説明

電極組成物及び方法

電気化学電池において使用するための組成物であって、不純物を実質的に含まないクリーンな金属及び前記クリーンな金属に接触している保護材料の層を含む組成物を開示する。さらに、不純物を実質的に含まないクリーンな金属を含む金属フィルムを含む電気化学電池を開示する。当該電気化学電池は、さらに、電解質と、当該電解質と金属フィルムの間に配置された保護材料の層を含む。さらに、不純物を実質的に含まないクリーンな金属を含む金属フィルムを作製する工程、及び金属フィルム上に保護材料の層を堆積させる工程を含む、電極の製造方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、電気化学電池用の電極の分野に関する。より具体的には、本開示は、保護層を含む電気化学電池用の電極及びかかる電極及び電気化学電池の形成方法に関するが、これらに制限されるものではない。
【背景技術】
【0002】
例えばバッテリーなどの電気化学電池の開発において、金属含有アノードの改良に特に関心が持たれている。一例としてリチウム(Li)金属は、他のタイプのアノード材料(例えば、カーボン、金属)と比べて、その比較的軽い質量及び高いエネルギー密度のために、電気化学電池のアノードとして特に有用である。自動車から携帯可能な電子機器(例えば、ラップトップ型コンピューター、携帯電話)は、リチウムアノードを含むバッテリーを含むことがある。歴史的には、電気化学電池におけるリチウムアノードは、パワーサイクルに伴う性能の低下、自己放電に由来する性能の低下を経験する。その結果、リチウムアノードは市販の再充電可能なバッテリーに採用されてこなかった。
【0003】
リチウム金属の表面が、炭酸塩、酸化物、水酸化物など(これらに限定されない)の様々なLi塩により覆われることがあることが既刊文献で示された。リチウム金属上の表面層は、厚さ及び組成が不均一であることがあり、このことはプレーティング及び/又はストリッピング中に、リチウム表面にわたる不均一な電流分布をもたらしうる。この不均一な電流分布の結果として、Li塩の下の表面層は、連続サイクルの充電/放電で不均一になるか又は粗面化される。極端な場合に、リチウム表面の不均一さは、苔状のリチウム(すなわち、電流コレクタに接続していないリチウム)又は樹枝状結晶(dendrites)をもたらすことがある。いずれの場合でも、バッテリー性能の低下をもたらすが、後者はバッテリーの自己放電、さらには熱暴走の潜在的な原因でもある。
【0004】
in-situ又はex-situのいずれかでポリマーや他の保護層を加えること及び化学処理によりリチウム表面に密な層を形成することなどの、リチウム表面上に苔状及び/又は樹枝状堆積物が形成するのを防止する多くの解決法が提案されてきた。金属アノードを改良するための様々な取り組みにもかかわらず、金属アノード表面の均一さを改善して電気化学電池の性能を高めるための方法及び組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の基本的な理解のために、以下に本開示の幾つかの側面についての概要を示す。この概要は、本開示についての広範囲にわたる概説でも本開示の主要な又は重要な要素を特定すること又は特許請求の範囲を詳しく説明することを意図するものでもない。以下の概要は、たんに本開示の幾つかの概念を、後に続くより詳細な説明への導入部として一般的な形で示すものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面は、電気化学電池用の組成物を提供する。当該組成物は、不純物を実質的に含まないクリーンな金属と、当該クリーンな金属に接触する保護材料の層とを含む。
【0007】
本開示の別の側面は、不純物を実質的に含まないクリーンな金属を含む金属フィルムを含む電気化学電池を提供する。当該電気化学電池は、さらに、電解質と、当該電解質と金属フィルムの間に配置された保護材料の層とを含むことがある。
【0008】
本開示のさらに別の側面は、不純物を実質的に含まないクリーンな金属を含む金属フィルムを作製すること、及び当該金属フィルム上に保護材料の層を堆積させることを含む、電極の製造方法を提供する。
【0009】
本開示の詳細な理解のために、同じ要素が同じ番号で示されている添付の図面と併せて、幾つかの側面についての以下の詳細な説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、蒸着により金属フィルムを形成するための装置を示す。
【0011】
【図2】図2は、スパッタ堆積により金属フィルムを形成するための装置を示す。
【0012】
【図3】図3は、金属表面のプラズマクリーニングについての概略を示す。
【0013】
【図4】図4は、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)による処理にかけられたリチウム金属前駆体についてのインピーダンスデータを示す。
【0014】
【図5】図5は、TEOSによる処理にかけられたクリーンなリチウムについてのインピーダンスデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の組成物及び方法を説明する前に、本開示は、記載されている特定の組成物及び方法に限定されないことが理解されるべきである。当業者は、本明細書で用いる用語は、たんに、可能な側面、具体例及び/又は実施態様を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定することを意図しておらず、本開示は特許請求の範囲によってのみ限定されることを当然に理解する。例えば、当業者は、金属表面を処理するための方法が、様々な組成物、構成要素又は任意の適切な様々な成分を使用して様々な方法で実施できること、及びこれらの実施態様の幾つかについての上記の議論が必ずしも全ての可能な実施態様についての完全な説明を表さないことを、すぐに理解するであろう。
【0016】
本明細書及び特許請求の範囲において使用する場合に、特に明示しない限り、単数形は複数形の指示対象も含むことがあることも留意しなければならない。例えば、「層」と言う場合には、1つ又は幾つかの層を指し、「作製方法」とは、当業者に知られているものと等価な工程及び方法を指すことを含む。
【0017】
例示の単純さ及び鮮明さから、図面及び/又は図は、一般的な構成方法を示し、本開示が不必要に分かりにくくなるのを防止するために、周知の特徴及び方法についての詳細を省略することができる。
【0018】
一般的には、得られた金属表面が製造業者から受け取ったバッテリーグレードの金属で典型的には見出される炭酸塩、酸化物及び水酸化物成分又は他の不純物を実質的に含まない状態と見なされる「クリーンな金属」表面を生成させるために、以下に記載の方法又は当該技術分野で知られているいかなる適切な金属クリーニング方法も使用できる。製造業者からのバッテリーグレードの金属で見出される不純物は、約20%〜80%が炭素、及び/又は約10%〜35%が酸素から構成されることがある。充電/放電サイクル中の金属表面上での堆積物の形成による電気化学電池の難点又は性能低下は、クリーンな金属表面を使用した後、保護層を加えることにより解決することができる。
【0019】
電気化学電池中の1つの層は、アノード活物質としてクリーンな金属、例えばリチウムなどを含むアノードであることができる。リチウム(Li)金属は、後述するように基材上に堆積されたリチウム金属箔又は薄いリチウムフィルムの形態にあることができる。電池の電気化学的特性にとって望ましい場合に、リチウム金属は、例えばリチウムアルミニウム合金などのリチウム合金の形態にあることができる。さらに、リチウム金属層の厚さは任意の適切な厚さであることができ、約5ナノメートル(nm)から50ミクロンまでの様々な値を取ることができる。
【0020】
本開示は一例としてリチウム金属アノードに関連して説明するが、開示する組成物及び方法は、例えばナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)及びアルミニウム(Al)などの他の金属アノードに対しても適用可能である。
【0021】
アノードの一実施態様において、保護材料の層をクリーンな金属に堆積させることができる。保護材料は、有機成分、無機成分、又は有機成分と無機成分の組み合わせを含むことができる。一実施態様において、保護材料は例えばポリマーなどの有機成分を含むことができる。保護材料における使用に適するポリマーとしては、イオン伝導性ポリマー、スルホン化ポリマー、炭化水素ポリマー、ビニルポリマー、シアノアクリレート系ポリマー、共役ポリマー、例えばポリp−フェニレン、ポリアセチレン、ポリフェニルビニレン、ポリアズレン、ポリペリナフタレン、ポリアセンなど、オキサレート(例えばジエチルオキサレート、ジメチルオキサレート、ジプロピルオキサレートなど)、ポリシロキサン、ポリホスファゲン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルプリジン、ポリビニルキノリン、ポリ−2−ビニルピリジン、ビニルナフタレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキシド、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、テトラフルオロエチレン−フルオロプロピレンコポリマー、ポリクロロフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシコポリマー、ポリフルオロ環状エーテル、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、エーテル結合を有するポリエーテルポリマーフィルム(例えばポリエーテルスルホン)などが挙げられるが、これらに限定されない。ポリマー材料は、リン(P)又は窒素(N)を含むもの、例えばアクリレート若しくはポリアクリレート、ポリホスファゼン、又はポリグリコールなどであってもよい。例えば、アクリレートとしては、紫外線硬化性アクリレート又はジアクリレート(例えばテトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール200ジアクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレート、ポリエチレングリコール200ジメタクリレート、ポリエチレングリコール400ジメタクリレート、ポリエチレングリコール600ジメタクリレート、ポリエチレングリコール200ジアクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリロニトリル、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジイソプロピルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、及びメトキシエチルアクリレート)が挙げられる。適用可能なポリマーのさらなる例としては、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリカルボキシレート、ポリスルホネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリエチレン又はポリプロピレン系ポリマーから選ばれる線状ポリマーが挙げられる。さらに、適切なポリマー又はポリマー材料は、上記のものの誘導体、コポリマー又は混合物であってもよい。
【0022】
本発明の開示のいかなる適切なポリマー又はポリマー材料も、アルキルアクリレート、グリコールアクリレート、ポリグリコールアクリレート、ポリオールポリアクリレートなどから選ばれた1又は2種以上のモノマーの従来の重合法により形成できる。さらに、ポリマー又はポリマー材料は、ポリエチレンオキシドジアクリレート、ポリエチレンオキシドジメタクリレート、ポリプロピレンオキシドジアクリレート、ポリプロピレンオキシドジメタクリレート、ポリメチレンオキシドジアクリレート、ポリメチレンオキシドジメタクリレート、アルキルジオールジアクリレート、アルキルジオールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、それらの誘導体又は混合物からなる群から選ばれたモノマーを架橋させることにより形成できる。ポリマー、ポリマー材料及び/又はモノマーの選択は、電池において使用される電解質、アノード及びカソードの特性など(これらに限定されない)の多くの因子に依存する。
【0023】
他の実施態様において、保護材料層は、シリケート、ボレート、アルミネート、ヨウ化物、臭化物、塩化物、窒化物、硫化物、ホスフェート、カーボネート、オキシ窒化燐、酸化チタン、ボロスルフィド、アルミノスルフィド、ホスホスルフィド、及びそれらの誘導体又は組み合わせから選ばれる無機成分から構成することができる。例えば、無機保護材料層は、アニオン又は金属の塩、例えばLiO、SiO、B、Al、NaO、LiCO、LiF、LiN、LiS、LiOH、LiN、LiP、LiI、LiBr、LiCI、LiF、LiPON、P、P、TiO、BaTiO、Baなどを含むことができる。保護材料は、イオンを伝導し及び/又はトンネリングを可能にするとともに電子の伝導を制限するその能力によって選ばれる。
【0024】
保護材料層の厚さは、クリーンな金属の層に対する必要な保護を提供するように選ばれる。過剰量の不活性な材料を電気化学電池に加えないように望ましい程度に保護を提供しつつ層厚をできるだけ薄く保つことが望ましいであろう。過剰量の不活性な材料が電気化学電池に加わると、電池の質量が増大し、そのエネルギー密度が減少することになる。さらに、薄い保護材料層は、同じ保護材料のより厚い層と比べて、より速いイオン伝導を示すことができる。そのため、保護材料層の厚さは任意の適切な厚さをとることができ、一実施態様に従うと約2ナノメートル(nm)から100ミクロンまでで様々な値を取ることができ、別の実施態様では約10ミクロンから50ミクロンまでで様々な値を取ることができる。さらに、保護材料は、クリーンな金属表面と電解質の間に配置できる。
【0025】
本開示により考えられるクリーンな金属又はクリーンな金属のフィルムを作製する様々な方法としては、スパッタリング堆積/プロセス、イオンプレーティングプロセス、押出、電解プレーティング、既知の蒸着プロセス、例えばプラズマ又は化学蒸着(CVD)プロセスが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる方法としては、真空堆積法が挙げられ、液体又は気体状態の反応性材料により金属表面を処理してクリーンな金属表面を生成させることが挙げられる。
【0026】
クリーンな金属層を処理するため(すなわち、保護材料を適用するため)に多くの方法を適用可能であることがさらに考えられる。しかしながら、当然のことながら、クリーンな金属を処理するために使用される様々な方法において、クリーンな金属は、その融点を実質的に超える温度範囲に曝されない。例えば、クリーンなリチウムに保護材料を堆積させる場合に、リチウムは、180℃であるその融点を超える温度に曝されない。
【0027】
図1に示されているように、蒸着は、クリーンな金属表面を生成させるために使用される1つの可能な方法である。図示されているような蒸着法では、金属前駆体110は、金属が汚染物にほとんど又は全く曝されないようにするために例えば真空チャンバ100のような無菌環境中で真空下で加熱できる。真空チャンバ100は例示のために示されているが、本開示は、他の無菌又は不活性環境、例えばグローブボックスなども想定する。
【0028】
金属前駆体110は、比較的処理されていない又は精製されていない形態のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)又はアルミニウム(Al)であることができる。典型的には、上記金属前駆体のいずれも、製造業者から受け取ったときの原料形態で存在することができる。
【0029】
蒸着中、金属前駆体110は、例えば電極120などの加熱手段によりその溶融温度に加熱できる。当業者は、金属前駆体110の温度をおよそその融点に上昇させるのに他の従来の加熱手段を使用できることを理解するであろう。金属前駆体110が加熱される温度範囲は、その融点に応じて変わる。例えば、リチウムの蒸着は、リチウムの融点で又はリチウムの融点付近、すなわち、少なくとも180℃の温度範囲で起こりうる。
【0030】
金属前駆体110は、その融点に加熱された場合に、溶融、沸騰又は気化し、真空チャンバ100を通じてのクリーンな金属130の粒子を放出する。金属前駆体110の中又は金属前駆体の表面に見出される不純物は、典型的には、金属全体110とよりも高い融点を有する。そのため、不純物は溶融しないで、むしろ金属前駆体110と接触したままとなる。上記の金属と一般的に関係する不純物としては、酸化物、窒化物、アルキル、炭酸塩、それらの組み合わせなどが挙げられる。
【0031】
クリーンな金属130の気化粒子を、金属前駆体110から放出(例えば噴出)させ、真空チャンバ100内に配置された基材140に接触させる。典型的には、蒸着に使用される適切な基材140は、クリーンな金属と合金化しない、例えばニッケル(Ni)、チタン(Ti)などのいかなる従来の材料/金属であってもよい。リチウムの蒸着の場合、非リチウム合金を基材として使用できるのに対して、ナトリウムなどの蒸着の場合には非ナトリウム合金を基材として使用できる。さらに、基材140はいかなる適切な電子伝導体であってもよい。
【0032】
次に、図2には、クリーンな金属の表面を生成させるために使用される別の技術としてスパッタ堆積が示されている。スパッタ堆積又はスパッタリングは、物理的蒸着(PVD)としても知られており、これによると、例えばリチウムなどの金属前駆体110中の粒子が、エネルギーを有するイオン又はスパッタリングガス210による金属前駆体110の衝撃によって気相中に射出される。
【0033】
典型的には、スパッタ堆積のための無菌環境200は、スパッタリングガス210の導入のための入り口230及び出口220を含むことができる。使用されるスパッタリングガス210は、典型的には、不活性ガスであるか、又は金属前駆体110と反応しないガスである。可能なスパッタリングガスの例としては、ヘリウム、ネオン及びアルゴンが挙げられるが、これらに限定されない。スパッタリングガスは、1つの種類のガスであっても、あるいは、例えば反応ガスとキャリヤガスなどの複数のガスの組み合わせであってもよく、無菌環境200中に導入することができる。
【0034】
スパッタ堆積中、スパッタリングガス210が金属前駆体110に衝撃すると、前駆体110からクリーンな金属の粒子が放出され、基材140上に堆積する。さらに、スパッタリングは、高速度のエネルギーが与えられたガス粒子による金属前駆体110の衝撃を併発する。従って、前駆体100から放出されたクリーンな金属130の粒子は磁場によって基材140に引きつけられる。スパッタ堆積において使用される基材140は、先に述べたような特徴及び特性を有することができる。
【0035】
図面について続けると、図3は、金属表面からの表面不純物層の除去をもたらす金属上の表面層の衝撃を示す概略図を示す。幾つかの実施態様において、プラズマ310又はスパッタリングガスの衝撃は、残留不純物320を有する金属前駆体320を生じさせることができるとともに、クリーンな金属を先に述べたように基材の表面に付着させる。
【0036】
クリーンなリチウムは、次に、再充電可能なバッテリーにおけるリチウムの性能を改善するためにリチウムに適用することのできる保護材料の適用のための基材となる。保護材料を、クリーンな金属の表面と接触するコーティングとして堆積させることができる。クリーンな金属に保護材料を堆積させるために他の考えられる方法としては、室温での浸漬又は蒸着が挙げられる。さらに、クリーンなリチウム及び保護材料を、別々に形成し、重ね併せることもできる。当業者は、金属を汚染せずにクリーンな金属表面を保護材料と接触させることを含む、クリーンな金属を堆積させる他の適切な手段を決定することができるであろう。例えばグローブボックスなどの如何なる周知の不活性環境も、クリーンな金属の処理を容易にするために使用できる。
【0037】
電気化学電池用の組成物及び電極並びにそれらの製造方法を記載したが、以下に、かかる組成物及び方法についての可能な態様を記載する。これらの例は、本開示又は以下の特許請求の範囲の側面又は実施態様の範囲を限定することを意図するものではなく、むしろ単なる例示のためのものである。従って、当業者は、望ましい結果を得るために多くの条件を調整でき、かかる調整は本開示の範囲内であることを理解するであろう。
【実施例】
【0038】
例1
約1.0〜1.5gのリチウム(Li)金属を、VACグローブボックスに特別注文で取り付けられたデントン(Denton)堆積チャンバに入れ、約10−5〜10−3トル(torr)の圧力で蒸着を行った。Li金属を約2分間かけてクリーンにした。200ナノメートル(nm)のリチウム(Li)を電子ビーム(e−ビーム)によりニッケル基材上に堆積させた。クリーンなLiを有するNi基材を15秒間ソークし、その後、6%ソークパワーを約1分間のソーク時間適用した。約1分間のプレデポジットの間、6.5%のプレデポジットパワーを適用した。Liは、10.6%の堆積パワー未満のパワーで約1オングストローム毎秒の速度でNi基材上に堆積した。
【0039】
例2
下記のクリーンなリチウムを調製する方法を、アルゴンを充填したグローブボックス内で行った。バッテリーグレードのリチウム箔(FMCから入手可能)の表面をスクレープした。スクレープしたリチウムを、電極の所望のサイズ及び直径に打ち抜き、リチウム電極を形成した。容器内のこのリチウム電極に20mLのテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を加えた。リチウム電極を約2.5分後にひっくり返した。リチウム電極をTEOS溶液にさらに5分間浸漬した後、溶液からリチウムを取り出した。得られたリチウムを使用して電池の組み立てを15分間以内に行った。
【0040】
図4に示されているように、TEOSで処理(例2におけるように)されたLi前駆体を含む典型的な電気化学電池のインピーダンスは、連続する充電/放電サイクルで減少する。保護層を有するクリーンなリチウム電極を使用した電気化学電池の場合には、図5に示されているように、初期インピーダンスは典型的な電気化学電池の初期インピーダンスと比較した場合により低い。さらに、クリーンなリチウム電極を使用した電気化学電池は、典型的な電気化学電池と比較した場合に、連続する充電/放電サイクルで比較的一定のインピーダンスを示す。このことは、電極表面が、連続サイクル中に変化せず、粗面化を示さないことを暗示している。
【0041】
本開示は、クリーンな金属アノードを作製し、その金属に保護材料の層を直接適用して、アノードの表面に均一又は半均一な層をもたらす方法を開示する。そのため、保護材料の層は、より均一な電流分布を可能にし、そして、金属表面が電気化学電池の充電/放電中に比較的滑らかなままであることを可能にする。一般的に、本開示の組成物及び方法は、電気化学電池の特性を高めることができ、例えば連続する充電/放電サイクルで比較的一定のインピーダンスを保つこと及び金属アノード表面の均一性を改善することができる。
【0042】
本開示は、特定の例、側面及び/又は実施態様を参照して説明したが、当業者は、特許請求する発明の主題の精神及び範囲から離れることなく、種々の改良及び変更を行えることができることを理解するであろう。本明細書に記載した要素の等価な機能的及び/構造的代替物の使用を含むかかる変更は、特許請求の範囲内に含まれ、本開示によりカバーされることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学電池において使用するための組成物であって、
不純物を実質的に含まないクリーンな金属、及び
前記クリーンな金属に接触している保護材料の層、
を含む組成物。
【請求項2】
前記クリーンな金属が、リチウム、ナトリウム、マグネシウム及びアルミニウムからなる群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
保護材料が、有機成分、無機成分又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
有機成分が、イオン伝導性ポリマー、スルホン化ポリマー、炭化水素ポリマー、ビニルポリマー、シアノアクリレート系ポリマー、共役ポリマー、オキサレート、ポリシロキサン、ポリホスファゲン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルプリジン、ポリビニルキノリン、ポリ−2−ビニルピリジン、ビニルナフタレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキシド、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−フルオロプロピレン、ポリクロロフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシコポリマー、ポリフルオロ環状エーテル、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルポリマー、アクリレート、ポリアクリレート、ポリホスファゼン、ポリグリコール、線状ポリマー、およびそれらの誘導体、組み合わせ又はコポリマーからなる群から選ばれるポリマーを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
無機成分が、シリケート、ボレート、アルミネート、ヨウ化物、臭化物、塩化物、窒化物、硫化物、ホスフェート、カーボネート、オキシ窒化燐、酸化チタン、ボロスルフィド、アルミノスルフィド、ホスホスルフィド、及びそれらの誘導体又は組み合わせからなる群から選ばれる、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記クリーンな金属が、金属前駆体をスパッタガスに暴露して基材に接触させるべき前記クリーンな金属を放出させることにより形成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記クリーンな金属が、金属前駆体を加熱して基材に接触させるべき前記クリーンな金属を放出させることにより形成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
不純物を実質的に含まないクリーンな金属を含む金属フィルム、
電解質、及び
前記電解質と前記金属フィルムの間に配置された保護材料の層、
を含む電気化学電池。
【請求項9】
前記金属フィルムが、リチウム、ナトリウム、マグネシウム及びアルミニウムからなる群から選ばれる金属を含む、請求項8に記載の電気化学電池。
【請求項10】
前記保護材料が、有機成分、無機成分又はそれらの組み合わせを含む、請求項8に記載の電気化学電池。
【請求項11】
前記有機成分が、イオン伝導性ポリマー、スルホン化ポリマー、炭化水素ポリマー、ビニルポリマー、シアノアクリレート系ポリマー、共役ポリマー、オキサレート、ポリシロキサン、ポリホスファゲン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルプリジン、ポリビニルキノリン、ポリ−2−ビニルピリジン、ビニルナフタレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキシド、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−フルオロプロピレン、ポリクロロフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシコポリマー、ポリフルオロ環状エーテル、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルポリマー、アクリレート、ポリアクリレート、ポリホスファゼン、ポリグリコール、線状ポリマー、およびそれらの誘導体、組み合わせ又はコポリマーからなる群から選ばれるポリマーを含む、請求項10に記載の電気化学電池。
【請求項12】
前記無機成分が、シリケート、ボレート、アルミネート、ヨウ化物、臭化物、塩化物、窒化物、硫化物、ホスフェート、カーボネート、オキシ窒化燐、酸化チタン、ボロスルフィド、アルミノスルフィド、ホスホスルフィド、及びそれらの誘導体又は組み合わせからなる群から選ばれる、請求項10に記載の電気化学電池。
【請求項13】
前記金属フィルムが、金属前駆体をスパッタガスに暴露して基材に接触するクリーンな金属を放出させることにより形成される、請求項8に記載の電気化学電池。
【請求項14】
前記金属フィルムが、金属前駆体を加熱して基材に接触するクリーンな金属を放出させることにより形成される、請求項8に記載の電気化学電池。
【請求項15】
不純物を実質的に含まないクリーンな金属を含む金属フィルムを作製する工程、及び
前記金属フィルム上に保護材料の層を堆積させる工程、
を含む、電極の製造方法。
【請求項16】
前記クリーンな金属が、リチウム、ナトリウム、マグネシウム及びアルミニウムからなる群から選ばれる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記保護材料が、有機成分、無機成分又はそれらの組み合わせを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記有機成分が、イオン伝導性ポリマー、スルホン化ポリマー、炭化水素ポリマー、ビニルポリマー、シアノアクリレート系ポリマー、共役ポリマー、オキサレート、ポリシロキサン、ポリホスファゲン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルプリジン、ポリビニルキノリン、ポリ−2−ビニルピリジン、ビニルナフタレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキシド、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−フルオロプロピレン、ポリクロロフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシコポリマー、ポリフルオロ環状エーテル、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルポリマー、アクリレート、ポリアクリレート、ポリホスファゼン、ポリグリコール、線状ポリマー、およびそれらの誘導体、組み合わせ又はコポリマーからなる群から選ばれるポリマーを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記無機成分が、シリケート、ボレート、アルミネート、ヨウ化物、臭化物、塩化物、窒化物、硫化物、ホスフェート、カーボネート、オキシ窒化燐、酸化チタン、ボロスルフィド、アルミノスルフィド、ホスホスルフィド、及びそれらの誘導体又は組み合わせからなる群から選ばれる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
基材を用意する工程をさらに含み、前記金属フィルムを作製する工程が、金属前駆体をスパッタガスに暴露して基材に接触するクリーンな金属を放出させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記基材が、ニッケル、チタン、非リチウム合金及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
基材を用意する工程をさらに含み、前記金属フィルムを作製する工程が、金属前駆体をスパッタガスに暴露して基材に接触するクリーンな金属を放出させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記基材が、ニッケル、チタン、非リチウム合金及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−519358(P2012−519358A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552035(P2011−552035)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/000636
【国際公開番号】WO2010/098891
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(507258777)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド (4)
【出願人】(510255602)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (3)
【Fターム(参考)】