説明

電子鍵盤楽器の鍵盤装置

【課題】アコースティックピアノにより近い鍵タッチが得られる鍵盤装置を提供する。
【解決手段】ゴムスイッチ70は、ハンマー20のテール部21の下側の面である押下面21aに対向する回路基板90a上に配置されており、ハンマー20のテール部21の動作から押鍵を検出する機能を有する。また、ゴムスイッチ80は、鍵10の突起12に対向する回路基板90b上に配置されており、鍵10の動作から離鍵を検出する機能を有する。さらに、上述の回路基板90aおよび回路基板90bは、一体に構成されており(回路基板90)、ハンマー20のテール部21の下側の面である押下面21aに対向するシャーシ30上に取りつけられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子鍵盤楽器に備えられる鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、演奏者が押鍵中に抵抗感と非抵抗感を受けることでアコースティックピアノの鍵タッチが得られるよう構成された電子鍵盤楽器の鍵盤装置(以下、鍵盤装置と称す。)が知られている。具体的には、このような鍵盤装置は、電子鍵盤楽器の棚板の上方に設置されたシャーシと、シャーシの後方端に揺動可能に取り付けられ、シャーシの前方端の上方にその遊端側が位置するよう設置された鍵と、シャーシのほぼ中央に前記鍵の動作に連動して揺動可能に取り付けられ、その遊端側が前記シャーシの前方に配置されているハンマーと、を備え、さらに、鍵が所定の第1の深さまで押下された際にオンとなる第1スイッチと鍵が上記第1の深さよりも深い所定の第2の深さまで押下された際にオンとなる第2スイッチとが、シャーシの上面に固定された回路基板に取り付けられている(例えば、特許文献1参照。)。そして、鍵が押下された際に、第1スイッチがオンとなる時刻から第2スイッチがオンとなる時刻までの時間が計時され、これによりこの鍵の押鍵速度(オンベロシティ)が求められる。また離鍵の際には第2スイッチがオフとなる時刻から第1スイッチがオフとなる時刻までの時間が計時され、これによりこの鍵の離鍵速度(オフベロシティ)が求められる。この場合、一般的には、例えば、特許文献1(特に、図2参照)に示されるように、第1スイッチおよび第2スイッチが共にハンマーのテール部の動作(押鍵および離鍵)を検出することによって間接的に鍵の動作を検出することが行われている。
【特許文献1】特開平06−274165号公報(第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述のような鍵盤装置においては、第1スイッチおよび第2スイッチが共にハンマーのテール部の動作を介して鍵の動作を検出しているため、連打時に演奏者による打鍵によって鍵が跳ねた場合に演奏者による次の打鍵とタイミングが合うことがあり、このような場合には周波数が合うためにハンマーの動作が鍵の動作に連動せず、アコースティックピアノの鍵タッチが得られないという問題があった。
【0004】
本発明は、このような不具合に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、アコースティックピアノにより近い鍵タッチが得られる鍵盤装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1に係る電子鍵盤楽器の鍵盤装置(1:この欄においては、発明に対する理解を容易にするため、必要に応じて「発明を実施するための最良の形態」欄で用いた符号を付すが、この符号によって請求の範囲を限定することを意味するものではない。)は、電子鍵盤楽器の棚板(40)の上方に設置されたシャーシと(30)、前記シャーシの後方端に揺動可能に取り付けられ、前記シャーシの前方端の上方にその遊端側が位置するよう設置された鍵(10)と、前記シャーシのほぼ中央に前記鍵の動作に連動して揺動可能に取り付けられたハンマー(20)と、を備える鍵盤装置であって、前記ハンマーの動作を検出する第一の検出器(70)と、前記鍵の動作を検出する第二の検出器(80)と、前記第一の検出器が取り付けられた第一の回路基板(90a)と、前記第二の検出器が取り付けられた第二の回路基板(90b)と、を備え、前記第一の回路基板および前記第ニの回路基板については、一体に構成され、且つ前記ハンマーのテール部の下方に配置されていることを特徴とする。
【0006】
従来の電子鍵盤楽器の鍵盤装置においては、第1スイッチおよび第2スイッチが共にハンマーのテール部の動作を介して鍵の動作を検出しているため、連打時に演奏者による打鍵によって鍵が跳ねた場合に演奏者による次の打鍵とタイミングが合うことがあり、このような場合には周波数が合うためにハンマーの動作が鍵の動作に連動せず、アコースティックピアノの鍵タッチが得られないという問題があった。これに対して本発明によれば、第一の検出器がハンマーの動作を検出し、第二の検出器が鍵の動作を検出するので、押鍵および離鍵のタイミングをより正確に検出することができるとともに、例えば第一の検出器によってハンマーの動作から検出したベロシティーと第二の検出器によって鍵の動作から検出したベロシティーとを比較することによってより適切な検出結果を採用することができ、押鍵を正確に検出することができる。したがって、アコースティックピアノにより近い鍵タッチを得ることができる。
【0007】
また、本発明によれば、第一の回路基板および第ニの回路基板については一体に構成されているので、その部品点数の削減により製造工数および製造コストを削減できる。
この場合、上述の検出器については、(イ)第一の検出器または第二の検出器の少なくとも一方が、鍵またはハンマーの何れかによって押圧又は押圧解除される「接触型スイッチ」であることが考えられる(請求項2)。このようにすれば、比較的高価な非接触型スイッチを検出器として採用した場合に比べて、その導入コストを低減することができる。
【0008】
また、(ロ)第一の検出器または第二の検出器の少なくとも一方が、鍵またはハンマーの何れかによって検出される光を利用する「非接触型スイッチ」であることが考えられる(請求項3)。このようにすれば、検出器として接触型スイッチを採用した場合に比べて、その耐久性を高めることができる。
【0009】
なお、(ハ)第一の検出器、第二の検出器、第一の回路基板および第ニの回路基板については、ハンマーのテール部の下方に配置することが考えられる。また、(ニ)第一の検出器、第二の検出器、第一の回路基板および第ニの回路基板については、当該鍵盤装置における前部に配置することが考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
[第一実施形態]
図1は第一実施形態の鍵盤装置の断面図である。
【0011】
[鍵盤装置1の構成の説明]
電子ピアノなどの電子鍵盤楽器で用いられる鍵盤装置1は、図1に示すように、鍵10、ハンマー20、シャーシ30、支持具50,50、リブ60、第一のゴムスイッチ70、第二のゴムスイッチ80、および回路基盤90を備えており、棚板40上に設置されている。
【0012】
[シャーシ30の構成の説明]
このうちシャーシ30は、棚板40の上方に設置されている。具体的には、シャーシ30は、その前方部と後方部に配置された二つの支持具50により棚板40から所定高さ位置に支持されるとともに、二つの支持具50を渡して設けられたリブ60によりその中間点が支持されている。
【0013】
[鍵10の構成の説明]
鍵10は、シャーシ30の後方端に揺動可能に取り付けられ、シャーシ30の前方端の上方に鍵10の遊端側が配置されるよう設置されている。また、鍵10は、ハンマー20のテール部21に対向する位置に突起11を備えている。また、鍵10は、第二のゴムスイッチ80に対向する位置に突起12を備えている。
【0014】
[ハンマー20の構成の説明]
ハンマー20は、シャーシ30中央の後方寄りの上面に揺動可能に取り付けられ、シャーシ30に設けられた挿通孔31を通し、錘25を備える遊端側がシャーシ30の前方端の下方に位置するよう設置されている。また、ハンマー20は、シャーシ30に揺動可能に取り付けられている揺動軸26の後方側にテール部21を備えている。
【0015】
[ゴムスイッチ70,80、および回路基盤90の構成の説明]
ゴムスイッチ70は、ハンマー20のテール部21の下側の面である押下面21aに対向する回路基板90a上に配置されており、ハンマー20のテール部21の動作から押鍵を検出する機能を有する。すなわち、ゴムスイッチ70は、テール部21に押下される方向に沿って並設され、接点間の距離が異なる2対の接点を、ゴム製の本体の内部に備えている。このゴムスイッチ70を用いると、2対の接点間の距離が異なるので、各接点の接触タイミングから押鍵の速さ(ベロシティ)すなわち押鍵の強さが分かる。そのため、本実施形態の鍵盤楽器1では、図示しない制御装置により、ゴムスイッチ70で検出した各接点の接触タイミングに基づいて発音される音の強さが決定され、その音の強さで発音する制御がなされる。
【0016】
ゴムスイッチ80は、鍵10の突起12に対向する回路基板90b上に配置されており、鍵10の動作から離鍵を検出する機能を有する。すなわち、ゴムスイッチ80は、上述のゴムスイッチ70と同様の構成を有している。このゴムスイッチ80を用いると、2対の接点間の距離が異なるので、各接点の分離タイミングから離鍵の速さ(オフベロシティ)が分かる。そのため、本実施形態の鍵盤楽器1では、図示しない制御装置により、ゴムスイッチ80で検出した各接点の接触タイミングに基づいて消音する制御がなされる。
【0017】
また、上述の回路基板90aおよび回路基板90bは、一体に構成されており(回路基板90)、ハンマー20のテール部21の下側の面である押下面21aに対向するシャーシ30上に取りつけられている。
【0018】
なお、ゴムスイッチ70は特許請求の範囲における「第一の検出器」に該当し、ゴムスイッチ80は特許請求の範囲における「第二の検出器」に該当する。また、回路基板90aは特許請求の範囲における「第一の回路基板」に該当し、回路基板90bは特許請求の範囲における「第二の回路基板」に該当する。
【0019】
以上のように構成された鍵盤装置1では、押鍵時および離鍵時には次のように作用する。すなわち、鍵10が押鍵されると突起11がハンマー20のテール部21を押下するとともに、突起12がゴムスイッチ80を押下する。すると、鍵10の突起11によって押下されたハンマー20のテール部21がゴムスイッチ70を押下する。そして、ゴムスイッチ70が備えている各接点が順次接触するとともに、ゴムスイッチ80が備えている各接点が順次接触する。このようなゴムスイッチ70における各接点の接触によって押鍵を検出する。一方、鍵10が離鍵されると、鍵10の突起11が上昇してハンマー20のテール部21から離れるとともに、鍵10の突起12が上昇してゴムスイッチ80から離れる。すると、ハンマー10のテール部21の上昇によってテール部21がゴムスイッチ70から離れ、これに伴ってゴムスイッチ70が備えている各接点が順次分離する。また、鍵10の突起12の上昇によって突起12がゴムスイッチ80から離れ、これに伴ってゴムスイッチ80が備えている各接点が順次分離する。このようなゴムスイッチ80における各接点の分離によって離鍵を検出する。
【0020】
なお、鍵盤装置1における各部構成については、公知技術にしたがっているのでここでは詳細な説明は省略する。
[効果]
このように第一実施形態の鍵盤装置1によれば、次のような効果を奏する。すわなち、従来の鍵盤装置においては、第1スイッチおよび第2スイッチが共にハンマーのテール部の動作を介して鍵の動作を検出しているため、連打時に演奏者による打鍵によって鍵が跳ねた場合に演奏者による次の打鍵とタイミングが合うことがあり、このような場合には周波数が合うためにハンマーの動作が鍵の動作に連動せず、アコースティックピアノの鍵タッチが得られないという問題があった。これに対して第一実施形態の鍵盤装置1によれば、ゴムスイッチ70がハンマー20のテール部21の動作から押鍵を検出し、ゴムスイッチ80が鍵10の動作から離鍵を検出するので、押鍵および離鍵のタイミングをより正確に検出することができるとともに、例えばゴムスイッチ70によってハンマー20の動作から検出したベロシティーとゴムスイッチ80によって鍵10の動作から検出したベロシティーとを比較することによってより適切な検出結果を採用することができ、押鍵を正確に検出することができる。したがって、アコースティックピアノにより近い鍵タッチを得ることができる。
【0021】
また、第一実施形態の鍵盤装置1によれば、回路基板90aおよび回路基板90bが一体に構成されており(回路基板90)、ハンマー20のテール部21の下側の面である押下面21aに対向するシャーシ30上に取りつけられているので、その部品点数の削減により製造工数および製造コストを削減できる。
【0022】
また、第一実施形態の鍵盤装置1によれば、ハンマー20のテール部21の動作や鍵10の動作を検出するための検出器としてゴムスイッチ70,80を採用しているので、比較的高価な非接触型スイッチを検出器として採用した場合に比べて、その導入コストを低減することができる。
【0023】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のような様々な態様にて実施することが可能である。
【0024】
(1)上記実施形態では、ハンマー20のテール部21の動作や鍵10の動作を検出するための検出器としてゴムスイッチ70,80を採用しているが、これには限られず、他の接触型スイッチを採用してもよい。また、図2に例示するように、検出される光を利用する光スイッチ170,180などの非接触型スイッチを採用してもよい。このようにすれば、検出器としてゴムスイッチなどの接触型スイッチを採用した場合に比べて、その耐久性を高めることができる。
【0025】
また、ハンマー20のテール部21の動作を検出するための検出器または鍵10の動作を検出するための検出器のうち、一方を接触型スイッチとして他方を非接触型スイッチとしてもよい。
【0026】
(2)上記実施形態では、ゴムスイッチ70がハンマー20のテール部21の動作を検出するよう構成されているが、これには限られず、ゴムスイッチ70がハンマー20のテール部21以外の部分の動作を検出するよう構成してもよい。このように構成しても上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0027】
(3)上記実施形態では、ゴムスイッチ70がハンマー20の動作から「押鍵」を検出し、ゴムスイッチ80が鍵10の動作から「離鍵」を検出するよう構成されているが、これには限られず、ゴムスイッチ70がハンマー20の動作から「離鍵」を検出し、ゴムスイッチ80が鍵10の動作から「押鍵」を検出するよう構成してもよい。このように構成しても上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0028】
(4)上記実施形態では、ゴムスイッチ70,80、回路基板90がハンマー20のテール部21の下方に配置されているが、これには限られず、例えばゴムスイッチや光スイッチおよび回路基板を、鍵盤装置における前部に配置してもよい。具体的には、図3に例示するように、鍵盤装置201では、回路基板290が鍵盤装置201の前部に配置されており、さらに、鍵10の動作を検出するための光スイッチ270が回路基板290の上面側290aに取り付けられており、ハンマー20の動作を検出するための光スイッチ280が回路基板290の下面側290bに取り付けられている。このように一つの回路基板290の両面に光スイッチ270,280を取り付けたことによって回路基板290aおよび回路基板290bが一体に構成されるため、その部品点数の削減により製造工数および製造コストを削減できる。なお、図3では白鍵10Wの動作を検出する場合を例示したが、黒鍵10Kの動作を検出する場合には、光スイッチ270,280および回路基板290を黒鍵の下方に配置する必要がある。このように構成しても上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第一実施形態の電子鍵盤楽器の鍵盤装置の断面図である。
【図2】別実施形態の電子鍵盤楽器の鍵盤装置の断面図(1)である。
【図3】別実施形態の電子鍵盤楽器の鍵盤装置の断面図(2)である。
【符号の説明】
【0030】
1,101,201…鍵盤楽器、10…鍵盤、10K…黒鍵、10W…白鍵、11,12…突起、20…ハンマー、21…テール部、21a…押下面、22…凹部、30…シャーシ、31…挿通孔、40…棚板、50支持具、60…リブ、70,80…ゴムスイッチ、90,90a,90b,190,190a,190b,290…回路基板、290a・・・回路基板の上面側、290b・・・回路基板の下面側、170,180,270,280…光スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子鍵盤楽器の棚板の上方に設置されたシャーシと、
前記シャーシの後方端に揺動可能に取り付けられ、前記シャーシの前方端の上方にその遊端側が位置するよう設置された鍵と、
前記シャーシのほぼ中央に前記鍵の動作に連動して揺動可能に取り付けられたハンマーと、
を備える電子鍵盤楽器の鍵盤装置であって、
前記ハンマーの動作を検出する第一の検出器と、
前記鍵の動作を検出する第二の検出器と、
前記第一の検出器が取り付けられた第一の回路基板と、
前記第二の検出器が取り付けられた第二の回路基板と、
を備え、
前記第一の回路基板および前記第ニの回路基板については一体に構成されていることを特徴とする電子鍵盤楽器の鍵盤装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子鍵盤楽器の鍵盤装置において、
前記第一の検出器または前記第二の検出器の少なくとも一方は、前記鍵または前記ハンマーの何れかによって押圧又は押圧解除される接触型スイッチであることを特徴とする電子鍵盤楽器の鍵盤装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電子鍵盤楽器の鍵盤装置において、
前記第一の検出器または前記第二の検出器の少なくとも一方は、前記鍵または前記ハンマーの何れかによって検出される光を利用する非接触型スイッチであることを特徴とする電子鍵盤楽器の鍵盤装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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