説明

電極の製造方法、蓄電デバイス、および中間積層材

【課題】孔あき集電体を備える電極の生産性を向上させる。
【解決手段】集電体積層工程では、集電体材料31,32およびフィルム材33からなる集電体積層ユニット30が形成される。また、レジスト印刷工程では、集電体積層ユニット30の両面に所定パターンのレジスト層34が形成される。エッチング工程では、レジスト層34をマスクとして用いてエッチング処理が施され、各集電体材料31,32に対して貫通孔20a,23aが形成される。レジスト除去工程では、レジスト層34が集電体積層ユニット30から除去される。複数の集電体材料31,32にエッチング処理を施すようにしたので、電極の生産性を向上させることが可能となる。また、スラリー塗工時には、フィルム材33によって電極スラリーの抜けが防止されるため、集電体積層ユニット30を水平方向に搬送することができ、電極の生産性を向上させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔あき集電体を備える電極の製造方法、孔あき集電体を備える電極が組み込まれる蓄電デバイス、および電極の製造過程における仕掛品としての中間積層材等に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車等には、リチウムイオンバッテリやリチウムイオンキャパシタ等の蓄電デバイスが搭載される。蓄電デバイスに組み込まれる電極を製造する際には、金属箔等の集電体材料に活物質を含有する電極スラリーが塗工される。そして、集電体材料を水平方向に搬送しながら乾燥炉を通過させることにより、電極スラリーを乾燥させて電極合材層を形成することが一般的である。
【0003】
また、蓄電デバイスのエネルギー密度を向上させるため、金属リチウム箔と負極とを電気化学的に接触させるようにした蓄電デバイスが提案されている。この蓄電デバイスにおいては、負極に対してリチウムイオンを予めドーピングさせておくことが可能となる。これにより、負極の電位を低下させるとともに負極の静電容量を高めることができ、蓄電デバイスのエネルギー密度を向上させることが可能となる。また、積層される複数の負極に対して均一にリチウムイオンをドーピングさせるため、各電極の集電体にはリチウムイオンを通過させるための貫通孔が形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、貫通孔を備える集電体材料に電極スラリーを塗工する際には、電極スラリーが貫通孔を通過して集電体材料の裏側に抜けるおそれがある。このように、電極スラリーが集電体材料の裏側に抜けることは、集電体材料を支持するガイドローラに対して電極スラリーを付着させてしまうことになっていた。そこで、集電体材料を垂直方向に引き上げながら電極スラリーを塗工するようにした製造方法が提案されている。この製造方法によれば、集電体材料の引き上げ過程においてはガイドローラが不要となるため、ガイドローラに対する電極スラリーの付着を防止することが可能となる。また、集電体材料に対して貫通孔を小さく形成することにより、集電体材料の裏側に電極スラリーが抜けることを防止するようにした蓄電デバイスも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、特許文献3には、接着層あるいは絶縁層を間に挟んで両側に設けた金属箔を、所定パターンのレジストでエッチング処理して開孔する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3485935号公報
【特許文献2】特開2007−141897号公報
【特許文献3】特許第3411514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、集電体材料を垂直方向に引き上げることは、搬送速度の低下を招くことから、電極の生産性を低下させてしまうという問題がある。すなわち、集電体材料に塗工した電極スラリーが乾燥するまでは、集電体材料を垂直方向に引き上げることが必要である。しかしながら、集電体材料が自重によって破断するおそれがあるため、集電体材料の引き上げ高さには制限が課せられる。この引き上げ高さの制限に伴って、電極スラリーを乾燥させる乾燥炉の高さ寸法にも制限が課せられる。このような短い乾燥炉によって電極スラリーを乾燥させるためには、集電体材料の搬送速度を引き下げることが必要であった。このように、集電体材料を垂直方向に引き上げることは、電極の生産性を低下させるとともに、電極の製造コストを引き上げる要因となっていた。
【0008】
また、集電体材料の裏側に電極スラリーが抜けないように、貫通孔を小さく形成した場合には、集電体材料を水平搬送しながら電極スラリーを塗工することが可能である。しかしながら、貫通孔を持たない集電体材料に比べて、貫通孔を備える集電体材料の強度は低いことから、貫通孔を備える集電体の搬送速度は低下する傾向にある。このように、貫通孔の小径化によって水平搬送を可能にしても、貫通孔を持たない集電体材料に比べて、電極の生産性を向上させることが困難となっていた。しかも、集電体の貫通孔が小さくなることから、負極にリチウムイオンをドーピングする際には、リチウムイオンの移動速度が低下することにもなる。この移動速度の低下は、負極に対するリチウムイオンのドーピング作業の長期化を招くことになる。このドーピング作業の長期化は、蓄電デバイスの生産性を低下させるとともに、蓄電デバイスの製造コストを引き上げる要因となっていた。
【0009】
さらに、集電体材料に貫通孔を加工する方法としては、プレス等の機械加工や化学処理であるエッチング加工があるが、品質面からエッチング加工を施すことが望ましい。しかしながら、エッチング加工を行う際には、個々の金属箔の表面に所定パターンのレジスト層を形成し、個々の金属箔の裏面の全体にレジスト層を形成することが一般的である。このように、金属箔に対して1枚毎にレジスト層を形成してエッチング加工を施すことは、集電体の生産性を低下させるとともに、電極の生産性を低下させる要因となっていた。
【0010】
本発明の目的は、孔あき集電体を備える電極の生産性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電極の製造方法は、孔あき集電体を備える電極の製造方法であって、複数の集電体材料を積層して集電体積層ユニットを形成する集電体積層工程と、前記集電体積層ユニットの表面に所定パターンの保護層を形成する保護層形成工程と、前記保護層が形成された前記集電体積層ユニットにエッチング処理を施し、前記集電体材料のそれぞれに貫通孔を形成するエッチング工程と、前記貫通孔が形成された前記集電体積層ユニットの表面に電極スラリーを塗工する第1塗工工程と、前記電極スラリーが塗工された前記集電体材料を前記集電体積層ユニットから剥離する集電体剥離工程と、前記集電体積層ユニットから分離された前記集電体材料の未塗工面に電極スラリーを塗工する第2塗工工程とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の電極の製造方法は、前記集電体積層工程において、前記集電体材料間に遮断層を介在させ、前記保護層形成工程において、前記集電体積層ユニットの一方面と他方面との双方に所定パターンの前記保護層を形成し、前記エッチング工程において、前記集電体積層ユニットの一方面と他方面との双方から前記集電体材料のそれぞれに前記貫通孔を形成することを特徴とする。
【0013】
本発明の電極の製造方法は、前記集電体積層工程において、複数の前記集電体材料を直に積層し、前記保護層形成工程において、前記集電体積層ユニットの一方面の全体に遮断層を形成する一方、前記集電体積層ユニットの他方面に所定パターンの前記保護層を形成し、前記エッチング工程において、前記集電体積層ユニットの他方面から前記集電体材料のそれぞれに前記貫通孔を形成することを特徴とする。
【0014】
本発明の電極の製造方法は、以上いずれかの本発明の電極の製造方法において、
積層された前記複数の集電体材料のそれぞれに形成された貫通孔は対向して設けられ、対向して設けられた貫通孔同士の開口面は、互いにずらされていることを特徴とする。
【0015】
本発明の電極の製造方法は、以上いずれかの本発明の電極の製造方法において、
積層された前記複数の集電体材料のそれぞれに形成された貫通孔には、前記貫通孔内面に電極合材層の脱落防止手段が設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明の電極の製造方法は、上記本発明の電極の製造方法において、前記脱落防止手段とは、電極スラリーの塗工側から貫通方向に向けた貫通孔端の開口面を、前記開口面に平行な面で切断した前記貫通孔内の他の開口面よりも小さくすることを特徴とする。
【0017】
本発明の電極の製造方法は、前記本発明の電極の製造方法において、前記脱落防止手段とは、前記貫通孔の電極スラリーの塗工側の開口面から、前記貫通孔の他端の開口面へ向けて設けた先細りのテーパであることを特徴とする。
【0018】
本発明の蓄電デバイスは、孔あき集電体を備える電極が組み込まれる蓄電デバイスであって、前記電極は、請求項1〜7のいずれかに記載の電極の製造方法を用いて製造されることを特徴とする。
【0019】
本発明の蓄電デバイスは、前記蓄電デバイスはリチウムイオンキャパシタであることを特徴とする。
【0020】
本発明の蓄電デバイスは、前記蓄電デバイスはリチウムイオン電池であることを特徴とする。
【0021】
本発明の中間積層材は、電極の製造過程における仕掛品としての中間積層材であって、複数の貫通孔を備える集電体材料と、前記集電体材料の一方面側に設けられて前記貫通孔を閉塞する遮断層と、前記集電体材料の他方面側に設けられる電極合材層とを有することを特徴とする。
【0022】
本発明の中間積層材は、上記構成の中間積層材において、前記集電体材料は、前記遮断層の両面に積層されていることを特徴とする。
【0023】
本発明の中間積層材は、前記構成の中間積層材において、前記集電体材料は、前記遮断層の片面に積層されていることを特徴とする。
【0024】
本発明の中間積層材は、前記記載の本発明の中間積層材において、前記集電体材料は、前記遮断層を介して対向して複数設けられ、対向して設けられた前記集電体材料のそれぞれに形成される貫通孔同士の前記遮断層に面する開口面は、互いにずらされていることを特徴とする。
【0025】
本発明の中間積層材は、前記記載の本発明の中間積層材において、前記貫通孔には、その内面に電極合材層の脱落防止手段が設けられていることを特徴とする。
【0026】
本発明の中間積層材は、上記記載の本発明の中間積層材において、前記脱落防止手段とは、前記貫通孔の前記遮断層側に面する開口面を、前記開口面に平行な面で切断した他の開口面よりも小さくすることを特徴とする。
【0027】
本発明の中間積層材は、前記記載の本発明の中間積層材において、前記脱落防止手段とは、前記貫通孔の前記遮断層に向けて設けた先細りのテーパであることを特徴とする。
【0028】
本発明の中間積層材は、上記記載の本発明の中間積層材において、前記テーパのテーパ角度が90度以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明では、複数の集電体材料に対してエッチング処理を施すようにしたので、孔あき集電体の生産性を向上させることができ、電極の生産性を向上させることが可能となる。また、複数の集電体材料を積層した集電体積層ユニットに電極スラリーを塗工するようにしたので、電極スラリーを塗工する際の搬送速度を高めることができ、電極の生産性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】蓄電デバイスを示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿って蓄電デバイスの内部構造を概略的に示す断面図である。
【図3】蓄電デバイスの内部構造を部分的に拡大して示す断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態である電極の製造方法を示すフローチャートである。
【図5】(A)〜(D)は各製造工程における電極の状態を示す概略図である。
【図6】(A)〜(D)は各製造工程における電極の状態を示す概略図である。
【図7】塗工乾燥装置の一例を示す概略図である。
【図8】本発明の他の実施の形態である電極の製造方法を示すフローチャートである。
【図9】(A)〜(E)は各製造工程における電極の状態を示す概略図である。
【図10】(A)〜(C)は各製造工程における電極の状態を示す概略図である。
【図11】(A)〜(C)は各製造工程における電極の状態を示す概略図である。
【図12】(A)〜(E)は集電体材料に貫通孔を形成する際の各製造工程を示す概略図である。
【図13】本発明の他の実施の形態である電極の製造方法を示すフローチャートである。
【図14】重合圧延装置の一例を示す概略図である。
【図15】(A)は対向する開口面が一致する場合、(B)は対向する開口面がずれている場合を示す説明図である。
【図16】(A)は開口面の平面パターンを示し、(B)は対向する開口面の位置ずれの様子を示す説明図である。
【図17】開口面の重複率を示す説明図である。
【図18】対向する開口面が一致する場合を示す説明図である。
【図19】(A)〜(C)は、対向する開口面の位置のずらし方を示す説明図である。
【図20】(A)〜(C)は、対向する開口面の位置のずらし方を示す説明図である。
【図21】(A)、(B)は、対向する開口面の位置のずらし方を示す説明図である。
【図22】(A)、(B)は、対向する開口面の位置のずらし方を示す説明図である。
【図23】対向する開口面の位置のずらし方を示す説明図である。
【図24】(A)は対向する開口面が一致する場合、(B)は対向する開口面がずれている場合の変形例を示す説明図である。
【図25】図6において貫通孔内に電極スラリーが充填されている様子を示した概略図である。
【図26】図10において貫通孔内に電極スラリーが充填されている様子を示した概略図である。
【図27】図11において貫通孔内に電極スラリーが充填されている様子を示した概略図である。
【図28】(A)、(B)は、電極合材層の脱落し易い貫通孔形状を示した断面説明図である。
【図29】(A)〜(C)は、貫通孔内に設けた脱落防止手段とその変形例を示す説明図である。
【図30】(A)〜(E)は、脱落防止手段の一例とその機能を説明した説明図である。
【図31】(A)、(B)は、テーパ角度の設定状況を模式的に示す説明図である。
【図32】(A)は充填した電極合材層が脱落し易い貫通孔の断面形状を模式的に示す説明図であり、(B)は脱落状況を示す説明図である。
【図33】(A)〜(D)は、テーパの設け方の変形例を模式的に示した説明図である。
【図34】(A)は剥離方向を考慮した脱落側開口面の平面形状を模式的に示す説明図であり、(B)、(C)はその断面構造を示した説明図であり、(C)は(A)の形状の有効なことを示した説明図である。
【図35】(A)、(B)は、剥離方向を考慮した場合に有効でない脱落側開口面の平面形状を模式的に示す説明図である。
【図36】(A)〜(C)は、剥離方向を考慮した有効な脱落側開口面の平面形状の変形例を模式的に示す説明図である。
【図37】(A)〜(C)は、剥離方向を考慮した有効な脱落側開口面の平面形状の変形例を模式的に示す説明図である。
【図38】(A)は充填側開口面と脱落側開口面との平面形状が異なる脱落防止に有効な場合を模式的に示す説明図であり、(B)は有効でない場合を示す説明図であり、(C)〜(F)は有効な場合の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(実施の形態1)
図1は蓄電デバイス10を示す斜視図である。図2は図1のA−A線に沿って蓄電デバイス10の内部構造を概略的に示す断面図である。図1および図2に示すように、外装容器であるラミネートフィルム11内には電極積層ユニット12が収容される。この電極積層ユニット12は、交互に積層される正極(電極)13と負極(電極)14とにより構成される。正極13と負極14との間にはセパレータ15が設けられる。また、電極積層ユニット12の最外部には、リチウム極16が負極14に対向して配置される。負極14とリチウム極16との間にはセパレータ15が設けられる。これら電極積層ユニット12とリチウム極16とにより三極積層ユニット17が構成される。なお、ラミネートフィルム11内には電解液が注入される。この電解液はリチウム塩を含む非プロトン性有機溶媒によって構成される。
【0032】
図3は蓄電デバイス10の内部構造を部分的に拡大して示す断面図である。図3に示すように、正極13は多数の貫通孔20aを備えた正極集電体(孔あき集電体)20を有している。この正極集電体20には正極合材層21が塗工されている。また、正極集電体20には凸状に伸びる端子溶接部20bが設けられる。複数枚の端子溶接部20bは重ねられた状態で互いに接合される。さらに、互いに接合された端子溶接部20bには正極端子22が接合されている。同様に、負極14は多数の貫通孔23aを備えた負極集電体(孔あき集電体)23を有している。この負極集電体23には負極合材層24が塗工されている。また、負極集電体23には凸状に伸びる端子溶接部23bが設けられる。複数枚の端子溶接部23bは重ねられた状態で互いに接合される。さらに、互いに接合された端子溶接部23bには負極端子25が接合されている。
【0033】
正極合材層21には、正極活物質として活性炭が含まれる。この活性炭には、リチウムイオンやアニオンを可逆的にドーピング・脱ドーピングさせることが可能である。また、負極合材層24には、負極活物質としてポリアセン系有機半導体(PAS)が含まれる。このPASには、リチウムイオンを可逆的にドーピング・脱ドーピングさせることが可能である。このように、正極活物質として活性炭を採用し、負極活物質としてPASを採用することにより、図示する蓄電デバイス10はリチウムイオンキャパシタとして機能することになる。なお、本明細書において、ドーピング(ドープ)とは、吸蔵、担持、吸着、挿入等を意味している。すなわち、ドープとは、正極活物質や負極活物質に対してリチウムイオン等が入る状態を意味している。また、脱ドーピング(脱ドープ)とは、放出、脱離等を意味している。すなわち、脱ドープとは、正極活物質や負極活物質からリチウムイオン等が出る状態を意味している。
【0034】
前述したように、蓄電デバイス10内にはリチウム極16が組み込まれている。このリチウム極16は、負極集電体23に接合されるリチウム極集電体26を有している。また、リチウム極集電体26にはイオン供給源としての金属リチウム箔27が圧着される。したがって、金属リチウム箔27と負極合材層24とは、リチウム極集電体26および負極集電体23を介して接続された状態となる。このように、負極14とリチウム極16とは電気的に接続される構造を有している。したがって、ラミネートフィルム11内に電解液を注入することにより、リチウム極16から負極14に対してリチウムイオンがドープ(以下、プレドープという)されることになる。
【0035】
このように、負極14にリチウムイオンをプレドープすることにより、負極電位を低下させることが可能となる。これにより、蓄電デバイス10のセル電圧を高めることが可能となる。また、負極電位の低下によって正極13を深く放電させることが可能となり、蓄電デバイス10のセル容量(放電容量)を高めることが可能となる。さらに、負極14にリチウムイオンをプレドープすることにより、負極14の静電容量を高めることが可能となる。これにより、蓄電デバイス10の静電容量を高めることが可能となる。このように、蓄電デバイス10のセル電圧、セル容量、静電容量を高めることができるため、蓄電デバイス10のエネルギー密度を向上させることが可能となる。なお、蓄電デバイス10の高容量化を図る観点から、正極13と負極14とを短絡させた後の正極電位が2.0V(対Li/Li)以下となるように、金属リチウム箔27の量を設定することが好ましい。
【0036】
また、正極集電体20や負極集電体23には貫通孔20a,23aが形成されている。このため、リチウム極16から放出されるリチウムイオンを積層方向に移動させることが可能となる。これにより、積層される全ての負極14に対してスムーズにリチウムイオンをプレドープすることが可能となる。
【0037】
続いて、正極13および負極14の製造方法について説明する。以下、製造方法の説明においては、正極13および負極14を電極として記載することにより、正極13の製造方法と負極14の製造方法とをまとめて説明する。なお、製造方法の説明においては、正極合材層21および負極合材層24を電極合材層として記載している。図4は本発明の一実施の形態である電極の製造方法を示すフローチャートである。また、図5および図6は各製造工程における電極の状態を示す概略図である。
【0038】
図4に示すように、ステップS101では、集電体積層ユニット30を形成する集電体積層工程が実施される。この集電体積層工程においては、図5(A)に示すように、金属箔からなる長尺の集電体材料31,32が準備され、遮断層として長尺のフィルム材33が準備される。そして、一対の集電体材料31,32によってフィルム材33を挟み込むことにより、集電体材料31,32およびフィルム材33からなる集電体積層ユニット30が形成される。なお、正極13を製造する際には、集電体材料31,32として例えばアルミニウム箔が用いられる。一方、負極14を製造する際には、集電体材料31,32として例えば銅箔が用いられる。また、フィルム材33としては、後述するエッチング液に対する耐性を有するものが用いられる。さらに、フィルム材33としては、後述する集電体剥離工程に対応するため、微粘着フィルムや剥離可能なフィルムを用いることが好ましい。例えば、加熱することにより剥離するフィルムとして、リバアルファ(登録商標,日東電工株式会社) を用いることが可能である。また、微粘着フィルムとして、パナプロテクト(登録商標,パナック株式会社)を用いることが可能である。
【0039】
図4に示すように、続くステップS102では、集電体積層ユニット30に保護層としてのレジスト層34を形成するレジスト印刷工程(保護層形成工程)が実施される。このレジスト印刷工程においては、図5(B)に示すように、集電体積層ユニット30の一方面30aと他方面30bとの双方に所定パターンでレジストインクが印刷される。これにより、集電体積層ユニット30の一方面30aと他方面30bとの双方には所定パターンのレジスト層34が形成されることになる。なお、レジスト印刷工程においては、グラビア印刷やスクリーン印刷等によってレジストインクが印刷されるが、遮断層としてのフィルム材33が存在する場合は、双方のパターンを一致させなくても良いので好適である。また、レジストインクとしては、後述するエッチング液に対する耐性を有するものであれば、一般的なものが使用可能である。さらに、レジストインクとしては、アルカリ溶剤等によって溶解除去できるものが好ましい。
【0040】
また、前述の説明では、液状のレジストインクを用いてレジスト層34を形成しているが、予めフィルム化されたドライフィルムレジストを貼り付けるようにしても良い。例えば、ドライフィルムレジストとして、デュポンMRCドライフィルム株式会社製のFXRやFX900等を用いることが可能である。なお、ドライフィルムレジストを用いる場合には、貼り付けたドライフィルムレジストに対して露光処理および現像処理を実施することにより、集電体積層ユニット30に所定パターンのレジスト層34が形成されることになる。
【0041】
図4に示すように、続くステップS103では、集電体積層ユニット30に貫通孔20a,23aを形成するエッチング工程が実施される。このエッチング工程においては、図5(C)に示すように、レジスト層34をマスクとして用いて集電体積層ユニット30にエッチング処理が施される。これにより、集電体積層ユニット30の一方面30aと他方面30bとの両側から、それぞれの集電体材料31,32に対して多数の貫通孔20a,23aが形成される。このエッチング処理に用いられるエッチング液は、集電体材料31,32の材質に応じて適宜選択されるものである。前述したように、集電体材料31,32としてアルミニウム箔や銅箔を用いた場合には、エッチング液として塩化第二鉄水溶液、苛性ソーダ、塩酸等を用いることが可能である。
【0042】
図4に示すように、続くステップS104では、集電体積層ユニット30からレジスト層34を除去するレジスト除去工程が実施される。このレジスト除去工程においては、図5(D)に示すように、貫通孔20a,23a以外の非エッチング部を保護していたレジスト層34が集電体積層ユニット30から除去される。アルカリ溶解型のレジストインクを用いた場合には、塩酸等によりエッチング処理を行い、洗浄を行った後に、水酸化ナトリウム水溶液を用いてレジスト層を除去することが可能である。更に、洗浄、中和処理、洗浄を繰り返して乾燥させることにより、貫通孔20a,23aを備えた集電体材料31,32が、フィルム材33を挟み込んだ状態で形成されることになる。
【0043】
このように、複数の集電体材料31,32に対して同時にエッチング処理を施すようにしたので、貫通孔20a,23aを有する正極集電体20や負極集電体23の製造コストを大幅に引き下げることが可能となる。また、集電体材料31,32間にエッチング液を遮断するフィルム材33を介在させることにより、それぞれの集電体材料31,32に対して片面側からエッチング処理を施すようにしている。これにより、集電体積層ユニット30の両面に形成するレジスト層34のパターンを整合させる必要がないため、正極集電体20や負極集電体23の製造コストを引き下げることが可能となる。
【0044】
次いで、図4に示すように、ステップS105では、一方の集電体材料31によって構成される電極Aに、第1の電極合材層35を形成する第1スラリー塗工工程(第1塗工工程)が実施される。この第1スラリー塗工工程においては、図6(A)に示すように、集電体積層ユニット30の一方面(表面)30aに電極スラリーが塗工される。なお、貫通孔20a,23aの内部に電極スラリーが充填されるように塗工しても良い。そして、この電極スラリーを乾燥させることにより、集電体積層ユニット30の表面30a上に電極合材層35が形成される。このように、電極の製造過程においては、貫通孔20a,23aを閉塞するフィルム材33を備える仕掛品としての中間積層材41が形成される。この中間積層材41は、貫通孔20a,23aを備える集電体材料31と、集電体材料31の一方面側に設けられるフィルム材33と、集電体材料31の他方面側に設けられる電極合材層35とを有している。ここで、図7は塗工乾燥装置100の一例を示す概略図である。図7に示すように、ロール101から繰り出されるエッチング後の集電体積層ユニット30は、ダイコータ等の塗工部102に案内される。この塗工部102において、集電体積層ユニット30には電極スラリーが塗工される。そして、塗工された電極スラリーを乾燥させるため、集電体積層ユニット30は水平方向に搬送されながら乾燥炉103を通過するようになっている。
【0045】
前述したように、集電体材料31,32間にはフィルム材33が設けられている。このため、貫通孔20a,23aを有する集電体材料31,32に電極スラリーを塗工しても、電極スラリーが貫通孔20a,23aを通過して集電体積層ユニット30の裏側に抜けることが無い。したがって、ガイドローラ104等に電極スラリーを付着させることなく、集電体積層ユニット30を水平方向に搬送することが可能となる。これにより、垂直方向に集電体材料を引き上げる塗工方法に比べて乾燥炉103を長く設定することが可能となる。よって、集電体材料31,32の搬送速度を引き上げることができ、電極の生産性を向上させることが可能となる。さらに、貫通孔20a,23aを有する集電体材料31,32においては、貫通孔を持たない集電体材料に比べて強度が低くなる。このため、貫通孔20a,23aを有する集電体材料31,32の搬送速度を高めることが困難となっていた。これに対し、フィルム材33を介して集電体材料31,32を重ね合わせることにより、その強度を高めることが可能となる。これにより、集電体材料31,32の搬送速度を引き上げることができ、電極の生産性を向上させることが可能となる。
【0046】
続いて、図4に示すように、ステップS106では、他方の集電体材料32によって構成される電極Bに、第1の電極合材層36を形成する第1スラリー塗工工程が実施される。この第1スラリー塗工工程においては、図6(B)に示すように、上下を反転させた集電体積層ユニット30の他方面(表面)30bに電極スラリーが塗工される。なお、貫通孔20a,23aの内部に電極スラリーが充填されるように塗工しても良い。そして、この電極スラリーを乾燥させることにより、集電体積層ユニット30の表面30b上に電極合材層36が形成される。このように、電極の製造過程においては、貫通孔20a,23aを閉塞するフィルム材33を備える仕掛品としての中間積層材42が形成される。この中間積層材42は、貫通孔20a,23aを備える集電体材料31,32を有している。集電体材料31の一方面側にはフィルム材33が設けられ、集電体材料31の他方面側には電極合材層35が設けられる。また、集電体材料32の一方面側にはフィルム材33が設けられ、集電体材料32の他方面側には電極合材層36が設けられる。この第1スラリー塗工工程においても、集電体積層ユニット30にはフィルム材33や電極合材層35が設けられるため、電極スラリーが貫通孔20a,23aを通過して裏側に抜けることは無い。よって、集電体積層ユニット30を水平方向に搬送しながら、効率良く電極合材層36を形成することが可能となる。
【0047】
図4に示すように、続くステップS107では、集電体積層ユニット30から集電体材料31,32を剥離する集電体剥離工程が実施される。図6(C)に示すように、集電体剥離工程においては、電極合材層35,36を備えた集電体材料31,32が、それぞれフィルム材33から剥離される。なお、フィルム材33として熱剥離フィルムを用いた場合には、乾燥炉103の通過に伴って熱剥離フィルムの粘着力が低下するため、容易に集電体材料31,32を剥離することが可能となる。
【0048】
図4に示すように、続くステップS108では、剥離した集電体材料31の未塗工面37に第2の電極合材層39を形成する第2スラリー塗工工程(第2塗工工程)が実施される。同様に、ステップS109では、剥離した集電体材料32の未塗工面38に第2の電極合材層40を形成する第2スラリー塗工工程が実施される。これらの第2スラリー塗工工程においては、図6(D)に示すように、電極合材層35,36を下側に配置した状態で、集電体材料31,32の未塗工面37,38に電極スラリーが塗工される。そして、この電極スラリーを乾燥させることにより、集電体材料31,32の未塗工面37,38上に電極合材層39,40が形成される。この第2スラリー塗工工程においても、集電体材料31,32には電極合材層35,36が設けられるため、電極スラリーが貫通孔20a,23aを通過して集電体材料31,32の裏側に抜けることは無い。よって、集電体材料31,32を水平方向に搬送しながら、効率良く電極合材層39,40を形成することが可能となる。
【0049】
これまで説明したように、複数の集電体材料31,32に対して同時にエッチング処理を施すようにしたので、貫通孔20a,23aを有する正極集電体20や負極集電体23の製造コストを引き下げることが可能となる。また、集電体材料31,32間にフィルム材33を挟み込むようにしたので、塗工された電極スラリーの貫通孔20a,23aからの抜けを防止することが可能となる。これにより、集電体材料31,32を水平方向に搬送しながら電極スラリーを塗工することができるため、電極の生産性を向上させて製造コストを引き下げることが可能となる。なお、遮断層としてフィルム材33を設けるようにしているが、これに限られるものではない。例えば、集電体材料31,32間にレジストインクを塗布することにより、集電体材料31,32間に遮断層としてのレジスト層を設けるようにしても良い。
【0050】
続いて、本発明の他の実施の形態である電極の製造方法について説明する。図8は本発明の他の実施の形態である電極の製造方法を示すフローチャートである。また、図9〜11は各製造工程における電極の状態を示す概略図である。なお、図5および図6に示す部材と同一の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。また、レジストインクやエッチング液については、前述したレジストインクやエッチング液と同じものが用いられる。
【0051】
図8に示すように、ステップS201では、集電体積層ユニット50を形成する集電体積層工程が実施される。この集電体積層工程においては、図9(A)に示すように、一対の集電体材料31,32を直に積層することにより、集電体積層ユニット50が形成される。続いて、図8に示すように、ステップS202では、集電体積層ユニット50に遮断層としてのフィルム材33が貼り付けられるフィルム貼付工程が実施される。このフィルム貼付工程においては、図9(B)に示すように、集電体積層ユニット50の一方面50aの全体にフィルム材33が貼り付けられる。また、ステップS203では、集電体積層ユニット50に保護層としてのレジスト層51を形成するレジスト印刷工程が実施される。このレジスト印刷工程においては、図9(C)に示すように、集電体積層ユニット50の他方面50bに所定パターンのレジスト層51が形成される。このように、フィルム貼付工程およびレジスト印刷工程によって保護層形成工程が実施される。
【0052】
図8に示すように、続くステップS204では、集電体積層ユニット50に貫通孔20a,23aを形成するエッチング工程が実施される。このエッチング工程においては、図9(D)に示すように、フィルム材33およびレジスト層51をマスクとして用いて集電体積層ユニット50にエッチング処理が施される。これにより、集電体積層ユニット50の他方面50bから、それぞれの集電体材料31,32に対して多数の貫通孔20a,23aが形成される。続いて、図8に示すように、ステップS205では、集電体積層ユニット50からレジスト層51を除去するレジスト除去工程が実施される。このレジスト除去工程においては、図9(E)に示すように、集電体積層ユニット50の他方面50bに設けられていた所定パターンのレジスト層51が除去される。これにより、貫通孔20a,23aが形成された集電体材料31,32には、貫通孔20a,23aを閉塞するフィルム材33が設けられた状態となっている。
【0053】
このように、複数の集電体材料31,32に対して同時にエッチング処理を施すようにしたので、貫通孔20a,23aを有する正極集電体20や負極集電体23の製造コストを大幅に引き下げることが可能となる。また、集電体積層ユニット50にフィルム材33を貼り付けることにより、それぞれの集電体材料31,32に対して片面側からエッチング処理を施すようにしている。これにより、集電体積層ユニット50に形成するレジスト層51のパターンを高精度に位置決めする必要がないため、正極集電体20や負極集電体23の製造コストを引き下げることが可能となる。
【0054】
次いで、図8に示すように、ステップS206では、一方の集電体材料31によって構成される電極Aに、第1の電極合材層35を形成する第1スラリー塗工工程(第1塗工工程)が実施される。この第1スラリー塗工工程においては、図10(A)に示すように、集電体積層ユニット50の他方面(表面)50bに電極スラリーが塗工される。なお、貫通孔20a,23aの内部に電極スラリーが充填されるように塗工しても良い。そして、この電極スラリーを乾燥させることにより、集電体積層ユニット50の表面50b上に電極合材層35が形成される。このように、電極の製造過程においては、貫通孔20a,23aを閉塞するフィルム材33を備える仕掛品としての中間積層材52が形成される。この中間積層材52は、貫通孔20a,23aを備える集電体材料31,32と、集電体材料31,32の一方面側に設けられるフィルム材33と、集電体材料31,32の他方面側に設けられる電極合材層35とを有している。
【0055】
前述したように、集電体積層ユニット50にはフィルム材33が全面に渡って貼り付けられている。このため、貫通孔20a,23aを有する集電体材料31,32に電極スラリーを塗工しても、電極スラリーが貫通孔20a,23aを通過して集電体積層ユニット50の裏側に抜けることが無い。したがって、ガイドローラ104等に電極スラリーを付着させることなく、集電体積層ユニット50を水平方向に搬送することが可能となる。これにより、垂直方向に集電体材料を引き上げる塗工方法に比べて乾燥炉103を長く設定することが可能となる。よって、集電体材料31,32の搬送速度を引き上げることができ、電極の生産性を向上させることが可能となる。さらに、貫通孔20a,23aを有する集電体材料31,32においては、貫通孔を持たない集電体材料に比べて強度が低くなる。このため、貫通孔20a,23aを有する集電体材料31,32の搬送速度を高めることが困難となっていた。これに対し、集電体材料31,32を重ねるとともにフィルム材33を貼り付けることにより、その強度を高めることが可能となる。これにより、集電体材料31,32の搬送速度を引き上げることができ、電極の生産性を向上させることが可能となる。
【0056】
次いで、図8に示すように、ステップS207では、集電体積層ユニット50から集電体材料31を剥離する集電体剥離工程が実施される。図10(B)に示すように、集電体剥離工程においては、電極合材層35を備えた集電体材料31が、フィルム材33を備えた集電体材料32から剥離される。続いて、図8に示すように、ステップS208では、剥離した集電体材料31の未塗工面53に第2の電極合材層54を形成する第2スラリー塗工工程(第2塗工工程)が実施される。この第2スラリー塗工工程においては、図10(C)に示すように、電極合材層35を下側に配置した状態で、集電体材料31の未塗工面53に電極スラリーが塗工される。なお、貫通孔20a,23aの内部に電極スラリーが充填されるように塗工しても良い。そして、この電極スラリーを乾燥させることにより、集電体材料31の未塗工面53上に電極合材層54が形成される。この第2スラリー塗工工程においても、集電体材料31には既に電極合材層35が設けられるため、電極スラリーが貫通孔20a,23aを通過して集電体材料31の裏側に抜けることは無い。これにより、集電体材料31を水平方向に搬送しながら、効率良く電極合材層54を形成することが可能となる。
【0057】
図8に示すように、続くステップS209では、他方の集電体材料32によって構成される電極Bに、第1の電極合材層55を形成する第1スラリー塗工工程が実施される。この第1スラリー塗工工程においては、図11(A)に示すように、フィルム材33を下側に配置した状態で、集電体材料32の表面32aに電極スラリーが塗工される。なお、貫通孔20a,23aの内部に電極スラリーが充填されるように塗工しても良い。そして、電極スラリーを乾燥させることにより、集電体材料32に電極合材層55が形成される。この第1スラリー塗工工程においても、集電体材料32には貫通孔20a,23aを閉塞するフィルム材33が形成されるため、電極スラリーが貫通孔20a,23aを通過して集電体材料32の裏側に抜けることが無い。これにより、集電体材料32を水平方向に搬送しながら、効率良く電極合材層55を形成することが可能である。
【0058】
図8に示すように、続くステップS210では、集電体材料32からフィルム材33を除去するフィルム剥離工程が実施される。このフィルム剥離工程においては、図11(B)に示すように、集電体材料32に残されていたフィルム材33が除去される。続いて、図8に示すように、ステップS211では、集電体材料32に第2の電極合材層56を形成する第2スラリー塗工工程が実施される。この第2スラリー塗工工程においては、図11(C)に示すように、電極合材層55を下側に配置した状態で、集電体材料32の未塗工面57に電極スラリーが塗工される。なお、貫通孔20a,23aの内部に電極スラリーが充填されるように塗工しても良い。そして、この電極スラリーを乾燥させることにより、集電体材料32の未塗工面57上に電極合材層56が形成される。この第2スラリー塗工工程においても、集電体材料32には既に電極合材層55が設けられるため、電極スラリーが貫通孔20a,23aを通過して集電体材料32の裏側に抜けることは無い。これにより、集電体材料32を水平方向に搬送しながら、効率良く電極合材層56を形成することが可能となる。
【0059】
これまで説明したように、複数の集電体材料31,32に対して同時にエッチング処理を施すようにしたので、貫通孔20a,23aを有する正極集電体20や負極集電体23の製造コストを引き下げることが可能となる。また、集電体積層ユニット50にフィルム材33を設けるようにしたので、塗工された電極スラリーの貫通孔20a,23aからの抜けを防止することが可能となる。これにより、集電体材料31,32を水平方向に搬送しながら電極スラリーを塗工することができるため、電極の生産性を向上させて製造コストを引き下げることが可能となる。
【0060】
前述の説明では、集電体積層ユニット50の一方面50aの全体にフィルム材33を貼り付けているが、複数の集電体材料に対して同時にエッチング処理を施すという観点からは、集電体積層ユニット50の一方面50aの全体にレジスト層を設けるようにしても良い。ここで、図12(A)〜(E)は集電体材料に貫通孔を形成する際の各製造工程を示す概略図である。なお、図9に示す部材と同一の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。また、レジストインクやエッチング液については、前述したレジストインクやエッチング液と同じものが用いられる。
【0061】
図12(A)に示すように、一対の集電体材料31,32を直に積層することにより、集電体積層ユニット50が形成される。また、図12(B)に示すように、集電体積層ユニット50の一方面50aの全体にレジストインクが印刷される。さらに、図12(C)に示すように、集電体積層ユニット50の他方面50bに所定パターンでレジストインクが印刷される。これにより、集電体積層ユニット50の一方面50aには全体にレジスト層58が形成される。一方、集電体積層ユニット50の他方面50bには所定パターンのレジスト層51が形成される。
【0062】
続いて、図12(D)に示すように、レジスト層51,58をマスクとして用いて集電体積層ユニット50にエッチング処理が施される。これにより、集電体積層ユニット50の他方面50bから、それぞれの集電体材料31,32に対して多数の貫通孔20a,23aが形成される。また、図12(E)に示すように、集電体積層ユニット50の一方面50aに設けられていたベタ塗りのレジスト層58が除去される。さらに、集電体積層ユニット50の他方面50bに設けられていた所定パターンのレジスト層51が除去される。これにより、貫通孔20a,23aを備えた集電体材料31,32が得られることになる。
【0063】
このように、複数の集電体材料31,32に対して同時にエッチング処理を施すようにしたので、貫通孔20a,23aを有する正極集電体20や負極集電体23の製造コストを大幅に引き下げることが可能となる。また、集電体積層ユニット50にベタ塗りのレジスト層58を設けることにより、それぞれの集電体材料31,32に対して片面側からエッチング処理を施すようにしている。これにより、集電体積層ユニット50に形成するレジスト層51のパターンを高精度に位置決めする必要がないため、正極集電体20や負極集電体23の製造コストを引き下げることが可能となる。
【0064】
続いて、本発明の他の実施の形態である電極の製造方法について説明する。図13は本発明の他の実施の形態である電極の製造方法を示すフローチャートである。なお、図8に示す工程と同一の工程については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0065】
図13に示すように、ステップS301では、集電体積層ユニット50を形成する重合圧延工程(集電体積層工程)が実施される。ここで、図14は重合圧延装置110の一例を示す概略図である。図14に示すように、重合圧延装置110には、金属箔材料111,112を繰り出す2つのロール113,114が設けられている。また、重合圧延装置110には、金属箔材料111,112を圧延する一対の圧延ローラ115が設けられている。それぞれのロール113,114から繰り出される金属箔材料111,112は、重ねられた状態で圧延ローラ115に案内される。そして、圧延ローラ115によって一対の金属箔材料111,112を重合圧延することにより、金属箔材料111,112から集電体材料31,32が形成されるとともに、集電体材料31,32を直に積層した集電体積層ユニット50が形成されることになる。そして、重合圧延によって得られた集電体積層ユニット50に対し、前述したレジスト印刷工程、エッチング工程、レジスト除去工程を実施することにより、貫通孔20a,23aを有する集電体材料31,32を得ることが可能となる。
【0066】
このように、重合圧延された集電体材料31,32をそのまま集電体積層ユニット50として利用することにより、貫通孔20a,23aを有する正極集電体20や負極集電体23の製造コストを大幅に引き下げることが可能となる。すなわち、集電体材料31,32を製造する際に必要な重合圧延工程と、集電体積層ユニット50を形成する集電体積層工程とを兼ねることが可能となる。したがって、貫通孔20a,23aを有する正極集電体20や負極集電体23を製造する際の製造工数を大幅に削減することができるのである。
【0067】
以下、前述した蓄電デバイスの構成要素について下記の順に詳細に説明する。[A]正極、[B]負極、[C]正極集電体および負極集電体、[D]リチウム極、[E]セパレータ、[F]電解液、[G]外装容器。
【0068】
[A]正極
正極は、正極集電体とこれに一体となる正極合材層とを有している。蓄電デバイスをリチウムイオンキャパシタとして機能させる場合には、正極合材層に含まれる正極活物質として、リチウムイオン及び/又はアニオンを可逆的にドープ・脱ドープ可能な物質を採用することが可能である。すなわち、リチウムイオンとアニオンとの少なくともいずれか一方を可逆的にドープ・脱ドープ可能な物質であれば特に限定されることはない。例えば、活性炭、遷移金属酸化物、導電性高分子、ポリアセン系物質等を用いることが可能である。
【0069】
例えば、活性炭は、アルカリ賦活処理され、かつ比表面積600m/g以上を有する活性炭粒子から形成することが好ましい。活性炭の原料としては、フェノール樹脂、石油ピッチ、石油コークス、ヤシガラ、石炭系コークス等が使用される。フェノール樹脂や石炭系コークスは比表面積を高くできるという理由から好適である。これらの活性炭のアルカリ賦活処理に使用されるアルカリ活性化剤は、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物塩等が好ましい。中でも、水酸化カリウムが好適である。アルカリ賦活の方法は、例えば、炭化物と活性剤を混合した後、不活性ガス気流中で加熱することにより行う方法が挙げられる。また、活性炭の原材料に予め活性化剤を担持させた後加熱して、炭化および賦活の工程を行う方法が挙げられる。さらに、炭化物を水蒸気などのガス賦活法で賦活した後、アルカリ活性化剤で表面処理する方法も挙げられる。このようなアルカリ賦活処理が施された活性炭は、ボールミル等の既知の粉砕機を用いて粉砕される。活性炭の粒度としては、一般的に使用される広い範囲のものを使用することが可能である。例えば、D50が2μm以上であり、好ましくは2〜50μm、特に2〜20μmが最も好ましい。また、平均細孔径が好ましくは10nm以下であり、比表面積が好ましくは600〜3000m/gである活性炭が好適である。中でも、800m/g以上、特には1300〜2500m/gであるのが好適である。
【0070】
また、蓄電デバイスをリチウムイオンバッテリ(リチウムイオン電池)として機能させる場合には、正極合材層に含まれる正極活物質として、ポリアニン等の導電性高分子や、リチウムイオンを可逆的にドープ・脱ドープ可能な物質を採用することが可能である。例えば、正極活物質として五酸化バナジウム(V)やコバルト酸リチウム(LiCoO)を用いることが可能である。この他にも、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiFeO等のLi(x,y,zは正の数、Mは金属、2種以上の金属でもよい)の一般式で表されうるリチウム含有金属酸化物、あるいはコバルト、マンガン、バナジウム、チタン、ニッケル等の遷移金属酸化物または硫化物を用いることも可能である。特に、高電圧を求める場合には、金属リチウムに対して4V以上の電位を有するリチウム含有酸化物を用いることが好ましい。例えば、リチウム含有コバルト酸化物、リチウム含有ニッケル酸化物、あるいはリチウム含有コバルト−ニッケル複合酸化物が特に好適である。
【0071】
前述した活性炭等の正極活物質は、粉末状、粒状、短繊維状等に形成される。この正極活物質をバインダーと混合して電極スラリーが形成される。そして、正極活物質を含有する電極スラリーを正極集電体に塗工して乾燥させることにより、正極集電体上に正極合材層が形成される。なお、正極活物質と混合されるバインダーとしては、例えばSBR等のゴム系バインダーやポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリレート等の熱可塑性樹脂を用いることができる。また、正極合材層に対して、アセチレンブラック、グラファイト、金属粉末等の導電性材料を適宜加えるようにしても良い。
【0072】
[B]負極
負極は、負極集電体とこれに一体となる負極合材層とを有している。負極合材層に含まれる負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的にドープ・脱ドープできるものであれば特に限定されることはない。例えば、グラファイト、種々の炭素材料、ポリアセン系物質、錫酸化物、珪素酸化物等を用いることが可能である。グラファイト(黒鉛)やハードカーボン(難黒鉛化性炭素)は高容量化を図ることができるため負極活物質として好ましい。また、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であるポリアセン系有機半導体(PAS)は、高容量化を図ることができるため負極活物質として好適である。このPASはポリアセン系骨格構造を有する。このPASの水素原子/炭素原子の原子数比(H/C)は0.05以上、0.50以下の範囲内であることが好ましい。PASのH/Cが0.50を超える場合には、芳香族系多環構造が充分に発達していないことから、リチウムイオンのドープ・脱ドープがスムーズに行われず、蓄電デバイスの充放電効率が低下するおそれがある。PASのH/Cが0.05未満の場合には、蓄電デバイスの容量が低下するおそれがある。
【0073】
前述したPAS等の負極活物質は、粉末状、粒状、短繊維状等に形成される。この負極活物質をバインダーと混合して電極スラリーが形成される。そして、負極活物質を含有する電極スラリーを、負極集電体に塗工して乾燥させることにより、負極集電体上に負極合材層が形成される。なお、負極活物質と混合されるバインダーとしては、例えば、ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリレート等の熱可塑性樹脂、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム系バインダーを用いることができる。これらの中でもフッ素系バインダーを用いることが好ましい。このフッ素系バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−3フッ化エチレン共重合体、エチレン−4フッ化エチレン共重合体、プロピレン−4フッ化エチレン共重合体等が挙げられる。また、負極合材層に対して、アセチレンブラック、グラファイト、金属粉末等の導電性材料を適宜加えるようにしても良い。
【0074】
[C]正極集電体および負極集電体
正極集電体および負極集電体の材料としては、一般に電池やキャパシタに提案されている種々の材料を用いることが可能である。例えば、正極集電体の材料として、アルミニウム、ステンレス鋼等を用いることができる。負極集電体の材料として、ステンレス鋼、銅、ニッケル等を用いることができる。また、前述した正極集電体や負極集電体に形成される貫通孔の開口率は特に限定されず、通常40〜60%である。また、リチウムイオンの移動を阻害しないものであれば、貫通孔の大きさや個数等について特に限定されることはない。また、正極集電体および負極集電体に形成される貫通孔の形状としては、円形、楕円形、矩形、菱形、スリット形等、いかなる形状であっても良い。
【0075】
[D]リチウム極
リチウム極集電体の材料としては、一般に電池やキャパシタの集電体として提案されている種々の材料を用いることが可能である。これらの材料としては、ステンレス鋼、銅、ニッケル等を用いることができる。また、リチウム極集電体として、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔、網、発泡体等の表裏面を貫く貫通孔を備えているものを使用しても良い。また、リチウム極集電体に貼り付けられる金属リチウム箔に代えて、リチウムイオンを放出することが可能なリチウム−アルミニウム合金等を用いても良い。
【0076】
[E]セパレータ
セパレータとしては、電解液、正極活物質、負極活物質等に対して耐久性があり、連通気孔を有する電子伝導性のない多孔質体等を用いることができる。通常は、紙(セルロース)、ガラス繊維、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等からなる布、不織布あるいは多孔体が用いられる。セパレータの厚みは、電解液の保持量やセパレータの強度等を勘案して適宜設定することができる。なお、セパレータの厚みは、蓄電デバイスの内部抵抗を小さくするために薄い方が好ましい。
【0077】
[F]電解液
電解液としては、高電圧でも電気分解を起こさないという点、リチウムイオンが安定に存在できるという点から、リチウム塩を含む非プロトン性有機溶媒を用いることが好ましい。非プロトン性有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホラン等を単独あるいは混合した溶媒が挙げられる。また、リチウム塩としては、例えば、LiClO、LiAsF、LiBF、LiPF、LIN(CSO)等が挙げられる。また、電解液中の電解質濃度は、電解液による内部抵抗を小さくするため、少なくとも0.1モル/L以上とすることが好ましい。更には、0.5〜1.5モル/Lの範囲内とすることが好ましい。
【0078】
また、有機溶媒に代えてイオン性液体(イオン液体)を用いても良い。イオン性液体は各種カチオン種とアニオン種の組み合わせが提案されている。カチオン種としては、例えば、NメチルNプロピルピペリジニウム(PP13)、1エチル3メチルイミダゾリウム(EMI)、ジエチルメチル2メトキシエチルアンモニウム(DEME)等が挙げられる。また、アニオン種としては、ビス(フルオロスルフォニル)イミド(FSI)、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド(TFSI)、PF、BF等が挙げられる。
【0079】
[G]外装容器
外装容器としては、一般に電池に用いられている種々の材質を用いることができる。例えば、鉄やアルミニウム等の金属材料を使用しても良い。また、樹脂等のフィルム材料を使用しても良い。また、外装容器の形状についても特に限定されることはない。円筒型や角型など用途に応じて適宜選択することが可能である。蓄電デバイスの小型化や軽量化の観点からは、アルミニウムのラミネートフィルムを用いたフィルム型の外装容器を用いることが好ましい。一般的には、外側にナイロンフィルム、中心にアルミニウム箔、内側に変性ポリプロピレン等の接着層を有した3層ラミネートフィルムが用いられている。
【0080】
(実施の形態2)
前記実施の形態1の説明は、複数の集電体材料を積層した集電体積層ユニットに関するものであった。かかる集電体積層ユニットの集電体材料面にレジスト層(保護層)を形成し、そのレジスト層のパターンに合わせて集電体材料に表裏を貫通する孔を設ける構成であった。かかる構成を採用することで、集電体材料を切断等して個片化し製造する集電体の生産効率を向上させることができた。併せて、集電体を使用する電極の生産効率の向上も図れるものであった。
【0081】
前記実施の形態1の記載にもあるように、かかる集電体積層ユニットの態様の一つは、例えばフィルム材(遮断層)を介して集電体材料を重ね合わせ積層する構成である。かかる構成の集電体積層ユニットは、フィルム材を介さずに孔あき集電体材料を搬送する場合よりも、搬送速度を早くすることができる。例えば、より早く水平搬送することができるのである。すなわち、集電体材料が、フィルム材の両面に、ある程度の粘着力で積層されていることで、積層された孔あきの集電体材料の搬送に際してフィルム材による強度補強がなされたのである。
【0082】
本発明者は、水平搬送時等の孔あき集電体のより高速の搬送が可能となるべく、前記実施の形態1に示すように、種々の検討を行っていた。上記構成では、集電体材料の孔面が遮断層のフィルム材で塞がれている。そのために、搬送に際しての集電体材料の孔部分に関わる引張り力等の力に対して、かかるフィルム材が無い場合よりも補強されている。すなわち、遮断層のフィルム材が孔あき集電体材料の補強層としての役目を果たしている。かかるフィルム材に、積層された孔あき集電体材料の孔部分に作用する搬送時の引張り力等の力に対する抗力が、発生する。
【0083】
実施の形態1に示す集電体積層ユニットの構成では、かかる遮断層としてのフィルム材の両面に孔あきの集電体材料が設けられている。そのため、フィルム材の両面に、積層した集電体材料の孔部分にかかる力が作用する。しかし、その力に抗してフィルム材の両面に抗力が発生し、集電体積層ユニットの強度が確保されている。
【0084】
このようにフィルム材の両面に孔あきの集電体材料を積層した構成では、フィルム材の両面に、引張り力等の力が作用する。かかる引張り力等の力は、上記の如く、フィルム材の両面に積層した集電体材料の孔部分に接した箇所に強く作用する。かかるフィルム材の両面に作用する力が、発生する抗力よりも大き過ぎると、フィルム材が破損してしまう。そのため、フィルム材に作用する力は、極力特定領域に集中させるよりも、分散させた方が好ましい。
【0085】
すなわち、積層した集電体材料に設ける孔位置は、フィルム材を間に挟んで対向する貫通孔の位置が、互いにずれていた方が好ましい。具体的には、前記実施の形態1の図5(D)等に示すように、フィルム材33を介して設けた集電体材料31,32にあけたそれぞれを貫通する孔の位置が、ずれていた方が好ましいのである。
【0086】
図15(A)には、遮断層としてのフィルム材33を介して設けたそれぞれの集電体材料31,32にあけた貫通孔20a,23aの孔位置が、一致している場合を図示した。すなわち、集電体材料31に設けた貫通孔20a,23aのフィルム材33側に面する開口面αが、集電体材料32に設けた貫通孔20a,23aのフィルム材33側に面する開口面βと、その位置が一致しているのである。かかる対向して一致している状況は、フィルム材33に両側の集電体材料31,32に設けた貫通する孔を破線で結んで示した。なお、貫通孔20a,23aの開口面α,βとは、貫通孔20a,23aの開口端の内側に区画される仮想面である。
【0087】
一方、図15(B)には、遮断層としてのフィルム材33を介して設けられたそれぞれの集電体材料31,32にあけた貫通孔20a,23aの孔位置が、互いにずれている場合を示した。すなわち、集電体材料31に設けた貫通孔20a,23aのフィルム材33側の開口面αが、集電体材料32に設けた貫通孔20a,23aのフィルム材33側の開口面βと、互いに位置がずれているのである。
【0088】
このようにそれぞれの集電体材料31,32に設けた貫通孔20a,23a同士のフィルム材33側の開口面α,βの位置を敢えてずらす方が、フィルム材にとっては強度的には好ましいのである。かかる貫通孔20a,23aの孔は、実施の形態1の図5(C)にも模式的に図示するように、レジスト層34の所定パターンの孔配置に合わせてエッチング等で形成される。かかるレジスト層34は、孔あきの配列パターンを形成したマスクを用いて、露光、現像する等の方法を含めたパターン形成手段を用いて形成される。
【0089】
このようにして、レジスト層34を介して形成された孔の平面形状は、円形を含めて多角形、不定形等と様々の形が採用できる。すなわち、集電体材料に形成される貫通孔のフィルム材に面した開口面の平面形状には、上記の如く種々の形状が適用できる。尚、形状に関しては後記するが、種々の形状のなかでも、真円形状よりも角がある形状等が好ましい場合もある。例えば貫通孔20a,23aに充填した電極材の抜け落ちを防止するという観点から、角がある形状が好ましい場合がある。
【0090】
例えば、貫通孔20a,23aのフィルム材側に面する開口面の平面形状が、真円形の場合には、図16(A)に示すような、孔パターンを挙げることができる。かかる孔パターンは、例えば、同一の開口面形状を有する貫通孔20a,23aが縦方向、横方向に、一定のピッチで整然と千鳥状に配列形成されている。尚、図16(A)に示す場合は、帯状に所定幅で長尺状に形成された集電体材料31の一部を切断した場合の平面状況を示している。
【0091】
例えば、図16(A)に示す構成の孔パターンで、貫通孔20a,23aが集電体材料31側に形成される。一方、図示はしないが、集電体材料32側にも、同一の孔パターンで、貫通孔20a,23aが形成される。尚、本説明では、フィルム材33の両面に設けた集電体材料31,32に貫通する孔をあける際に、同一の開口面の配列を有した孔パターンを用いた場合を例に挙げて説明する。しかし、集電体材料31,32に使用する孔パターンは、それぞれ異なるパターンであっても構わない。
【0092】
尚、上記の如く、集電体材料にあけた貫通孔の孔パターンと同一とは、開口面の形状、開口面の面積、開口率が同一の場合と定義しておけばよい。因みに、開口率とは、孔あけ前の集電体材料の質量と孔あけ後の集電体材料の質量とを比較した質量比で定義できる。すなわち、孔あけ前の集電体材料の質量をAとし、孔あけ後の集電体材料の質量をBとした場合には、開口率(%)は{(A−B)/A}×100と定義される。なお、貫通孔の内径が一定に形成される場合には、孔あけ前の集電体材料の面積と孔あけ後の集電体材料の面積とを比較した面積比で定義しても良い。集電体は、集電体材料を切断して個片化することで製造される。かかる製造された集電体を検証することで開口率の測定はできる。
【0093】
図16(B)には、集電体材料31側から、フィルム材33を介して対向して設けられた集電体材料32側を見通した様子を模式的に示した。実線の円形が集電体材料31に設けた貫通孔20a,23aの開口面αである。すなわち、実線の円形によって貫通孔20a,23aの開口端が示されており、この開口端の内側に区画される仮想面が貫通孔20a,23aの開口面αである。また、二点鎖線の円形が集電体材料32に設けた貫通孔20a,23aの開口面βを示している。すなわち、二点鎖線の円形によって貫通孔20a,23aの開口端が示されており、この開口端の内側に区画される仮想面が貫通孔20a,23aの開口面βである。なお、集電体材料31,32の間に挟まれたフィルム材33については、分かりやすいように、図面では省いてある。以下、貫通する孔の重なり状況を説明する図では、同様にフィルム材33を省いて示している。
【0094】
かかる図16(B)では、集電体材料31にあけられた貫通孔20a,23aの開口面αの位置は、集電体材料32にあけられた貫通孔20a,23aの開口面βの位置とは、ずれている。このように集電体材料31,32に形成する貫通孔20a,23aの開口面α,βの位置を敢えてずらして形成するには、集電体材料31,32に設けるレジスト層の孔パターンの位置をずらして孔を貫通させればよいのである。
【0095】
基本的には、図16(B)に示すように、対向した孔の開口面α,βが互いに少しでもずれていれば、一致している場合に比べて、厳密な意味では強度的には向上していると思われる。しかし、実質的に強度効果がはっきりと感得できる場合としては、図17に示すように、開口面α,βの重なり部分(図中、斜線部分で表示)の面積の割合が、開口面α(もしくは開口面β)の面積の所定数値以下であればよい。すなわち、開口面αと、開口面βの重った部分の割合(以下、重複率という場合がある)が、50%以下であれば好ましい。勿論、重複率が0%でもあっても構わない。50%以下の根拠は、集電体材料31,32の開口率との兼ね合いである。重複率が低くなるほど集電体材料31,32の開口率は低くなるのである。
【0096】
より好ましくは、10%以上、30%以下であればよい。10%未満では、集電体材料31,32の開口率に不都合が考えられる。30%を越えた場合には、開口部の支持体の強度に不都合が考えられる。10%以上、30%以下の範囲内では、現在の実験では、これまでの説明で述べたフィルム材の強度低下によると思われる不都合は発生していない。
【0097】
尚、重複率(%)は、上記説明では、開口面α,βが同一面積を有する場合を前提として説明したが、異なる面積の場合には、大きい面積の開口面に対する割合で重複率を定義すればよい。
【0098】
また、集電体材料に貫通孔を設ける際には、孔配列のパターンが形成されたレジスト層を集電体材料面に印刷等で設け、その後、再度ロール状に巻き取る工程が想定される。ロール状に巻かれた集電体積層ユニットでは、厳密には、ロールの内側と外側では大きさの異なる引張り力等が作用して、レジスト層の位置ずれが発生する可能性がある。そこで、重複率は、ある特定の値に設定するよりは、ある特定の範囲に設定しておくことが好ましい。
【0099】
すなわち、かかる重複率を特定範囲に設定しておけば、レジスト層を集電体材料面に形成する場合でも、集電体材料31,32側での互いのレジスト層の孔パターンのずらし位置が行い易い。ずらし位置が特定の値に設定されていれば、開口面の位置を完全一致させるように、位置合わせの設定に手間取ることとなる。位置合わせにかかる工数の低減も、量産態勢においては極めて重要なことである。生産効率の向上につながるためである。また、当然に、その分、生産コストの低減も図ることができるのである。
【0100】
また、このようにフィルム材を挟んで両面に設けた集電体材料の貫通孔の開口面の対向している孔位置をずらすことで、集電体積層ユニットの構成を薄くすることもできる。対向する孔位置を一致させる構成では、例えば、同一組成のフィルム材を用いる場合には、図18に示すように、その強度確保のためフィルム材の厚みDを大きくする構成が考えられる。図18に示す場合には、例えば、フィルム材33の厚みDが、図15(B)に示す厚みdの場合に比べて、2倍程に厚くなっている。しかし、孔位置をずらした構成により、例えば、図15(B)に示すように、フィルム材33の厚みdを薄くすることができる。
【0101】
前記貫通孔20a,23aの重複率に関しては、集電体材料31,32の孔数の度合いにも影響される。孔数の度合いは、例えば、開口率で把握される。孔が隣接する孔と同一ピッチで形成されている場合には、開口率が50%を越える同一孔パターンを集電体材料31,32に用いた場合には、重複率0%はあり得ないことになる。すなわち、全く孔の開口面αと、開口面βが、重複しない構成は考えることができないのである。
【0102】
因みに、重複率0%は、開口面αと、開口面βが、全く重ならない場合を示す。また、重複率100%は、開口面αと、開口面βが、完全に一致した場合を示している。
【0103】
かかる重複率は、例えば、集電体積層ユニットの集電体材料の間に挟むフィルムを透過する光を、一方の集電体材料側から他方の集電体材料側に照射すること等で確認できる。集電体材料と、フィルム材とで透過度の異なる光を照射すればよい。例えば、集電体材料は透過しないが、フィルム材は透過する等の性質を有する光を用いればよい。その透過量、透過面積等の透過度で判別できる。
【0104】
かかる判別には、集電体材料に形成される孔が、規則性を持って配置されている場合には、単位面積当りの上記透過度をもって容易に検証できる。例えば、形成される貫通孔の開口面の平面形状が一定で、且つ、隣接する開口面とのピッチが一定の規則性をもって配置されている孔パターン等では、適宜に設定した単位面積当りの上記透過度等で、孔の重複率を算定することができる。
【0105】
上記説明の構成では、孔の開口面のずらし方には、種々の仕方が考えられる。例えば、集電体材料31,32に開口面α,βが円形の2個の孔が設けられた場合を例に挙げて考える。図19の(A)に示すように、開口面α,βの位置をずらす方向としては、基本的には、例えば、互いに直行するx、y軸方向を想定できる。図19(B)には、x軸方向にずらした場合を示した。図19(B)では、開口面α,βと一部重なってずれている。図19(C)に示す場合には、x軸方向に、重なりが発生しないように、すなわち重複率0%となるようにずらした場合を示す。
【0106】
また、図20(A)に示すように、y軸方向に、一部重なるようにずらすことも想定できる。図20(B)に示す場合は、y軸方向に、重複率0%でずらした場合である。さらには、図20(C)に示すように、x軸とy軸との両方向に開口面α,βをずらすこともできる。また、図示はしないが、隣接する開口面αのピッチが開口面αの径よりも小さい場合には、x軸、あるいはy軸方向にずらした場合でも、隣接する開口面αの両方に、開口面βが重なる場合も考えられる。
【0107】
図21(A)には、集電体材料31にあけた貫通孔20a,23aの開口面αの配列パターンが、図16(A)とは異なる場合である。かかる孔パターンでは、円形状の開口面αが、縦方向、横方向に、同一ピッチで整列している。尚、図21(A)は、図16(A)と同様に、長尺状に形成された孔あきの集電体材料31の一部を切断した状況を示している。また、図示はしないが、同様に集電体材料32に同一の孔パターンで、貫通孔20a,23aが設けられている。
【0108】
かかる構成の貫通する孔が設けられた集電体材料31,32の両者を、フィルム材33を介して、相対して配置した場合を図21(B)に示す。図21(B)では、集電体材料31側から集電体材料32側を見通した図である。前記図16(B)の説明と同様に、実線が開口面αで、二点鎖線が開口面βで、間に挟まれたフィルム材33を図示から省いてある。
【0109】
図21(B)に示すように、集電体材料31にあけられた貫通孔20a,23aの開口面αの位置は、集電体材料32にあけられた貫通孔20a,23aの開口面βとは、その位置がx軸方向にずらされている。そのため、前記説明のように、間に介在させたフィルム材33の両面には、同一個所に引っ張り力等の力が作用することなく分散されている。相対する孔の開口面の位置が一致する場合に比べて、フィルム材の強度がより強く確保されている。図22(A)には、y軸方向にずらした場合を示している。図22(B)には、x軸方向と、y軸方向にずらした場合を示した。図23には、重複率0%の場合を示した。
【0110】
上記説明では、実施の形態1と同様に、貫通孔20a,23aは、断面直状に形成されている場合を示した。すなわち、図15(A)、(B)に示すように、集電体材料31,32のフィルム材33側には、それに接して開口面α,βが設けられる。集電体材料31,32の表面30a,30b側には、開口面α1,β1が設けられる。かかる開口面α,α1と、開口面β1,βは、大きさが同じ場合である。実際に貫通孔20a,23aを形成する場合には、貫通方向に異方性を持たせることで直状となるように集電体材料にエッチング等の孔あけ処理が施されている。
【0111】
しかし、異方性を意識することなくエッチング等の孔あけ処理を用いて貫通孔20a,23aを形成した場合には、貫通孔20a,23aの形状は、先細りの形状となる。すなわち、フィルム材33に接した開口面α,βよりも、集電体材料31,32の表面30a,30b側の開口面α1,β1の方が大きいのである。
【0112】
図24(A)に示す場合は、フィルム材33を介して対向した集電体材料31,32に設けた貫通孔20a,23aの開口面α,βの位置が一致している場合である。図24(B)に示した場合は、フィルム材33を介して相対した集電体材料31,32に設けた貫通孔20a,23aの開口面α,βの位置がずれている場合である。かかる非直状に貫通する孔形状でも、フィルム材33に面する側の開口面α,βが、図16(B)、図21(B)、図22、23等のように孔パターンがずれていることが好ましい。
【0113】
このようにずれていれば、一致している場合に比べて、集電体積層ユニット30の強度が全体的に強化されるのである。その結果、水平搬送が、開口面α,βが一致している場合に比べてより早くすることができる。また、間に介在させる遮断層としてのフィルム材33の厚みも薄くすることができる。
【0114】
以上説明したフィルム材(遮断層)を介して積層させた複数の集電体材料に形成した貫通孔の開口面の位置を互いにずらすには、それぞれの集電体材料の表面に設けるエッチング用のレジスト層の孔パターンをずらして設定すればよい。そのようにすれば、レジスト層のパターンに合わせて形成された貫通孔の開口面の対向する位置が重複率0をも含めてずらして形成される。
【0115】
すなわち、両集電体材料31,32に設けるレジストパターンを、意識的にずらすことで、エッチング処理してあけた孔の開口面αと開口面βがずれるのである。ずらしの度合いは、例えば、開口面α,βの重複率が0%を含め、50%以下になるように設定すればよい。さらには、重複率10%以上、30%以下になるように、設定すればよい。
【0116】
以上の説明のように、フィルム等の遮断層を介して両側に対向して設けられ集電体材料の貫通孔の開口面は、互いにその位置がずれていることが、強度的には好ましい。すなわち前記実施の形態1の図5(C)のエッチング工程の説明図にあるように、フィルム材33の両側にある集電体材料31,32の孔の位置が、対向位置としてずれていることが好ましいのである。
【0117】
フィルム材を介して対向する位置の集電体材料への孔あけは、例えば、エッチングを用いる場合には、レジスト層の孔あけ用パターンで決まる。このようにして設けられる孔の開口面は、極めて小さい。そのため、開口面を一致させることは難しく、手間がかかり、生産コストが高くなっていた。
【0118】
かかる点を、例えば、ある特定の範囲内で対向する開口面の位置をずらすという極めて簡単なことで解決し、同時に集電体積層ユニットの強度も向上させた。位置合わせに関しては、厳密な位置合わせの手間を省き、ラフな位置合わせが可能なため、集電体材料、集電体の生産コストの低減が可能である。畢竟、集電体を使用する電極の生産コストの低減も、その電極を使用した電池、キャパシタ等の蓄電体の生産コストの低減も図ることができる。
【0119】
また、集電体積層ユニットの強度の面では、対向する開口面の孔位置が一致している場合には、エッチング液の洗浄等の際に、両側が開口面α,βで挟まれているフィルム材部分が、破れやすくなる。あるいはレジスト層の剥離工程、あるいは電極材の塗工工程、あるいは遮断層であるフィルム材の片面ずつの剥離工程、あるいは両面剥離工程等で、フィルム材が破損しやすい。破損しないまでも、しわになる等の障害が発生する。
【0120】
しかし、かかる対向する開口面の孔位置をずらす構成を採用することで、上記のようなフィルム材の破損、しわの発生等を未然に防止することができる。そのため、集電体積層ユニット全体としての強度の向上につながる。その結果、エッチング処理後の工程での水平搬送の速度を、孔位置をずらさない場合よりも、早く設定できる。
【0121】
以上の説明では、フィルム材を介して設けた集電体材料への貫通孔の開口面の孔パターンは同一パターンの場合を例に挙げて説明した。しかし、それぞれのフィルム材に積層した集電体材料にあける孔パターンは、違えても構わない。同一の蓄電体で使用する電極での使用を前提に生産する場合には、同一の孔パターンが用いられる。しかし、開口率の異なる集電体を生産すべく、異なる集電体材料を積層して集電体積層ユニットを形成しても一向に構わない。
【0122】
特に、孔パターンの開口率が異なっていれば、一方の集電体材料の開口率が50%を越える場合であっても、他方では開口率が50%よりも少ない集電体材料を使用できる。その場合は重複率を0、あるいは0近くまで設定することも可能となり好ましい。
【0123】
以上説明した構成は、例えば、特許請求の範囲としては、次のように記載することができる。すなわち、請求項1としては、例えば、集電体材料を個片化して製造する集電体の製造方法であって、対向して設けられた集電体材料のそれぞれにあける貫通孔の開口面を、ずらすことを特徴とする集電体の製造方法と記載できる。請求項2として、例えば、請求項1記載の集電体の製造方法において、前記貫通孔の開口面をずらすとは、対向する開口面が重複しないようにずらすことを特徴とすると記載できる。請求項3としては、例えば、請求項1記載の集電体の製造方法において、前記貫通孔の開口面をずらすとは、対向する開口面が一部重なるようにずらすことを特徴とすると記載できる。請求項4としては、例えば、請求項3記載の集電体の製造方法において、前記開口面が一部重なるようにずらすとは、開口面同士が重複率10%以上、30%以下の範囲で重なるようにずらすことであることを特徴とすると記載できる。請求項5としては、例えば、請求項1〜4のいずれか1項に記載の集電体の製造方法において、前記対向して設けられた集電体材料には、開口面の形状、開口面の孔配列が同一の貫通孔が、開口面の位置がずらされて設けられていることを特徴とすると記載できる。請求項6としては、例えば、請求項1〜4のいずれか1項に記載の集電体の製造方法において、前記対向して設けられた集電体材料には、開口率が異なる貫通孔が設けられていることを特徴とすると記載できる。請求項7としては、例えば、請求項1〜6のいずれか1項に記載の集電体の製造方法において、前記集電体材料を対向して設けるとは、間にフィルム材等の遮断層を介して設けられていることを特徴とすると記載できる。請求項8としては、例えば、貫通孔を設けた集電体を有する電極であって、前記集電体は、前記請求項1〜7のいずれか1項に記載の集電体の製造方法により製造された集電体であることを特徴とすると記載することができる。請求項9としては、例えば、集電体を設けた電極を有する蓄電デバイスであって、前記集電体は、前記請求項1〜7のいずれか1項に記載の集電体の製造方法により製造された集電体であることを特徴とすると記載することができる。
【0124】
(実施の形態3)
前記実施の形態1、2で説明した集電体積層ユニットでは、遮断層を介して積層した複数の集電体材料に、貫通する孔があけられていた。かかる貫通孔には、前記実施の形態1で記載したように、電極スラリーが塗工され、その後乾燥して電極合材層が形成される。かかる電極合材層の形成では、場合によっては、貫通孔の中に電極合材層が充填されている。尚、前記実施の形態1の図6、10、11の記載では、貫通孔に電極スラリーが充填されていない構成を例示したが、例えば図25、26、27の如く、充填されていても構わない。このようにして充填された電極スラリーを乾燥させることで形成された電極合材層は、遮断層としてのフィルム材により抜け落ちないように留められる。しかし、電極合材層が形成された後には、前記実施の形態1でも説明したように、遮断層としてのフィルム材は剥離される。
【0125】
すなわち、フィルム材に積層された集電体材料からフィルム材を剥離するのである。かかる剥離の際に、充填されている電極合材層が脱落する場合がある。集電体材料に設けた貫通孔中の電極合材層の脱落は、全ての貫通孔で発生するのならともかく、通常は一部の貫通孔で発生する。かかる構成の集電体材料からでは、切断により個片化されて製造された集電体は、貫通孔のイオン通過能が均一ではない。貫通孔のイオン通過能は、集電体の部位毎に異なることとなる。
【0126】
そのため、かかる集電体を用いて、電極積層ユニットとして組立てた際には、貫通孔を通過するリチウムイオン等のイオンの通過度に著しい差異が発生する。これにより、例えば、所定時間内でのイオンドープの均一性が損なわれる虞がある。あるいは、所定時間でのイオンのドープ量のバラツキが大きくなる等も発生する。
【0127】
そこで、本実施の形態では、遮断層としてのフィルム材を剥離する際に、貫通孔に充填された電極合材層の脱落防止策を考えた。脱落防止策としては、種々の対策が考えられる。例えば、貫通孔の孔形状を、電極合材層が脱落しにくい適切な形状に変更する等が考えられる。孔形状としては、例えば、貫通方向に沿った断面孔形状の変更が考えられる。あるいは、フィルム材に面した開口面側の平面孔形状として考えることもできる。
【0128】
これまでの貫通孔は、例えば、ウエットエッチング等では、孔断面形状ができるだけ直状になるように注意が払われていた。すなわち、エッチング液の組成、レジスト層のパターン形成時のマスク対策等、種々対策が施されていた。畢竟、集電体材料に貫通孔を設ける場合の生産コストが増加していた。
【0129】
前記実施の形態1で説明したように、集電体積層ユニットの構成では、貫通孔に電極合材層を充填した後、遮断層を剥離する。例えば、前記実施の形態1の図4のステップS107、図6(C)等でも示すように、フィルム材等の遮断層を剥離している。かかる剥離に際して、貫通孔に充填した電極合材層が脱落する障害が発生していた。
【0130】
図28(A)、(B)に、遮断層としてのフィルム材を剥がした後の電極合材層の脱落状況を示した。例えば、図28(A)に示すように、集電体材料31には、貫通方向の断面形状がストレートな直状の貫通孔20a,23aが形成されている。かかる貫通孔20a,23aには、電極合材層35が充填されている。しかし、充填された電極合材層35は、図28(A)に示すように、容易に貫通孔20a,23aから脱落しやすい。
【0131】
脱落する貫通孔20a,23a内に充填された電極合材層部分35a(35)は、貫通孔20a,23aの内壁面が貫通方向に向けて直状に形成されているため、脱落し易いのである。充填した電極合材層部分35aが抜け落ちる脱落側開口面θが、脱落側開口面θと平行に切断した充填側開口面θ1と、同じように形成されているためである。しかも、脱落側開口面θと充填側開口面θ1とは、側面が直線状に結ばれている。すなわち、かかる脱落は、貫通方向の内部で、電極合材層部分35aが脱落しようとするのを阻止する何らかの引っ掛かり部分が無いためと考えた。
【0132】
尚、脱落側開口面θとは、フィルム材に積層した集電体材料に設けた貫通孔の開口面であり、遮断層としてのフィルム材に面した貫通孔の開口面を言うものとする。かかる脱落側開口面θは、電極スラリーの塗工側の開口面から、貫通孔の貫通方向に向けた他端側の貫通孔端部に形成された開口面とも言える。また、充填側開口面θ1とは、集電体材料の電極スラリーが塗工される面側にあけられた開口面である。かかる充填側開口面θ1から、電極スラリーが塗工されて、貫通孔内部に充填されるのである。さらに、別の言い方をすれば、脱落側開口面θとは、フィルム材側に設けられる貫通孔開口端の内側に区画される仮想面である。また、充填側開口面θ1とは、電極スラリーの塗工側に設けられる貫通孔開口端の内側に区画される仮想面である。
【0133】
一方、図28(B)に示す場合も、図28(A)と同様に、電極合材層部分35aの脱落は極めて容易である。図28(B)に示す構成では、脱落側開口面θは、充填側開口面θ1に比べて、大きく開口されている。さらには、脱落側開口面θと充填側開口面θ1を結ぶ側面も直線状のテーパに形成されている。貫通孔内は、極めて容易に電極合材層部分35aが、脱落し易い構成である。
【0134】
そこで、本発明者は、貫通方向に沿った貫通孔内部で、電極合材層部分35aが脱落しようとするのを阻止する何らかの引っ掛かり部を形成したらいいと考えた。引っ掛かり部の一つの構成は、貫通孔の内側側面部分に凹凸を設けるのである。かかる凹凸としては、例えば、貫通孔をエッチングであけるに際して、貫通孔内側面の粗度を粗くすればよい。例えば、適切なエッチング液、エッチング速度等を選択することで、対処することができる。側面の表面側を極力滑らかに形成しないで、ザラザラした表面に敢えてすることができる。粗い貫通孔内側面が、電極合材層の引っ掛かり部分として機能し、脱落防止手段となる。
【0135】
あるいは、図29(A)に示すように、貫通孔20a,23aにおいて、脱落側開口面θと、脱落側開口面θとは異なる非脱落側開口面θ2の大きさを変えることである。すなわち、貫通方向の任意の位置で、脱落側開口面θに平行な面で切断した非脱落側開口面θ2の断面形状を、脱落側開口面θより大きくする。このような構造に貫通孔20a,23aを形成すれば、図29(B)に示すように、貫通孔内の電極合材層部分35aが脱落することがない。電極合材層部分35aが、非脱落側開口面θ2部分で周囲の貫通孔内面γに引っ掛かり、脱落が防げるのである。
【0136】
因みに、貫通孔20a,23aは、遮断層としてのフィルム材33に積層された集電体材料31に形成されている。フィルム材33には、図示は省略したが、集電体材料31に対向して、集電体材料32が設けられている。かかる集電体材料32にも、同様に貫通孔20a,23aが形成されている。
【0137】
かかる脱落防止に有効な断面形状としては、例えば、図29(C)に示すような貫通孔20a,23bの断面構造もある。図29(C)に示す場合には、貫通方向に沿って、直状の側面と先細り(先すぼまり)の側面とを有した構造である。直状側面と先細りの側面とが交差する非脱落側開口面θ2が、脱落側開口面θより大きい。そのため、そこで電極合材層部分35aが貫通孔内側面に引っ掛かり、脱落が防止される。かかる断面構造の貫通孔20a,23aは、例えば、複数のエッチング処理で製造することができる。
【0138】
図29(C)の貫通孔20a,23aの直状部分は、これまで通り直状貫通孔20a,23aを形成するための異方性のエッチング処理で行う。その後、先細り部分は、等方性のエッチング処理で行う。このように複数段のエッチング処理によって、図29(C)に示す貫通孔20a,23aは形成できる。
【0139】
一方、複数のエッチング処理を行わずに電極合材層部分35aの引っかかる箇所を、貫通孔20a,23a内に形成することもできる。例えば、現在行っている直状にしようとする手段を一切用いることなくエッチング処理を行えばよい。この場合には、エッチング液と接触している時間が長い方がよりエッチングされるため、図30(A)に示すような、先細りの断面孔形状が自然に形成される。かかる形状の貫通孔20a,23aは、遮断層としてのフィルム材33に積層された集電体材料31に設けられている。
【0140】
かかる構成の集電体材料31が設けられるフィルム材33には、図30(A)に示すように、集電体材料32が設けられて集電体積層ユニット30が構成される。かかる集電体材料32にも、集電体材料31と同様の先細りの形状の貫通孔20a,23aが形成される。尚、集電体材料31,32に形成されたフィルム材33を挟んで対向する貫通孔20a,23aは、前記実施の形態2で説明したように、開口面の位置が互いにずらされている場合を示した。集電体積層ユニットの強度の向上を図るのでなければ、図30(B)に示すように、貫通孔20a,23aの開口面の位置は、ずらされていなくても構わない。
【0141】
図30(C)には、遮断層としてのフィルム材33に積層した集電体材料31側のみを図示し、集電体材料32側は図示を省いた。上記のように直状にしようとする手段を一切用いることなく集電体材料31にエッチング処理を施すと、等方性エッチングが行われる。かかるエッチングでは、フィルム材33に面した脱落側開口面θが、充填側開口面θ1より小さく形成される。かかる孔構造では、その周囲の側面は、脱落側開口面θから充填側開口面θ1まで、直線状のテーパで結んだ断面形状に形成される。このようにして形成された貫通孔20a,23a内に、電極スラリーが塗工充填され、その後に乾燥されて電極合材層部分35aが充填されている。
【0142】
このようにして貫通孔20a,23a内に充填された電極合材層部分35aは、図30(D)に示すように、その後遮断層としてのフィルム材33が剥がされる。しかし、電極合材層部分35aは、周面側が貫通孔20a,23aの貫通孔内面γの側面部分に引っかかって、脱落側開口面θ側から抜け落ちることがない。フィルム材33が剥がされても、フィルム材33側に多少引っ張られはするが、脱落側開口面θ側に抜け落ちることは防止される。すなわち、周囲の側面が直線状に形成されていても、脱落側開口面θが貫通孔内部では一番小さいため、貫通孔20a,23aに充填された電極合材層部分35aは、側面に引っかかって脱落が防止される。すなわち、かかる構成の場合には、脱落側開口面θに向けて先細りに形成された側面が、引っ掛かり手段と機能して有効な脱落防止手段となっている。
【0143】
かかる脱落防止手段は、貫通方向をフィルム材33側に向けて、先細りのテーパに形成する手段とも言える。あるいは、塗工する電極スラリーの貫通孔内への充填である充填側開口面θ1から、他方の開口面である脱落側開口面θに向けて、先細りのテーパを設ける構成とも言える。尚、かかる先細りのテーパは、貫通孔内面の全周囲に、あるいは一部の周囲面に設けても構わない。さらには、貫通方向の全方向に、あるいは一部の方向に設けても構わない。
【0144】
このようにして、図30(E)に示すように、フィルム材33を完全に剥がした後でも、電極合材層部分35aは、貫通孔20a,23a内に留まっている。すなわち、電極合材層部分35aの脱落がみられない。そのため、かかる構成の貫通する孔を有した集電体材料の個片化により製造される集電体では、その孔を介してのイオン通過能は、均一に維持される。従って、かかる集電体を用いて電極を構成しても電極のドープ機能は均一に保たれることとなる。
【0145】
尚、以上の説明は、前記実施の形態1で説明した複数の集電体材料が遮断層としてのフィルム材を介して積層された場合を前提として行った。しかし、単独の集電体材料が、フィルム材等に積層された構成に対しても適用できるものである。
【0146】
上記説明では、集電体材料に設けた貫通孔に、遮断層としてのフィルム材側に向けて先細りのテーパが設けられた断面構造があればよいことを述べた。しかし、厳密には、テーパが設けられていても、殆ど直状に近く脱落し易いテーパを設けることも可能である。そこで、かかるテーパを設ける場合には、図31(A)に示すように、テーパ角度δ1がある一定以上あることが好ましいと判断した。基本的に、テーパのテーパ角度δ1は180度未満であれば構わないが、電極製造の経験則から、テーパ角度δ1が90度以上に確保されれば、貫通孔20a,23a内に充填された電極合材層の脱落を防止できることが分かっている。すなわち、貫通孔20a,23aの縦断面形状における充填側開口面θ1と脱落側開口面θとの貫通孔内面の側部を結ぶ最短の直線gと、脱落側開口面θとの間に作られる角度δ2が、135度以上あればよい。言い換えれば、貫通孔内面と脱落側開口面θとの間の角度δ2が135度以上あればよい。このように、角度δ2を基準に考えた場合であっても、角度δ2が135度以上に確保されれば、貫通孔20a,23a内に充填された電極合材層の脱落を防止できることが、電極製造の経験則から分かっている。
【0147】
また、上記脱落防止に有効なテーパは、勿論、充填側開口面θ1から脱落側開口面θまで連続して形成される必要はない。例えば、図31(B)に示すように、貫通孔20a,23aの内部の途中に設けられた非脱落側開口面θ2から脱落側開口面θにかけて形成されていても構わない。かかる場合にも、テーパのテーパ角度δ1が90度以上あればよい。
【0148】
上記テーパ角度δ1は、基本的に180度未満であれば構わない。しかし、かかるテーパ角度δ1が大きくなるに従い充填側開口面θ1も大きくなる。充填側開口面θ1が大きくなると、その開口率が問題となる。例えば、図16(A)に示すように、円形の貫通孔が千鳥状に配列されている場合において、開口率の上限値を60%としたときには、テーパ角度δ1の上限値は148度となる。この場合において、貫通孔内面と脱落側開口面θとの間の角度δ2の上限値は164度となる。テーパ角度δ1が148度を超えると、開口率が60%を超えるため、集電体側の強度面での問題が発生する虞がある。
【0149】
因みに、図28(A)に示す場合は、貫通孔内面と脱落側開口面θとの間の角度δ2が90度の場合である。図28(B)に示す場合は、角度δ2が90度未満の場合を示している。これらの場合に、前述の通り、貫通孔20a,23aに充填した電極合材層35は脱落し易い。
【0150】
かかる構成は、例えば、脱落側開口面θの直上部分が、図32(A)に示すように、直状に形成されていても同様である。図32(A)に示す貫通孔20a,23aの形状は、テーパ形成部分Tと、円柱状の直状形成部分Sとが連続して設けられた形状である。かかる場合には、図32(B)に示すように、直状形成部分S側に充填された電極合材層部分35a側が脱落する場合も考えられる。脱落に際しては、直状形成部分Sが途中から切れた状態で脱落されるのである。
【0151】
また、前述の如く、図30(A)、(B)では、テーパが孔断面形状の左右に対称に構成されている場合を例示したが、勿論、非対称でも構わない。集電体材料31の充填側開口面θ1側から、脱落側開口面θを覗いた場合は、平面的には図33(A)に示すようになる。かかる場合は、テーパ部が全周に同一に均一に設けられている場合である。尚、図中、分かりやすくするために、充填側開口面θ1を実線で、脱落側開口面θ側を破線で示した。
【0152】
かかるテーパの設け方は、上述の如く、貫通孔20a,23aの断面形状で左右非対称でも構わない。かかる場合は、例えば、平面的に見た場合には、図33(B)に示すようになる。貫通孔内周面の一部のテーパ角度と、他の部分のテーパ角度が異なっている例である。さらには、図33(C)に示すように、テーパ部が周面の一部にのみ設けられている構成でも一向に構わない。周面の一部に所定の角度δ2を備えるテーパ部が設けられ、周面の他の部分は直状に形成されている構成である。このように貫通孔20a,23aに設ける脱落防止手段としてのテーパ部には、種々の構成があることを説明した。
【0153】
しかし、実際に設ける場合には、脱落防止機能が働けば、テーパの形成に際しての脱落側開口面θの位置決めはそれ程精度高く行う必要がない。図33(A)〜(C)の構成が混在していても一向に構わない。すなわち、集電体材料31の貫通孔20a,23aに設けるテーパ部の構成は、図33(A)に示す構成のみ、あるいは図33(B)に示す構成のみ、あるいは図33(C)に示す構成のみ、あるいは少なくとも図33(A)〜(C)から選ばれた複数のテーパ部の形状の組合せがあっても構わない。混在した場合の様子を、図33(D)に示した。例えば、図33(D)では、充填側開口面θ1と同心円状に脱落側開口面θが設けられる場合と、脱落側開口面θの開口面が充填側開口面θ1と位置がずれたものとが混在している例である。因みに、図33(A)〜(D)に示す構成では、貫通孔20a,23aが設けられた集電体材料31を分かりやすいように角形にカットした状態を示している。
【0154】
上記説明では、テーパ角度δ1や角度δ2で、先細りの貫通孔20a,23aの有効な形状を規定できることを説明した。しかし、上記構成は、集電体材料31に設けた貫通孔20a,23aの開口面積との関係からも規定することができる。すなわち、上記の如くテーパに形成すると、集電体材料31を貫通させて設けた貫通孔20a,23aの充填側開口面θ1と脱落側開口面θとでは、その開口面積が異なる。すなわち、かかる構成は、集電体材料31の充填側開口面θ1が形成される面における開口面積の比率と、脱落側開口面θが形成される面における開口面積の比率とが、異なる場合であるとも言える。すなわち、充填側開口面θ1と脱落側開口面θとの開口面積の比率の差を規定することにより、有効なテーパ形状を有する貫通孔20a,23aを特定することもできる。開口面積の比率の差が小さ過ぎると、貫通孔20a,23aが略直状、すなわち円柱状に近い形状となり、充填した電極合材層が脱落する場合がある。開口面積の比率の差が大き過ぎると、脱落側開口面θの開口面積が狭く設定されるため、イオンの通過能という観点から好ましくない。
【0155】
以上説明した構成は、例えば、特許請求の範囲としては、次のように記載することができる。すなわち、請求項1としては、例えば、電極に使用される貫通孔を有する集電体であって、前記貫通孔は、前記貫通孔の内面に充填された電極合材層の脱落防止手段が設けられていることを特徴とすると記載できる。請求項2としては、例えば、請求項1記載の集電体において、前記脱落防止手段とは、電極スラリーの塗工側から貫通方向に向けた貫通孔端の開口面が、前記開口面に平行な面で切断した前記貫通孔内の他の開口面よりも小さいことを特徴とすると記載できる。請求項3としては、例えば、請求項1記載の集電体において、前記脱落防止手段とは、前記貫通孔の電極スラリーの塗工側の開口面から、前記貫通孔の他端の開口面へ向けて設けた先細りのテーパであることを特徴とすると記載できる。請求項4としては、例えば、請求項1〜3のいずれか1項に記載の集電体において、前記集電体は、前記貫通孔を設けた積層した集電体材料から製造されることを特徴とすると記載できる。請求項5としては、例えば、電極に使用される貫通孔を有する集電体の製造方法であって、前記貫通孔は、前記貫通孔の内面に充填された電極合材層の脱落防止手段が設けられた集電体材料を個片化することを特徴とすると記載できる。請求項6としては、例えば、請求項5に記載の集電体の製造方法において、前記脱落防止手段とは、電極スラリーの塗工側から貫通方向に向けた貫通孔端の開口面を、前記開口面に平行な面で切断した前記貫通孔内の他の開口面よりも小さくすることを特徴とすると記載できる。請求項7としては、例えば、請求項5記載の集電体において、前記脱落防止手段とは、前記貫通孔の電極スラリーの塗工側の開口面から、前記貫通孔の他端の開口面へ向けて設けて先細りのテーパを設けることを特徴とすると記載できる。請求項8としては、例えば、請求項5〜7のいずれか1項に記載の集電体の製造方法において、前記集電体材料は、複数の前記集電体材料が積層された状態で、前記貫通孔が形成されていることを特徴とすると記載できる。請求項9としては、例えば、貫通孔を有する集電体を用いた電極であって、前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の集電体、あるいは前記請求項5〜8のいずれか1項に記載の集電体の製造方法により製造された集電体を使用していることを特徴とすると記載できる。請求項10としては、例えば、電極を有する蓄電デバイスであって、前記電極は、前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の集電体、あるいは前記請求項5〜8のいずれか1項に記載の集電体の製造方法により製造された集電体を使用していることを特徴とすると記載できる。請求項11としては、例えば、電極合材層の集電体に設けた貫通孔からの脱落を防止する構造であって、前記貫通孔の内面に、前記貫通孔に充填した電極合材層が脱落するのを阻止する前記電極合材層の引っ掛かり部を設けたことを特徴とすると記載できる。請求項12としては、例えば、請求項11記載の電極合材層の貫通孔からの脱落防止構造において、前記引っ掛かり部とは、電極スラリーの塗工側から貫通方向に向けた貫通孔端の開口面よりも大きな、前記開口面に平行な面で切断した前記貫通孔内の他の開口面であることを特徴とすると記載できる。請求項13としては、例えば、請求項11記載の電極合材層の貫通孔からの脱落防止構造において、前記引っ掛かり部とは、前記貫通孔の電極スラリーの塗工側の開口面から、前記貫通孔の他端の開口面へ向けて設けた先細りのテーパ部であることを特徴とすると記載できる。請求項14としては、例えば、請求項13記載の電極合材層の貫通孔からの脱落防止構造において、前記テーパ部のテーパ角度は90度以上であることを特徴とすると記載できる。請求項15としては、例えば、請求項13または14記載の電極合材層の貫通孔からの脱落防止構造において、充填側開口面が形成される面における開口面積の比率と、脱落側開口面が形成される面における開口面積の比率とが異なることを特徴とすると記載できる。
【0156】
(実施の形態4)
本実施の形態では、貫通孔の開口面である平面形状について説明する。脱落防止手段としては、貫通孔の開口面の平面形状も重要であると考えた、すなわち、厳密には、フィルム材等の遮断層を引き剥がす際には、集電体材料面に対して垂直下方に引き剥がすことは殆どありえない。何らかの方向性を持たせた状態で、剥離処理が行われると想定される。例えば、長尺状の集電体材料に対して、長尺方向の一端側からフィルム材を剥離する場合には、長尺方向が剥離方向と規定できる。かかる場合には、集電体材料に形成する貫通孔のフィルム材側に面する開口面の平面形状は、その剥離方向を考慮に入れた形状にすることが好ましい。360度周囲に等方性を有した平面形状よりも、異方性を持たせた平面形状の方が好ましい筈である。
【0157】
例えば、剥離方向と、かかる方向に直交する方向とで、形状を異ならせることが考えられる。すなわち、正方形、円、正多角形等とは異なり、長方形、楕円形等の形状が好ましいと思われる。剥離し易さを優先するなら、剥離方向の長さが、それと直交する幅方向よりも短い方が好ましい。逆に、貫通孔内の電極合材層の脱落しにくさを優先するなら、剥離方向の長さが、それと直交する幅方向よりも長い形状の方が好ましい。すなわち、縦横の長さが異なる平面形状とし、その縦横の長さ方向を、集電体材料の搬送方向、あるいは剥離方向に合わせれば良いと思われる。場合によっては、剥離方向に対して、縦横の長さ方向が斜めに交差する方向に揃えることも考えられる。
【0158】
また、真円形状より、角部のある形状の方が、貫通孔に充填された電極合材層が引っ掛かりやすく、脱落しにくいと思われる。かかる角部は、より鋭角状の方が、電極合材層の脱落を防止するのには好ましい。例えば、真円形よりも正多角形、正多角形の中でも正方形、正方形よりも正三角形の方が、脱落防止に有効と思われる。かかる形状の順位に、前記縦横比の長さの概念を加味すれば、よりよい形状が得られる筈である。すなわち、正多角形、正方形、正三角形等の対称性の高い形状を対称性の低い形状に変形すればよい。例えば、楕円形、長方形、二等辺三角形等に変形すればより効果は得られるものと思われる。
【0159】
かかる種々の考察を行う中、本発明者は、次のような平面形状が有効であると着想した。すなわち、次に示すような平面形状を提案することができる。例えば、図34に示すように、貫通孔20a,23aの円形あるいは略円形の開口面形状を、菱形、あるいは正方形等の四辺形とするものである。かかる四辺形は、剥離する遮断層であるフィルム材33側の剥離方向に対して、角部分P等の小面積部分が対向して配置されている。
【0160】
ここで集電体材料31からフィルム材33を剥離していく段階で、フィルム材33側の剥離が開口面に差しかかった状況を考えてみる。かかる状況下では、剥離するフィルム材33側に貫通孔内部に充填されている電極合材層35の部分が付着しているか否かが、脱落に影響を及ぼす。すなわち、電極合材層35の部分が付着していると、剥離するフィルム材33側に電極合材層35の一端がもっていかれる。この現象が、電極合材層部分を貫通孔内部から引き抜こうと作用する。そこで、剥離するフィルム材33側に、電極合材層35の一端が付着しにくいようにすることが、脱落防止対策としては有効であると考えた。
【0161】
かかる対策の一つとしては、フィルム材33側の材質を種々検討して、電極合材層35側と接着しない構成のものを選択する手段が考えられる。しかし、電極合材層35がフィルム材33側に接着しない構成を採用しても、剥離するフィルム材33側がピッタリと接触している状態では、フィルム材33側をある程度の速度で一気に剥がす場合には、負圧が発生して幾分かは剥離する側のフィルム材33側に電極合材層35の一端側が引きつけられることも十分に考えられる。また、フィルム材33側が集電体材料31側にある程度密着しないと、電極合材層35を充填した際に漏れる原因ともなり、遮断層としてのフィルム材33側を設けた意味がない。
【0162】
そこで、本発明者は、ある程度電極合材層35が剥離するフィルム材33側に引っ張られることを前提とした上で、このように引っ張られるのを防ぐ有効な平面形状はないかと模索した。その結果、貫通孔20a,23aの開口面側のフィルム材33側において、その剥離が始まる側の面積を小さくすることを思いついた。剥離が始まる側の面積を小さくすることで、当然にフィルム材33側と電極合材層35との接触面積は小さくなる。その結果、剥離されるフィルム材33側に電極合材層35が付着してもっていかれるのを効果的に防止することができる。このようにすれば、電極合材層35がフィルム材33側に付着しないようにして、フィルム材33側の剥離を始めることができる。
【0163】
一方、上記の如く、剥離開始側の面積を小面積に構成した形状では、小面積部分に続いて一体に、小面積部分より大きな大面積部分が設けられた形状としておく。一旦、電極合材層35を付着させることなく剥離を開始したフィルム材33側は、その後大面積部分に至る。しかし、大面積部分では、電極合材層35は、小面積部分に比べて脱落を防止しようと機能する貫通孔内面との付着力も大きくなり、より電極合材層35はフィルム材33側に持っていかれ難くなる。
【0164】
すなわち、貫通孔20a,23aの脱落側開口面θの平面形状で、フィルム材33側の剥離が開始する側を、他の部分よりも小面積とするのである。剥離が進行する方向に対して剥離開始端P1側を小面積に構成して、フィルム材33側との接触面積を小さくするのである。例えば、図34(A)に示すように、矢印で示した剥離進行方向に四角形の角部分Pを対向して配置した平面形状とすればよい。図では、集電体材料31に設けた貫通孔20a,23aの脱落側開口面θの開口面形状を、フィルム材33側から見た場合である。分かりやすいように、フィルム材33を破線で示している。図34(A)では、図34(B)に示すように、紙面左側から右側に向けて、矢印の方向に向けて、フィルム材33側が集電体材料31から剥離されるものとする。
【0165】
剥離される場合には、脱落側開口面θの開口面形状の内、図34(A)に示すように、角部分Pが最初に剥離開始端P1となる筈である。かかる剥離開始端P1側は、フィルム材33側との接触面積が小さく形成されているため、剥離に際しては剥離されるフィルム材33側に電極合材層35が付着して引っ張られてもっていかれる心配はない。そのため貫通孔20a,23a内に充填された電極合材層部分35aが、脱落する虞がなくなるのである。
【0166】
一方剥離開始端P側の小面積部分に続いて、小面積部分より大きな大面積部分が一体に形成されている。例えば、図34(A)に示すように、剥離開始端P1側が四角形の角部分に構成されていれば、かかる角部分を構成する2辺が次第に離れるように構成しておけばよい。2辺間の間が次第に広くなり、2辺の間に形成される面積は角部分Pよりも大面積になる。
【0167】
かかる平面構成では、図34(C)に示すように、図中破線で示す円形の開口面に比べて、剥離開始端P1となる四角形の角部分Pが小面積になっていることが確認される。開口面が円形の場合よりも、角部分Pに構成した場合の方が、剥離に際しては、フィルム材33側の接触面積が小さくなっていることが分かる。このように、提案する平面形状は、脱落側開口面θの開口面形状を、剥離方向に向けて、小面積が剥離開始端P1となるように、それに続いて小面積部分より大きな大面積部分が形成される形状とすればよい。図34(A)に示す構成は、その一例である。開口面の全体形状を簡略化するために、四角形の構成とした場合を示したものである。かかる形状は、脱落側開口面θの形状が円形の場合よりも、より脱落の防止効果が高い。例えば、図34(B)に示す場合には、貫通孔20a,23aは、その角度δ2が略90度近くに形成されている場合を示している。かかる場合には、直状の円柱形状の場合よりも脱落しにくいとは言え、やはり脱落が起き易い貫通孔の断面形状である。しかし、かかる場合でも、脱落側開口面θ側の平面形状を図34(A)に示すように形成しておくことで、より脱落の防止を図ることができる。勿論、図34(D)に示すように、角度δ2が90度の円柱形状に構成された貫通孔20a,23aの場合にも適用できる。
【0168】
しかし、かかる四角形の構成でも、図35(A)に示すように、剥離方向に対して、剥離開始端P1がそれに続く面積部分と同一の場合には、有効形状とは言えない。この場合には、剥離開始端P1側の面積が小面積部分に形成されていない。そのため、図35(A)の場合には、フィルム材33側の剥離が開始されると、図34(A)の場合に比べて、剥離するフィルム材33側に貫通孔内部の電極合材層35が引きつけられる虞がある。また、図35(B)に示すように、剥離開始端P1側が、それに続く部分の面積よりも小面積に形成されていない場合にも、同様である。
【0169】
有効な形状としては種々の形状が考えられるが、例えば、図36(A)〜(C)、図37(A)〜(C)に示すようなものもある。特に、図37(C)には、剥離開始端P1となる小面積部分が角部分以外の構成の一例を示したものである。図37(C)では、剥離開始端P1は、円形の小面積部分に形成されている場合である。
【0170】
本実施の形態4で説明した構成は、例えば、前記実施の形態3に示すように、テーパ部が貫通孔内面に設けられた場合にも適用できるものである。あるいは、かかるテーパ部が設けられることなく、直状に構成された場合にも適用できるものである。その脱落側開口面θの形状で、脱落を防止するものである。
【0171】
以上説明した構成は、例えば、特許請求の範囲としては、次のように記載することができる。すなわち、請求項1としては、例えば、電極に使用される貫通孔を有する集電体であって、前記集電体は、電極合材層が充填された前記貫通孔に設けた遮断層を剥離して個片化することで形成され、前記貫通孔の前記遮断層側に面した開口形状は、前記遮断層の剥離方向と、前記剥離方向に交差する方向とは、形状が異なることを特徴とすると記載できる。請求項2としては、例えば、請求項1記載の集電体において、前記遮断層の剥離方向と前記剥離方向に交差する方向とは形状が異なるとは、前記遮断層の剥離進行方向に対向して、前記開口面形状の剥離開始端側が小面積部分に形成されている形状であることを特徴とすると記載できる。請求項3としては、例えば、請求項2記載の集電体において、前記剥離開始端側の小面積部分とは、二つの線分で囲まれた角部であることを特徴とすると記載できる。
【0172】
(実施の形態5)
本実施の形態は、前記実施の形態4に説明した如く、貫通孔の平面形状に関するものである。前記実施の形態4では、脱落側開口面θの平面形状を問題にした。しかし、本実施の形態では、充填側開口面θ1の形状と脱落側開口面θとの平面形状を問題とする。充填側開口面θ1の形状と、脱落側開口面θの形状とが異なる形状をしている。例えば、充填側開口面θ1の形状を敢えて角部Qを有する形状とする。一方、脱落側開口面θの形状を略円形、あるいは充填側開口面の形状の角部Qが丸くなった形状とするものである。
【0173】
集電体材料31に貫通孔20a,23aを設ける場合は、例えば、マスクを用いて充填側開口面θ1側からウエットエッチング処理を行う。この場合、等方性エッチング、あるいは異方性エッチングにかかわらず、厳密には、脱落側開口面θの形状は充填側開口面θ1の形状を維持することができない。すなわち、脱落側開口面θの平面形状は、充填側開口面θ1の平面形状がくずれた形状となるのである。本発明者は、かかる点に着目した。
【0174】
これまでの貫通孔20a,23aの平面形状は、充填側開口面θ1と脱落側開口面θとが同じ形状であることを前提としていた。そのために、充填側開口面θ1と、脱落側開口面θとの平面形状の違いを問題にしてこなかった。集電体材料31は薄く形成されているがために、ウエットエッチングにより孔を開けた場合には、充填側開口面θ1と脱落側開口面θとは同じ形状であるとしていた。しかし、厳密に言えば状況は異なり、集電体材料31の厚さ方向にエッチング処理が進むに従って得られる形状は、徐々に変形しているのである。かかる実際的な知見に、本発明者は着目したのである。
【0175】
これまで、貫通孔20a,23aの形状は、実際には円形が一般的であった。しかし、充填側開口面θ1に角部を有する形状を敢えて選択することで、貫通孔20a,23a内部に充填した電極合材層35が脱落しにくくなることに気づいた。ウエットエッチング処理に際しては、レジストで構成したマスクを使用する。例えば、上記の如く、角部を有するマスクを用いてウエットエッチング処理を行うと、充填側開口面θ1は角部が明確に形成された平面形状が得られる。一方、脱落側開口面θ側の平面形状は、集電体材料31の厚みに合わせて、充填側開口面θ1の角部等の形状がくずれた形となる。充填側開口面θ1と脱落側開口面θとは、異なる形状となる。充填側開口面θ1の平面形状の角部が、脱落側開口面θのくずれた平面形状にひっかかるのである。そのため、かかる充填側開口面θ1と脱落側開口面θとが異なる形状の貫通孔20a,23a内に充填された電極合材層35は、抜け落ちにくく、脱落しにくいのである。
【0176】
しかし、充填側開口面θ1に円形、あるいは円形に近い平面形状を選択したのでは、ウエットエッチングにより充填側開口面θ1の形状がくずれても、やはり円形の類である。そのため、かかる平面形状の選択では、電極合材層35の脱落防止を図ることはできない。つまり、脱落し易いのである。
【0177】
前記実施の形態3では、例えば、テーパを貫通孔内面に設けることで、先細りの断面形状を構成して、脱落防止を図る構成であった。前記実施の形態4は、脱落側開口面θの形状を変更することで、貫通孔内部の電極合材層の脱落を防止するものであった。しかし、本実施の形態5の構成では、充填側開口面θ1の開口形状を、脱落側開口面θの開口形状と異ならせることで、脱落を防止するものである。
【0178】
一方、本実施の形態5で述べる貫通孔20a,23aの構成は、充填側開口面θ1の角部を有する平面形状と、脱落側開口面θのくずれた平面形状とが、貫通孔20a,23aを通して一体につながっている。かかる構成では、貫通孔内面が、徐々に角部を明確に有する形状からその角部がくずれた形状へと変化していることで、抜け落ちが防止される。そこで、本実施の形態5で述べる構成は、前記実施の形態3で説明した貫通孔内部に脱落防止手段を設けた構成に該当するとも言える。
【0179】
かかる構成としては、例えば、図38(A)にその様子を斜視図で模式的に示した。図38(A)に示す場合には、例えば、充填側開口面θ1が角部Qを有した四角形で、脱落側開口面θが円形の場合を示している。かかる構成であれば、充填側開口面θ1から脱落側開口面θに向けて、貫通孔内部で徐々に四角形状が円形状に変化しているので、脱落が起きない。この場合には、脱落側開口面θより上方の部分の平面形状が引っ掛かって抜け落ちないのである。但し、脱落側開口面θの円形開口面が、少なくとも充填側開口面θ1の四角形形状に外接する大きさよりも小さい場合に有効である。図38(B)に示すように、脱落側開口面θの円形形状が、例えば、充填側開口面θ1の四角形状に外接する円形より大きい場合は、抜け落ちてしまう。図38(B)では、充填側開口面θ1から脱落側開口面θを見た場合を模式的に示している。尚、脱落側開口面θは、分かり易いように、破線で示してある。
【0180】
また、図38(C)に示す場合は、例えば、充填側開口面θ1の平面形状より円形の脱落側開口面θの形状が小さい場合である。図38(D)に示す場合には、脱落側開口面θの円形開口の直径が、充填側開口面θ1の正方形の一辺に等しい場合である。図38(E)に示す場合には、脱落側開口面θの円形開口形状が、充填側開口面θ1の四角形状の一部にかかっている場合である。図38(C)〜(E)に示す場合には、いずれにしても、抜け落ちる心配はない。
【0181】
尚、上記構成では、脱落側開口面θの円形は、真円からずれて多少形がくずれていても構わないのは勿論である。要は、脱落側開口面θの平面形状が、充填側開口面θ1の開口面形状と異なっていれば抜け落ちが発生しない。
【0182】
しかし、充填側開口面θ1、脱落側開口面θの双方の開口形状が、円形の場合には、充填側開口面θ1側に角部Qが設けられていないため、例えば、図33(A)に示すように、脱落側開口面θが充填側開口面θ1よりも明らかに小さい場合を除いては、抜け落ちの可能性がある。
【0183】
本発明では、充填側開口面θ1の形状は、角部Qを有する平面形状と規定することができる。これに対して、脱落側開口面θの形状は、充填側開口面θ1の形状の角部Qがくずれた形状と規定できる。あるいは、かかる脱落側開口面θの形状は、略円形、あるいは真円がくずれた形状と規定することもできる。
【0184】
かかる脱落側開口面θの形状としては、図38(F)に示すように、例えば、充填側開口面θ1の形状の角部Qがとれて緩慢なアールがついている場合とも言える。すなわち、充填側開口面θ1の四角形等の角部Qが、ウエットエッチング処理によりその角部がくずれてアールがつけられ、そのために脱落側開口面θに引っ掛かり抜け落ちなければよい形状と規定できる。
【0185】
上記構成の貫通孔20a,23aは、マスクとして使用するレジストを、露光、現像処理等により、角部Qを有する平面形状に打ち抜き状に形成しておけばよい。かかるマスクとしてのレジストを用いて、充填側開口面θ1の平面形状が角部Qを有する形状に、ウエットエッチングで処理すればよい。従来のエッチング液を用いて、エッチング処理すればよい。従来のエッチング液では、その異方性、等方性を問わずに、エッチング処理で充填側開口面θ1に設けたマスクの角部Qが多少なりともアールがついた形状に形成される。正確には、マスク形状が充填側開口面θ1の平面形状が、脱落側開口面θ側では再現しないのである。
【0186】
充填側開口面θ1の角部Qを有する形状とは、三角形、四角形、五角形等、多角形が適用できるが、極力、角部が90度以下の方が好ましい。角部が五角形、六角形等以上に構成されると、徐々に円形に近づいてしまう。かかる場合には、エッチング処理で角部がくずれた脱落側開口面θの形状に近似してしまい、抜け落ちが発生し易くなって好ましくない。かかる観点からは、充填側開口面θ1の形状は、例えば、四角形、三角形が好ましい。かかる形状のレジストマスクを用いて、従来構成のエッチング液でエッチングすればよい。
【0187】
さらには、かかる構成は、例えば、前記実施の形態4で述べたように、上記脱落側開口面θの平面形状が、剥離するフィルム材33側の剥離進行方向に対向させた位置になるように設定しても構わない。すなわち、角部Qが、剥離進行方向に対向した位置に設けるようにすればよい。かかる構成を採用することで、充填側開口面θ1と脱落側開口面θの形状の違いと、併せて剥離するフィルム材33側に付着しにくい構成とが相まって、より貫通孔内の電極合材層の脱落が防止できる。
【0188】
以上説明した構成は、例えば、特許請求の範囲としては、次のように記載することができる。すなわち、請求項1としては、例えば、電極に使用される貫通孔を有する集電体であって、前記集電体は、電極合材層が充填された前記貫通孔に設けた遮断層を剥離して個片化することで形成され、前記貫通孔の前記遮断層側に面した開口形状と、前記貫通孔の前記遮断層側に面しない開口形状とは、異なることを特徴とすると記載できる。請求項2としては、例えば、請求項1記載の集電体において、前記貫通孔の前記遮断層側に面しない開口形状とは、角部を有する平面形状であることを特徴とすると記載できる。請求項3としては、例えば、請求項2記載の集電体において、前記角部を有する平面形状とは、四角形であることを特徴とすると記載できる。
【0189】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前記実施の形態1で説明した本発明の製造方法によって得られた電極は、リチウムイオンバッテリやリチウムイオンキャパシタだけでなく、様々な形式のバッテリやキャパシタに適用することが可能である。
【0190】
また、図5(A)や図9(A)に示す場合には、2枚の集電体材料31,32を用いて集電体積層ユニット30,50と形成しているが、3枚以上の集電体材料を積層して集電体積層ユニットを形成しても良い。例えば、図5(A)に示す集電体積層ユニット30の表面に新たな集電体材料を積層しても良い。また、図9(A)に示す集電体積層ユニット50の表面に新たな集電体材料を積層しても良い。
【0191】
なお、前述の説明では、レジスト層34,51,58を除去するレジスト除去工程を設けているが、レジスト層34,51,58が導電性を有しており、活物質や電解液等に影響を与えないものであれば、レジスト除去工程を省くことも可能である。
【符号の説明】
【0192】
13 正極(電極)
14 負極(電極)
20 正極集電体(孔あき集電体)
20a 貫通孔
21 正極合材層(電極合材層)
23 負極集電体(孔あき集電体)
23a 貫通孔
24 負極合材層(電極合材層)
30 集電体積層ユニット
30a 一方面(表面)
31 集電体材料
32 集電体材料
33 フィルム材(遮断層)
34 レジスト層(保護層)
37 未塗工面
41 中間積層材
42 中間積層材
50 集電体積層ユニット
50b 他方面(表面)
51 レジスト層(保護層)
52 中間積層材
53 未塗工面
α 開口面
α1 開口面
β 開口面
β1 開口面
δ1 テーパ角度
θ 脱落側開口面
θ1 充填側開口面
θ2 非脱落側開口面
D 厚み
d 厚み
g 直線
g1 直線
P 角部分
P1 剥離開始端
T テーパ形成部分
S 直状形成部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔あき集電体を備える電極の製造方法であって、
複数の集電体材料を積層して集電体積層ユニットを形成する集電体積層工程と、
前記集電体積層ユニットの表面に所定パターンの保護層を形成する保護層形成工程と、
前記保護層が形成された前記集電体積層ユニットにエッチング処理を施し、前記集電体材料のそれぞれに貫通孔を形成するエッチング工程と、
前記貫通孔が形成された前記集電体積層ユニットの表面に電極スラリーを塗工する第1塗工工程と、
前記電極スラリーが塗工された前記集電体材料を前記集電体積層ユニットから剥離する集電体剥離工程と、
前記集電体積層ユニットから分離された前記集電体材料の未塗工面に電極スラリーを塗工する第2塗工工程とを有することを特徴とする電極の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の電極の製造方法において、
前記集電体積層工程において、前記集電体材料間に遮断層を介在させ、
前記保護層形成工程において、前記集電体積層ユニットの一方面と他方面との双方に所定パターンの前記保護層を形成し、
前記エッチング工程において、前記集電体積層ユニットの一方面と他方面との双方から前記集電体材料のそれぞれに前記貫通孔を形成することを特徴とする電極の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の電極の製造方法において、
前記集電体積層工程において、複数の前記集電体材料を直に積層し、
前記保護層形成工程において、前記集電体積層ユニットの一方面の全体に遮断層を形成する一方、前記集電体積層ユニットの他方面に所定パターンの前記保護層を形成し、
前記エッチング工程において、前記集電体積層ユニットの他方面から前記集電体材料のそれぞれに前記貫通孔を形成することを特徴とする電極の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極の製造方法において、
積層された前記複数の集電体材料のそれぞれに形成された貫通孔は対向して設けられ、
対向して設けられた貫通孔同士の開口面は、互いにずらされていることを特徴とする電極の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極の製造方法において、
積層された前記複数の集電体材料のそれぞれに形成された貫通孔には、前記貫通孔内面に電極合材層の脱落防止手段が設けられていることを特徴とする電極の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の電極の製造方法において、
前記脱落防止手段とは、電極スラリーの塗工側から貫通方向に向けた貫通孔端の開口面を、前記開口面に平行な面で切断した前記貫通孔内の他の開口面よりも小さくすることを特徴とする電極の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の電極の製造方法において、
前記脱落防止手段とは、前記貫通孔の電極スラリーの塗工側の開口面から、前記貫通孔の他端の開口面へ向けて設けた先細りのテーパであることを特徴とする電極の製造方法。
【請求項8】
孔あき集電体を備える電極が組み込まれる蓄電デバイスであって、
前記電極は、請求項1〜7のいずれかに記載の電極の製造方法を用いて製造されることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項9】
請求項8記載の蓄電デバイスにおいて、
前記蓄電デバイスはリチウムイオンキャパシタであることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項10】
請求項8記載の蓄電デバイスにおいて、
前記蓄電デバイスはリチウムイオン電池であることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項11】
電極の製造過程における仕掛品としての中間積層材であって、
複数の貫通孔を備える集電体材料と、
前記集電体材料の一方面側に設けられて前記貫通孔を閉塞する遮断層と、
前記集電体材料の他方面側に設けられる電極合材層とを有することを特徴とする中間積層材。
【請求項12】
請求項11記載の中間積層材において、
前記集電体材料は、前記遮断層の両面に積層されていることを特徴とする中間積層材。
【請求項13】
請求項11記載の中間積層材において、
前記集電体材料は、前記遮断層の片面に積層されていることを特徴とする中間積層材。
【請求項14】
請求項11または12に記載の中間積層材において、
前記集電体材料は、前記遮断層を介して対向して複数設けられ、
対向して設けられた前記集電体材料のそれぞれに形成される貫通孔同士の前記遮断層に面する開口面は、互いにずらされていることを特徴とする中間積層材。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか1項に記載の中間積層材において、
前記貫通孔には、その内面に電極合材層の脱落防止手段が設けられていることを特徴とする中間積層材。
【請求項16】
請求項15に記載の中間積層材において、
前記脱落防止手段とは、前記貫通孔の前記遮断層側に面する開口面を、前記開口面に平行な面で切断した他の開口面よりも小さくすることを特徴とする中間積層材。
【請求項17】
請求項15に記載の中間積層材において、
前記脱落防止手段とは、前記貫通孔の前記遮断層に向けて設けた先細りのテーパであることを特徴とする中間積層材。
【請求項18】
請求項17記載の中間積層材において、
前記テーパのテーパ角度が90度以上であることを特徴とする中間積層材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2010−15974(P2010−15974A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54772(P2009−54772)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】