説明

電極システムの製造方法、これから製造される電極システム及びこれを含む電気素子

本発明は多孔性テンプレートを利用した高表面積電極システム及びその製造方法とこれを利用した電気素子に関し、より詳しくはa)平面電極である第1電極上に直径5乃至500nmの気孔を有する多孔性テンプレートを形成する第1段階と、b)前記多孔性テンプレートの気孔内部に前記第1電極と電気的に連結される棒状またはチューブ状第2電極を形成する第2段階を含む電気素子用電極システム製造方法と、これから製造された電極及び前記電極を含む電気素子に関する。
本願電極システムは電極の表面積が広いので多様な電気素子の性能及び効率を改善することができる。特に、電気変色素子のコントラスト及び応答速度を増加させることができ、太陽電池の電子-正孔対の数を増加させ、これらの損失を防止することができる。また、スーパーキャパシタの電荷保存空間が広くなり、電荷応答速度も速くなって電気素子の性能と効率を高める長所がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電極システムの製造方法、これから製造される電極システム及びこれを含む電気素子に関し、多孔性テンプレートを利用して電気素子用電極の表面積を大きくして、電気素子の応答速度向上、電子-正孔対の移動促進、電荷の保存空間拡大など、電気素子の性能と効率を高める効果がある電極システムの製造方法、これから製造される電極システム及びこれを含む電気素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気素子における表面積が大きい電極システムは電極表面で起こる反応を既存の平凡な電極システムと比べてより効率的に利用した素子を作るのに有利である。例えば、電気変色素子の場合、同量の電気変色物質で素子を作るとしても大きな表面積を利用すれば十分な色を出すことができ、これによって素子の応答速度もまた非常に増加できることが知られている。太陽電池の場合には電極の界面で発生する電子-正孔対を最も効果的に且つ損失なく分離させて各電極に移動させることが太陽電池効率の重要な部分を占める。この場合も表面積を増加させた電極システムが、界面で発生する電子-正孔対の数を増加させ、同様にこれらの損失の少ない移動に役に立つ。既存の電極の表面積を増やす方法としては金属酸化物のナノ粒子を高温で電極に形成する方法が開発されて現在多くの研究が進められている。
【0003】
しかし、既存のナノ粒子を利用した方法はその物質に制限があり、工程温度が高いというなどの点でいくつかの短所がある。
【非特許文献1】D.Cummins et. al. J. Phys. Chem. B,104,11449(2000)
【非特許文献2】M. Gratzel, Nature, 414, 338 (2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述した問題点を解決するためのものであって本発明の目的は、従来の技術より容易な製造方法で高表面積の電極システムを製造する方法を提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、電気素子の応答速度向上、電子-正孔対の移動促進、電荷の保存空間拡大などの効果が得られる高表面積の電気素子用電極システム及び、これを利用した電気素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明は、a)平面電極である第1電極上に直径5乃至500nmの気孔を有する多孔性テンプレートを形成する第1段階と、b)前記第1電極と電気的に連結され、前記多孔性テンプレートの気孔内部に位置する棒状またはチューブ状第2電極を形成する第2段階とを含む電気素子用電極システム製造方法を提供する。
【0007】
本発明はまた、平面電極である第1電極及び前記第1電極に電気的に連結される棒状またはチューブ状電極である第2電極を含み、前記電極システムの表面積が平面電極の表面積に対して10倍乃至1000倍である電気素子用電極システムを提供する。
さらに、本発明は前記電気素子用電極システム及び基板を含む電気素子を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本願電極システムは電極の表面積が広いので多様な電気素子の性能及び効率を改善することができる。特に、電気変色素子のコントラスト及び応答速度を増加させることができ、太陽電池の電子-正孔対の数を増加させ、これらの損失を防止することができる。また、スーパーキャパシタの電荷保存空間が広くなり、電荷応答速度も速くなって電気素子の性能と効率を高める長所がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の電気素子用電極システムの製造方法は平面電極である第1電極上に多孔性テンプレートを形成させ、前記多孔性テンプレートの気孔内部に棒状またはチューブ状の第2電極を形成させて前記第1電極と電気的に連結することによって、容易に高表面積の電気素子用電極システムを製造することができる。
【0010】
図1は多孔性テンプレートを含む本願電極システムの斜視図を示し、図2は多孔性テンプレートを含む本願電極システムの断面図を示す。
【0011】
本発明における‘電極システム’とは前記第1電極と第2電極を含む電極または前記電極システムに多孔性テンプレートをさらに含む電極を意味する。
【0012】
本発明の電気素子用電極システム製造方法は平面電極である第1電極上に多孔性テンプレートを形成する第1段階と、前記多孔性テンプレート内部に棒状またはチューブ状第2電極を形成する第2段階とを含む。
【0013】
本発明の前記第1電極の例としてはa)金、白金、銀、銅、アルミニウム、及びクロムからなる群より選択される1種以上の金属、またはこれらの合金b)TiO、ITO(インジウムスズ酸化物)、ZnO、WO、RuO、IrO、SnO、及びNiOからなる群より選択される1種以上の金属酸化物またはc)ポリ-パラ-フェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT:Poly-3,4-Ethylenedioxythiophene)、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアズレン、ポリチオフェン、ポリピリジン、ポリインドール、ポリカーバゾール、ポリアジン、及びポリキノンからなる群より選択される1種以上の伝導性高分子などを使用することができる。
【0014】
前記多孔性テンプレートは気孔密度、厚さなどを考慮する時、多孔性アルミニウム酸化膜であるのが好ましい。前記多孔性テンプレートを第1電極上に形成する方法としては大きく下記の2種類の方法がある。
【0015】
方法1)
多孔性アルミニウム酸化膜を使用して基板無しに前記酸化膜の一側面に第1電極物質を形成する方法。
【0016】
方法2)
基板上に形成された第1電極上にアルミニウム層を形成したりアルミニウム基板自体を第1電極として使用し、これを酸化して多孔性アルミニウム酸化膜を形成する方法。
【0017】
前記方法2)は使用される第1電極の材料に応じて更に2種類の方法に分けられる。
【0018】
方法2-1)
アルミニウムを基板及び第1電極として使用する場合には金属板または膜を陽極に連結してこれを適切な酸溶液に浸漬し、適切な酸化電圧を印加して陽極酸化処理することによって気孔を形成する。
【0019】
前記多孔性テンプレートは多孔性アルミニウム酸化膜形成工程を利用して製造することができる。アルミニウム基板を硫酸、リン酸、シュウ酸などの適切な酸溶液に浸漬した後、適切な酸化電圧、例えば5〜400Vの電圧を印加すれば、アルミニウム基板に直径約5〜1000nm、好ましくは5〜500nmのよく整理された気孔をμm厚さに形成することができる。前記気孔の厚さは実験時間及び条件に応じて調節できる。
【0020】
このような方法によって多孔性アルミニウム酸化膜を形成する過程は図3に示されている。図3のa、b、c及びdは前記方法で時間に応じて形成される酸化膜形態の変化を示す。
【0021】
初期にはアルミニウム基板上に均質で薄い酸化膜が形成され(図3のa)、引き続き酸化膜の容積が膨張することによって酸化膜の表面が不均一になる(図3のb)。このように酸化膜の表面が不均一になれば、電流密度もやはり不均一になる。つまり、酸化膜の表面のうちの陥没部では電流密度が増加し、隆起部では電流密度が減少する。
【0022】
次いで、電場の作用及び酸溶液の電解質作用によって電流密度の大きい陥没部には微細気孔が形成され、ある程度時間が経過すれば前記微細気孔の大きさ増加は停止する(図3のc)。そして、気孔の数は一定に維持されながら気孔の厚さが急速に増加する(図3のd)。
【0023】
この時、形成される気孔の大きさは酸溶液の種類と酸化電圧によって調節することができ、本発明で好ましい気孔の大きさは直径5乃至500nmである。気孔の大きさが5nm未満である場合には気孔内部に棒状またはチューブ状の第2電極を形成することが難しく、500nmを超える場合には高表面積の電気素子用電極システムを得ることが難しくなる。
【0024】
前記過程を経て、金属板の表面に気孔が所望の大きさと深さに形成されれば、リン酸、クロム酸またはこれらの酸の混合溶液を利用した化学的エッチング法で、図3eに示したように多孔性アルミニウム酸化膜表面に形成された小さい気孔膜と多孔性酸化膜の下部に位置した酸化膜を最大限に除去してアルミニウム電極が表面に露出するようにする。
【0025】
上記方法によって製造された多孔性アルミニウム酸化膜の斜視図を図4に示した。図4で2は気孔が形成された多孔性テンプレート層を示し、3aは多孔性テンプレートが形成されているアルミニウム電極を示し、5は多孔性テンプレートに形成された気孔を示す。前記のようにアルミニウムを基板及び第1電極として使用する場合には、これを含む素子の作動にアルミニウム電極が影響を与えてはならないという制約があるが、その製造工程は単純になる長所がある。
【0026】
方法2-2)
第1電極がアルミニウムでない場合には、まず基板上に第1電極を形成し、前記第1電極上に再びアルミニウム層を蒸着させる。
【0027】
この時、第1電極は通常の電極形成方法によって形成され、アルミニウムの蒸着はスパッタリング、熱、e-ビーム蒸着などの真空蒸着法や電気メッキ法で行う。
【0028】
電気メッキの場合には表面を研磨する工程を経て使用する。前記方法で蒸着されたアルミニウム層を前記方法2-1)と同じ方法で酸化させれば、所望の基板上にアルミニウムの多孔性テンプレートが形成される。ただし、最後にアルミニウム層の酸化膜を除去する過程で使用される酸溶液は基板及び電極との選択性を確認しなければならない。前記方法によって形成された多孔性テンプレートの斜視図を図5に示した。図5で2は気孔が形成された多孔性テンプレート層を示し、3は第1電極層、4は基板、5は気孔を示す。上記の方法は多様な電極と基板を各素子の特性に応じて選択的に使用できる長所がある。
【0029】
前記方法によって製造された多孔性テンプレートの気孔内部に所望の電極物質を充填することによって、表面積の大きな棒状またはチューブ状の第2電極を形成する。この時、第2電極を形成する方法としては、電気メッキ、無電解メッキ、ゾル-ゲルコーティング、電気重合、及び化学気相蒸着(CVD)などの多様な方法がある。
【0030】
第2電極の形状は上述の方法に従って棒状又はチューブ状になる。第2電極が気孔の内部に充填されたときはその形状は棒状になり、気孔の内壁に沿って形成されたときはチューブ状となる。
【0031】
電気メッキ、電気重合、及び化学気相蒸着法による場合は棒状の第2電極を形成することができ、無電解メッキ、ゾル-ゲルコーティング及び電気重合法による場合にはチューブ状の第2電極を形成することができる。前記第2電極が棒状である場合には第2電極の形成後に多孔性アルミニウム酸化膜を除去することによって大きな表面積の電極システムを得ることができ、前記第2電極がチューブ状態である場合には前記多孔性アルミニウム酸化膜を除去したり、またはアルミニウム酸化膜を除去せずにそのまま使用することができる。
【0032】
第2電極の形成に使用される電気メッキはメッキ可能な全ての電極を使用することができ、好ましくは金、白金、銀、クロム、及び銅からなる群より選択される1種以上の金属を使用することができる。この時、メッキの条件は一般的な電気メッキ条件をそのまま使用しても良い。図6は多孔性テンプレートの気孔内部に電気メッキで形成された第2電極(Silver、Ag)の電子顕微鏡写真を示し、図7は電気メッキで形成された第2電極(Ag)を気孔内部に含む多孔性テンプレートの断面写真を示し、図8は図7の一部分を拡大して示した写真である。
【0033】
第2電極の形成に使用される無電解メッキの場合には電気メッキと同様に一般に使われるメッキ物質を使用することができ、好ましくは金、白金、銀、クロム、及び銅からなる群より選択される1種以上の金属、またはTiO、ITO(インジウムスズ酸化物)、ZnO、WO、RuO、IrO、SnO、及びNiOからなる群より選択される1種以上の金属酸化物を使用することができる。前記無電解メッキ法は一般的な無電解メッキ法をそのまま利用することができる。
【0034】
第2電極の形成に使用されるゾル-ゲルコーティング法の場合には金属酸化物を使用することができ、好ましくはTiO、ITO(インジウムスズ酸化物)、ZnO、WO、RuO、IrO、SnO、及びNiOからなる群より選択される1種以上の金属酸化物を使用することができる。各金属酸化物の前駆体が入っている溶液に多孔性テンプレートが形成された第1電極を浸漬した後、外部に引き出して熱処理すれば、溶媒が蒸発しながら多孔性テンプレートの気孔内部に第2電極が形成される。
【0035】
第2電極の形成に使用される電気重合の場合は伝導性高分子の前駆体を使用して電気重合することができ、好ましくはポリ-パラ-フェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアズレン、ポリチオフェン、ポリピリジン、ポリインドール、ポリカーバゾール、ポリアジン及びポリキノンからなる群より選択される1種以上の伝導性高分子の前駆体を使用することができる。伝導性高分子の前駆体が溶けている溶液に多孔性テンプレートが形成された第1電極を入れ電気重合を実施すれば、多孔性テンプレートの気孔内部に棒状またはチューブ状の電極が形成される。図9は多孔性テンプレートの気孔内部に電気重合で形成されたPEDOT伝導性高分子チューブの電子顕微鏡写真であり、図10は多孔性テンプレートが除去された後のPEDOT伝導性高分子チューブの電子顕微鏡写真である。
【0036】
前記第2電極がチューブ状態である場合には前記多孔性テンプレートを除去したり、または除去せずに使用することができるが、棒状の場合には前記多孔性テンプレートを除去しなければ電極表面が露出されず、電極の大きな表面積を利用することができない。前記多孔性テンプレートはpH8以上の塩基溶液(KOH、NAOHなど)で溶かして除去することができる。
【0037】
上記の方法で製造された電気素子用電極システムの中で多孔性テンプレートを除去した電極システムは平面電極である第1電極、前記第1電極に電気的に連結される棒状またはチューブ状電極である第2電極を含み、多孔性テンプレートを除去していない電極システムは前記第1電極、第2電極に加えて直径5乃至500nmの気孔を有する多孔性テンプレートをさらに含み、前記多孔性テンプレートの気孔内部に棒状またはチューブ状の第2電極が形成されている。
【0038】
本発明によって製造された電気素子用電極システムの表面積は断面当り気孔密度をd、気孔の半径をr、生成されたチューブあるいは棒の長さをLとした時、従来の電極システムに較べ、約2Ld/r倍増加している。例えば、気孔の半径を50nm、密度を50%、長さを5μmとすれば、表面積が約100倍増加したこととなる。
【0039】
したがって、本発明の電気素子用電極システムは多様な電気素子に応用することができ、電気変色素子、太陽電池、またはスーパーキャパシタなどの電気素子の電極システムとして使用することができる。前記電気素子は本願電極システムの他に電極を含み、前記電極は一般的な電気素子用電極を使用することができるが、好ましくはアルミニウム、シリコン、または透明伝導性ガラス(ITO/glass)を使用するのが良い。
【0040】
本発明の高表面積電極システムを使用する電気変色素子は棒状またはチューブ状の第2電極を含んで一般的な電気変色素子より薄い拡散障壁を有し、拡散速度が速くて電気的信号に対する反応性が優れている。また、前記棒状またはチューブ状の第2電極が互いに密集された形態に存在するために色相発現能力が優れている。前記拡散障壁とは棒状第2電極の直径またはチューブ状第2電極の外壁厚さで定義する。
【0041】
したがって、本願電極システムを使用した電気変色素子は既存の電気変色現象で問題であった厚い膜を通しての拡散から起因する遅い応答速度問題を解決する。それだけでなく、イオンが膜に閉じ込められることも防止できるので、変色/消色時の色対比を高める長所がある。
【0042】
本発明の高表面積電極システムを含む太陽電池では“電子-正孔対”生成層を自己集合、溶液コーティングまたは電気重合などの方法で前記第2電極層上に形成する。
【0043】
ここで形成された電子は第2電極を利用して伝達される。“電子-正孔対”生成層形成のために自己集合法でルテニウム系の金属-有機複合体などを使用することができ、溶液コーティング法でポリアニリン、PEDOTなどのような高分子物質を使用することができる。また、電気重合法を利用してポリアニリン、PEDOTとその誘導体またはこれらの混合物を使用することができる。“電子-正孔対”生成層上に正孔伝達層を真空蒸着法、ゾル-ゲルコーティング、溶液コーティング、電解質注入などの方法で形成することができる。真空蒸着法を利用する場合、アリールアミン系の物質を、溶液コーティングの場合、PEDOT/PSS(poly(styrene sulfonic acid))のような高分子物質を、電解質注入の場合、水溶液または高分子電解質物質を使用することができる。
【0044】
正孔伝達層上に再び電極物質を形成することによって本発明の高表面積電極システムを含む太陽電池を作ることができる。この時、大きな表面積を有する電極表面でより多くの“電子-正孔対”が生成でき、生成された電子と正孔はこれらの生成層が電極層を形成し、あるいは電極層が伝達層と隣接しているので損失なく主電極に伝達される。したがって、一般的な平面電極を使う場合に比べて10〜100倍の電子-正孔対伝達効率増加が現れる。
【0045】
スーパーキャパシタは電極/電解質界面における可逆的な誘導電流の酸化/還元反応によってリチウム系二次電池に比べて非常に速い速度の電荷移動と高い出力密度、速い充放電時間及び永い寿命を実現した蓄電池である。
【0046】
スーパーキャパシタは電荷を電極/電解質界面に保存するので本発明の高表面積電極システムをスーパーキャパシターに適用すれば表面積が広くなる分、電荷保存容量が増加し、電気変色素子の場合のような理由で多孔性薄膜の特性上、電解質の出入が自由で拡散距離が短いことによって既存のスーパーキャパシターに比べて充放電時間も短縮される。
【0047】
本発明の高表面積電極システム二つを互いに対向させて適切なスペーサが入っている接着剤で合着した後、電解液を注入すれば、増加した電極/電解質界面を有するスーパーキャパシタを製造することができる。
【0048】
前記スーパーキャパシタに使用された二つの電極は互いに同一種類であるか、異なる種類を使用しても良い。電極の種類と活性電極物質の種類に応じてスーパーキャパシターの電圧と容量を調節することができる。チューブ状または棒状に作られたTiO、ZnO、SnO、NiOなどの金属酸化物電極を第2活性電極として使用する場合には、酸化物電極表面に酸化還元が可能な電気活性物質を塗布し電位、容量、反応速度、充放電サイクルなどのスーパーキャパシターの特性を調節することができる。
【0049】
この時、塗布可能な電気活性物質としては伝導性高分子、有機単分子酸化還元活性物質、酸化還元活性有機金属錯化合物などがある。伝導性高分子はポリ-パラ-フェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアズレン、ポリチオフェン、ポリピリジン、ポリインドール、ポリカーバゾール、ポリアジン及びポリキノンからなる群より選択される1種以上であり、この伝導性高分子をスピンコーティング、ディップコーティング、電気重合などの方法で塗布することができる。
【0050】
有機単分子酸化還元活性物質はビピリジウム作用基;ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノンなどのキノン作用基;フェノキシアジン、フェノキサジン、フェナジンなどのアジン作用基からなる群より選択される1種以上の酸化還元活性作用基を含む有機単分子物質である。
【0051】
酸化還元活性有機金属錯物はフェロセン、ルテノセン、コバルトセンなどのメタロセン錯化合物とトリス(8-ヒドロキシキノリン)-アルミニウム(AlQ)、トリス(サリチル酸)-鉄-トリクロライドなどの非メタロセン系金属錯化合物などからなる群より選択される1種以上のものである。
【0052】
このような構造を持つスーパーキャパシタは両側電極の表面積が大きいために電荷保存容量が大きく、また、電荷応答速度または充放電速度も速くなって一般的な平面電極を使う場合に比べて10乃至100倍の容量増加と10乃至1000倍の速度増加効果が現れる。
【0053】
以下、本発明の好ましい実施例及び比較例を記載する。ただし、下記の実施例は本発明の好ましい例を説明するものに過ぎず、本発明が下記の実施例に限られるわけではない。
【0054】
[実施例1]本発明の電気変色素子の製造
1-1多孔性テンプレートの製造
多孔性テンプレートを第1電極上に製造するために、まず、ITOが蒸着されたガラス基板(ITOの厚さ:150nm以下)上にアルミニウムを真空蒸着(厚さ:1μm以下)した。この時、真空蒸着は一般的なスパッタリングやe-ビーム蒸着方式を使用し、アルミニウム膜の表面を滑らかにするために10Å/sec以下の蒸着速度で蒸着した。前記アルミニウム膜が蒸着された基板をアセトン溶液に浸漬し、約5分間超音波処理しながら表面を洗浄した。前記洗浄された基板を既に準備した0.3Mのシュウ酸酸化処理反応槽に浸漬して電源の陽極に連結した。基準電極として白金板を前記酸化処理反応槽に浸漬し、電源の負極に連結した。前記陽極と負極に40Vを印加して常温で1分間酸化処理した。上記の反応が終わった基板は反応槽で除去し、脱イオン水で洗浄した。前記洗浄が終わった基板を5重量%リン酸溶液に30秒間浸漬することによって、気孔内部底の酸化アルミニウム膜を除去しITO透明電極表面に酸化アルミニウム膜である多孔性テンプレートを形成した。
【0055】
1-2棒状またはチューブ状第2電極の製造
前記製造された多孔性テンプレートを重合溶液が入った反応槽に浸漬し陽極に連結した。また、基準電極としてAg/AgCl電極と、相対電極としてPt電極を前記反応槽に浸漬し、定電位装置(potentiostat/galvanostat;EG & G Princeton Applied Research Model M273)に連結した。前記電気重合に使用された重合溶液は0.1MのLiClO/アセトニトリル溶液に10mMの濃度で2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-1,4-ジオキシンを溶解したものを使用した。電気重合は定電位装置を使用して定電流条件で60mAで10分間重合した。電気重合した結果、多孔性テンプレートの気孔内部にポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)が生成され、白い多孔性テンプレート膜は濃い紫色に変わったことが観察された。図9は前述した方法で製造された電極システムの電子顕微鏡写真である。前記電極システムの表面積は前記電子顕微鏡写真から多孔性テンプレート断面当り気孔密度が70%、気孔の直径50nm、生成されたチューブあるいは棒の長さは1μmであるので、前記電極システムの表面積は上述した2Ld/r式により、平面電極の表面積対比約30倍増加したことが分かった。
【0056】
1-3電気変色素子の製造
前記1-2の形態に製造された電極システムをITOが蒸着されたガラス基板上に置いて対称的構造になるように反対面にもITOが蒸着されたガラス基板を位置させた後、エポキシ樹脂を使用してシーリングした。シーリングする時、一側面を残して0.1MのLiClO/アセトニトリル電解液を注入し、再び接着剤でシーリングして電気変色素子を作った。
【0057】
[実施例2]太陽電池の製造
2-1多孔性テンプレートの製造
アルミニウム膜が蒸着された基板の代りに0.25mm厚さのアルミニウム箔(99.999%)を1cmx2cmの大きさに切断して使用したことを除いては実施例1と同様な方法で多孔性テンプレートを製造した。ただし、実施例2の方法で製造された多孔性テンプレートは図4に示したように下部にアルミニウム電極3aが存在し、上部に気孔5を有する酸化アルミニウム陽極膜(AlO)である多孔性テンプレート2が存在する構造を有する。
【0058】
2-2チューブ状第2電極の製造
前記製造された多孔性テンプレートの気孔内部にTiOチューブ状第2電極を形成するためにゾル-ゲルコーティング法を利用した。前記多孔性テンプレートをチタニウムイソプロポキシドと蒸溜水に順次に浸漬した後、乾燥させ100℃と400℃で1時間と6時間ずつ熱処理することによって、多孔性テンプレートの気孔内部にTiOチューブ状第2電極を形成した。
【0059】
2-3太陽電池の製造
前記2-2の方法で製造された電極システム上に“電子-正孔対”生成層であるポリアニリンを溶液コーティングした。溶液コーティングは1重量%のポリアニリンのエメラルド色のベース/NMP溶液に前記製造された電極システムを30分間浸漬してコーティングした。前記溶液コーティングの結果、TiOチューブ状第2電極の外形に沿ってポリアニリンをチューブ状に形成した。前記製造された電極システム上に正孔を輸送できるPEDOT/PSS(Baytron P)をスピンコーティングし、上部電極であるITOを形成することによって太陽電池を作った。
【0060】
図11は本発明による電極システムを含む太陽電池の電子(e-)と正孔(h+)の移動状況を図式化した図面である。図面で電子と正孔が容易に電極に移動することを示しているが、その結果太陽電池の効率が増加することが分かる。
【0061】
[実施例3]スーパーキャパシタの製造
3-1電極Aの製造
スーパーキャパシタに使用される一個の電極を製造するために実施例2と同様な方法で平らなアルミニウム基板表面にチューブ状のTiO第2電極を作った。この電極を0.010Mの[β-(10-フェノチアジル)プロポキシ]-ホスホン酸、0.10MのLi[(CFSO)N]の水溶液50mlに60分間浸漬した後、取り出して95%のエタノール溶液50mlで3回洗った後、乾燥して表面に酸化還元活性物質が塗布されたチューブ状TiO電極を含む電極システムを製造した。
【0062】
3-2電極Bの製造
スーパーキャパシタに使用される他の一個の電極を製造するために実施例1と同様な方法で多孔性アルミニウム酸化膜にPEDOT高分子が電気重合された第2電極を含む電極システムを製造した。
【0063】
3-3スーパーキャパシタの製造
前記電極Aと電極Bを接着剤で合着し0.1MのLi[(CFSO)N]/アセトニトリル電解液をその所定部分から注入した後、再び接着剤でその部分を接着してスーパーキャパシタを製造した。
【0064】
[比較例1]一般的な電気変色素子の製造
ITOが蒸着されたガラス基板を重合溶液が入った反応槽に浸漬し陽極に連結した。また、基準電極としてAg/AgCl電極と、相対電極としてPt電極を前記反応槽に浸漬し定電位装置に連結した。前記電気重合に使用された重合溶液は0.1MのLiClO/アセトニトリル溶液に10mMの濃度で2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-1,4-ジオキシンを溶解したものを使用した。電気重合は定電位装置を使用して定電流条件で60mAで10分間行った。前記電気重合の結果、ITOが蒸着されたガラス基板にポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)が生成され、透明な基板は濃い紫色に変わったことが観察された。このように製造された基板上に他のITOが蒸着されたガラス基板を位置させた後、エポキシ樹脂を使用してシーリングした。シーリングする時、一側面を残して0.1MのLiClO/アセトニトリル電解液を注入し、再び接着剤でシーリングして電気変色素子を作った。
【0065】
[試験例1]電気変色素子の応答速度評価
本発明の実施例1と比較例1の電気変色素子に対して常温、実験室環境でHe-Neレーザーを光源とし、フォトダイオード(photo-diode)を検出器(detector)として使用して反射される光の強さをON/OFF時に時間によって測定する方法で応答速度を評価し図12及び図13に示した。図12に示すように、比較例1の電気変色素子は多孔性アルミニウム酸化膜を使用した素子と類似なコントラストを示すが、その応答速度が約300秒であることが観察された。これに反し、図13に示すように実施例1の高表面積電極システムを含む電気変色素子はその応答速度が約0.1秒で、比較例1より3,000倍速い応答速度を示す。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】多孔性テンプレートを含む本願電極システムの斜視図である。
【図2】多孔性テンプレートを含む本願電極システムの断面図である。
【図3】多孔性アルミニウム酸化膜の形成過程を示した模式図である。
【図4】アルミニウム板を酸化処理して作った多孔性テンプレートの斜視図である。
【図5】電極上にアルミニウムを蒸着し酸化処理して作った多孔性テンプレートの斜視図である。
【図6】多孔性テンプレートの気孔内部に電気メッキで形成された第2電極(Ag)の電子顕微鏡写真である。
【図7】電気メッキで形成された第2電極(Ag)を気孔内部に含む多孔性テンプレートの電子顕微鏡写真である。
【図8】図7の部分拡大写真である。
【図9】多孔性テンプレートの気孔内部に電気重合で形成されたポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)伝導性高分子チューブの電子顕微鏡写真である。
【図10】多孔性テンプレートが除去された後のポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)伝導性高分子チューブの電子顕微鏡写真である。
【図11】本願電極システムを使用してチューブ状態に太陽電池を製造した時の電子と正孔の移動状況を図式化した模式図である。
【図12】比較例1の電気変色素子の応答速度を測定したグラフである。
【図13】本発明実施例1の電気変色素子の応答速度を測定したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)平面電極である第1電極上に直径5乃至500nmの気孔を有する多孔性テンプレートを形成させる第1段階と;
b)前記第1電極と電気的に連結され、前記多孔性テンプレートの気孔内部に位置する棒状またはチューブ状第2電極を形成させる第2段階とを含む電気素子用電極システム製造方法。
【請求項2】
前記電気素子用電極システム製造方法は、
c)前記多孔性アルミニウム酸化膜テンプレートを除去する第3段階をさらに含む、請求項1に記載の電気素子用電極システム製造方法。
【請求項3】
前記第1電極は、
a)金、白金、銀、銅、アルミニウム及びクロムからなる群より選択される1種以上の金属、またはこれらの合金と;
b)TiO、ITO(インジウムスズ酸化物)、ZnO、WO、RuO、IrO、SnO、及びNiOからなる群より選択される1種以上の金属酸化物と;
c)ポリ-パラ-フェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアズレン、ポリチオフェン、ポリピリジン、ポリインドール、ポリカーバゾール、ポリアジン、及びポリキノンからなる群より選択される1種以上の伝導性高分子とを含む、請求項1に記載の電気素子用電極システム製造方法。
【請求項4】
前記多孔性テンプレートはアルミニウム板または膜を陽極酸化処理して形成される酸化アルミニウム膜である、請求項1に記載の電気素子用電極システム製造方法。
【請求項5】
前記多孔性テンプレートは前記第1電極にアルミニウムを蒸着し、陽極酸化処理して形成される酸化アルミニウム膜である、請求項1に記載の電気素子用電極システム製造方法。
【請求項6】
前記第2電極は電気メッキ、無電解メッキ、ゾル-ゲルコーティング、及び電気重合からなる群より選択される1種以上の方法で形成させるものである、請求項1に記載の電気素子用電極システム製造方法。
【請求項7】
前記電気メッキは金、白金、銀、クロム、及び銅からなる群より選択される1種以上の金属で行う、請求項6に記載の電気素子用電極システム製造方法。
【請求項8】
前記無電解メッキは金、白金、銀、クロム、及び銅からなる群より選択される1種以上の金属、またはTiO、ITO(インジウムスズ酸化物)、ZnO、WO、RuO、IrO、SnO、及びNiOからなる群より選択される1種以上の金属酸化物で行う、請求項6に記載の電気素子用電極システム製造方法。
【請求項9】
前記ゾル-ゲルコーティングはTiO、ITO(インジウムスズ酸化物)、ZnO、WO、RuO、IrO、SnO、及びNiOからなる群より選択される1種以上の金属酸化物で行う、請求項6に記載の電気素子用電極システム製造方法。
【請求項10】
前記電気重合はポリ-パラ-フェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアズレン、ポリチオフェン、ポリピリジン、ポリインドール、ポリカーバゾール、ポリアジン及びポリキノンからなる群より選択される1種以上の伝導性高分子の前駆体で行う、請求項6に記載の電気素子用電極システム製造方法。
【請求項11】
平面電極である第1電極及び前記第1電極に電気的に連結される棒状またはチューブ状電極である第2電極を含み、前記電極システムの表面積が平面電極の表面積に対して10倍乃至1000倍である電気素子用電極システム。
【請求項12】
前記電気素子用電極システムは直径5乃至500nmの気孔を有する多孔性テンプレートをさらに含み、前記多孔性テンプレートは第1電極上に位置し、気孔内部に棒状またはチューブ状である第2電極が形成されて第1電極と電気的に連結されており、前記電極システムの表面積が平面電極の表面積に対して10倍乃至1000倍である、請求項11に記載の電気素子用電極システム。
【請求項13】
前記第1電極は、
a)金、白金、銀、銅、アルミニウム及びクロムからなる群より選択される1種以上の金属、またはこれらの合金と;
b)TiO、ITO(インジウムスズ酸化物)、ZnO、WO、RuO、IrO、SnO、及びNiOからなる群より選択される1種以上の金属酸化物と;
c)ポリ-パラ-フェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアズレン、ポリチオフェン、ポリピリジン、ポリインドール、ポリカーバゾール、ポリアジン、及びポリキノンからなる群より選択される1種以上の伝導性高分子とを含む、請求項11に記載の電気素子用電極システム。
【請求項14】
前記多孔性テンプレートは陽極酸化アルミニウム膜である、請求項12に記載の電気素子用電極システム。
【請求項15】
前記第2電極は、
a)金、白金、銀、クロム、及び銅からなる群より選択される1種以上の金属及びそれらのと;
b)TiO、ITO(インジウムスズ酸化物)、ZnO、WO、RuO、IrO、SnO、及びNiOからなる群より選択される1種以上の金属酸化物と;
c)ポリ-パラ-フェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアズレン、ポリチオフェン、ポリピリジン、ポリインドール、ポリカーバゾール、ポリアジン及びポリキノンからなる群より選択される1種以上の伝導性高分子とが単層または複層構造をしている、請求項11に記載の電気素子用電極システム。
【請求項16】
請求項11に記載の電気素子用電極システム及び基板を含む電気素子。
【請求項17】
前記基板はアルミニウム、シリコン、または透明伝導性ガラス(ITO/glass)である、請求項16に記載の電気素子。
【請求項18】
前記電気素子は電気変色素子、太陽電池、またはスーパーキャパシタである、請求項16に記載の電気素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2006−518471(P2006−518471A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518286(P2005−518286)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【国際出願番号】PCT/KR2004/002612
【国際公開番号】WO2005/036681
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(502202007)エルジー・ケム・リミテッド (224)
【Fターム(参考)】