説明

電子音発生装置

【課題】低コスト且つ簡素な構成で高品質の電子音を発生させる。
【解決手段】音源生成部2に、マイクロコンピュータ(マイコン)10によって制御されるPWM信号生成部11,12,13を備え、和音生成部3に、3種類のPWM信号を合成する信号合成部4、信号合成部4の出力信号を増幅する電力増幅部5、電力増幅部5の出力信号を必要な周波数帯域に制限して発音部7に出力するフィルタ部6を備える。マイコン10のプログラム処理により、PWM信号の周波数、デュティー比、出力タイミングを可変し、3種類のPWM信号を信号合成部4で合成し、その合成信号を電力増幅部5で増幅した後、フィルタ部6にてフィルタリングして必要な周波数帯域に制限し、発音部7で音に変換することにより、緊急感と高級感が調整された統一感のある音群を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音源として生成される複数の信号を合成して高品質の電子音を発生する電子音発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、音響による情報伝達手段として、注意喚起や危険報知のための警報音、操作ガイドや各種情報を提供するためのサイン音等の電子音が用いられている。このような電子音の発生装置としては、例えば、矩形波パルス列を生成し、そのパルス列を増幅して圧電サウンダを駆動する装置等が知られているが、近年では、高さの異なる音を合成した和音等の高級感のある高品質の電子音が求められる傾向にある。
【0003】
例えば、特許文献2には、複数の音階からなるメロディ音をメモリに蓄え、メモリ上のデータをD/A変換してアナログ信号を得ることでスピーカや圧電ブザーを駆動し、メロディ音を発生させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−5455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の技術は、所望の音を自由度高く得ることが可能であるが、高品質の電子音を得ようとする場合、メモリ容量が増加するばかりでなく高価なD/A変換器を用いる必要があり、装置が複雑化してコスト上昇を招く。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、低コスト且つ簡素な構成で高品質の所望の電子音を発生させることのできる電子音発生装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による電子音発生装置は、複数の信号を音源として生成し、各信号の周波数及び出力タイミングを可変可能な音源生成部と、前記音源生成部から出力される複数の信号を合成して和音を生成する和音生成部と、前記和音生成部からの出力信号を音に変換する発音部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低コスト且つ簡素な構成で高品質の電子音を発生させることができ、所望の用途に応じた統一感のある音群を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】電子音発生装置の構成図
【図2】PWM信号生成部の構成図
【図3】和音生成部の他の構成を示す説明図
【図4】PWM信号の出力ロジックを示す説明図
【図5】PWM信号のデューティ比毎の高調波のスペクトルを示す説明図
【図6】PWM信号の出力タイミングを示す説明図
【図7】スピーカ入力波形を示す波形図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1において、符号1は、音源として生成される複数の信号を合成して高品質の電子音を発生する電子音発生装置であり、例えば、自動車等の車両に搭載され、ドライバに警告するための警報音、操作ガイドや各種情報を提供するためのサイン音等を生成し、スピーカや圧電サウンダ等からなる発音部7から発音出力する。このような電子音発生装置1は、複数の基本信号を音源として生成する音源生成部2、音源生成部2から出力される複数の基本信号を合成して和音を生成する和音生成部3、和音生成部3からの出力信号を音に変換する発音部7を備えて構成されている。
【0011】
音源生成部2は、パルス幅変調(PWM)信号を生成する複数のPWM信号生成部を備えて構成されている。本実施の形態においては、複数のPWM信号生成部として、同一の回路構成を有する3つの信号生成部、すなわち、第1のPWM信号生成部11,第2のPWM信号生成部12,第3のPWM信号生成部13を備えている。また、和音生成部3は、第1〜第3のPWM信号生成部11,12,13から出力される3つのPWM信号を合成する信号合成部4、信号合成部4からの出力信号を増幅する電力増幅部5、電力増幅部5の出力信号を必要な周波数帯域に制限して発音部7に出力するフィルタ部6を備えて構成されている。
【0012】
尚、本実施の形態では、3つのPWM信号生成部11,12,13からのPWM信号を用いて和音を生成する例について説明するが、PWM信号生成部の数は2以上の任意の自然数であれば良い。
【0013】
第1〜第3のPWM信号生成部11,12,13は、それぞれ、マイクロコンピュータ(マイコン)10によって制御され、マイコン10のプログラム処理により、各PWM信号の周波数、デュティー比、出力タイミングを可変することができる。具体的には、第1〜第3のPWM信号生成部11,12,13は、図2に示すように、所定の基準信号のクロック数をカウントするタイマ21、マイコン10によってデータがセットされる2つのレジスタ22A,22B、タイマ21のカウント値とレジスタ22Aのデータとを比較するコンパレータ23A、タイマ21のカウント値とレジスタ22Bのデータとを比較するコンパレータ23Bを備えて構成されている。
【0014】
2つのコンパレータ23A,23Bのうち、コンパレータ23Bはタイマ21のカウント値をゼロクリアするに用いられ、コンパレータ23Aから目的とする信号が取り出される。このため、コンパレータ23Aの出力側には、駆動能力を増強するためのバッファ等からなる出力ロジック部24が接続され、この出力ロジック部24の出力が信号合成部4への出力となる。
【0015】
このような構成を有する電子音発生装置1においては、音源生成部2のPWM信号生成部11,12,13で生成された各PWM信号が和音生成部3で合成され、緊急感と高級感が調整された統一感のある音群を得ることができる。和音生成部3においては、3つのPWM信号を加算器等からなる信号合成部4で加算・重畳することにより合成し、その合成信号が発音部7で必要とされる音圧レベルを得られるように電力増幅部5にて増幅される。更に、電力増幅部5の出力信号は、フィルタ部6にてフィルタリングされて必要な周波数帯域に制限され、発音部7で音に変換される。
【0016】
尚、フィルタ部6は、希望の周波数帯域を抽出するものであり、低域通過フィルタ,高域通過フィルタ,帯域通過フィルタの何れを採用しても良く、オペアンプ等によって構成される能動フィルタ、或いは、レジスタ、インダクタ、キャパシタ等によって構成される受動フィルタを用いることができる。
【0017】
また、和音生成部3は、第1〜第3のPWM信号生成部11,12,13からの信号を、信号合成部4に直接入力する図1の構成に限定されることなく、図3に示すように、各PWM信号を第1〜第3のパルス増幅部31,32,33で増幅した後、信号合成部4に入力し、信号合成部4からフィルタ部6を経て発音部7に出力する構成としても良い。このような構成では、第1〜第3のパルス増幅部31,32,33を構成する各増幅器に線形性は全く要求されないため、D級アンプのような安価な増幅器を用いることができ、コスト低減に寄与することができる。
【0018】
音源生成部2のPWM信号発生部11,12,13で生成される各PWM信号は、周波数、デューティ比、出力タイミング(発音タイミング)がマイコン10によって制御され、和音生成部3で生成される和音を構成する各音が調整されて緊急感と高級感が調整された統一感のある音群を得ることが可能となる。以下、電子音発生装置1における和音の生成について、PWM信号発生部11,12,13の動作を主として説明する。
【0019】
PWM信号生成部11,12,13におけるPWM信号は、タイマ21のカウント値とレジスタ22A,22Bの各データとを比較することで生成される。ここで、タイマ21のカウント値をTm、レジスタ22Aの設定値をRa、レジスタ22Bの設定値をRbとして(但し、Rb>Ra)、PWM信号の出力ロジックについて説明する。
【0020】
タイマ21によるクロックのカウントが開始されたとき、Tm<Raの初期状態では、コンパレータ23Aの出力はハイ(High)レベルとなり、Tm=Raに達したとき、コンパレータ23Aの出力がハイレベルからロー(Low)レベルに反転する。更に、タイマ21のカウントが続行され、Tm=Rbになると、コンパレータ23Bからタイマ21にリセット信号が出力されてタイマ21のカウント値Tmがゼロクリアされ、初期の状態に戻って以上の動作が繰り返される。
【0021】
この結果、タイマ21のカウント値と出力ロジック部24の出力(コンパレータ23Aの出力)との関係は、図4に示すようになり、レジスタ22Bの設定値とタイマ21へのクロック信号の周波数によってPWM信号の周期Tが決定され、レジスタ22Aの設定値によってPWM信号のパルス幅τが決定される。従って、マイコン10によりレジスタ22A,22Bのデータを可変することにより、PWM信号の周波数F(F=1/T)とデューティ比D(D=τ/T)を可変することができる。
【0022】
図5は、第1〜第3のPWM信号生成部11,12,13で生成される3種類のPWM信号のデューティ比が、それぞれ、50%、25%、62.5%の繰り返し矩形波である場合、これらを基本波とする高調波のスペクトルを示している。図5からは、PWM信号のデューティ比を50%より小さくした場合若しくは50%より大きくした場合には、出力信号に含まれる基本波のレベルは、デューティ比50%の場合に比べて小さくなることがわかる。従って、PWM信号のデューティ比を可変することにより、発音の音量を制御することができ、同時に、デューティ比を変化させることにより、高調波成分のレベルを変化させ、高調波成分により人が感じる音質を変化させることができる。
【0023】
例えば、ニ長調の音階の中から「ファ#」,「ラ」,「レ」の3つの音を利用する場合を例に取って説明すると、第1のPWM信号生成部11では「ファ#」に相当する739.99HzのPWM信号を生成し、第2のPWM信号生成部12では「ラ」に相当する880HzのPWM信号を生成し、第3のPWM信号生成部13では「レ」に相当する1174.66HzのPWM信号を生成する。尚、以下では、全てのPWM信号のデューティ比を50%として説明する。
【0024】
この場合、第1のPWM信号生成部11のタイマ21への入力クロック周波数をFckとすれば、レジスタ22Bの値はFck/739.99として算出され、レジスタ22Aの値はFck/(2×739.99)として算出される。同様に、第2のPWM信号生成部12のレジスタ22Bの値はFck/880となり、レジスタ22Aの値はFck/(2×880)となる。また、第3のPWM信号生成部13のレジスタ22Bの値はFck/1174.66となり、レジスタ22Aの値はFck/(2×1174.66)となる。各レジスタの値は一般には小数となるが、算出値に近い自然数としても実質的に問題はない。
【0025】
そして、図6に示すように、第1のPWM信号生成部11をONさせて(動作させて)PWM信号を出力した後、第2のPWM信号生成部12を時間差t1のタイミングでONさせ、更に、第2のPWM信号生成部12に対して時間差t2のタイミングで第3のPWM信号生成部13をONさせ、これらの発音タイミングが異なるPWM信号を合成してスピーカ入力信号(発音部7への入力信号)を生成すると、図7(a)に示すような波形の信号が得られる。図7(a)の波形信号は、「ファ#」,「ラ」,「レ」に相当する3種類の周波数の正弦波を、同様に時間差t1,t2で出力して合成・生成した場合の図7(b)の信号とほぼ等しいことから、第1〜第3のPWM信号生成部11,12,13のPWM信号を合成することで、統一感のある和音が得られることがわかる。
【0026】
尚、図6及び以下の説明では、便宜上、第1〜第3の信号生成部11,12,13の出力を、それぞれ、PWM(1),PWM(2),PWM(3)で表現している。
【0027】
以上の例では、ニ長調の音階を利用して説明したが、調性が統一された音階の中から任意の音階を利用して和音を生成しても良く、時間差t1,t2を可変することにより、統一感のある無数の警報音群を得ることができる。この場合、PWM信号生成部11,12,13におけるレジスタ22A,22Bの値を固定とした状態では、各PWM信号の出力タイミング(発音タイミング)は、以下の(1)〜(6)に示すように、6通りの組合せとすることができる。
(1)PWM(1) → PWM(2) → PWM(3)
(2)PWM(1) → PWM(3) → PWM(2)
(3)PWM(2) → PWM(1) → PWM(3)
(4)PWM(2) → PWM(3) → PWM(1)
(5)PWM(3) → PWM(1) → PWM(2)
(6)PWM(3) → PWM(2) → PWM(1)
【0028】
また、PWM信号生成部11,12,13におけるレジスタ22Bの値を変えることにより、容易に音階を変更することができ、他のニ長調の音階を設定すれば、統一感のある音群を更に得ることが可能となる。更に、レジスタ22Aの値を変えることによりスピーカた圧電サウンダ等の発音駆動信号の高調波成分を調整することができ、音質を制御することができる。同時に、図5に示したように、レジスタ22Aの値により発音駆動信号の基本波成分を増減することができるため、警報等の音量を自在にコントロールすることが可能となる。レジスタ22Aの値を一定周期で変化させれば、警報音等に唸りを発生させることも可能である。
【0029】
このように本実施の形態においては、複数のPWM信号を合成、増幅、フィルタリングすることにより、低コスト且つ小型軽量の装置で所望の電子音を高品質な和音として発生させることができる。しかも、各PWM信号の周波数、デューティ比、和音を構成する各音の発音タイミングを、マイコンのプログラム処理で可変することができ、用途に応じて緊急感と高級感を自由に制御することが可能となり、統一感のある音群を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0030】
1 電子音発生装置
2 音源生成部
3 和音生成部
7 発音部
11,12,13 PWM信号生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号を音源として生成し、各信号の周波数及び出力タイミングを可変可能な音源生成部と、
前記音源生成部から出力される複数の信号を合成して和音を生成する和音生成部と、
前記和音生成部からの出力信号を音に変換する発音部と
を備えることを特徴とする電子音発生装置。
【請求項2】
前記音源生成部は、前記音源となる信号として周波数及びデューティ比が可変されるパルス信号を生成することを特徴とする請求項1記載の電子音発生装置。
【請求項3】
前記音源生成部は、前記音源となる複数の信号の出力順を可変可能であることを特徴とする請求項1記載の電子音発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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