説明

電気クロマトグラフィーによるアミノ酸の分析方法

【課題】溶離液に純水だけを使用することにより、アミノ酸、ペプチド、タンパク質及びそれらの誘導体を短時間で且つ一斉分析可能な分析方法及び装置を提供する。
【解決手段】アミノ酸、ペプチド、タンパク質及びそれらの誘導体からなる群より選択される何れかの分析物を含む試料を分離カラムに導入する工程、ここで、当該分離カラムは水酸化物イオン又はヒドロニウムイオンを対イオンとする強電解性イオン交換樹脂が充填されてなり、前記分離カラムに非電解質溶液からなる溶離液を流すと共に当該流れ方向に電圧を印加することによって前記試料に含まれる複数の分析物の溶出時間をコントロールする工程、及び前記分離カラムから溶出される夫々の分析物を検出する工程、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気クロマトグラフィーによるアミノ酸、ペプチド、タンパク質及びそれらの誘導体の分析方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、アミノ酸を分析する方法としては、主に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が用いられている。分離カラムにはイオン交換カラムなどが、検出には発色試薬による吸光度法、蛍光試薬による蛍光検出法、またはアミノ酸のカルボキシル基の200〜210nmの吸収を用いるUV検出法などが用いられている。また多段階グラジエント溶出機構を備えるものもあり、多種のアミノ酸の一斉分析が可能となっている。しかし、多段階グラジエント法による溶出機構は、pHの少しの変化により溶出時間が変化するので溶出時間の再現性を得ることが難しく、さらに測定ごとのカラムの再生が必要であり、システムの条件設定が煩雑となっている。
【0003】
一方、キャピラリー電気泳動(CE)を用いたアミノ酸分析方法も報告されているが、この方法も、全てのアミノ酸を一斉に分析するには、紫外線吸収物質や蛍光物質を加えて、アミノ酸をこれらの誘導体に修飾する必要がある。キャピラリー電気クロマトグラフィー(CEC)は支持体を充填したキャピラリー電気泳動の一つであり、使用する支持体はHPLCで用いる樹脂と同質である。現在までに報告されているキャピラリー電気クロマトグラフィーに関する多くの文献は化学修飾して疎水性を持たせた樹脂を使用した逆相分配モードとポリアクリルアミドなどのゲルを充填し分子ふるい効果を利用したゲル浸透モードに関する報告である。少数であるがイオン交換樹脂を使用した報告もある(例えば、非特許文献1〜3参照)。これらの文献に共通する事は電解質を含んだ電気浸透流を溶離液として用いており、溶離液と吸着イオンとの交換反応により吸着イオンを溶出していることである。
【0004】
【非特許文献1】Breadmore MC, Macka M, Avdalovic N, and Haddad PR, Anal. Chem., 2001, 73, 820-828.
【非特許文献2】Breadmore MC, Palmer AS, Curran M, Macka M, Avdalovic N, and Haddad PR, Anal. Chem., 2002, 74, 2112-2118.
【非特許文献3】藤原美規、日本分析化学会第54年会、 2005、 J 1008、 234
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のアミノ酸分析方法において、溶離液に純水等の非電解質溶液を使用しアイソクラティック分析が可能であれば、操作が容易となり、また装置の維持管理にも適している。しかし、吸着イオンの溶出能力のきわめて低い純水を溶離液とした場合、上記従来型の装置では吸着イオンはカラムから溶出してこない。そのため一般的に電解質を含んだ溶離液を用い、吸着イオンとの交換反応を行い吸着イオンの溶出を行っている。純水の場合、交換イオンが10−7Mしか存在しないため吸着イオンと交換反応が起きる確率が少ない。そのため吸着イオンを溶出することはできないという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、溶離液に非電解質溶液を使用することにより、アミノ酸、ペプチド、タンパク質及びそれらの誘導体を短時間で且つ一斉分析可能な分析方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気クロマトグラフィーによる分析方法は、次の3つの条件を用いる。
(1)カラム出入り口に電極を設置し、電圧を印加する。
(2)電極間にイオン交換樹脂を充填し固体電解質を分離カラムとして用いる。使用する樹脂はイオン交換基が結合している樹脂である。
(3)溶離液に吸着イオンの溶出能力の極めて小さい純水等の非電解質溶液を用いる。
この三つの条件によりカラム内でイオン交換樹脂相と液相が相接する界面において界面動電現象が現れ吸着イオンの分離・溶出が可能となる。
【0008】
すなわち、本発明の分析方法は、電気クロマトグラフィーによるアミノ酸、ペプチド、タンパク質及びそれらの誘導体からなる群より選択される何れかの分析物を含む試料の分析方法であって、前記試料を分離カラムに導入する工程、ここで、当該分離カラムは水酸化物イオン又はヒドロニウムイオンを対イオンとする強電解性イオン交換樹脂が充填されてなり、前記分離カラムに非電解質溶液からなる溶離液を流すと共に当該流れ方向に電圧を印加することによって前記試料に含まれる複数の分析物の溶出時間をコントロールする工程、及び前記分離カラムから溶出される夫々の分析物を検出する工程、を含むことを特徴とする。前記溶離液は、純水又は脱イオン水であることが好ましい。また、1つの実施形態において、前記溶離液にアミノ基の発色試薬、例えば、ニンヒドリン等を含み、分離カラムからの溶出液を加熱してアミノ酸等の分析物を発色させることを特徴とする。
【0009】
また、別の観点において、本発明の分析装置は、アミノ酸、ペプチド、タンパク質及びそれらの誘導体からなる群より選択される何れかの分析物を含む試料を電気クロマトグラフィーにより分析するための装置であって、試料のインジェクションポートと、水酸化物イオン又はヒドロニウムイオンを対イオンとする強電解性イオン交換樹脂を充填してなるカラムと、前記インジェクションポート及びカラムと連通してなる溶離液の流路と、前記カラムの入口と出口に配置された電極と、前記電極間に電圧を印加するための電源と、前記カラムから溶出される分析物の検出器と、を備えることを特徴とする。分析物のアミノ基を発色させて検出する場合は、前記カラムと検出器との間に、アミノ基の発色反応を行うための恒温装置を備えた反応カラムを更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の分析方法によれば、まず、印加電圧を可変にすることにより吸着イオンの溶出時間のコントロールができる。そのため、溶媒グラジエント法を必要とせず、アイソクラティック分析(単一溶媒によるHPLC)によるアミノ酸一斉分析が行える。そのため吸着イオンの溶出時間の再現性が得られる。第二に、カラムの再生をする必要が無い。第三には、従来アミノ酸分析で用いられてきた検出器を使用する上で、溶離液に純水を用いているためにベースラインのドリフトが極めて小さく、シグナル/ノイズが大きくなり高感度検出が可能となる。第四としては、溶離液に電解質を含まないため質量分析計による高感度検出が可能となる。最後に、本発明の分析方法は、HPLCと電気泳動のハイブリットとなっており、イオン交換樹脂によるサンプルの濃縮と、電気泳動による高分解能な分離が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
最初に、本発明に係る電気クロマトグラフィーによるアミノ酸の分離機構について簡単に述べる。分離カラムの出入り口に設置した電極間に電圧を印加することで水を電気分解する。従来、水の電解を安易な条件下で行うために液体電解質を含んだ溶液内で電解を行うことが一般的である。本発明は電極間に固体電解質としてイオン交換樹脂を充填することによりイオン交換基とその対イオンがカラム内で電解質として働く。そのためカラム内を純水で満たしても電気抵抗は小さくなる(電流が流れやすくなる)。よって非充填時と比べ低電圧で水の電気分解を起こすことが出来る。水の電気分解が起こると電極表面では電荷の偏りが生じる。電荷の偏りを消すために電解質は対極に引き寄せられる。この現象が界面動電現象であり、電気泳動にあたる。電解質として液体電解質ではなく固体電解質であるイオン交換樹脂を用い、電極間に充填しているためにイオン交換基は固定されている。そのため電気泳動することができるイオンは対イオンつまり吸着イオンだけとなる。このとき各吸着イオン種のイオン交換樹脂に対する吸着力、各吸着イオン種が電場によって対極に引き寄せられる電気泳動速度は異なっている。つまり二種類のポテンシャルの作用により各吸着イオン種は分離溶出されることになる。
【0012】
本明細書では一斉アミノ酸分析について主に説明するが、本発明に係る電気クロマトグラフィーを使用することにより、無機イオン、有機酸、ペプチド、タンパク質、核酸、糖などのイオンクロマトグラフィーによる分析に応用することが可能である。
【0013】
[界面動電現象]
固相と液相が相接する界面において、電場を加えると界面を挟んだ層の相対的な移動が生じる。また逆に圧力を加えて2相の相対的な移動を生じさせると電場を誘起する。このような一連の動的現象を界面動電現象という。界面動電現象は2相間に存在する電位差すなわち電気2重層に起因するものである。しかし、この現象に直接関与するのはε電位ではない(一般に二つの異なる相が接する面を界面という。通常界面には電位差が生じる。これは両相の仕事関数に差があるためである。このような電位差を総称して熱力学電位またはε電位という)。固体と液体とを相対的に移動させた場合、固体界面からある距離までの液体は固体に吸着したままで移動する。この固定液相と流動液相の境界面はすべり面といわれ、通常、電気2重層内にできる。したがってこの境界面より固定液相側の電荷は固体に付着して動くので、境界面から流動液相側の液の外側までの電位差ζだけが実質上の電位差となる。この電位差ζを界面動電位又はζ電位といい、界面動電現象に直接関与する電位差である。また電気2重層が薄い場合には、二つの電位(ε電位とζ電位)は近似的に等しいとみなしてよい。この電位差は2重層の電荷分布にPoissonの式を適用して
ζ=4πρδ/D (1)
で与えられる。ここで、ρは2重層の流動液相の電荷密度、δは電気2重層内の流動液相側の距離、Dは液体の誘電率である。ζの大きさは、通常、数〜数十mV程度である。下記に界面動電現象に含まれる電気浸透流と電気泳動について述べる。
【0014】
1 電気浸透流
毛細管または多孔質の隔膜によって液を隔て、両側に不活性電極を入れ直流電圧を印加すると、液は一方から他方に移動し水位が変化する。このような現象を電気浸透流という。この場合、移動方向は液と固体材質との間のζ電位の符号によって決まる。このような現象を定量的に考えてみる。毛細管で、可動面に平行に外部電場を与え、矢印方向に液が速度υで動くものとする。このとき、液中の電荷ρに働く力はEρであり、この力は固相面との摩擦力ηυ/δと釣合わなければならないから次式が成立する。
Eρ=ηυ/δ (2)
ここでηは液の粘度である。式(1)と式(2)からδとρを消去すると、速さと電場の強さの間には、次式が成立することがわかる。
υ=(ED/4πη)ζ (3)
このような速度で液側の電荷すなわちイオンが動けば、それに水和している水も動き、さらに水と水との間の粘性のために毛管が細い場合には両2重層の間に挟まっている水すべて同じ速さで移動するものと考えてよい。したがって、毛管の断面積をSとすれば
V=S(ED/4πη)ζ (4)
の量の水が単位時間に通過することになる。一方、毛細管の長さl、液の導電率をσ、流れる電流をIとすれば、毛細管の両端での電位差は
El=I(l/Sσ) (5)
となる。式(4)及び式(5)から電流と流量の関係式
V=(Dζ/4πησ)I (6)
が得られる。この式を見ると、毛細管を通じて電気浸透する液量は、電流だけに比例し、毛細管の長さや断面(勿論一本の管の断面積は非常に小さい必要があるが)には無関係であることがわかる。
【0015】
2 電気泳動
液中に浮遊した細かい粒子やコロイドが電場のもとで、一方の極に向かって移動する現象を電気泳動という。これは電気浸透と原理は全く同じで、電気浸透の場合には固相が固定されているので液相が移動したが、電気泳動では分散媒である液体が静止し、動きうる粒子が移動する。粒子の動く速度は電気浸透の場合と同様
υ=(ED/4πη)ζ (7)
で得られる。この場合
μ=υ/E=Dζ/4πη (8)
で表わされる量を電気泳動度と呼び、イオンの移動度に相当する量である。
【0016】
[水の電気分解]
水の電気分解は以下のように進む。
(1)電極に小さな電圧をかければ、イオンの瞬間移動が起き0.01秒台だけ充電電流が流れる。その結果、電子授受の大事な舞台、電気2重層が生まれる。
(2)電圧を上げていくと、どこかで電気エネルギーが十分な値に届き、溶媒・溶質・電極自身のうち何かが陽極に電子を渡し、別の何かが陰極から電子を貰う。つまり電解が始まる。電解が始まると下の反応例(9)、(10)を眺めてわかるように、陽極付近の溶媒は正電荷が増え(負電荷が減り)、陰極付近の溶液は負電荷が増える(正電荷が減る)。
(陽極反応の例)
2HO→O+4H+4e (9)
(陰極反応の例)
2HO+2e→H+2OH (10)
(3)そこで再びイオンの出番となる。過剰の電荷を打ち消そうとして、溶液中の陽イオンは陰極に向かい、陰イオンは陽極に向かう。ここでようやく全体の回路がつながり、電流が流れ出す。
【0017】
水の電気分解を簡易に行うにはある濃度以上の電解質イオンを含んだ溶媒で電極間を満たす必要がある。ある電位以上の電圧を印加すると水と電極間で電子授受が起こり、水が電気分解する。電気分解が起こると式(9)、(10)からわかるように電極表面でプロトンとヒドロキシルイオンが生成し電荷の偏りが生じる。電気的中性条件を満たすために、電解質は対極に引き寄せられる。この現象が、界面導電現象というものであり、電気泳動にあたる。逆に電解質を含まない純水中での電気分解では電気2重層の厚みが増す。さらに溶液抵抗Rが高いために2極間に電流を流すとIRの電圧が溶媒にかかるために電気分解に使われる電位は、下記式(11)

電気分解に使われる電位=印加電圧−IR (11)

となり電気分解が起こりにくい。つまり、電子授受がどんなに速く、電極表面に反応物がどれほどたくさん存在していても、それだけでは電解電流は流れない。電子授受の生む余分な電荷を始末(中和)してくれるイオンが無ければならない。水の電気分解は数段階の過程を経て電解が起きており、電極間に溶解している電解質濃度の違いにより律速段階となる段階は異なっている。例えば希硫酸の場合は、電子授受が律速段階となり、純水の場合は電気泳動速度が律速段階となっている。
【0018】
[本発明の原理]
上述したように本発明の電気クロマトグラフィーを行うためには上記三つの条件が必要である。この三つの条件を踏まえて分離機構は四つに分けることができる。下記に四つに分けた分離機構を示す。
(a)カラムの出入り口に設置した電極に電圧を印加して電極表面で電気分解を起こす。(b)電極間に固定電解質としてイオン交換樹脂を充填するとイオン交換基とその対イオンが電解質イオンとして働く。溶媒抵抗Rが低くなり、非充填時と比較して低い電圧印加で水の電気分解を行うことができる。
(c)電気分解が起きると電極付近では電荷の不均一が生じる。電極付近の電荷の不均一を解消するために陽イオンは−極に陰イオンは+極に電気泳動する。イオン交換樹脂のイオン交換基は固定されているために対イオンだけが電極に向かって電気泳動する。
(d)イオン交換樹脂の静電ポテンシャルと電圧印加による電気ポテンシャルの二種類のポテンシャルにより各吸着イオンは高分解能で分離し、高感度検出ができる。
【0019】
分離機構を説明する上で電極間に充填するイオン交換樹脂の作用が重要となる。下記に四つの作用を示す。
(1)イオン交換樹脂の充填により電極間の電気抵抗が下がる。交換容量の高い樹脂を電極間に充填することにより電気抵抗は小さくなる(表1参照)。
(2)サンプルイオンをイオン交換樹脂が持つ静電気ポテンシャルにより吸着させ濃縮する。
(3)各吸着イオンに対する静電気ポテンシャルの違いから溶出速度に時間差があらわれ、各吸着イオンは分離・溶出する。
(4)固液相間にε電位またはζ電位を形成する。「界面導電現象」でも述べたが固相と液相が相接する界面にはε電位、ζ電位が発生する。イオン交換樹脂の樹脂表面にはイオン交換基が高密度に存在しており、固相と液相間に発生する電気2重層の厚みは薄くなり、ε電位とζ電位は近似的に等しくなる。またζ電位は高くなる。すなわち吸着イオンは樹脂表面の近傍に濃縮して存在することになり、固液界面での拡散が抑えられることになる。
【0020】
【表1】

【0021】
これらの作用を上手に引き出すためには分析対象とするイオン種によって最適のイオン交換樹脂を選定する必要がある。本明細書で述べる分析対象種はアミノ酸種であり、一斉アミノ酸分析を行うためにイオン交換樹脂は強電解質、低交換容量のイオン交換樹脂、そして対イオンをプロトン型またはヒドロキシル型にすることで樹脂表面を強酸性または強アルカリ性とした樹脂を選定している。これらの理由は二つある。第一に、アミノ酸は両性イオンでその解離基が弱電解質であるためである。そのためにイオン交換樹脂に対し、解離基の一方が樹脂に吸着すると他方は反発する。反発を抑制するために樹脂表面を強酸性または強アルカリ性にする。一方の解離基が非解離となるため、樹脂に対する反発が抑制され、樹脂に保持することになる(例えばイオン交換基の対イオンを塩素またはナトリウム型にし、樹脂表面を中性にするとアミノ酸種のほとんどはカラムに保持することなく溶出する)。第二に、高交換容量のイオン交換樹脂を使用すると、電極間に高濃度の電解質が存在する状態となる。そのため電圧印加時に電極間の電流が大きくなり熱が発生する。樹脂の耐熱的な問題から高い電流を流せないため、低い電圧を印加することになり、吸着イオンの溶出時間が遅くなる。本発明において、溶出時間の遅いアミノ酸種を二時間以内で溶出したいため、低交換容量のイオン交換樹脂を選定し用いることが好ましい。「低交換容量」とは、例えば、約4.5当量(eq)/L以下のことをいう。さらに好ましくは約1当量(eq)/L以下である。
【0022】
次に本題の分離機構について説明する。周知のようにHPLCにおいて溶離液に純水を使用した場合、イオン交換樹脂に吸着したイオンは溶出してこない。従来、電解質を含んだ溶離液を用い交換反応により溶出している。本発明に係るシステムではHPLCと電気泳動をハイブリットした電気クロマトグラフィーを用いることで樹脂吸着イオンの溶出を可能にしている。従って、本発明の方法に用いる溶離液は、非電解質溶液であれば特に限定されないが、好ましくは純水又は脱イオン水である。但し、非電解質であれば、有機溶媒や尿素などの変性剤をある程度含んでいても問題ない。
【0023】
好ましい実施形態では、図1に示した分離カラムを用意する。樹脂吸着イオンの電気泳動による溶出を起こさせるためにカラムの出入り口に電極10を設置し、電圧を印加する。電圧を印加することで上記(a)で述べた水の電気分解が起こる。図1に示したように電極間にイオン交換樹脂30を充填することで上述したイオン交換樹脂の4つの作用を得ることができる。(b)で述べたようにイオン交換樹脂の充填により電極間の電気抵抗は下がる。電極間の電位勾配は電極の近傍に急激な電位勾配が形成されると考えられる。電極表面で水の電気分解が起こると(c)で述べたように樹脂吸着イオンは対極に向かって電気泳動する。これは電気分解により電極表面で電荷の偏りが生じたためであり、電気的中性条件を満たすために電極間に溶存するイオンは対極に向かって電気泳動することになる。本発明のシステムでは電極間を固体電荷質のイオン交換樹脂で満たしているために樹脂表面のイオン交換基は固定されている。そのため対イオンである吸着イオンだけが対極に向かって電気泳動することになる。上述したイオン交換樹脂の作用(4)で述べたように吸着イオンは樹脂表面に濃縮され、拡散が抑えられている。そのため、吸着イオンは電気泳動により濃縮された状態のまま対極に向かい移動することになるので高感度検出が可能となっている。吸着イオンの分離は(d)で述べたように二種類のポテンシャルにより起こっている。本発明に係るシステムはイオン交換樹脂の静電ポテンシャルによる吸着イオンの濃縮と分離、電気泳動による高分解能な分離を併せ持つ高感度・高分解能な分析システムとなっている。
【0024】
図3及び図4には、本発明に用いることのできる分析装置の要部を示す。図3では、インジェクターIから導入されたサンプルは、イオン交換樹脂31が充填されたカラムで分離され、このときカラムの両端、すなわち溶離液の流れる方向に電圧が印加され、検出器Dで検出される。他の1つの実施形態を示した図4では、陰イオン交換樹脂32と陽イオン交換樹脂33とが交互に充填されている。分離カラムに印加される電圧は、充填されたイオン交換樹脂の種類と分離方法に適した極性を有する。例えば、陰イオン交換樹脂を充填した場合は、陰極から陽極に向かって溶離液が流れるように設定すると分析物の溶出速度が促進され、逆に陽極から陰極に向かって溶離液が流れるように設定すると分析物の溶出速度が抑制される。陽イオン交換樹脂を充填した場合は、その逆である。検出器としては、アミノ酸、ペプチド、及びタンパク質等を検出できるものであれば特に限定されないが、好ましくは、電気伝導度検出器、蛍光光度計、分光光度計、及び質量分析計等を用いることができる。
【0025】
近年、蛍光標識と液体クロマトグラフィー質量分析計(LC−MS)とを組み合わせることにより高感度、短時間でアミノ酸分析を行う方法が報告されている。スプレーイオン化質量分析計は高感度かつ数秒で質量を測定できるハイスループットな分析装置である。LCの溶離液に不揮発性の電解質イオンを含まない純水を用いることができれば、LCから溶出されるサンプルをMS測定用にイオン化する際に極めて好都合である。さらに本発明の方法は、溶離液の流路がマイクロ流路からなり、サンプルポート、カラム及び電極がチップ上に配置されてなるミクロ統合化システム(μ−TAS)に使用することもできる。ガラス基板やポリマー系の基材に微細加工を施し、かつ本発明に係るイオン交換樹脂を充填したマイクロチップ電気泳動用の分析装置も本発明の範囲内に含まれる。
【0026】
また、本発明の1つの実施形態において、溶離液(E)に予めニンヒドリン等のアミノ基の発色試薬を混入しておき、分離カラムからの溶出液を加熱することによって例えばニンヒドリン反応などを起こさせ、発色試薬特異的な波長(ニンヒドリンの場合は570nmの可視光)で検出することができる。このようなシステムとして、例えば、図8に示したシステムは、分離カラム(C)と検出器(D)の間に反応カラム(RC)を設置したシステムである。溶離液として、純水に1mM程度のニンヒドリンを加えたものを使用し、反応カラムの温度を約80〜150℃に設定して分析物のニンヒドリン反応を起こした後、570nmの吸光度を測定して分析物を検出する。従来法ではニンヒドリン反応を利用してアミノ酸を検出する場合は、分離カラムからの溶出液にニンヒドリン溶液を混合するための別の流路を設け、反応カラムの前でこれら2つの流路を連結していた。その理由は、第一に、ニンヒドリン反応はpHの変化によって発色率が異なるためにpHを一定にする必要があるからである。従来のHPLC法によるアミノ酸分析では溶媒グラジエントを行っており、溶離液のpHは常に変化している。このため、溶離液とは別流路を設け、ニンヒドリン溶液中に緩衝液を加えてニンヒドリン反応時のpHを一定にしていた。第二に、一般的に溶離液以外の成分を分離カラム内に流し込むことは避けられる。しかし、本実施形態においては、ニンヒドリンを溶離液中に加え、分離カラム内に流し込むことで、分析物の検出ピークがシャープになるなどの大きな利点がある。ニンヒドリンは弱酸性であり、スルホン基が結合したカチオン交換カラムには吸着することはない。また、解離平衡の点からは、わずかにしか解離しておらず分離カラム内で非電解質として存在すると考えられ、カチオン交換樹脂との相互作用はない。さらに、室温条件下ではアミノ酸との反応速度は小さいため、分離カラム内でアミノ酸と反応する確率は小さい。一方、ニンヒドリン反応は加熱することにより反応速度が増加するから、分離カラムの後ろに恒温槽を備えた反応カラムを設置し、この中で加熱することでニンヒドリン反応は促進される。アミノ酸はニンヒドリン反応によって紫色に発色し、570nmでの吸光度を測定することにより検出することができる。このようなポスト発色反応によるアミノ酸分析法も本発明の範囲に含まれる。
【実施例1】
【0027】
[イオン交換樹脂の影響]
使用するイオン交換樹脂の交換容量、イオン交換基の種類は、電気抵抗Rと吸着イオンの溶出時間に影響する。上記表1に樹脂種の違いによる電気抵抗Rを示した。交換容量が高くなるにつれ抵抗値が下がることが解る。
【0028】
次にイオン交換基にカルボキシル基をもつTSKgel SuperIC Cationは1eq/Lと高交換容量であるにもかかわらず低交換容量のTSKgel IC Anion PWよりも抵抗値が高くなっている。また樹脂を充填していないときは、極性の向きにより抵抗値が大きくずれている。溶出時間への影響は、高交換容量のイオン交換樹脂を使用すると、アミノ酸の溶出に長時間かかる事がわかっている。カルボキシル基などの弱電解質のイオン交換基が結合しているイオン交換樹脂にはアミノ酸種のほとんどが吸着せず保持時間0分で溶出した(弱電解質のイオン交換基が結合しているイオン交換樹脂を使用したときに樹脂に保持したアミノ酸種は極性電荷側鎖アミノ酸類だけであった)。
【0029】
電極間にイオン交換樹脂を充填することで、電気抵抗が下がる。充填する樹脂種(交換容量、交換基の種類)によって電気抵抗が異なっている。これは固体電解質が液体電解質と同じ働きをすることを意味している。つまり液体電解質でいう、電解質濃度と種類にあたる。
【0030】
TSKgel Super IC Cation は1eq/Lと高交換容量であるにもかかわらず低交換容量のTSKgel IC Anion PWよりも抵抗値が高くなっている。これはカルボキシル基が弱電解質であり解離定数が約1.8×10−5(酢酸の解離定数と同じとする)となっているためである。対イオンをH型にすると
〔H〕〔C〕/〔HC〕=Ka (12)
式(12)にKa=1.8×10−5、HC=1molを代入すると
〔H〕=〔C〕=4.24×10−3
となりほとんどのイオン交換基が解離していないことになる。そのため、TSKgel IC Anion PWよりも解離したイオン交換基の数が少なくなるため、電気抵抗は高くなると考えられる。
【0031】
高交換容量のイオン交換樹脂を使用すると、アミノ酸の溶出に長時間必要である。これは高交換容量となるにつれて単位面積あたりのイオン交換基の数が増えるためであり、交換容量が増えても交換基間を電気泳動する吸着イオンの電気泳動速度が同じであるならば、交換基の数が増えれば溶出に時間を要することになる。
【0032】
カルボキシル基などの弱電解質のイオン交換基が結合しているイオン交換樹脂にはアミノ酸種のほとんどが吸着せず保持時間0分で溶出する。イオン交換基が弱電解質であるため、アミノ酸の解離基であるカルボキシル基とアミン基の解離が抑制できないためである。従って、本発明の方法に用いるイオン交換樹脂としては強電解質イオン交換基を有することが好ましく、例えば、スルホン基又は4級アミン基からなるイオン交換基を有するイオン交換樹脂である。
【0033】
[印加電圧の影響]
図2に示した装置を用いて印加電圧の影響を調べた。Pはポンプ(0.1mL/分)、DGはデガッサ、Iはインジェクター(20μL)、Dは検出器(日理製UV/可視検出器:205nm、感度0.001ABS/FS)、DPはデータプロセッサ(TOSOH製LR4220;感度100mV/FS、チャート速度0.5mm/分)、Cはカラム(TOSOH製TSK gel IC Anion PW(φ0.75mm×15cm)、Eは溶離液(純水)、Wは廃液を示す。図2には示していないが、高圧電源(Matsusada Precision Inc製HB−6PN(A))、及び電極(ステンレスジョイント)を用いた。
【0034】
印加電圧を変えて、8種類の混合アミノ酸を試料として用いたときのアミノ酸の溶出パターンを図5に示した。Aは電圧をかけなかったときの溶出パターンを示し、BとCは夫々45μA(印加電圧1840V)、90μA(印加電圧3200V)の定電流で溶出したときのパターンを示す。ピーク番号に対応する夫々のアミノ酸は以下のとおりである。1:システムピーク、2:0.1mMプロリン、3:0.1mMアラニン、4:0.1mMグリシン、5:0.1mMバリン、6:0.1mMセリン、7:0.1mMトレオニン、8:0.1mMアスパラギン、9:0.01mMフェニルアラニン。印加電圧が高くなるに従い樹脂に吸着しているアミノ酸種の溶出時間は速くなり、ピーク高さが高くなる。
【0035】
次に、アミノ酸の種類による印加電圧と溶出時間との関係を調べた。図6は、×:0.01mMフェニルアラニン、▲:0.1mMアスパラギン、■:0.1mMグリシン、◆:0.1mMプロリンを用いてその他は上記と同一の条件で分析を行った。プロリン、グリシンなど溶出時間の速いアミノ酸種ほど印加電圧の影響が小さくなっている。
【0036】
印加電圧が高くなるにつれアミノ酸の溶出時間は速くなりピーク高さが高くなる。これは「電気泳動」で述べた式(7)からわかるように電圧Eが高くなると電気泳動速度が速くなるためである。また溶出時間が速いということはカラム内での拡散される時間が短いので、ピーク高さが高くなる。また図6のように印加電圧とアミノ酸の溶出時間の関係は比例関係ではなく、溶出時間の速いアミノ酸ほど電圧の影響が小さくなっている。これは図5に示している印加電圧0Vにもかかわらずアミノ酸が溶出していることから理解できる。この原因はアミノ酸種のイオン交換樹脂に対する吸着方法にある。アミノ酸は両性イオンであり、樹脂表面を強酸性または強アルカリにすることで、両性イオンの一方の解離を抑制し、イオン交換樹脂に吸着させている(詳しくは「原理」で述べている)。しかし樹脂表面での解離の抑制が完全ではなければ印加電圧ON/OFFに関わらず溶出が起こると考えられる。仮に樹脂表面での解離の抑制が完全であるならば、電圧を印加することによって初めてアミノ酸は溶出されることになる。
【0037】
[純水の純度]
炭酸ガスを含む純水と、炭酸ガスを含まない純水とを用いて、上記と同様の条件で分析を行った結果を図7に示した。炭酸ガスによりアミノ酸種の分離の分解能が低下する事がわかる。
【0038】
純水中に溶け込む炭酸ガスにより、アミノ酸種の分離の分解能が低下している。これはイオン交換樹脂相と液相間にできる電気2重層に関係していると考えている。図7のよう炭酸ガス有無の純水を比べると炭酸ガスを含む純水の方が電気2重層の厚みが増える。厚みが増えると吸着イオンへの静電力は小さくなり拡散が起こることになる。そのためピーク幅は広がり、分離の分解能が低下すると考えられる。純水純度を高めることで、電気2重層の厚みを薄くし、吸着イオンの拡散が抑えられると高分解能な分離を得ることができると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る電気クロマトグラフィーに用いる典型的なカラムの構造を示す。
【図2】本発明に係る電気クロマトグラフィー装置の概略図を示す。
【図3】実施例で用いた電気クロマトグラフィー用カラムの構造を示す。
【図4】別の実施形態における電気クロマトグラフィー用カラムの構造を示す。
【図5】実施例において8種類のアミノ酸混合物を用いて印加電圧の影響を調べた結果である。
【図6】実施例において印加電圧と溶出時間の関係を調べた結果である。
【図7】実施例において溶離液中の炭酸ガスの影響を調べた結果である。
【図8】本発明の1つの実施形態に係る電気クロマトグラフィー装置の概略図である。
【符号の説明】
【0040】
10 電極
11、12、13、14、15 電極(白金粉末)
20 フィルター
30、31 イオン交換樹脂
32 陰イオン交換樹脂
33 陽イオン交換樹脂
E 溶離液
DG デガッサ
P ポンプ
I インジェクター
C (分離)カラム
D 検出器
DP データプロセッサ
RC 反応カラム
W 廃液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気クロマトグラフィーによるアミノ酸、ペプチド、タンパク質及びそれらの誘導体からなる群より選択される何れかの分析物を含む試料の分析方法であって、
前記試料を分離カラムに導入する工程、ここで、当該分離カラムは水酸化物イオン又はヒドロニウムイオンを対イオンとする強電解性イオン交換樹脂が充填されてなり、
前記分離カラムに非電解質溶液からなる溶離液を流すと共に当該流れ方向に電圧を印加することによって前記試料に含まれる複数の分析物の溶出時間をコントロールする工程、及び
前記分離カラムから溶出される夫々の分析物を検出する工程、
を含むことを特徴とする分析方法。
【請求項2】
前記溶離液が、純水又は脱イオン水であることを特徴とする請求項1に記載の分析方法。
【請求項3】
前記溶離液がアミノ基の発色試薬を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の分析方法。
【請求項4】
前記イオン交換樹脂が、スルホン基又は4級アミン基からなるイオン交換基を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の分析方法。
【請求項5】
前記イオン交換樹脂が、4.5当量/L以下のイオン交換容量を有することを特徴とする請求項4に記載の分析方法。
【請求項6】
前記検出工程は、溶出液の電気伝導度、蛍光強度若しくは吸光度を測定するか、又は溶出液中の分析物の質量分析を行うことを特徴とする請求項1〜5何れか記載の分析方法。
【請求項7】
少なくとも2種類の天然のアミノ酸を同時に分離しうることを特徴とする請求項1〜6何れか記載の分析方法。
【請求項8】
アミノ酸、ペプチド、タンパク質及びそれらの誘導体からなる群より選択される何れかの分析物を含む試料を電気クロマトグラフィーにより分析するための装置であって、
試料のインジェクションポートと、
水酸化物イオン又はヒドロニウムイオンを対イオンとする強電解性イオン交換樹脂を充填してなるカラムと、
前記インジェクションポート及びカラムと連通してなる溶離液の流路と、
前記カラムの入口と出口に配置された電極と、
前記電極間に電圧を印加するための電源と、
前記カラムから溶出される分析物の検出器と、を備えることを特徴とする分析装置。
【請求項9】
前記イオン交換樹脂が陽イオン交換樹脂であるとき、前記カラムの入口側の電極が陽極であり出口側の電極が陰極であることを特徴とする請求項8に記載の分析装置。
【請求項10】
前記イオン交換樹脂が陽イオン交換樹脂であるとき、前記カラムの入口側の電極が陰極であり出口側の電極が陽極であることを特徴とする請求項8に記載の分析装置。
【請求項11】
前記陽イオン交換樹脂が、スルホン基を有することを特徴とする請求項9又は10に記載の分析装置。
【請求項12】
前記イオン交換樹脂が陰イオン交換樹脂であるとき、前記カラムの入口側の電極が陰極であり出口側の電極が陽極であることを特徴とする請求項8に記載の分析装置。
【請求項13】
前記イオン交換樹脂が陰イオン交換樹脂であるとき、前記カラムの入口側の電極が陽極であり出口側の電極が陰極であることを特徴とする請求項8に記載の分析装置。
【請求項14】
前記陰イオン交換樹脂が、4級アミン基を有することを特徴とする請求項12又は13に記載の分析装置。
【請求項15】
前記イオン交換樹脂が、4.5当量/L以下のイオン交換容量を有することを特徴とする請求項8〜14何れか記載の分析装置。
【請求項16】
前記検出器は、電気伝導度検出器、蛍光光度計、分光光度計、又は質量分析計であることを特徴とする請求項8〜15何れか記載の分析装置。
【請求項17】
前記溶離液の流路がマイクロ流路からなり、前記サンプルポート、カラム及び電極がチップ上に配置されてなることを特徴とする請求項8〜16何れか記載の分析装置。
【請求項18】
前記カラムと検出器との間に、アミノ基の発色反応を行うための恒温装置を備えた反応カラムを更に備えることを特徴とする請求項8〜17何れか記載の分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−183133(P2007−183133A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−555(P2006−555)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(592157722)日理工業株式会社 (9)