいはアルミニウム等からなる金属箔をシールド層3として用いることができる。あるいは、カーボン等の粉末を樹脂と混練し、シート状に加工したものをシールド層3として用いることができる。
【0036】上記の本実施形態の電子部品用シートによれば、電子部品の内部から外部に向かって放射される不要輻射が有効に低減される。本実施形態の電子部品用シートは、例えば、電子回路を内蔵するプラスチック製の筐体の外側に貼付したり、あるいは、半導体チップが実装された絶縁性基板等に直接貼付したりする場合に好適に用いられる。
【0037】また、上記の本実施形態の電子部品用シートによれば、電磁波吸収放熱層2が樹脂を含有する層であり、シールド層3が薄い金属箔あるいは樹脂を含有する層であることから、適度な柔軟性を有する。したがって、曲面上に貼付したり、貼付箇所の形状に合わせて折り曲げたりすることも容易である。
【0038】(実施形態2)図2は本実施形態の電子部品用シートの断面図である。電子部品用シート11は電磁波吸収放熱層12、シールド層13および電磁波吸収放熱層14が順に積層された構造を有する。電子部品用シート11は電磁波吸収放熱層12と電磁波吸収放熱層14のいずれか一方が不要輻射の発生源に近い側となり、他方が不要輻射の発生源から遠い側となるように、電子部品に配置される。
【0039】電磁波吸収放熱層12、14は軟磁性体粉末および熱伝導性粉末を樹脂に混練して作製される。電磁波吸収放熱層12、14の組成は同一であっても、異なっていてもいずれでもよい。シールド層13は金属箔、あるいは導電性粉末を含有する層である。電磁波吸収放熱層12とシールド層13は、別途にシート状に形成してから接着剤を用いて貼り合わせる。同様に、シールド層13と電磁波吸収放熱層14は、別途にシート状に形成してから接着剤を用いて貼り合わせる。あるいは、それぞれの材料を延伸しながら積層させ、その後、一体化された状態で硬化させることもできる。
【0040】電磁波吸収放熱層12、14は軟磁性体粉末として、例えばフェライトやセンダスト等を含有する。また、電磁波吸収放熱層12、14は熱伝導性粉末として、例えばアルミナや窒化アルミニウムを含有する。シールド層13は電磁波を反射する導電性材料を含有する。例えば、銅あるいはアルミニウム等からなる金属箔をシールド層13として用いることができる。あるいは、カーボン等の粉末を樹脂と混練し、シート状に加工したものをシールド層13として用いることができる。
【0041】上記の本実施形態の電子部品用シートによれば、電子部品の内部から外部に向かって放射される不要輻射と、電子部品の外部から内部に向かって侵入し、電子部品の動作に影響を与えるようなノイズとの両方が有効に低減される。したがって、本実施形態の電子部品用シートは、例えば、電子回路を内蔵する筐体の内側または外側等、電磁波が両面から入射するような箇所に貼付する場合に好適に用いられる。
【0042】また、上記の本実施形態の電子部品用シートによれば、電磁波吸収放熱層12、14が樹脂を含有する層であり、シールド層13が薄い金属箔あるいは樹脂を含有する層であることから、適度な柔軟性を有する。したがって、曲面上に貼付したり、貼付箇所の形状に合わせて折り曲げたりすることも容易である。
【0043】(実施形態3)図3は、上記の実施形態2に示す電子部品用シート(図2参照)を有する半導体装置の断面図である。図3に示す半導体装置21において、絶縁性基板22上には複数の半導体チップ23、24、25が実装されている。半導体チップ23、24、25は例えばGHzレベルの高周波回路を含む。絶縁性基板22および半導体チップ23、24、25はプラスチック製の筐体26内に収納されている。
【0044】電子部品用シート11は筐体26の内壁に、例えば接着剤を用いて貼付される。図2に示すように、電子部品用シート11は電磁波吸収放熱層12、シールド層13および電磁波吸収放熱層14が順に積層された構造を有する。ここで便宜上、筐体26の内壁に密接する側を電磁波吸収放熱層12とし、半導体チップ23、24、25に近い側を電磁波吸収放熱層14とする。
【0045】電磁波吸収放熱層12、14は軟磁性体粉末および熱伝導性粉末を含有するため、これらの層は入射する電磁波を吸収し、かつ、電子部品からの放熱を促進する。また、シールド層13は金属またはカーボンからなる導電層であり、シールド層13に入射する電磁波を反射する。
【0046】上記の構成の半導体装置21によれば、筐体26の外部から筐体26の内部に向かって侵入するノイズが、まず、電磁波吸収放熱層12により吸収される。電磁波吸収放熱層12を透過したノイズは、シールド層13により一部が反射される。電磁波吸収放熱層12およびシールド層13を透過する間に減衰したノイズは、電磁波吸収放熱層14により吸収されるため、さらに減衰する。これにより、筐体26外部から侵入し、半導体チップ22、23、24等の動作に影響を及ぼすノイズが有効に低減される。
【0047】また、電磁波吸収放熱層12、14が熱伝導性粉末を含有するため、半導体チップ22、23、24から効率的に放熱が行われる。半導体チップ22、23、24において発生する熱は、電磁波吸収放熱層12から筐体26への熱伝導により拡散する。
【0048】本発明の電子部品用シートの実施形態は、上記の説明に限定されない。例えば、上記の実施形態3において、電子部品用シート11は筐体26の一つの面の内側全面に形成されているが、電子部品用シート11を特に不要輻射が問題となる箇所に限定的に設けることも可能である。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0049】
【発明の効果】本発明の電子部品用シートによれば、不要輻射のノイズを低減し、かつ電子部品からの放熱を効率的に行うことが可能となる。本発明の電子部品用シートの製造方法によれば、電磁波シールドと放熱の両方の性能が高い電子部品用シートを簡略な工程で製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の実施形態1に係る電磁波吸収放熱シールドシートの断面図である。
【図2】図2は本発明の実施形態2に係る電磁波吸収放熱シールドシートの断面図である。
【図3】図3は本発明の実施形態3に係り、図2に示す電磁波吸収放熱シールドシートが適用された半導体装置の断面図である。
【符号の説明】
1、11…電子部品用シート、2、12、14…電磁波吸収放熱層、3、13…シールド層、21…半導体装置、22…絶縁性基板、23、24、25…半導体チップ、26…筐体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】磁性体粉末、熱伝導性粉末および樹脂を含む電磁波吸収放熱層と、前記電磁波吸収放熱層上に積層された、導電性のシールド層とを有する電子部品用シート。
【請求項2】前記電磁波吸収放熱層と前記シールド層との層間に接着剤層をさらに有する請求項1記載の電子部品用シート。
【請求項3】前記磁性体粉末は軟磁性体粉末を含む請求項1記載の電子部品用シート。
【請求項4】前記磁性体粉末はフェライトを含む請求項3記載の電子部品用シート。
【請求項5】前記磁性体粉末はセンダストを含む請求項3記載の電子部品用シート。
【請求項6】前記熱伝導性粉末はアルミナを含む請求項1記載の電子部品用シート。
【請求項7】前記熱伝導性粉末は窒化アルミニウムを含む請求項1記載の電子部品用シート。
【請求項8】前記シールド層は金属箔を含む請求項1記載の電子部品用シート。
【請求項9】前記金属箔は銅箔を含む請求項8記載の電子部品用シート。
【請求項10】前記金属箔はアルミニウム箔を含む請求項8記載の電子部品用シート。
【請求項11】前記シールド層はカーボン粉末と樹脂を含む請求項1記載の電子部品用シート。
【請求項12】磁性体粉末、熱伝導性粉末および樹脂を含む第1の電磁波吸収放熱層と、前記電磁波吸収放熱層上に積層された、導電性のシールド層と、前記シールド層上に積層された、磁性体粉末、熱伝導性粉末および樹脂を含む第2の電磁波吸収放熱層をさらに有する電子部品用シート。
【請求項13】前記第1の電磁波吸収放熱層と前記シールド層との層間に第1の接着剤層をさらに有する請求項12記載の電子部品用シート。
【請求項14】前記第2の電磁波吸収放熱層と前記シールド層との層間に第2の接着剤層をさらに有する請求項12記載の電子部品用シート。
【請求項15】前記磁性体粉末は軟磁性体粉末を含む請求項12記載の電子部品用シート。
【請求項16】前記磁性体粉末はフェライトを含む請求項15記載の電子部品用シート。
【請求項17】前記磁性体粉末はセンダストを含む請求項15記載の電子部品用シート。
【請求項18】前記熱伝導性粉末はアルミナを含む請求項12記載の電子部品用シート。
【請求項19】前記熱伝導性粉末は窒化アルミニウムを含む請求項12記載の電子部品用シート。
【請求項20】前記シールド層は金属箔を含む請求項12記載の電子部品用シート。
【請求項21】前記金属箔は銅箔を含む請求項20記載の電子部品用シート。
【請求項22】前記金属箔はアルミニウム箔を含む請求項20記載の電子部品用シート。
【請求項23】前記シールド層はカーボン粉末と樹脂を含む請求項21記載の電子部品用シート。
【請求項24】少なくとも磁性体粉末と熱伝導性粉末を樹脂と混練し、第1の混練物を調製する工程と、前記第1の混練物をシート状に延伸して硬化させ、電磁波吸収放熱層を形成する工程と、導電性のシールド層を形成する工程と、前記電磁波吸収放熱層と前記シールド層とを積層させる工程とを有する電子部品用シートの製造方法。
【請求項25】前記電磁波吸収放熱層と前記シールド層とを積層させる工程は、接着剤を用いて前記電磁波吸収放熱層と前記シールド層とを接着する工程を含む請求項24記載の電子部品用シートの製造方法。
【請求項26】前記シールド層を形成する工程は、金属箔を形成する工程を含む請求項25記載の電子部品用シートの製造方法。
【請求項27】前記シールド層を形成する工程は、少なくとも導電性粉末を樹脂と混練し、第2の混練物を調製する工程と、前記第2の混練物を延伸して硬化させる工程とを含む請求項25記載の電子部品用シートの製造方法。
【請求項28】前記シールド層の前記電磁波吸収放熱層が形成されていない側の面に、少なくとも磁性体粉末、熱伝導性粉末および樹脂を含む第2の電磁波吸収放熱層を形成する工程をさらに有する請求項24記載の電子部品用シートの製造方法。
【請求項29】少なくとも磁性体粉末と熱伝導性粉末を樹脂と混練し、第1の混練物を調製する工程と、少なくとも導電性粉末を樹脂と混練し、第2の混練物を調製する工程と、前記第1および第2の混練物をそれぞれシート状に延伸しながら積層する工程と、延伸され積層された前記第1および第2の混練物を硬化させる工程とを有する電子部品用シートの製造方法。
【請求項30】前記シールド層の前記電磁波吸収放熱層が形成されていない側の面に、少なくとも磁性体粉末、熱伝導性粉末および樹脂を含む第2の電磁波吸収放熱層を形成する工程をさらに有する請求項29記載の電子部品用シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2002−198686(P2002−198686A)
【公開日】平成14年7月12日(2002.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−397346(P2000−397346)
【出願日】平成12年12月27日(2000.12.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】