説明

電子部品装置の製造方法及び治具

【課題】被実装体に電子部品を接続する前に封止樹脂材を予め形成する先封止技術を使用する電子部品装置の製造方法において、電子部品の下側に信頼性よくアンダーフィル樹脂を形成できる新規の方法を提供する。
【解決手段】接続部14を備えた被実装体10に、未硬化の封止樹脂材20を介して、電子部品30のバンプ電極32を押し込むことにより、バンプ電極32が接続部14上に配置され、電子部品30の下に封止樹脂材20が形成された積層部材5を得る工程と、支持板42上に積層部材5及びシート材44を配置し、支持板42とシート材40とを備えた治具40の内部の空気を排気して真空状態とすることにより、積層部材5をシート材44で加圧する工程と、積層部材5を加圧した状態で加熱処理することにより、電子部品30の下にアンダーフィル樹脂22を得ると共に、電子部品30のバンプ電極32を被実装体10の接続部14に接続する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品装置の製造方法及び治具に係り、さらに詳しくは、配線基板の上に半導体チップがフリップチップ実装された半導体装置の製造などに適用できる電子部品装置の製造方法及びその方法で使用される治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線基板に半導体チップがフリップチップ実装されて構成される半導体装置がある。そのような半導体装置では、半導体チップが配線基板にフリップチップ実装された後に、半導体チップの周囲に樹脂が塗布され、毛細管現象を利用して半導体チップの下側の隙間に封止樹脂が充填される。
【0003】
近年では、工程削減などを目的として、半導体チップを実装する前に配線基板の上に未硬化の封止樹脂を予め形成しておき、半導体チップのバンプを封止樹脂に押し込むことにより、半導体チップをフリップチップ実装して封止する先封止技術が開発されている。
【0004】
特許文献1には、回路基板のはんだバンプが形成された領域にアンダーフィル材を形成し、半導体チップの電極を回路基板のはんだバンプに圧接した後に、アンダーフィル材を加熱して硬化させることが記載されている。
【0005】
特許文献2には、基板の上に実装されたSAW素子と樹脂フィルムを、ガスバリア性を備えた袋の中に入れ、密封する減圧パック工程を行うことにより、SAW素子を封止樹脂部で封止することが記載されている。
【0006】
特許文献3には、フリップチップ素子のバンプが形成された面に接着シートを備えており、基板へのフリップチップ接続時の加熱により接着シートが破断し、フリップチップ素子と基板の間に樹脂が充填されることが記載されている。
【0007】
特許文献4には、多段構成の半導体モジュールの製造方法において、半導体チップが実装された樹脂基板を、接着部材を介して積層し、加熱及び加圧を行うことにより、半導体チップを接着部材で封止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−286302号公報
【特許文献2】WO2005/071731
【特許文献3】特開2002−280401号公報
【特許文献4】特開2006−303114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
後述する関連技術の欄で説明するように、関連技術の先封止技術では、配線基板上に未硬化の封止樹脂材を貼付するときに、大気雰囲気で行うため、封止樹脂材にボイド(空洞)が発生しやすい。
【0010】
また、半導体チップを剛体板で封止樹脂材に強く押し込む必要があるので、半導体チップが横方向に位置ずれして配置されることが多く、十分な位置精度が得られない問題がある。
【0011】
また、半導体装置の十分な信頼性を確保するためには、アンダーフィル樹脂は、半導体チップの側面下部からなだらかに傾斜して広がるフィレット(はみ出し部位)が形成された状態で充填されることが望ましい。
【0012】
しかしながら、関連技術では、剛体板で半導体チップを封止樹脂材に押し込む際に、半導体チップの側面から外側に樹脂が押し出されて半円状にはみ出して形成されるため、信頼性が必ずしも十分ではない。
【0013】
本発明は以上の課題を鑑みて創作されたものであり、被実装体に電子部品のバンプ電極を接続する前に封止樹脂材を予め形成する先封止技術を使用する電子部品装置の製造方法において、電子部品の下側に信頼性よくアンダーフィル樹脂を形成できる新規の方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、電子部品装置の製造方法に係り、接続部を備えた被実装体に、未硬化の封止樹脂材を介して、電子部品のバンプ電極を押し込むことにより、前記バンプ電極が前記接続部上に配置され、前記電子部品の下に前記封止樹脂材が形成された積層部材を得る工程と、支持板上に前記積層部材を配置し、前記積層部材上にシート材を配置し、前記支持板と前記シート材とを備えた治具の内部の空気を排気して真空状態とすることにより、前記積層部材を前記シート材で加圧する工程と、前記積層部材を前記シート材で加圧した状態で、加熱処理することにより、前記封止樹脂材を硬化させて前記電子部品の下にアンダーフィル樹脂を得ると共に、前記電子部品のバンプ電極を前記被実装体の接続部に接続する工程とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明では、まず、被実装体(配線基板など)に未硬化の封止樹脂材を介して電子部品(半導体チップや配線基板など)のバンプ電極を押し込む。これにより、バンプ電極が被実装体の接続部上に配置され、電子部品の下側に封止樹脂材が形成された積層部材を得る。
【0016】
好適な態様では、フィルム状の封止樹脂材が被実装体の上及び電子部品のバンプ電極の面のいずれかに真空雰囲気で貼付される。これにより、封止樹脂材にボイドが発生することが防止される。
【0017】
次いで、支持板とその上に配置されるシート材とを備えた治具が用意される。そして、治具の中に積層部材を配置し、治具の内部の空気を排気して真空状態とすることにより、シート材を積層部材に吸着させて積層部材に大気圧の荷重を均一にかける。これにより、電子部品の横方向への位置ずれが最小限に抑えられた状態で、電子部品が被実装体側に十分な圧力で加圧される。
【0018】
続いて、積層部材をシート材で加圧した状態で加熱処理することにより、封止樹脂材を溶融/硬化させてアンダーフィル樹脂を得る。このとき、アンダーフィル樹脂は、電子部品の側面下部からなだらかに傾斜して広がるフィレットが形成された状態で充填される。
【0019】
このとき同時に、電子部品のバンプ電極が被実装体の接続部に信頼性よく接続される。はんだ接続する場合は、リフローはんだ付けを行うための加熱処理で封止樹脂材の硬化が同時に行われる。
【0020】
これにより、先封止技術を使用して、狭ピッチのバンプ電極を備えた電子部品を被実装体に信頼性よく高歩留りで実装することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明では、先封止技術を使用する電子部品装置の製造方法において、電子部品の下側に信頼性よくアンダーフィル樹脂を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1(a)〜(d)は本発明に関連する関連技術の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図2】図2(a)〜(d)は本発明の第1実施形態の半導体装置(電子部品装置)の製造方法を示す断面図(その1)であり、積層部材を得るための第1の方法を示す図である。
【図3】図3(a)〜(c)は積層部材を得るための第2の方法を示す断面図である。
【図4】図4(a)〜(c)は積層部材を得るための第3の方法を示す断面図である。
【図5】図5(a)及び(b)は本発明の第1実施形態の半導体装置(電子部品装置)の製造方法で使用される治具を示す平面図及び断面図である。
【図6】図6(a)及び(b)は本発明の第1実施形態の半導体装置(電子部品装置)の製造方法を示す平面図及び断面図(その2)である。
【図7】図7(a)〜(c)は本発明の第1実施形態の半導体装置(電子部品装置)の製造方法を示す断面図(その3)である。
【図8】図8(a)〜(c)は本発明の第1実施形態の半導体装置(電子部品装置)の製造方法を示す断面図(その4)である。
【図9】図9(a)〜(c)は本発明の第2実施形態の積層配線基板(電子部品装置)の製造方法を示す断面図(その1)である。
【図10】図10(a)及び(b)は本発明の第2実施形態の積層配線基板(電子部品装置)の製造方法を示す断面図(その2)である。
【図11】図11(a)及び(b)は本発明の第2実施形態の積層配線基板(電子部品装置)の製造方法を示す断面図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0024】
(関連技術)
本発明の実施形態を説明する前に、本発明に関連する関連技術の問題点について説明する。図1は関連技術の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0025】
関連技術の半導体装置の製造方法では、まず、図1(a)に示すような配線基板100を用意する。配線基板100では、絶縁基板120の両面側に配線層140がそれぞれ形成されている。
【0026】
絶縁基板120には貫通電極160が設けられており、両面側の配線層140は貫通電極160を介して相互接続されている。絶縁基板120の下面には、配線層140のパッド部上に開口部が設けられたソルダレジスト180が形成されている。
【0027】
次いで、図1(b)に示すように、配線基板100のチップ実装領域に封止樹脂材200を貼付する。封止樹脂材200は未硬化の熱硬化型の樹脂フィルムからなる。このとき、封止樹脂材200を大気雰囲気で貼付するため、封止樹脂材200にボイドVが発生しやすく、十分な信頼性を確保できない。
【0028】
続いて、図1(c)に示すように、金バンプ320を備えた半導体チップ300を用意する。そして、半導体チップ300を配線基板100のチップ実装領域に位置合わせした状態で、半導体チップ300の金バンプ320を封止樹脂材200に軽く押し込んで配線層140に仮圧着する。
【0029】
続いて、図1(d)に示すように、下面に離型フィルム420を備えた剛体板400で半導体チップ300を下側に加圧した状態で加熱することにより、封止樹脂材200を溶融させて硬化させる。これにより、半導体チップ300の金バンプ320が配線基板100の配線層140に本圧着されると共に、半導体チップ300の下側の隙間にアンダーフィル樹脂220が充填される。
【0030】
半導体チップ300を剛体板400で加圧する際に、剛体板400を配線基板100が配置されたステージ(不図示)に対して平行に配置した状態で加圧することは困難である。このため、半導体チップ300が斜め方向に押されて位置ずれが発生しやすく、半導体チップ300の実装不良の原因となる。
【0031】
また、半導体チップ300を剛体板400で加圧しながら加熱する際に、半導体チップ300の下から外側にアンダーフィル樹脂220が押し出されて半円状にはみ出して形成される。
【0032】
半導体装置の十分な信頼性を確保するためには、アンダーフィル樹脂は、半導体チップ300の側面下部からなだらかに傾斜して広がるフィレットが形成された状態で充填されることが望ましく、関連技術では半導体装置の十分な信頼性が得られない。
【0033】
以下に説明する本実施形態の電子部品装置の製造方法は前述した不具合を解消することができる。
【0034】
(第1の実施の形態)
図2〜図8は本発明の第1実施形態の半導体装置(電子部品装置)の製造方法を説明するための図である。第1実施形態では、電子部品装置として、配線基板の上に半導体チップがフリップチップ実装された半導体装置を例に挙げて説明する。
【0035】
第1実施形態の半導体装置の製造方法では、図2(a)に示すように、まず、被実装体として配線基板10を用意する。配線基板10では、ガラスエポキシ樹脂などの絶縁基板12の両面側に配線層14がそれぞれ形成されている。
【0036】
絶縁基板12には厚み方向に貫通する貫通電極16が設けられており、両面側の配線層14は貫通電極16を介して相互接続されている。絶縁基板12の下面には、配線層14のパッド部上に開口部が設けられたソルダレジスト18が形成されている。
【0037】
配線基板10は多面取り用基板であり、半導体チップ(LSIチップ)が実装される複数のチップ実装領域Aが画定されている。
【0038】
次いで、図2(b)に示すように、配線基板10のチップ実装領域Aにフィルム状の封止樹脂材20を貼付する。封止樹脂材20は未硬化の熱硬化型の樹脂フィルム(NCF(Non Conductive Film)から形成され、好適にはエポキシ樹脂が使用される。このとき、真空装置(不図示)内の真空(減圧)雰囲気で配線基板10上に封止樹脂材20が貼付される。これにより、封止樹脂材20を貼付する際に、大気を巻き込まないので、封止樹脂材20にボイドが発生することが防止される。
【0039】
次いで、図2(c)及び(d)に示すように、電子部品として、金バンプ32を備えた半導体チップ30を用意する。そして、フリップチップボンダによって半導体チップ30を配線基板10のチップ実装領域Aに位置合わせした状態で、半導体チップ30の金バンプ32を封止樹脂材20に軽く押し込んで配線基板10の配線層14(接続部)に仮圧着する。
【0040】
このとき、温度:60〜80℃の加熱雰囲気で封止樹脂材20を軟化させた状態で行われる。この工程は、大気雰囲気で行ってもよいし、あるいは真空(減圧)雰囲気で行ってもよい。この時点では、封止樹脂材20は未硬化の状態となっている。
【0041】
この工程では、半導体チップ30の金バンプ30と配線基板10の配線層14との間に封止樹脂材20の薄皮が介在していてもよく、半導体チップ30の金バンプ32が封止樹脂材20に埋設された状態で配線層14の上に配置されていればよい。
【0042】
前述した第1の方法によって、図2(d)に示すように、半導体チップ30の下側の隙間に未硬化の封止樹脂材20が形成され、半導体チップ30の金バンプ32が配線基板10の配線層14(接続部)に仮圧着された積層部材5が得られる。
【0043】
図3には積層部材5を得るための第2の方法が示されている。図3(a)に示すように、まず、前述した図2(a)と同一構造の配線基板10と半導体(シリコン)ウェハ30aとを用意する。半導体ウェハ30aにはトランジスタや多層配線(不図示)が形成されており、多層配線の接続部に金バンプ32が設けられている。
【0044】
さらに、半導体ウェハ30aの金バンプ32の面に未硬化の封止樹脂材20を真空雰囲気で貼付することにより、金バンプ32を封止樹脂材20内に埋め込む。これにより、封止樹脂材20はボイドが発生することなく半導体ウェハ30aに貼付される。
【0045】
次いで、図3(b)に示すように、半導体ウェハ30aを切断することにより、金バンプ32が封止樹脂材20で埋め込まれた構造の個々の半導体チップ30を得る。続いて、温度:60〜80℃の加熱雰囲気で、半導体チップ30の封止樹脂材20の面を配線基板10のチップ実装領域Aに軽く押し込んで配置する。
【0046】
これにより、図3(c)に示すように、半導体チップ30の下側の隙間に未硬化の封止樹脂材20が形成されると同時に、半導体チップ30の金バンプ32が配線基板10の配線層14(接続部)に仮圧着される。このようにして、図2(d)と同一構造の積層部材5が得られる。
【0047】
図4には積層部材5を得るための第3の方法が示されている。図4(a)に示すように、まず、前述した図2(a)と同一構造の配線基板10を用意する。さらに、図4(b)に示すように、配線基板10のチップ実装領域Aに熱硬化型の液状樹脂20aを塗布し、乾燥させることにより未硬化の封止樹脂材20を形成する。このとき、液状樹脂20aの粘度を調整するなどして、封止樹脂材20が配線基板10のチップ実装領域Aからはみ出さないようにする。
【0048】
次いで、図4(c)に示すように、配線基板10のチップ実装領域Aに半導体チップ30を位置合わせした状態で、配線基板10上の封止樹脂材20に半導体チップ30の金バンプ32を軽く押し込む。
【0049】
これより、半導体チップ30の下側の隙間に未硬化の封止樹脂材20が形成されると同時に、半導体チップ30の金バンプ32が配線基板10の配線層14(接続部)に仮圧着される。このようにして、図2(d)と同一構造の積層部材5が得られる。
【0050】
以上のように、フィルム状の封止樹脂材20を配線基板10側に形成してもよいし、半導体チップ30側に形成してもよい。あるいは、液状樹脂20aを配線基板10に塗布して封止樹脂材20を形成してもよい。
【0051】
次に、前述した積層部材5が治具に配置された状態で、半導体チップ30の金バンプ32の本圧着と封止樹脂材20の硬化が行われる。図5には、第1実施形態で使用される治具40が示されている。
【0052】
図5(a)及び(b)に示すように、第1実施形態で使用される治具40は、支持板42とシート材44を備えている。支持板42上にはワークが配置されるワーク配置領域Bが画定されている。
【0053】
図5(b)に注目すると、支持板42は、下側部材42aの上に上側部材42bが配置されて構成される。下側部材42aの上面側の中央主要部には凹部Cが設けられており、下側部材42aと上側部材42bとの間に一体的なバキュームホールVHが構成されている。支持板42として、ステンレス鋼や熱可塑性樹脂などが使用される。
【0054】
また、上側部材42bには厚み方向に貫通してバキュームホールVHに連通する複数の排気穴42xが設けられている。また、下側部材42aの凹部Cの一端側の底部にバキュームホールVHに連通する排気口42yが設けられている。
【0055】
下側部材42aの排気口42yにはチューブ43(フレキシブル配管)が連結されており、チューブ43には真空バルブ45が装着されている。さらに、真空バルブ45の外側にはチューブ43を真空配管49と連結/分離するジョイント47(連結器)が設けられている。
【0056】
このようにして、支持板42の排気穴42x、バキュームホールVH及び排気口42yからチューブ43を介して支持板42の上側の空気を真空ポンプ(排気手段)に排気できるようになっている。
【0057】
支持板42の上方にはシート材44が配置されている。シート材44は離型性及び耐熱性を有するフレキシブルシートから形成され、好適にはテフロン(登録商標)シートが使用される。シート材44の周縁部がリング状のシール材46を介して支持板42の周縁部に取り付けられる。
【0058】
図5(a)及び(b)の例では、シート材44及びシール材46の四隅がねじ48(ボルト)によって支持板42に仮固定される。シール材46は、支持板42とシート材44と間の空間を真空引きする際にリークの発生を防止するために設けられ、ゴムリングなどが使用される。
【0059】
このようにして、支持板42のワーク配置領域Bにワークが配置され、ワークをシート材44で覆って収容する。その後に、支持板42の排気穴42xからシート材44の下側の空気が排気され、フレキシブルなシート材44がワークを包み込んで下側に加圧するようになっている。
【0060】
図6(a)及び(b)に示すように、上記した治具40の支持板42のワーク配置領域Bに、ワークとして前述した図2(d)(あるいは図3(c)又は図4(c))の積層部材5を配置する。図6(a)には、配線基板10の上に4つの半導体チップ30が実装された積層部材5が例示されており、各要素が透視的に描かれている。また、図6(b)では、積層部材5の配線基板10の配線層などが省略されている。
【0061】
このとき、支持板42の排気穴42xは、積層部材5を取り囲むように外側に配置されると共に、積層部材5の下側にも配置される。
【0062】
図6(a)に示すように、積層部材5の配線基板10には切断用のスリット10aが設けられており、積層部材5の下側に配置される支持板42の排気穴42xがスリット10aに連通するように配置される。
【0063】
続いて、支持板42の上にシール材46を介してシート材44を配置し、ねじ48によってシート材44を支持板42に仮固定する。
【0064】
図7(a)は、図6(b)の一つの半導体チップ30の近傍の部分拡大断面図であり、図6(b)の支持板42の上側部材42bから上側のみが描かれている。
【0065】
図7(a)に示すように、積層部材5は支持板42とシート材44との間の収容部Hに収容された状態となる。
【0066】
次いで、図7(b)に示すように、支持板42の排気穴42xから支持板42及び積層部材5とシート材44との間の収容部Hの空気を排気して真空(減圧)状態にする。このとき、収容部Hに連通する排気穴42x、及び積層部材5の配線基板10のスリット10aに連通する排気穴42xから空気が排気される。
【0067】
これにより、シート材44が下側に吸い込まれることでシート材44によって積層部材5が下側に加圧される。
【0068】
このようにすることにより、半導体チップ30及び配線基板10に大気圧の荷重を均一にかけることができる。つまり、図7(b)に示すように、半導体チップ30の上面、側面及び封止樹脂材20の側面が均一に加圧される。これにより、半導体チップ30の横方向への位置ずれが最小限に抑えられた状態で、半導体チップ30を配線基板10側に十分な圧力で加圧することができる。
【0069】
次いで、図7(c)に示すように、前述した図6(b)において、真空バルブ45を閉じることにより、支持板42のバキュームホールVHを真空状態に維持する。図7(c)では模式的に支持板42の排気穴42xが封止されたように描かれている。さらに、前述した図6(b)において、ジョイント47を開放してチューブ43を真空配管49から分離する。
【0070】
このようにして、支持板42とシート材44とで挟み込まれた積層部材5を真空配管49から取り外す。図7(c)には明記されていないが、図6(b)において、支持板42にチューブ43及び真空バルブ45が接続された状態で取り外される。
【0071】
続いて、図8(a)に示すように、図7(c)の構造体をホットプレートやアニール炉などの熱処理装置(不図示)に搬送する。そして、積層部材5をシート材44で加圧した状態で、180℃程度の温度で積層部材5を加熱処理する。これにより、封止樹脂材20の粘度が下がって溶融し、溶融した樹脂が外側に押し出され、その後に硬化する。
【0072】
このようにして、半導体チップ30の下側の隙間に硬化したアンダーフィル樹脂22が充填される。上記したように、シート材44で加圧された状態で加熱によって溶融した樹脂が半導体チップ30の外側に押し出される。これにより、半導体チップ30の側面下部からなだらかに傾斜して広がるフィレットが形成された状態でアンダーフィル樹脂22が充填される。
【0073】
このとき同時に、半導体チップ30の位置ずれが極力抑制され、半導体チップ30の金バンプ32が配線基板10の配線層14(接続部)に信頼性よく本圧着されて電気接続される。半導体チップ30が金バンプ32を備える場合は、配線基板10の配線層14は下から順に銅層/金層から形成され、金−金接合によって接続される。
【0074】
前述した形態では、半導体チップ30のバンプ電極として金バンプ32を使用しているが、銅バンプ又ははんだバンプを使用してもよい。この場合は、配線基板10の配線層14の表面にはんだ層が形成される。
【0075】
そして、上記した図8(a)の工程において、260℃の温度雰囲気で加熱処理することにより、封止樹脂材20を硬化させると同時に、はんだを溶融させてリフローはんだ付けにより半導体チップ30のはんだバンプ又は銅バンプが配線基板10の配線層14(接続部)に電気接続される。
【0076】
つまり、半導体チップ30のバンプ電極と配線基板10の配線層14(接続部)との接続は、金バンプと金層との接合、金バンプとはんだとの接合、銅バンプとはんだとの接合、はんだバンプとはんだとの接合などを使用することができる(前者が半導体チップ30側で後者が配線基板10側)。
【0077】
このようにして、半導体チップ30を配線基板10にフリップチップ接続する際に、同時に、半導体チップ30の下側にアンダーフィル樹脂22を信頼性よく充填することができる。
【0078】
その後に、図8(b)に示すように、図6(b)において支持板42に接続されたチューブ43に装着された真空バルブ45を開ける。これにより、支持板42の排気穴42xからシート材44側に大気を流入させ、積層部材5からシート材44を取り外す。このとき、シート材44は耐熱性及び離型性を有するので、上記した加熱処理で積層部材5に接着することはなく、積層部材5から容易に取り外すことができる。
【0079】
なお、前述した形態では、支持板42とシート材44とで挟み込まれた積層部材5を真空配管49から取り外して熱処理装置に搬送しているが、真空ポンプで真空引きした状態で上側からランプ加熱などによって加熱処理することも可能である。
【0080】
また、前述した図6(a)で示した積層部材5の配線基板10を個々の半導体チップ30が得られるように分割し、複数のチップ状の積層部材を治具40に並べて配置し、シート材44で加圧することも可能である。
【0081】
さらに、図8(c)に示すように、配線基板10の下面の配線層14にはんだボールを搭載するなどして外部接続端子34を設けた後に、積層部材5の配線基板10をスリット10a(図6(a))に沿って切断することにより、個々の半導体装置1(電子部品装置)を得る。積層部材5を切断した後に、外部接続端子34を設けてもよい。
【0082】
以上説明したように、本実施形態の半導体装置(電子部品装置)の製造方法では、まず、配線基板10の上に未硬化の封止樹脂材20を形成する。このとき、封止樹脂材20を真空(減圧)雰囲気で貼付することにより、封止樹脂材20にボイドが発生することが防止される。
【0083】
次いで、半導体チップ30を配線基板10に位置合わせした状態で半導体チップ30の金バンプ32を封止樹脂材20に押し込む。これにより、半導体チップ30の下側に未硬化の封止樹脂材20が形成されて、半導体チップ30の金バンプ32が配線基板10の配線層14(接続部)に仮圧着された積層部材5を得る。
【0084】
さらに、支持板42とシート材44との間の収容部Hを真空引きできる構造の治具40が用意される。そして、支持板42の上に積層部材5を配置し、シート材44で積層部材5を覆うことにより、積層部材5を治具40内の収容部Hに配置する。
【0085】
その後に、収容部H内の空気を支持板42の排気穴42xから排気することにより、シート材44で積層部材5を均一に加圧する。これにより、半導体チップ30の横方向への位置ずれが最小限に抑えられた状態で、半導体チップ30が配線基板10側に十分な圧力で加圧される。
【0086】
続いて、積層部材5をシート材44で加圧した状態で加熱処理することにより、封止樹脂材20を溶融/硬化させてアンダーフィル樹脂22を得る。これにより、アンダーフィル樹脂22が半導体チップ30の側面下部からなだらに傾斜して広がるフィレットが形成された状態で安定して充填される。
【0087】
このとき同時に、半導体チップ30の金バンプ32が配線基板10の配線層14(接続部)に信頼性よく本圧着される。半導体チップ30をはんだ接続する場合は、リフローはんだ付けを行うための加熱処理(例えば260℃)で封止樹脂材20の硬化が同時に行われる。
【0088】
これにより、先封止技術を使用して、狭ピッチのバンプ電極を備えた高性能な半導体チップ30を配線基板10に高い信頼性で歩留りよくフリップチップ実装することができる。
【0089】
(第2の実施の形態)
図9〜図11は本発明の第2実施形態の積層配線基板(電子部品装置)の製造方法を示す断面図である。第2実施形態では、電子部品装置として、配線基板が積層された積層配線基板を例に挙げて説明する。
【0090】
第2実施形態では、第1実施形態と同一工程及び同一要素についてはその詳しい説明を省略する。
【0091】
第2実施形態の積層配線基板(電子部品装置)の製造方法では、まず、図9(a)に示すように、被実装体として下側配線基板10を用意する。下側配線基板10は、第1実施形態の図2(a)の配線基板10の上面側に配線層14のパッド部上に開口部が設けられたソルダレジスト18がさらに形成されている。
【0092】
下側配線基板10は多面取り用基板であり、上側配線基板が搭載される複数の基板搭載領域A1が画定されている。
【0093】
次いで、図9(b)に示すように、第1実施形態と同様に、下側配線基板10の基板搭載領域A1の上に、真空(減圧)雰囲気で未硬化の封止樹脂材20を貼付する。これにより、封止樹脂材20にボイドが発生することが防止される。
【0094】
続いて、図9(c)に示すように、電子部品として、下側配線基板10より面積が小さいチップ状の上側配線基板50を用意する。上側配線基板50では、絶縁基板52の両面側に配線層54がそれぞれ形成されている。絶縁基板52には貫通電極56が設けられており、両面側の配線層54は貫通電極56を介して相互接続されている。
【0095】
絶縁基板52の両面側には、配線層54のパッド部上に開口部が設けられたソルダレジスト58がそれぞれ形成されている。さらに、絶縁基板52の下面側の配線層54にはんだバンプ60が設けられている。はんだバンプ60の他に、金バンプや銅バンプなどを使用してもよい。
【0096】
そして、第1実施形態と同様に、上側配線基板50のはんだバンプ60を下側配線基板10上の封止樹脂材20に軽く押し込む。これにより、図10(a)に示すように、上側配線基板50の下側の隙間に未硬化の封止樹脂材20が形成され、上側配線基板50のはんだバンプ60が下側配線基板10の配線層14(接続部)上に配置された積層部材6を得る。
【0097】
なお、第1実施形態と同様に、上側配線基板50のはんだバンプ60の面に真空雰囲気で封止樹脂材20を貼付し、上側配線基板50の封止樹脂材20の面を下側配線基板10に押し込んでもよい。あるいは、下側配線基板10の上に液状樹脂を塗布して封止樹脂材20を形成してもよい。
【0098】
次いで、図10(b)に示すように、第1実施形態と同様な治具40を用意し、支持板42の上に積層部材6を配置し、積層部材6をシート材44で覆う。さらに、支持板42の排気穴42xから支持板42及び積層部材6とシート材44との間の空気を排気して真空(減圧)状態とする。
【0099】
これにより、上側配線基板50及びその下の封止樹脂材20の側面に大気圧の荷重を均一にかけることができる。従って、上側配線基板50の位置ずれが最小限に抑えられた状態で、上側配線基板50を下側配線基板10側に十分な圧力で加圧することができる。
【0100】
続いて、図11(a)に示すように、第1実施形態と同様に、図6(b)の治具40において真空バルブ45を閉じて封止状態とし、チューブ43を真空配管49から分離することにより、図10(b)の構造体を取り外す。
【0101】
次いで、同じく図11(a)に示すように、上側配線基板50及び封止樹脂材20をシート材44で加圧した状態で、熱処理装置(不図示)によって温度:260℃の加熱雰囲気で加熱処理する。これにより、第1実施形態と同様に、封止樹脂材20が溶融/硬化することにより、上側配線基板50の下側の隙間にアンダーフィル樹脂22が充填される。これと同時に、上側配線基板50のはんだバンプ60がリフローはんだ付けにより下側配線基板10の配線層14(接続部)に電気接続される。
【0102】
このとき、第1実施形態と同様に、アンダーフィル樹脂22は上側配線基板50の側面下部からなだらかに傾斜して広がるフィレットが形成された状態で充填される。このとき同時に、上側配線基板50の位置ずれが極力抑制され、上側配線基板50のはんだバンプ60が信頼性よく下側配線基板10に電気接続される。
【0103】
その後に、支持板42の排気穴42xからシート材44側に大気を流入させ、積層部材6からシート材44を取り外す。
【0104】
さらに、図11(b)に示すように、積層部材6の下側配線基板10の下面にはんだボールを搭載するなどして外部接続端子34を設けた後に、下側配線基板10を切断することにより、個々の積層配線基板2(電子部品装置)を得る。積層部材6を切断した後に、外部接続端子34を設けてもよい。
【0105】
第2実施形態は第1実施形態と同様な効果を奏する。
【0106】
(その他の実施形態)
前述した第1、第2実施形態では、被実装体として配線基板10を使用し、その上に電子部品として半導体チップ30又は上側配線基板50を実装したが、被実装体及び電子部品は各種のものを使用することができる。
【0107】
例えば、被実装体としてトランジスタや多層配線などが形成された半導体ウェハを使用し、電子部品として半導体チップを使用してもよい。この場合、半導体ウェハの接続部に封止樹脂材を介して半導体チップのバンプ電極を押し込んで配置する。
【0108】
そして、本実施形態の治具40を使用して加圧した状態で加熱処理することにより、半導体チップの下側にアンダーフィル樹脂を充填すると同時に、半導体チップのバンプ電極を半導体ウェハの接続部に電気接続する。
【0109】
その後に、半導体ウェハを切断することにより、半導体チップが積層されたチップオンチップタイプの半導体装置(電子部品装置)が得られる。
【符号の説明】
【0110】
1…半導体装置(電子部品装置)、2…積層配線基板(電子部品装置)、5,6…積層部材、10…配線基板(下側配線基板)(被実装体)、10a…スリット、12,52…絶縁基板、14,54…配線層、16,56…貫通電極、18,58…ソルダレジスト、20…封止樹脂材、20a…液状樹脂、22…アンダーフィル樹脂、30…半導体チップ(電子部品)、30a…半導体ウェハ、32…金バンプ、34…外部接続端子、40…治具、42…支持板、42a…下側部材、42b…上側部材、42x…排気穴、42y…排気口、43…チューブ、44…シート材、45…真空バルブ、46…シール材、47…ジョイント、48…ねじ、49…真空配管、50…上側配線基板(電子部品)、60…はんだバンプ、A…チップ実装領域、A1…基板搭載領域、B…ワーク配置領域、C…凹部、H…収容部、VH…バキュームホール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続部を備えた被実装体に、未硬化の封止樹脂材を介して、電子部品のバンプ電極を押し込むことにより、前記バンプ電極が前記接続部上に配置され、前記電子部品の下に前記封止樹脂材が形成された積層部材を得る工程と、
支持板上に前記積層部材を配置し、前記積層部材上にシート材を配置し、前記支持板と前記シート材とを備えた治具の内部の空気を排気して真空状態とすることにより、前記積層部材を前記シート材で加圧する工程と、
前記積層部材を前記シート材で加圧した状態で、加熱処理することにより、前記封止樹脂材を硬化させて前記電子部品の下にアンダーフィル樹脂を得ると共に、前記電子部品のバンプ電極を前記被実装体の接続部に接続する工程とを有することを特徴とする電子部品装置の製造方法。
【請求項2】
前記被実装体は配線基板であり、前記電子部品は半導体チップ又は上側配線基板であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項3】
前記積層部材を得る工程は、
フィルム状の前記封止樹脂材を前記被実装体の上及び前記電子部品のバンプ電極の面のいずれかに真空雰囲気で貼付することを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項4】
前記電子部品は半導体チップであり、
前記積層部材を得る工程は、
フィルム状の前記封止樹脂材を真空雰囲気で半導体ウェハのバンプ電極の面に貼付し、前記半導体ウェハを切断して得られる前記半導体チップを前記被実装体に押し込むことを含むことを特徴とする請求項1に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項5】
前記被実装体は配線基板であって、前記電子部品は半導体チップであり、
前記半導体チップのバンプ電極と前記配線基板の接続部とは、金−はんだ接合、銅−はんだ接合、はんだ−はんだ接合によって接続され、
前記加熱処理する工程において、前記封止樹脂材の硬化と前記はんだの溶融を同時に行うことを特徴とする請求項1に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項6】
排気手段に接続される排気穴が設けられた支持板と、
前記支持板の上に配置され、ワークを収容する収容部を構成するフレキシブルなシート材とを有し、
前記ワークが前記収容部に収容され、前記排気手段によって前記排気穴から前記収容部内の空気を排気して真空状態とすることにより、前記シート材で前記ワークを加圧することを特徴とする治具。
【請求項7】
前記ワークは、被実装基板の接続部に電子部品のバンプ電極が配置され、前記電子部品の下側の隙間に未硬化の封止樹脂材が形成された積層部材であることを特徴とする請求項6に記載の治具。
【請求項8】
前記被実装体は配線基板であり、前記電子部品は半導体チップ又は上側配線基板であることを特徴とする請求項7に記載の治具。
【請求項9】
前記シート材はテフロン(登録商標)シートからなることを特徴とする請求項6又は7に記載の治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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