説明

電極高速搬送時の上下振動抑制用ローラ

【課題】搬送速度が高速化しても、上下振動が発生しないローラを提供すること。
【解決手段】搬送物を搬送する円筒状のローラ体を備えたローラであって、該ローラ体の外周面上に窪みを有し、該窪みが該外周面と該搬送物との接線に対し、交わるように延びていることを特徴とするローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池、特に、固体高分子電解質型燃料電池に用いられる電極を高速で搬送する際に、上下振動の発生を抑制するローラに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電極材料粉末を所定の電極像として形成する現像部及び電極材料粉末を現像部から電解質膜上に静電力により転写する転写部とを有する転写ユニットと、電解質膜上の電極材料粉末を定着する定着部とを備え、前記転写ユニットにおいて、前記転写部及び前記電解質膜は前記現像部とは隔てて配置され、前記現像部は電極材料粉末を帯電し転写する電極を持つ現像ドラムを有し、前記転写部は電極に対向する対向電極を持つ転写ローラを有し、前記二つの電極間には転写用電源から高電圧が印加され電界が生成されるようになっており、かつ、前記現像ドラムは電解質膜上に形成する電極形状に対応する凹部を有し、その底部に前記電極が設けてある燃料電池の電極を製造する装置及び方法を開示している。
【0003】
特許文献2は、燃料電池、特に、固体高分子電解質型燃料電池に用いられる電極について、粉末状の電極材料に電荷を付与し、該帯電した電極材料を所定パターンに帯電した感光ドラム上に静電付着させ、該静電付着した感光ドラム上の電極材料を連続して送られる燃料電池用隔膜の少なくとも一方の面に転写し、該転写された電極材料を前記燃料電池用隔膜に定着させる、各工程を備える燃料電池の電極を製造する装置及び方法を開示している。
【0004】
特許文献3は、電池の極板等に用いられる金属シートの一定のパターン孔又は所要形状の金属無垢部を簡単に製造するために、一対の圧延ローラのうち、少なくとも一方のローラを、その外周面に多数の凹部からなるパターン加工が施されたパターンローラとし、該パターンローラの外周面に対して金属粉末を供給して、上記凹部内には金属粉末を落下させると共に凹部を除く外周面上には金属粉末を堆積させ、一対の圧延ローラの回転で外周面上の金属粉末を直接圧延して形成する多孔性の金属シートの製造方法と、該製造方法に用いられる圧延ローラを開示している。
【0005】
特許文献4は、アルカリ電池に使用される電極の芯体となる多孔質基体に、電池の活物質スラリーを充填して電極を製造する装置及び方法に関して、スラリー槽に充填されている活物質スラリーに全体又は一部が浸漬されると共に該多孔質基体の表面に接触して回転される充填ローラを備え、該充填ローラは、軸方向に延長して表面に複数の縦溝を有し、該充填ローラが回転されて該縦溝に該活物質スラリーが流入され、該縦溝の該活物質スラリーが、該充填ローラと該多孔質基体との接触部分で該縦溝から該多孔質基体の微細空隙に供給されるように構成されてなる電池の電極に活物質スラリーを充填する装置において、充填ローラの縦溝が、回転方向における前面を充填ローラの中心から外周に向かって、半径方向から回転方向に傾斜してなることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−332669号公報
【特許文献2】特開2004−139846号公報
【特許文献3】特開平9−287006号公報
【特許文献4】特開平9−320578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2が開示する燃料電池の電極は、その製造工程中又は製造後の工程において、ローラにより搬送されるが、その搬送速度を速めると、搬送される電極とローラの間に空気が巻き込まれ、かかる巻き込まれた空気により、電極に微小な上下振動が発生し、このため、搬送される電極の位置コントロールが難しくなる。その結果、搬送される電極が周辺機器に接触して破損するという問題、搬送される電極に対する各種の計測器による計測が不正確になったり不可能になったりするという問題が発生する。
【0008】
特許文献3には、多数の凹部が施されたパターンローラが開示され、特許文献4には、表面に複数の縦溝が設けられた充填ローラが開示されているが、いずれも、上記の問題を解決するものではない。
本発明は、従来技術の上記した問題点を解決するため、搬送速度が高速化しても、上記のような振動が発生しないローラを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のローラは、上記課題を解決するため、搬送物を搬送する円筒状のローラ体を備えたローラであって、該ローラ体の外周面上に窪みを有し、該窪みが該外周面と該搬送物との接線に対し、交わるように延びていることを特徴とする。
【0010】
本発明のローラは、上記の特徴に加えて、前記窪みが該外周面と該搬送物との接線に対し、ある角度をなして線状に延びていることを特徴とする。
【0011】
本発明のローラは、上記の特徴に加えて、前記ある角度が約3°であることを特徴とする。
【0012】
本発明のローラは、上記の特徴に加えて、前記線状の窪みが前記外周面に複数本設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明のローラは、上記の特徴に加えて、前記複数本が4本であることを特徴とする。
【0014】
本発明のローラは、上記の特徴に加えて、前記搬送物が燃料電池用の電極であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のローラは、燃料電池、特に、固体高分子電解質型燃料電池に用いられる電極等の搬送物を高速で搬送する際にも、上下振動の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は、本発明のローラの左側面図、(b)は、同正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態に用いられる搬送用のローラの実施例について、図1及び図2を参照して以下説明する。
【実施例1】
【0018】
図1(a)は、搬送に用いられるローラの左側面図を示し、図1(b)は、そのローラの正面図を示している。実施例1のローラは、図1(a)において、回転軸が挿入される中心孔の回転中心軸1を中心にして円筒状のローラ体2を備える。
【0019】
ローラ体2の外周面3には、回転軸1と平行の関係にある直線5と、ある角度θを有して延びる窪み4が形成又は加工されている。搬送される電極がローラ体2に対して横方向に滑ることなく、ローラ体の回転軸1に対して直行する方向に正しく移送される場合、ローラ体の表面上を延びる前記窪み4は、該ローラ体が回転する際に、電極に対してその移送方向に直行する軸に角度θをもって通過するので、この窪み4が電極を通過する(横切る)タイミングは、場所により異なることとなる。前記窪み4は、前記直線5に対し、約3°をなして該外周面上に延びていることが好ましい。
【0020】
なお、前記窪み4は、適当な幅をもって形成されているので、図1(b)に示された窪み4を示す線は、窪みの最深部を象徴的に示したものであり、この線に対して略平行に適当な幅をもった凹部が形成されている。
【0021】
また、本発明のローラの上記の窪みの線は、図1(a)及び(b)に示した実施例では、4本であるが、4本に限定されるものではなく、1本でもよいし、2本、3本、また、5本以上の複数本であってもよいし、また、折り曲げられた線でもよい。
【0022】
本発明のローラは以上のように構成されているため、搬送速度が高速化しても、搬送される電極とローラとの間に巻き込まれる空気を、窪み内を通過して側方向に逃がすことができるので、電極とローラとの間に巻き込まれる空気により生じる電極の上下振動を抑制することができると共に、窪みが延びる方向が搬送される電極と該ローラ体との接線に対し、ある角度をなして該外周面上に延びていることにより、該窪みの存在が搬送される電極に与える上下方向の振動等の悪影響を避けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、電気自動車の電極を搬送するローラを始めとして、各種の商品や部品等を搬送するコンベアのローラにも利用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1…回転中心軸、2…ローラ体、3…ローラ体の外周面、4…窪み、5…直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を搬送する円筒状のローラ体を備えたローラであって、
該ローラ体の外周面上に窪みを有し、該窪みが該外周面と該搬送物との接線に対し、交わるように延びていることを特徴とするローラ。
【請求項2】
請求項1に記載されたローラにおいて、
前記窪みが該外周面と該搬送物との接線に対し、ある角度をなして線状に延びていることを特徴とするローラ。
【請求項3】
請求項2に記載されたローラにおいて、
前記ある角度が約3°であることを特徴とするローラ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載されたローラにおいて、
前記線状の窪みが前記外周面に複数本設けられていることを特徴とするローラ。
【請求項5】
請求項4に記載されたローラにおいて、
前記複数本が4本であることを特徴とするローラ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかの請求項に記載されたローラにおいて、
前記搬送物が燃料電池用の電極であることを特徴とするローラ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−202319(P2010−202319A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48389(P2009−48389)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】