説明

電極スタックを製造する方法

電気化学式のエネルギー蓄積装置のための3つ又はそれ以上の層を備える電極スタック(1)を製造する方法において、電極スタック(1)が1つ又は複数のセパレータ層(2,2a,2b)及び2つ又はそれ以上の電極プレート(3,3a,4,4a)を有しており、電極プレート(3,3a,4,4a)がそれぞれ第1の極性又は第2の極性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極スタックを製造する方法、この方法により製造される電極スタック、このような電極スタックを少なくとも1つ備えた電気化学式のエネルギー蓄積装置、このような電気化学式のエネルギー蓄積装置を少なくとも1つ備えたバッテリに関する。本発明はリチウムイオンバッテリとの関連で説明する。本発明は、バッテリの型式に関わりなく適用することもできる。
【背景技術】
【0002】
実際の充電容量が製造後に計算上の充電容量を下回っている、電気化学式のエネルギー蓄積装置が、従来技術により知られている。また、充電容量が作動中に減少していく電気化学式のエネルギー蓄積装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、セパレータがカソードやアノードよりも広い面積を有する、冒頭に述べたタイプの平板型セルが記載されている。この公知の平板型セルは、カソード及び/又はアノードが中に格納されたハウジング部分を有している。このハウジング部分は、セルを完成させるために、閉止材料によって相互に結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第19943961号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、電極スタックないしこれに付属する電気化学式のエネルギー蓄積装置の作動中にも、計算上の充電容量が引き続き維持される、電気化学式のエネルギー蓄積装置のための電極スタックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このことは本発明によると、独立請求項の開示によって実現される。本発明の好ましい応用例は、従属請求項の対象となっている。請求項9は、本発明の方法によって製造される電極スタックを記載している。請求項12は、このような電極スタックを少なくとも1つ備えた電気化学式のエネルギー蓄積装置を記載している。請求項13は、本発明の電極スタックを備えた電気化学式のエネルギー蓄積装置を少なくとも1つ備えたバッテリを記載している。
【0007】
本発明の方法は、電気化学式のエネルギー蓄積装置のための3つ又はそれ以上の層を有する電極スタックの製造に関する。電極スタックは1つ又はそれ以上のセパレータ層を有している。また電極スタックは、第1の極性又は第2の極性をそれぞれ有する、2つ又はそれ以上の電極プレートを有している。本発明によると、セパレータ層が特に電極プレート上に案内装置によって配置される。第1の極性の電極プレートが特にセパレータ層の上に配置される。電極スタックの1層、特にこの第1の極性の電極プレートが、第1の保持装置によって固定される。個々のステップは上述した順序又は請求項1のcに続けてアルファベットの順序で行われるのが好ましく、次々と複数回行われるのが特に好ましい。
【0008】
本発明でいう電極スタックは、特にエネルギーの蓄積と放出に用いられる装置を意味している。そのために電極スタックは少なくとも3つの層を有しており、その中には少なくとも1つの第1の極性の電極、第2の極性の電極、及びこれらの電極の間に配置されたセパレータがある。電極スタックの各層は薄壁状に構成されているのが好ましい。電極スタックの個々の層は、方形に構成されているのが特に好ましい。電極スタックの1つの層は、電極プレート又はセパレータ層として構成されているのが好ましい。電極スタックは、隣接する層に接触する層の面に対して垂直方向である主スタッキング方向に延びている。
【0009】
本発明でいう電極プレートとは、特に電気エネルギーの放出及び/又は蓄積に用いられる装置を意味する。電極プレートに供給される電気エネルギーは、まず化学エネルギーに変換されて、化学エネルギーとして蓄積される。電極プレートには、中間格子板に格納されるイオンが一時的に供給されるのが好ましい。電気エネルギーの放出前に、電極プレートではまず蓄積されている化学エネルギーが電気エネルギーに変換される。一時的に電子を蓄積及び/又は放出する電極プレートも設けられている。電極プレートは薄壁状であり、実質的に方形に構成されているのが好ましく、電極プレートは4つの仕切エッジを有している。
【0010】
本発明でいうセパレータ又はセパレータ層とは、特に2つの電極プレートを相互に隔てる装置を意味している。1つのセパレータ層が、極性の異なる2つの電極プレートを隔てるのが好ましい。セパレート層は一時的に電解質を収容するのが好ましい。セパレータ層は、少なくとも一時的にリチウムイオンを収容するのが特に好ましい。セパレータ層は、電子に関して実質的にアイソレータとして作用するのが好ましい。セパレータ層は薄壁状かつプレート状に構成されているのが好ましい。セパレータ層の幾何学形状は、隣接する電極プレートの形状に対応しているのが好ましい。セパレータ層の仕切エッジの長さは、隣接する電極プレートの、特に平行に延びる対応する仕切エッジよりも長いのが特に好ましい。
【0011】
本発明でいう電極プレートの極性とは、当該電極プレートが、当該電極プレートの上位の電気的な電圧源のプラス極又はマイナス極のいずれかと電気接続されていることを意味している。このとき電極プレートは、上位の電圧源のプラス極又はマイナス極のいずれかと接続されており、第1又は第2の極性を有している。第1の極性の電極プレートはアノードとして構成されるのが好ましく、第2の極性の電極プレートはカソードとして構成されるのが好ましい。ここで「アノード」という語は、充電された状態のときに負電荷をもつ電極を表している。
【0012】
本発明でいう配置とは、1つのプロセスを意味しており、このときセパレータ層又は電極プレートが上位の電極スタックに供給される。セパレータ層又は電極プレートは、個々の層の仕切エッジが互いにほぼ平行に配置されるように、電極スタックに供給されるのが好ましい。セパレータ層又は電極プレートは、供給される層が隣接する層にほぼ全面的に接するように、電極スタックに供給されるのが好ましい。
【0013】
本発明の意味において案内装置とは、電極スタックに供給される層を一時的に形状接合式及び/又は摩擦接合式に保持し、当該層を電極スタックへ供給して、電極スタックの層の上に配置する装置を意味している。案内装置は、層が電極スタックに配置された後にこれを解放するように設けられている。案内装置は把持装置として構成されているのが好ましい。案内装置は、特に反復精度を高めるために、自動化されているのが好ましい。案内装置はコンピュータ制御式であるのが好ましい。案内装置は、セパレータ層が一時的に挟まれる1組のローラ又はロールを有しているのが好ましい。その1組のローラの間隔が可変であるのが特に好ましい。
【0014】
本発明でいう固定とは、電極スタック又はその層の意図しない変位が、抵抗を克服した後でなければ行われないことを意味している。固定は特に、自動式の案内装置又は供給装置が電極スタックにセパレータ層を適正に供給できるようにする役目を果たす。特に、直近に供給された層が電極スタックに対して相対的に事前設定された位置にないと、又は電極スタック全体が事前設定された位置にないと、供給されるべき層が電極スタックから少なくとも部分的に突き出すという危険がある。層又は電極スタックの固定により、個々の層の特に事前設定された位置の保持が改善される。
【0015】
本発明でいう保持装置とは、特にスタックの層の固定又はスタック全体の固定に用いられる装置を意味している。保持装置は、電極スタックの層又は電極スタック全体に対して力を一時的に及ぼすのが好ましい。保持装置は自動化されているのが好ましい。保持装置は案内装置と連動するように設けられているのが好ましい。保持装置は、電極スタックの層の形状に合わせて適合化されているのが好ましい。保持装置は、固定プロセス中に電極スタックの層に作用する力が、当該層の耐えられる面押圧力に適合するように構成されているのが好ましい。保持装置は、電極プレートを固定するように設けられているのが好ましい。保持装置は、電極プレートへ一時的に力を及ぼすように設けられているのが好ましい。保持装置の幅は、電極スタックの層の幅に合わせて、特に電極プレートに合わせて、適合化されているのが好ましい。
【0016】
本発明の方法に基づく電極スタックの製造により、電極スタックの第1の層に対する第2の層の相対的な位置決めが改善され、特に、電極スタックの各層の仕切エッジの平行性、及び隣接する層の実質的に全面的な相互被覆が改善される。本発明に基づく製造により、特に、電極プレートが隣接するセパレータ層から少なくとも部分的に突き出して延びることが回避される。セパレータ層が好ましくは隣接する電極プレートを超えて延びることによって、いわゆる沿面距離、すなわち電圧を通す各部分の間隔が長くなる。そのようにして特に、極性の異なる2つの電極プレートのそれぞれの仕切エッジの間の電流、いわゆる寄生電流が、その間に位置するセパレータ層によって低減される。極性の異なる電極プレートの各仕切エッジ間の電流は、特に、電極スタックに蓄積されたエネルギーの減少につながる。
【0017】
極性の異なる電極プレートの各仕切エッジ間電流は、特に、該当する領域の局所的な加熱とエージングの進行につながる。
【0018】
以上のようにして、本発明の方法に基づく電極スタックの製造により、エネルギー蓄積能力が改善され、蓄積されたエネルギーが大部分維持され、電極プレートのエージングが低減されて、根本的な課題が解決される。
【0019】
以上のようにして、ガルバニ電池の内容物が漏出することが防止され、根本的な課題が解決される。
【0020】
次に、本発明の好ましい応用例について説明する。
【0021】
本方法は、特に5つ又はそれ以上の層を備える電極スタックを製造するのに用いられるのが好ましい。そのために本製造方法は、上述した各ステップに加えて実行される別のステップを有している。従って、セパレータ層が案内装置により、特にこれらの電極プレートのうちの1つの上に配置される。また第2の極性の電極プレートが、特にセパレータ層の上に配置される。さらに電極スタックの1つの層、特に第2の極性の電極プレートが、第2の保持装置によって固定される。さらに、第1又は第2の保持装置が電極スタックから取り外される。電極スタック内で2つの層の間にある保持装置が取り外されるのが好ましい。ステップd)からg)が、ステップc)に引き続いてアルファベット順に実行されるのが好ましい。2つの保持装置のうちの一方は、2つの保持装置のうちの他方が電極スタックの層を固定したときに初めて取り外されるのが好ましい。電極スタックの製造中に、両方の保持装置が反復して同時に固定を行うのが好ましい。電極スタックの製造中に、かつ第1の電極プレートの配置後に、少なくとも1つの保持装置が電極スタックの1つの層の固定を常時行うのが好ましい。そのようにして、電極スタックの製造中に、電極スタック又は電極スタックの固定された層の位置が常時保持されるという利点が得られる。これらの第1又は第2の保持装置のうちの一方又は双方を通じて、少なくとも電極プレートのうちの1つに対して、法線力がその都度一時的に及ぼされるのが好ましく、このとき法線力は電極プレートのうちの1つの面に対して垂直方向に作用する。
【0022】
最初に第1の極性の電極プレートが配置され、次いでセパレータ層が配置され、次いで第2の極性の電極プレートが配置され、次いで別のセパレータ層が電極スタックに配置されるのが好ましい。そのようにして電極スタックにおいて、セパレータ層−第1の極性の電極プレート−セパレータ層−第2の極性の電極プレートという配列が成立する。
【0023】
A3 案内装置は、少なくともステップa)及びd)の間に、セパレータ層に対して引張力を及ぼすのが好ましい。それにより、セパレータ層を配置するときに折目が形成される危険、及び/又はセパレータ層と隣接する電極プレートとの間に空気が封入される危険が少なくなる。さらにこの引張力は、特に、セパレータ層と隣接する電極プレートとができる限り全面的に接触するようにするために用いられる。案内装置からセパレータ層に及ぼされる引張力は、セパレータ層ができる限り伸長しないように寸法決めされているのが好ましい。
【0024】
A4 この1つ又は複数の電極プレートは、ステップb)又はe)の間に、電極スタックの層と平行に延びる方向ベクトルで電極スタックへ供給されるのが好ましい。この1つ又は複数の電極プレートは、電極スタックの主スタッキング方向に対して垂直に配置された方向ベクトルで、側方から供給されるのが好ましい。この1つ又は複数の電極プレートは、側方から供給されるのが好ましい。極性の異なる電極プレートが異なる側から電極スタックに供給されるのが好ましい。電極スタックは1つの層の供給後に、かつ次の層の供給前に、事前設定された距離だけ主スタック方向に沿って変位するのが好ましい。それにより、次の層の供給を同一の運動ベクトルに沿って行えるという利点がある。主スタック方向に沿った電極スタックの変位中に、保持装置も同様に変位するのが好ましい。それにより保持装置は、特に電極スタックの変位中にも層へ、特に電極プレートへ、力を及ぼすことができる。電極スタックの製造が特にテーブルを備える収容装置を用いて行われる場合、この収容装置は高さ調節可能であるのが好ましい。電極スタックの1つの層が配置されてから、収容装置が事前設定された距離だけ変位し、特に降下する。この事前設定された距離は、その前に供給されるセパレータ層の壁厚に相当しているのが特に好ましい。このような一方又は双方の保持装置が、同じ収容装置に付属しているのが好ましい。このような一方又は双方の保持装置は、同じ収容装置と結合されているのが特に好ましい。
【0025】
A5 セパレータ層は、ステップa)及び/又はd)の間に、その前に載置されたセパレータ層の折返しにより、案内装置によって配置されるのが好ましい。この場合、セパレータ層は隣接する電極プレートの仕切エッジの近傍で終わるのではなく、当該仕切エッジを大きく超えて延び、そのセパレータ層は隣接する電極プレートの少なくとも2倍の大きさに寸法決めされる。このときセパレータ層を形成するセパレータ材料は帯状に構成されており、セパレータ材料の表面は少なくとも電極プレートの表面の2倍の大きさに寸法決めされる。セパレータ材料は主伸張方向に沿って帯状に延びており、事前設定された幅を有している。このような事前設定された幅は、実質的に特に方形である隣接する電極プレートの幅の長さに実質的に相当する。セパレータ材料は、それぞれがセパレータ層として作用するように設けられた、実質的に方形である複数のセパレータ領域を有している。セパレータ材料は、第1のセパレータ領域が第1のセパレータ層として形成され、これに接する第2のセパレータ領域が第2のセパレータ層を形成するように、電極スタックに供給されるのが好ましい。これら第1及び第2のセパレータ領域は、折返し領域に沿って互いに接している。この折返し領域は隣接する2つの電極プレートの間で突き出しており、隣接する電極プレートの仕切エッジにほぼ沿って当該電極プレートに当接する。本発明でいうその前に配置されたセパレータ層の折返しとは、帯状のセパレータ材料をその前に配置されたセパレータ層の平面から折り曲げ、これに接するように配置された電極プレートの仕切エッジを中心として、当該電極プレートのまだ露出している表面に当接させることを意味している。帯状のセパレータ材料は、電極スタックの製作後に初めて切断されるのが好ましい。案内装置は、折返し中に、セパレータ層又はセパレータ材料に対して引張力を及ぼすのが好ましい。この引張力が及ぼされている間に、第1又は第2の保持装置がその前に配置された電極プレートに対して法線力を及ぼす。そのようにして、特に電極スタックの層の望ましくない変位が防止される。セパレータ層又はセパレータ材料は、この第1又は第2の保持装置を中心として折り返されるのが好ましい。このときこの第1又は第2の保持装置は、セパレータ材料の折返し領域に面する、その前に配置された電極プレートの仕切エッジと、実質的に同一平面上で終わっている。
【0026】
A6 セパレータ層又はセパレータ材料には、電極スタックへの配置の前又は途中に、第1の流体流が供給されるのが好ましい。第1の流体流は、セパレータ層又はセパレータ材料に沿って流れるのが好ましい。この流体流は、溶剤の気化、溶剤の供給、及び/又は熱エネルギーの供給に用いられるのが好ましい。流体流は電解質で帯電しているのが特に好ましい。この電解質はリチウムイオンを有しているのが好ましい。流体流は、溶剤、事前設定された温度の気体及び/又は粒子を有しているのが好ましい。流体流は、事前設定されたほぼ直角の角度でセパレータ材料又はセパレータ層の面に向けられる、帯電した溶剤ミストとして構成されているのが好ましい。
【0027】
A7 セパレータ層は、第1の供給装置から巻かれた状態から引き出されて電極スタックへ供給されるのが好ましい。本発明でいう第1の供給装置とは、セパレータ材料が収容されていて送出することができる装置を意味している。案内装置は、電極スタックと第1の供給装置との間でセパレータ材料に沿って配置される。第1の供給装置は、特に案内装置と共同してセパレータ層又はセパレータ材料に対する引張力を制限する役目をする駆動装置を有しているのが好ましい。案内装置の駆動装置と、第1の供給装置とが結合されているのが好ましい。第1の供給装置又は案内装置には、切断装置が付属しているのが好ましい。この切断装置は、電極スタックの完成後にセパレータ材料を特に切り離すように設けられる。
【0028】
A8 電極プレートは電極スタックへの配置の前又は途中で第2の供給装置から取り出され、特に巻かれた状態から引き出され、特に切断装置で切断されるのが好ましい。本発明でいう第2の供給装置とは、第1の供給装置に対応する供給装置を意味しているが、第2の供給装置は、電極材料を収容して放出するように設けられている。電極プレートの切り離しは、それが電極スタックに配置される前に、個々の電極プレートを電極材料から切断する切断装置によって行われるのが好ましい。
【0029】
切り離された電極プレートは、保管面の上に積み重ねられて供給に備えて準備されるのが好ましい。この保管面は、スタック装置内で高さ調節可能であるのが好ましい。保管面は、1つの電極プレートの取出後に事前設定された距離だけ上昇するのが好ましい。この事前設定された距離は、電極プレートの壁厚に相当しているのが好ましい。この保管面は、電極プレートの供給前にこの事前設定された距離だけ降下するのが好ましい。
【0030】
極性の異なる電極プレートの材料の載置は、2つの異なる第2の供給装置から行われるのが好ましい。
【0031】
本発明により製造される電極スタックは、電極スタックから溶剤を除去する乾燥装置へ移送されるのが好ましい。電極スタックは、形成された後に被覆部へ移送されるのが好ましい。
【0032】
A9 本発明の方法に基づいて製造される電極スタックは、5つ又はそれ以上の実質的に方形の層を有しているのが好ましい。そのうち2つ又はそれ以上はセパレータ層である。これらの2つ又はそれ以上のセパレータ層は、極性の異なるそれぞれ2つの電極プレートの間に配置されている。この電極スタックは、これらの2つ又はそれ以上のセパレータ層が、ある領域でそれぞれ隣接する電極プレートを超えて延びることを特徴としている。これらの2つ又はそれ以上のセパレータ層は、それぞれ隣接する電極プレートを超えて回り込むように延びるのが好ましい。このことは特に、沿面距離を長くし、それにより極性の異なる電極プレートの仕切エッジ間の電流を減らすのに役立つ。セパレータ層が、極性の異なる隣接する電極プレートを超えて周回するように延びることにより、隣接するこれらの電極プレート間の絶縁区間が長くなる。従って、隣接するこれらの電極プレート間の電流が少なくなる。さらにこの電極スタックは、これらの2つ又はそれ以上のセパレータ層が一体的に構成されていることを特徴とする。これらの2つ又はそれ以上のセパレータ層は、折返し領域によって結合されている。折返し領域は、実質的に、これらのセパレータ層で包囲される電極プレートの仕切エッジの長さ全体に沿って延びている。このような全面的に包囲される仕切エッジにより、漏れ電流が交換されることがない。これらの2つ又はそれ以上のセパレータ層は、部分領域で0.01mmから10mm、好ましくは1mmから3mm、少なくとも1つの隣接する電極プレートを超えて延びているのが好ましい。これらの2つ又はそれ以上のセパレータ層は、それぞれ隣接する電極プレートを超えて周回するように延びているのが特に好ましい。
【0033】
A10 本発明によると、電子伝導性でなく、もしくは電子伝導性が低く、少なくとも部分的に物質透過性の支持体からなる、セパレータ又は1つ又はそれ以上のセパレータ層が使用されるのが好ましい。この支持体は、少なくとも一方の側に、無機材料がコーティングされているのが好ましい。少なくとも部分的に物質透過性の支持体としては、好ましくは不織布として構成された有機材料を使用するのが好ましい。その有機材料は、好ましくはポリマーを含み、特に好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)を含み、イオン伝導性の無機材料でコーティングされているのが好ましく、さらに好ましくはこの無機材料は−40℃から200℃の温度範囲でイオン伝導性である。無機材料は、Zr,Al,Liのうちの少なくとも1つの元素を含む、酸化物、燐酸塩、硫酸塩、チタン酸塩、珪酸塩、アルミノ珪酸塩の群に属する少なくとも1つの化合物、特に好ましくは酸化ジルコンを含んでいるのが好ましい。イオン伝導性の無機材料は、100nm未満の最大直径をもつ粒子を有しているのが好ましい。そのようなセパレータは、たとえばドイツのEvonik AG社により商品名“Separion”で販売されている。
【0034】
A11 電極スタックの少なくとも1つの電極は、特に好ましくは少なくとも1つのカソードは、式LiMPOで表される化合物を有しているのが好ましく、ここでMは元素周期表の第1列の少なくとも1つの遷移金属カチオンである。遷移金属カチオンは、Mn,Fe,Ni及びTi又はこれらの元素の組み合わせからなる群から選択されるのが好ましい。この化合物はオリビン構造を有しているのが好ましく、上位のオリビンを有しているのが好ましい。
【0035】
A12 本発明による電気化学式のエネルギー蓄積装置は、本発明の方法により製造された1つ又は複数の電極スタックを有しているのが好ましい。さらに、本発明による電気化学式のエネルギー蓄積装置は被覆部を有している。被覆部は、この1つ又は複数の電極スタックを取り囲むように設けられる。被覆部は、本発明に係る電極スタックの各層に相互に初期応力をかけるように設けられるのが好ましい。被覆部は、本発明による電極スタックのさまざまな層の表面に対して法線力を及ぼすのが好ましく、これらの層を相互に押し合わせる。被覆部は複合シートとして構成されているのが好ましい。
【0036】
A13 バッテリは、本発明の方法により製造された1つ又は複数の電極スタックを備える2つ又はそれ以上の電気化学式のエネルギー蓄積装置を有しているのが好ましい。これらの複数の電気化学式のエネルギー蓄積装置は、直列回路及び/又は並列回路によって相互に接続されているのが好ましい。
【0037】
本発明のその他の利点、構成要件、及び利用可能性は、図面に関連付けた以下の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】電極スタックを製造する本発明の方法を、第1の時点で模式的に示す図である。
【図2】図1の方法の状態を後の時点で模式的に示す図である。
【図3】本発明のさらに別の方法による電極スタックの製造を、模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、本発明の方法に基づく電極スタックの製造を模式的に示している。電極スタック及びその他の装置は、実際の寸法や間隔を無視して図示されている。図示されているのは第1の時点での方法である。
【0040】
昇降テーブル23の上で製造される電極スタック1が示されている。電極スタック1は、複数のセパレータ層2,2aと、第1の極性の複数の電極3,3aと、第2の極性の複数の電極4,4aとを有している。
【0041】
第2の極性の電極プレート4,4aは、供給のために保管面21の上に準備されており、図示しない供給装置によって電極スタック1へ供給される。第2の極性の電極プレート3,3aの準備は図示していない。セパレータ材料2bはセパレータロール8aから巻かれた状態から引き出され、案内ロールを備えた案内装置5によって電極スタック1へ供給される。最後に供給されたセパレータ層2は、第1の極性の電極プレート3で覆われている。この電極プレート3は、第1の保持装置6により及ぼされる力で付勢されている。
【0042】
図示した状態では、電極スタック1の層の固定のステップが、特に電極プレート3の固定のステップが、保持装置6により実行されている。案内装置5は、ちょうどセパレータ層2を電極プレート3の上に配置し始めたところである。案内装置5の案内ロールがセパレータ材料に沿って事前設定された距離を転動してから、各ロールがロックされ、又はその相互間隔が狭められる。引き続き、案内装置5は次のセパレータ層2bを載せていく。このとき案内装置5は、この次のセパレータ層又はセパレータ材料2bに対して引張力を及ぼす。抑え具6により、この引張力が電極スタック1を崩すことが防止される。セパレータロール8aからの以後のセパレータ層2bの巻かれた状態からの引き出しは、その運動を案内ロール5の運動と連係させながら行われる。案内装置5に達する前に、セパレータ材料2bには電解質ミスト7が吹付けられる。
【0043】
図2は、図1の方法を後の時点で示している。この直前に、第2の極性の電極プレート4aが電極スタック1の上に配置されている。このとき、電極プレート4aに対して第2の保持装置6aにより法線力が及ぼされている。次のステップでは、案内装置5が次のセパレータ層2bを電極スタックの上に配置する。このときセパレータ層2bはセパレータ層2aから折り返される。引き続き、第1の保持装置6が電極スタックから引き出される。電極プレート4aを配置するために、昇降テーブル23は、セパレータ層2aと電極プレート4aとの合計の壁厚に実質的に相当する距離だけ降下している。
【0044】
図3は、昇降テーブル23の上に積層された電極スタック1の、本例では符号3dで示す電極プレートの配置を模式的に示している。第2の極性の電極プレートの供給、及びセパレータ層の供給は図示していない。電極スタックの他方の側からの、第2の極性の電極プレートの供給を行うのが好都合かつ発明的である(破線で示す電極プレートと把持具を参照)。
【0045】
第1の極性の電極プレートを供給するために、プレート材料3aが電極ロール8aから巻かれた状態から引き出される。高さ調節可能な保管面21の上で、分離ハサミ9によって電極プレート3bの切り離しが行われる。把持具22が電極プレート3cを昇降テーブル23又は電極スタック1へ供給する。保管面21とテーブル23の高さは、把持具22の経路が電極スタック1の主スタッキング方向の成分を有さないように選択されるのが好ましい。抑え具6は、このとき、昇降テーブル23の表面の方向で、電極プレート3dの表面に対して垂直方向の力を及ぼしている。
【0046】
電極プレート3bが保管面21から取り出された後、保管面は電極プレート3bの壁厚に応じて上昇する。電極プレート3dが載せられた後、昇降テーブル23は電極プレート3dの壁厚に応じて降下する。
【0047】
装置8a,9,21,22,6及び23の運動は、上位の制御部によって制御される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学式のエネルギー蓄積装置のための3つ又はそれ以上の層を備える電極スタック(1)を製造する方法において、
前記電極スタック(1)は、1つ又は複数のセパレータ層(2,2a,2b)及び2つ又はそれ以上の電極プレート(3,3a,4,4a)を有しており、前記電極プレート(3,3a,4,4a)はそれぞれ第1の極性又は第2の極性を有しており、
a)前記セパレータ層(2,2a,2b)が、案内装置(5)によって特に前記電極プレート(3,3a,4,4a)の上に配置されるステップと、
b)第1の極性の電極プレート(3,3a)が、特に前記セパレータ層(2,2a,2b)の上に配置されるステップと、
c)前記電極スタック(1)の層が、特に第1の極性の前記電極プレート(3,3a)が、第1の保持装置(6)によって固定されるステップとを有している方法。
【請求項2】
特に5つ又はそれ以上の層を備える電極スタック(1)を製造する先行請求項に記載の方法において、
d)前記セパレータ層(2,2a,2b)が、前記案内装置(5)によって特に前記電極プレート(3,3a,4,4a)のうちの1つの上に配置されるステップと、
e)第2の極性の電極プレート(4,4a)が、特に前記セパレータ層(2,2a,2b)の上に配置されるステップと、
f)前記電極スタック(1)の層が、特に第2の極性の前記電極プレート(4,4a)が、第2の保持装置(6a)によって固定されるステップと、
g)第1又は第2の保持装置(6,6a)が、前記電極スタック(1)から取り外されるステップとを有している方法。
【請求項3】
前記案内装置(5)が、少なくとも前記ステップa)及びd)の間に、前記セパレータ層(2,2a,2b)に対して引張力を及ぼすことを特徴とする、先行請求項に記載の方法。
【請求項4】
1つ又は複数の前記電極プレート(3,3a,4,4a)が、前記ステップb)及び/又はe)の間に、前記電極スタック(1)の層と平行に延びる方向ベクトルで供給されることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記セパレータ層(2,2a,2b)が、前記ステップa)及び/又はd)の間に、その前に配置されたセパレータ層(2,2a,2b)の折返しによって前記案内装置(5)により配置され、このとき好ましくは前記案内装置(5)が前記セパレータ層(2,2a,2b)に対して引張力を及ぼすことを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記セパレータ層(2,2a,2b)が、前記電極スタック(1)に配置される前又は途中で、第1の流体流、特に電解質を含む流体流を供給されることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記電極スタック(1)の製造のための前記セパレータ層(2,2a,2b)が、第1の供給装置(8)から巻かれた状態から引き出されて供給されることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記電極プレート(3,3a,4,4a)が、前記電極スタック(1)への配置のために第2の供給装置(8a)から巻かれた状態から引き出されて供給され、特に切断装置(9)によって切断されることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
電気化学式のエネルギー蓄積器のための5つ又はそれ以上の特に実質的に方形の層を備える、先行請求項のうちいずれか1項に記載の方法に基づいて製造される電極スタック(1)であって、
前記電極スタック(1)が、2つ又はそれ以上のセパレータ層(2,2a,2b)及び3つ又はそれ以上の電極プレート(3,3a,4,4a)を有しており、
前記電極スタック(1)の各層がほぼ一致し、
1つ又は複数の前記セパレータ層(2,2a,2b)が、極性の異なるそれぞれ2つの隣接する前記電極プレート(3,3a,4,4a)の間に配置されている電極スタックにおいて、
2つ又はそれ以上の前記セパレータ層(2,2a,2b)が、ある領域でそれぞれ隣接する前記電極プレート(3,3a,4,4a)を超えて延びており、
2つ又はそれ以上の前記セパレータ層(2,2a,2b)が一体的に構成されていることを特徴とする電極スタック。
【請求項10】
1つ又は複数の前記セパレータ層(2,2a,2b)が電子伝導性ではなく、又は電子伝導性が低く、少なくとも部分的に物質透過性の支持体でできており、
前記支持体が、好ましくは少なくとも一方の側において無機材料でコーティングされており、
少なくとも部分的な物質透過性の前記支持体として、好ましくは不織布として構成された有機材料が使用され、
前記有機材料が、好ましくはポリマー及び特に好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)を含んでおり、
前記有機材料が、好ましくはイオン伝導性の無機材料でコーティングされており、該無機材料はさらに好ましくは−40℃から200℃の温度範囲でイオン伝導性であり、
前記無機材料が、好ましくはZr,Al,Liのうちの少なくとも1つの元素の、酸化物、燐酸塩、硫酸塩、チタン酸塩、珪酸塩、アルミノ珪酸塩の群に属する少なくとも1つの化合物、特に好ましくは酸化ジルコンを含んでおり、
イオン伝導性の前記無機材料が、好ましくは100nm未満の最大の直径をもつ粒子を有していることを特徴とする、請求項9に記載の電極スタック(1)。
【請求項11】
少なくとも1つの前記電極プレート(3,3a,4,4a)、特に少なくとも1つのカソードの電極プレートが式LiMPOで表される化合物を有しており、
ここでMは元素周期表の第1列の少なくとも1つの遷移金属カチオンであり、
前記遷移金属カチオンは、好ましくはMn,Fe,Ni及びTi又はこれらの元素の組み合わせからなる群から選択されており、
前記化合物が好ましくはオリビン構造を有しており、好ましくは上位のオリビンを有していることを特徴とする、請求項9又は10のいずれか1項に記載の電極スタック(1)。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか1項に記載された、1つ又は複数の電極スタック(1)と、1つ又は複数の前記電極スタック(1)を取り囲む被覆部とを有している電気化学式のエネルギー蓄積装置。
【請求項13】
先行請求項に記載された2つ又はそれ以上の電気化学式のエネルギー蓄積装置を有しているバッテリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−502671(P2013−502671A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525059(P2012−525059)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004648
【国際公開番号】WO2011/020545
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(511173550)リ−テック・バッテリー・ゲーエムベーハー (85)
【Fターム(参考)】