説明

電気ポットの蓋ロック解除操作構造

【課題】簡単な構成で蓋開き操作し易く軽快となり、かつ操作が安定した状態で行い得るようにする。
【解決手段】蓋体8の前部に、蓋体8に枢支されて前端20c側を指で押し下げるときの初期回動と、これに続いて初期回動で起き上がった後端20b側を持ち上げるときの後続回動とを伴いロック部材25をばね26に抗して後退させ器体1側との係合を外して前記ロックを解除し、以降蓋体8を持ち上げ開き操作する蓋操作レバー20を設け、この蓋操作レバー20は、ロック部材25を後退させるときの初期および後続の回動におけるロック部材25への当接部20aと、前記枢支点Oと、の間の押動レバー長さがL4、L5などと変化するようにしたことにより、上記の目的を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ポットの蓋ロック解除操作構造に関し、詳しくは、蓋体を器体後部でのヒンジ連結部を中心に閉じると、蓋体の前部に突出するようにばねで付勢されたロック部材が器体側に係合して蓋体を閉じ位置に自動ロックするロック機構を備え、液体を収容して蓋をした状態で湯沸しや保温をして貯湯し、この貯湯されている内容液をポンプにより外部に吐出し使用できるようにした電気ポットの蓋ロック解除操作構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ吐出式の電気ポットは定置型で、上記のような蓋ロック機構が設けられ、蓋ロック解除操作をするのに蓋ロック解除操作構造は、蓋体の前部に、蓋体に枢支されて前端側を指で押し下げるときの初期回動と、これに続いて初期回動で起き上がった後端側を持ち上げるときの後続回動とを伴いロック部材をばねに抗して後退させ器体側との係合を外して前記ロックを解除し、以降蓋体を持ち上げ開き操作する蓋操作レバーを設けることが通常行われている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
本出願人は、従来から電気ポットに図8に示すような蓋操作レバーaを持った蓋ロック解除操作構造bを採用している。蓋操作レバーaは前端a1寄りの位置で蓋体cに軸dで枢支され、ロック位置側にばねeで付勢されたロック部材fの進退に遊びなく一定の当接部a2で当接し合い連動するようしている。前端a1側を押し下げた時の初期回動でロック部材fの後退を伴い後端a3側が起き上がる。次いで、起き上った後端a2側を引き上げた時の後続回動によりロック部材fをさらに後退させて器体g側との係合を外して蓋体cの閉じ位置へのロックを解除するようにしている。このものでは、蓋操作レバーaのロック部材fとの当接部a2が一定なので、蓋操作レバーaの枢支点から当接部a2までの解除動作側のレバー長さL1が一定なので、蓋操作レバーaの回動量との関係が図7に示すようにほぼ直線となる。このため、蓋操作レバーaのロック解除を目的とする引き上げ操作側となる枢支点から後端a3までの解除操作側のレバー長さL2がL1よりも大きく設定して操作抵抗を軽減し、かつロック解除位置にて蓋体cを開き操作するのに適した位置まで十分に起き上がるようにするのに対し、前端a1側はロック解除目的は薄くロック解除目的の引上げ操作へ移行するのに蓋操作レバーaの後端a3側を起き上がらせるたのため初期操作であることに対応してレバー長さL1よりもやや小さなレバー長さL3に設定されることもあって、操作抵抗が大きくなって操作しにくい問題がある。因みに、ロック部材fの動作量は初期回動時7.81mmと、後続回動時の9.59mmに対しやや少なめであるものの、初期回動時の押し下げ操作抵抗負荷は1600g程度と、後続回動時の引き上げ操作抵抗負荷の1000gに対し1.6倍と高くなっている。
【0004】
これに対し、特許文献1、2に記載のものは、いずれも、蓋操作レバーの前端側を押し下げる初期回動ではロック部材を後退させず、初期回動で起き上った後端側を引き上げる後続回動時にロック部材を後退させることで、初期回動時の操作抵抗を後続回動時の操作抵抗よりも小さくするようにしている。
【0005】
このために、特許文献1に記載のものは、その図1(a)、図4に実線で示すロック状態のロック部材に対し、蓋操作レバーが初期回動範囲分の遊びを設けている。
【0006】
また、特許文献2に記載のものは、蓋操作レバーを同文献2の図4などに示すαの遊びを初期回動側に持つよう仲介レバーの枢支位置から外れた位置で枢支し、蓋操作レバーの操作を仲介レバーを介してロック部材に伝達するようにしている。
【特許文献1】特開2002−102066号公報
【特許文献2】特開2004−161333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載のものでは、ロック部材がそれを付勢するばねによって後退したロック解除位置からロック位置に復帰しても、蓋操作レバーは途中までしか連動できず、前記遊びの範囲で自働復帰できない。これに対応するのに、ロック部材を付勢するばね以外に、蓋操作ればーを初期位置まで復帰させる専用のばねが今1つ必要となる。このため、部品点数、組み立て工数共に増大し、コスト上昇の原因になる。また、ばねの折損確率が倍加する不利もある。しかも、蓋操作レバーは初期回動の操作抵抗が小さいとはいえ初期位置に確実に復帰させるためのばね付勢は必要であるので、操作抵抗は解消し切れるものではない。
【0008】
また、特許文献2に記載のものでも、ロック部材がそれを付勢するばねによって後退したロック解除位置からロック位置に復帰させるが、蓋操作レバー側へは前記遊びα分だけ復帰力が伝達されない。このため、蓋操作レバーを仲介ればーに対して初期位置まで復帰させる専用のばねを必要とする点は特許文献1に記載のもの同様である。この結果、特許文献2に記載のものは、ばねが2つ必要である点で特許文献1に記載のものと同様の問題がある上、レバーとそれぞれの枢支構造とが2組必要であるので、さらに部品点数、組み立て工数が増大し、特許文献1に記載のもの以上にコスト上昇の原因になる。しかも、2つのレバー構造は、同文献2の図2などに示されているように2つのレバーが前後に並んだ複雑な外観を呈し、初期回動の押し下げ部が視認しにくく操作に不便である。また、仲介レバーを押し下げ操作しようとしても操作できないし、損傷もしないようにしておく工夫が必要であり設計上の不便もある。
【0009】
本発明の目的は、このような課題を解決するものであり、簡単な構成で蓋開き操作し易く軽快となり、かつ操作が安定した状態で行い得る電気ポットの蓋ロック解除構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の電気ポットの蓋ロック解除操作構造は、蓋体を器体後部でのヒンジ連結部を中心に閉じると、蓋体の前部に突出するようにばねで付勢されたロック部材が器体側に係合して蓋体を閉じ位置に自動ロックするロック機構を備え、器体に液体を入れて蓋体を閉じた状態で湯沸しや保温をして貯湯し、内容液をポンプにより外部に吐出し使用できるようにした電気ポットにおいて、蓋体の前部に、蓋体に枢支されて前端側を指で押し下げるときの初期回動と、これに続いて初期回動で起き上がった後端側を持ち上げるときの後続回動とを伴いロック部材をばねに抗して後退させ器体側との係合を外して前記ロックを解除し、以降蓋体を持ち上げ開き操作する蓋操作レバーを設け、この蓋操作レバーは、ロック部材を後退させるときの初期、および後続の回動におけるロック部材への当接部と、前記枢支点と、の間の押動レバー長さが変化するようにしたことを特徴としている。
【0011】
このような構成では、定置された器体でのロック部材によって閉じ状態にロックされた蓋体のロックを解除するのに、蓋操作レバーの前端側での押し下げによる初期回動時および、それに続く初期回動によって起き上った後端側での引き上げによる後続回動時において、蓋操作レバーのロック部材を器体側との係合を外すロック解除側に後退させる当接部の、蓋操作レバーの蓋体への枢支点からの押動レバー長さが異なるので、初期回動時および後続回動時の回動位置ないしは回動範囲ごとに適したレバー長さを選択し、付勢されたロック部材に連動して復帰する1つのレバーだけで、レバー操作における初期回動開始から後続回動終了までのレバー長さの短い度合による遊びを必要としない操作抵抗軽減の優先度とレバー長さの長い度合によるロック解除動作有効性の優先度とを自由に設定することができる。
【0012】
押動レバー長さは、少なくとも、ほぼ前記初期回動時と後続回動時とで変化することを特徴とするものとできる。
【0013】
このような構成では、初期回動時と後続回動時とで、操作抵抗の軽減を優先したレバー操作とロック解除動作有効性を優先したレバー操作とを切り替え実行できる。
【0014】
押動レバー長さは、初期回動時は後続回動時よりも小さいことを特徴とするものとできる。
【0015】
このような構成では、初期回動時に操作抵抗の軽減を優先したレバー操作とし、後続回動時はロック解除動作有効性を優先したレバー操作とすることができる。
【0016】
初期回動のほぼ終了時点あたりでのロック部材の後退量は、器体側との係合が外れ切れない半ロック状態となるように、初期回動時の押動レバー長さを設定してあることを特徴とするものとできる。
【0017】
このような構成では、初期回動時はロック解除を目的とせずに、蓋操作レバーの後端側の引き上げ操作のための必要最小限の起き上がりが得られる程度に、初期回動時の押し下げ操作量を少なくし、後続回動時の引き上げ操作につきロック解除が確実に達成される十分な操作量として対応することができる。
【0018】
ロック部材のロック解除位置から半ロックへの動きに連動して、蓋操作レバーをほぼ初期回動位置近傍に移動させ半ロック状態を外部に表示させる半ロック表示駆動手段を設けたことを特徴とするものとできる。
【0019】
このような構成では、復帰位置にある蓋操作レバーがロック部材のロック解除側への後退動作に半ロック表示駆動手段を介し、半ロック表示手段の動作伝達特性に応じ連動するので、蓋体が閉じられるときのロック部材による器体との係合が中途半端な半ロック状態であれば、蓋操作レバーは初期回動位置近傍までしか復帰されず、そのときの後端側の起き上がり状態にて半ロック状態であることを外部に表示することができる。
【0020】
本発明のそれ以上の特徴は、以下の具体的な説明および図面によって明らかになる。また、本発明の各特徴はそれ自体単独で、あるいは複合して種々な組み合わせで採用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電気ポットによれば、蓋操作レバーの前端側での押し下げによる初期回動時および、これに続く初期回動によって起き上った後端側での引き上げによる後続回動時において、付勢されたロック部材に連動して復帰する1つのレバーだけで、レバー操作における初期回動開始から後続回動終了までの回動位置ないしは回動範囲ごとにレバー長さの短い度合による遊びを必要としない操作抵抗軽減の優先度とレバー長さの長い度合によるロック解除動作有効性の優先度とを自由に設定し、操作し易さやロック解除の確実性に簡単に対応することができる。
【0022】
この場合、初期回動時と後続回動時とでの、操作抵抗の軽減を優先したレバー操作とロック解除動作有効性を優先したレバー操作との少ない切り替えにて、操作し易さとロック解除の確実性により単純に対応できる。
【0023】
特に、初期回動時に操作抵抗の軽減を優先したレバー操作とすることで、ロック部材との間に遊びがない、従ってロック解除に対し全く無駄になることがないものの、ロック解除を目的としないレバー長さの短さ度合による簡単かつ迅速に蓋操作レバーの後端側が起き上がる引き上げ操作への移行状態とし、引き上げ操作による後続回動時はロック解除動作有効性を優先したレバー長さの長さ度合によるレバー操作にて効率よく確実にロック解除することができる。
【0024】
初期回動時はロック解除を目的とせずに、蓋操作レバーの後端側の引き上げ操作のための必要最小限の起き上がりが得られる程度の少ない押し下げ量での簡単操作で引き上げ操作による後続回動操作に移行し、後続回動にて十分な操作量を得て効率のよい確実なロック解除に対応できる。
【0025】
蓋体が閉じられるときのロック部材が半ロック状態であれば、蓋操作レバーは初期回動位置近傍までの途中復帰による後端側の起き上がり状態にて半ロック状態であることを外部に表示し、蓋体を上方から押圧したり、蓋体を閉め直すなど、完全なロック状態とすることをユーザに促せる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明におけるいくつかの実施の形態について図1〜図6を参照しながら説明する。しかし、本発明は、特に限定的な記載がない限りは、本発明の範囲を以下の実施形態に限定する趣旨のものではなく、単なる説明例にすぎない。
【0027】
本実施の形態は、図1に示すように、定置使用される器体1において、内容液をヒータ4で加熱して貯湯し、この貯湯されている内容液を電動ポンプ14および手動ベローズポンプ11を選択使用して1つの注出路5を通じ外部に吐出する電気ポットの場合の一例である。しかし、本発明はこれに限られることはなく、種々な貯湯をしてこの貯湯している内容液を各種の使用に供する電気ポット一般に適用することができる。
【0028】
本実施の形態1の電気ポットは、器体1に収容した内容器3と、内容器3内の内容液を加熱するヒータ4と、内容液を外部に案内する注出路5と、この注出路5を通じて内容液を吐出させる電動ポンプ14と、内容器3の開口7を閉じる蓋体8と、この蓋体8の内部を通じて内容器3内で発生する蒸気を外部に放出する蒸気通路9と、蓋体8の内部に設けられて、内容器3内の内溶液を加圧し注出路5に押し出して吐出する手動ベローズポンプ11と、注出路5および蒸気通路9に個別に設けられて、器体1が横転したとき注出路5および蒸気通路9を閉じて内容液が外部に流出しないようにする止水弁38、23とを備えている。注出路5には、前記止水弁38と共に器体1が横転に到らない所定角度前傾したときにも注出路5を閉じて内容液が流出しないようにする止水弁38aも設けられている。
【0029】
内容器3は、ステンレス鋼等の金属製の内体3aと、同金属製の外体3bとの二重構造よりなり、内体3aの口部と外体3bの口部とを気密に接合した後、加熱下での真空排気処理を施して内部を真空空間3cとしている。内体3aは、その口部7を胴径よりも小径として、保温性を向上するようにしてある。なお、内容器3は、内体3aだけの一重容器としてもよく、この構成では、特に、内容器3と外装ケース2との間に図示する断熱材40を設けて保温性が得られるようにすることができる。本実施の形態では断熱材40を必須とせずに保温性が得られる。
【0030】
外装ケース2は、合成樹脂製で底と胴とが一体に形成されているが、金属製でもよく、胴が金属製である場合は、底、胴とも合成樹脂製で形成し、また成形や全体の組み立てなどとの関係から必要に応じて分割されてもよい。この内容器3内に貯溜される内容液はヒータ4により外部から加熱されて貯湯され、電動ポンプ14または手動ベローズポンプ11により注出路5を通じ外部に吐出されるようにしている。
【0031】
注出路5は、内容器3の胴部の外側を立ち上がる立ち上がり部を透明または半透明のガラスや樹脂などの材料で形成された液量表示パイプ5aとして外装ケース2の図示しない液量表示窓を通じ外部から視認されるようにしている。また、注出路5は、器体1の肩部材16の前部に突出する嘴状突出部34と外装ケース2側のパイプカバー部37との間の前記立ち上がり部と連通する部分に止水弁ユニット5cを構成して、この止水弁ユニット5cに前記横転時の止水弁38および前傾時の止水弁38aをそれぞれ設けている。そして、注出路5の吐出口5dは、パイプカバー部37の底部開口を通じて外部に下向きに開口している。
【0032】
器体1の肩部16は、外装ケース2の上端に嵌め合わせた合成樹脂製の肩部材16とし、この肩部材16が形成する器体1の開口18には前記蓋体8が設けられ、この開口18を内容器3の開口7とともに開閉するようにしてある。この開閉のために蓋体8は、そのヒンジピン22を肩部材16の後部に設けられた軸受部19によって軸受されて着脱できるように枢支されている。
【0033】
なお、蓋体8の所定開き度以上でヒンジピン22を軸受部19から前部側に引き出して蓋体8を取り外し、また逆に取り付けられるようにしている。これに対応して軸受部19には係止位置に向けばね付勢されたロック部材41を設け、そのままでヒンジピン22は受け入れは許容するが、引き出しは付勢に抗した係止位置からの後退操作なしでは阻止するようにしている。
【0034】
蓋体8は、手動ベローズポンプ11を内臓して、外装上面を形成する上蓋6と、この上蓋6の下面に当てがいネジ止めなどにより固着されたステンレス鋼などの金属製の内蓋10とで基本構造が形成され、内蓋10と上蓋6との間に挟み込まれたシールパッキング56が内容器3の開口7の口縁上面に圧接して開口7を密に閉じるようにしてある。
【0035】
蓋体8の内容器3内からの蒸気を外部に逃がす蒸気通路9は、蓋体8の上面に蒸気出口9aが形成され、内容器3内に臨ませた下板の給気、蒸気逃がし切り替え弁11d下方に蒸気入口9bが形成されている。蒸気通路9の途中には、器体1が横転して内容液が進入してきた場合にそれを一時溜め込みあるいは迂回させて蒸気出口9aに至るのを遅らせる貯溜経路9cを設けてある。
【0036】
電動ポンプ14は、注出路5の途中に設けられた遠心ポンプであって内容器3の直ぐ下に位置し、操作パネル35での給湯キー操作があると、内容器3内の貯湯中の内容液を、注出路5を通じて器体1外に臨む吐出口5dに吐出する。
【0037】
手動ベローズポンプ11は、蓋体8内に設けられたベローズポンプであって、蓋体8の上面に臨む押圧板11aにより復元ばね11bに抗して押圧操作することにより、加圧空気を吐出口11cと蒸気入口9bとの給気、蒸気逃がし切り替え弁11dにて蒸気通路9から切り離した連通状態を通じて内容器3内に送り込み内容液を加圧して同様に注出路5を通じて器体1外に臨む吐出口5dに吐出する。また、手動ベローズポンプ11が復動すると給気、蒸気逃がし切り替え弁11dは、蒸気入口9bを蒸気通路9に開放し蒸気を外部に逃がせるようにしている。また、手動ベローズポンプ11には、吸気弁11eが設けられ、復元ばね11bによる復元の際に吸気口11fを開いて吸気でき、押圧板11aによる押圧操作により吸気口11fを閉じて内容器3内に圧縮空気を送り込むようにしている。
【0038】
このように電動ポンプ14と手動ベローズポンプ11とを使い分けることを1つの注出路5を共用することができて、内容液を電動でも手動でもいずれにおいても使用状況に応じて選択的に注出することができる。蓋体8内にも断熱材40を設けて内容器3の真空構造だけの場合よりも保温性を高めている。
【0039】
なお、このポンプ構成に限定するものではなく、手動ベローズポンプ若しくは電動ポンプの単独の構成にて内容液を注する構成といてもよい。
【0040】
外装ケース2の底と内容器3の底部との間の空間には、前記電動ポンプ14とともに配置され、胴部内にはヒータ4や電動ポンプ14を通電制御する制御基板29を収容する回路ボックスが設置されている。内容器3の底部の中央には温度センサ33が下方から当てがわれ、内容液のその時々の温度を検出して、湯沸しや保温モードで内容液を加熱制御する場合の温度情報を得る。
【0041】
また、外装ケース2の底部2aを形成する開口部には、下方から底板42をねじ止めや部分的な係合により取付け、底板42の外周部には回転リング43が回転できるように設けられ、器体1がテーブル面などに定置されたときに回転リング43の上で軽く回転して向きを変えられるようにしてある。
【0042】
器体1の肩部材16の前部に突出する嘴状突出部34の上面には操作パネル35が設けられ、この操作パネル35にモード設定などを操作する操作部や、操作に対応する表示、あるいは動作状態を表示する表示部が設けられている。例えば、操作部や表示部として、電動ポンプ14を働かせる給湯キー、この給湯キーの操作機能を不能にしたり、それを解除したりする給湯ロックキー、保温温度選択キー、再沸騰およびカルキ除去をロータリ式に切り替え設定する再沸騰・カルキ除去キー、即席麺などの仕上がり時間を設定し仕上がり時点が告知されるようにするためのカップメンタイマキー、および電気ポットの動作状態を示す表示部などが設けられている。このために、操作パネル35の下には前記操作および表示に対応する信号の授受および動作を行う操作基板36が設けられている。
【0043】
このような本実施の形態1における定置型の電気ポットでは、蓋体8の前部には閉じ位置で肩部材16側の係止部24に係合して蓋体8を閉じ位置にロックするロック部材25が設けられ、蓋体8が閉じられたときにその閉じ力により係止部24に係合するようにばね26の付勢によってロック位置に常時突出するようにしている。そしてこれに対応して蓋体8にはロック部材25を後退操作して前記ロックを解除し、蓋体8を開き操作する蓋操作レバー20が設けられている。
【0044】
蓋操作レバー20は、蓋体8の上蓋6内に設けた軸受28に軸30によって枢支されて、ロック部材25と当接部20aが常時当接して遊びなく連動するようになっており、前端20c側を親指などで押し下げて反時計回りに初期回動させることで、ロック部材25をバネ26に抗して後退させながら後端20b側を起き上がらせる。続いて図2に仮想線で示すように起き上がった後端20b側を他の指を引っ掛けて、または親指との協働による摘み状態で引き上げてさらに反時計回りに後続回動させることによりロック部材20をさらに後退させて器体1側の係止部24との係合を外して蓋体8の閉じ位置へのロックを解除することができ、このロック解除状態から蓋操作レバー20により蓋体8を持ち上げこれを開くことができる。
【0045】
ロック部材25は、上蓋6の下板6bに設けたロック受け部材17により前後摺動自在に保持され、先端部25aに係止部24との係合爪25bを形成してバネ26により常時係合方向に付勢するようにしている。係止部24は、肩部材16の開口18の周壁に貫通するよう形成した係合孔であって、前記ロック部材25の係合爪25aが挿入されることで係合し、蓋体8を閉じ状態にロックするようにしている。
【0046】
ここで、本実施の形態では、特に、図3(a)〜図5(a)を参照して、既述した、蓋体8の前部に設けられて、蓋体8に軸30で枢支されて前端20b側を図3(a)から図4(a)に示すように指で押し下げるときの初期回動と、これに続いて初期回動で起き上がった図4(a)での後端20b側を図4(a)から図5(a)のように持ち上げるときの後続回動とを伴いロック部材25をばね26に抗して後退させ器体1側との係合を外して前記ロックを解除し、以降蓋体8を持ち上げ開き操作する蓋操作レバー20のロック部材25を後退させる当接部20aにおいて、初期および後続の回動における前記枢支点との間の押動レバー長さが図4(a)に示すL4、L5などと適宜に変化するようにしている。変化は基本的には、連続か、複数か、変化の状態は自由に選択し、設定できる。
【0047】
このように、定置された器体1でのロック部材25によって閉じ状態にロックされた蓋体8のロックを解除するのに、蓋操作レバー20の前端20c側での押し下げによる図3(a)から図4(a)への初期回動時および、これに続く初期回動によって起き上った後端20b側での引き上げによる図4(a)から図5(a)への後続回動時において、蓋操作レバー20のロック部材25を器体1側との係合を外すロック解除側に後退させる当接部20aの、蓋操作レバ20の蓋体8への枢支点Oからの押動レバー長さが回動位置ないしは回動範囲ごとに前記L4、L5などと適宜に変化させ、異ならせるので、初期および後続の回動時の回動位置ないしは回動範囲ごとに適したレバー長さを選択し、付勢されたロック部材25に連動して復帰する1つのレバーだけで、レバー操作における初期回動開始から後続回動終了までのレバー長さの短い度合による遊びを必要としない操作抵抗軽減の優先度とレバー長さの長い度合によるロック解除動作有効性の優先度とを自由に設定することができる。
【0048】
この結果、蓋操作レバー20の前端20c側での押し下げによる初期回動時および、これに続く初期回動によって起き上った後端20b側での引き上げによる後続回動時において、付勢されたロック部材に連動して復帰する1つのレバーだけで、レバー操作における初期回動開始から後続回動終了までの回動位置ないしは回動範囲ごとにレバー長さの短い度合による遊びを必要としない操作抵抗軽減の優先度とレバー長さの長い度合によるロック解除動作有効性の優先度とを自由に設定し、操作し易さやロック解除の確実性に簡単に対応することができる。
【0049】
このような押動レバー長さを、少なくとも、ほぼ前記初期回動時と後続回動時とのL4、L5などのように変化させれば、初期回動時と後続回動時とで、操作抵抗の軽減を優先したレバー操作とロック解除動作有効性を優先したレバー操作とを切り替え実行できる。従って、初期回動時と後続回動時とでの、操作抵抗の軽減を優先したレバー操作とロック解除動作有効性を優先したレバー操作との少ない切り替えにて、操作し易さとロック解除の確実性により単純に対応できる。
【0050】
しかも、本実施の形態はそうであるように、初期回動時の押動レバー長さL4は、後続回動時の押動レバー長さL5よりも小さくすることによって、部品点数および組み立て工数の少ない、故障しにくく安価な簡単なロック機構、ロック解除構造のままで、初期回動時に操作抵抗の軽減を優先したレバー操作として初期操作の簡易化を遊びや、後続回動時はロック解除動作有効性を優先したレバー操作とすることができる。
【0051】
さらに、前記2通りの押動レバー長さL1、L2は、蓋操作レバー20当接部20に押動レバー長さL1、L2を満足する当接点20a1、20a2を設けるだけで簡単に達成でき、押動レバー長さL1を持った当接点20a1は図3(a)の実線位置から図4(a)の仮想線位置までの初期回転終了時点までロック部材25の先端部25aに当接し続け、図4(a)の仮想線位置からは当接点20a1に代わって当接点20a2がロック部材25の先端部25aに当接し始め、図5(a)の後続回動終了まで当接し続ける。
【0052】
ここに、図3(a)〜図5(a)を参照して説明した本実施の形態のロック解除動作では、初期回動時に操作抵抗の軽減を優先したレバー操作とするもので、ロック部材25との間に遊びがない、従ってロック解除に対し全く無駄になることがないものの、ロック解除を目的としないレバー長さL4の短さ度合による簡単かつ迅速に蓋操作レバー20の後端20b側が起き上がる引き上げ操作への移行状態とし、引き上げ操作による後続回動時はロック解除動作有効性を優先したレバー長さL5の長さ度合によるレバー操作にて効率よく確実にロック解除することができる。
【0053】
これに比較して図3(b)〜図5(b)に示す従来例が押動レバー長さLが不変で図7を参照して説明したように、蓋操作レバーaの回動量とロック部材25の後退量とがほぼ直線的であるのに対し、図6に示すように初期回動時はレバー回動量に対するロック部材25の後退量が少なくなる傾斜角の小さな直線比例をほぼ示し、後続回動時は
レバー回動量に対するロック部材25の後退量が少なくなる傾斜角の小さな直線比例をほぼ示し、初期回動操作が軽快に行われることの証左である。
【0054】
これを図示例では、蓋操作レバー20から下方に延びるように一体成形した当接部20aの下端を当接点20a1、20a2を直線で繋がるように斜めに切った単純な形状にて実現しており、押動レバー長さのL4、L5の切り替えがスムーズに耐久性よく行われる。
【0055】
本実施の形態では、さらに、蓋操作レバー20の押し下げ点20c1と枢支点Oとの間の操作レバー長さL7は、従来同様の理由で蓋操作レバー20の引き上げ操作点20b1と枢支点Oとの間の操作レバー長さL6よりも小さくするが、押動レバー長さL4よりも大きく、具体的には2倍近くに大きくして、初期回動の操作抵抗がさらに軽減されるようにしている。また、操作レバー長さL6は後続回動時の押動レバー長さL5の2倍強と、図8の従来例が2倍弱であるのに対しレバー比を大きくし操作抵抗を軽減している。
【0056】
因みに、ロック部材25の動作量は初期回動時2.6mmと、後続回動時の9.61mmに対し大幅に短縮している上にm、初期回動時の押し下げ操作抵抗負荷は700g程度と従来例に比し1/2強とほぼ半減し、後続回動時の引き上げ操作抵抗負荷も600gと従来例に比し1/2強とほぼ半減した。
【0057】
なお、図4(a)に示すように、初期回動のほぼ終了時点あたりでのロック部材20の後退量は、器体1側との係合が外れ切れない半ロック状態となるように、初期回動時の押動レバー長さL4を設定してある。これにより、初期回動時はロック解除を目的とせずに、蓋操作レバー20の後端側の引き上げ操作のための必要最小限の起き上がりが得られる程度に、初期回動時の押し下げ操作量を少なくし、後続回動時の引き上げ操作につきロック解除が確実に達成される十分な操作量として対応することができる。
【0058】
結果、初期回動時はロック解除を目的とせずに、蓋操作レバー20の後端20b側の引き上げ操作のための必要最小限の起き上がりが得られる程度の少ない押し下げ量での簡単操作で引き上げ操作による後続回動操作に移行し、後続回動にて十分な操作量を得て効率のよい確実なロック解除に対応できる。
【0059】
また、図3(a)〜図5(a)に示すように、ロック部材25のロック解除位置から半ロックへの動きに連動して、蓋操作レバー20をほぼ初期回動位置近傍に移動させ半ロック状態を外部に表示させる半ロック表示駆動手段31を設けてあり、復帰位置にある蓋操作レバー20がロック部材25のロック解除側への後退動作に半ロック表示駆動手段31を介し、半ロック表示手段31の動作伝達特性に応じ連動するので、蓋体8が閉じられるときのロック部材25による器体1側との係合が中途半端な半ロック状態であれば、蓋操作レバー20は初期回動位置近傍までしか復帰されず、そのときの後端側の起き上がり状態にて半ロック状態であることを外部に表示することができる。
【0060】
このように、蓋体8が閉じられるときのロック部材25が半ロック状態であれば、蓋操作レバー20は初期回動位置近傍までの途中復帰による後端側の起き上がり状態にて半ロック状態であることを外部に表示し、蓋体8を上方から押圧したり、蓋体を閉め直すなど、完全なロック状態とすることをユーザに促せる。半ロック表示手段31は蓋操作レバー20に一体形成した受動片としてあるが、ロック部材25の半ロック状態の復帰が検知でき、この検知に基づき蓋操作レバー20が起き上がり状態にできれば、どのように構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は定置型の電気ポットに実用して、蓋操作レバーによる蓋体の閉じ位置へのロック解除とその後の蓋体の平開き操作が、簡単な構造のまま、前端側の押し下げによる初期回動と、それに続く後端側の引き上げによる後続回動とによって、軽快かつ確実に達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態に係る電気ポットの断面図である。
【図2】図1における電気ポットの蓋体の斜視図である。
【図3】図1における電気ポットの蓋体のロック機構、ロック解除構造を、従来例と対比して示すロック状態での断面図である。
【図4】図1における電気ポットの蓋体のロック機構、ロック解除構造を、従来例と対比して示す押し下げ操作による初期回動状態、半ロック状態での断面図である。
【図5】図1における電気ポットの蓋体のロック機構、ロック解除構造を、従来例と対比して示す引き上げ操作による後続回動状態、ロック解除状態での断面図である。
【図6】本発明の実施の形態での蓋操作レバーの回転角とロック部材の動作距離との関係を示すグラフである。
【図7】従来例での蓋操作レバーの回転角とロック部材の動作距離との関係を示すグラフである。
【図8】電気ポットの従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 器体
2 外装ケース
3 内容器
4 ヒータ
5 注出路
6 上蓋
8 蓋体
9 蒸気通路
11 手動ベローズポンプ
14 電動ポンプ
16 肩部材
20 蓋操作レバー
20a 当接部
20a1、20a2当接点
20b 後端
20b1引き上げ操作点
20c 前端
20c1押し下げ操作点
22 ヒンジピン
24係止部
25 ロック部
25a前部
25b係合爪
26ばね
30 軸
L4、L5押動レバー長さ
L6、L7操作レバー長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋体を器体後部でのヒンジ連結部を中心に閉じると、蓋体の前部に突出するようにばねで付勢されたロック部材が器体側に係合して蓋体を閉じ位置に自動ロックするロック機構を備え、器体に液体を入れて蓋体を閉じた状態で湯沸しや保温をして貯湯し、内容液をポンプにより外部に吐出し使用できるようにした電気ポットにおいて、
蓋体の前部に、蓋体に枢支されて前端側を指で押し下げるときの初期回動と、これに続いて初期回動で起き上がった後端側を持ち上げるときの後続回動とを伴いロック部材をばねに抗して後退させ器体側との係合を外して前記ロックを解除し、以降蓋体を持ち上げ開き操作する蓋操作レバーを設け、
この蓋操作レバーは、ロック部材を後退させるときの初期および後続の回動におけるロック部材への当接部と、前記枢支点と、の間の押動レバー長さが変化するようにしたことを特徴とする電気ポットの蓋ロック解除操作構造。
【請求項2】
押動レバー長さは、少なくとも、ほぼ前記初期回動時と後続回動時とで変化することを特徴とする請求項1記載の電気ポットの蓋ロック解除操作構造。
【請求項3】
押動レバー長さは、初期回動時は後続回動時よりも小さいことを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の電気ポットの蓋ロック解除操作構造。
【請求項4】
初期回動のほぼ終了時点あたりでのロック部材の後退量は、器体側との係合が外れ切れない半ロック状態となるように、初期回動時の押動レバー長さを設定してあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気ポットの蓋ロック解除操作構造。
【請求項5】
ロック部材のロック解除位置から半ロックへの動きに連動して、蓋操作レバーをほぼ初期回動位置近傍に移動させ半ロック状態を外部に表示させる半ロック表示駆動手段を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気ポットの蓋ロック解除操作構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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