説明

電気二重層キャパシタ及び電気二重層キャパシタ用非水電解液

【課題】長期信頼性、特に電気二重層キャパシタの膨張抑制効果に優れた電気二重層キャパシタ及び該電気二重層キャパシタ用非水電解液を提供する。
【解決手段】正極、負極、並びに、非水溶媒及び電解質塩を含む非水電解液を備える電気二重層キャパシタであって、
前記非水溶媒が、一般式(1):
Rf−O−Rf (1)
(式中、Rf及びRfは同じか又は異なり、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のフルオロアルキル基;ただし、Rf及びRfの少なくとも一方はフルオロアルキル基)で示される含フッ素エーテルを含有し、かつ、
下記(I)、(II)で示される化合物を、前記含フッ素エーテルに対して合計で5000ppm以下含有することを特徴とする、電気二重層キャパシタである。
(I)含フッ素不飽和化合物
(II)一般式(2):
RfOH (2)
(式中、Rfは前記同様)
で示される水酸基含有化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の化合物の含有量を低下させた非水溶媒、及び、電解質塩を含む非水電解液を備える電気二重層キャパシタに関する。また、本発明は、電気二重層キャパシタに用いる非水電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
正極又は負極の少なくとも一方が分極性電極である電気二重層キャパシタの電解質塩溶解用溶媒は、耐電圧が3V以上で安定して使用できることが望ましく、その観点からエチレンカーボネートと酸化電位(耐電圧)の高い環状カーボネートであるプロピレンカーボネートとの併用が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、その耐電圧の限界は2.7V付近に止まっている。
【0003】
また、その他にも、耐電圧の向上を目的として、スルホラン又はその誘導体と特定の鎖状炭酸エステル(鎖状カーボネート)を含む非水系溶媒を用いることや(例えば、特許文献2参照)、安全性の改良を目的として、特定の電解質と含フッ素有機溶媒を組み合わせた電解液が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
しかしながら、これらの従来技術においては、高耐電圧と長寿命という電気二重層キャパシタに求められる特性が、必ずしもバランスよく達成されているとは言えないものであった。特に、特許文献2の電解液では、キャパシタの内部抵抗が高く長期信頼性の点でさらなる改善の余地があった。
【0005】
また、非水系電解液電池の高耐電圧化、及び、安全性を向上させる方法として、HCFCFCHOCFCFH等の含フッ素エーテルを電解液として使用する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、特許文献4の電解液を用いた電気二重層キャパシタでは、長期信頼性、特に膨張抑制効果の点で問題がある場合があった。
【0006】
このように、従来技術においては、電気二重層キャパシタ用電解液を用いた電気二重層キャパシタの長期信頼性、特に膨張抑制効果の点については十分な検討がなされていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−208372号公報
【特許文献2】特開平08−306591号公報
【特許文献3】特開2001−143750号公報
【特許文献4】特許第3807459号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、長期信頼性、特に電気二重層キャパシタの膨張抑制効果に優れた電気二重層キャパシタ、及び、該電気二重層キャパシタ用非水電解液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々の検討を重ねた結果、特定の化合物含有量を低下させた非水溶媒を用いることにより、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、正極、負極、並びに、非水溶媒及び電解質塩を含む非水電解液を備える電気二重層キャパシタであって、
前記非水溶媒が、一般式(1):
Rf−O−Rf (1)
(式中、Rf及びRfは同じか又は異なり、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のフルオロアルキル基;ただし、Rf及びRfの少なくとも一方はフルオロアルキル基)で示される含フッ素エーテルを含有し、かつ、
下記(I)、(II)で示される化合物を、前記含フッ素エーテルに対して合計で5000ppm以下含有することを特徴とする、電気二重層キャパシタに関する。
(I)含フッ素不飽和化合物
(II)一般式(2):
RfOH (2)
(式中、Rfは前記同様)
で示される水酸基含有化合物。
【0011】
一般式(1)で示される含フッ素エーテルが、HCFCFCHOCFCFHであり、
含フッ素不飽和化合物(I)が、
(I−1)CF=CFCHOCFCFH、及び、
(I−2)HCFCF=CHOCFCF
であり、
水酸基含有化合物(II)が、
(II−1)HCFCFCHOH
であることが好ましい。
【0012】
一般式(1)で示される含フッ素エーテルが、HCFCFCHOCFCFHCFであり、
含フッ素不飽和化合物(I)が、
(I−3)CF=CFCHOCFCFHCF
(I−4)HCFCFCHOCF=CFCF
(I−5)HCFCFCHOCFCF=CF、及び、
(I−6)HCFCF=CHOCFCFHCF
であり、
水酸基含有化合物(II)が、
(II−1)HCFCFCHOH
であることが好ましい。
【0013】
一般式(1)で示される含フッ素エーテルの含有量が、非水溶媒中0.01〜90重量%であることが好ましい。
【0014】
更に、本発明は、非水溶媒、及び、電解質塩を含む電気二重層キャパシタ用非水電解液であって、
前記非水溶媒が、一般式(1):
Rf−O−Rf (1)
(式中、Rf及びRfは同じか又は異なり、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のフルオロアルキル基;ただし、Rf及びRfの少なくとも一方はフルオロアルキル基)で示される含フッ素エーテルを含有し、かつ、
下記(I)、(II)で示される化合物を、前記含フッ素エーテルに対して合計で5000ppm以下含有することを特徴とする、電気二重層キャパシタ用非水電解液に関する。
(I)含フッ素不飽和化合物
(II)一般式(2):
RfOH (2)
(式中、Rfは前記同様)
で示される水酸基含有化合物。
【0015】
上記非水電解液は、水分含有量が20ppm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、長期信頼性、特に電気二重層キャパシタの膨張抑制効果に優れた電気二重層キャパシタ、及び、該電気二重層キャパシタ用非水電解液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の電気二重層キャパシタは、正極、負極、並びに、非水溶媒及び電解質塩を含む非水電解液を備え、
前記非水溶媒が、一般式(1):
Rf−O−Rf (1)
(式中、Rf及びRfは同じか又は異なり、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のフルオロアルキル基;ただし、Rf及びRfの少なくとも一方はフルオロアルキル基)で示される含フッ素エーテルを含有し、かつ、
下記(I)、(II)で示される化合物を、前記含フッ素エーテルに対して合計で5000ppm以下含有することを特徴とする。
(I)含フッ素不飽和化合物 (以下、化合物(I)ということもある)
(II)一般式(2):
RfOH (2)
(式中、Rfは前記同様)
で示される水酸基含有化合物(以下、化合物(II)ということもある)。
【0018】
前記一般式(1)で示される含フッ素エーテルの具体例としては、例えば、HCFCFCHOCFCFH、CFCFCHOCFCFH、HCFCFCHOCFCFHCF、CFCFCHOCFCFHCF、C13OCH、C13OC、C17OCH、C17OC、CFCFHCFCH(CH)OCFCFHCF、HCFCFOCH(C、HCFCFOC、HCFCFOCHCH(C、HCFCFOCHCH(CHなどがあげられる。これらの中でも、長期信頼性の点から、HCFCFCHOCFCFH、及び、HCFCFCHOCFCFHCFからなる群から選ばれる1種以上の化合物であることが好ましく、HCFCFCHOCFCFHがより好ましい。
【0019】
また、本発明で用いる含フッ素エーテルのフッ素含有率は50重量%以上であることが、耐酸化性、安全性が良好な点から好ましい。特に好ましいフッ素含有率は55〜66重量%である。フッ素含有率は構造式から算出したものである。
【0020】
前記一般式(1)で示される含フッ素エーテルの含有量は、非水溶媒中0.01〜90重量%であることが好ましい。含フッ素エーテルの含有量が、0.01重量%未満では安全性及び高電圧化の向上がほとんど見られない傾向があり、90重量%を超えると電解液が二層分離したり粘度が高くなりすぎて低温での負荷特性が悪くなる傾向がある。下限値としては、0.1重量%がより好ましく、0.5重量%が更に好ましい。上限値としては、60重量%がより好ましく、50重量%が更に好ましい。
【0021】
含フッ素不飽和化合物(I)は、一般式(1)で示される含フッ素エーテルを合成する際に発生する副生成物に由来するものである。具体的には、一般式(1)で示される含フッ素エーテルからフッ化水素(HF)が脱離して不飽和結合が生じたものである。更に具体的には、例えば、(I−1)CF=CFCHOCFCFH、(I−2)HCFCF=CHOCFCFH、(I−3)CF=CFCHOCFCFHCF、(I−4)HCFCFCHOCF=CFCF、(I−5)HCFCFCHOCFCF=CF、(I−6)HCFCF=CHOCFCFHCFを挙げることができる。
【0022】
また、水酸基含有化合物(II)としては、一般式(1)で示される含フッ素エーテルを合成する際の原料に由来するものであり、一般式(2):
RfOH (2)
で示されるものである。ここで、Rfとしては、一般式(1)と同様のものを挙げることができ、水酸基含有化合物(II)として具体的には、(II−1)HCFCFCHOHを挙げることができる。
【0023】
本明細書においては、(I)含フッ素不飽和化合物、(II)水酸基含有化合物、上記特定の化合物(I−1)〜(I−6)、(II−1)を、単に、化合物(I)、化合物(II)、化合物(I−1)〜(I−6)、化合物(II−1)ということがある。
【0024】
本発明においては、化合物(I)が、化合物(I−1)及び化合物(I−2)であり、化合物(II)が、化合物(II−1)である組み合わせ、又は、化合物(I)が、化合物(I−3)、化合物(I−4)、化合物(I−5)及び化合物(I−6)であり、化合物(II)が、化合物(II−1)である組み合わせが好ましい。
【0025】
前述の通り、化合物(I)、(II)は、含フッ素エーテルに含まれる不純物である。従って、本発明で用いる含フッ素エーテルを予め精製して用いることにより、非水溶媒中の化合物(I)、(II)の含有量を前記範囲内(含フッ素エーテルに対して合計で5000ppm以下)とすることができる。ここで、ppmは、重量基準であり、含フッ素エーテルに対して5000ppm以下とは、含フッ素エーテル100重量部に対して、0.5重量部以下であることを示す。
【0026】
化合物(I)、(II)の合計量が5000ppmより多いと、高温耐久試験を実施した際に、電気二重層キャパシタが膨張してしまうため、好ましくない。化合物(I)、(II)の中でも、水酸基含有化合物(II)は、Liや無機アニオンと容易に反応をしてしまうため、水酸基含有化合物(II)が残っている場合は高温耐久試験での容量劣化が大きい傾向がある。また、含フッ素不飽和化合物(I)は二重結合を有するため、これらが多く残っている場合、容易に電解液中の水分等と反応し分解してしまう傾向がある。化合物(I)、(II)の含有量の上限値としては、前記含フッ素エーテルに対して合計で3500ppmであることが好ましく、2000ppmであることがより好ましい。化合物(I)、(II)の合計量の下限値としては、低ければ低いほど好ましい。例えば、20ppmであってよい。
【0027】
更に、分子起動計算により求めた化合物(I)、(II)のHOMOエネルギーは、一般式(1)で示される含フッ素エーテルよりも高いため、耐酸化性が弱い。そのため、高電圧化した場合に分解してしまい、劣化の要因になると考えられる。このことから含フッ素エーテル中の化合物(I)、(II)の含有量が少ないほど、電気二重層キャパシタの膨張を抑制することができると考えられる。
【0028】
一般式(1)で示される含フッ素エーテルの精製方法としては、例えば、理論段数5段以上の蒸留塔を用いて精留する方法が挙げられる。具体的には、例えば、不純物を含む含フッ素エーテル(以下、含フッ素エーテル粗液ということもある)に、含フッ素アルキルアルコールの抽出溶媒(分離剤)として水を用いて向流抽出を施す方法が挙げられる。
【0029】
向流抽出法は、液−液抽出法の一種であり、抽出に縦型の抽出装置を用い、比重の大きな含フッ素エーテル(例えば、比重1.5程度)粗液を抽出装置の上部から注入し、下部から水(比重1.0)を注入し、要すれば攪拌しながら、水滴として装置上方に浮かび上がらせ、その間に含フッ素エーテル粗液と水を十分に接触させることで含フッ素アルキルアルコールの抽出を個々の水滴で行う方法である。抽出に供された水は装置上方から抜き取られる。
【0030】
向流抽出装置としては、攪拌機を多段に設けたミキサー−セトラー型抽出装置が代表的なものである。
【0031】
ここで、一般式(1)で示される含フッ素エーテルの中でも、より好ましい具体例である、HCFCFCHOCFCFHとHCFCFCHOCFCFHCFについて説明をする。
【0032】
HCFCFCHOCFCFHは、通常、HCFCFCHOH(化合物(II−1))とCF=CFとを反応させることにより合成される。そのため、精製の仕方によっては原料物質であるHCFCFCHOH(化合物(II−1))や副生成物であるCF=CFCHOCFCFH(化合物(I−1))やHCFCF=CHOCFCFH(化合物(I−2))が残る場合がある。
【0033】
また、HCFCFCHOCFCFHCFは、通常、HCFCFCHOH(化合物(II−1))とCFCF=CFとを反応させることにより合成される。そのため、精製の仕方によっては原料物質であるHCFCFCHOH(化合物(II−1))や副生成物であるCF=CFCHOCFCFHCF(化合物(I−3))、HCFCFCHOCF=CFCF(化合物(I−4))、HCFCFCHOCFCF=CF(化合物(I−5))、HCFCF=CHOCFCFHCF(化合物(I−6))が残る場合がある。
【0034】
従って、前記一般式(1)で示される含フッ素エーテルが、HCFCFOCHCFCFHである場合、化合物(I)が、化合物(I−1)及び化合物(I−2)であり、化合物(II)が、化合物(II−1)である組み合わせであることが好ましく、また、前記一般式(1)で示される含フッ素エーテルが、HCFCFCHOCFCFHCFである場合、化合物(I)が、化合物(I−3)、化合物(I−4)、化合物(I−5)及び化合物(I−6)であり、化合物(II)が、化合物(II−1)である組み合わせが好ましい。
【0035】
本発明においては、非水溶媒中に、一般式(3):
−(CN) (3)
(Rは炭素数が1〜10のアルキル基、又は、炭素数1〜10のアルキレン基であり、nは1又は2である)
で示されるニトリル化合物を含有させると、高温耐久性を維持したまま、出力特性を向上できるため好ましい。
【0036】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素数が1〜10のアルキル基があげられ、これらの中でも、メチル基、エチル基が好ましい。
【0037】
また、アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基等の炭素原子数1〜10のアルキレン基があげられ、これらの中でも、プロピレン基、エチレン基が好ましい。
【0038】
ニトリル化合物の具体例としては、例えば、アセトニトリル(CH−CN)、プロピオニトリル(CH−CH−CN)、グルタロニトリル(NC−(CH−CN)等をあげることができ、これらの中でも、アセトニトリル、プロピオニトリルが低抵抗の点から好ましい。前記ニトリル化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記ニトリル化合物を添加する場合、一般式(1)で示される含フッ素エーテルとニトリル化合物の体積比が、90/10〜1/99であることが好ましく、40/60〜1/99であることがより好ましく、30/70〜1/99であることが更に好ましい。体積比がこの範囲にあるときに、耐電圧を保持し、内部抵抗の低減効果が優れ、かつ、膨張抑制効果を向上することができるため、好ましい。
【0040】
非水溶媒中、一般式(1)で示される含フッ素エーテルとニトリル化合物の合計の割合は、50〜100体積%であることが好ましく、60〜100体積%であることがより好ましく、70〜100体積%が更に好ましい。
【0041】
非水溶媒中に、一般式(1)で示される含フッ素エーテルとニトリル化合物以外の他の溶媒を含む場合、その配合量は、非水溶媒中50体積%未満であることが好ましく、40体積%未満であることがより好ましく、30体積%未満であることが更に好ましい。
【0042】
本発明においては、電気二重層キャパシタに用いる非水溶媒中の化合物(I)、(II)の含有量を低下させることで、キャパシタの耐電圧向上、内部抵抗を低減させることができ、更に、長期信頼性、特に、キャパシタの膨張抑制効果を向上させることができるものである。更に長期信頼性特性を向上させる点から、非水溶媒中にスルホラン化合物を添加してもよい。
【0043】
前記スルホラン化合物としては、非フッ素スルホラン化合物でも含フッ素スルホラン化合物であってもよい。
【0044】
非フッ素スルホラン化合物としては、スルホランのほか、例えば、
【0045】
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、mは1又は2の整数である)で示される非フッ素系スルホラン誘導体などがあげられる。
【0046】
これらの中でも、スルホランと、以下のスルホラン誘導体が好ましい。
【0047】
【化2】

【0048】
含フッ素スルホラン化合物としては、特開2003−132944号公報に記載された含フッ素スルホラン化合物が例示でき、これらの中でも、
【0049】
【化3】

が好ましくあげられる。
【0050】
これらの中でも、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホランが好ましく、特にスルホランが好ましい。
前記スルホラン化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
非水溶媒に前記スルホラン化合物を添加する場合、その配合量は、非水溶媒中50体積%未満であることが好ましい。スルホラン化合物を上記範囲内で添加することにより、長期信頼性特性を向上することができる点で好ましい。
【0052】
また、必要に応じて、環状カーボネート、鎖状カーボネートなどの他の溶媒を配合してもよい。
【0053】
非フッ素環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニレンカーボネートなどが例示できる。なかでも、内部抵抗の低減効果及び低温特性の維持の点からプロピレンカーボネート(PC)が好ましい。前記非フッ素環状カーボネートは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
つぎに本発明で用いる電解質塩について説明する。
【0055】
本発明で使用可能な電解質塩は、従来公知のアンモニウム塩、金属塩のほか、液体状の塩(イオン性液体)、無機高分子型の塩、有機高分子型の塩などがあげられる。これらの中でも、本発明においては、アンモニウム塩が好ましい。
【0056】
電解質塩として好適なアンモニウム塩を例示する。
【0057】
(A)テトラアルキル4級アンモニウム塩
一般式(4):
【0058】
【化4】

(式中、R1a、R2a、R3a及びR4aは同じか又は異なり、いずれも炭素数1〜6のエーテル結合を含んでいてもよいアルキル基;Xはアニオン)で示されるテトラアルキル4級アンモニウム塩が好ましく例示できる。また、このアンモニウム塩の水素原子の一部又は全部がフッ素原子及び/又は炭素数1〜4の含フッ素アルキル基で置換されているものも、耐酸化性が向上する点から好ましい。
【0059】
具体例としては、一般式(4−1):
【0060】
【化5】

(式中、R1a、R2a及びXは前記と同じ;x及びyは同じか又は異なり0〜4の整数で、かつx+y=4)で示されるテトラアルキル4級アンモニウム塩、一般式(4−2):
【0061】
【化6】

(式中、R5aは炭素数1〜6のアルキル基;R6aは炭素数1〜6の2価の炭化水素基;R7aは炭素数1〜4のアルキル基;zは1又は2;Xはアニオン)で示されるアルキルエーテル基含有トリアルキルアンモニウム塩、
などがあげられる。アルキルエーテル基を導入することにより、粘性の低下が図れる。
【0062】
アニオンXとしては、無機アニオンでも有機アニオンでもよい。無機アニオンとしては、たとえばAlCl、BF、PF、AsF、TaF、I、SbFがあげられる。有機アニオンとしては、たとえばCFCOO、CFSO、(CFSO、(CSOなどがあげられる。
【0063】
これらのうち、耐酸化性やイオン解離性が良好な点から、BF、PF、AsF、SbFが好ましい。
【0064】
テトラアルキル4級アンモニウム塩の好適な具体例としては、EtNBF、EtNClO、EtNPF、EtNAsF、EtNSbF、EtNCFSO、EtN(CFSON、EtNCSO、EtMeNBF、EtMeNClO、EtMeNPF、EtMeNAsF、EtMeNSbF、EtMeNCFSO、EtMeN(CFSON、EtMeNCSOを用いればよく、特に、EtNBF、EtNPF、EtNSbF、EtNAsF、EtMeNBF、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム塩などがあげられる。なお、上記Etはエチル基を表し、Meはメチル基を表す。
【0065】
(B)スピロビピロリジニウム塩
一般式(5):
【0066】
【化7】

(式中、R8a及びR9aは同じか又は異なり、いずれも炭素数1〜4のアルキル基;Xはアニオン;n1は0〜5の整数;n2は0〜5の整数)で示されるスピロビピロリジニウム塩が好ましく例示できる。また、このスピロビピロリジニウム塩の水素原子の一部又は全部がフッ素原子及び/又は炭素数1〜4の含フッ素アルキル基で置換されているものも、耐酸化性が向上する点から好ましい。
【0067】
アニオンXの好ましい具体例は、テトラアルキル4級アンモニウム塩(A)の場合と同じである。
【0068】
好ましい具体例としては、たとえば
【0069】
【化8】

などがあげられる。
【0070】
このスピロビピロリジニウム塩は溶解性、耐酸化性、イオン伝導性の点で優れている。
【0071】
(C):イミダゾリウム塩
一般式(6):
【0072】
【化9】

(式中、R10a及びR11aは同じか又は異なり、いずれも炭素数1〜6のアルキル基;Xはアニオン)で示されるイミダゾリウム塩が好ましく例示できる。また、このイミダゾリウム塩の水素原子の一部又は全部がフッ素原子及び/又は炭素数1〜4の含フッ素アルキル基で置換されているものも、耐酸化性が向上する点から好ましい。
【0073】
アニオンXの好ましい具体例は、テトラアルキル4級アンモニウム塩(A)の場合と同じである。
【0074】
好ましい具体例としては、たとえば
【0075】
【化10】

(式中、Xはアニオン)などがあげられる。
【0076】
このイミダゾリウム塩は粘性が低く、また溶解性が良好な点で優れている。
【0077】
(D):N−アルキルピリジニウム塩
一般式(7):
【0078】
【化11】

(式中、R12aは炭素数1〜6のアルキル基;Xはアニオン)で示されるN−アルキルピリジニウム塩が好ましく例示できる。また、このN−アルキルピリジニウム塩の水素原子の一部又は全部がフッ素原子及び/又は炭素数1〜4の含フッ素アルキル基で置換されているものも、耐酸化性が向上する点から好ましい。
【0079】
アニオンXの好ましい具体例は、テトラアルキル4級アンモニウム塩(A)の場合と同じである。
【0080】
好ましい具体例としては、たとえば
【0081】
【化12】

などがあげられる。
【0082】
このN−アルキルピリジニウム塩は粘性が低く、また溶解性が良好な点で優れている。
【0083】
(E)N,N−ジアルキルピロリジニウム塩
一般式(8):
【0084】
【化13】

(式中、R13a及びR14aは同じか又は異なり、いずれも炭素数1〜6のアルキル基;Xはアニオン)で示されるN,N−ジアルキルピロリジニウム塩が好ましく例示できる。また、このN,N−ジアルキルピロリジニウム塩の水素原子の一部又は全部がフッ素原子及び/又は炭素数1〜4の含フッ素アルキル基で置換されているものも、耐酸化性が向上する点から好ましい。
【0085】
アニオンXの好ましい具体例は、テトラアルキル4級アンモニウム塩(A)の場合と同じである。
【0086】
好ましい具体例としては、たとえば
【0087】
【化14】

【0088】
【化15】

などがあげられる。
【0089】
このN,N−ジアルキルピロリジニウム塩は粘性が低く、また溶解性が良好な点で優れている。
【0090】
これらのアンモニウム塩のうち、テトラアルキル4級アンモニウム塩(A)、スピロビピペロジニウム塩(B)及びイミダゾリウム塩(C)が溶解性、耐酸化性、イオン伝導性が良好な点で好ましく、更には
【0091】
【化16】

(式中、Meはメチル基;Etはエチル基;X、x、yは一般式(4−1)と同じ)
が好ましい。
【0092】
また、電解質塩としてリチウム塩を用いてもよい。リチウム塩としては、たとえばLiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiN(SOが好ましい。
【0093】
更に容量を向上させるためにマグネシウム塩を用いてもよい。マグネシウム塩としては、たとえばMg(ClO、Mg(OOCCなどが好ましい。
【0094】
これらのなかでも、低温特性の維持の点から、スピロビピロリジニウムテトラフルオロボレート、トリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート又はテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートが好ましい。
【0095】
電解質塩の濃度は要求される電流密度、用途、電解質塩の種類などによって異なるが、0.3モル/リットル以上、更には0.5モル/リットル以上、特に0.8モル/リットル以上で、3.6モル/リットル以下、更には2.0モル/リットル以下、特に1.6モル/リットル以下とすることが好ましい。
【0096】
本発明で用いる電解液は、電解質塩を非水溶媒に溶解させることで調製される。
【0097】
また、本発明において電解液は、本発明の非水電解液に使用する溶媒に溶解又は膨潤する高分子材料と組み合わせてゲル状(可塑化された)のゲル電解液としてもよい。
【0098】
かかる高分子材料としては、従来公知のポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシド、それらの変性体(特開平8−222270号公報、特開2002−100405号公報);ポリアクリレート系ポリマー、ポリアクリロニトリルや、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素樹脂(特表平4−506726号公報、特表平8−507407号公報、特開平10−294131号公報);それらフッ素樹脂と炭化水素系樹脂との複合体(特開平11−35765号公報、特開平11−86630号公報)などがあげられる。特には、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体をゲル電解液用高分子材料として用いることが望ましい。
【0099】
そのほか、特開2006−114401号公報に記載されているイオン伝導性化合物も使用できる。
【0100】
このイオン伝導性化合物は、式(1−1):
P−(D)−Q (1−1)
[式中、Dは式(2−1):
−(D1)−(FAE)−(AE)−(Y)− (2−1)
(式中、D1は、式(2a):
【0101】
【化17】

(式中、Rfは架橋性官能基を有していてもよい含フッ素エーテル基;R1bはRfと主鎖を結合する基又は結合手)で示される側鎖に含フッ素エーテル基を有するエーテル単位;
FAEは、式(2b):
【0102】
【化18】

(式中、Rfaは水素原子、架橋性官能基を有していてもよい含フッ素アルキル基;R2bはRfaと主鎖を結合する基又は結合手)で示される側鎖に含フッ素アルキル基を有するエーテル単位;
AEは、式(2c):
【0103】
【化19】

(式中、R4bは水素原子、架橋性官能基を有していてもよいアルキル基、架橋性官能基を有していてもよい脂肪族環式炭化水素基又は架橋性官能基を有していてもよい芳香族炭化水素基;R3bはR4bと主鎖を結合する基又は結合手)で示されるエーテル単位;
Yは、式(2d−1)〜(2d−3):
【0104】
【化20】

の少なくとも1種を含む単位;
nは0〜200の整数;mは0〜200の整数;pは0〜10000の整数;qは1〜100の整数;ただしn+mは0ではなく、D1、FAE、AE及びYの結合順序は特定されない);
P及びQは同じか又は異なり、フッ素原子及び/又は架橋性官能基を含んでいてもよいアルキル基、フッ素原子及び/又は架橋性官能基を含んでいてもよいフェニル基、−COOH基、−OR(Rはフッ素原子及び/又は架橋性官能基を含んでいてもよいアルキル基)、エステル基又はカーボネート基(ただし、Dの末端が酸素原子の場合は−COOH基、−OR、エステル基及びカーボネート基ではない)]で表される側鎖に含フッ素基を有する非晶性含フッ素ポリエーテル化合物である。
【0105】
本発明で用いる電解液には必要に応じて、他の添加剤を配合してもよい。他の添加剤としては、たとえば金属酸化物、ガラスなどがあげられ、これらを本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0106】
なお、本発明で用いる電解液は低温(たとえば0℃や−20℃)で凍ったり、電解質塩が析出しないことが好ましい。具体的には、0℃での粘度が100mPa・秒以下であることが好ましく、30mPa・秒以下であることがより好ましく、15mPa・秒以下であることが特に好ましい。更にまた、具体的には、−20℃での粘度が100mPa・秒以下であることが好ましく、40mPa・秒以下であることがより好ましく、15mPa・秒以下であることが特に好ましい。
【0107】
本発明の電気二重層キャパシタでは、正極及び負極の少なくとも一方は分極性電極であり、分極性電極及び非分極性電極としては特開平9−7896号公報に詳しく記載されている以下の電極が使用できる。
【0108】
本発明で用いる活性炭を主体とする分極性電極は、好ましくは大比表面積の不活性炭と電子伝導性を付与するカーボンブラック等の導電剤とを含むものである。分極性電極は種々の方法で形成することができる。たとえば、活性炭粉末とカーボンブラックとフェノール系樹脂を混合し、プレス成形後不活性ガス雰囲気中及び水蒸気雰囲気中で焼成、賦活することにより、活性炭とカーボンブラックからなる分極性電極を形成できる。好ましくは、この分極性電極は集電体と導電性接着剤などで接合する。
【0109】
また、活性炭粉末、カーボンブラック及び結合剤をアルコールの存在下で混練してシート状に成形し、乾燥して分極性電極とすることもできる。この結合剤には、たとえばポリテトラフルオロエチレンが用いられる。また、活性炭粉末、カーボンブラック、結合剤及び溶媒を混合してスラリーとし、このスラリーを集電体の金属箔にコートし、乾燥して集電体と一体化された分極性電極とすることもできる。
【0110】
活性炭を主体とする分極性電極を両極に用いて電気二重層キャパシタとしてもよいが、片側に非分極性電極を用いる構成、たとえば、金属酸化物等の電池活物質を主体とする正極と、活性炭を主体とする分極性電極の負極とを組合せた構成、又は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料を主体とする負極とを組合せた構成も可能である。
【0111】
また、活性炭に代えて又は併用して、カーボンブラック、グラファイト、膨張黒鉛、ポーラスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、ケッチェンブラックなどの炭素質材料を用いてもよい。
【0112】
非分極性電極としては、好ましくはリチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料を主体とするものとし、この炭素材料にリチウムイオンを吸蔵させたものを電極に使用する。この場合、電解質にはリチウム塩が使用される。この構成の電気二重層キャパシタによれば、更に高い4Vを超える耐電圧が得られる。
【0113】
電極の作製におけるスラリーの調製に用いる溶媒は結合剤を溶解するものが好ましく、結合剤の種類に合わせ、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、イソホロン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、フタル酸ジメチル、エタノール、メタノール、ブタノール又は水が適宜選択される。
【0114】
分極性電極に用いる活性炭としては、フェノール樹脂系活性炭、やしがら系活性炭、石油コークス系活性炭などがある。これらのうち大きい容量を得られる点で石油コークス系活性炭又はフェノール樹脂系活性炭を使用するのが好ましい。また、活性炭の賦活処理法には、水蒸気賦活処理法、溶融KOH賦活処理法などがあり、より大きな容量が得られる点で溶融KOH賦活処理法による活性炭を使用するのが好ましい。
【0115】
分極性電極に用いる好ましい導電剤としては、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、金属ファイバ、導電性酸化チタン、酸化ルテニウムがあげられる。分極性電極に使用するカーボンブラック等の導電剤の混合量は、良好な導電性(低い内部抵抗)を得るように、また多すぎると製品の容量が減るため、活性炭との合計量中1〜50重量%とするのが好ましい。
【0116】
また、分極性電極に用いる活性炭としては、大容量で低内部抵抗の電気二重層キャパシタが得られるように、平均粒径が20μm以下で比表面積が1500〜3000m/gの活性炭を使用するのが好ましい。また、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料を主体とする電極を構成するための好ましい炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化メソカーボン小球体、黒鉛化ウィスカ、気層成長炭素繊維、フルフリルアルコール樹脂の焼成品又はノボラック樹脂の焼成品があげられる。
【0117】
集電体は化学的、電気化学的に耐食性のあるものであればよい。活性炭を主体とする分極性電極の集電体としては、ステンレス、アルミニウム、チタン又はタンタルが好ましく使用できる。これらのうち、ステンレス又はアルミニウムが、得られる電気二重層キャパシタの特性と価格の両面において特に好ましい材料である。リチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料を主体とする電極の集電体としては、好ましくはステンレス、銅又はニッケルが使用される。
【0118】
また、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料にあらかじめリチウムイオンを吸蔵させるには、(1)粉末状のリチウムを、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料に混ぜておく方法、(2)リチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料と結合剤により形成された電極上にリチウム箔を載せ、電極と電気的に接触させた状態で、この電極をリチウム塩を溶かした電解液中に浸漬することによりリチウムをイオン化させ、リチウムイオンを炭素材料中に取り込ませる方法、(3)リチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料と結合剤により形成された電極をマイナス側に置き、リチウム金属をプラス側に置いてリチウム塩を電解質とする非水系電解液中に浸漬し、電流を流して電気化学的に炭素材料中にリチウムをイオン化した状態で取り込ませる方法がある。
【0119】
電気二重層キャパシタとしては、巻回型電気二重層キャパシタ、ラミネート型電気二重層キャパシタ、コイン型電気二重層キャパシタなどが一般に知られており、本発明の電気二重層キャパシタもこれらの形式とすることができる。
【0120】
たとえば巻回型電気二重層キャパシタは、集電体と電極層の積層体(電極)からなる正極及び負極を、セパレータを介して巻回して巻回素子を作製し、この巻回素子をアルミニウム製などのケースに入れ、電解液、好ましくは非水系電解液を満たしたのち、ゴム製の封口体で封止して密封することにより組み立てられる。
【0121】
セパレータとしては、従来公知の材料と構成のものが本発明においても使用できる。例えば、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン繊維やガラス繊維、セルロース繊維の不織布などがあげられる。
【0122】
また、公知の方法により、電解液とセパレータを介してシート状の正極及び負極を積層したラミネート型電気二重層キャパシタや、ガスケットで固定して電解液とセパレータを介して正極及び負極をコイン型に構成したコイン型電気二重層キャパシタとすることもできる。
【0123】
更に、本発明は、非水溶媒、及び、電解質塩を含む電気二重層キャパシタ用非水電解液であって、
前記非水溶媒が、一般式(1):
Rf−O−Rf (1)
(式中、Rf及びRfは同じか又は異なり、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のフルオロアルキル基;ただし、Rf及びRfの少なくとも一方はフルオロアルキル基)で示される含フッ素エーテルを含有し、かつ、
下記(I)、(II)で示される化合物を、前記含フッ素エーテルに対して合計で5000ppm以下含有することを特徴とする、電気二重層キャパシタ用非水電解液に関する。
(I)含フッ素不飽和化合物
(II)一般式(2):
RfOH (2)
(式中、Rfは前記同様)
で示される水酸基含有化合物。
【0124】
本発明の電気二重層キャパシタ用非水電解液に用いる非水溶媒、電解質塩、及び、それぞれの添加量については、前記と同様である。
【0125】
本発明の電気二重層キャパシタ用非水電解液の水分含有量は、20ppm以下であることが好ましい。水分含有量が前記範囲内であることにより、長期信頼性、特に膨張抑制効果の点で好ましい。ここで、ppmは、重量基準であり、本発明で用いる非水電解液100重量部中に、水分が0.002重量部以下であることを示す。
【0126】
水分含有量の下限は、少なければ少ないほどよい。
【0127】
電気二重層キャパシタ用非水電解液の水分含有量を20ppm以下に制御する方法は特に限定されないが、たとえば、乾燥剤に接触させて除湿する方法、蒸留による水分除去方法などがあげられる。なかでも電解液の成分比率を維持するという観点から、乾燥剤による除湿方法が好ましい。
【0128】
乾燥剤としては電解液の各成分(溶媒、電解質塩、各種添加剤等)と反応せず、かつ、除去(吸着など)しないものであれば、特に制限されない。具体例としては、例えば、ゼオライト、シリカゲルなどが例示できる。
【0129】
たとえば、ゼオライトやシリカゲルなどの乾燥剤は、電解液100重量部に対して3〜7重量部投入し、12時間以上放置することで、水分含有量を20ppm以下にすることができる。
【0130】
この乾燥処理は、周囲からの水分の混入を防ぐために、露点が−50℃〜−80℃(水分含有量としては約39ppm〜約0.5ppm)の雰囲気下で行うことが好ましい。温度は室温でよい。
【0131】
更に、電気二重層キャパシタを組み立てる前に、正極及び負極を充分に乾燥することが、封入後の電解液の水分含有量の増加を抑制することができる点から好ましい。
【0132】
乾燥方法としては、正極、負極、セパレータ、集電体などの巻回素子の構成部材を変質劣化させない条件であれば特に制限されない。具体的には、加熱して水分を蒸散させる方法、減圧下に置いて水分を蒸散させる方法、減圧下に加熱する方法などがあげられる。
【0133】
なかでも、比較的短時間に水分含有量を低減させることができる点から、減圧下に加熱する方法が好ましい。具体的には、10Pa以下の減圧下に90〜150℃に加熱するという条件が例示できる。
【0134】
また、乾燥後に室温に戻すために冷却する場合は、冷却用の乾燥空気も水分含有量が10ppm以下、更には2.5ppm以下のものを使用することが望ましい。
【0135】
また、電解液に接する可能性のある部材、たとえば、電気二重層キャパシタのケース、封口体も乾燥して水分含有量を低減化しておくことが、封入後の電解液の水分含有量の増加を抑制することができる点から好ましい。
【0136】
ケースの乾燥は巻回素子と同様の方法と条件が好ましい。また、封口体は通常ゴム製であるから、加熱温度を比較的低め、たとえば70〜90℃程度に設定して乾燥すればよい。
【0137】
また、電気二重層キャパシタの組み立て工程においても、周囲雰囲気を乾燥状態、好ましくは露点が−40℃(水分含有量約127ppm)〜−60℃(水分含有量約10ppm)、更に好ましくは露点−50℃(水分含有量約39ppm)〜−60℃(水分含有量約10ppm)の雰囲気とすることが望ましい。温度は室温が好ましく、圧力も常圧でよい。
【0138】
本発明の非水電解液は電気二重層キャパシタ用であるが、各種の電解液を備えた電気化学デバイスの電解液にも有用である。電気化学デバイスとしては、リチウム二次電池、ラジカル電池、太陽電池(特に色素増感型太陽電池)、燃料電池、各種電気化学センサー、エレクトロクロミック素子、電気化学スイッチング素子、アルミニウム電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ、などがあげられ、特にリチウム二次電池が好適である。そのほか、帯電防止用コーティング材のイオン伝導体などとしても使用できる。
【実施例】
【0139】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0140】
本発明で採用した測定法は、以下のとおりである。
【0141】
(1)組成分析
NMR法:BRUKER社製のAC−300を使用。
19F−NMR:
測定条件:282MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
H−NMR:
測定条件:300MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
【0142】
(2)濃度(GC%)分析
ガスクロマトグラフィ(GC)法:(株)島津製作所製のGC−17Aを使用。
カラム:DB624(Length 60m、I.D. 0.32mm、Film 1.8μm)
測定限界:0.001%
【0143】
(3)水分含有量の測定
露点−50〜−80℃に水分調整された雰囲気中で、作製した電解液を、10Pa以下の減圧下において70℃で12時間以上乾燥した注射器により、吸引して試料とした。この試料をカールフィッシャー法による水分検出装置(京都電子工業(株)製のカールフィッシャー水分計)に供し、温度25℃、露点−50℃〜−80℃の測定条件で水分含有量を測定した。
【0144】
合成例1 HCFCFCHOCFCFHの合成
ステンレススチール製の6Lオートクレーブの系内を真空状態にし、水酸化カリウム 401g(7.15mol)、水 1604mL、含フッ素アルキルアルコールとして、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール:HCFCFCHOH(沸点109℃、比重1.4)1716g(13mol)を注入した後、室温で真空−窒素置換を20回行った。系内を真空にした後、テトラフルオロエチレン(TFE)を0.1MPaとなるように満たし、反応系内が85℃になるよう加熱した。内温が85℃に達してから、反応圧が0.5〜0.8MPaを保つようにTFEを少しずつ加えていった。系内温は75〜95℃を保つように調節した。
【0145】
TFEの添加量が、含フッ素アルキルアルコール1モルに対する比率として0.5モル量になった時点で供給を止め、攪拌しながら反応を継続した。オートクレーブ内の圧力低下が見られなくなった時点でオートクレーブの内温を室温に戻し、未反応のTFEを放出して反応を終了した。時間は5時間を要した。
【0146】
生成液の下層の含フッ素エーテルは、HCFCFCHOCFCFH(沸点92℃、比重1.52)であり、GCで分析した下層の含フッ素エーテル生成液の組成は含フッ素エーテル濃度が98.7%、化合物(II−1)HCFCFCHOHが1.02%、化合物(I−1)CF=CFCHOCFCFHが0.05%、化合物(I−2)HCFCF=CHOCFCFHが0.23%であった。
【0147】
上記合成例1で得た含フッ素エーテル生成液1500gを含フッ素エーテル粗液1とし、ミキサー−セトラー型抽出装置を用いて、以下の条件で向流抽出処理を行った。
ミキサー−セトラー型抽出装置:(塔高3300mm、内径200mm)
段数:24段
撹拌速度:285rpm
重液供給速度:160kg/hr
軽液:純水
軽液供給速度:100kg/hr
処理温度:27℃
処理時間:0.01時間
【0148】
初期留出分約5%を廃棄し、留出順にほぼ等量をサンプリングすることにより、化合物(I−1)、(I−2)、(II−1)の含有量の異なる含フッ素エーテル(HCFCFCHOCFCFH)の精留液A、B、Cを得た(表1)。
【0149】
【表1】

【0150】
合成例2 HCFCFCHOCFCFHCFの合成
ステンレススチール製の3Lオートクレーブの系内を真空状態にし、水酸化カリウム 84g(1.35mol)、水800ml、含フッ素アルキルアルコールとして、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール:HCFCFCHOH(沸点109℃、比重1.4)600g(4.5mol)を注入した後、室温で真空−窒素置換を20回行った。系内を真空にした後、ヘキサフルオロプロペン:CF=CFCF681g(4.5mol)を0.1MPaとなるように満たし、反応系内が85℃になるよう加熱した。内温が85℃に達してから、反応圧が0.5〜0.8MPaを保つようにCF=CFCFを少しずつ加えていった。系内温は91〜111℃を保つように調節した。
【0151】
CF=CFCFの添加量が、含フッ素アルキルアルコール1モルに対する比率として0.5モル量になった時点で供給を止め、攪拌しながら反応を継続した。オートクレーブ内の圧力低下が見られなくなった時点でオートクレーブの内温を室温に戻し、未反応のCF=CFCFを放出して反応を終了した。時間は6時間を要した。
【0152】
生成液の下層の含フッ素エーテルは、HCFCFCHOCFCFHCF(沸点108℃、比重1.61)であり、GCで分析した下層の含フッ素エーテル生成液の組成は含フッ素エーテル濃度が98.4%、化合物(II−1)HCFCFCHOHが0.92%、化合物(I−3)CF=CFCHOCFCFHCFが0.05%、化合物(I−4)HCFCFCHOCF=CFCFが0.24%、化合物(I−5)HCFCFCHOCFCF=CFが0.27%、化合物(I−6)HCFCF=CHOCFCFHCFが0.12%であった。
【0153】
上記合成例2で得た含フッ素エーテル生成液725gを含フッ素エーテル粗液2とし、ミキサー−セトラー型抽出装置を用いて、以下の条件で向流抽出処理を行った。
ミキサー−セトラー型抽出装置:(塔高3300mm、内径200mm)
段数:24段
撹拌速度:285rpm
重液供給速度:160kg/hr
軽液:純水
軽液供給速度:100kg/hr
処理温度:27℃
処理時間:0.01時間
【0154】
初留約5%を廃棄し、留出順にほぼ等量をサンプリングすることにより、化合物(I−3)、(I−4)、(I−5)、(I−6)、(II−1)の含有量の異なる含フッ素エーテル(HCFCFCHOCFCFHCF)の精留液D、E、Fを得た(表2)。
【0155】
【表2】

【0156】
実施例1
(電極の作製)
活性炭粒子(クラレケミカル(株)製、RP20)を100重量部、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業(株)製、デンカブラックFX−35)を3重量部、ケッチェンブラック(ライオン(株)製、カーボンECP600JD)を12重量部、PVdFバインダー(クレハ(株)製、KF−7200)を8重量部、オルガノゾル(PTFEとPVdFの分散溶剤)を固形分相当2重量部混合して電極用スラリーを調製した。
【0157】
集電体としてエッジドアルミニウム(日本蓄電器工業(株)製の20CB、厚さ約20μm)を用意し、この集電体の両面に塗装装置を用いて導電塗料(日本黒鉛工業(株)製のバニーハイトT602)を塗布し、導電層(厚さ:7μm)を形成した。
【0158】
ついで、前記で調製した電極用スラリーを集電体の両面に形成した導電層に塗装装置を用いて塗布し、電極層(正極厚さ:103μm、負極厚さ:83μm)を両面に形成し、電極を作製した。
【0159】
なお、以下、集電体、導電層及び活性炭層をまとめて電極と称する。
【0160】
(電解液1の調製)
アセトニトリルと、HCFCFCHOCFCFHの精留液Cと、を体積比80/20で混合して電解質塩溶解用非水溶媒を調製した。この電解質塩溶解用非水溶媒に4フッ化ホウ酸トリエチルメチルアンモニウム(TEMA)BFを1.2モル/リットル濃度となるように加えたところ、均一に溶解した。得られた非水電解液に対して5重量%のモレキュラーシーブを投入し、10時間放置した。その後、ろ過によりモレキュラーシーブを取り除いた。乾燥後の非水電解液の水分含有量は、20ppmであった。
【0161】
(ラミネートセル電気二重層キャパシタの作製)
上記電極を所定の大きさ(20×72mm)に切断して、集電体のアルミ面に電極引出しリードを溶接で接着してラミネート容器(品番:D−EL40H、製造元:大日本印刷(株))に収納し、ニッポン高度紙工業(株)製のTF45−30を所定の大きさ(30×82mm)に切断して作製したセパレータを挟んでドライチャンバー中で電解液1を注入・含浸させ、その後封止してラミネートセルを作製した。
【0162】
実施例2
電解液2を用いた以外は、実施例1と同様にしてラミネートセル電気二重層キャパシタを作製した。
【0163】
(電解液2の調製)
アセトニトリルと、HCFCFCHOCFCFHの精留液Bと、を体積比80/20で混合して電解質塩溶解用溶媒を調製した。この電解質塩溶解用溶媒に4フッ化ホウ酸トリエチルメチルアンモニウム(TEMA)BFを1.2モル/リットル濃度となるように加えたところ、均一に溶解した。得られた非水電解液を実施例1と同様の方法により乾燥した。乾燥後の非水電解液の水分含有量は、20ppmであった。
【0164】
比較例1
電解液3を用いた以外は、実施例1と同様にしてラミネートセル電気二重層キャパシタを作製した。
【0165】
(電解液3の調製)
アセトニトリルと、含フッ素エーテル粗液1(粗HCFCFCHOCFCFH)と、を体積比80/20で混合して電解質塩溶解用溶媒を調製した。この電解質塩溶解用溶媒に4フッ化ホウ酸トリエチルメチルアンモニウム(TEMA)BFを1.2モル/リットル濃度となるように加えたところ、均一に溶解した。得られた非水電解液を実施例1と同様の方法により乾燥した。乾燥後の非水電解液の水分含有量は、20ppmであった。
【0166】
比較例2
電解液4を用いた以外は、実施例1と同様にしてラミネートセル電気二重層キャパシタを作製した。
【0167】
(電解液4の調製)
アセトニトリルと、HCFCFCHOCFCFHの精留液Aと、を体積比80/20で混合して電解質塩溶解用溶媒を調製した。この電解質塩溶解用溶媒に4フッ化ホウ酸トリエチルメチルアンモニウム(TEMA)BFを1.2モル/リットル濃度となるように加えたところ、均一に溶解した。得られた非水電解液を実施例1と同様の方法により乾燥した。乾燥後の非水電解液の水分含有量は、20ppmであった。
【0168】
比較例3
電解液5を用いた以外は、実施例1と同様にしてラミネートセル電気二重層キャパシタを作製した。
【0169】
(電解液5の調製)
アセトニトリルと、HCFCFCHOCFCFHの精留液Cに化合物(I−1)を7000ppmの割合で添加したものと、を体積比80/20で混合して電解質塩溶解用溶媒を調製した。この電解質塩溶解用溶媒に4フッ化ホウ酸トリエチルメチルアンモニウム(TEMA)BFを1.2モル/リットル濃度となるように加えたところ、均一に溶解した。得られた非水電解液を実施例1と同様の方法により乾燥した。乾燥後の非水電解液の水分含有量は、20ppmであった。
【0170】
比較例4
電解液6を用いた以外は、実施例1と同様にしてラミネートセル電気二重層キャパシタを作製した。
【0171】
(電解液6の調製)
アセトニトリルと、HCFCFCHOCFCFHの精留液Cに化合物(II−1)を7000ppmの割合で添加したものと、を体積比80/20で混合して電解質塩溶解用溶媒を調製した。この電解質塩溶解用溶媒に4フッ化ホウ酸トリエチルメチルアンモニウム(TEMA)BFを1.2モル/リットル濃度となるように加えたところ、均一に溶解した。得られた非水電解液を実施例1と同様の方法により乾燥した。乾燥後の非水電解液の水分含有量は、20ppmであった。
【0172】
(キャパシタの特性評価)
得られた電気二重層キャパシタについて、長期信頼性特性(静電容量保持率、内部抵抗上昇比率、膨張率)を測定した。
【0173】
(1)静電容量保持率、内部抵抗上昇比率
ラミネート型キャパシタを温度60℃の恒温槽中に入れ、電圧3.0Vを500時間印加して静電容量と内部抵抗を測定した。測定時期は、初期(0時間)、294時間、356時間及び500時間とした。得られた測定値から、次の計算式に従って静電容量保持率(%)及び内部抵抗上昇比率を算出した。結果を表3、4に示す。
【0174】
【数1】

【0175】
【数2】

【0176】
なお、500時間後の静電容量保持率が70%以上で、かつ、内部抵抗上昇比率が2倍以下のものが、60℃での負荷特性に優れたものであり、常温での使用においてのサイクル特性やレート性能にも優れており、長期信頼性を有するものである。
【0177】
(2)膨張の測定
長期信頼性試験前ラミネートセルの場合は厚み方向に測定し、その値に対して、どれだけ膨れるかを実測した。初期の厚みは0.58±0.02mmであった。
【0178】
【表3】

【0179】
【表4】

【0180】
実施例3
(電極の作製)
活性炭粒子(クラレケミカル(株)製、RP20)を100重量部、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業(株)製、デンカブラックFX−35)を3重量部、ケッチェンブラック(ライオン(株)製、カーボンECP600JD)を12重量部、PVdFバインダー(クレハ(株)製、KF−7200)を8重量部、オルガノゾル(PTFEとPVdFの分散溶剤)を固形分相当2重量部混合して電極用スラリーを調製した。
【0181】
集電体としてエッジドアルミニウム(日本蓄電器工業(株)製の20CB、厚さ約20μm)を用意し、この集電体の両面に塗装装置を用いて導電塗料(日本黒鉛工業(株)製のバニーハイトT602)を塗布し、導電層(厚さ:7μm)を形成した。
【0182】
ついで、前記で調製した電極用スラリーを集電体の両面に形成した導電層に塗装装置を用いて塗布し、電極層(正極厚さ:103μm、負極厚さ:83μm)を両面に形成し、電極を作製した。
【0183】
なお、以下、集電体、導電層及び活性炭層をまとめて電極と称する。
【0184】
(電解液7の調製)
アセトニトリルと、HCFCFCHOCFCFHCFの精留液Fと、を体積比80/20で混合して電解質塩溶解用非水溶媒を調製した。この電解質塩溶解用非水溶媒に4フッ化ホウ酸トリエチルメチルアンモニウム(TEMA)BFを1.2モル/リットル濃度となるように加えたところ、均一に溶解した。得られた非水電解液を実施例1と同様の方法により乾燥した。乾燥後の非水電解液の水分含有量は、20ppmであった。
【0185】
(ラミネートセル電気二重層キャパシタの作製)
上記電極を所定の大きさ(20×72mm)に切断して、集電体のアルミ面に電極引出しリードを溶接で接着してラミネート容器(品番:D−EL40H、製造元:大日本印刷(株))に収納し、ニッポン高度紙工業(株)製のTF45−30を所定の大きさ(30×82mm)に切断して作製したセパレータを挟んでドライチャンバー中で電解液1を注入・含浸させ、その後封止してラミネートセルを作製した。
【0186】
実施例4
電解液8を用いた以外は、実施例1と同様にしてラミネートセル電気二重層キャパシタを作製した。
【0187】
(電解液8の調製)
アセトニトリルと、HCFCFCHOCFCFHCFの精留液Eと、を体積比80/20で混合して電解質塩溶解用溶媒を調製した。この電解質塩溶解用溶媒に4フッ化ホウ酸トリエチルメチルアンモニウム(TEMA)BFを1.2モル/リットル濃度となるように加えたところ、均一に溶解した。得られた非水電解液を実施例1と同様の方法により乾燥した。乾燥後の非水電解液の水分含有量は、20ppmであった。
【0188】
比較例5
電解液9を用いた以外は、実施例3と同様にしてラミネートセル電気二重層キャパシタを作製した。
【0189】
(電解液9の調製)
アセトニトリルと、含フッ素エーテル粗液2(粗HCFCFCHOCFCFHCF)と、を体積比80/20で混合して電解質塩溶解用溶媒を調製した。この電解質塩溶解用溶媒に4フッ化ホウ酸トリエチルメチルアンモニウム(TEMA)BFを1.2モル/リットル濃度となるように加えたところ、均一に溶解した。得られた非水電解液を実施例1と同様の方法により乾燥した。乾燥後の非水電解液の水分含有量は、20ppmであった。
【0190】
比較例6
電解液10を用いた以外は、実施例1と同様にしてラミネートセル電気二重層キャパシタを作製した。
【0191】
(電解液10の調製)
アセトニトリルと、HCFCFCHOCFCFHCFの精留液Dと、を体積比80/20で混合して電解質塩溶解用溶媒を調製した。この電解質塩溶解用溶媒に4フッ化ホウ酸トリエチルメチルアンモニウム(TEMA)BFを1.2モル/リットル濃度となるように加えたところ、均一に溶解した。得られた非水電解液を実施例1と同様の方法により乾燥した。乾燥後の非水電解液の水分含有量は、20ppmであった。
【0192】
比較例7
電解液11を用いた以外は、実施例1と同様にしてラミネートセル電気二重層キャパシタを作製した。
【0193】
(電解液11の調製)
アセトニトリルと、HCFCFCHOCFCFHCFの精留液Fに化合物(I−3)を7000ppmの割合で添加したものと、を体積比80/20で混合して電解質塩溶解用溶媒を調製した。この電解質塩溶解用溶媒に4フッ化ホウ酸トリエチルメチルアンモニウム(TEMA)BFを1.2モル/リットル濃度となるように加えたところ、均一に溶解した。得られた非水電解液を実施例1と同様の方法により乾燥した。乾燥後の非水電解液の水分含有量は、20ppmであった。
【0194】
比較例8
電解液12を用いた以外は、実施例1と同様にしてラミネートセル電気二重層キャパシタを作製した。
【0195】
(電解液12の調製)
アセトニトリルと、HCFCFCHOCFCFHCFの精留液Cに化合物(II−1)を7000ppmの割合で添加したものと、を体積比80/20で混合して電解質塩溶解用溶媒を調製した。この電解質塩溶解用溶媒に4フッ化ホウ酸トリエチルメチルアンモニウム(TEMA)BFを1.2モル/リットル濃度となるように加えたところ、均一に溶解した。得られた非水電解液を実施例1と同様の方法により乾燥した。乾燥後の非水電解液の水分含有量は、20ppmであった。
【0196】
(キャパシタの特性評価)
得られた電気二重層キャパシタについて、長期信頼性特性(静電容量保持率、内部抵抗上昇比率、膨張率)を上記方法により測定した。結果を表5、6に示す。
【0197】
【表5】

【0198】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、並びに、非水溶媒及び電解質塩を含む非水電解液を備える電気二重層キャパシタであって、
前記非水溶媒が、一般式(1):
Rf−O−Rf (1)
(式中、Rf及びRfは同じか又は異なり、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のフルオロアルキル基;ただし、Rf及びRfの少なくとも一方はフルオロアルキル基)で示される含フッ素エーテルを含有し、かつ、
下記(I)、(II)で示される化合物を、前記含フッ素エーテルに対して合計で5000ppm以下含有することを特徴とする、電気二重層キャパシタ。
(I)含フッ素不飽和化合物
(II)一般式(2):
RfOH (2)
(式中、Rfは前記同様)
で示される水酸基含有化合物。
【請求項2】
一般式(1)で示される含フッ素エーテルが、HCFCFCHOCFCFHであり、
含フッ素不飽和化合物(I)が、
(I−1)CF=CFCHOCFCFH、及び、
(I−2)HCFCF=CHOCFCF
であり、
水酸基含有化合物(II)が、
(II−1)HCFCFCHOH
である請求項1記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項3】
一般式(1)で示される含フッ素エーテルが、HCFCFCHOCFCFHCFであり、
含フッ素不飽和化合物(I)が、
(I−3)CF=CFCHOCFCFHCF
(I−4)HCFCFCHOCF=CFCF
(I−5)HCFCFCHOCFCF=CF、及び、
(I−6)HCFCF=CHOCFCFHCF
であり、
水酸基含有化合物(II)が、
(II−1)HCFCFCHOH
である請求項1記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項4】
一般式(1)で示される含フッ素エーテルの含有量が、非水溶媒中0.01〜90重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項5】
非水溶媒、及び、電解質塩を含む電気二重層キャパシタ用非水電解液であって、
前記非水溶媒が、一般式(1):
Rf−O−Rf (1)
(式中、Rf及びRfは同じか又は異なり、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のフルオロアルキル基;ただし、Rf及びRfの少なくとも一方はフルオロアルキル基)で示される含フッ素エーテルを含有し、かつ、
下記(I)、(II)で示される化合物を、前記含フッ素エーテルに対して合計で5000ppm以下含有することを特徴とする、電気二重層キャパシタ用非水電解液。
(I)含フッ素不飽和化合物
(II)一般式(2):
RfOH (2)
(式中、Rfは前記同様)
で示される水酸基含有化合物。
【請求項6】
水分含有量が20ppm以下である請求項5記載の電気二重層キャパシタ用非水電解液。

【公開番号】特開2012−216833(P2012−216833A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−77707(P2012−77707)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】