説明

電極と接続配線との接続方法および接続装置

【課題】剛性の小さな接続配線の接合工程において、信頼性の高い接合強度を得る。
【解決手段】本発明の電極と接続配線との接続方法は押え治具1によって接続配線2を基板6に対して押えつける向きの押力と、接合部から離れる方向に引っ張る向きの引張り力とを加える加圧工程と、上記加圧工程中に接合部を溶融および凝固させる工程とを備える。これらの工程により、接合部において塑性変形を起こすような剛性の小さな接続配線についても、信頼性の高い接合強度を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極と接続配線との接続方法および接続装置に関し、特に、太陽電池セルの電極などの半導体素子電極と接続配線との接続方法および接続装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、IC等の実装工程においては、基板電極上にクリーム半田を印刷法などによって塗布しておき、そのクリーム半田が塗られた基板電極上にリード線が接触するように素子を装着した状態で基板をリフロー炉などに挿入し、クリーム半田をリフローさせて、電極とリード線とを半田によって接合している。この技術は、それぞれ独立した多数の素子を一括で基板電極上に結線する場合には優位であり、半導体業界では広く用いられている。
【0003】
一方、太陽電池セルはその性質上、所望の起電力を得るために同一セル上、あるいは隣接セル上の多数の電極を接続配線(インターコネクタ)によって結線する必要があるのが一般的である。そのため、太陽電池セル上の多数の電極とインターコネクタとの間を半田により接合する場合には、先に述べたリフロー炉による方法では基板全体が加熱されてしまうため、電極を配置したセルとインターコネクタ材料との線膨張係数差に起因する、加熱および冷却時の熱応力等によるセルの割れや、セルの反り、半田接合部の信頼性の低下などの問題があった。
【0004】
これらを解決するための技術としては、レーザ光照射によって、接合部の半田のみを局所的に加熱、溶融、接合し、セル基板とインターコネクタとの間に生ずる応力を緩和する技術が、たとえば特許文献1に開示されている。このようなレーザ光照射によって接合部近傍のみを加熱するためには、レーザ照射前後に、照射目標である接続配線を、レーザ光の光路を遮らないような基板の所定位置に押えておく必要がある。特許文献1では、レーザ照射時にインターコネクタ上のレーザ照射部分以外を、押え治具で部分的に押圧し、電極部の半田を溶融、凝固させることによって、インターコネクタと電極との間の半田接合を可能にしている。また同様に、レーザ半田接合時の照射目標の押え付け技術としては、レーザ光を透過する透明ガラス基板で照射目標上部を直接加圧する方法が、たとえば特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開2004−134654号公報
【特許文献2】特開昭62−211886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1あるいは独鈷文献2に開示された従来技術では、半導体装置に対して、特に太陽電池セルに対して接続配線をレーザ光照射によって確実に半田接合するためには、以下の欠点があった。
【0006】
特許文献1に開示の従来技術では、レーザ光照射によって加熱する場合には、レーザ照射の急加熱によってクリーム半田のフラックスが急速蒸発し、半田の飛散、煙によるレーザ遮光などの弊害が生じるため、上述したリフロー炉加熱の場合と異なり、クリーム半田を直接加熱することは困難であった。そのため、接続配線あるいは電極上に半田バルクを形成しておく必要があるが、より確実な接合状態を得るためにはこれら電極上部の溶融前半田バルクが他の部分よりも突き出た形状にする必要があった。
【0007】
また、接合部にストレスをかけないためには、接続配線の剛性を小さくする必要があった。このとき、特許文献1に開示されるように、接続配線に部分的に押圧を加えると、上記の突出部において接続配線が塑性変形を起こしてしまい、半田の溶融後に接続配線と電極上部との接触がとれず、両者の間の十分な半田濡れ広がりを得られず、結果として接合部強度の信頼性の低下を招いていた。
【0008】
特許文献2に開示の従来技術の場合でも、ガラス基板で電極上部を直接加圧することが可能であり、半田の溶融過程において接続配線と電極との間で十分な濡れ広がりを得ることができる。しかしながら、1枚のガラスで多数の電極上部の押圧を実現するためには、電極上部の半田バルク高さが極めて均一であることが前提であり、実現するのは困難であった。また多数枚のガラスで多数の電極上部を一対一で押圧するとしても、基板に対して高精度な水平度のガラスを複数個押しあてる必要があり、装置化は困難であった。
【0009】
加えて、レーザ半田付けで満足なタクトタイムを得るためにはガルバノスキャンによる光路スキャンが有効であるが、ガラスを介した場合にはレーザ光の屈折によるスポット位置変動やプロファイル変動を考慮する必要があり、システムが複雑化する問題があった。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な方法で電極上部に押圧を加えながらレーザ半田接合を行なうことにより、半導体装置の電極に対する接続配線の接合状態の信頼性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電極と接続配線との接続方法は、基板上に形成された電極と、接続配線と前記電極との間に電極突起部とを設けた配線接合部において、前記接続配線を接続する電極と接続配線との接続方法である。この接続方法は、上記課題を解決するために、接続配線に対して、電極突起部を挟んで基板に接触させる向きの押力と、電極突起部と接続配線との接触面中心から離れる方向に引っ張る向きの引張り力とを少なくとも加える加圧工程と、この加圧工程中に配線接合部を溶融させる溶融工程と、加圧工程中に溶融させた配線接合部を凝固させる凝固工程とを含む。
【0012】
また、本発明の電極と接続配線との接続装置は、基板上に形成された電極と、接続配線と前記電極との間に電極突起部とを設けた配線接合部において、前記接続配線を接続する電極と接続配線との接続装置である。この接続装置は、上記の課題を解決するために、接続配線に対して、電極突起部を挟んで基板に接触させる向きの押力と、電極突起部と接続配線との接触面中心から離れる方向に引っ張る向きの引張り力とを少なくとも加える加圧手段と、配線接合部を溶融させる溶融手段とを有する。
【0013】
上記の接続方法によれば、接続配線には電極突起部を挟んで基板に押し付ける押力と、電極突起部との接点から離れる方向に引張り力が加えられる。したがって、突起部による段差と引張り力に起因する押圧を電極突起部頂点に加えることが可能になる。すなわち、接続配線と電極突起部との接点を直接加圧することなしに接続配線を電極突起部に押えつける押圧を加えることが可能となる。よって、この加圧工程中に接点を溶融することによって、電極突起部による段差によって接続配線に塑性変形が起こっている場合でも、溶融後は接続配線と電極突起部との接触面積を大きくすることができる。溶融工程は、配線接合部にレーザ光を照射することにより加熱、溶融する工程であることが好ましく、溶融手段はそれを実現するレーザ照射装置であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の接続方法によれば、配線接合部を非接触で加圧することが可能であるため、レーザ光の光路を遮ることなく配線接合部を押えることが可能である。レーザ光照射による溶融工程は、上述したとおり接続配線と基板との間の線膨張係数差に起因する熱応力を緩和するのに有効である。さらに、接続配線は熱伝導性および電気伝導性を有する芯材材料層と、レーザ光を吸収する光吸収層とを有しており、溶融工程は、接続配線にレーザ光を照射することにより配線接合部を加熱、溶融する工程であることが好ましい。これにより、レーザ光波長や光吸収係数の制限を受けずに、芯材は配線として有用な低抵抗材料を選択することができる。
【0015】
また、電極突起部は、電極上に形成されていることが好ましい。電極突起部が予め電極上に形成されておれば、接続配線と電極突起部頂点との接点近傍のみを加熱すれば溶融接合が可能になる。これにより、短い時間で接続配線を電極に結線することが可能になり、タクトタイムが向上する。
【0016】
また、電極突起部は、接続配線の融点よりも低い融点を有する半田材料層であることが好ましい。電極突起部が接続配線の融点よりも低い融点を有する半田材料層であれば、接続配線を加熱した場合でも電極突起部のみを溶融することが可能となり、局所加熱による接合が可能となる。
【0017】
また、加圧工程は、押力と、引張り力の双方を加えることが可能な機構を有する押え治具によってなされる工程であることが好ましく、また加圧手段はそれを実現する機構を有する押え治具であることが好ましい。押し方向の力をある一定の割合で力を引張り方向に分散させる機構を有する押え治具であれば、押え治具本体の加圧力を制御する方向は押し方向のみとすることができ、簡易な方法で押力、引張り力を同時に印加することが可能になる。また、押え治具は、弾性体を含むことが好ましい。
【0018】
接続配線の押えポイントに高さバラツキがあっても、押え治具に含まれる弾性体がこれを吸収し、全ての押えポイントに対して所定値以上の押力および引張り力を加えることができる。また、押え治具表面と接続配線表面との間の静止摩擦係数をμ1、接続配線表面と基板表面との間の静止摩擦係数をμ2とすると、μ1>μ2であることが好ましい。μ1がμ2に比べて十分に大きくなるように、押え治具表面、接合配線表面または基板表面を加工しておけば、接続配線に対してのみ引張り力をかけることが可能となる。
【0019】
また、上記接続方法および接続装置は、太陽電池セルの配線接合工程に適用されることが望ましい。上記の方法および構成によれば、特に太陽電池セルの配線接合工程における、上記基板と上記接続配線との間の熱応力を緩和する工程が可能となり、また配線接合部にかかるストレスを緩和するために剛性の小さな接続配線材料を選定することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明の電極と接続配線との接続方法は、接続配線に対して、電極突起部を挟んで基板に接触させる向きの押力と、電極突起部と接続配線との接触面中心から離れる方向に引っ張る向きの引張り力とを少なくとも加える加圧工程と、加圧工程中に配線接合部を溶融させる溶融工程と、加圧工程中に溶融させた配線接合部を凝固させる凝固工程とを含む。また、本発明の電極と接続配線との接続装置は、接続配線に対して、電極突起部を挟んで基板に接触させる向きの押力と、電極突起部と接続配線との接触面中心から離れる方向に引っ張る向きの引張り力とを少なくとも加える加圧手段と、配線接合部を溶融させる溶融手段とを有する。
【0021】
したがって、本発明によれば、半導体素子電極に接続配線を接合する際、特に太陽電池セルの多数の電極に対して接続配線を接合する際に、押えつけ時に電極部の僅かな段差によって塑性変形を起こすような剛性の小さい接続配線を選択した場合でも、引張り力によって接続配線を電極部上部に押しつけることが可能になる。これにより、配線接合部の溶融工程前後で接続配線と電極との密着性を向上させ、接合部の強度信頼性を向上させることが可能になる。
【0022】
また、上記加圧工程を実現する加圧手段は、配線接合部以外の接続配線を押え、引っ張る構成であるため、配線接合部上空が押え治具などで遮られることがなく、レーザ照射によって接合部を溶融することが可能になる。レーザによる接合では配線接合部に対してのみ局所的な加熱を行なえるため、基板と接続配線との間の熱応力を緩和することが可能となる。上述のように、加圧工程時に引張り力によって配線接合部に非接触で押圧を加えることは、従来存在しなかった、本発明に特有の手法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態である電極と接続配線との接続方法および接続装置について、図1〜図7に基づいて説明する。
【0024】
まず図1を用いて、本実施形態の配線接合部および押え機構の構成を説明する。図1は、本実施形態の配線接合部の断面図を示している。本実施形態においては、図1に示すように、基板6上に形成された電極4を露出するように、電極4を挟む領域に所定厚さの材料層5が形成されている。さらに、電極4の上には、電極突起部3が材料層5の上面よりも突き出るような所定高さで形成されている。接続配線2は、図示しない位置決め装置によって電極突起3上に配置されている。接続配線2を基板6に向かって加圧するための押え治具1は、基板6の上方に配置され、治具本体11および固定板12によって固定された押え部材13を含む構成を有する。また、押え治具1は、配線接合部(図示する電極突起部3の頂点と接続配線2との接点)の上方には開口部が設けられており、押え治具1の上部からレーザ光を照射することが可能になっている。
【0025】
基板6としては、たとえばシリコンなどの基板が基いられ、電極4としては、たとえば銀などのように、基板6に対してコンタクトをとるのに適した金属が用いられる。材料層5は、たとえば絶縁性を有するレジストなどであることが望ましい。ここで電極4や材料層5は、印刷法などによって塗布されたペースト状の材料を焼成することによって形成するのが、コスト面からも望ましい。接続配線2はフレキシブル性を有し、低剛性であるのが望ましい。電極突起部3は、接続配線2よりも低融点を有する、たとえば半田バルクであって、電極4上に印刷法によって塗布した半田ペーストをリフローすることにより形成するのが望ましい。上記印刷法としては、たとえばスクリーン印刷法が望ましく、マスクの厚みによって、材料層5よりも電極突起部3が突き出るように制御されることが望ましい。押え治具1の構成要素である押え部材13は、複数の押えポイントの高さバラツキ分を吸収できるような、たとえばゴムなど弾性を有する材料であることが望ましい。また、押え部材13は図示するように基板6に対して広がった形状をしている。
【0026】
次に、本実施形態の配線接合部の形成方法について説明する。図2は、図1と同様に、配線接合部の断面を示しており、図1の状態より治具1を基板6に向けて降下させ、押え部材13によって、接続配線2を材料層5および電極突起部3に対して押し付けて加圧している状態を示している。このとき、治具本体1によって押圧8が制御される。押え部材13が上述のように弾性体であれば、複数の押え部材13に対する押圧8が共通である場合に、押え部材13が接続配線2を押すポイントに高さのバラツキがあっても、全てのポイントに所望以上の押圧を加えることが可能である。
【0027】
押え部材13は、図示するとおり、配線接合部から離れる方向に傾斜した形状をしている。押え治具本体11に押圧8が加えられると、この傾斜に基づいて、押え部材13と接続配線2との接点において伝えられる傾斜押圧80は、接続配線2を材料層5に押し付ける向きの押力81と、配線接合部から遠ざかる向きに引っ張る向きの引張り力82とに分解される。引張り力82が生成されるのは、押え部材13と接続配線2との間の静止摩擦係数μ1が、接続配線2と材料層5との間の静止摩擦係数μ2よりも大きいことが条件である。両者の差を大きくするために、押え部材13および接続配線2の表面あるいは材料層5の表面に処理が行なわれている。特に、押え部材13の表面の静止摩擦命数を大きくする処理を行なうことが望ましい。
【0028】
次に、図3に示すように、押え部材13によって、接続配線2に対して図2で示した押力81および引張り力82を印加した状態で、押え治具1の開口部よりレーザ光7を接続配線2に対して照射し、電極突起部3を溶融して接合を行なう。レーザ光7として、たとえばYAGレーザが用いられ、数十msec以下の照射で電極突起部3を溶融するのが望ましい。
【0029】
接続配線2は、図4にその断面を拡大して示すように、芯材20と、レーザ光7が照射される表側に形成された光吸収層21と、芯材20よりも低融点を有する低融点層22によって構成されたフレキシブル板である。芯材20は高い電気伝導率および熱伝導率を有することが望ましく、たとえば銅などが望ましい。光吸収層21は、レーザ光7を吸収しやすい材料であって、レーザ光7としてYAGレーザを用いる場合には、たとえば半田メッキによって形成されているのが望ましい。低融点層22も、たとえば半田メッキによって形成されているのが望ましい。このような構成により、レーザ光7で接続配線2の表面(光吸収層21)を照射加熱すれば、熱は速やかに裏面の低融点層22に到達し、接続配線部2の裏面側を溶融することが可能になる。また、接続配線2の裏面側に半田バルクなどで形成された電極突起部3が接触している場合には低融点層22はなくてもよい。また、接続配線2は、上述したように、配線接合部にかかるストレスを緩和するために低剛性であることが望ましく、芯材20、光吸収層21、低融点層22のそれぞれの厚さおよび線幅を調整することにより、所望の剛性を得ている。
【0030】
次に、レーザ照射による溶融工程について、図5を用いて説明する。図5(a)に示すように、上記で説明した加圧工程によって、接続配線2における電極突起部3の頂点との接点には引張り力821および822が加えられている。このとき、電極突起部3が材料層5から突き出た高さhに基づいて、引張り力821、822は下方に傾斜し、両者の合力として、電極部3の頂点に対して局部押圧83が加えられる。接続配線2としては、低剛性材料が望ましいが、低剛性材料を用いた場合には、接続配線2は配線接合部において、高さhの変位に対して塑性変形を起こす。この時、たとえば上記の局部押圧83が加えられていなければ、図5(b)に示すように、レーザ光7を照射した際に接続配線2に接する電極突起部3が溶融しても、接続配線2は変形したままで元に戻らない。そのため、接続配線2と溶融後の電極突起部とを密着させることができず、凝固後接合部の強度信頼性や導通に問題が起こる。
【0031】
本実施形態では、図5(a)に示す引張り力821、822によって局部押圧83を加えることにより、接続配線2に塑性変形が起こっている場合においても、図5(c)に示すように、レーザ光7の照射によって電極突起部3を溶融した際、接続配線2と溶融後の電極突起部3とを密着させることが可能になる。これにより接続配線2に溶融後の電極突起部2が十分に濡れ広がる。レーザ光7の照射開始から照射後に電極突起部2が溶融、凝固するまでの間に、引張り力821、822を加え続けることによって、接続配線2と電極突起部3との接合面積の広い、接合強度および導電性の優れた配線接合部を得ることができる。
【0032】
以上のように、本実施形態における構成および方法を用いることにより、剛性が小さいために配線接合部において塑性変形を起こすような接続配線2を採用したレーザ接合においても、信頼性の高い接合強度を得ることが可能になる。
【0033】
また、溶融工程は、レーザ法に限らず、たとえばリフロー炉などによる加熱工程であってもよい。ただし、上述のように、基板6と接続配線2との線膨張係数に大きな差がある場合には、基板の反りや割れの原因となる熱応力を緩和するのために、レーザ法が望ましい。
【0034】
電極突起部3は、電極4と一体とした電極としても構わない。この場合には、接続配線2の低融点層22の溶融によって接合を行なうことができる。また電極突起部3は、図6に示すように、接続配線2側に予め形成しておいてもよい。すなわち、電極突起部3の頂点が電極4に接するように配置し、上記と同様に押し力、引張り力を加えながら、たとえば電極突起部3を溶融してもよい。ただし、この場合には、電極突起部3と電極4との接合になるため、電極突起部3の頂点まで溶融する必要がある。あるいは電極突起部3は溶融せず、電極突起部3と電極4との間に別途低融点層(図示しない)を設けてもよい。
【0035】
以上説明した実施形態に限らず、配線接合部において接続配線に加えられた引張り力を、局部押圧として接合部に局所的に加圧することができる構成、方法であればよい。
【0036】
次に、特に太陽電池セルにおける、複数の配線接合部に対して接合を行なう、本実施形態の方法および構成について述べる。図7(a)は配線接合前の太陽電池セルの上面図を示しているが、基板6上に複数の電極4および電極突起部3が形成され、それらを露出するように材料層5が形成されている。次に図7(b)に示すように、たとえば一列の電極突起部3(電極4)を結線するために接続配線2を図示しない位置決め装置によって配置する。上記位置決め装置は、たとえば接続配線2を吸着したまま搬送し、基板上の所定位置に置き、吸着を解除する装置である。その後、図7(c)に示すように、電極4上部に開口部10を有する押え治具1によって全ての接続配線2を加圧する。加圧力の制御は、図示しない加圧力制御装置によって、治具1全体に対して制御されるのが望ましい。各加圧点にかかる圧力は上述のように押え部材に13を適切な弾性体にすることである所定の値以上に設定することが可能である。これにより加圧力を個々に制御する必要がなく、簡易的な方法で接続配線2を加圧することが可能なる。またこの時、接続配線2に押力だけでなく引張り力を印加するのは上述した通りである。治具1による加圧がなされると、加圧状態を維持したままでレーザ光7を開口部10を通して配線接合部の接続配線2表面に照射し、配線接合部を加熱、溶融することによって接合を行なう。このとき、レーザ光7はたとえばガルバノスキャンなどで多点照射することが良好なタクトタイムを得るためにも望ましい。
【0037】
以上のように、太陽電池セルは所定の起電力を得るために隣接電極を結線する接合技術が必要になるが、近年のセル薄型化に伴い、接合部にかかるストレスを極力抑える必要があった。これを解決するために、接続配線2を低剛性にする方法があったが、接合部における接続配線2の塑性変形のために、十分な接合部強度や信頼性を得ることが困難であった。それに対し本実施形態によれば、接続配線2の剛性に制限を持たせることなく、引張り力によって所望の接合強度と信頼性を得ることが可能になる。
【0038】
なお、上述した実施形態に限らず、特に太陽電池セルの配線接合工程において、接続配線に加えられた引張り力を局部押圧として接合部に、局所的に加圧することができる工程、あるいは構成を含んでいれば、本発明の課題を解決することができる。
【0039】
また、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の範囲内およびそれと均等の意味および範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の電極と接続配線との接続方法および接続装置は、簡易な方法で配線接合部に局所的に押圧を加えながら溶融接合工程を行なうことが可能であるため、様々な製品の配線接合工程に適用することができる。そして本発明の接続方法および接続装置は、特に太陽電池セルの配線接合工程に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態における、配線接合部および押え治具の構成を示した断面図である。
【図2】同実施形態における、配線接合部を押え治具により加圧した際の力関係を示した図である。
【図3】同実施形態における、レーザ光照射時を示した図である。
【図4】同実施形態における、接続配線の構成を示した断面図である。
【図5】配線接合部における力関係と電極突起部溶融後の状態を示した図であり、(a)は配線接合部に発生する引張り力と局部押圧の力関係を、(b)は上記局部押圧が不足している場合の溶融後状態を、(c)は上記局部押圧が十分である場合の溶融後状態を、それぞれ示している。
【図6】本発明の実施形態の一変形例である、接続配線側に電極突起部を設けた場合の構成を示した断面図である。
【図7】太陽電池セルの配線接合工程を示した図であり、(a)は接続配線前の太陽電池セル、(b)は接続配線配置後の太陽電池セル、(c)は押え治具によって接続配線を加圧して押し付けている状態の太陽電池セルを、それぞれ示している。
【符号の説明】
【0042】
1 押え治具、2 接続配線、3 電極突起部、4 電極、5 材料層、6 基板、7 レーザ光、8 押圧、10 開口部、11 押え治具本体、12 固定板、13 押え部材、81 押力、82 引張り力。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された電極と、接続配線と前記電極との間に電極突起部とを設けた配線接合部において前記接続配線を接続する、電極と接続配線との接続方法であって、
前記接続配線に対して、前記電極突起部を挟んで前記基板に接触させる向きの押力と、前記電極突起部と前記接続配線との接触面中心から離れる方向に引っ張る向きの引張り力とを少なくとも加える加圧工程と、
前記加圧工程中に、前記配線接合部を溶融させる溶融工程と、
前記加圧工程中に、溶融させた前記配線接合部を凝固させる凝固工程とを含む、電極と接続配線との接続方法。
【請求項2】
前記溶融工程は、前記配線接合部にレーザ光を照射することにより、加熱して溶融する工程である、請求項1に記載の電極と接続配線との接続方法。
【請求項3】
前記接続配線は、熱伝導性および電気伝導性を有する芯材材料層と、レーザ光を吸収する光吸収層とを有する、請求項2に記載の電極と接続配線との接続方法。
【請求項4】
前記電極突起部は前記電極上に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電極と接続配線との接続方法。
【請求項5】
前記電極突起部は前記接続配線の融点よりも低い融点を有する半田材料層である、請求項1〜4のいずれかに記載の電極と接続配線との接続方法。
【請求項6】
前記加圧工程は、前記押力と、前記引張り力の双方を加えることが可能な機構を有する押え治具によってなされる工程である、請求項1〜5のいずれかに記載の電極と接続配線との接続方法。
【請求項7】
前記押え治具は弾性体を含む、請求項6に記載の電極と接続配線との接続方法。
【請求項8】
前記押え治具表面と前記接続配線表面との間の静止摩擦係数をμ1、前記接続配線表面と前記基板表面との間の静止摩擦係数をμ2とした場合に、μ1>μ2である、請求項6または7に記載の電極と接続配線との接続方法。
【請求項9】
基板上に形成された電極と、接続配線と前記電極との間に電極突起部とを設けた配線接合部において、前記接続配線を接続する、電極と接続配線との接続装置であって、
前記電極突起部を前記接続配線と前記電極との間に挟んだ状態で、前記接続配線に対して、前記基板に接触させる向きの押力と、前記電極突起部と前記接続配線との接触面中心から離れる方向に引っ張る向きの引張り力とを少なくとも加える加圧手段と、
前記配線接合部を溶融させる溶融手段とを含む、電極と接続配線との接続装置。
【請求項10】
前記溶融手段はレーザ照射装置である、請求項9に記載の電極と接続配線との接続装置。
【請求項11】
前記加圧手段は、前記押力および前記引張り力の双方を加えることが可能な機構を有する押え治具である、請求項9または10に記載の電極と接続配線との接続装置。
【請求項12】
前記基板が太陽電池セルである、請求項1〜8のいずれかに記載の電極と接続配線との接続方法。
【請求項13】
前記基板が太陽電池セルである、請求項9〜11のいずれかに記載の電極と接続配線との接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−211809(P2009−211809A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50330(P2008−50330)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】