説明

電子部品

【課題】良好なアイソレーション特性を確保することが可能な電子部品を提供すること。
【解決手段】本発明は、本発明は、第1信号の入出力を行うための第1共通端50と、第1信号より高い周波数を有する第2信号の入出力を行うための第2共通端52と、アンテナ16と接続するための第3共通端54とに接続された第1回路10と、第1共通端50と第2共通端52との間において第1回路10と並列接続された第2回路20と、を具備し、第3共通端54は、LPF12とHPF14との間に位置し、第1回路10は、第1信号を通過させかつ第2信号を反射するLPF12、及び第2信号を通過させかつ第1信号を反射するHPF14を含み、第2回路20は、第1送信信号及び第2送信信号を反射し、第1送信信号及び第2送信信号それぞれの一部を通過させ、かつ第1送信信号及び第2送信信号の一部の位相を反転させる電子部品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の通信機器には、音声と共に映像等のデータを通信することがある。このような用途に対応するため、通信機器を複数の通信方式に対応させることが求められている。通信機器のマルチバンド化に伴い、例えば1台の携帯電話端末には複数のデュプレクサ、又はアンプ等の高周波信号に対応した高周波デバイスが搭載されることがある。特許文献1には、受信フィルタと送信フィルタとでアンテナを共有する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−41141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マルチバンド化した小型の通信機器においては、複数の送受信機間において良好なアイソレーション特性を確保することが難しくなってきている。アイソレーション特性が不十分な状態で2つ以上の送受信回路が同時に送信を行うと、相互変調歪が発生することがある。相互変調歪は受信感度の低下等の原因となることがある。本発明は上記課題に鑑み、良好なアイソレーション特性を確保することが可能な電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、周波数が異なる第1送信信号と第1受信信号とを含む第1信号の入出力を行うための第1共通端と、周波数が異なる第2送信信号と第2受信信号とを含みかつ前記第1信号より高い周波数を有する第2信号の入出力を行うための第2共通端と、アンテナと接続するための第3共通端とに接続された第1回路と、前記第1共通端と前記第2共通端との間において前記第1回路と並列接続された第2回路と、を具備し、前記第1回路は、前記第1信号を通過させかつ前記第2信号を反射する第1フィルタ、及び前記第2信号を通過させかつ前記第1信号を反射する第2フィルタを含み、前記第1フィルタは前記第1共通端と前記第2フィルタとの間に接続され、前記第2フィルタは前記第1フィルタと前記第2共通端との間に接続され、前記第3共通端は、前記第1フィルタと前記第2フィルタとの間に位置し、前記第2回路は、前記第1送信信号及び第2送信信号を反射し、前記第1送信信号及び第2送信信号それぞれの一部を通過させ、かつ前記第1送信信号及び第2送信信号の前記一部の位相を反転させる電子部品である。本発明によれば、良好なアイソレーション特性を確保することができる。
【0006】
上記構成において、前記第1共通端には前記第1送信信号と前記第1受信信号とを分波する第1デュプレクサが接続され、前記第2共通端には前記第2送信信号と前記第2受信信号とを分波する第2デュプレクサが接続される構成とすることができる。
【0007】
上記構成において、前記第1共通端への前記第1送信信号の入力と前記第1共通端からの前記第1受信信号の出力とは同時に行われる、又は前記第2共通端への前記第2送信信号の入力と前記第2共通端からの前記第2受信信号の出力とは同時に行われる構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記第1共通端から前記第2共通端に向けて前記第2回路を通過する前記第1送信信号は、前記第1共通端から前記第2共通端に向けて前記第1回路を通過する前記第1送信信号と比較して同じ大きさ及び逆位相を有し、前記第2共通端から前記第1共通端に向けて前記第2回路を通過する前記第2送信信号は、前記第2共通端から前記第1共通端に向けて前記第1回路を通過する前記第2送信信号と比較して同じ大きさ及び逆位相を有する構成とすることができる。この構成によれば、効果的に良好なアイソレーション特性を確保することができる。
【0009】
上記構成において、前記第2回路は第1ローパスフィルタと第1ハイパスフィルタとを含む構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記第1ハイパスフィルタは、前記第1共通端と前記第1ローパスフィルタとの間に接続され、前記第1ローパスフィルタは、前記第2共通端と前記第1ハイパスフィルタとの間に接続され、前記第2回路は、前記第1ローパスフィルタと前記第1ハイパスフィルタとの間に並列接続された電気的負荷を含む構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記第1フィルタは第2ローパスフィルタであり、前記第2フィルタは第2ハイパスフィルタであり、前記第1ローパスフィルタと前記第2ローパスフィルタとは同じ通過特性を有し、前記第1ハイパスフィルタと前記第2ハイパスフィルタとは同じ通過特性を有する構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記第1受信信号及び前記第2受信信号の少なくとも一方の周波数は、前記第1送信信号及び前記第2送信信号各々の周波数より高い又は低い構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記第1信号はLTE Band13方式の送信帯域の周波数を有する信号及び受信帯域の周波数を有する信号を含み、前記第2信号はW−CDMA方 Band5方式の送信帯域の周波数を有する信号及び受信帯域の周波数を有する信号を含む構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記第1共通端に接続され、前記第1送信信号と前記第1受信信号とを分波するデュプレクサを含む第1送受信回路と、前記第2共通端に接続され、前記第2送信信号と前記第2受信信号とを分波するデュプレクサを含む第2送受信回路と、を具備する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、良好なアイソレーション特性を確保することが可能な電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は比較例に係る電子部品を例示する図である。
【図2】図2(a)はローパスフィルタ及びハイパスフィルタの通過帯域を例示する模式図である。図2(b)は、比較例に係る電子部品において使用される周波数帯域を例示する模式図である。
【図3】図3は実施例1に係る電子部品、及び電子部品を流れる第1送信信号を例示する図である。
【図4】図4は実施例1に係る電子部品を流れる第2送信信号を例示する図である。
【図5】図5は比較例に係る電子部品が備えるダイプレクサの等価回路を例示する回路図である。
【図6】図6は実施例1に係る電子部品が備えるダイプレクサの等価回路を例示する回路図である。
【図7】図7(a)は比較例におけるポートP1〜P2間の通過特性の計算結果である。図7(b)は比較例における通過特性の計算結果である。
【図8】図8(a)は実施例1におけるポートP1〜P2間の通過特性の計算結果である。図8(b)は実施例1における通過特性の計算結果である。
【図9】図9は実施例1の変形例に係る電子部品を例示する図である。
【図10】図10は実施例2に係る電子部品を例示する図である。
【図11】図11は実施例2に係る電子部品が備えるダイプレクサの等価回路を例示する回路図である。
【図12】図12(a)は実施例2におけるポートP1〜P2間の通過特性の計算結果である。図12(b)は実施例2における通過特性の計算結果である。
【図13】図13は実施例2の変形例に係る電子部品が備えるダイプレクサの等価回路を例示する回路図である。
【図14】図14(a)は実施例2の変形例におけるポートP1〜P2間の通過特性の計算結果である。図14(b)は実施例2の変形例における通過特性の計算結果である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、比較例について説明する。以下に説明する電子部品は、信号の送受信を行うためのものであり、例えば携帯電話等の通信機器に搭載される。図1は比較例に係る電子部品を例示する図である。図1中の矢印は第1送信信号ST1(以下ST1)を表す。白抜きの矢印は第2送信信号ST2(以下ST2)を表す。また破線の矢印はリークした第1送信信号ST1を(以下ST1’)を表す。破線の白抜きの矢印はリークした第2送信信号ST2を(以下ST2’)を表す。
【0018】
図1に示すように、比較例に係る電子部品100rは、第1回路110、第1フロントエンド130及び第2フロントエンド140を備える。第1回路110と第1フロントエンド130とは、第1共通端150を介して接続されている。第1回路110と第2フロントエンド140とは、第2共通端152を介して接続されている。第1回路110とアンテナ116とは、第3共通端154を介して接続されている。第1フロントエンド130とベースバンド回路(不図示)とが第1送受信回路を形成する。第2フロントエンド140とベースバンド回路とが第2送受信回路を形成する。ベースバンド回路は、受信信号の復調及び送信信号の変調を行う回路である。
【0019】
第1回路110はダイプレクサとして機能する。第1回路110は、ローパスフィルタ(以下LPF)112とハイパスフィルタ(以下HPF)114とを含む。LPF112とHPF114とは第1共通端150と第2共通端152との間において直列接続されている。LPF112の一端は第1共通端150に接続されている。LPF112の他端は、HPF114の一端と接続されている。HPF114の他端は第2共通端152に接続されている。第3共通端154は、LPF112の他端とHPF114の一端との間に位置する。
【0020】
第1共通端150は、第1回路110と第1フロントエンド130との間において、第1信号の入出力を行うためのものである。第1信号は、互いに周波数が異なるST1及び第1受信信号SR1(以下SR1、不図示)を含む。第2共通端152は、第1回路110と第2フロントエンド140との間において、第2信号の入出力を行うためのものである。第2信号は、互いに周波数が異なるST2及び第2受信信号SR2(以下SR2、不図示)を含む。信号の送受信については後述する。
【0021】
図1に示すように、第1フロントエンド130は、第1デュプレクサ132、パワーアンプ(以下PA)134及びローノイズアンプ(以下LNA)136を備える。第1デュプレクサ132は、送信フィルタ132T及び受信フィルタ132Rを含む。送信フィルタ132T及び受信フィルタ132Rはバンドパスフィルタ(以下BPF)であり、例えば弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)フィルタ、弾性境界波フィルタ、FBAR(Film Bulk Acoustic Resonator:圧電薄膜共振子)等からなる。送信フィルタ132Tのインピーダンスは、受信フィルタ132Rの通過帯域の周波数において高くなる。受信フィルタ132Rのインピーダンスは、送信フィルタ132Tの通過帯域の周波数において高くなる。送信フィルタ132Tは、PA134の出力端子から入力された信号のうち、周波数が通過帯域内である信号を通過させ第1共通端150に出力し、周波数が通過帯域外である信号を抑圧する。第1共通端150に出力される信号はST1である。受信フィルタ132Rは第1共通端150から入力された信号のうち周波数が通過帯域内である信号を通過させ、LNA136の入力端子に出力し、周波数が通過帯域外である信号を抑圧する。
【0022】
第2フロントエンド140は、第2デュプレクサ142、PA144及びLNA146を備える。第2デュプレクサ142は、送信フィルタ142T及び受信フィルタ142Rを含む。第1フロントエンド130の受信フィルタ132Tと同様、受信フィルタ142Tは、ST2を第1共通端150に出力する。受信フィルタ132Rと同様、受信フィルタ142RはLNA146の入力端子に信号を出力する。
【0023】
次に図1及び図2(a)を用いて、信号の送受信について説明する。送信フィルタ132Tの通過帯域Tx1は、LTE(Long Term Evolution) Band13方式の送信帯域(776〜786MHz)を含む。受信フィルタ132Rの通過帯域Rx1は、LTE Band13方式の受信帯域(746〜756MHz)を含む。第1フロントエンド130を含む第1送受信回路の送受信帯域(第1送受信帯域)はLTE Band13方式の送受信帯域である。送信フィルタ142Tの通過帯域Tx2は、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access) Band5方式の送信帯域(824〜849MHz)を含む。受信フィルタ142Rの通過帯域Rx2は、W−CDMA Band5方式の受信帯域(869〜894MHz)を含む。第2フロントエンド140を含む第2送受信回路の送受信帯域(第2送受信帯域)はW−CDMA Band5方式の送受信帯域である。STの周波数fST1はTx1に含まれる。ST2の周波数fST2はTx2に含まれる。SR1の周波数fSR1はRx1に含まれる。SR2の周波数fSR2はRx2に含まれる。このように、電子部品100rは、音声信号の通信を例えばW−CDMA Band5方式で行い、映像信号等の通信を例えばLTE Band13方式で行うためのものである。次にフィルタの通過特性について説明する。図2(a)はLPF及びHPFの通過帯域を例示する模式図である。
【0024】
図2(a)に示すAはLPF112の通過特性を表す。BはHPF114の通過特性を表す。LPF112の通過帯域とHPF114の通過帯域とは重ならない。LPF112の通過帯域は、Rx1及びTx1を含む。HPF114の通過帯域は、Rx2及びTx2を含む。
【0025】
送信について説明する。図1に矢印で示したST1は、第1共通端150を介し第1回路110に入力される。ST1はLPF112を通過する。ST1の一部は、第3共通端154を介してアンテナ116に入力する。ST1の別の一部はHPF114に到達する。
【0026】
HPF114に到達したST1はHPF114に反射される。HPF114に到達したST1のうち一部ST1’はHPF114からリークする。HPF114において反射されたST1はアンテナ116に入力され、アンテナ116を通じて携帯電話の外部に送信される。リークしたST1’については後述する。
【0027】
T1と同様、ST2は、HPF114を通過する。ST2の一部は、第3共通端154を介してアンテナ116に入力される。ST2の別の一部は、LPF112に到達する。ST2の大部分は、アンテナ116を通じて携帯電話の外部に送信される。ST2の一部ST2’はLPF112からリークする。ST1の送信とST2の送信とは同時に行われる。
【0028】
次に受信について説明する。アンテナ116は、携帯電話の外部から信号を受信する。受信された信号は第3共通端154を介して第1回路110に入力される。周波数の低い信号はHPF114により反射され、LPF112を通過する。周波数の高い信号はLPF112により反射され、HPF114を通過する。LPF112を通過した信号がSR1である。HPF114を通過した信号がSR2である。
【0029】
R1は第1共通端150を介して第1フロントエンド130に入力される。既述したように、SR1は送信フィルタ132Tにより反射され、かつ受信フィルタ132Rを通過する。受信フィルタ132Rを通過したSR1はLNA136の入力端子に入力され、出力端子から出力される。SR1と同様に、SR2は第2共通端152を介して第2フロントエンド140に入力され、LNA146の出力端子から出力される。
【0030】
次に、相互変調歪について説明する。図1に破線の矢印で示すように、HPF114に到達したST1の一部ST1’はHPF114からリークして第2共通端152を通過する。ST1’とST2とが、第2デュプレクサ142において混合される。このとき、第2デュプレクサ142の非線形性により、3次相互変調歪(IMD3:Inter Modulation Distortion)が発生する。IMD3の周波数がfSR2と重なる場合、第2送受信回路の受信感度は低下する。
【0031】
図1に破線の白抜き矢印で示すように、LPF112に到達したST2の一部ST2’は、LPF112からリークして第1共通端150を通過する。ST2’とST1とが第1デュプレクサ132において混合され、IMD3が発生する。IMD3の周波数がfSR1と重なる場合、第1送受信回路の受信感度は低下する。
【0032】
送信帯域、受信帯域及びIMD3の周波数について説明する。図2(b)は、比較例に係る電子部品において使用される周波数帯域を例示する模式図である。横軸は周波数を表す。格子斜線で示した領域はIMD3を表す。
【0033】
IMD3の周波数のうち特に問題となるのは、2fST1−fST2、及び2fST2−fST1である。図2(b)の例において、これらのIMD3は703〜748MHzの帯域、及び862〜922MHzの帯域に発生する。低周波数側のIMD3はRx1及びfSR1と重なる。この結果、第1送受信回路の受信感度が低下する。また高周波数側のIMD3はRx2及びfSR2と重なる。この結果、第2送受信回路の受信感度が低下する。特に、第1フロントエンド130及び第2フロントエンド140の両方又は一方が送信と受信とを同時に行う場合、IMD3と受信信号とが混合され、受信感度が低下する。また、第1フロントエンド130と第2フロントエンド140とが同時に送信を行う場合、送信信号によるIMD3が発生しやすい。
【0034】
上記のように、ST1’及びST2’により、IMD3が発生する。従って、ST1及びST2それぞれのリークを少なくすることでIMD3を抑制することができる。リークを少なくするためには、第1フロントエンド130と第2フロントエンド140とのアイソレーションを高めればよい。しかし、図2に示したように、送信帯域の周波数が近い場合、アイソレーションを高めることは難しい。例えばLPF112の抑圧特性を高めることで、ST2のリークを抑制し、アイソレーションを高めることができる。しかし、抑圧特性を高めた場合、LPF112における信号の損失が増大する。このように、アイソレーションと良好な通過特性とを両立することは難しい。
【0035】
また電子部品100rは、2つの送受信回路が1つのアンテナ116を共用するものである。アンテナの共用は、通信機器の小型化、及びコストダウンに寄与する。しかしアンテナを共用した場合、ST1及びST2それぞれが大きな電力を有した状態で混合されることがある。この結果、IMD3の振幅が増大し、受信感度は大きく低下する。次に実施例1について説明する。
【実施例1】
【0036】
まず実施例1に係る電子部品の構成について説明する。図3は実施例1に係る電子部品、及び電子部品を流れる第1送信信号を例示する図である。図1に示した構成と同じ構成については説明を省略する。
【0037】
図3に示すように、実施例1に係る電子部品100は、ダイプレクサ11、第1フロントエンド30、及び第2フロントエンド40を備える。ダイプレクサ11は第1回路10と第2回路20とを含む。第2回路20は、第1共通端50と第2共通端52との間において第1回路10と並列接続されている。第2回路20は、LPF22(第1ローパスフィルタ)、HPF24(第1ハイパスフィルタ)、及び移相回路(Phase shift circuit)26を含む。移相回路26の一端は第1共通端50と接続されている。移相回路26の他端はHPF24の一端と接続されている。HPF24の他端はLPF22の一端と接続されている。LPF22の他端は第2共通端52と接続されている。第1フロントエンド30は、第1デュプレクサ32、PA34、及びLNA36を含む。第1デュプレクサ32は送信フィルタ32Tと受信フィルタ32Rとを含む。第2フロントエンド40は、第2デュプレクサ42、PA44、及びLNA46を含む。第2デュプレクサ42は送信フィルタ42Tと受信フィルタ42Rとを含む。
【0038】
次に実施例1における信号の送信について説明する。実施例1におけるST1について説明する。図3に実線の矢印で示したST1は、第1共通端50を介して第1回路10及び第2回路20に入力される。図1において説明したように、第1回路10に入力されたST1のうち大部分はアンテナ16から送信される。しかしST1の一部であるST1’は、HPF14(第2フィルタ)からリークし、第1回路10から出力される。
【0039】
第2回路20に入力されたST1の位相は、第2回路20の移相回路26により反転される。ST1の大部分はHPF24により反射される。移相回路26は、反射されたST1の位相を再び反転させる。反射されたST1はアンテナ16を通じて送信される。ST1の一部(以下ST1’’)はHPF24を通過する。図3に点線の矢印で示すように、ST1’’はLPF22を通過する。このようにST1’’は第2回路20から出力される。ST1’’の第2回路20の通過は、ST1’の第1回路10からのリークと同様に、ST1がHPF及びLPFを通過することによるものである。このため、ST1’’は、ST1’と比較して同程度の振幅を有する。また、ST1’’は、ST1’と比較して逆位相を有する。従って、ST1’とST1’’とは合流し打ち消し合う。このため、第2デュプレクサ42におけるST1’とST2とによるIMD3は抑制される。
【0040】
次に実施例1におけるST2の送信について説明する。図4は実施例1に係る電子部品を流れる第2送信信号を例示する図である。
【0041】
図4に白抜き矢印で示すように、ST2は、第2共通端52を介して第1回路10及び第2回路20に入力される。第2回路20に入力されたST2の位相は、第2回路20の移相回路26により反転される。ST2の一部(以下ST2’’)はLPF22を通過する。図4に点線の白抜き矢印で示すように、ST2’’はHPF24を通過する。ST1’及びST1’’と同様に、ST2’とST2’’とは合流し打ち消し合う。このため、第1デュプレクサ32におけるST2’とST1とによるIMD3は抑制される。
【0042】
次に実施例1における信号の受信について説明する。SR1の一部は第1共通端50を介して第1フロントエンド30に入力される。SR1の別の一部は、第2回路20に入力される。第2回路20に入力されたSR1は移相回路26を通過するが、HPF24に反射され、移相回路26を経由して第1フロントエンド30に入力される。同様に、SR2も第2フロントエンド40に入力される。
【0043】
次に、実施例1に係る電子部品の通過特性のシミュレーションについて説明する。シミュレーションは、比較例に係る電子部品100r、及び実施例1に係る電子部品100それぞれの等価回路における、通過特性を計算したものである。
【0044】
図5は比較例に係る電子部品の等価回路を例示する回路図である。図5に示すように、比較例に係る電子部品100rの第1回路110のLPF112は、インダクタL1〜L4、及びキャパシタC1〜C3を含むLC回路に対応する。インダクタL1をL1と表す。他のインダクタ、キャパシタ及び抵抗についても同様である。HPF114は、L5〜L7、及びC4〜C7を含むLC回路に対応する。第1共通端150、第2共通端152、及び第3共通端154は、それぞれポートP1、P2及びP3に対応する。
【0045】
R1及びR2それぞれの一端は接地されている。L1〜L4及びC4〜C7は、R1の他端とR2の他端との間に直列接続されている。ポートP1はR1〜L1間に、ポートP2はR2〜C7間に位置する。C1はL1〜L2間に、C2はL2〜L3間に、C3はL3〜L4間に、R3はL4〜C4間に、L5はC4〜C5間に、L6はC5〜C6間に、L7はC6〜C7間に、それぞれ並列接続されている。C1〜C3、L5〜L7、及びR2〜R3は接地されている。
【0046】
図6は実施例1に係る電子部品の等価回路を例示する回路図である。図6に示すように、実施例1に係る電子部品100の第1回路10は、図5に示した第1回路110と同じ構成である。第1回路10と第2回路20とは、抵抗R1の一端と抵抗R2の一端との間において並列接続されている。
【0047】
第2回路20のLPF22は、L8及びL9、並びにC8を含むLC回路に対応する。HPF24は、L10、C9及びC10を含むLC回路に対応する。移相回路26は、ストリップラインSLに対応する。ストリップラインSL、L8及びL9、C9及びC10は、ポートP1〜P2間に直列接続されている。C8はL8〜L9間、L10はキャパシタC9〜C10間に並列接続されている。C8及びL10は接地されている。
【0048】
上記の構成を有する等価回路を用いて、アイソレーション特性、及び通過特性を検証した。ポートP1〜P2間のアイソレーション特性を検証するために、ポートP1に信号を入力した場合にポートP2から出力される信号を計算した。ポートP1〜P2間通過特性は、図1における第1共通端150〜第2共通端152間通過特性、及び図3における第1共通端50〜第2共通端52間通過特性に対応する。
【0049】
また、ポートP1〜P3間通過特性を検証するために、ポートP1に信号を入力した場合にポートP3から出力される信号を計算した。ポートP1〜P3間通過特性は、図1における第1共通端150〜第3共通端154間通過特性、及び図3における第1共通端50〜第3共通端54間通過特性に対応する。ポートP2〜P3間通過特性を検証するために、ポートP2に信号を入力した場合にポートP3から出力される信号を計算した。ポートP2〜P3間通過特性は、図1における第2共通端152〜第3共通端154間通過特性、及び図3における第2共通端52〜第3共通端54間通過特性に対応する。
【0050】
シミュレーションに用いたパラメータについて説明する。まず比較例におけるパラメータについて説明する。R1〜R3各々の抵抗値は50Ωである。表1はインダクタンス及びキャパシタンスを示す表である。なお簡単のため、シミュレーションで用いた部品は寄生容量及び抵抗成分を持たない理想部品であるとする。
【表1】

【0051】
次に実施例1におけるパラメータについて説明する。実施例1におけるR1〜R3各々の抵抗値、L2、L3、L5〜L7各々のインダクタンス、C1〜C6各々のキャパシタンスは、比較例における値と等しい。表2は実施例1におけるインダクタンス及びキャパシタンスを示す表である。
【表2】

ストリップラインSLの幅は0.03mm、長さは55mmである。
【0052】
比較例におけるシミュレーションの結果について説明する。図7(a)は比較例におけるポートP1〜P2間の通過特性の計算結果である。図7(b)は比較例における通過特性の計算結果である。図7(a)及び図7(b)において、横軸は周波数を、縦軸は信号の通過量をそれぞれ表す。図7(a)に示すように、第1送受信帯域において、通過量は約−10.4dB以下である。第2送受信帯域において、通過量は約−10.7dB以下である。
【0053】
図7(b)の実線はポートP1〜P3間通過特性を表す。破線はポートP2〜P3間通過特性を表す。なお、線種とデータの種類との関係は後述の図8(b)、図12(b)及び図14(b)においても同じである。図7(b)に実線で示すように、ポートP1〜P3間の通過量は、第1送受信帯域において−0.942dB以上、信号を抑圧すべき第2送受信帯域において−12.5dB以下である。破線で示すように、ポートP2〜P3間の通過量は、第2送受信帯域において−0.821dB以上、信号を抑圧すべき第1送受信帯域において−12.0dB以下である。
【0054】
次に、実施例1におけるシミュレーションの結果について説明する。図8(a)は実施例1におけるポートP1〜P2間の通過特性の計算結果である。図8(b)は実施例1における通過特性の計算結果である。
【0055】
図8(a)に示すように、第1送受信帯域において通過量は−16.9dB以下である。図8(a)と図7(a)とを比較すると、実施例1によりポートP1〜P2間の通過量が減少、すなわちポートP1〜P2間のアイソレーション特性が改善したことが分かる。
【0056】
図8(b)に実線で示すように、ポートP1〜P3間の通過量は、第1送受信帯域において−0.907dB以上、信号を抑圧すべき第2送受信帯域において−16.2dB以下である。破線で示すように、ポートP2〜P3間の通過量は、第2送受信帯域において−0.738dB以上、信号を抑圧すべき第1送受信帯域において−14.4dB以下である。図8(b)と図7(b)とにおける通過特性を比較すると、実施例1は比較例に対して、通過帯域では同程度の損失を示し、抑圧帯域ではより高い抑圧効果を示していることが分かる。以上のように、実施例1によれば、良好な通過特性と良好なアイソレーション特性とを両立することができる。
【0057】
実施例1に係る電子部品100の第2回路20は、ST1及びST2を反射させ、かつST1’’及びST2’’を通過させ位相を反転させる。通信に不要なリーク成分ST1’とキャンセル用の成分ST1’’とが打ち消し合い、同様にST2’とST2’’とが打ち消し合う。このため、良好なアイソレーション特性が確保され、IMD3が抑制される。
【0058】
良好なアイソレーション特性を得るためには、ST1’とST1’’とが打ち消し合い、かつST2’とST2’’とが打ち消し合えばよい。従って、ST1’’はST1’と、同じ大きさ(振幅)を有し、かつ例えば180°の位相差を有することが好ましい。ST2’’はST2’と、同じ大きさを有し、かつ例えば180°の位相差を有することが好ましい。信号が同じ大きさとなるためには、第1回路10とアンテナ16とによるST1の損失と、第2回路20によるST1の損失とが同程度であることが好ましい。また、第1回路10とアンテナ16とによるST2の損失と、第2回路20によるST2の損失とが同程度であることが好ましい。LPF22及びHPF24それぞれの通過特性を調整することで、信号の損失を調整することができる。なお、同じ大きさの信号が打ち消し合ってもよいし、大きさがわずかに異なる信号が打ち消し合ってもよい。信号が打ち消し合う結果、携帯電話等の使用に十分な程度の受信感度を確保できればよい。
【0059】
信号の損失を少なくするためには、LPF12及びLPF22においてST2の大部分が反射され、HPF14及びHPF24においてST1の大部分が反射されることが好ましい。LPF12又はLPF22に入力されたST2と比較して、ST2’’は例えば10dB以上、20dB以上、又は30dB以上小さいことが好ましい。HPF14又はHPF24に入力されたST1と比較して、ST1’’は例えば10dB以上、20dB以上、又は30dB以上小さいことが好ましい。このためには、LPF12及びLPF22は、fST2において高い反射係数を有することが好ましい。HPF14及びHPF24は、fST1において高い反射係数を有することが好ましい。
【0060】
移相回路26はST1の位相、及びST2の位相を例えば90°より大きくかつ270°未満だけ変えることにより信号の位相を反転させる。より効果的に良好なアイソレーション特性を得るためには、移相回路26は位相を例えば120°より大きく240°未満、又は150°より大きく210°未満だけ反転させることがより好ましい。信号が打ち消し合う結果、携帯電話等の使用に十分な程度の受信感度を確保できればよい。特に、位相が180°反転される場合、受信感度が大きく改善する。移相回路26は信号の位相を反転させるもの、例えばストリップライン、LC回路、トランス等である。またLPF22、HPF24、及び移相回路26の配置の順番は変更してもよい。
【0061】
図6に示したように、LPF12及びLPF22、並びにHPF14及びHPF24はLC回路からなるフィルタでもよいし、誘電体フィルタ等としてもよい。また、第1回路10及び第2回路20に含まれるフィルタは、LPF及びHPFに限定されず、例えばBPFを用いることができる。
【0062】
図2(b)に示すように、実施例1は、電子部品100がLTE Band13方式及びW−CDMA Band5方式に対応する例である。この場合、fsT1とfST2とが隣接するため、ST1及びST2の送信を同時に行う場合に十分なアイソレーション特性を得ることが難しい。実施例1によれば、送信を同時行う場合であっても効果的に良好なアイソレーション特性を得ることができる。実施例1に係る電子部品100は、スマートフォンを含む携帯電話、タブレット端末等、マルチバンド化した通信機器に使用することができる。また、電子部品100が対応する通信方式はLTE Band13方式及びW−CDMA Band5方式に限定されない。
【0063】
受信感度の低下が生じるのは、図2(b)のようにIMD3がfSR1及びfSR2の両方と重なる例に限られない。fSR1及びfSR2の少なくとも一方が、fST1及びfST2より高い又は低い場合、受信感度の低下が生じる。例えばfSR2が、fST1とfST2との間に位置することがある。このとき、IMD3はfSR1と重なり、fSR2とは重ならない。この場合は、第1送受信回路の受信感度は低下する。第1回路10がST2’をリークさせ、第2回路20がST2’’を通過させかつ位相を反転させるため、ST2’とST2’’とが打ち消し合う。これによりfSR1と重なるIMD3を抑制することができる。また例えば、fSR1が、fST1とfST2との間に位置することもある。このとき、IMD3がfSR2と重なり、fSR1とは重ならない。この場合、第2送受信回路の受信感度は低下する。第1回路10がST1’をリークさせ、第2回路20がST1’’を通過させかつ位相を反転させる。ST1’とST1’’とが打ち消し合うことにより、SR2と重なるIMD3を抑制することができる。
【0064】
特に、ST1及びST2の出力が同時に行われる場合であっても、第1デュプレクサ132及び第2デュプレクサ142においてIMD3が生成されやすい。実施例1によれば、ST1’とST1’’とが打ち消し合い、ST2’とST2’’とが打ち消し合うため、効果的に良好なアイソレーション特性を確保することができる。
【0065】
実施例1の変形例について説明する。実施例1の変形例は、第2回路20に含まれるLPF22及びHPF24を、BPF23に置換した例である。図9は実施例1の変形例に係る電子部品を例示する図である。
【0066】
図9に示すように、実施例1の変形例に係る電子部品102の第2回路20はBPF23及び移相回路26を含む。BPF23は送受信帯域(Tx1、Rx1、Tx2及びRx2)において高い反射係数を有する。このため第2回路20は、ST1の大部分及びをST2の大部分を反射し、ST1’’及びST2’’を通過させる。また移相回路26の代わりにBPF23が位相反転の機能を有してもよい。
【実施例2】
【0067】
実施例2は、第2回路に負荷を追加した例である。図10は実施例2に係る電子部品を例示する図である。図1及び図3において既述した構成と同じ構成については、説明を省略する。
【0068】
図10に示すように、実施例2に係る電子部品200の第2回路20のHPF24は第1共通端50とLPF22との間に接続されている。LPF22は第2共通端52とHPF24との間に接続されている。電気的負荷28は、例えば抵抗等であり、LPF22とHPF24との間に並列接続されている。LPF22はLPF12と同じ通過特性を有する。HPF24はHPF14と同じ通過特性を有する。電気的負荷28のインピーダンスは、例えばアンテナ16のインピーダンスと同じである。このため、第1回路10と第2回路20とは、同じ通過特性又は極めて近い通過特性を有する。
【0069】
実施例2に係る電子部品のアイソレーション特性及び通過特性のシミュレーションについて説明する。図11は実施例2に係る電子部品が備えるダイプレクサの等価回路を例示する回路図である。図5及び図6において既述した構成については説明を省略する。
【0070】
図11に示すように、第2回路20のLPF22は、L11〜L14、及びC11〜C13を含むLC回路に対応する。HPF24は、L15〜L17、及びC14〜C17を含むLC回路に対応する。移相回路26はトランス27に対応する。電気的負荷28はR4に対応する。
【0071】
トランス27、L11〜L14及びC14〜C17はポートP1及びP2間に直列接続されている。C11はL11〜L12間に、C12はL12〜L13間に、C13はL13〜L14間に、R4はL14〜C14間に、それぞれ並列接続されている。L15はC14〜C15間に、L16はC15〜C16間に、L17はC16〜C17間に、それぞれ並列接続されている。R3、C11〜C13、及びL15〜L17は接地されている。
【0072】
次にシミュレーションに用いたパラメータについて説明する。実施例2のシミュレーションに用いたパラメータのうち、R1〜R3の抵抗値、L2、L3、L5〜L7のインダクタンス、及びC1〜C7のキャパシタンスは、図5に示した比較例の対応する値と同じである。L11〜L14各々のインダクタンスは、L1〜L4各々のインダクタンスと同じである。C11〜C13各々のキャパシタンスは、C1〜C3各々のキャパシタンスと同じである。L15〜L17各々のインダクタンスは、L5〜L7各々のインダクタンスと同じである。C14〜C17各々のキャパシタンスは、C4〜C7各々のキャパシタンスと同じである。R3の抵抗値は50Ωである。トランス27の変換効率は1である。つまり、トランス27において信号の損失は発生しない。
【0073】
図12(a)は実施例2におけるポートP1〜P2間の通過特性の計算結果である。図12(b)は実施例2における通過特性の計算結果である。
【0074】
図12(a)に示すように、第1送受信帯域において通過量は−300dB以下である。図12(a)と図7(a)とを比較すると、実施例2により、ポートP1〜P2間において、第1送受信帯域及び第2送受信帯域における通過量が大幅に減少したことが分かる。すなわちポートP1〜P2間のアイソレーション特性が大幅に改善したことが分かる。
【0075】
図12(b)に実線で示すように、ポートP1〜P3間の通過量は、第1送受信帯域において−0.958dB以上、信号を抑圧すべき第2送受信帯域において−14.2dB以下である。破線で示すように、ポートP2〜P3間の通過量は、第2送受信帯域において−0.864dB以下、信号を抑圧すべき第1送受信帯域において−13.9dB以下である。図12(b)と、図7(b)及び図8(b)とにおける通過特性を比較すると、実施例2は、比較例に対して、通過帯域では同程度の損失を示し、抑圧帯域ではより高い抑圧効果を示していることが分かる。以上のように、実施例2によれば、良好な通過特性と良好なアイソレーション特性とを両立することができる。
【0076】
実施例2によれば、第2回路20は電気的負荷28を含む。このため、第2回路20の通過特性と、アンテナ16に接続された第1回路10の通過特性とは同じ、又は同程度である。第1回路10から出力されたST1’と、第2回路20から出力されたST1’’とは同じ大きさを有し、例えば180°の位相差を有する。また、第1回路10から出力されたST2’と、第2回路20から出力されたST2’’とは同じ大きさを有し、例えば180°の位相差を有する。この結果、ST1及びST2の送信が同時に行われた場合でも、良好なアイソレーション特性を確保し、効果的にIMD3を抑制することができる。
【0077】
特に、LPF12とLPF22とが同じ通過特性を有し、かつHPF14とHPF24とが同じ通過特性を有し、かつ移相回路26における信号の損失がないことが好ましい。これにより、第1回路10と第2回路20とは同程度の通過特性を有することになる。この結果、より効果的に良好なアイソレーション特性を確保することができる。LPF12とLPF22とが極めて近い通過特性を有し、かつHPF14とHPF24とが極めて近い通過特性を有してもよい。また移相回路26における信号の損失が極めて小さくてもよい。
【0078】
次に実施例2の変形例について説明する。実施例2の変形例は、移相回路26としてストリップラインを用いる例である。ダイプレクサの構成は図10に示したものと同じなので、説明を省略する。
【0079】
図13は実施例2の変形例に係る電子部品が備えるダイプレクサの等価回路を例示する回路図である。図13に示すように、移相回路26はストリップラインSLに対応する。ストリップラインSLの一端はC17の他端と直列接続されている。ストリップラインSLの他端はポートP1と接続されている。
【0080】
次にシミュレーションに用いたパラメータについて説明する。C1〜C6のキャパシタンスは、実施例2において説明したものと同じである。L2〜L7のインダクタンスは、実施例2において説明したものと同じである。C7のキャパシタンスは1.58pFである。L1のインダクタンスは24.6nHである。C11〜C17のキャパシタンスは、C1〜C7のキャパシタンスと同じである。L11〜L17のインダクタンスは、L1〜L7のインダクタンスと同じである。
【0081】
シミュレーションの結果について説明する。図14(a)は実施例2の変形例におけるポートP1〜P2間の通過特性の計算結果である。図14(b)は実施例2の変形例における通過特性の計算結果である。
【0082】
図14(a)に示すように、第1送受信帯域において通過量は−36.5dB以下である。第2送受信帯域において通過量は−38.3dB以下である。図14(a)と図7(a)とを比較すると、実施例2の変形例によりアイソレーション特性が改善したことが分かる。
【0083】
図14(b)に実線で示すように、ポートP1〜P3間の通過量は、第1送受信帯域において−0.864dB以上、信号を抑圧すべき第2送受信帯域において−16.4dB以下である。破線で示すように、ポートP2〜P3間の通過量は、第2送受信帯域において−0.864dB以上、信号を抑圧すべき第1送受信帯域において−16.7dB以下である。図14(b)と図7(b)とにおける通過特性を比較すると、実施例2は、比較例に対して、通過帯域では同程度の損失を示し、抑圧帯域では高い抑圧効果を示していることが分かる。以上のように、実施例2の変形例によれば、良好な通過特性と、良好なアイソレーション特性とを両立することができる。
【0084】
図12(a)と図14(a)とに示すように、移相回路26としてトランスを用いる実施例2と、ストリップラインを用いる実施例2の変形例とでは、実施例2の方が良好なアイソレーション特性を示した。トランスは、ストリップラインと比較して広い周波数帯域において位相反転の機能を果たす。このため、ストリップラインを用いる場合よりも、トランスを用いる場合の方が、良好なアイソレーション特性を得ることができる。
【0085】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 第1回路
11 ダイプレクサ
12、22 ローパスフィルタ
14、24 ハイパスフィルタ
16 アンテナ
20 第2回路
23 バンドパスフィルタ
26 移相回路
28 電気的負荷
30 第1フロントエンド
32 第1デュプレクサ
40 第2フロントエンド
42 第2デュプレクサ
50 第1共通端
52 第2共通端
54 第3共通端
100、102、200 電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数が異なる第1送信信号と第1受信信号とを含む第1信号の入出力を行うための第1共通端と、周波数が異なる第2送信信号と第2受信信号とを含みかつ前記第1信号より高い周波数を有する第2信号の入出力を行うための第2共通端と、アンテナと接続するための第3共通端とに接続された第1回路と、
前記第1共通端と前記第2共通端との間において前記第1回路と並列接続された第2回路と、を具備し、
前記第1回路は、前記第1信号を通過させかつ前記第2信号を反射する第1フィルタ、及び前記第2信号を通過させかつ前記第1信号を反射する第2フィルタを含み、前記第1フィルタは前記第1共通端と前記第2フィルタとの間に接続され、前記第2フィルタは前記第1フィルタと前記第2共通端との間に接続され、前記第3共通端は、前記第1フィルタと前記第2フィルタとの間に位置し、
前記第2回路は、前記第1送信信号及び第2送信信号を反射し、前記第1送信信号及び第2送信信号それぞれの一部を通過させ、かつ前記第1送信信号及び第2送信信号の前記一部の位相を反転させることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記第1共通端には前記第1送信信号と前記第1受信信号とを分波する第1デュプレクサが接続され、
前記第2共通端には前記第2送信信号と前記第2受信信号とを分波する第2デュプレクサが接続されることを特徴とする請求項1記載の電子部品。
【請求項3】
前記第1共通端への前記第1送信信号の入力と前記第1共通端からの前記第1受信信号の出力とは同時に行われる、又は前記第2共通端への前記第2送信信号の入力と前記第2共通端からの前記第2受信信号の出力とは同時に行われることを特徴とする請求項2記載の電子部品。
【請求項4】
前記第1共通端から前記第2共通端に向けて前記第2回路を通過する前記第1送信信号は、前記第1共通端から前記第2共通端に向けて前記第1回路を通過する前記第1送信信号と比較して同じ大きさ及び逆位相を有し、
前記第2共通端から前記第1共通端に向けて前記第2回路を通過する前記第2送信信号は、前記第2共通端から前記第1共通端に向けて前記第1回路を通過する前記第2送信信号と比較して同じ大きさ及び逆位相を有することを特徴とする請求項1から3いずれか一項記載の電子部品。
【請求項5】
前記第2回路は第1ローパスフィルタと第1ハイパスフィルタとを含むことを特徴とする請求項1から4いずれか一項記載の電子部品。
【請求項6】
前記第1ハイパスフィルタは、前記第1共通端と前記第1ローパスフィルタとの間に接続され、
前記第1ローパスフィルタは、前記第2共通端と前記第1ハイパスフィルタとの間に接続され、
前記第2回路は、前記第1ローパスフィルタと前記第1ハイパスフィルタとの間に並列接続された電気的負荷を含むことを特徴とする請求項5記載の電子部品。
【請求項7】
前記第1フィルタは第2ローパスフィルタであり、前記第2フィルタは第2ハイパスフィルタであり、
前記第1ローパスフィルタと前記第2ローパスフィルタとは同じ通過特性を有し、
前記第1ハイパスフィルタと前記第2ハイパスフィルタとは同じ通過特性を有することを特徴とする請求項6記載の電子部品。
【請求項8】
前記第1受信信号及び前記第2受信信号の少なくとも一方の周波数は、前記第1送信信号及び前記第2送信信号各々の周波数より高い又は低いことを特徴とする請求項1から7いずれか一項記載の電子部品。
【請求項9】
前記第1信号はLTE Band13方式の送信帯域の周波数を有する信号及び受信帯域の周波数を有する信号を含み、
前記第2信号はW−CDMA Band5方式の送信帯域の周波数を有する信号及び受信帯域の周波数を有する信号を含むことを特徴とする請求項1から8いずれか一項記載の電子部品。
【請求項10】
前記第1共通端に接続され、前記第1送信信号と前記第1受信信号とを分波するデュプレクサを含む第1送受信回路と、
前記第2共通端に接続され、前記第2送信信号と前記第2受信信号とを分波するデュプレクサを含む第2送受信回路と、とを具備することを特徴とする請求項1から9いずれか一項記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−58990(P2013−58990A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197389(P2011−197389)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】