電気二重層キャパシタ用の電解液及びこれを用いた電気二重層キャパシタ
【課題】リフローハンダ付けに耐えうる耐熱性を有すると共に、電圧を印加し続けても放電容量が損なわれず、低温環境においても放電容量を維持できる電気二重層キャパシタ用の電解液及びこれを用いた電気二重層キャパシタを提供する。
【解決手段】ガスケット40を介して正極缶12と負極缶22とが密封された収納容器2内に、セパレータ30を介して対向配置された少なくとも一対の分極性電極と、支持塩を非水溶媒に溶解した電解液50とを備え、前記非水溶媒は、スルホランと、融点が−40℃以下の低融点溶媒とを含むことよりなる。
【解決手段】ガスケット40を介して正極缶12と負極缶22とが密封された収納容器2内に、セパレータ30を介して対向配置された少なくとも一対の分極性電極と、支持塩を非水溶媒に溶解した電解液50とを備え、前記非水溶媒は、スルホランと、融点が−40℃以下の低融点溶媒とを含むことよりなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタ用の電解液及びこれを用いた電気二重層キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタとしては、コイン型構造等のものが知られ、半導体のメモリのバックアップ電源、マイクロコンピュータやICメモリ等の電子機器の予備電源等に採用されている。このコイン型構造の電気二重層キャパシタは、一対の分極性電極と、この一対の分極性電極の間に介在されたセパレータと、前記一対の分極性電極とセパレータに含浸された電解液とを有し、前記一対の分極性電極と正極缶及び負極缶との間に集電体を設け、さらに前記正極缶と負極缶とをガスケットを介して密封したものである。
【0003】
近年、電子機器等の小型化に伴い、電気二重層キャパシタは、基板上への面実装化が行われており、その実装方法としては、リフローハンダ付けが主流となっている。リフローハンダ付けは、250〜260℃程度で加熱して行われるため、電気二重層キャパシタには、リフローハンダ付けに耐えうる耐熱性が要求される。このような耐熱性の電気二重層キャパシタとしては、例えば、耐熱性を有する素材をガスケットに用いたものがある(例えば、特許文献1)。
【0004】
従来、電気二重層キャパシタの耐熱性を向上させるために、電解液に沸点(BP)の高い(200℃以上)溶媒を用いる試みがなされている。例えば、電解液の溶媒として、プロピレンカーボネート(PC)単独からなる溶媒、又は、PC及びテトラヒドロチオフェン1,1−ジオキシド(スルホラン)との混合溶媒を用いた電気二重層キャパシタが提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−298232号公報
【特許文献2】特開2007−180055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電気二重層キャパシタは、常にメイン電源から3V以上に印加され続けた状態で使用されることが多い。この際、電解液の溶媒をPC単独とした場合には、電解液が分解され、電気二重層キャパシタが機能しなくなる場合がある。
また、電解液の溶媒としてスルホランを用いた場合には、3V以上の電圧で印加され続けても電気二重層キャパシタの機能が維持されるものの、25℃以下となる低温環境では、電気二重層キャパシタの放電容量が損なわれるという問題があった。
そこで、本発明は、リフローハンダ付けに耐えうる耐熱性を有すると共に、電圧を印加し続けても放電容量が損なわれず、低温環境においても放電容量を維持できる電気二重層キャパシタを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気二重層キャパシタ用の電解液は、支持塩と、スルホランと、融点が−40℃以下の低融点溶媒とを含有することを特徴とする。
前記低融点溶媒は、脂肪族モノカルボン酸エステルであることが好ましく、前記支持塩は、4級アンモニウム塩のスピロ化合物であることが好ましい。
【0008】
本発明の電気二重層キャパシタは、蓋部と本体部とで密封された容器内に、セパレータを介して対向配置された少なくとも一対の分極性電極と、本発明の前記電解液とを備えることを特徴とする。
前記収納容器は、ガスケットを介して前記蓋部と前記本体部とで密封されていてもよく、前記分極性電極の外周の外方には、前記ガスケットを切り欠いた液溜部が形成されていることが好ましく、前記セパレータは、その外周が前記液溜部と接していることが好ましく、前記セパレータは、その外周から前記分極性電極に向かうに従って、多孔度が低くなることが好ましい。前記分極性電極の活物質は、比表面積が1000m2/g以上、細孔容積が0.4mL/g以上であり、細孔半径1nm未満の細孔が全細孔中に占める割合である(細孔半径1nm未満の細孔数)/(全細孔数)で表される値が70%以下、細孔半径1〜3nmの細孔が全細孔中に占める割合である(細孔半径1〜3nmの細孔数)/(全細孔数)で表される値が30%以上の活性炭であることが好ましく、前記セパレータは、ガラス製であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電気二重層キャパシタによれば、リフローハンダ付けに耐えうる耐熱性を有すると共に、電圧を印加し続けても放電容量が損なわれず、低温環境においても放電容量を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気二重層キャパシタの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る電気二重層キャパシタの断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る電気二重層キャパシタの断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る電気二重層キャパシタの断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る電気二重層キャパシタの断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る電気二重層キャパシタの断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る電気二重層キャパシタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る電気二重層キャパシタ1について、図1を参照して説明する。電気二重層キャパシタ1は、いわゆるコイン型構造のものである。
図1中、符号2は、有底円筒状の本体部(正極缶)12と、正極缶12の開口部を塞ぐ有蓋円筒状の蓋部(負極缶)22と、正極缶12の内周面に沿って設けられたガスケット40とからなり、正極缶12の開口部周縁を内側にかしめて密封された収納容器である。電気二重層キャパシタ1は、収納容器2内に、正極10と負極20とがセパレータ30を介して対向配置され、電解液50が充填されたものである。そして、正極10、負極20及びセパレータ30には、収納容器2内に充填された電解液50が含浸している。
【0012】
正極10は、炭素を導電性フィラーとする導電性樹脂接着剤からなる正極集電体14により、正極缶12の内部底面に接着され、負極20は、正極集電体14と同様の負極集電体24により、負極缶22の内部天面に接着されている。
【0013】
ガスケット40には、正極缶12の内部底面と接する位置に形成された切り欠きからなる第一の液溜部16と、負極缶22の内周面との間に形成された切り欠きからなる第二の液溜部26が形成されている。また、ガスケット40は、セパレータ30の外周と接続され、セパレータ30を保持している。
【0014】
電解液50は、支持塩を非水溶媒に溶解させたものであり、非水溶媒は、スルホランと、融点(MP)が−40℃以下の低融点溶媒から選択される少なくとも1種(以下、単に低融点溶媒ということがある)とを含むものである。ここで融点は、一般的にはJIS K0064に準拠して測定される値であり、室温以下の場合にはJIS K3331に準拠して測定される値である。
【0015】
非水溶媒中のスルホランの含有割合は特に限定されないが、10〜90体積%が好ましく、20〜90体積%がより好ましく、60〜80体積%がさらに好ましい。10体積%未満であると、リフローハンダ付け時に電解液50の液漏れ等が生じるおそれがあり、90体積%を超えると、低温(25℃以下)環境下での放電容量の確保が困難となる場合がある。
【0016】
低融点溶媒の粘度(20℃)は、4mPa・s以下が好ましく、3mPa・s以下がより好ましい。低融点溶媒は、低い粘度であるために、分子構造が非対称性であることが好ましく、その構造において炭素鎖が分枝を有するものが好ましい。低融点溶媒の分子量は特に限定されないが、分子量が大きすぎると粘度が4mPa・sを超える傾向にある。
なお、低融点溶媒の粘度は、B型粘度計を用いJIS K7117−1に準拠して測定される値である。
【0017】
ここで、低融点溶媒は、スルホランと均一に混合・分散する必要があるため、極性溶媒から選択される。このため、極性の乏しい炭化水素類は適当ではない。また、アルコール類は化学的に反応性に富み、電解液50の分解や活性炭への吸着等の反応を生じ、活性炭のイオン吸着を阻害するため、適当ではない。従って、低融点溶媒は、非プロトン性の極性溶媒を用いることが好ましく、中でも鎖状エステル、鎖状エーテル、グリコールエーテル、鎖状カーボネートがより好ましく、鎖状エステル、鎖状カーボネートが特に好ましい。鎖状エステルや鎖状カーボネートは、電極間に電圧を印加した状態で、安定なためである。
【0018】
鎖状エステルとしては、例えば、ギ酸メチル(HCOOCH3、MP:−99.8℃、BP:31.8℃)、ギ酸エチル(HCOOC2H5、MP:−80.5℃、BP:54.3℃)、ギ酸プロピル(HCOOC3H7、MP:−92.9℃、BP:81.3℃)、ギ酸nブチル(HCOO(CH2)3CH3、MP:−90℃、BP:106.8℃)、ギ酸イソブチル(HCOO(CH2)CH(CH3)2、MP:−95℃、BP:98℃)、ギ酸アミル(HCOO(CH2)4CH3、MP:−73.5℃、BP:130℃)等のギ酸エステル、酢酸メチル(H3CCOOCH3、MP:−98.5℃、BP:57.2℃)、酢酸エチル(H3CCOOC2H5、MP:−82.4℃、BP:77.1℃)、酢酸−n−プロピル(H3CCOO(CH2)2CH3、MP:−92.5℃、BP:101.6℃)、酢酸イソプロピル(H3CCOO(CH)(CH3)2、MP:−69.3℃、BP:89℃)、酢酸−n−ブチル(H3CCOO(CH2)3CH3、MP:−76.8℃、BP:126.5℃)、酢酸イソブチル(H3CCOO(CH2)CH(CH3)2、MP:−98.9℃、BP:118.3℃)、酢酸第二ブチル(H3CCOO(CH)(CH3)(CH2CH3)、MP:−99℃、BP:112.5℃)、酢酸−n−アミル(H3CCOO(CH2)4(CH3)、MP:−75℃、BP:147.6℃)、酢酸イソアミル(H3CCOO(CH2)2(CH)(CH3)2、MP:−78.5℃、BP:142.5℃)、酢酸メチルイソアミル(H3CCOO(CH2)(CH3)(CH2)(CH)(CH3)2、MP:−63.8℃、BP:146.3℃)、酢酸第二ヘキシル(H3CCOO(CH)(CH3)(CH2)3(CH3)、MP:−63.8℃、BP:146.3℃)等の酢酸エステル、プロピオン酸メチル(H3CCH2COO(CH3)、MP:−87℃、BP:79.7℃)、プロピオン酸エチル(H3CCH2COO(C2H5)、MP:−73.9℃、BP:99.1℃)、プロピオン酸−n−ブチル(H3CCH2COO(CH2)3CH3、MP:−89.55℃、BP:145.4℃)、プロピオン酸イソアミル(H3CCH2COO(CH2)2CH(CH3)2、MP:−73℃、BP:160.3℃)等のプロピオン酸エステル、酪酸メチル(H3C(CH2)2COO(CH3)、MP:−95℃、BP:102.3℃)、酪酸エチル(H3C(CH2)2COO(CH2)(CH3)、MP:−93.3℃、BP:121.3℃)、酪酸−n−ブチル(H3C(CH2)2COO(CH2)3(CH3)、MP:−91.5℃、BP:166.4℃)、酪酸イソアミル(H3C(CH2)2COO(CH2)2(CH)(CH3)2、MP:−73.2℃、BP:184.8℃)等の酪酸エステル等の脂肪族モノカルボン酸エステルが挙げられる。鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート(H5C2OCOOC2H5、MP:−43℃、BP:127℃)、エチルメチルカーボネート(H5C2OCOOCH3、MP:−55℃、BP:108℃)等が挙げられる。低融点溶媒としては、脂肪酸モノカルボン酸エステルが好ましく、プロピオン酸エステルがより好ましく、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピルがさらに好ましい。これらの低融点溶媒は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
非水溶媒中の低融点溶媒の含有割合は特に限定されないが、90〜10体積%が好ましく、80〜20体積%がより好ましく、50〜20体積%がさらに好ましい。10体積%未満であると、低温(25℃以下)環境下にて放電容量の確保が困難となるおそれがある。低融点溶媒は、BPが200℃以下の低沸点であるため、含有割合が90体積%を超えると、リフローハンダ付け時に電解液50の液漏れ等が生じるおそれがある。
【0020】
非水溶媒には、本発明の効果を損なわない範囲で、スルホラン、低融点溶媒以外の有機溶媒を配合することができる。このような有機溶媒としては、2メチル−γ−ブチロラクトン、アセチル−γ−ブチロラクトン等、電解液の非水溶媒として公知のものが挙げられる。ただし、低温環境下で放電容量を維持する観点から、非水溶媒は、スルホンラン及び低融点溶媒からなることが好ましい。
【0021】
支持塩は、例えば、4級アンモニウム塩、4級フォスフォニウム塩等が挙げられ、4級アンモニウム塩としては、脂肪鎖のみを有する化合物、脂肪鎖と脂肪環を有する脂環式化合物、もしくは脂肪環のみを有するスピロ化合物が挙げられる。なお、スピロ化合物は、4面体構造の原子1個を2つの環が共有しているものである。
塩を構成する対イオンとしては、PF6−、BF4−、N(CF3SO3)2−、C(CF3SO3)3−等が挙げられる。
このような4級アンモニウム塩の内、脂肪鎖のみを有する化合物としては、下記(1)式で表されるトリエチルメチルアンモニウム(TEMA)塩、(2)式で表されるテトラエチルアンモニウム(TEA)塩等が挙げられる(式(1)、(2)中、X−は対イオンを表す)。スピロ化合物としては、例えば、下記(3)式で表される5−アゾニアスピロ[4,4]ノナンテトラフルオロボレート(スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウム:SBP−BF4)、(4)式で表される6−アゾニアスピロ[5,5]ウンデカンテトラフルオロボレート、(5)式で表される3−アゾニアスピロ[2,6]ノナンテトラフルオロボレート、(6)式で表される4−アゾニアスピロ[3,5]ノナンテトラフルオロボレート等が挙げられる。また、4級フォスフォニウム塩としては、下記(7)式で表される5−フォスフォニルスピロ[4,4]ノナンテトラフルオロボレートが挙げられる。支持塩としては、4級アンモニウム塩が好ましく、スピロ化合物がより好ましく、5−アゾニアスピロ[4,4]ノナンテトラフルオロボレートがさらに好ましい。4級アンモニウム塩のスピロ化合物は電気伝導率が高いため、放電容量を増大できる。
【0022】
【化1】
【0023】
【化2】
【0024】
【化3】
【0025】
【化4】
【0026】
【化5】
【0027】
【化6】
【0028】
【化7】
【0029】
電解液50中の支持塩の含有量は、支持塩の種類等を勘案して決定でき、例えば、0.1〜3.7mol/Lの範囲で決定されることが好ましい。
【0030】
電解液50は、例えば、スルホランと低融点溶媒を混合して非水溶媒とし、該非水溶媒に支持塩を添加し攪拌して塩を溶解することで調製できる。
【0031】
正極10は、分極性電極であり、例えば、おが屑、椰子殻、ピッチ、コークス、フェノール樹脂等の有機系物質を水蒸気又はアルカリ等を単独もしくは併用した賦活処理にて得られる粉末状の活性炭を、バインダーと共に圧延ロール又はプレス成形したものが挙げられる。また、例えば、フェノール系、レーヨン系、アクリル系、ピッチ系等の繊維を不融化及び炭化賦活処理して活性炭もしくは活性炭素繊維とし、これをフェルト状、繊維状、紙状または焼結体状にしたものが挙げられる。
負極20は、分極性電極であり、正極10と同様のものが挙げられる。
【0032】
分極性電極の活物質である活性炭は、出発材料、炭化処理法又は賦活条件により種々多様な細孔分布と表面状態のものが得られる。このような多様な表面状態及び細孔分布を有する活性炭の中でも、正極10及び/又は負極20の活物質に用いる活性炭の比表面積は、1000m2/g以上が好ましく、1700m2/g以上がより好ましく、1800m2/g以上がさらに好ましい。1000m2/g以上であれば、十分な静電容量を得られる。
活性炭の細孔容積は、0.4mL/g以上が好ましく、0.7mL/g以上がより好ましい。細孔容積が0.4mL/g以上であれば、十分な静電容量を得られる。
また、活性炭の細孔は、細孔半径1nm未満の細孔が全細孔中に占める割合(微小細孔割合)である(細孔半径1nm未満の細孔数)/(全細孔数)で表される値が、好ましくは75%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下である。75%以下であれば、十分な静電容量を得られるためである。
また、活性炭の細孔は、細孔半径1〜3nmの細孔が全細孔中に占める割合(中細孔割合)である(細孔半径1〜3nmの細孔数)/(全細孔数)で表される値が、好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。20%以上であれば、十分な静電容量を得られ、70%以上であれば、スルホランを含有する電解液50との組み合わせにより、3V以上の高電圧の連続印加に対する劣化防止性能がさらに向上する。
【0033】
バインダーとしては、従来公知の物質を用いることができ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル系のポリマー、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、中でも、PTFEが好ましい。
【0034】
分極性電極には、必要に応じて導電性付与剤を添加することができ、導電性付与剤としては、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラックや、黒鉛等の炭素質材料やNi、Ti等の耐蝕性の高い金属粉末等が挙げられ、中でもカーボンブラックが好ましく、ファーネスブラックがより好ましい。
【0035】
セパレータ30は、従来、電気二重層キャパシタのセパレータに用いられるものを適用でき、例えば、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、鉛ガラス等のガラス、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド等の樹脂からなる不織布等が挙げられる。中でも、ガラス製不織布が好ましく、ホウ珪酸ガラス製不織布がより好ましい。ガラス製不織布は、機械強度に優れると共に、大きなイオン透過度を有するため、内部抵抗を低減して放電容量の向上を図れる。
【0036】
セパレータ30の正極10と負極20とで挟持された部分である介在部32は、多孔度が31〜87%であることが好ましく、72〜83%であることがより好ましい。セパレータ30は、多孔度が上記範囲であればフィルターとしての機能を十分に果たすと共に、電解液の移動を円滑にし、電流特性の低下を防止できる。
なお、多孔度は、下記(I)式により求められる値であり、見かけ密度は、いわゆる嵩密度であり下記(II)式により求められる値である。
【0037】
多孔度(%)=見かけ密度(g/cm3)÷真密度(g/cm3)×100・・・(I)
【0038】
見かけ密度(g/mL)=セパレータの質量(g)÷セパレータの体積(cm3)・・・(II)
【0039】
また、セパレータ30の介在部32は、気孔の平均空孔径が0.1μm超3.0μm以下であることが好ましく、0.6〜1.0μmがより好ましい。0.1μm以下であると電解液の流通に抵抗が生じたり、活性炭等による目詰まりが発生したりして、抵抗が上昇しやすくなる。3μm超であると、フィルターとしての機能が低下し活性炭等が漏れてショートしたり、電解液の吸い上げ量が減少したりするおそれがある。なお、平均空孔径は、セパレータ30内に形成された空間を真球と見立てた場合の直径である。
【0040】
ガスケット40の材質は、熱変形温度が230℃以上の樹脂とされる。例えば、ポリフェニルサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、液晶ポリマー(LCP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルニトリル樹脂(PEN)、ポリエーテルケトン樹脂(PEK)、ポリアリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。また、これらの材料にガラス繊維、マイカウイスカー、セラミック微粉末等を30質量%以下の添加量で添加したものを好適に用いることができる。このような材質を用いることで、リフローハンダ付けにおいて、ガスケット40の変形を防止し、電解液50の揮発や漏出を防止できる。
【0041】
本発明の電気二重層キャパシタは、非水溶媒にスルホラン(BP=285℃)を含有するため、リフローハンダ付けに耐えうる耐熱性を有する。加えて、本発明の電気二重層キャパシタは、非水溶媒が実質的にPCを含有しないため、3V以上の電圧が印加され続けても放電容量の低下を抑制できる。加えて、電解液50は、低融点溶媒を非水溶媒に含有することで、低温環境においても粘度が適正に保たれ、イオンの移動が阻害されることがない。このため、本発明の電気二重層キャパシタは、低温環境下での放電容量を保てる。
【0042】
加えて、本発明の電気二重層キャパシタは、第一の液溜部と第二の液溜部が設けられているため、収納容器内への電解液の充填量を増大させ、電気二重層キャパシタの放電容量を長期に維持できる。また、リフローハンダ付け時には、低融点溶媒が気化によって膨張し、正極、負極又はセパレータから電解液が押し出され、電解液の含浸状態が不均一となりやすい。電解液の含浸量が不均一になると、内部抵抗が増大し放電容量が低下しやすい。このため、電解液の充填量を多くすることで、リフローハンダ付け終了後に、電解液を正極、負極又はセパレータへ速やかに戻して均一な含浸状態とし、十分な放電容量を確保できる。
【0043】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、セパレータの配置位置は、図2に示す電気二重層キャパシタ100のように、ガスケット140の内周部142上にセパレータ130の外周が載置されたものとしてもよい。セパレータ130は、その外周が内周部142上に載置されることで、第二の液溜部26と接し、第二の液溜部26の電解液50を効率的に正極10と負極20との間に供給することができる。
【0044】
セパレータの形状は、上述の実施形態に限定されず、例えば、図3の電気二重層キャパシタ200のセパレータ230のように、その外周から正極10及び負極20に向かうに従って多孔度が低くなるように、その厚みが圧縮されたものでもよい。このようなセパレータ230を設けることで、収納容器2内の電解液を効率的に正極10と負極20との間に供給できる。この結果、電気二重層キャパシタ200の放電容量を高くすることができる。
また、セパレータ230は、その外周が介在部232より広がった形状とされると共に、第一の液溜部16及び第二の液溜部26と接するように配置されている。このセパレータ230は、介在部232の厚さが、好ましくは最外周の厚さの90%未満、より好ましくは70%未満、さらに好ましくは50%未満とされる。このような形状とすることで、特に第一の液溜部16又は第二の液溜部26の電解液50をより効率的に正極10と負極20との間に供給できる。
【0045】
また、例えば、セパレータは、図4の電気二重層キャパシタ300のセパレータ330のように、その外周が第一の液溜部16内に挿入されていてもよい。セパレータ330を設けることで、第一の液溜部16に充填された電解液50を効率的に正極10と負極20との間に供給できる。
あるいは、図5の電気二重層キャパシタ400のセパレータ430のように、その外周が第二の液溜部26内に挿入されていてもよい。セパレータ430を設けることで、第二の液溜部26に充填された電解液50を効率的に正極10と負極20との間に供給できる。
なお、セパレータ330の第一の液溜部16に挿入された部分、セパレータ430の第二の液溜部26に挿入された部分(総じて含浸部という)は、介在部332又は介在部432と同じ材質であってもよいし、異なる材質とされていてもよい。前記含浸部は、ガラス製不織布であることが好ましく、ホウ珪酸ガラス製不織布であることがより好ましい。
【0046】
上述の実施形態では、電気二重層キャパシタ1に第一の液溜部16及び第二の液溜部26が形成されているが、本発明はこれに限定されず、例えば、第一の液溜部16又は第二の液溜部26のいずれかが形成されたものであってもよい。
あるいは、図6に示す電気二重層キャパシタ600のように、切り欠きを形成していないガスケット640を設け、液溜部が形成されていないものであってもよい。ただし、電解液50の充填量を増大させ、放電容量を高くするためには、液溜部を形成することが好ましい。
【0047】
上述の実施形態の電気二重層キャパシタは、コイン型構造であるが、本発明はこれに限定されず、例えば、図7に示すような平面視略矩形のものとすることができる。
【0048】
図7中、符号702は、有底角筒状の本体部712と、本体部712の開口部を塞ぐ平板状の蓋部722とで、金属リング740を介して密封された収納容器である。電気二重層キャパシタ700は、収納容器702内に、正極710と負極720とがセパレータ730を介して対向配置されたものであり、正極710、負極720及びセパレータ730には、電解液が含浸している。
【0049】
本体部712は、ガラス、セラミックス又はセラミックスガラス等の絶縁性材料からなり、その内部底面にアルミニウム等からなる金属層716が設けられている。蓋部722は例えばFeNi合金、FeCo合金、ステンレス鋼、アルミニウム合金等、熱伝導性が高いあるいは高抵抗の金属材料からなり、その内部天面には、Ni、Au、W、Cr等でメッキされた金属メッキ層726が設けられている。金属リング740には、その上面にAu又はNi等からなるメタライズ742が設けられ、メタライズ742は金属メッキ層726と接続されている。
【0050】
正極710は、炭素を導電性フィラーとする導電性樹脂接着剤からなる接着層714により金属層716に接着され、正極710上にはセパレータ730が載置されている。セパレータ730上には負極720が載置され、負極720は、炭素を導電性フィラーとする導電性樹脂接着剤からなる接着層724により金属メッキ層726に接着されている。こうして、セパレータ730を介して、正極710と負極720とが対向配置されている。
【0051】
本体部712の外部底面には、接続端子746と接続端子748とが設けられ、接続端子748は金属層716と接続されている。また、接続端子746は、本体部712を貫通するパターン線744により、金属リング740と接続されている。こうして、接続端子748と正極710とが電気的に接続され、接続端子746と負極720とが電気的に接続される。
【0052】
電気二重層キャパシタ700によれば、コイン型構造の電気二重層キャパシタに比べて収納容器内部の有効スペースが大きくなると共に、面実装する基板上のスペースの有効利用が図れる。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
図1に示す電気二重層キャパシタ1と同様の電気二重層キャパシタを次のように作製した。
スルホラン(表中、SLと記載):プロピオン酸メチル(表中、PMと記載)=7:3(体積比)で混合して非水溶媒とし、該非水溶媒にトリエチルメチルアンモニウム四弗化ホウ素塩(TEMA−BF4)を1mol/Lとなるように溶解して電解液とした。
フェノール樹脂を炭化賦活して得られた活性炭粉末80質量部と、アセチレンブラック(導電性付与剤)10質量部と、PTFE(バインダー)10質量部とを混合して電極合剤とした。前記活性炭粉末には、比表面積1900m2/g、細孔容積0.85mL/g、微小細孔割合が4%、中細孔割合が95%、個数平均粒径12μm(レーザー式により測定)のものを用いた。
得られた電極合剤を厚さ0.2mm、直径1.0mmの略円形のペレットに加圧成形し、正極及び負極とした。外面がNiメッキされたステンレス鋼製の正極缶の内部底面に、導電性カーボン接着剤により正極を接着し、PEEK製のガスケットを正極缶の内周に配置した。また、外面がNiメッキされたステンレス鋼製の負極缶の内部天面に導電性カーボン接着剤により負極を接着した後、負極上にガラス製不織布のセパレータ(繊維径:0.5〜0.65μm、アクリル系バインダー10質量%含有)を載置した。そして、負極缶内に電解液を充填した後、正極缶の開口部周縁をかしめて、収納容器を密封し、電気二重層キャパシタを作製した。表中、本実施例は、セパレータタイプAと記載する。
【0054】
(実施例2)
電解液の支持塩をSBP−BF4とした以外は、実施例1と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。表中、本実施例は、セパレータタイプAと記載する。
【0055】
(実施例3)
セパレータを図2に示すセパレータ130と同様の配置とした以外は、実施例2と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。表中、本実施例は、セパレータタイプBと記載する。
【0056】
(実施例4)
セパレータを図3に示すセパレータ230と同様に、その外周が第一の液溜部と第二の液溜部とに接すると共に、外周から正極10及び負極20に向かうに従って、多孔度が低くなるようにした以外は、実施例2と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。表中、本実施例は、セパレータタイプCと記載する。なお、この実施例のセパレータは、介在部の多孔度が77%とされ、セパレータ最外周部の多孔度が87%とされたものである。
【0057】
(実施例5)
セパレータを図5に示すセパレータ430と同様に、その外周が第二の液溜部に挿入されたものとした以外は、実施例2と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。表中、本実施例は、セパレータタイプDと記載する。
【0058】
(比較例1)
非水溶媒をスルホラン:ジメチルカーボネート(MP:0.5℃)=7:3(体積比)とした以外は、実施例1と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。表中、本実施例は、セパレータタイプAと記載する。
【0059】
(放電容量の測定)
各例で、作製した電気二重層キャパシタを160〜200℃、10分間の予備加熱後、260℃、10秒で本加熱するリフロー処理を施し、リフロー処理後、室温で2時間静置した。
静置後、24℃の環境下にて、3.3Vの電圧で印加した状態を2時間保持した。2時間保持後に、電流5μAで2.0Vになるまで放電した(低温放電)。この低温放電を電気二重層キャパシタ5個について行い、その放電容量の平均をD1とした。
また、−30℃の環境下とした以外は、低温放電と同様にして放電容量を測定し、その平均をD2とした。
各例の電気二重層キャパシタを70℃のオーブンに入れ、3.3Vの電圧で印加した状態を40日間保持した。40日間保持後、24℃の環境下にて、電流5μAで2.0Vになるまで放電した(保存後放電)。この保存後放電を電気二重層キャパシタ5個について行い、その放電容量の平均をD3とした。
【0060】
(総合評価)
○・・・D1が7.0mAh以上、D2が3.5mAh以上、D3が3.0mAh以上の全てを満たす
△・・・D1が6.0mAh以上7.0mAh未満、D2が3.0mAh以上3.5mAh未満、D3が3.0mAh以上の全てを満たす
×・・・D3が3.0mAh未満で、D1が6.0mAh未満又はD2が3.0mAh未満のいずれかを満たす
【0061】
【表1】
【0062】
実施例1〜5、比較例1は、いずれもリフロー処理にて電解液の漏出等は確認されなかった。
表1に示すように、非水溶媒をスルホランと低融点溶媒との混合溶媒とした実施例1〜5は、いずれも低温条件下において6.0mAh以上の放電容量が確保されていた。さらに、−30℃以下の条件下でも3.0mAh以上の放電容量が確保されていた。
これに対し、低融点溶媒に換えてジメチルカーボネートを用いた比較例1は、−30℃以下の条件下での放電容量が2.0mAhと低いものであった。
【符号の説明】
【0063】
1、100、200、300、400、600、700 電気二重層キャパシタ
2、702 収納容器
10、710 正極
12 正極缶
16 第一の液溜部
20、720 負極
22 負極缶
26 第二の液溜部
30、130、230、330、430、730 セパレータ
40、140、640 ガスケット
50 電解液
712 本体部
722 蓋部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタ用の電解液及びこれを用いた電気二重層キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタとしては、コイン型構造等のものが知られ、半導体のメモリのバックアップ電源、マイクロコンピュータやICメモリ等の電子機器の予備電源等に採用されている。このコイン型構造の電気二重層キャパシタは、一対の分極性電極と、この一対の分極性電極の間に介在されたセパレータと、前記一対の分極性電極とセパレータに含浸された電解液とを有し、前記一対の分極性電極と正極缶及び負極缶との間に集電体を設け、さらに前記正極缶と負極缶とをガスケットを介して密封したものである。
【0003】
近年、電子機器等の小型化に伴い、電気二重層キャパシタは、基板上への面実装化が行われており、その実装方法としては、リフローハンダ付けが主流となっている。リフローハンダ付けは、250〜260℃程度で加熱して行われるため、電気二重層キャパシタには、リフローハンダ付けに耐えうる耐熱性が要求される。このような耐熱性の電気二重層キャパシタとしては、例えば、耐熱性を有する素材をガスケットに用いたものがある(例えば、特許文献1)。
【0004】
従来、電気二重層キャパシタの耐熱性を向上させるために、電解液に沸点(BP)の高い(200℃以上)溶媒を用いる試みがなされている。例えば、電解液の溶媒として、プロピレンカーボネート(PC)単独からなる溶媒、又は、PC及びテトラヒドロチオフェン1,1−ジオキシド(スルホラン)との混合溶媒を用いた電気二重層キャパシタが提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−298232号公報
【特許文献2】特開2007−180055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電気二重層キャパシタは、常にメイン電源から3V以上に印加され続けた状態で使用されることが多い。この際、電解液の溶媒をPC単独とした場合には、電解液が分解され、電気二重層キャパシタが機能しなくなる場合がある。
また、電解液の溶媒としてスルホランを用いた場合には、3V以上の電圧で印加され続けても電気二重層キャパシタの機能が維持されるものの、25℃以下となる低温環境では、電気二重層キャパシタの放電容量が損なわれるという問題があった。
そこで、本発明は、リフローハンダ付けに耐えうる耐熱性を有すると共に、電圧を印加し続けても放電容量が損なわれず、低温環境においても放電容量を維持できる電気二重層キャパシタを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気二重層キャパシタ用の電解液は、支持塩と、スルホランと、融点が−40℃以下の低融点溶媒とを含有することを特徴とする。
前記低融点溶媒は、脂肪族モノカルボン酸エステルであることが好ましく、前記支持塩は、4級アンモニウム塩のスピロ化合物であることが好ましい。
【0008】
本発明の電気二重層キャパシタは、蓋部と本体部とで密封された容器内に、セパレータを介して対向配置された少なくとも一対の分極性電極と、本発明の前記電解液とを備えることを特徴とする。
前記収納容器は、ガスケットを介して前記蓋部と前記本体部とで密封されていてもよく、前記分極性電極の外周の外方には、前記ガスケットを切り欠いた液溜部が形成されていることが好ましく、前記セパレータは、その外周が前記液溜部と接していることが好ましく、前記セパレータは、その外周から前記分極性電極に向かうに従って、多孔度が低くなることが好ましい。前記分極性電極の活物質は、比表面積が1000m2/g以上、細孔容積が0.4mL/g以上であり、細孔半径1nm未満の細孔が全細孔中に占める割合である(細孔半径1nm未満の細孔数)/(全細孔数)で表される値が70%以下、細孔半径1〜3nmの細孔が全細孔中に占める割合である(細孔半径1〜3nmの細孔数)/(全細孔数)で表される値が30%以上の活性炭であることが好ましく、前記セパレータは、ガラス製であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電気二重層キャパシタによれば、リフローハンダ付けに耐えうる耐熱性を有すると共に、電圧を印加し続けても放電容量が損なわれず、低温環境においても放電容量を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気二重層キャパシタの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る電気二重層キャパシタの断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る電気二重層キャパシタの断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る電気二重層キャパシタの断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る電気二重層キャパシタの断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る電気二重層キャパシタの断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る電気二重層キャパシタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る電気二重層キャパシタ1について、図1を参照して説明する。電気二重層キャパシタ1は、いわゆるコイン型構造のものである。
図1中、符号2は、有底円筒状の本体部(正極缶)12と、正極缶12の開口部を塞ぐ有蓋円筒状の蓋部(負極缶)22と、正極缶12の内周面に沿って設けられたガスケット40とからなり、正極缶12の開口部周縁を内側にかしめて密封された収納容器である。電気二重層キャパシタ1は、収納容器2内に、正極10と負極20とがセパレータ30を介して対向配置され、電解液50が充填されたものである。そして、正極10、負極20及びセパレータ30には、収納容器2内に充填された電解液50が含浸している。
【0012】
正極10は、炭素を導電性フィラーとする導電性樹脂接着剤からなる正極集電体14により、正極缶12の内部底面に接着され、負極20は、正極集電体14と同様の負極集電体24により、負極缶22の内部天面に接着されている。
【0013】
ガスケット40には、正極缶12の内部底面と接する位置に形成された切り欠きからなる第一の液溜部16と、負極缶22の内周面との間に形成された切り欠きからなる第二の液溜部26が形成されている。また、ガスケット40は、セパレータ30の外周と接続され、セパレータ30を保持している。
【0014】
電解液50は、支持塩を非水溶媒に溶解させたものであり、非水溶媒は、スルホランと、融点(MP)が−40℃以下の低融点溶媒から選択される少なくとも1種(以下、単に低融点溶媒ということがある)とを含むものである。ここで融点は、一般的にはJIS K0064に準拠して測定される値であり、室温以下の場合にはJIS K3331に準拠して測定される値である。
【0015】
非水溶媒中のスルホランの含有割合は特に限定されないが、10〜90体積%が好ましく、20〜90体積%がより好ましく、60〜80体積%がさらに好ましい。10体積%未満であると、リフローハンダ付け時に電解液50の液漏れ等が生じるおそれがあり、90体積%を超えると、低温(25℃以下)環境下での放電容量の確保が困難となる場合がある。
【0016】
低融点溶媒の粘度(20℃)は、4mPa・s以下が好ましく、3mPa・s以下がより好ましい。低融点溶媒は、低い粘度であるために、分子構造が非対称性であることが好ましく、その構造において炭素鎖が分枝を有するものが好ましい。低融点溶媒の分子量は特に限定されないが、分子量が大きすぎると粘度が4mPa・sを超える傾向にある。
なお、低融点溶媒の粘度は、B型粘度計を用いJIS K7117−1に準拠して測定される値である。
【0017】
ここで、低融点溶媒は、スルホランと均一に混合・分散する必要があるため、極性溶媒から選択される。このため、極性の乏しい炭化水素類は適当ではない。また、アルコール類は化学的に反応性に富み、電解液50の分解や活性炭への吸着等の反応を生じ、活性炭のイオン吸着を阻害するため、適当ではない。従って、低融点溶媒は、非プロトン性の極性溶媒を用いることが好ましく、中でも鎖状エステル、鎖状エーテル、グリコールエーテル、鎖状カーボネートがより好ましく、鎖状エステル、鎖状カーボネートが特に好ましい。鎖状エステルや鎖状カーボネートは、電極間に電圧を印加した状態で、安定なためである。
【0018】
鎖状エステルとしては、例えば、ギ酸メチル(HCOOCH3、MP:−99.8℃、BP:31.8℃)、ギ酸エチル(HCOOC2H5、MP:−80.5℃、BP:54.3℃)、ギ酸プロピル(HCOOC3H7、MP:−92.9℃、BP:81.3℃)、ギ酸nブチル(HCOO(CH2)3CH3、MP:−90℃、BP:106.8℃)、ギ酸イソブチル(HCOO(CH2)CH(CH3)2、MP:−95℃、BP:98℃)、ギ酸アミル(HCOO(CH2)4CH3、MP:−73.5℃、BP:130℃)等のギ酸エステル、酢酸メチル(H3CCOOCH3、MP:−98.5℃、BP:57.2℃)、酢酸エチル(H3CCOOC2H5、MP:−82.4℃、BP:77.1℃)、酢酸−n−プロピル(H3CCOO(CH2)2CH3、MP:−92.5℃、BP:101.6℃)、酢酸イソプロピル(H3CCOO(CH)(CH3)2、MP:−69.3℃、BP:89℃)、酢酸−n−ブチル(H3CCOO(CH2)3CH3、MP:−76.8℃、BP:126.5℃)、酢酸イソブチル(H3CCOO(CH2)CH(CH3)2、MP:−98.9℃、BP:118.3℃)、酢酸第二ブチル(H3CCOO(CH)(CH3)(CH2CH3)、MP:−99℃、BP:112.5℃)、酢酸−n−アミル(H3CCOO(CH2)4(CH3)、MP:−75℃、BP:147.6℃)、酢酸イソアミル(H3CCOO(CH2)2(CH)(CH3)2、MP:−78.5℃、BP:142.5℃)、酢酸メチルイソアミル(H3CCOO(CH2)(CH3)(CH2)(CH)(CH3)2、MP:−63.8℃、BP:146.3℃)、酢酸第二ヘキシル(H3CCOO(CH)(CH3)(CH2)3(CH3)、MP:−63.8℃、BP:146.3℃)等の酢酸エステル、プロピオン酸メチル(H3CCH2COO(CH3)、MP:−87℃、BP:79.7℃)、プロピオン酸エチル(H3CCH2COO(C2H5)、MP:−73.9℃、BP:99.1℃)、プロピオン酸−n−ブチル(H3CCH2COO(CH2)3CH3、MP:−89.55℃、BP:145.4℃)、プロピオン酸イソアミル(H3CCH2COO(CH2)2CH(CH3)2、MP:−73℃、BP:160.3℃)等のプロピオン酸エステル、酪酸メチル(H3C(CH2)2COO(CH3)、MP:−95℃、BP:102.3℃)、酪酸エチル(H3C(CH2)2COO(CH2)(CH3)、MP:−93.3℃、BP:121.3℃)、酪酸−n−ブチル(H3C(CH2)2COO(CH2)3(CH3)、MP:−91.5℃、BP:166.4℃)、酪酸イソアミル(H3C(CH2)2COO(CH2)2(CH)(CH3)2、MP:−73.2℃、BP:184.8℃)等の酪酸エステル等の脂肪族モノカルボン酸エステルが挙げられる。鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート(H5C2OCOOC2H5、MP:−43℃、BP:127℃)、エチルメチルカーボネート(H5C2OCOOCH3、MP:−55℃、BP:108℃)等が挙げられる。低融点溶媒としては、脂肪酸モノカルボン酸エステルが好ましく、プロピオン酸エステルがより好ましく、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピルがさらに好ましい。これらの低融点溶媒は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
非水溶媒中の低融点溶媒の含有割合は特に限定されないが、90〜10体積%が好ましく、80〜20体積%がより好ましく、50〜20体積%がさらに好ましい。10体積%未満であると、低温(25℃以下)環境下にて放電容量の確保が困難となるおそれがある。低融点溶媒は、BPが200℃以下の低沸点であるため、含有割合が90体積%を超えると、リフローハンダ付け時に電解液50の液漏れ等が生じるおそれがある。
【0020】
非水溶媒には、本発明の効果を損なわない範囲で、スルホラン、低融点溶媒以外の有機溶媒を配合することができる。このような有機溶媒としては、2メチル−γ−ブチロラクトン、アセチル−γ−ブチロラクトン等、電解液の非水溶媒として公知のものが挙げられる。ただし、低温環境下で放電容量を維持する観点から、非水溶媒は、スルホンラン及び低融点溶媒からなることが好ましい。
【0021】
支持塩は、例えば、4級アンモニウム塩、4級フォスフォニウム塩等が挙げられ、4級アンモニウム塩としては、脂肪鎖のみを有する化合物、脂肪鎖と脂肪環を有する脂環式化合物、もしくは脂肪環のみを有するスピロ化合物が挙げられる。なお、スピロ化合物は、4面体構造の原子1個を2つの環が共有しているものである。
塩を構成する対イオンとしては、PF6−、BF4−、N(CF3SO3)2−、C(CF3SO3)3−等が挙げられる。
このような4級アンモニウム塩の内、脂肪鎖のみを有する化合物としては、下記(1)式で表されるトリエチルメチルアンモニウム(TEMA)塩、(2)式で表されるテトラエチルアンモニウム(TEA)塩等が挙げられる(式(1)、(2)中、X−は対イオンを表す)。スピロ化合物としては、例えば、下記(3)式で表される5−アゾニアスピロ[4,4]ノナンテトラフルオロボレート(スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウム:SBP−BF4)、(4)式で表される6−アゾニアスピロ[5,5]ウンデカンテトラフルオロボレート、(5)式で表される3−アゾニアスピロ[2,6]ノナンテトラフルオロボレート、(6)式で表される4−アゾニアスピロ[3,5]ノナンテトラフルオロボレート等が挙げられる。また、4級フォスフォニウム塩としては、下記(7)式で表される5−フォスフォニルスピロ[4,4]ノナンテトラフルオロボレートが挙げられる。支持塩としては、4級アンモニウム塩が好ましく、スピロ化合物がより好ましく、5−アゾニアスピロ[4,4]ノナンテトラフルオロボレートがさらに好ましい。4級アンモニウム塩のスピロ化合物は電気伝導率が高いため、放電容量を増大できる。
【0022】
【化1】
【0023】
【化2】
【0024】
【化3】
【0025】
【化4】
【0026】
【化5】
【0027】
【化6】
【0028】
【化7】
【0029】
電解液50中の支持塩の含有量は、支持塩の種類等を勘案して決定でき、例えば、0.1〜3.7mol/Lの範囲で決定されることが好ましい。
【0030】
電解液50は、例えば、スルホランと低融点溶媒を混合して非水溶媒とし、該非水溶媒に支持塩を添加し攪拌して塩を溶解することで調製できる。
【0031】
正極10は、分極性電極であり、例えば、おが屑、椰子殻、ピッチ、コークス、フェノール樹脂等の有機系物質を水蒸気又はアルカリ等を単独もしくは併用した賦活処理にて得られる粉末状の活性炭を、バインダーと共に圧延ロール又はプレス成形したものが挙げられる。また、例えば、フェノール系、レーヨン系、アクリル系、ピッチ系等の繊維を不融化及び炭化賦活処理して活性炭もしくは活性炭素繊維とし、これをフェルト状、繊維状、紙状または焼結体状にしたものが挙げられる。
負極20は、分極性電極であり、正極10と同様のものが挙げられる。
【0032】
分極性電極の活物質である活性炭は、出発材料、炭化処理法又は賦活条件により種々多様な細孔分布と表面状態のものが得られる。このような多様な表面状態及び細孔分布を有する活性炭の中でも、正極10及び/又は負極20の活物質に用いる活性炭の比表面積は、1000m2/g以上が好ましく、1700m2/g以上がより好ましく、1800m2/g以上がさらに好ましい。1000m2/g以上であれば、十分な静電容量を得られる。
活性炭の細孔容積は、0.4mL/g以上が好ましく、0.7mL/g以上がより好ましい。細孔容積が0.4mL/g以上であれば、十分な静電容量を得られる。
また、活性炭の細孔は、細孔半径1nm未満の細孔が全細孔中に占める割合(微小細孔割合)である(細孔半径1nm未満の細孔数)/(全細孔数)で表される値が、好ましくは75%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下である。75%以下であれば、十分な静電容量を得られるためである。
また、活性炭の細孔は、細孔半径1〜3nmの細孔が全細孔中に占める割合(中細孔割合)である(細孔半径1〜3nmの細孔数)/(全細孔数)で表される値が、好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。20%以上であれば、十分な静電容量を得られ、70%以上であれば、スルホランを含有する電解液50との組み合わせにより、3V以上の高電圧の連続印加に対する劣化防止性能がさらに向上する。
【0033】
バインダーとしては、従来公知の物質を用いることができ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル系のポリマー、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、中でも、PTFEが好ましい。
【0034】
分極性電極には、必要に応じて導電性付与剤を添加することができ、導電性付与剤としては、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラックや、黒鉛等の炭素質材料やNi、Ti等の耐蝕性の高い金属粉末等が挙げられ、中でもカーボンブラックが好ましく、ファーネスブラックがより好ましい。
【0035】
セパレータ30は、従来、電気二重層キャパシタのセパレータに用いられるものを適用でき、例えば、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、鉛ガラス等のガラス、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド等の樹脂からなる不織布等が挙げられる。中でも、ガラス製不織布が好ましく、ホウ珪酸ガラス製不織布がより好ましい。ガラス製不織布は、機械強度に優れると共に、大きなイオン透過度を有するため、内部抵抗を低減して放電容量の向上を図れる。
【0036】
セパレータ30の正極10と負極20とで挟持された部分である介在部32は、多孔度が31〜87%であることが好ましく、72〜83%であることがより好ましい。セパレータ30は、多孔度が上記範囲であればフィルターとしての機能を十分に果たすと共に、電解液の移動を円滑にし、電流特性の低下を防止できる。
なお、多孔度は、下記(I)式により求められる値であり、見かけ密度は、いわゆる嵩密度であり下記(II)式により求められる値である。
【0037】
多孔度(%)=見かけ密度(g/cm3)÷真密度(g/cm3)×100・・・(I)
【0038】
見かけ密度(g/mL)=セパレータの質量(g)÷セパレータの体積(cm3)・・・(II)
【0039】
また、セパレータ30の介在部32は、気孔の平均空孔径が0.1μm超3.0μm以下であることが好ましく、0.6〜1.0μmがより好ましい。0.1μm以下であると電解液の流通に抵抗が生じたり、活性炭等による目詰まりが発生したりして、抵抗が上昇しやすくなる。3μm超であると、フィルターとしての機能が低下し活性炭等が漏れてショートしたり、電解液の吸い上げ量が減少したりするおそれがある。なお、平均空孔径は、セパレータ30内に形成された空間を真球と見立てた場合の直径である。
【0040】
ガスケット40の材質は、熱変形温度が230℃以上の樹脂とされる。例えば、ポリフェニルサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、液晶ポリマー(LCP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルニトリル樹脂(PEN)、ポリエーテルケトン樹脂(PEK)、ポリアリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。また、これらの材料にガラス繊維、マイカウイスカー、セラミック微粉末等を30質量%以下の添加量で添加したものを好適に用いることができる。このような材質を用いることで、リフローハンダ付けにおいて、ガスケット40の変形を防止し、電解液50の揮発や漏出を防止できる。
【0041】
本発明の電気二重層キャパシタは、非水溶媒にスルホラン(BP=285℃)を含有するため、リフローハンダ付けに耐えうる耐熱性を有する。加えて、本発明の電気二重層キャパシタは、非水溶媒が実質的にPCを含有しないため、3V以上の電圧が印加され続けても放電容量の低下を抑制できる。加えて、電解液50は、低融点溶媒を非水溶媒に含有することで、低温環境においても粘度が適正に保たれ、イオンの移動が阻害されることがない。このため、本発明の電気二重層キャパシタは、低温環境下での放電容量を保てる。
【0042】
加えて、本発明の電気二重層キャパシタは、第一の液溜部と第二の液溜部が設けられているため、収納容器内への電解液の充填量を増大させ、電気二重層キャパシタの放電容量を長期に維持できる。また、リフローハンダ付け時には、低融点溶媒が気化によって膨張し、正極、負極又はセパレータから電解液が押し出され、電解液の含浸状態が不均一となりやすい。電解液の含浸量が不均一になると、内部抵抗が増大し放電容量が低下しやすい。このため、電解液の充填量を多くすることで、リフローハンダ付け終了後に、電解液を正極、負極又はセパレータへ速やかに戻して均一な含浸状態とし、十分な放電容量を確保できる。
【0043】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、セパレータの配置位置は、図2に示す電気二重層キャパシタ100のように、ガスケット140の内周部142上にセパレータ130の外周が載置されたものとしてもよい。セパレータ130は、その外周が内周部142上に載置されることで、第二の液溜部26と接し、第二の液溜部26の電解液50を効率的に正極10と負極20との間に供給することができる。
【0044】
セパレータの形状は、上述の実施形態に限定されず、例えば、図3の電気二重層キャパシタ200のセパレータ230のように、その外周から正極10及び負極20に向かうに従って多孔度が低くなるように、その厚みが圧縮されたものでもよい。このようなセパレータ230を設けることで、収納容器2内の電解液を効率的に正極10と負極20との間に供給できる。この結果、電気二重層キャパシタ200の放電容量を高くすることができる。
また、セパレータ230は、その外周が介在部232より広がった形状とされると共に、第一の液溜部16及び第二の液溜部26と接するように配置されている。このセパレータ230は、介在部232の厚さが、好ましくは最外周の厚さの90%未満、より好ましくは70%未満、さらに好ましくは50%未満とされる。このような形状とすることで、特に第一の液溜部16又は第二の液溜部26の電解液50をより効率的に正極10と負極20との間に供給できる。
【0045】
また、例えば、セパレータは、図4の電気二重層キャパシタ300のセパレータ330のように、その外周が第一の液溜部16内に挿入されていてもよい。セパレータ330を設けることで、第一の液溜部16に充填された電解液50を効率的に正極10と負極20との間に供給できる。
あるいは、図5の電気二重層キャパシタ400のセパレータ430のように、その外周が第二の液溜部26内に挿入されていてもよい。セパレータ430を設けることで、第二の液溜部26に充填された電解液50を効率的に正極10と負極20との間に供給できる。
なお、セパレータ330の第一の液溜部16に挿入された部分、セパレータ430の第二の液溜部26に挿入された部分(総じて含浸部という)は、介在部332又は介在部432と同じ材質であってもよいし、異なる材質とされていてもよい。前記含浸部は、ガラス製不織布であることが好ましく、ホウ珪酸ガラス製不織布であることがより好ましい。
【0046】
上述の実施形態では、電気二重層キャパシタ1に第一の液溜部16及び第二の液溜部26が形成されているが、本発明はこれに限定されず、例えば、第一の液溜部16又は第二の液溜部26のいずれかが形成されたものであってもよい。
あるいは、図6に示す電気二重層キャパシタ600のように、切り欠きを形成していないガスケット640を設け、液溜部が形成されていないものであってもよい。ただし、電解液50の充填量を増大させ、放電容量を高くするためには、液溜部を形成することが好ましい。
【0047】
上述の実施形態の電気二重層キャパシタは、コイン型構造であるが、本発明はこれに限定されず、例えば、図7に示すような平面視略矩形のものとすることができる。
【0048】
図7中、符号702は、有底角筒状の本体部712と、本体部712の開口部を塞ぐ平板状の蓋部722とで、金属リング740を介して密封された収納容器である。電気二重層キャパシタ700は、収納容器702内に、正極710と負極720とがセパレータ730を介して対向配置されたものであり、正極710、負極720及びセパレータ730には、電解液が含浸している。
【0049】
本体部712は、ガラス、セラミックス又はセラミックスガラス等の絶縁性材料からなり、その内部底面にアルミニウム等からなる金属層716が設けられている。蓋部722は例えばFeNi合金、FeCo合金、ステンレス鋼、アルミニウム合金等、熱伝導性が高いあるいは高抵抗の金属材料からなり、その内部天面には、Ni、Au、W、Cr等でメッキされた金属メッキ層726が設けられている。金属リング740には、その上面にAu又はNi等からなるメタライズ742が設けられ、メタライズ742は金属メッキ層726と接続されている。
【0050】
正極710は、炭素を導電性フィラーとする導電性樹脂接着剤からなる接着層714により金属層716に接着され、正極710上にはセパレータ730が載置されている。セパレータ730上には負極720が載置され、負極720は、炭素を導電性フィラーとする導電性樹脂接着剤からなる接着層724により金属メッキ層726に接着されている。こうして、セパレータ730を介して、正極710と負極720とが対向配置されている。
【0051】
本体部712の外部底面には、接続端子746と接続端子748とが設けられ、接続端子748は金属層716と接続されている。また、接続端子746は、本体部712を貫通するパターン線744により、金属リング740と接続されている。こうして、接続端子748と正極710とが電気的に接続され、接続端子746と負極720とが電気的に接続される。
【0052】
電気二重層キャパシタ700によれば、コイン型構造の電気二重層キャパシタに比べて収納容器内部の有効スペースが大きくなると共に、面実装する基板上のスペースの有効利用が図れる。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
図1に示す電気二重層キャパシタ1と同様の電気二重層キャパシタを次のように作製した。
スルホラン(表中、SLと記載):プロピオン酸メチル(表中、PMと記載)=7:3(体積比)で混合して非水溶媒とし、該非水溶媒にトリエチルメチルアンモニウム四弗化ホウ素塩(TEMA−BF4)を1mol/Lとなるように溶解して電解液とした。
フェノール樹脂を炭化賦活して得られた活性炭粉末80質量部と、アセチレンブラック(導電性付与剤)10質量部と、PTFE(バインダー)10質量部とを混合して電極合剤とした。前記活性炭粉末には、比表面積1900m2/g、細孔容積0.85mL/g、微小細孔割合が4%、中細孔割合が95%、個数平均粒径12μm(レーザー式により測定)のものを用いた。
得られた電極合剤を厚さ0.2mm、直径1.0mmの略円形のペレットに加圧成形し、正極及び負極とした。外面がNiメッキされたステンレス鋼製の正極缶の内部底面に、導電性カーボン接着剤により正極を接着し、PEEK製のガスケットを正極缶の内周に配置した。また、外面がNiメッキされたステンレス鋼製の負極缶の内部天面に導電性カーボン接着剤により負極を接着した後、負極上にガラス製不織布のセパレータ(繊維径:0.5〜0.65μm、アクリル系バインダー10質量%含有)を載置した。そして、負極缶内に電解液を充填した後、正極缶の開口部周縁をかしめて、収納容器を密封し、電気二重層キャパシタを作製した。表中、本実施例は、セパレータタイプAと記載する。
【0054】
(実施例2)
電解液の支持塩をSBP−BF4とした以外は、実施例1と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。表中、本実施例は、セパレータタイプAと記載する。
【0055】
(実施例3)
セパレータを図2に示すセパレータ130と同様の配置とした以外は、実施例2と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。表中、本実施例は、セパレータタイプBと記載する。
【0056】
(実施例4)
セパレータを図3に示すセパレータ230と同様に、その外周が第一の液溜部と第二の液溜部とに接すると共に、外周から正極10及び負極20に向かうに従って、多孔度が低くなるようにした以外は、実施例2と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。表中、本実施例は、セパレータタイプCと記載する。なお、この実施例のセパレータは、介在部の多孔度が77%とされ、セパレータ最外周部の多孔度が87%とされたものである。
【0057】
(実施例5)
セパレータを図5に示すセパレータ430と同様に、その外周が第二の液溜部に挿入されたものとした以外は、実施例2と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。表中、本実施例は、セパレータタイプDと記載する。
【0058】
(比較例1)
非水溶媒をスルホラン:ジメチルカーボネート(MP:0.5℃)=7:3(体積比)とした以外は、実施例1と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。表中、本実施例は、セパレータタイプAと記載する。
【0059】
(放電容量の測定)
各例で、作製した電気二重層キャパシタを160〜200℃、10分間の予備加熱後、260℃、10秒で本加熱するリフロー処理を施し、リフロー処理後、室温で2時間静置した。
静置後、24℃の環境下にて、3.3Vの電圧で印加した状態を2時間保持した。2時間保持後に、電流5μAで2.0Vになるまで放電した(低温放電)。この低温放電を電気二重層キャパシタ5個について行い、その放電容量の平均をD1とした。
また、−30℃の環境下とした以外は、低温放電と同様にして放電容量を測定し、その平均をD2とした。
各例の電気二重層キャパシタを70℃のオーブンに入れ、3.3Vの電圧で印加した状態を40日間保持した。40日間保持後、24℃の環境下にて、電流5μAで2.0Vになるまで放電した(保存後放電)。この保存後放電を電気二重層キャパシタ5個について行い、その放電容量の平均をD3とした。
【0060】
(総合評価)
○・・・D1が7.0mAh以上、D2が3.5mAh以上、D3が3.0mAh以上の全てを満たす
△・・・D1が6.0mAh以上7.0mAh未満、D2が3.0mAh以上3.5mAh未満、D3が3.0mAh以上の全てを満たす
×・・・D3が3.0mAh未満で、D1が6.0mAh未満又はD2が3.0mAh未満のいずれかを満たす
【0061】
【表1】
【0062】
実施例1〜5、比較例1は、いずれもリフロー処理にて電解液の漏出等は確認されなかった。
表1に示すように、非水溶媒をスルホランと低融点溶媒との混合溶媒とした実施例1〜5は、いずれも低温条件下において6.0mAh以上の放電容量が確保されていた。さらに、−30℃以下の条件下でも3.0mAh以上の放電容量が確保されていた。
これに対し、低融点溶媒に換えてジメチルカーボネートを用いた比較例1は、−30℃以下の条件下での放電容量が2.0mAhと低いものであった。
【符号の説明】
【0063】
1、100、200、300、400、600、700 電気二重層キャパシタ
2、702 収納容器
10、710 正極
12 正極缶
16 第一の液溜部
20、720 負極
22 負極缶
26 第二の液溜部
30、130、230、330、430、730 セパレータ
40、140、640 ガスケット
50 電解液
712 本体部
722 蓋部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持塩と、スルホランと、融点が−40℃以下の低融点溶媒とを含有することを特徴とする電気二重層キャパシタ用の電解液。
【請求項2】
前記低融点溶媒は、脂肪族モノカルボン酸エステルであることを特徴とする、請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用の電解液。
【請求項3】
前記支持塩は、4級アンモニウム塩のスピロ化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電気二重層キャパシタ用の電解液。
【請求項4】
蓋部と本体部とで密封された収納容器内に、セパレータを介して対向配置された少なくとも一対の分極性電極と、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解液とを備えることを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項5】
前記収納容器は、ガスケットを介して前記蓋部と前記本体部とで密封されていることを特徴とする、請求項4に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項6】
前記分極性電極の外周の外方には、前記ガスケットを切り欠いた液溜部が形成されていることを特徴とする、請求項5に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項7】
前記セパレータは、その外周が前記液溜部と接していることを特徴とする請求項6に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項8】
前記セパレータは、その外周から前記分極性電極に向かうに従って、多孔度が低くなることを特徴とする請求項6に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項9】
前記分極性電極の活物質は、比表面積が1000m2/g以上、細孔容積が0.4mL/g以上であり、細孔半径1nm未満の細孔が全細孔中に占める割合である(細孔半径1nm未満の細孔数)/(全細孔数)で表される値が70%以下、細孔半径1〜3nmの細孔が全細孔中に占める割合である(細孔半径1〜3nmの細孔数)/(全細孔数)で表される値が30%以上の活性炭であることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項10】
前記セパレータは、ガラス製であることを特徴とする、請求項4〜9のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項1】
支持塩と、スルホランと、融点が−40℃以下の低融点溶媒とを含有することを特徴とする電気二重層キャパシタ用の電解液。
【請求項2】
前記低融点溶媒は、脂肪族モノカルボン酸エステルであることを特徴とする、請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用の電解液。
【請求項3】
前記支持塩は、4級アンモニウム塩のスピロ化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電気二重層キャパシタ用の電解液。
【請求項4】
蓋部と本体部とで密封された収納容器内に、セパレータを介して対向配置された少なくとも一対の分極性電極と、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解液とを備えることを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項5】
前記収納容器は、ガスケットを介して前記蓋部と前記本体部とで密封されていることを特徴とする、請求項4に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項6】
前記分極性電極の外周の外方には、前記ガスケットを切り欠いた液溜部が形成されていることを特徴とする、請求項5に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項7】
前記セパレータは、その外周が前記液溜部と接していることを特徴とする請求項6に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項8】
前記セパレータは、その外周から前記分極性電極に向かうに従って、多孔度が低くなることを特徴とする請求項6に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項9】
前記分極性電極の活物質は、比表面積が1000m2/g以上、細孔容積が0.4mL/g以上であり、細孔半径1nm未満の細孔が全細孔中に占める割合である(細孔半径1nm未満の細孔数)/(全細孔数)で表される値が70%以下、細孔半径1〜3nmの細孔が全細孔中に占める割合である(細孔半径1〜3nmの細孔数)/(全細孔数)で表される値が30%以上の活性炭であることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項10】
前記セパレータは、ガラス製であることを特徴とする、請求項4〜9のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2011−82364(P2011−82364A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233798(P2009−233798)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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