説明

電気コネクタ

【課題】部位品点の増加を招くことなく、吸着ノズルによる電気コネクタの保持の安定化を図る。
【解決手段】電気コネクタ1は、ハウジング11と可動端子50とを備える。ハウジング11は、同軸プラグが上方から装着可能に形成される装着部12を有し、当該装着部12には、同軸プラグの中心導体が挿入される挿入孔12aが形成されている。可動端子50は、挿入孔12aの下方に位置する被押圧部を有し、当該被押圧部が挿入孔12aから下方に離れるように弾性変形可能に形成されている。そして、被押圧部は、可動端子50の弾性変形前において挿入孔12aを下方から塞ぐように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸プラグを回路基板に接続するための電気コネクタに関し、特に、チップマウンタなどの製造装置による電気コネクタの保持の安定化を図るための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、同軸プラグを回路基板に電気的に接続するための電気コネクタがある。例えば、特許文献1には、無線回路上に配置される電気コネクタであって、当該無線回路を検査するための同軸プラグが装着される電気コネクタが開示されている。この電気コネクタでは、ハウジングの上部に、同軸プラグが装着される円柱状の装着部が形成されている。装着部には、同軸プラグが有するピン状の中心導体が挿入される挿入孔が形成されている。また、装着部の下方には、回路基板の信号用の導体パターンに接続させるための可動端子が配置されている。可動端子は、同軸プラグの装着時に、装着部の挿入孔に挿入された中心導体によって下方に押圧され弾性変形するとともに、同軸プラグの中心導体と導通する。これによって、同軸プラグの中心導体と回路基板の導体パターンとが可動端子を介して導通する。
【0003】
なお、特許文献1の電気コネクタは、可動端子に加えて、弾性変形する前の可動端子と接触する固定端子を有し、同軸プラグの装着時に信号経路を同軸プラグ側に切り換えるスイッチ機能を有している。具体的には、回路基板には、可動端子が取り付けられる信号用の導体パターンと、固定端子が取り付けられる信号用の導体パターンとが形成されている。可動端子が弾性変形する前では、可動端子と固定端子とが接触しており、回路基板に設けられた一対の信号用の導体パターンは、可動端子と固定端子とを介して導通している。一方、同軸プラグの装着時には、装着部の挿入孔からハウジング内に侵入した中心導体によって可動端子が下方に押圧され、固定端子から離れる。これによって、一対の導体パターンの導通が遮断される。また、同軸プラグの中心導体は、可動端子を介して片方の導体パターンと導通する。
【0004】
従来、電気部品の回路基板への取り付け作業は、チップマウンタなどの製造装置によって自動化されており、このような電気コネクタも当該製造装置によって回路基板上に実装されている。製造装置には、吸着ノズルによって電気コネクタを吸引し、保持することによって、回路基板の正規の位置まで電気コネクタを搬送するものがある。このような製造装置を用いる場合、例えば、特許文献2のコネクタのように、挿入孔を上方から覆うキャップ(特許文献2では耐熱性シート)を、予め装着部に取り付けておく場合がある。こうすることによって、吸着ノズルはこのキャップに対して吸着し、吸着ノズルによる電気コネクタの保持の安定化が図られる。
【特許文献1】特開2006−32307号公報
【特許文献2】実開平06−31079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、キャップなどの別部材によって、吸着ノズルによる電気コネクタの保持の安定化を図る構造では、部品点数が増加するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、部位品点の増加を招くことなく、吸着ノズルによる電気コネクタの保持の安定化を図ることのできる電気コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る電気コネクタは、ハウジングと、可動端子とを備える。ハウジングは、同軸プラグが上方から装着可能に形成される装着部を有し、当該装着部には、前記同軸プラグの中心導体が挿入される挿入孔が形成されている。可動端子は、前記挿入孔の下方に位置する被押圧部を有し、当該被押圧部が前記挿入孔から下方に離れるように弾性変形可能に形成されている。そして、前記被押圧部は、前記挿入孔を下方から塞ぐよう配置されている。
【0008】
本発明によれば、可動端子の被押圧部が挿入孔を塞ぐように配置されており、部品点数の増加を生じさせることなく、吸着ノズルによる電気コネクタの保持の安定化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態の例である電気コネクタ1の斜視図であり、図2は電気コネクタ1の分解斜視図である。また、図3は回路基板110上に配置された電気コネクタ1の平面図である。図4は電気コネクタ1の背面図であり、ハウジング11に嵌められている可動端子50が示されている。図5は可動端子50の斜視図である。図6は図3に示すVI−VI線の断面図であり、図7は図3に示すVII−VII線の断面図である。図8及び図9は同軸プラグ100が装着された状態における電気コネクタ1の断面図である。図8は、図6と同様の切断面で得られる断面図であり、図9は、図7と同様の切断面で得られる断面図である。図10は、チップマウンタ等の製造装置が備える吸着ノズル200によって吸着されている電気コネクタ1の断面図であり、図6と同様の切断面で得られる断面図である。
【0010】
図2又は図3に示すように、電気コネクタ1は、回路基板110に設けられた一対の信号用の導体パターン111,112のそれぞれに取り付けられる可動端子50と固定端子60とを有している。また、電気コネクタ1は、回路基板110に設けられたグランド用の導体パターン113,114に取り付けられる一対のグランド端子70,70を有している。
【0011】
電気コネクタ1は、同軸プラグ100を回路基板110に電気的に接続するためのコネクタである(図8及び図9参照)。同軸プラグ100は、例えば、回路基板110を検査するための高周波の信号を回路基板110の導体パターン111に入力するための検査用プラグである。図8及び図9に示すように、同軸プラグ100は、グランド用の外側導体102と信号用の中心導体101とを有している。外側導体102は、筒状に形成されている。中心導体101はピン状に形成され、外側導体102の中心において上下方向(Z1−Z2方向)に延伸するよう配置されている。電気コネクタ1は同軸プラグ100が装着されることによって、同軸プラグ100を回路基板110に電気的に接続する。すなわち、電気コネクタ1は、同軸プラグ100の外側導体102を、導体パターン113,114に接続し、中心導体101を導体パターン111に接続する。以下、電気コネクタ1が備える各部材について詳説する。
【0012】
図1又は図2に示すように、電気コネクタ1は、絶縁体(例えば、樹脂)によって形成されるハウジング11を備えている。ハウジング11の上部には、同軸プラグ100の外側導体102が上方から装着可能となるように形成された装着部12が設けられている。詳細には、装着部12は外側導体102の内側に嵌入可能なように円柱状に形成されている。
【0013】
また、図6又は図7に示すように、装着部12には、当該装着部12を上下方向に貫通する挿入孔12aが形成されている。同軸プラグ100の外側導体102が装着部12に装着された時には、挿入孔12aに中心導体101が挿入され、中心導体101の先端はハウジング11内に侵入する(図8及び図9参照)。
【0014】
また、装着部12の上面は、その上縁12bから装着部12の中心に向かうに従って深くなるよう凹んでいる。すなわち、上縁12bの内側には円錐状のガイド面12dが形成され、当該ガイド面12dは、上縁12bから、挿入孔12aの上縁12cに向かって傾斜している。
【0015】
図2、図6又は図7に示すように、ハウジング11は装着部12の下方にハウジング基部13を有している。ハウジング基部13は、装着部12より大きい概略箱状であり、前壁部14と、後壁部15と、右壁部16と、左壁部17とを有している。これらの壁部によって、固定端子60の先端側と可動端子50の先端側とを収容する収容室13aが構成されている。収容室13aの上方(Z1方向)に装着部12が位置している。収容室13aは、下方(Z2方向)に開口している。可動端子50、固定端子60、及びグランド端子70,70は、ハウジング基部13によって保持されている。
【0016】
電気コネクタ1には2つのグランド端子70,70が設けられている。これらのグランド端子70,70は、挿入孔12aを挟んで反対側に位置している。図2に示すように、グランド端子70は、前後方向(X1−X2方向)に延伸する棒状の基部71と、基部71の両端に位置する取付部72,72とを有している。取付部72、72は、電気コネクタ1の回路基板110への取り付け工程において、半田で導体パターン113,114に取り付けられる。
【0017】
また、グランド端子70は、基部71から上方に延伸する板状の固定部74と、当該固定部74からさらに上方に延伸する接触部73とを有している。図1に示すように、接触部73は、ハウジング11の装着部12の外周面12iに沿って上方に延伸するよう配置される。同軸プラグ100の外側導体102が装着部12に装着された時には、接触部73は外側導体102の内側の面に接触する(図9参照)。なお、ここで説明する例では、図2、図7又は図9に示されるように、外周面12iには上下方向に伸びる収容溝12jが形成され、接触部73はこの収容溝12jに収容されている。また、外側導体102の先端側には凸部102aが形成されている。一方、接触部73の外面、すなわち外側導体102と接する面には窪み部73aが形成されている。そして、外側導体102の装着時には、凸部102aは窪み部73aに嵌る。
【0018】
図7に示すように、ハウジング基部13の右壁部16には、当該右壁部16を上下方向に貫通する保持孔16aが形成され、左壁部17には、当該左壁部17を上下方向に貫通する保持孔17aが形成されている。保持孔16a,17aは、装着部12の外周面12iに形成された収容溝12jの下方に位置し、収容溝12jに連なっている。グランド端子70,70は、この保持孔16a,17aに下方から圧入され、接触部73は収容溝12jに配置されている。固定部74の縁には爪部74a,74aが形成されており、爪部74a,47aは保持孔16a,17aの内面に引っ掛かっている。なお、グランド端子の形状はこれに限られない。例えば、グランド端子には、接触部73に替えて、装着部12を囲む筒状の接触部が設けられてもよい。
【0019】
図2に示すように、固定端子60は、前後方向に長い板状の端子である。固定端子60は、差込部61と取付部62とを有している。取付部62は、固定端子60の前側(X1方向)の端部に設けられている。固定端子60は差込部61と取付部62との間において下方に屈曲しており、取付部62は差込部61より低い位置に位置している。そのため、電気コネクタ1が回路基板110上に配置された時には、取付部62は回路基板110の導体パターン112に接する一方で、差込部61は回路基板110の表面から上方に離れて位置する(図6参照)。取付部62は、電気コネクタ1の回路基板110への取り付け工程において、導体パターン112に半田で取り付けられる。
【0020】
固定端子60は、ハウジング基部13に形成された保持孔14aにおいて保持されている。詳細には、図6に示すように、保持孔14aは、前壁部14を前後方向(X1−X2方向)に貫通するよう形成されている。この保持孔14aの幅は、固定端子60の差込部61の幅に相応している。一方、差込部61の縁には爪部61a,61aが形成されている。そして、差込部61が前方から保持孔14aに圧入され、爪部61a,61aが保持孔14aの内面に引っ掛かることによって、固定端子60はハウジング基部13に固定される。なお、保持孔14aの下方には、前壁部14を前後方向に貫通する貫通路14bが形成されている(図2参照)。この貫通路14bの幅は、固定端子60の差込部61より幅の狭くなっている。
【0021】
差込部61の先端側は収容室13aに配置され、その先端61bは挿入孔12aの下縁12gの手前側(前壁部14側)に位置している。なお、差込部61の下面61cと、挿入孔12aが形成された装着部12の下面12hとが同一平面に位置するように、差込部61は配置されている。差込部61の先端側には、下方に僅かに突出する接触部61dが形成されている。後述するように、固定端子60は、この接触部61dを介して可動端子50に接触する。
【0022】
可動端子50は、収容室13aに収容される被押圧部51を有し、当該被押圧部51は、挿入孔12aの下方に位置している。可動端子50は、板ばねであり、被押圧部51が挿入孔12aから下方に離れるように弾性変形可能に形成されている。
【0023】
可動端子50は、弾性変形する前の状態(以下、通常状態)においては、固定端子60の接触部61dに接触している。そのため、導体パターン111と導体パターン112は、可動端子50と固定端子60と介して導通している。図8又は図9に示すように、装着部12に同軸プラグ100が装着された時には、被押圧部51が、挿入孔12aを通って上方から収容室13aに侵入した中心導体101によって下方に押圧され、可動端子50は弾性変形し、固定端子60から離れる。これによって、導体パターン111と導体パターン112との導通が遮断されるとともに、中心導体101と導体パターン111とが可動端子50を介して導通する。このように、電気コネクタ1は、導体パターン111と導体パターン112との導通を遮断し、回路基板110の信号経路を同軸プラグ100側に切り換えるスイッチ機能を有している。以下、可動端子の各部分について詳細に説明する。
【0024】
図5に示すように、可動端子50は、被押圧部51の他に、左右方向(Y1−Y2方向)に長い板状の基部52と、当該基部52から前方(X1方向)に延伸する一対の右延伸部53と左延伸部54と、右延伸部53と左延伸部54の先端に設けられ、それらの先端を連結する先端連結部55とを有している。また、可動端子50は、その後側(X2方向)の端部に、導体パターン111に取り付けられる取付部57を有している。図6に示すように、可動端子50は、取付部57と基部52との間において下方に屈曲しており、取付部57は、基部52など可動端子50の他の部分に比べて低い位置に位置している。そのため、電気コネクタ1が回路基板110上に配置された時には、取付部57は導体パターン111に接する一方で、基部52など可動端子50の他の部分は回路基板110の表面から上方に離れて位置する。
【0025】
図4又は図6に示すように、ハウジング基部13の後壁部15には、当該後壁部15を前後方向に貫通する保持孔15aが形成されている。この保持孔15aの幅は、基部52の幅(左右方向の長さ)に相応しており、可動端子50は後方から保持孔15aに圧入されている。基部52の縁には、保持孔15aの内面に引っ掛かる爪部52a,52aが形成されており(図5参照)、可動端子50はハウジング基部13に固定されている。
【0026】
なお、上述したように、固定端子60は、前壁部14に形成された保持孔14aに前方から圧入されており、可動端子50と固定端子60の圧入方向は、互いに反対方向となっている。そして、互いに反対方向から圧入された可動端子50と固定端子60の先端側は、共に収容室13aに収容されている。
【0027】
図5に示すように、基部52の左右方向の端部には、前方(X1方向)に突出するストッパ52b,52bが形成されている。一方、保持孔15aの奥部には、ストッパ52b,52bに対向する壁(不図示)が形成されている。これによって、可動端子50の保持孔15aにおける位置が規定されている。すなわち、ストッパ52b,52bが保持孔15aの奥部に形成された壁に当接することによって、可動端子50の前方への移動が規制されている。
【0028】
右延伸部53と左延伸部54は、基部52における左右方向に離れた位置から前方(収容室13a側)に延伸している。右延伸部53と左延伸部54は、それらの先端に近づくに従って細くなるよう形成されている。先端連結部55は、左右方向に長い板状であり、右延伸部53と左延伸部54の先端とを連結している。図6に示すように、先端連結部55は、固定端子60の差込部61の下方に位置し、通常状態においては、接触部61dに当接している。なお、通常状態において先端連結部55を接触部61dに押し付ける力が作用するように、可動端子50は設けられている。例えば、先端連結部55を接触部61dに押し付ける力が働くように、基部52の高さや接触部61dの高さなどが設定されている。
【0029】
図5に示すように、被押圧部51は、先端連結部55から、右延伸部53と左延伸部54の延伸方向とは反対方向(X2方向)に延伸し、右延伸部53と左延伸部54の間に位置している。すなわち、被押圧部51は、先端連結部55の左右方向の中心から基部52側に延伸している。
【0030】
図6に示すように、被押圧部51は挿入孔12aの下方に位置し、通常状態では挿入孔12aを下方から塞ぐように配置される。詳細には、被押圧部51は、上下方向において挿入孔12aに近接しており、その表面は挿入孔12aの下縁12gに沿うように位置している。また、ここで説明する例では、被押圧部51は、挿入孔12aより大きい板状であり、挿入孔12aが形成された装着部12の下面12hと、上下に向き合うよう配置されている。すなわち、通常状態においては、被押圧部51は下面12hに対して略平行となっている。
【0031】
なお、この説明では被押圧部51は下面12hに対して略平行に設けられているが、被押圧部51は下面12hに対して傾斜するように配置され、その表面が、挿入孔12a側に隆起し、当該挿入孔12aの下縁12gに沿うように位置してもよい。また、被押圧部51の表面に、挿入孔12aに嵌る凸部が形成され、当該凸部によって挿入孔12aが塞がれてもよい。
【0032】
また、ここで説明する例では、被押圧部51に加えて、右延伸部53及び左延伸部54も装着部12の下面12hに対して平行に配置されている。しかしながら、被押圧部51が下面12hと略平行に配置される一方で、右延伸部53又は左延伸部54は、通常状態において下面12hに対して傾斜していてもよい。このように被押圧部51と基部52との間に、右延伸部53、左延伸部54及び先端連結部55が介在しているため、可動端子50の形状やハウジング11の形状に自由度を増すことができる。つまり、被押圧部51を下面12hに対して平行に設ける一方で、右延伸部53や左延伸部54は下面12hに対して傾斜させることができるので、被押圧部51を基部52とは異なる高さ(回路基板110の表面からの距離)に設けることができる。その結果、基部52を保持する保持孔15aを、下面12hより低い位置或いは高い位置に形成できる。
【0033】
図10に示すように、チップマウンタなどの製造装置が有する吸着ノズル200は、円柱状に形成され、当該吸着ノズル200の中心には、空気を吸い込むための空気流路201が形成されている。電気コネクタ1を回路基板110上の正規の位置まで搬送する製造工程では、吸着ノズル200は、空気流路201が挿入孔12aの上方に位置するように、装着部12に装着される。電気コネクタ1では、被押圧部51が挿入孔12aを下方から塞ぐように配置されており、空気流路201から空気が吸い込まれたときに、外部の空気がハウジング11内に浸入し、挿入孔12aを通って空気流路201に流れ続けることが抑制される。これによって、吸着ノズル200による電気コネクタ1の保持の安定化が図れる。なお、図6に示す例では、ハウジング11や固定端子60等の製造誤差に起因する固定端子60と可動端子50の接触不良の発生を抑制するために、固定端子60の接触部61dの先端は、下面12hより僅かに低い位置に位置し、被押圧部51と下面12hとの間には隙間が設けられている。しかしながら、この隙間は微小であるため、吸着ノズル200が装着部12に吸着した時には、空気流路201への空気の流れは、被押圧部51によって抑制される。
【0034】
電気コネクタ1の動作について説明する。上述したように、通常状態では、可動端子50の先端連結部55と固定端子60の接触部61dは接触しており、導体パターン111と導体パターン112は可動端子50と固定端子60とを介して導通している。図8に示すように、装着部12に同軸プラグ100が装着された時には、挿入孔12aから挿入される中心導体101によって被押圧部51が下方に押圧される。これによって、被押圧部51が挿入孔12aから離れるように可動端子50が弾性変形する。すなわち、右延伸部53と左延伸部54は、基部52を基点として下方に撓み、被押圧部51は先端連結部55を基点として下方に撓む。そして、右延伸部53と左延伸部54の先端に位置する先端連結部55は、接触部61dから離れる。これによって、導体パターン111と導体パターン112との導通が遮断される。また、中心導体101と被押圧部51とが接触することによって、当該中心導体101と導体パターン111とが可動端子50を介して導通する。また、図9に示すように、同軸プラグ100の装着時には、外側導体102の内側に装着部12が嵌る。そして、接触部73の窪み部73aに凸部102aが嵌り、グランド端子70が外側導体102と接触部73を介して接触し、外側導体102とグランド用の導体パターン113,114とが導通する。
【0035】
以上説明した電気コネクタ1では、可動端子50は、ハウジング11に形成された挿入孔12aの下方に位置する被押圧部51を有している。そして、この被押圧部51は、挿入孔12aを下方から塞ぐように配置される。これによって、部品点数の増加を生じさせることなく、吸着ノズル200による電気コネクタ1の保持の安定化を図ることができる。
【0036】
また、被押圧部51は板状であり、挿入孔12aが形成された装着部12の下面12hに対して向き合うように配置されている。これによって、簡素な形状の可動端子50によって、吸着ノズル200による電気コネクタ1の保持の安定化を図ることができる。
【0037】
また、可動端子50は板ばねであり、可動端子50の弾性変形前においては挿入孔12a側への力が被押圧部51に作用するよう設けられている。これによって、被押圧部51が下面12hから大きく離れて位置することが抑制される。
【0038】
また、電気コネクタ1は、可動端子50の上方に配置され当該可動端子50と接する接触部61dを有する固定端子60を備えている。これによって、電気コネクタ1は、導体パターン111と導体パターン112との導通を遮断し、回路基板110の信号経路を同軸プラグ100側に切り換えるスイッチ機能を有することができる。
【0039】
また、可動端子50は、ハウジング11に固定される基部52と、基部52から延伸する延伸部(以上の説明では右延伸部53と左延伸部54)と、右延伸部53と左延伸部54の先端に位置する先端連結部55とを含んでいる。そして、被押圧部51は、先端連結部55から右延伸部53と左延伸部54の延伸方向とは反対方向に延伸するよう形成されている。これによって、被押圧部51が基部52から直接的に延伸するように形成される場合に比べて、被押圧部51から基部52に至るまでの距離を長くできる。その結果、可動端子50の可動範囲(被押圧部51の移動量)を大きくできる。また、基部52の高さと被押圧部51の高さと必ずしも一致させる必要がなくなり、可動端子50の形状やハウジング11の形状に自由度を増すことができる。例えば、通常状態において右延伸部53や左延伸部54が傾斜するように可動端子50を形成することによって、基部52を被押圧部51より高い位置或いは低い位置に設けることができる。その結果、基部52を保持する保持孔15aを、下面12hより低い位置或いは高い位置に形成できる。
【0040】
また、可動端子は、左右一対の右延伸部53と左延伸部54とを備え、被押圧部51は、右延伸部53と左延伸部54との間に位置している。これによって、同軸プラグ100を装着部12に装着した時に、可動端子50が中心導体101から受ける力が、当該可動端子50に対して左右対称にかかる。その結果、電気コネクタ1の耐久性を向上できる。
【0041】
なお、本発明は以上説明した電気コネクタ1に限られず、種々の変更が可能である。例えば、以上の説明では、被押圧部51は装着部12の下面12hから下方に僅かに離れて位置している。しかしながら、被押圧部51は下面12hに接するように配置されてもよい。
【0042】
また、ここでは、電気コネクタ1が、可動端子50に加えて、固定端子60を有する場合を例にして説明した。しかしながら、本発明は、可動端子50のみを有する電気コネクタに適用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態の例である電気コネクタの斜視図である。
【図2】電気コネクタの分解斜視図である。
【図3】電気コネクタの平面図である。
【図4】電気コネクタの背面図であり、ハウジングに嵌められている可動端子が示されている。
【図5】電気コネクタが有する可動端子の斜視図である。
【図6】図3に示すVI−VI線の断面図である。
【図7】図3に示すVII−VII線の断面図である。
【図8】図6と同様の切断面で得られる断面図であり、同軸プラグが装着された状態が示されている。
【図9】図7と同様の切断面で得られる断面図であり、同軸プラグが装着された状態が示されている。
【図10】図6と同様の切断面で得られる断面図であり、吸着ノズルによって吸着されている状態が示されている。
【符号の説明】
【0044】
1 電気コネクタ、11 ハウジング、12 装着部、12a 挿入孔、12b 上縁、12c 上縁、12d ガイド面、12g 下縁、12h 下面、12i 外周面、12j 収容溝、13 ハウジング基部、13a 収容室、14 前壁部、14a 保持孔、14b 貫通路、15 後壁部、15a 保持孔、16 右壁部、16a 保持孔、17 左壁部、17a 保持孔、50 可動端子、51 被押圧部、52 基部、52a 爪部、52b ストッパ、53 右延伸部、54 左延伸部、55 先端連結部、57 取付部、60 固定端子、61 差込部、61a 爪部、61b 先端、61c 下面、61d 接触部、62 取付部、70 グランド端子、71 基部、72 取付部、73 接触部、73a 窪み部、74 固定部、74a 爪部、100 同軸プラグ、101 中心導体、102 外側導体、102a 凸部、110 回路基板、111,112,113,114 導体パターン、200 吸着ノズル、201 空気流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸プラグが上方から装着可能に形成されるとともに当該同軸プラグの中心導体が挿入される挿入孔が形成された装着部を有するハウジングと、
前記挿入孔の下方に位置する被押圧部を有し、当該被押圧部が前記挿入孔から下方に離れるように弾性変形可能に形成された可動端子と、を備え、
前記被押圧部は、前記挿入孔を下方から塞ぐように配置される、
ことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の電気コネクタにおいて、
前記被押圧部は板状であり、前記挿入孔が形成された前記装着部の下面に対して向き合うよう配置される、
ことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気コネクタにおいて、
前記可動端子は板ばねであり、前記挿入孔側への力が前記被押圧部に作用するよう設けられる、
ことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項4】
請求項3に記載の電気コネクタにおいて、
前記可動端子の上方に配置され当該可動端子と接する接触部を有する固定端子をさらに備える、
ことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の電気コネクタにおいて、
前記可動端子は、前記ハウジングに固定される基部と、前記基部から延伸する延伸部と、前記延伸部の先端に位置する先端部とを含み、
前記被押圧部は、前記先端部から前記延伸部の延伸方向とは反対方向に延伸するよう形成されている、
ことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項6】
請求項5に記載の電気コネクタにおいて、
前記可動端子は、前記延伸部として左右一対の右延伸部と左延伸部とを備え、
前記被押圧部は、前記右延伸部と前記左延伸部との間に位置している、
ことを特徴とする電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−9750(P2010−9750A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164065(P2008−164065)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(591043064)モレックス インコーポレイテド (441)
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
【Fターム(参考)】