説明

電気ケトル

【課題】転倒時の湯こぼれが防止できるという安全性と、軽量で低コストであるという手軽さとを兼ね備えた電気ケトルを得ること。
【解決手段】内部に液体を貯水することができ、電源台4に着脱可能に載置される本体部1と、前記本体部1の底部に配置された前記本体部1内の液体を加熱するヒータ12と、前記本体部1の開口部を開閉可能に封鎖する蓋体3と、前記本体部1の外殻に固着された把手2とを備え、前記蓋体3が転倒時止水機能を備えるとともに、前記本体部1の外殻を構成する筐体10が前記液体を貯水する貯水容器を兼ねる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源台に着脱自在に載置される本体部でお湯を沸かすことができる電気ケトルに関し、特に、転倒時にお湯がこぼれることを防止する構成を備えた電気ケトルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、使いたいときに少量のお湯を素早く沸かしたいというユーザのニーズに応えるために、電源台に着脱自在に載置される本体部を備えた電気ケトルの普及が進んでいる。
【0003】
このような電気ケトルは、0.15リットルから1.2リットルぐらいの比較的小容量のものであり、本体部内の貯水部に水を入れて電源台上に載置すると、電源台を通じて本体部内のヒータに通電されて、1〜3分程度の短時間で沸騰したお湯を沸かすことができる。
【0004】
電気ケトルは、電気ポットのような保温機能を有していない。また、お湯が沸くと、電源台から本体部だけを持ち上げ、従来のやかんでお湯を注ぐように本体部を傾けて本体部内のお湯を注口部からコーヒーカップなどに注ぐことができる。
【0005】
現在市販されている電気ケトルには、大きく2種類の形態がある。
【0006】
第1の形態は、手軽に電気でお湯を沸かすことができるという電気ケトルの特徴をそのまま実現したものであり、内部に貯水部を備える本体部は樹脂やガラス製の一層構造で構成されていて、貯水部分の下部に熱源であるヒータを備えたという簡潔な形態である。この形態の電気ケトルでは、本体部の貯水部を覆う蓋体も板状の部材が用いられ、レバーによって開閉して水を入れることができるというような極めて簡単な構成となっていて、軽量でかつ低コストの電気ケトルを実現することができる。
【0007】
一方、電気ケトルの第2の形態は、電気ケトルが沸騰したお湯を取り扱うことを重視して安全性に配慮したものである。この第2の形態の電気ケトルは、本体部の開口部分を覆う蓋体に、必要な場合にのみお湯を注ぐことができるようにする給湯スイッチや、誤って電気ケトル本体部を転倒させてしまった場合でもお湯がこぼれてしまうことを防止する機構を備えるなどしている。また、本体部と蓋体との隙間からお湯がこぼれ出ることがないように、蓋体の固着時には本体部との間が水密にシールされるとともに、本体部も、金属または樹脂製の外殻の中にステンレスなどの金属製の貯水容器を備えた2重の構造となっている。
【0008】
このような安全性を高めた構成の蓋体を備えた電気ケトルの一例として、お湯の注ぎ残しが少なく、かつ、本体部の容積率を高くしたものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−172109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
電気ケトルは、上記したように本体部を電源台に載置した状態でお湯を沸かせた後、電源台から持ち上げて、お湯を注ぎたいコーヒーカップなどに注口部を近づけ、本体部を傾けてお湯を注ぐこととなる。このような使用方法であることから、電気ケトルの本体部底面は、テーブルなどの台上にも直接載置可能な構造となっていて、ユーザは使用する場所の近くに電気ケトルを載置することが多く、本体部にものをぶつけたり手を滑らせてしまったりして電気ケトルの本体部を転倒させてしまうおそれがあり、本体部が転倒した場合でも内部の熱湯がこぼれないように配慮することは極めて重要である。
【0011】
一方で、手軽に素早くお湯を沸かすことができるということが電気ケトルの基本的なニーズであり、本体部の軽量性や、電気ケトルが低コストで得られる構成であるという、電気ケトルに対する手軽さを追求するニーズも強い。
【0012】
しかし、従来の電気ケトルは、安全性と手軽さとを両立したものではなかった。
【0013】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するものであり、転倒時の湯こぼれが防止できるという安全性と、軽量で低コストであるという手軽さとを兼ね備えた電気ケトルを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の電気ケトルは、内部に液体を貯水することができ、電源台に着脱可能に載置される本体部と、前記本体部の底部に配置された前記本体部内の液体を加熱するヒータと、前記本体部の開口部を開閉可能に封鎖する蓋体と、前記本体部の外殻に固着された把手とを備え、前記蓋体が転倒時止水機能を備えるとともに、前記本体部の外殻を構成する筐体が前記液体を貯水する貯水容器を兼ねることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電気ケトルは、本体部の開口部を着脱可能に封鎖する蓋体が転倒時止水機能を備えるとともに、本体部の外殻を構成する筐体が、本体部内部に液体を貯水するための貯水容器を兼ねている。このため、転倒時に本体部内部のお湯がこぼれない安全設計でありながら、本体部が簡易な構成であり、電気ポットの軽量化、低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる電気ケトルの外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかる電気ケトルの本体部内部の構成例を示す側面側から見た断面構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態にかかる電気ケトルの本体部内部の構成例を示す背面側から見た断面構成図である。
【図4】本発明の第1の実施形態にかかる電気ケトルの本体部内部に配置されるカバー部材の構成を示す断面構成図である。
【図5】本発明の第2の実施形態にかかる電気ケトルの本体部内部の構成例を示す側面側から見た断面構成図である。
【図6】本発明の第2の実施形態にかかる電気ケトルの本体部内部の構成例を示す背面側から見た断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の電気ケトルは、内部に液体を貯水することができ、電源台に着脱可能に載置される本体部と、前記本体部の底部に配置された前記本体部内の液体を加熱するヒータと、前記本体部の開口部を開閉可能に封鎖する蓋体と、前記本体部の外殻に固着された把手とを備え、前記蓋体が転倒時止水機能を備えるとともに、前記本体部の外殻を構成する筐体が前記液体を貯水する貯水容器を兼ねる。
【0018】
本発明の電気ケトルは、上記構成を備えることで、ユーザが誤って電気ケトルを倒してしまった場合でも、蓋体が転倒時止水機能を備えているため、湯こぼれを防止することができる。また、本体部の外殻を構成する筐体が、液体を貯水する貯水容器を兼ねているため、本体部の構成を簡素化することができ、本体部の軽量化と電気ケトルの低コスト化が可能となる。このため、安全性に配慮された、軽量かつ低コストの電気ケトルを実現することができる。
【0019】
上記本発明にかかる電気ケトルにおいて、前記筐体は、前記開口部側の端部で内側に折り返された折り返し部を備え、前記折り返し部と前記本体部の外殻を構成する外殻部とで構成される二重構造部の内側に前記蓋体が配置されるとともに、前記二重構造部に前記蓋体を固着するための係止部が形成されていることが好ましい。このようにすることで、転倒時止水機能を備えた蓋体を、本体部の外殻部と貯水容器とを兼ねる筐体に固着することができる。
【0020】
また、前記筐体の内面に環状のカバー部材が配置され、前記カバー部材の上部が前記二重構造部の前記折り返し部と前記外殻部との間の間隙に嵌入されていることが好ましい。このようにすることで、筐体の剛性を効果的に高めることができる。
【0021】
この場合において、前記カバー部材の上下方向における中間部の内側表面が、上方の径が下方の径よりも小さくなる傾斜面を形成していることが好ましい。このようにすることで、本体部と蓋体との水密な固着を確保しつつ湯のこりを効果的に解消することができる。
【0022】
さらに、前記筐体の前記折り返し部の下端部が、前記底部の近傍に位置するように形成され、前記二重構造部の前記底部側の内側表面が前記液体を貯水する貯水容器を構成していることが好ましい。このようにすることで、筐体の二重構造部を貯水容器とすることができ、筐体の断熱性が高まるため、外殻部に貯水容器内の液体の温度が直接伝わることを回避することができるとともに、筐体の保温性も向上させることができる。
【0023】
この場合において、前記二重構造部の前記開口部近傍の内径が、前記二重構造部の前記底部側の内径よりも大きく形成され、前記二重構造部の前記開口部近傍と前記底部側との境界に形成された環状の段差部の上面に、前記蓋体の底面の周囲部分が水密に当接することが好ましい。このようにすることで、本体部の外殻部と貯水容器とを兼ねる二重構造の筐体に蓋体を水密に固着することができる。
【0024】
以下、本発明にかかる電気ケトルの実施形態として、本体部の構成が異なる2つの構成例について、それぞれ第1の実施形態および第2の実施と形態として図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、電気ケトルの各構成部材を説明する際に用いる上下方向の概念は、電気ケトル本体部を電源台上に載置した状態での上下方向に基づくものとする。また、電気ケトル内に貯水される液体の説明においては、電気ケトルの最も一般的な使用法に基づいて、水からお湯を沸かす場合を例示して説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる電気ケトルの外観を示す斜視図である。
【0026】
本実施形態の電気ケトルは、本体部1と、本体部1の外殻に設けられた把手2と、本体部1の上部の開口部を開閉自在に封鎖する蓋体3とを備え、本体部1は電源台4に着脱可能に載置される。
【0027】
本実施形態の電気ケトルは、開口部に近い本体部1の側面上部に、把手2の形成されている方向とは反対の方向に突出するように形成された注口部5を備え、水やこの水を沸騰させたお湯などの本体部1内に貯水された液体を、本体部1を傾けてコーヒーカップなどに注ぐことができる。なお、本明細書においては、電気ケトルの使用時の状況を踏まえて、把手が設けられている側を背面側、その反対側である注口部5が設けられている側を前面側、注口部5と把手2とを左右方向に同時に見込む側を側面側と称することとする。
【0028】
本実施形態の電気ケトルは、蓋体3が、本体部1の上方から挿入されることによって、本体部1の開口部を封鎖する構造となっていて、蓋体3には、本体部1に蓋体3を固着するバネ機構を解除するための着脱レバー6、本体部1の内部に貯水されているお湯などを注ぐ際に、本体部1の内部から注口部5への通路を開通させる給湯スイッチ7、本体部1の内部の蒸気を放出するための蒸気放出口8が形成されている。
【0029】
把手2には、本体部1の内部に貯水された水などの液体を加熱して沸騰させることができる、加熱ヒータへの通電を開始させる電源スイッチ9が設けられている。この電源スイッチ9は、本体部1内部のお湯が沸いたことを検出して、自動的にヒータへの通電を停止して空だきを防止する機能を備えている。
【0030】
図2および図3は、図1に外観構成を示した本実施形態の電気ケトルの本体部の内部構成について説明する図である。図2が、電気ケトルを側面側から見た場合の断面構成図であり、図3が、電気ケトルを把手2の側である背面側から見た場合の断面構成図である。
【0031】
図2および図3に示すように、本実施形態にかかる電気ケトルの本体部1は、樹脂製の一体成型された筐体10が外殻部10aを構成している。
【0032】
図2に示すように、筐体10の、電気ケトルの前面側に位置する開口部側の端部近傍に注口部5が形成され、注口部5が形成された側とは反対側の背面側の筐体10の開口部近傍には、電気ケトルを保持するための把手2の上側の端部2aが固着されている。
【0033】
把手2が固着された背面側から見た断面構成図である図3において、図中左右方向である側面の状態として現れるように、筐体10は、開口部側の端部10bで筐体10の内側に折り返されて折り返し部10cを形成している。筐体10の折り返し部10cが形成されている部分は、筐体10の外殻部10aと折り返し部10cとが二重に位置している二重構造部10dとなっている。
【0034】
二重構造部10dの下端部に相当する折り返し部10cの先端には、筐体10の中心部側に突出した鍔部10eが形成されている。図2に示すように、この鍔部10eは、注口部5が形成されている前面側の部分や、把手2が固着されている背面側の部分を含めた筐体10の内周の全周に渡って環状に形成されている。筐体10の二重構造部10dの内側に蓋体3が固着されると、この鍔部10eの上面に蓋体3の底面3aの周囲部分が当接するようになっていて、本体部1を誤って転倒させてしまった場合でも、本体部1を構成する筐体10と蓋体3との間からの湯こぼれを防止することができるように、当接部分はパッキン材3bを用いて水密に構成されている。
【0035】
図2および図3において図中の下側である本体部1の底部には、筒状の筐体10の内側に底部ユニット11が嵌入されている。底部ユニット11には、本体部1内に貯水された水を温めるためのヒータ12と、ヒータ12に電流を供給するための電源プラグ23などが組み込まれている。
【0036】
本実施形態の電気ケトルでは、筐体10の、鍔部10eと筐体10内に嵌入された底部ユニット11の上面11aとの間に位置する外殻部10aが、本体部1の筐体10の外殻を構成するとともに、液体を貯水する貯水容器をも兼ねている。すなわち、鍔部10eと底部ユニット11の上面11aとの間の外殻部10aに囲まれた部分が、貯水空間13となっていて、外殻部10aの内側表面10fに直接触れるようにして液体が貯水される。
【0037】
図2に示すように、蓋体3には、筐体10内に貯水された液体を筐体10の上部の開口部近傍に配置された注口部5へと注出させる通路である注出路14が設けられるとともに、筐体10内部の貯水空間13と注出路14との間を遮断することができる開閉機構が設けられている。
【0038】
開閉機構は、その上面が蓋体3の上面に露出している給湯スイッチ7と、給湯スイッチ7の下部に配置された給湯弁15とで構成されていて、給湯スイッチ7が押し下げられていない状態では、給湯弁15を給湯スイッチ7側に押しつけて貯水空間13と注出路14との間を遮断し、給湯スイッチ7が押し下げられた状態では、ロックされてその状態を保つことができるようになっている。
【0039】
給湯スイッチ7は、図2に示すように断面が略「T」字状になっていて、T字の脚の部分に相当する給湯スイッチ7下部の延出部7aと、同じく略「T」字状であるが上下逆さまに配置された給湯弁15の脚部に相当する突出部15aとが、その先端同士で接触するように配置されている。このため、給湯スイッチ7が押し込まれた状態でロックされると、給湯弁15も押し下げられ、給湯弁15の円板状の弁部分15bが貯水空間13側に押し下げられて、貯水空間13と注出路14とが空間として接続され、注口部5からお湯を注ぐことができるようになる。
【0040】
本実施形態の電気ケトルは、蓋体3が上記した開閉機構を備えていることにより、蓋体3によって本体部1の開口部を封鎖した場合には、蓋体3に設けた給湯スイッチ7を押し下げた場合にのみ貯水空間13に貯水されたお湯を注出できる。従って、ヒータ12に通電してお湯を沸かしている時を含む、給湯時以外の非注出時に本体部1が転倒しても、お湯など貯水空間13に貯水された液体が注出路14を通過して流出してしまうことを防ぐことができる。
【0041】
また、図2に示すように、蓋体3には、蒸気を外部に逃がす蓋蒸気通路16が設けられている。本体部1内部の貯水空間13の蒸気は、蓋体3に設けられた蓋蒸気通路16を通じて、蓋体3の上面に形成された蒸気放出口8から放出される。蓋蒸気通路16は本体部1が略垂直に正しく載置されている場合には貯水空間13と常時接続されていて、湯沸かし時はもとより、電源スイッチが切断されてヒータ12による加熱が終了した後も貯水空間13内に発生する蒸気を蓋体3の蒸気放出口8から外部に放出して、本体部1内の圧力が上昇することを防止する。
【0042】
本実施形態の電気ケトルの蓋体3では、蓋蒸気通路16と貯水空間13との間に転倒時止水弁17が配置されている。本体部1が転倒した場合には、この転倒時止水弁17が蓋蒸気通路16を塞ぐ位置に移動するため、本体部1が転倒しても、貯水空間13内の液体が蓋蒸気通路16を通じて蒸気放出口8から流出してしまうことを防止することができる。
【0043】
このように、本実施形態の電気ケトルの蓋体3は、本体部1との間に水密性を保って固着されるとともに、転倒時止水機構として、注口部5と繋がっている注水路14と貯水空間13とを必要なときにのみ空間的に接続する開閉機構と、本体部1が転倒してしまった時には蓋蒸気通路16と貯水空間13との間の空間的な接続を遮断して蒸気放出口8からのお湯の流出を防止する転倒時止水弁17とを備えている。このため、電源台4から持ち上げて内部のお湯を注いだり、湯沸かし時以外にはテーブルの上など、お湯を使う場所に持ち運ばれたりして使用される電気ケトルの本体部が誤って倒れてしまった場合でも、内部のお湯がこぼれることを防止する安全面を考慮した設計となっている。
【0044】
本実施形態の電気ケトルの蓋体3は、給湯スイッチ7と蒸気放出口8との間の部分に、図1に示した着脱レバー6に連動して、蓋体3を本体部1の開口部近傍に固着するための係合片6aを押圧する押圧スプリング18を備えている。図3に示すように、筐体10の二重構造部10dの内側に位置する折り返し部10cには、着脱レバー6に連動する係合片6aが係合される係止部26が形成されていて、押圧スプリング18の押圧力によって係合片6aと係止部26とが係合して蓋体3を本体部1の開口部を封鎖するように固着することができる。
【0045】
蓋体3の側面25は、筐体10の外殻部10aと折り返し部10cとで構成される二重構造部10dの内側に挿入しやすいように、比較的柔らかいポリプロピレン(PP)で形成されている。また、筐体10の二重構造部10dの内側表面と蓋体3の側面との間からの湯こぼれをより確実に防止するため、図2および図3に示したように、蓋体3の側面を取り巻くように複数本の環状突起27を形成することもできる。
【0046】
図2に示すように、筐体10に接続された把手2の上側の端部2aに設けられた電源スイッチ9の下側には、電源スイッチ9に連動してヒータ12への通電を制御する接点部が配置されている。また、本実施形態の電気ケトルでは、把手2内の空間19に貯水空間13からの蒸気を誘導して、その蒸気温度により貯水空間13内のお湯が沸いたことを検出できるように、例えば温度によりその形状が変化するバイメタルスイッチからなる沸騰検出部20を備えている。
【0047】
本体部1が載置される電源台4は、本体部1底部の下面21に対応した形状の定置面22を有している。そして、この定置面22に本体部1の下面21が載置された際に、本体部1の電源プラグ23が電源台4の電源ソケット24に勘合するようになっている。このように、本体部1が電源台4上に載置されることで、商用電源に差し込まれる図示しない電源ケーブルを介して電源台4に供給される電力が、本体部1の下部に配置されたヒータ12に供給可能となる。
【0048】
本実施形態の電気ケトルは、筐体10の内側に形成された貯水空間13の上部に樹脂製のカバー部材31が配置されている。
【0049】
図4にその断面構成を示すように、カバー部材31は、全体として環状であり、上端面36で内側に折り返された折り返し部37を有する上部32と、カバー部材31の内側向かって突出して形成された突出部39を有する中間部33と、カバー部材31において内径が最も大きな部分である下部34との、大きく3つの部分から形成されている。また、カバー部材31の外殻35の外表面が、カバー部材31が配置される部分の筐体10の内面に密着することができるように、カバー部材31の外径は、それが配置される部分の筐体10の内径と一致する大きさとなっている。
【0050】
カバー部材31の上部32は、上端部36でカバー部材31の内側方向に折り返された折り返し部37を有していて、カバー部材31の外殻35と折り返し部37との二重構造となっている。図3に示すように、本構成例では、カバー部材31の上部32が、電気ケトル本体部1の筐体10上部の二重構造部10dにおける外殻部10aと折り返し部10cとの間の間隙に圧入される。このとき、カバー部材31が筐体10の二重構造部10dにしっかりと固定されるよう、カバー部材31上部の折り返し部37の内面には、複数本の環状の突起38が形成されている。
【0051】
カバー部材31の中間部33には、カバー部材31の外殻35の内表面から内側に向かって斜め上方に突出する突出部39が形成されている。図2および図3に示すように、カバー部材31の上部32が筐体10上部の二重構造部10dの間隙に圧入されてカバー部材31が筐体10内に固着された際、突出部39の先端部分の上面40は、筐体10の内側に突出した環状の鍔部10eの下側の面に当接する。また、このとき、突出部39の先端の上面40の内側の端部41は、鍔部10eの内側の端部と同じ位置となる。このように突出部39の先端を筐体10の鍔部10eの形状と対応させることで、突出部39の内側表面が、貯水空間13の上端部に配置された上方の径が下方の径よりも小さく形成された傾斜面39aとなり、本体部1を傾けて注口部5からお湯を注ぐときに、筐体10の内側に突出した鍔部10eでお湯が遮られることを防止でき、本体部1内の湯のこりを解消することができる。
【0052】
カバー部材31の下部34の厚みは、カバー部材31の外殻35の厚みそのままであるため、下部34はカバー部材31の中で内径が最も大きな部分となる。なお、本実施形態の電気ケトルのカバー部材31では、カバー部材31の下端部が、下端側に行くほど外側に広がる傾斜面42となっていて、カバー部材31の外殻35の厚さの分の段差によって湯のこりが生じることを回避できる。
【0053】
図2および図3に示すように、本実施形態の電気ケトルでは、カバー部材31と本体部1に挿入された底部ユニット11の上面11aとの間に板状の支持板43が、円周方向にそれぞれ90度の間隔を有して全部で4枚配置されている。支持板43は、その上端がカバー部材31の突出部39の傾斜面39aである内側表面に当接し、下端が底部ユニット11の上面11aに当接することで、筐体10に底部ユニット11を嵌入して固着する際に、カバー部材31を筐体10上部の二重構造部10d側に押しつけて、カバー部材31をより強固に固着している。
【0054】
このように、第1の実施形態としてその構成を示した電気ケトルでは、本体部1の筐体10が構成する貯水空間13の上部にカバー部材31を配置することで、開口部近傍を除いて一重の構造となっている筐体10の強度を高めるとともに、筐体10に形成された鍔部10eの下面で湯のこりが生じることを効果的に回避することができる。特に、本構成例では、カバー部材31が支持板43によって筐体10下部に嵌入された底部ユニット10の上面10aに支えられる構成となっているため、カバー部材31が配置されている部分に限らず筐体10全体の剛性をより一層高めることができる。
【0055】
なお、本発明の電気ケトルにおいて、筐体10内の貯水空間13の上部に環状のカバー部材31を配置することは必須の要件ではなく、筐体10全体の剛性が単独で確保できる場合や、筐体10の内側の形状に起因する湯のこりの影響もほとんど無視できるほど小さい場合などでは、カバー部材31を用いない構成も考え得る。
【0056】
また、カバー部材31を用いて、筐体10の剛性を高める場合であっても、カバー部材31の形状や筐体10の内面側の形状によって、筐体内部の湯のこりの影響が問題とならないのであれば、図4に示した本実施形態で説明するカバー部材31のような突起部39を中間部33の内表面に形成して、湯のこりを防ぐための傾斜面を形成する必要が無い場合も考えられる。
【0057】
また、図2および図3において、本実施形態の電気ケトルでは互いに90度ずつ間隔を置いて配置された4枚の支持板43でカバー部材31を支持する構成を示した。しかし、支持板43の枚数やその配置位置はこれに限らず、支持板を3枚、もしくは、5枚以上用いることもできるし、その配置間隔も必ずしも均等とする必要はない。さらに、例えばカバー部材31を2重成型(追加成型)により形成する場合や、カバー部材31を筐体10内に溶着する場合、また、カバー部材の上部32が筐体10の二重構造部10dの外殻部10aと折り返し部10cとの間の間隙に圧入させることにより確実に固着できる場合などでは、支持板43自体を用いなくてよい場合も考えられる。
【0058】
さらに、本実施形態では、筐体10の折り返し部10cの下端部に筐体10の内側に向かって突出する鍔部10eを設け、蓋体3の底面3aの周囲部分が当接する構成を例示した。しかし、本体部1と蓋体3とが水密に固着されることを確保するために、筐体10側に設けられる蓋体3の底面3aの周囲部が当接する場所としては、例えば、図4に示したカバー部材31の突出部39の先端部の上面40を用いることや、カバー部材に内側に突出する鍔部を形成してその上面を用いるなど、さまざまな形態が考えられる。なお、カバー部材に蓋体3の底面3aの周囲部が当接する場所を形成する場合には、筐体10の内面をより簡単な形状とすることができるので筐体10を設計、製造する上では有利であるが、上記実施形態で説明した支持板43を用いるなどして、カバー部材31を筐体10の内面の所定の位置に確実に固着することが、本体部が転倒してしまった場合の湯こぼれを防止する構成として重要である。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の電気ケトルの構成例では、本体部1の筐体10の上部の折り返し部10cが外殻部10aと二重構造部10dを構成することで、転倒時止水機能を備えた蓋体3を筐体10に対して水密に固着することができ、転倒時の湯こぼれを確実に防止することができる。また、同時に筐体10自体が貯水部を兼ねる構成とすることができるため、安全面に配慮するとともに軽量かつ低コスト化が可能な簡易な構成の電気ケトルを実現することができる。
【0060】
(第2の実施形態)
次に、本発明にかかる電気ケトルの内部構成の別の構成例を、第2の実施形態として説明する。
【0061】
なお、第2の実施形態として説明する電気ケトルの構成例は、本体部の内部の構成のみが、上記第1の実施形態の電気ケトルと異なり、電気ケトルが本体部、把手、蓋体、電源台から構成されるという外観上の全体構成は、図1を用いて説明した第1の実施形態の電気ケトルの外観構成と同じである。
【0062】
このため、本実施形態の電気ケトルの構成例の説明において、外観構成の説明は省略する。また、本体部以外の把手、蓋体、電源台それぞれの基本的な構成内容も、第1の実施形態の電気ケトルと同じく公知の具体的構成を用いることができるため、各構成部分には図2および図3と同じ符号を振るとともにその詳細の説明は省略する。
【0063】
図5は、第2の実施形態の電気ケトルを側面側から見た場合の断面構成図であり、第1の実施形態の図2に相当する図面である。また、図6は、第2の実施形態の電気ケトルを把手の側である背面側から見た場合の断面構成図であり、第1の実施形態の説明における図3に相当する図面である。
【0064】
図5および図6に示すように、本実施形態の電気ケトルの本体部51は、一体成型された樹脂製の筐体52が外殻部52aを構成している。筐体52は、蓋体3が配置される開口部側の上端部52bで内側に折り返されていて、折り返し部52cが形成されている。本実施形態の電気ケトルの折り返し部52cは、その先端が筐体52の底部の底部ユニット53の近傍に位置するように形成されている。したがって、底部ユニット53が配置される本体部51の底部近傍部分を除く本体部51の高さ方向のほぼ全体に渡って、外殻52aと折り返し部52cとが間隙52eを間に介した二重構造部52dを構成している。このように、第2の実施形態として示す本体部51の構成例は、折り返し部52cが本体部51の底部に近傍にまで形成されている点が、蓋体3が挿入される部分のみが二重構造部10dを形成していた第1の実施形態の筐体10の構成と異なる。
【0065】
また、本実施形態の本体部51を構成する筐体52の折り返し部52cには、蓋体3が挿入される部分の下端に位置して環状の段差部52fが形成されていて、筐体52の二重構造部52dの内径は、段差部52fよりも開口部近傍側の内径が底部側の内径よりも大きく形成されている。そして、筐体52の段差部52fよりも開口部側の部分に蓋体3が固着されると、筐体52の全周に渡って形成されている段差部52fの上面が、蓋体3の底面3aの周辺部分にパッキン材3bを介して当接することで、蓋体3によって本体部51の開口部を封着することができる。このため、本実施形態の電気ケトルでも、本体部51を誤って転倒させてしまった場合でも、本体部51を構成する筐体52と蓋体3との間からの湯こぼれを防止することができる。
【0066】
本実施形態の電気ケトルの筐体52の開口部近傍の折り返し部52cには、蓋体3の着脱レバー6に連動する係合片6aが係合される係止部26が形成されていて、押圧スプリング18の押圧力によって係合片6aと係止部26とが係合して、蓋体3を本体部51の開口部を封鎖するように固着することができる。
【0067】
図5に示すように、本実施形態の本体部51においても、電気ケトルの前面側に位置する筐体52の開口部側の端部近傍に注口部53が形成されている。蓋体3は、必要なときにのみ筐体52内に貯水された液体を注口部53へと注出させることができるように給湯スイッチ7に連動する開閉機構を備えている。また、蓋体3は、蒸気を外部に逃がすための蒸気放出口8が設けられているが、転倒時止水弁17を備えることで本体部51が転倒した場合の湯こぼれを防止できるようになっている。このように、本実施形態の電気ケトルにおいても、蓋体3が本体部51との間に水密性を保って固着されるとともに、転倒時止水機構を備えていて、電気ケトルの本体部51が誤って倒れてしまった場合でも、内部のお湯がこぼれることを防止する安全面を考慮した設計となっている。
【0068】
筐体52の折り返し部52cの底部側の端部よりもさらに底部側には、底部ユニット53が配置されている。底部ユニット53は、筐体52dの折り返し部52cの先端に環状のパッキン材55を介して水密に固着された蒸発皿56と、蒸発皿56に固定された基底部57とを備えている。蒸発皿56の内部には本体部51内の液体を温めるヒータ58が内蔵されている。また、基底部57には、本体部51が電源台4上に載置されたときに電源台4の電源ソケット24に勘合する電源プラグ59が配置されていて、本体部51が電源台4上に載置されることで、商用電源に差し込まれる図示しない電源ケーブルを介して電源台4に供給される電力がヒータ58に供給可能となって、本体部51内でお湯を沸かすことができる。
【0069】
なお、本実施形態の電気ケトルでは、底部ユニット53がネジ止めされる筐体52の底部部分の強度を向上するために、4箇所に肉厚のボス52hが設けられている。このボス52hが、必要に応じて適宜設ければよいものであることは言うまでもない。
【0070】
本実施形態の電気ケトルでは、筐体52の段差部52fと筐体52の底部に配置された底部ユニット53の蒸発皿56の上面56aとの間に位置する、筐体52の折り返し部52cの内側表面52gが、液体を貯水する貯水容器をも兼ねている。すなわち、段差部52fと底部ユニット53の蒸発皿56の上面56aとの間の折り返し部52cに囲まれた部分が、貯水空間60となっている。
【0071】
このように本実施形態の電気ケトルにおいても、本体部51の外殻を構成する筐体52の一部が貯水容器を兼ねるために、簡易な構成で本体部51を構成することができ、電気ケトルの軽量化および低コスト化を実現することでできる。
【0072】
なお、本実施形態の電気ケトルでは、貯水容器の側面を構成する筐体52の部分が二重構造部52dとなっているため、断熱性が高まり、貯水空間60内の液体の温度が直接筐体52の外殻部52aに伝わりにくくなる。このため、貯水空間60に熱湯が貯水されている場合にユーザが本体部1の表面である外殻部52aを触ったとしても、熱さを感じる危険を低減することができる。また、同時に、貯水空間60が二重構造部52d内に形成されるために、保温性が高まり、沸かしたお湯が冷めにくくなるという効果を得ることができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態として、転倒時止水機能を備えた蓋体を水密に固着することができ、かつ、本体部の外殻を構成するとともに貯水容器を兼ねる筐体の具体的な構成例を説明した。本発明の電気ケトルでは、上記説明した筐体で本体部の外殻を構成することで、従来の樹脂または金属製の筐体にステンレス製の貯水容器を備えるという二重構成の本体部と比べて、簡易な構成でありながら湯こぼれの防止を実現できるという安全性に配慮した電気ケトルを実現することができる。
【0074】
なお、上記本発明の説明において、蓋体の構成はあくまで例示に過ぎず、本体部が転倒したときに内部のお湯がこぼれ出ないような転倒時止水機構を備えた各種の蓋体を、本発明の電気ケトルの蓋体として採用することができる。
【0075】
また、上記2つの実施形態では、本体部の外殻を構成する筐体として、一体成型された樹脂部材からなるものを用いて説明したが、本発明の電気ケトルに用いることができる本体部の筐体としては、一体成型された樹脂製のものに限られず、複数の樹脂部材から筐体を構成することができ、また、金属やガラス製の筐体を用いることもできる。
【0076】
さらに、上記2つの実施形態では、筐体の開口部側に位置する内面に蓋体が配置される部分が、いずれも先端部で折り返された二重構造部を構成するものを例示して説明したが、本発明の電気ケトルにおいて本体部の外殻を構成する筐体として二重構造部を構成するものを用いることは必須ではない。例えば、開口部側の一部が肉厚となっていて、その肉厚部分に蓋体を固着するための係合部が形成され、さらに、蓋体の底面の周囲の部分と当接する面を例えば鍔部として筐体の内面に環状に配置したものなど、蓋体を、筐体との間で水密に、かつ、着脱自在に固着することができる構成を備えるさまざまな形態の筐体を本体部の外殻として使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の電気ケトルは、転倒時の湯こぼれを防止できる安全性と、本体部の簡易な構成とを備えた軽量かつ低コスト化が可能な電気ケトルとして有用である。
【符号の説明】
【0078】
1 本体部
2 把手
3 蓋体
4 電源台
10 筐体
12 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を貯水することができ、電源台に着脱可能に載置される本体部と、
前記本体部の底部に配置された前記本体部内の液体を加熱するヒータと、
前記本体部の開口部を開閉可能に封鎖する蓋体と、
前記本体部の外殻に固着された把手とを備え、
前記蓋体が転倒時止水機能を備えるとともに、前記本体部の外殻を構成する筐体が前記液体を貯水する貯水容器を兼ねることを特徴とする電気ケトル。
【請求項2】
前記筐体は、前記開口部側の端部で内側に折り返された折り返し部を備え、前記折り返し部と前記本体部の外殻を構成する外殻部とで構成される二重構造部の内側に前記蓋体が配置されるとともに、前記二重構造部に前記蓋体を固着するための係止部が形成されている請求項1に記載の電気ケトル。
【請求項3】
前記筐体の内面に環状のカバー部材が配置され、前記カバー部材の上部が前記二重構造部の前記折り返し部と前記外殻部との間の間隙に嵌入されている請求項2に記載の電気ケトル。
【請求項4】
前記カバー部材の上下方向における中間部の内側表面が、上方の径が下方の径よりも小さくなる傾斜面を形成している請求項3に記載の電気ケトル。
【請求項5】
前記筐体の前記折り返し部の下端部が、前記底部の近傍に位置するように形成され、前記二重構造部の前記底部側の内側表面が前記液体を貯水する貯水容器を構成している請求項2に記載の電気ケトル。
【請求項6】
前記二重構造部の前記開口部近傍の内径が、前記二重構造部の前記底部側の内径よりも大きく形成され、前記二重構造部の前記開口部近傍と前記底部側との境界に形成された環状の段差部の上面に、前記蓋体の底面の周囲部分が水密に当接する請求項5に記載の電気ケトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−254202(P2012−254202A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129083(P2011−129083)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】