説明

電気コネクタ

【課題】ランスハウジングの幅方向の側面、及び、前方の側面の2つの方向に係止突起を設ける場合でも、小型化を維持できる電気コネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10は、ロックブロック50に、側方ロック片46と、後方ロック片48と、を一体的に設ける。そして、ロックブロック50に、外溝52と、内溝53を設けることにより、側方ロック片46と、後方ロック片48と、が容易に弾性変位させる。このように2つの方向のロック片をロックブロック50に集約することで、ランスハウジング40を小型に維持できる。また、内溝53にメスハウジング20の位置決めガイド35を挿入することにすれば、ランスハウジング40とメスハウジング20との相互の位置決めを行うので、位置決めガイド35を挿入するための溝を他に設ける必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばランスハウジングと、ランスハウジングが装着されるハウジング本体と、を備える電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクト(又は端子金具)がハウジングから抜けるのを防止するために、ハウジングに一次係止手段としてのランスが一体的に形成された電気コネクタがよく知られている。電気コネクタが小型化されると、これに伴って小型化されるハウジングにランスを一体的に形成することが困難になる。
そこで、ランスを備えるハウジングを別体として作製し、このランスハウジングをハウジング本体に装着する電気コネクタが知られている。ランスが小型化されると、コンタクトの抜けを防止する機能が低くなるという問題もある。この問題に対して、二次係止手段としてのリテーナをハウジング本体に装着することが行なわれている。なお、リテーナは、ハウジング本体、ハウジングランスとは別体として作製することができるし(例えば、特許文献1)、ハウジング本体又はランスハウジングにヒンジを介して一体的に設けることができる(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−324050号公報
【特許文献2】特開2008−130561公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ランスハウジングをハウジング本体に装着するには、ランスハウジングに設けられるロック片をハウジング本体に係止させることで、ランスハウジングがハウジング本体の所定位置から抜け出ないようにロックする。このロック片は、通常、ランスハウジングに設けられる弾性変形する部位に一体に形成される。例えばランスハウジングの幅方向と、前方(又は後方)と、いうように、直交する2つの方向にロック片を設けることで、ハウジング本体にランスハウジングより確実にロックさせるものがある。
一方で、ランスハウジングがハウジング本体に精度よく位置決めされることが必要である。ランスハウジングがハウジング本体に対して位置ずれを起していると、コンタクトの挿入に支障が出るからである。そのために、例えばランスハウジングに位置決め溝(又は突起)を設けるとともに、ハウジング本体に位置決め溝に挿入される突起(又は溝)を設けることが行なわれている。
ところが、2方向のロック片と、位置決め用の溝と、を設けるのに足りるスペースを小型のランスハウジングに確保するのが困難な場合がある。
本発明は、このような課題に基づいてなされたもので、例えば小型のランスハウジングに2方向のロック片及び位置決め用の要素を効率的に設けることで小型化を維持できる電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもとなされた本発明の電気コネクタは、第1ハウジングと、第1ハウジングに着脱可能に装着される第2ハウジングと、第1ハウジングに係止されることで第1ハウジングの所定位置に第2ハウジングを固定するロック片を有する、第2ハウジングに一体的に設けられるロックブロックと、を備える。
このロックブロックは、所定方向に延びる第1溝と、第1溝に接するとともに所定方向に沿う側部と、第1溝に接するとともに所定方向に直交する端部と、を有する。
そしてロックブロックは、側部に一体的に設けられ、側方において第1ハウジングに係止される側方ロック部と、端部に一体的に設けられ、前方又は後方において第1ハウジングに係止される前・後方ロック部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の電気コネクタは、側方ロック部と、前・後方ロック部と、を第2ハウジングのロックブロックに一体的に設ける。そして、側方ロック部を備える側部と、前・後方ロック部を備える端部とが、ともに第1溝に接しているので、側部の撓みに伴う側方ロック部が、また、端部のたわみに伴う前・後方ロック部が、容易に変位できる。加えて、第1ハウジングに位置決めガイドを設ける場合に、本発明は第1溝がこの位置決めガイドを受け入れることができるので、ロックブロックのほかに位置決めガイドを受け入れる部位を設ける必要がない。したがって、本発明の電気コネクタは、弾性変位が容易な2つの方向のロック片をロックブロックに集約し、かつこのロックブロックの範囲内で位置決めガイドを受け入れることができるので、小型化を維持できる。
【0007】
本発明の電気コネクタにおいて、ロックブロックは、所定方向に沿って延び、第1ハウジングの位置決めガイドが挿入される第2溝が第1溝に隣接して形成されることが好ましい。
第1溝にハウジング本体の位置決め突起を受け入れることを本発明は許容するが、位置決め突起を受け入れる位置によっては側部の撓みを制約するおそれがある。これに対して、位置決めガイドを挿入する第2溝を独立して設ければ、位置決めガイドをいかなる位置で受け入れようとも、第1壁の撓みを制約するおそれがない。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えばランスハウジングの幅方向の側面、及び、前方(又は後方)の側面の2つの方向にロック片を設ける場合でも、電気コネクタの小型化を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態における電気コネクタの分解斜視図であり、(a)はプラグハウジングを示し、(b)はランスハウジングを、示している。
【図2】図1に示す電気コネクタの上下及び前後を反転された図である。
【図3】本実施の形態における電気コネクタと相手コネクタとが嵌合された電気コネクタ組立体を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【図4】(a)は図3のIV−IV矢視断面図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
【図5】(a)は図3のV−V矢視断面図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
【図6】(a)は図3のVI−VI矢視断面図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、本実施の形態による電気コネクタ(以下、単にコネクタ)10は、プラグ型のメスハウジング20と、ランスハウジング40と、からなり、図示を省略したメス型コンタクトを備える。コネクタ10は、図3に示すように、相手コネクタ100と相互に嵌合されると、相手コネクタ100が備えるオス型コンタクトとメス型コンタクトが電気的に接続される。なお、コネクタ10は、メスハウジング20及びランスハウジング40が絶縁性の樹脂を射出成形することにより作製され、メス型コンタクトは導電性の優れる例えば銅合金を打ち抜き、折り曲げすることで作製される。
【0011】
<メスハウジング20>
メスハウジング(第1ハウジング)20は、前壁21と、前壁21と前後方向に間隔を空けて対向する後壁22と、を備えている。前壁21と後壁22の間にランスハウジング40が装着される収容室26が設けられる。収容室26は、幅方向に対向して設けられる側壁23,24、前壁21、後壁22、側壁23,24を繋ぐ上壁25と、により区画され、前壁21、後壁22、側壁23,24及び上壁25により囲まれた空間である。
なお、コネクタ10において、相手コネクタ100と嵌合される側、つまり図1の手前側を前と、メス型コンタクトに接続された電線が引き出される側、つまり図1の奥側を後と定義する。また、メスハウジング20において、収容室26が開口する側を下と、その逆側を上と、定義する。
【0012】
メスハウジング20は、前壁21に相手コネクタ100のオス型コンタクトが挿入される複数の端子受容孔27が形成されている。また、メスハウジング20は、後壁22にメス型コンタクトを挿入するとともに挿入されたメス型コンタクトに接続された電線が引き出される複数の端子挿入孔28が形成されている。
メスハウジング20は、後述するランスハウジング40の前方ロック片44,45と互いに係止されるロック孔29,30が、上壁25の収容室26に臨む面の前方に形成されている。また、メスハウジング20は、後述するランスハウジング40の側方ロック片46,47と互いに係止されるロック孔31,32が、側壁23,24の各々に形成されている。さらに、メスハウジング20は、後述するランスハウジング40の後方ロック片48,49と互いに係止されるロック孔33,34が、後壁22の幅方向の両端部に形成されている。
また、メスハウジング20は、上壁25の収容室26に臨む面に位置決めガイド35,36が形成されている。位置決めガイド35,36は幅方向に距離をおいて各々側壁23,24に沿って形成されているが、図2においては位置決めガイド36は側壁24に隠れて見えない。位置決めガイド35,36は、ランスハウジング40に形成される内溝53,53に挿入されることで、メスハウジング20とランスハウジング40とが相互に幅方向に位置決めされる。
【0013】
<ランスハウジング40>
ランスハウジング(第2ハウジング)40は、メスハウジング20の収容室26に装着され、メス型コンタクトの抜け止めを担う。
ランスハウジング40は、前後を貫通し、メス型コンタクトを収容する端子収容室41を備えている。端子収容室41には、メスハウジング20の端子受容孔27に対応する複数の受容口41aが前端側に設けられるとともに、メスハウジング20の端子挿入孔28に対応する複数の端子挿入口41bが後端側に設けられる。
【0014】
ランスハウジング40には、端子収容室41の内部に突出するハウジングランス42がランスハウジング40と一体に形成されている(図4参照)。ハウジングランス42は、端子収容室41に挿入された各コンタクトを係止することで、コンタクトがコネクタ10の後方へ引き抜かれるのを防止する。
【0015】
ハウジングランス42はメス型コンタクトを一次的に係止する手段として機能するが、ランスハウジング40はメス型コンタクトを二次的に係止する手段であるヒンジ43を備えている。ヒンジ43は、前方側に設けられる回転軸を中心にしてランスハウジング40に対して回転可能に設けられている。ヒンジ43はメス型コンタクトを係止する部分(図示省略)を有し、図示の位置に置かれると、当該係止部がメス型コンタクトを係止することでメス型コンタクトがコネクタ10の後方へ引き抜かれるのを防止する。ヒンジ43は、特許文献2に開示されるものと基本的に同様の構成、動作をするものであり、以降の説明を省略する。
【0016】
ランスハウジング40には、上面の前端側に前方ロック片44,45が形成されている。前方ロック片44,45は、前述したように、ロック孔29,30を介してメスハウジング20に各々が係止される。
また、ランスハウジング40には、ロック孔31,32を介してメスハウジング20に各々が係止される側方ロック片46,47が形成されている。側方ロック片46,47は、各々が幅方向の両端に設けられている。
さらに、ランスハウジング40には、ロック孔33,34を介してメスハウジング20に各々が係止される後方ロック片48,49が形成されている。後方ロック片48,49は、各々が幅方向の両端に設けられている。
【0017】
側方ロック片46,47及び後方ロック片48,49は、ロックブロック50,51に一体的に形成されている。直方体状に形成されたロックブロック50,51は、ランスハウジング40の上面に、幅方向の両端に設けられる。なお、ロックブロック50,51は配置を除けば同じ構成を有しているため、以下ではロックブロック50について説明する。
【0018】
ロックブロック50には、前後方向に沿って延びる外溝(第1溝)52と、外溝52の幅方向の内側に外溝52と平行な内溝(第2溝)53と、が設けられる。ロックブロック50には、外溝52よりも外側に外壁(側部)54が、外溝52と内溝53の間に仕切り壁55が、さらに内溝53よりも内側に内壁56が設けられる。外壁54と仕切り壁55は外溝52と接し、また、仕切り壁55と内壁56は、内溝53と接する。
外壁54は、外溝52が存在することにより、ランスハウジング40に下端側を固定端とするばね片として機能するので、幅方向に力が加えられると、加えられた向きに撓む。外壁54には、メスハウジング20のロック孔31(32)に係止される側方ロック片46(47)が設けられており、外壁54の撓みに伴って弾性変位する。
【0019】
内溝53には、メスハウジング20にランスハウジング40が装着されると、メスハウジング20の位置決めガイド35(36)が挿入される。これにより、メスハウジング20とランスハウジング40は幅方向に相互に位置決めされる。
【0020】
ロックブロック50(51)には、前述した後方ロック片48(49)が後端側に設けられる。後方ロック片48は、外壁54、仕切り壁55及び内壁56と連なる部分が固定端48sとなる片持ち梁状の部材であり、外壁54、仕切り壁55及び内壁56の後端(端部)よりも後方に突出している。そして、外溝52及び内溝53が固定端48sを越えて後方ロック片48に入り込んでおり、しかも、外溝52及び内溝53に対応する部分が、後方ロック片48を上下方向に貫通しているので(図6(b)参照)、後方ロック片48は剛性が低くなっている。したがって、後方ロック片48は、上下方向に力が加えられると、加えられた向きに容易に撓む。
【0021】
ランスハウジング40がメスハウジング20に装着されると、メスハウジング20は以下のようにしてランスハウジング40にロックされる。
図4に示すように、ランスハウシング40に設けられる前方ロック片44は、メスハウジング20のロック孔29に臨むロック片29aを乗り越えると(図4(b))、ロック片29aと係合関係がもたれる。こうして、ランスハウジング40はメスハウジング20に対して前方側でロックされる。なお、もう1つの前方ロック片45も同様である。
【0022】
次に、図5に示すように、ランスハウシング40に設けられる側方ロック片46、47は、メスハウジング20のロック孔31,32に臨むロック片31a、32aを乗り越えると(図5(b))、図5(b)に示すようにロック片31a,32aと係合関係がもたれる。こうして、ランスハウジング40はメスハウジング20に幅方向でロックされる。側方ロック片46、47がロック片31a,32aを乗り越える際に、外壁54は内側に向けて撓む。
図5に示すように、ランスハウジング40の内溝53にはメスハウジング20の位置決めガイド35が挿入されることで、前述したように、ランスハウジング40とメスハウジング20の相互の位置決めがなされる。位置決めガイド35は内溝53に挿入されるものであり、外溝52は空隙のままであるから外壁54の撓みに影響をない。
【0023】
さらに、図6に示すように、ランスハウシング40に設けられる後方ロック片48は、メスハウジング20のロック孔33に臨むロック片33aを乗り越えると(図6(b))、ロック片33aと係合関係がもたれる。こうして、ランスハウジング40はメスハウジング20に対して後方端でロックされる。なお、もう1つの前方ロック片49も同様である。
【0024】
以上のコネクタ10は、ロックブロック50に、側方ロック片46と、後方ロック片48と、を一体的に設ける。そしてコネクタ10は、ロックブロック50に、外溝52と、内溝53を設けることにより、側方ロック片46と、後方ロック片48と、が容易に弾性変位できる。つまり、コネクタ10は、弾性変位が容易な2つの方向のロック片をロックブロック50に集約するものであるから、ランスハウジング40をメスハウジング20に適切に固定できるとともに、ランスハウジング40の小型化を維持できる。
また、内溝53にメスハウジング20の位置決めガイド35を挿入することで、ランスハウジング40とメスハウジング20との相互の位置決めを行うので、位置決めガイド36を挿入するための溝を他に設ける必要がない。
【0025】
以上説明したコネクタ10は、側方ロック片46と後方ロック片48をロックブロック50に一体的に設ける例を示したが、ロックブロック50に一体的に設けるロック片にはいくつかの選択肢がある。例えば、前方ロック片44を設ける位置によっては、ロックブロック50に前方ロック片44を一体的に設けることもできるし、前方ロック片44と側方ロック片46をロックブロック50に一体的に設けることもできる。
また、上記コネクタ10は、外溝52、内溝53と2つの溝を設けたが、1つの溝、例えば外溝52のみをロックブロック50に設けた場合でも、側方ロック片46の弾性変位、後方ロック片48の弾性変位を確保する、などの本発明の効果を得ることができる。この形態において、位置決めガイド35を外溝52に挿入する場合には、側方ロック片46から離れたところに挿入することが望まれる。側方ロック片46の弾性変位のための外壁54の撓みを確保するためである。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0026】
10 コネクタ
20 メスハウジング
23,24 側壁
26 収容室
29,30 前方ロック孔
31,32 側方ロック孔
33,34 後方ロック孔
35,36 位置決めガイド
40 ランスハウジング
41 端子収容室
42 ハウジングランス
44,45 前方ロック片
46,47 側方ロック片
48,49 後方ロック片
50,51 ロックブロック
52 外溝
53 内溝
54 外壁
55 仕切り壁
56 内壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに着脱可能に装着される第2ハウジングと、
前記第1ハウジングに係止されることで前記第1ハウジングの所定位置に前記第2ハウジングを固定するロック片を有する、前記第2ハウジングに一体的に設けられるロックブロックと、を備え、
前記ロックブロックは、
所定方向に延びる第1溝が各々接し、前記所定方向に沿う側部と、前記所定方向に直交する端部と、を有し、
前記側部に一体的に設けられ、側方において前記第1ハウジングに係止される側方ロック部と、
前記端部に一体的に設けられ、前方又は後方において前記第1ハウジングに係止される前・後ロック部と、
を備えることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記ロックブロックは、
前記所定方向に沿って延び、前記第1ハウジングの位置決めガイドが挿入される第2溝が、前記第1溝に隣接して形成される、
請求項1に記載の電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−58371(P2013−58371A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195683(P2011−195683)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000227995)タイコエレクトロニクスジャパン合同会社 (340)
【Fターム(参考)】