説明

電柱設置装置

【課題】作業場所毎に工具袋などを引っ掛ける箇所を設けることなく、既存の箇所を利用してその工具袋を信頼性高く引っ掛けることができるようにして、落下などの恐れなく集中して作業可能に、電柱上部での作業を補助することのできる電柱設置装置を提供すること。
【解決手段】外面部12に連設されているスカート部13と挟圧片14との間に変圧器のハンガ座の平面部を挟み込むようにして取り付ける取付装置11と、この取付装置の外面部に立設されている棒状部材21と、を備えており、この棒状部材の先端部21bは延在方向に対して交差するように水平方向に周回しつつ上昇する、所謂、豚の尻尾形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱設置装置に関し、詳しくは、高所に設置されている板材に工具袋などを吊り下げることを可能にするものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電柱の上部には各種機器が設置されており、このような電柱に設置されている機器の定期点検や電線の増設を行う際には、電柱上部の足場ボルトなどを利用しつつ設置場所に作業者が登って各種作業を行う。
【0003】
このとき、作業者は使用する工具や材料などを工具袋に入れて近い箇所に準備して各種作業を行っており、その工具袋は、紐の先端にフックなどを連結することにより、例えば、変圧器近傍の作業ではその変圧器に設置されているハンガ座にそのフックを引っ掛けている。この工具袋の紐に連結するフックは、一般的には、U字あるいは半周以上の湾曲円弧形状などに形成されており、吊り下げたい箇所を内部に収装することにより引っ掛けて吊り下げることができる(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2000−153985号公報
【特許文献2】特開2004−166723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の吊り下げ用のフックなどにあっては、下方に開口する形状であることから、作業中に誤って工具袋を上方に持ち上げるような力が加わった場合には、引っ掛けた箇所から外れて落下してしまう恐れがある。このため、集中して作業することができず、作業性が悪くなってしまう、という問題があった。
【0005】
このことから、作業袋を固定する箇所として、電柱上部に特別な装置を配設することが考えられるが、膨大な箇所に配設する必要があってコストが掛かり過ぎてしまって、結果的には使われなくなってしまうことが予想される。
【0006】
そこで、本発明は、作業場所毎に工具袋などを引っ掛ける箇所を設けることなく、既存の箇所を利用してその工具袋を信頼性高く引っ掛けることができるようにして、落下などの恐れなく集中して作業可能に、電柱上部での作業を補助することのできる電柱設置装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する電柱設置装置の第1の発明は、電柱上部に存在する板材を挟み込むようにして該板材に取り付けられて支持される取付装置と、該取付装置の外面に連設されて該外面から外方に延在する棒状部材と、を備えており、該棒状部材の先端側は、延在方向から上方に延長された返し形状に形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
この発明では、電柱上部に設置されている板状部材を挟み込むようにして、棒状部材を側方や上方などに延在する姿勢に取り付けることができる。したがって、例えば、鉛直方向や水平方向の板状部材が存在する電柱上部のアームなどに棒状部材を取り付けることができ、その棒状部材に工具袋の紐などを引っ掛けて吊り下げることができる。このとき、棒状部材が側方に延在する姿勢の際には、先端の返し形状が上方に向くように取り付けられることにより、工具袋の紐が滑って先端から脱落してしまうこともない。
【0009】
上記課題を解決する電柱設置装置の第2の発明は、上記第1の発明の特定事項に加え、前記棒状部材の先端側は、延在方向に対して交差する方向に周回する周回部が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
この発明では、電柱上部の板状部材に棒状部材が側方に延在する姿勢に取り付けられた場合には、その棒状部材先端の周回部内に工具袋の紐などを進入させることができる。したがって、その工具袋の紐が誤って大きく上方に移動しようとしたとしても、その棒状部材先端の周回部から抜け出ることができず、より信頼性高く吊り下げた状態を維持することができる。
【0011】
上記課題を解決する電柱設置装置の第3の発明は、上記第1または第2の発明の特定事項に加え、前記取付装置は、電柱上部の変圧器本体の外周面に配設されているハンガ座の該変圧器本体の外周面に対面する板材を挟み込むようにして当該変圧器に取付支持されることを特徴とするものである。
【0012】
この発明では、電柱上部に設置されている変圧器のハンガ座(板状部材)に、側方の水平方向に延在する姿勢に棒状部材を取り付けることができ、その棒状部材に工具袋の紐などを引っ掛けて吊り下げることができる。このとき、棒状部材先端の返し形状が上方に向くことにより、あるいは、その棒状部材先端の周回部が形成されることにより、工具袋の紐などを脱落させることなく吊り下げることができる。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明によれば、電柱上部に設置されている板状部材を挟み込むようにして、先端に返しや周回部の形成された棒状部材を水平や鉛直になる姿勢で取り付けることができ、例えば、変圧器に既存のハンガ座に設置することができる。したがって、この作業位置近傍に設置された棒状部材に工具袋の紐などを引っ掛けて吊り下げることができ、工具袋の紐が滑って先端から脱落させてしまうことなく、その工具袋から注意を払うことなく材料や工具などを取り出して作業を行うことができる。この結果、集中して、ミスなく、また、効率よく安全に作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図5は本発明に係る電柱設置装置の一実施形態を示す図である。
【0015】
図1および図2において、電柱設置装置10は、板状部材を挟み込む構造に設計されている取付装置11と、この取付装置11の表面から鉛直外方に延在するように立設されている棒状部材21と、を備えて構築されており、取付装置11を板状部材に取り付けることにより棒状部材21をその板状部材に設置することができる。
【0016】
取付装置11は、棒状部材21を立設する外面部12が長方形に形成されているとともに、この外面部12の長手方向の側辺12aには背面側に向かって拡開するように延在するスカート部13が連設されており、外面部12の一端側の背面には、スカート部13の間に位置して取付対象の板状部材を挟み込む挟圧片14がネジ止め固設されている。
【0017】
この取付装置11の挟圧片14は、外面部12(スカート部13の拡開間隔)よりも小さな幅の短冊形状に形成されており、外面部12の一端部12bの背面に固設された一端部14bから折り返されてその外面部12の他端部12cの背面側に接近する波形状に作製されている。すなわち、この挟圧片14は、他端部14cがスカート部13の側辺13aよりも外面部12の他端部12cの背面側に沈みつつ、さらに、その端辺14dが外面部12の他端部12cの背面側から離隔してスカート部13の側辺13aよりも浮いた状態になる形状に形成されている。
【0018】
これにより、取付装置11は、スカート部13の側辺13aと挟圧片14の端辺14dとの間に取付対象の板状部材を差し込むことにより、その板状部材をスカート部13の側辺13aと挟圧片14の他端部14cとの間で挟圧する状態に取り付けることができる。ここで、取付装置11は、接近するスカート部13の側辺13aと挟圧片14の端辺14dが板状部材を挟み込んで挟圧する状態に取り付けることから、棒状部材21の先端側に荷重が掛かって外面部12に回転力が加わる場合でも、ブロック形状の対象物を離隔する部材間で挟み込む場合のようにその回転力により滑って外れてしまう恐れなく、その回転を制限して取付状態を維持することができる。
【0019】
棒状部材21は、取付装置11の外面部12に鉛直な姿勢になるように基端部21aが溶接などされて固設されており、その外面部12の他端部12c側との間に概略三角形の補強板22が溶接されている。
【0020】
この棒状部材21の先端部21bは、取付装置11の外面部12の一端部12bが上側になるように取り付けた際に、先端側ほど上昇する返し形状の姿勢になるように設計されており、その本体部分の延在方向に対して交差するように水平方向に周回しつつ上昇する周回部を構成するように、所謂、豚の尻尾形状に形成されている。
【0021】
そして、この電柱設置装置10は、取付装置11のスカート部13の側辺13aの間隔が、図3に示す変圧器100のハンガ座110よりも幅狭の間隔になるように作製されており、取付装置11のスカート部13の側辺13aと挟圧片14の端辺14dとの間に、その変圧器100の板状部材であるハンガ座110を差し込んで挟圧させることにより、棒状部材21を水平方向外方に延在する姿勢に取付・支持させて設置することができるように設計されている。
【0022】
ここで、変圧器100のハンガ座110は、図3に示すように、横断面形状がコの字形状に作製されており、変圧器100の円筒外装部101の外周面に対して平行の姿勢で離隔する平面部111に下方に開口するスリット112が形成されている。この変圧器100は、そのハンガ座110が上下一対にされて電線の接続部102の両側に配設されており、その片側のハンガ座110を不図示の電柱上部にそのスリット112を利用してボルトのヘッドを係合させるなどすることにより固定することができるように設計されている。
【0023】
このことから、電柱設置装置10は、図4に示すように、変圧器100のハンガ座110の平面部111を、取付装置11のスカート部13と挟圧片14との間に挟み込むように差し込むことにより、棒状部材21を水平方向外方に延在する姿勢に設置することができ、その棒状部材21に図5に示すような工具袋200の紐201を引っ掛けて吊り下げることができる。この状態では、棒状部材21の先端部21bは、上方に周回する帰し形状になっていることから、工具袋200の紐201が外方に向かって滑ったとしても脱落することがなく、また、その周回内に工具袋200の紐201を進入させることにより不用意に大きく上方に持ち上げられたとしても抜け出て外れてしまうことなく、引っ掛けた状態を維持することができる。
【0024】
したがって、作業者は、変圧器100のハンガ座110に電柱設置装置10を上方から差し込むだけで容易に設置して、長尺な防護管202などの材料や操作棒203などの工具を収納した工具袋200をその棒状部材21に吊り下げ準備することができる。
【0025】
このように本実施形態においては、作業者は、簡易な構造で安価に作製可能な電柱設置装置10を、既存の変圧器100のハンガ座110に容易に設置して工具袋200を安全に吊り下げることができる。したがって、作業位置の変圧器100(ハンガ座110)に工具袋200を吊り下げることにより姿勢を大きく変えることなく楽に材料や工具を取り出して作業を行うことができ、また、その工具袋200を落下させないように注意することなく、変圧器100周りの各種作業を集中して効率よく行うことができる。
【0026】
ここで、本実施形態では、変圧器100のハンガ座110に電柱設置装置10を設置する場合を説明するが、これに限るものではないことは言うまでもなく、例えば、電柱に設置されるアームに挟圧片14を差込可能なスリットが形成されている場合には、そこにも設置することができ、そのスリットが側方に向かって開口している場合には、棒状部材21を立てた状態にして設置することもできる。
【0027】
また、本実施形態では、棒状部材21の先端部21bが水平方向に周回しつつ上昇する、所謂、豚の尻尾形状に周回部を形成する場合を一例に説明するが、これに限るものではなく、例えば、図6に示すように、垂直方向に周回する、所謂、豚の尻尾形状の周回部を先端部21bに形成しても良い。この場合には、棒状部材21の先端部21bが一旦降下することから、工具袋200の紐201が外方に向かって滑ったとしても脱落することなく受け取ることができ、その先端までの周回内に工具袋200の紐201が進入することにより不用意に大きく上方に持ち上げられたとしても抜け出て外れてしまうことなく、引っ掛けた状態を信頼性高く維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る電柱設置装置の一実施形態を示す図であり、その概略全体構成を示す斜視図である。
【図2】その電柱設置装置の側面図である。
【図3】その設置対象の変圧器を示す図であり、(a)はその上面図、(b)はその正面図、(c)はその側面図である。
【図4】その変圧器に設置した電柱設置装置の状態を示す斜視図である。
【図5】その電柱設置装置に引っ掛ける一例の工具袋を示す斜視図である。
【図6】その他の態様の要部の構成を示す図であり、(a)はその側面図、(b)はその上面図である。
【符号の説明】
【0030】
10……電柱設置装置 11……取付装置 12……外面部 13……スカート部 14……挟圧片 21……棒状部材 21b……先端部 22……補強板 100……変圧器 110……ハンガ座 111……平面部 112……スリット 200……工具袋 201……紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱上部に存在する板材を挟み込むようにして該板材に取り付けられて支持される取付装置と、該取付装置の外面に連設されて該外面から外方に延在する棒状部材と、を備えており、
該棒状部材の先端側は、延在方向から上方に延長された返し形状に形成されていることを特徴とする電柱設置装置。
【請求項2】
前記棒状部材の先端側は、延在方向に対して交差する方向に周回する周回部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電柱設置装置。
【請求項3】
前記取付装置は、電柱上部の変圧器本体の外周面に配設されているハンガ座の該変圧器本体の外周面に対面する板材を挟み込むようにして当該変圧器に取付支持されることを特徴とする請求項1または2に記載の電柱設置装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−159270(P2007−159270A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351027(P2005−351027)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】