説明

電気コネクタ

【課題】端子のたわみ量を所定の範囲内に収めつつ、端子に所望の圧力を生じさせることができる電気コネクタを提供すること。
【解決手段】本発明の電気コネクタ11は、接続対象物との接触部側を自由端、固定部側を固定端として、接続対象物への圧力によって電気的接続を実現する板ばね状の複数の端子29を有し、これらの端子29は、端子29の自由端と固定端との間に位置する突出部115a〜115eを支点として動作が可能になっており、これらの突出部115a〜115eより接触部側において、接続対象物が配される方向に湾曲した部分を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタ、特に、板ばね状の複数の端子を有する電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器同士の電気的接続を実現するために、さまざまな構造の電気コネクタが用いられている。例えば、特許文献1には、銅合金板からなるカンチレバーコンタクトを、互いに対向するように並列配置した構造の電気コネクタが開示されている。当該電気コネクタに、接続対象物が結合されると、板ばね状のカンチレバーコンタクトの接触部が押圧されて、カンチレバーコンタクトが弾性変形する。当該電気コネクタでは、このようなカンチレバーコンタクトの弾性変形によって生じる圧力を用いて、電気的接続を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−331912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような板ばね状の端子を用いる電気コネクタでは、端子の長さを、接続対象物の接続部の長さ以上にすることが必要になる。端子の長さが接続部の長さ未満の場合には、接続部を電気コネクタ内に完全に挿入することができず、電気的接続が不完全になる恐れがあるためである。
【0005】
また、端子が短い場合には、接続対象物との結合による端子への負荷が大きく、端子の変形等によって接続機能が低下しやくなる傾向にある。このため、繰り返しの着脱による端子の機能劣化を抑制して、電気コネクタの信頼性を確保するという観点からも、端子は、ある程度長いことが望まれる。
【0006】
一方で、端子を長くする場合には、十分な圧力による良好な電気的接続を実現するために、端子のたわみ量(自由端の変位量)を大きくせざるを得ない。板ばねのたわみ量は、通常、ばね長の3乗と、板ばねにかかる荷重(板ばねが発生する力に等しい)との積に比例するためである。つまり、端子が長くなると、端子のたわみ量を所定の範囲内に収め、かつ、目的とする圧力を端子に生じさせることが難しくなる。端子のたわみ量が大きくなると、他の部材との接触によるショートなどの問題が生じる。また、これを回避するために、電気コネクタを大型化せざるを得ないという問題も生じる。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、端子のたわみ量(変位量)を所定の範囲内に収めつつ、端子に所望の圧力を生じさせることができる電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電気コネクタは、接続対象物との接触部側を自由端、固定部側を固定端として、前記接続対象物への圧力によって電気的接続を実現する板ばね状の複数の端子を有し、前記端子は、前記端子の自由端と固定端との間に位置する突出部を支点として動作が可能になっており、前記突出部より前記接触部側において、前記接続対象物が配される方向に湾曲した部分を有することを特徴とする。
【0009】
この構成において、接触部に対して上述の湾曲方向と逆向きの荷重が掛かると、自由端と突出部との間、および突出部と固定端との間には、たわみが発生する。これは、自由端と突出部との間の部分と、突出部と固定端との間の部分とが、いずれも板ばねとして機能することを意味するものである。つまり、この構成では、上述の二つの部分のたわみによって生じる力を用いることが可能である。よって、自由端と突出部との間のたわみ量(変位量)が小さくとも、接続対象物に対する大きな圧力を得ることが可能になるため、端子のたわみ量(変位量)を所定の範囲内に収めつつ、端子に所望の圧力を生じさせることができる。
【0010】
また、本発明の電気コネクタは、接続対象物との接触部側を自由端、固定部側を固定端として、前記接続対象物への圧力によって電気的接続を実現する板ばね状の複数の端子と、前記端子の一部を覆うカバーと、前記端子の自由端と固定端との間に、前記カバーと接するように設けられた保持部材と、を有し、前記端子は、前記保持部材より前記接触部側において、前記接続対象物が配される方向に湾曲した部分を有し、前記カバーと前記保持部材とは、前記接触部に荷重が掛かることで前記保持部材の動作を可能とする突出部を介して接することを特徴とするものであっても良い。
【0011】
また、本発明の電気コネクタは、ハウジングと、ハウジングに固定され、接続対象物との接触部側を自由端、前記ハウジングへの固定部側を固定端として、前記接続対象物への圧力によって電気的接続を実現する板ばね状の複数の端子と、前記ハウジングおよび前記複数の端子の一部を覆うカバーと、前記端子の自由端と固定端との間に、前記カバーと接するように設けられた保持部材と、を有し、前記端子は、前記保持部材より前記接触部側において、前記接続対象物が配される方向に湾曲した部分を有し、前記カバーと前記保持部材とは、前記接触部に荷重が掛かることで前記保持部材の動作を可能とする突出部を介して接することを特徴とするものであっても良い。
【0012】
これらの構成でも、自由端と保持部材(または突出部)との間の部分と、保持部材(または突出部)と固定端との間の部分とが、いずれも板ばねとして機能するため、当該二つの部分のたわみによって生じる力を用いることが可能である。よって、自由端と保持部材(または突出部)との間のたわみ量が小さくとも、接続対象物に対する大きな圧力を得ることが可能になるため、端子のたわみ量を所定の範囲内に収めつつ、端子に所望の圧力を生じさせることができる。
【0013】
上述の電気コネクタにおいて、前記保持部材は、前記複数の端子が並列に配列するように前記複数の端子に共通に設けられることが好ましい。この場合には、保持部材によって複数の端子を束ねることになるため、各端子が接続対象物に及ぼす力を均等にすることができる。このため、良好な電気的接続を実現することができる。
【0014】
また、前記突出部と前記自由端との間隔が、前記複数の端子の配列方向中央より端で大きくなるような複数の前記突出部を有することが好ましい。この場合には、電気コネクタ中央部の端子の動作に主として関与する突出部より、電気コネクタ端部の端子の動作に主として関与する突出部を、電気コネクタの後方寄りに配することになる。電気コネクタのカバーは中央部においてたわみやすくなっており、これに伴い、中央部の端子では、端部の端子より、接続対象物への圧力を生じにくい。このため、中央部の端子の動作に主として関与する突出部を前方に配して、接続対象物への圧力を生じやすくすることで、良好な電気的接続を実現することができる。
【0015】
また、前記突出部は前記保持部材の一部であることが好ましい。この場合には、保持部材の製造時に、併せて突出部を形成することができるため、突出部に相当する部材を別に製造する場合と比較して、部品点数を減らし、作製工程を簡略化することができる。または、前記突出部は前記カバーの一部であってもよい。この場合も、カバーの製造時に、併せて突出部を形成することができるため、突出部に相当する部材を別に製造する場合と比較して、部品点数を減らし、作製工程を簡略化することができる。また、前記保持部材は絶縁材料でなり、前記カバーは導電材料でなることが好ましい。この場合には、保持部材が絶縁体であるため、端子同士のショートを防止できると共に、端子とカバーとのショートを防止できる。
【0016】
また、前記複数の端子は、インサート成型により前記保持部材と一体化されることが好ましい。この場合には、インサート成型の手法によって複数の端子と保持部材とを一体化するため、組み立て工程数を削減して、電気コネクタの生産性を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電気コネクタは、突出部を支点として動作が可能な構成の端子を有している。このため、端子のたわみ量(自由端の変位量)を所定の範囲内に収めつつ、端子に所望の圧力を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電気コネクタの外観を示す斜視図である。
【図2】上記実施の形態に係る電気コネクタの内部構造を示す斜視図である。
【図3】上記実施の形態に係る電気コネクタの内部構造を示す斜視図である。
【図4】上記実施の形態に係る電気コネクタの内部構造を示す断面図である。
【図5】上記実施の形態に係る電気コネクタに接続対象物が接続される前の初期状態を示す部分断面図である。
【図6】上記実施の形態に係る電気コネクタに接続対象物が接続される様子を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態に係る電気コネクタ11の外観を示す斜視図である。なお、以下では、電気コネクタ11の外観に対応させて、図1の左下方向(Y方向)を「前」と呼び、同図の右上方向を「後」と呼ぶものとする。また、図1の上方向(Z方向)を「上」と呼び、同図の下方向を「下」と呼び、同図の右方向(X方向)を「右」と呼び、同図の左方向を「左」と呼ぶものとする。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態に係る電気コネクタ11は、合成樹脂材料などの絶縁材料により成型される前部ハウジング21および下部ハウジング23と、金属薄板材料などの導電材料に打ち抜き加工や折り曲げ加工などを施して形成される内側カバー25および外側カバー27とを備えている。なお、内側カバー25や外側カバー27は、合成樹脂材料などの絶縁材料により成型されても良い。
【0022】
下部ハウジング23は、略直方体形状の左側壁部101aおよび右側壁部101bが左右に配されて連結された構造を有しており、左側壁部101aおよび右側壁部101bの間には、内側カバー25が嵌め込まれている。内側カバー25は、前方から後方にかけて伸長する中空の筒状物であって、筒の底面に相当する前面は、左右方向が長手方向である略長方形状の右下および左下の角が落ちた略六角形状となっている。内側カバー25は、前面の形状と略相似形状の開口部105を有しており、内側カバー25内部の空間には、当該開口部105と形状が合致する前部ハウジング21が設けられている。また、下部ハウジング23および内側カバー25の外周には、開口部107を有する外側カバー27が設置されている。
【0023】
前部ハウジング21の前面には、略長方形状の開口部109が存在し、当該開口部109内の上下には、複数の端子29が互いに略平行に配されている。この電気コネクタ11において、開口部109内に接続対象物の接続部が嵌め込まれると、接続部からの荷重によって開口部109内の複数の端子29がたわみ、そのたわみ量に応じた圧力を接続部におよぼす。この圧力によって、電気コネクタ11と接続対象物とが電気的に接続される。
【0024】
電気コネクタ11の内部構造および各構成要素の細部について図2〜図4を参照して説明する。図2および図3は、本実施の形態に係る電気コネクタ11の内部構造を説明するための斜視図である。また、図4は、本実施の形態に係る電気コネクタ11の内部構造を説明するための断面図である。ここで、図2では、主要な構成要素を分離した状態で示している。また、図3では、説明の便宜上、電気コネクタ11から内側カバー25および外側カバー27を取り除いた状態について示している。以下において、「前」、「後」、「上」、「下」、「左」、「右」の各方向は、図1と同様に電気コネクタ11の外観に対応した方向を示すものとする。
【0025】
図2に示すように、電気コネクタ11は、前部ハウジング21、下部ハウジング23、内側カバー25、外側カバー27、端子29の他に、外観において視認されにくい上部ハウジング31や保持部材33などを含む。なお、上部ハウジング31や保持部材33も、合成樹脂材料などの絶縁材料により成型される。
【0026】
前部ハウジング21は、略長方形状の開口部109を有する横長の本体部111と、本体部111の左右後方に張り出した張り出し部113aおよび張り出し部113bとを含む。開口部109は、本体部111を前後に貫通するように設けられており、当該開口部109内には、端子29(上部端子29aおよび下部端子29bを含む)の形状、配置などに合わせた溝が形成されている。そして、当該溝に合わせるようにして、前部ハウジング21の開口部109内に、端子29の前方の部位が収納される。
【0027】
端子29は、金属薄板材料などを打ち抜いて形成される板ばね状の部材であり、板厚方向である上下方向にたわませることが可能になっている。上部端子29aの後方は平坦であり、前方は下方にやや湾曲しており、後方先端は上方に屈曲しており、前方先端は上方に屈曲している。また、端子中央付近に設けられた上部保持部材33aによって、複数の上部端子29aが所定の間隔を有するように離間して束ねられている。下部端子29bについても同様である。すなわち、下部端子29bの後方は平坦であり、前方は上方にやや湾曲しており、後方先端は下方に屈曲しており、前方先端は下方に屈曲している。また、端子中央付近に設けられた下部保持部材33bによって、複数の下部端子29bが所定の間隔を有するように離間して束ねられている。
【0028】
保持部材33によって複数の端子29を束ねることで、各端子29が接続対象物に及ぼす力を均等化することができる。このため、良好な電気的接続を実現することができる。また、保持部材33が絶縁体であるため、端子29同士のショートを防止できると共に、端子29と内側カバー25とのショートを防止できる。なお、本実施の形態では、保持部材33によって複数の端子29を束ねる構成を示しているが、保持部材33と端子29との関係をこれに限定する必要はない。例えば、各端子29に対応する複数の保持部材33を設けることもできる。
【0029】
上部端子29aの後方は、上部ハウジング31によって固定され、下部端子29bの後方は、下部ハウジング23によって固定される。下部ハウジング23は、前後に長い略直方体形状の左側壁部101aおよび右側壁部101bが、その後方下部において左右に長い略直方体形状の中央支持部103により連結された構造を有している。上部ハウジング31は、左右に長い略直方体形状の部材であり、上部端子29aの固定の後に、下部ハウジング23の後方上部に結合される。下部ハウジング23および上部ハウジング31が結合された後には、下部ハウジングの前方下部に前部ハウジング21が結合されて、図3に示すように、前部ハウジング21、下部ハウジング23および上部ハウジング31によって形成される空間に端子29が格納される。
【0030】
端子29およびその周辺の構造についてより詳細に説明する。図4に示すように、上部ハウジング31は、後方の固定部117aにおいて上部端子29aを固定している。このため、上部端子29aは、前方のみが可動となっている。同様に、下部ハウジング23は、後方の固定部117bにおいて下部端子29bを固定しており、下部端子29bの前方のみが可動となっている。よって、上部端子29aおよび下部端子29bを板ばねと見る場合には、前方が自由端、後方が固定端に相当する。
【0031】
上部端子29aの中央からやや前方寄りの位置には、上部保持部材33aが配されている。上部端子29aは、上部保持部材33aより前方において下方(つまり、接続対象物が配される側)にやや湾曲しており、上部端子29aの前方先端部分は、接続対象物との接触部119aを経て上方に屈曲している。また、上部端子29aは、上部保持部材33aより後方では内側カバー25の上部内壁面と略平行であり、後方先端部分において、上方に屈曲されて配線などと接続される。
【0032】
上部保持部材33aは、インサート成型によって上部端子29aと一体成型されており、その上部表面には、突出部115a〜115eが設けられている(図3参照)。ここで、インサート成型とは、金型内にインサート部品を配した後、金型内に樹脂を注入してインサート部品を包み、樹脂を固化させることで、一体化した部品または完成品を作製する工法をいう。インサート成型によって複数の上部端子29aと上部保持部材33aとを一体化することで、組み立て工程数を削減して、電気コネクタ11の生産性を高めることができる。なお、上部端子29aおよび上部保持部材33aの形成方法は、インサート成型に限られない。例えば、圧入などの方法を用いて上述の構造を実現することもできる。
【0033】
上部保持部材33aにおいて、突出部115aは中央から前方寄りに配されており、突出部115bと突出部115cは、左右対称となる位置に、やや後方寄りに配されている。また、突出部115dと突出部115eは、突出部115bや突出部115cの外側、かつ左右対称となる位置に、さらに後方寄りに配されている。つまり、中央から左右に離れた位置にある突出部ほど、後方寄りに配されている。前部ハウジング21と上部ハウジング31には隙間があり、当該隙間において上部保持部材33aが露出している。この状態で内側カバー25を配するため、上部保持部材33aは、突出部115a〜115eにおいて内側カバー25の内壁と接することになる。
【0034】
上述のように、電気コネクタ11中央部の端子29の動作に主として関与する突出部(例えば突出部115a)より、電気コネクタ11端部の端子29の動作に主として関与する突出部(例えば、突出部115dや突出部115e)を、電気コネクタの後方寄りに配することで、良好な電気的接続を実現することができる。これは、電気コネクタ11の内側カバー25は、中央部においてたわみやすくなっており、これに伴い、中央部の端子29では、端部の端子29より、接続対象物への圧力を生じにくくなっているところ、中央部の端子29の動作に主として関与する突出部を前方に配することで、接続対象物への圧力を生じやすくすることができるためである。なお、ここでは、上部端子29aの幅と同程度の大きさの突出部を、左右対称となるように五か所に設ける構成を示しているが、突出部の大きさや数、配置などについてはこれに限定されない。
【0035】
下部端子29bおよびその周辺の構造については、上部端子29aと同様である。つまり、下部端子29bの中央からやや前方寄りの位置には、下部保持部材33bが配されている。下部端子29bは、下部保持部材33bより前方において上方(つまり、接続対象物が配される側)にやや湾曲しており、前方先端部分は、接続対象物との接触部119bを経て下方に屈曲している。また、下部端子29bは、下部保持部材33bより後方では内側カバー25の下部内壁面と略平行であり、後方先端部分において、上方に屈曲されて配線などと接続される。
【0036】
また、下部保持部材33bは、インサート成型によって下部端子29bと一体成型されており、その下部表面には、図示しない突出部が設けられている。突出部の大きさや数、配置などは、上部保持部材33aの場合と同様である。つまり、中央から左右に離れた位置にある突出部ほど、後方寄りに配されている。また、前部ハウジング21と下部ハウジング23には隙間があり、当該隙間において下部保持部材33bが露出している。この状態で内側カバー25を配するため、下部保持部材33bは、突出部において内側カバー25の内壁と接することになる。なお、接続対象物と下部端子29bとの接触による圧力を均等にするという観点からは、突出部の大きさや数、配置などを、上部保持部材33aに合わせるのが望ましいが、これに限る必要はない。
【0037】
以上、上述の電気コネクタ11は、接続対象物との接触部(接触部119aや接触部119b)側を自由端とし、固定部(固定部117aや固定部117b)側を固定端とする板ばね状の端子29を有し、自由端と固定端との間に、突出部(突出部115a〜115eなど)を有する保持部材33が設けられたことにより、端子29が、突出部を支点として動作可能になっている。そして、この構成において接触部に荷重が掛かると、自由端と突出部との間、および突出部と固定端との間には、たわみが発生する。これは、自由端と突出部との間の部分と、突出部と固定端との間の部分とが、いずれも板ばねとして機能することを意味するものである。つまり、この構成では、上述の二つの部分のたわみによって生じる力を用いることが可能である。よって、自由端と突出部との間のたわみ量が小さくとも、接続対象物に対する大きな圧力を得ることが可能になるため、端子29のたわみ量を所定の範囲内に収めつつ、端子に所望の圧力を生じさせることができる。
【0038】
なお、ここでは、上部保持部材33aおよび下部保持部材33bが突出部を備える構成について示しているが、内側カバー25が突出部を備えていても良い。上部保持部材33aおよび下部保持部材33bが突出部を備える場合、内側カバー25が突出部を備える場合、のいずれにおいても、突出部に相当する部材を別に製造する場合と比較して、部品点数を減らし、作製工程を簡略化することができる。もちろん、突出部に相当する部材のみを別に設けても良い。いずれにしても、自由端と固定端との間に位置する突出部を支点として動作可能な板ばね状の端子29を有する構成であれば、本発明の効果を得ることは可能である。
【0039】
なお、上述の構成によれば、端子29の長さを比較的自由に変えることが可能になるため、電気コネクタ11の設計に関する自由度が高まるという効果も得られる。これによって、電気コネクタ11の小型化などを容易に実現することが可能である。
【0040】
次に、電気コネクタ11に接続対象物が接続される際の電気コネクタ11の様子について、図5、図6を参照して説明する。図5は、本実施の形態に係る電気コネクタ11に、接続対象物の接続部201を嵌め込む前の初期状態を示す部分断面図である。図6は、本実施の形態に係る電気コネクタ11に、接続対象物の接続部201が嵌め込まれた状態を示す部分断面図である。なお、図5、図6では簡略化のため、上部端子29aまたは下部端子29bのいずれか一方に相当する端子229およびその周辺の構造についてのみ説明する。なお、以下では、図5、図6の下方向(Y方向)を「前」と呼び、同図の上方向を「後」と呼ぶものとする。また、図5、図6の左方向(Z方向)を「上」と呼び、同図の右方向を「下」と呼ぶものとする。
【0041】
上述のように、図5、図6に示す電気コネクタ11では、端子229の中央からやや前方寄りの位置に、突出部215を有する保持部材233が配されている。端子229は、保持部材233より前方において、接続対象物の接続部201が配される側にやや湾曲しており、端子229の前方先端部分は、接続対象物との接触部219を経て、接続部201が配される側とは反対の方向に屈曲している。また、端子229は、保持部材233より後方では、内側カバー225の内壁面と略平行になっており、後方先端部分において、接続部201が配される側とは反対の方向に屈曲している。また、端子229は、ハウジング223により、固定部217において固定されている。
【0042】
電気コネクタ11に接続対象物の接続部201が嵌め込まれる際に、端子229は接触部219において下向き(接続部201が配される側とは反対の方向)の荷重を受ける。端子229は固定部217において固定されているため、固定部217側を固定端として弾性変形する。ここで、端子229のやや前方寄りの位置には保持部材233が配されているため、自由端と保持部材233との間の自由端側部位241と、保持部材233と固定端との間の固定端側部位243とが、接続部201からの下向きの力を受けてたわむことになる。より具体的には、次のとおりである。
【0043】
自由端側部位241は、図5に示す外力を受けない状態において、上方(接続対象物の接続部201が配される側)を向くようにやや湾曲しているが、図6に示すように接続部201からの力を受けると、接触部219が押し下げられて、曲率半径が大きい湾曲形状に変形する。そして、これによって、保持部材233の前方の部位(突出部215より自由端側部位241側の部位)には下向きの力が掛かる。
【0044】
保持部材233の下側表面には突出部215が設けられており、保持部材233は突出部215を支点として回動動作可能になっているから、保持部材233の前方に下向きの力が掛かると、保持部材233の後方には上向きの力が掛かる。
【0045】
固定端側部位243は、図5に示す外力を受けない状態において、内側カバー225の内表面に略平行な平坦形状となっており、固定端側部位243の後方は固定部217で固定されているため、保持部材233の後方、すなわち、固定端側部位243の前方に上向きの力が掛かると、図6に示すように固定端側部位243は、その前方が引き上げられて弓なりの形状に変形する。
【0046】
つまり、接続部201からの力を受けた端子229は、自由端側部位241において曲率半径が大きい湾曲形状に変形し、固定端側部位243において弓なりの形状に変形することで、接続部201を押圧する力を発生する。このように、端子229が突出部215を支点として動作できる構造を採用することによって、自由端側部位241と固定端側部位243とが、それぞれ板ばねのように機能して、端子229に十分な力を生じさせることが可能である。そしてこれにより、端子229のたわみ量を所定の範囲内に収めつつ、端子に所望の圧力を生じさせることが可能である。
【0047】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することができる。例えば、上記実施の形態における各素子の大きさ、配置、数量などは適宜変更して実施することが可能である。その他、本発明は、本発明の範囲を逸脱しないで適宜変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の電気コネクタは、パーソナルコンピュータや携帯電話機など各種電子機器の電気的接続に用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
11 電気コネクタ
21 前部ハウジング
23 下部ハウジング
25 内側カバー
27 外側カバー
29 端子
29a 上部端子
29b 下部端子
31 上部ハウジング
33 保持部材
33a 上部保持部材
33b 下部保持部材
101a 左側壁部
101b 右側壁部
103 中央支持部
105 開口部
107 開口部
109 開口部
111 本体部
113a、113b 張り出し部
115a、115b、115c、115d、115e 突出部
117a、117b 固定部
119a、119b 接触部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続対象物との接触部側を自由端、固定部側を固定端として、前記接続対象物への圧力によって電気的接続を実現する板ばね状の複数の端子を有し、
前記端子は、前記端子の自由端と固定端との間に位置する突出部を支点として動作が可能になっており、前記突出部より前記接触部側において、前記接続対象物が配される方向に湾曲した部分を有することを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
接続対象物との接触部側を自由端、固定部側を固定端として、前記接続対象物への圧力によって電気的接続を実現する板ばね状の複数の端子と、
前記端子の一部を覆うカバーと、
前記端子の自由端と固定端との間に、前記カバーと接するように設けられた保持部材と、
を有し、
前記端子は、前記保持部材より前記接触部側において、前記接続対象物が配される方向に湾曲した部分を有し、
前記カバーと前記保持部材とは、前記接触部に荷重が掛かることで前記保持部材の動作を可能とする突出部を介して接することを特徴とする電気コネクタ。
【請求項3】
ハウジングと、
ハウジングに固定され、接続対象物との接触部側を自由端、前記ハウジングへの固定部側を固定端として、前記接続対象物への圧力によって電気的接続を実現する板ばね状の複数の端子と、
前記ハウジングおよび前記複数の端子の一部を覆うカバーと、
前記端子の自由端と固定端との間に、前記カバーと接するように設けられた保持部材と、
を有し、
前記端子は、前記保持部材より前記接触部側において、前記接続対象物が配される方向に湾曲した部分を有し、
前記カバーと前記保持部材とは、前記接触部に荷重が掛かることで前記保持部材の動作を可能とする突出部を介して接することを特徴とする電気コネクタ。
【請求項4】
前記保持部材は、前記複数の端子が並列に配列するように前記複数の端子に共通に設けられたこと特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記突出部と前記自由端との間隔が、前記複数の端子の配列方向中央より端で大きくなるような複数の前記突出部を有することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記突出部は前記保持部材の一部であることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項7】
前記突出部は前記カバーの一部であることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項8】
前記保持部材は絶縁材料でなり、前記カバーは導電材料でなることを特徴とする請求項2から請求項7のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項9】
前記複数の端子は、インサート成型により前記保持部材と一体化されたことを特徴とする請求項2から請求項8のいずれかに記載の電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−54190(P2012−54190A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197752(P2010−197752)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】