説明

電気二重層キャパシタ用活性炭およびその製造方法

【課題】水溶液系あるいは非水溶液系の電解液のそれぞれにおいて、体積あたりの容量密度が高く、大電流での充放電特性に優れた電気二重層キャパシタ用活性炭を提供すること。
【解決手段】全体のBET比表面積が900〜1,500m2/gであり、MP法により測定される2nmより小さいミクロ細孔の比表面積が800m2/g以上で、その比表面積とBJH法により測定される2nm以上のメソ細孔の比表面積の比であるミクロ/メソ比が、10〜14であることを特徴とする水溶液系の電気二重層キャパシタ用活性炭。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶液系あるいは非水溶液系の電解液のそれぞれにおいて、体積あたりの容量密度が高く、大電流での充放電特性に優れた電気二重層キャパシタ用活性炭およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタは、電極として活性炭粉末などを用い、活性炭と電解液との界面に生じる電気二重層を利用した大容量コンデンサである。電気二重層キャパシタは小型で大容量の充電可能なコンデンサとして、マイコン、メモリ、タイマーのバックアップ電源などに広く用いられており、近年、特に車載用のコントローラー用バックアップ電源や、アシスト電源などに使用されつつある。
【0003】
このような電気二重層キャパシタには、硫酸水溶液のような水溶液系電解液を用いたものと、プロピレンカーボネートのような有機溶媒に電解質を添加した非水溶液系電解液を用いたものの二種類がある。何れの系でも、活性炭の基本的な特性としては、静電容量、耐電圧、内部抵抗などが挙げられるが、静電容量はその中で最も重要なものである。
【0004】
電気二重層キャパシタの原理は、電極と電解液の界面に生じた電気二重層を利用するものであり、静電容量は、その界面の面積に比例する。従って、静電容量を増加させるためには、電極の表面積を大きくすればよいことがわかる。ただし、実際には同じ比表面積の活性炭でも、静電容量は同じにならない。この原因としては、大きく次の2つの原因が考えられる。
1)活性炭の粒子形状あるいは粒子径などが違うことにより、キャパシタ電極内の粒子間の接触が違い、電極内抵抗が変化するため、および
2)同じ比表面積を示す活性炭でも細孔径分布が違い、電解液イオンの吸着量が違ってくるためである。
【0005】
これらの原因のうち、特に細孔径分布は重要であり、水蒸気賦活やアルカリ賦活においても活性炭の細孔分布に着目した提案がなされている。代表的な提案としては、溶媒和したイオン径よりも大きいスリットの細孔を使用する方法(特許文献1参照)、比表面積において2nm以上が10%以下(特許文献2参照)、TEM画像解析法による活性炭の細孔分布最頻値が1〜2nmとする方法(特許文献3参照)、およびその最頻値を改良した方法(特許文献4参照)、1〜2nm、および2〜10nmの両方にピークをもつもの(特許文献5参照)、ピークが0.8nm以下で、1.5nm以下の細孔容積が65%以上(特許文献6参照)、細孔径が電解液の最大イオン径以上、5.0倍以下にする(特許文献7参照)、細孔容積分布において直径1.2nm以上4nm以下の細孔径に対して0.4cc/g以上を確保する(特許文献8参照)などがある。
【0006】
ただ、このような細孔径分布については、窒素分子の吸着量から、円形細孔、単分子層吸着を仮定して算出した細孔径か、透過型電子顕微鏡(TEM)などの画像処理を使用して算出した細孔径となっており、その値は絶対値的な意味はない。
【0007】
また、これらの特許文献には、細孔径分布を制御する方法として、活性炭の原料として、ハロゲンを含む熱可塑性樹脂、あるいはカーボンエアロゲルなど特殊な原料を使用する方法やアルカリ賦活などの化学賦活方法の条件を制御する方法は記載されているが、特にミクロ・メソ細孔などの違った細孔径を作り分ける方法については記述がない。
【0008】
これら細孔径分布を制御する方法として、生成する細孔径を規定はしていないが、細孔径の制御として、空気を使用した二段処理を提案しているものもある(特許文献9参照)。しかし、この方法は、第一段賦活も第二段賦活も、賦活剤としては空気を使用しており、その温度および時間によって制御しているため、その自由度は低い。
【0009】
このような細孔径分布制御ではなく、電極を作成する際に使用されるバインダーとの濡れ性、あるいはキャパシタセルの電解液との濡れ性を増すために、賦活化処理後に低温酸素プラズマ処理をする方法(特許文献10参照)なども提案されているが、これらの処理については、あくまで濡れ性などの改善を目的としており、細孔径の制御を目的にしたものではない。
【0010】
【特許文献1】特開平7−220985号公報
【特許文献2】特開平9−74053号公報
【特許文献3】特開平9−275042号公報
【特許文献4】特開平10−149958号公報
【特許文献5】特開平9−328308号公報
【特許文献6】特開平10−279303号公報
【特許文献7】特開平11−11921号公報
【特許文献8】特開2001−118753号公報
【特許文献9】特開2005−286170号公報
【特許文献10】特開平09−022834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
水溶液系あるいは非水溶液系の電解液のそれぞれにおいて、体積あたりの容量密度が高く、大電流での充放電特性に優れた電気二重層キャパシタ用活性炭を製造するためには、細孔径分布を制御する必要がある。ただし、細孔径については、先に記述したように測定方法および解析法により違ってくるため、本発明においては、窒素吸着により求めた吸着量から、MP法により測定される2nmより小さいミクロ細孔の比表面積と、BJH法により測定される2nm以上のメソ細孔の比表面積およびその比を細孔径分布の目安として使用する。
【0012】
今、体積あたりの容量密度を高くするためには、2nmより小さいミクロ細孔径の比表面積が大きい方がよい。ただし、このミクロ細孔のみ多くなった場合、小電流時の充放電容量は上がるものの、大電流での充放電特性が悪くなる。この大電流の充放電特性を上げるためには、2nm以上のメソ細孔が必要となる。ただし、このメソ細孔を多くし過ぎると、非効率な大きな細孔が形成されることにより、体積あたりの容量密度が低くなる。これらの細孔径範囲は、当然、電解質イオンの大きさで変ってくるために、水系電解質と非水溶液系の電解液のキャパシタでは、その最適値範囲が異なってくる。
【0013】
このように、体積あたりの容量密度が高く、大電流での充放電特性に優れた電気二重層キャパシタ用活性炭を製造するためには、ミクロ細孔とメソ細孔をある範囲で、別々に制御する必要がある。現在、賦活処理には、水蒸気、二酸化炭素、酸素などの酸化性ガスを賦活化剤に使用する方法、あるいは、塩化亜鉛、リン酸、アルカリ、アルカリ土類金属の化合物などの無機酸や無機塩基を使用する方法などが知られている。当然これらの賦活化法の製造条件により、細孔径分布は制御できるが、ミクロ細孔とメソ細孔のそれぞれを別々に制御するためには、1つの賦活化方法での条件制御だけでは困難である。
従って、本発明の目的は、水溶液系あるいは非水溶液系の電解液のそれぞれにおいて、体積あたりの容量密度が高く、大電流での充放電特性に優れた電気二重層キャパシタ用活性炭を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで発明者らは、水溶液系あるいは非水溶液系の電解液のそれぞれにおいて、体積あたりの容量密度が高く、大電流での充放電特性に優れた、これら細孔分布の目安の数値範囲を明らかにし、その数値範囲の細孔径分布に制御するために、二段の賦活処理を行うことにより、ミクロ細孔領域の細孔とメソ細孔領域の細孔の二重細孔構造を有する電気二重層キャパシタ用活性炭を製造することに成功した。
【0015】
すなわち、本発明は、全体のBET比表面積が900〜1,500m2/gであり、MP法により測定される2nmより小さいミクロ細孔の比表面積が800m2/g以上で、その比表面積とBJH法により測定される2nm以上のメソ細孔の比表面積の比であるミクロ/メソ比が、10〜14であることを特徴とする水溶液系の電気二重層キャパシタ用活性炭を提供する。該活性炭においては表面官能基量が、0.3〜1.5mmol/gであることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、全体のBET比表面積が1,000〜2,500m2/gであり、MP法により測定される2nmより小さいミクロ細孔の比表面積が900m2/g以上で、その比表面積とBJH法により測定される2nm以上のメソ細孔の比表面積の比であるミクロ/メソ比が、3〜7であることを特徴とする非水溶液系の電気二重層キャパシタ用活性炭を提供する。該活性炭においても表面官能基量が、0.3〜1.5mmol/gであることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、原料炭素材料に、主にミクロ細孔領域を形成する第一段賦活処理を実施した後に、主にメソ細孔領域を形成する第二段酸素賦活処理を実施することを特徴とする電気二重層キャパシタ用活性炭の製造方法を提供する。該製造方法においては、第一段賦活処理と第二段酸素賦活処理との間で、または第二段酸素賦活処理後に熱処理を行うこと;第一段賦活処理が、水蒸気賦活、二酸化炭素賦活、アルカリ賦活、塩化亜鉛賦活またはリン酸賦活であること;および第二段酸素賦活処理方法における酸素濃度が0.5〜20vol%であり、酸素賦活処理温度が、350〜700℃であることが好ましい。これらの製造方法によって前記本発明の水溶液系または非水溶液系の電気二重層キャパシタ用活性炭が好ましく提供される。
【0018】
本発明において「MP法」は、相対圧が低いときは、窒素ガスの小さい細孔への吸着が起こり、相対圧が高くなるに従い、大きな細孔への吸着が惹起されることに基づいているものであり、2nmより小さいミクロ細孔の解析に用いられている。「BJH法」は、MP法と同様の現象に基づいているものであり、2nm以上のメソ細孔の解析に用いられている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、水溶液系あるいは非水溶液系の電解液のそれぞれにおいて、体積あたりの容量密度が高く、大電流での充放電特性に優れた電気二重層キャパシタ用活性炭を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明で使用する活性炭の原料炭素材料としては、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)樹脂、ハロゲンを含む熱可塑性樹脂などの樹脂系原料、石油および石炭系ピッチやコークス、およびヤシ殻やコーヒー豆などの植物系原料などを使用することができる。
【0021】
これらの原料をそのまま、あるいは300〜1,000℃の温度で炭化処理したものを第一段の賦活処理に供する。この第一段の賦活処理においては、2nm以下のミクロ細孔の生成を主に行う。この場合、第一段の賦活化については、酸素を使用する賦活化方法以外の賦活化方法とする。好ましくは、ミクロ細孔を生成しやすい水蒸気、二酸化炭素などの酸化反応が比較的マイルドな賦活化方法がよいが、主にミクロ細孔を生成する条件であれば、その他の無機酸や無機塩基を使用する賦活化方法でもよい。
第一の賦活処理の好ましい条件としては、賦活剤を水蒸気とした場合には、賦活温度として700〜900℃の比較的低温域の温度である。また、処理時間については、目的とする比表面積により適宜選択することが挙げられる。
【0022】
本発明では、上記第一段の賦活処理品に対して、第二段目の酸素賦活処理を行うが、第一段の賦活処理によりメソ細孔が多くなった場合は、第一段の賦活処理により製造された活性炭に対して、アルゴン、窒素などの不活性雰囲気下、350〜900℃の温度をかけて熱処理することによってメソ細孔を調整できる。
【0023】
第二段目の酸素賦活処理については、主に2nmより大きいメソ細孔を生成することを目的とし、酸素濃度と酸素賦活処理温度により、メソ細孔を制御することができる。酸素濃度については0.5〜20vol%であり、好ましくは1〜10%である。酸素濃度が0.5vol%より小さい場合は、酸素による細孔生成が非常に遅くなり、メソ細孔となりにくく、一方、酸素濃度が20vol%より大きくなると逆に生成速度が速く、メソ細孔でも比較的大きな細孔が多くなり、体積あたりの容量密度が急激に小さくなる。酸素賦活処理温度については350〜700℃、好ましくは400〜600℃とする。この場合も酸素濃度と同じで、酸素賦活処理温度が350℃より低い場合の反応では、メソ細孔が形成され難く、一方、酸素賦活処理温度が700℃以上になると、逆に生成速度が速く、メソ細孔でも比較的大きな細孔になりやすい。
【0024】
ただし、上記第二段の酸素賦活処理で、メソ細孔が多くなり、細孔分布の調整ができなければ、第二段処理後の活性炭に対して、アルゴン、窒素などの不活性雰囲気下、350〜900℃の温度をかけて熱処理することによってメソ細孔を調整できる。これらの条件を制御することにより、水系電解液の場合は、全体のBET比表面積が900〜1,500m2/gであり、MP法により測定される2nmより小さいミクロ細孔の比表面積が800m2/g以上で、その比表面積とBJH法により測定される2nm以上のメソ細孔の比表面積の比であるミクロ/メソ比が10〜14である活性炭を製造することができる。
【0025】
上記活性炭は、酸素賦活処理をすることにより製造されるために、表面に酸性官能基が生成される。しかし、一般的には官能基が多くなるとキャパシタの耐久性が悪くなるために、無制限には大きくできない。そのため、表面酸性官能基量を0.3〜1.5mmol/gとすることが好ましい。
表面酸性官能基量を0.3〜1.5mmol/gに制御する条件は、好ましくは酸素賦活処理時の酸素濃度が0.5〜20vol%、反応温度が350〜700℃、反応時間が1〜12時間である。
【0026】
非水系電解液の場合は、全体のBET比表面積が1,000〜2,500m2/gであり、MP法により測定される2nmより小さいミクロ細孔の比表面積が900m2/g以上で、その比表面積とBJH法により測定される2nm以上のメソ細孔の比表面積の比であるミクロ/メソ比が3〜7である活性炭を製造することができる。該活性炭も、前記と同様の理由で表面酸性官能基量を前記と同様にして0.3〜1.5mmol/gとすることが好ましい。
【0027】
以上の賦活処理および熱処理反応については、ロータリーキルンや流動層あるいは固定層などの一般的な装置で行うことができるし、連続あるいはバッチなどの処理方法によって限定されるものでもない。
【実施例】
【0028】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1
原料としては、平均粒径7μmの球形フェノール樹脂を、PVA樹脂をバインダーとして、造粒したものを使用した。この造粒フェノール樹脂を650℃に設定した電気炉に10kg/hで装入し、造粒炭を得る。その後、この造粒炭5kgをロータリーキルン中に仕込み、810℃になるまで、窒素雰囲気下280℃/hで昇温し、一定温度に達した後、水蒸気を10m3/hで流し、第一段の賦活処理を実施する。その後窒素雰囲気下、280℃/hで降温しながら熱処理を行い、450℃になった時点で、第二段の酸素賦活処理を酸素濃度5vol%の窒素との混合ガス3Nm3/hを流すことにより実施する。その後、窒素雰囲気下90℃/hで降温しながら熱処理を行った。
【0029】
この第二段賦活処理造粒品を室温まで冷却し、ロータリーキルンから取り出した後、ジェットミルにより一次粒子まで解砕した上で、液体窒素温度での窒素吸着による吸着等温線を測定する。比表面積は、BET法により多点法により求めた。また、2nmより小さい細孔については、MP法で、2nm以上の細孔についてはBJH法で、それぞれ比表面積を求めた。
【0030】
こうして得られた活性炭粉末を、40%硫酸電解質を使用して、その静電容量を測定した。測定条件としては、電圧0.9Vまで、8mA/cm2の一定電流密度で充電し、その後0.9V一定で、1,800s保持した後、電流密度8mA/cm2の一定電流密度で放電し、その0.54〜0.45Vの電圧降下の傾きにより静電容量を算出する。
【0031】
実施例2
原料としては、平均粒径7μmの球形フェノール樹脂を、PVA樹脂をバインダーとして、造粒したものを使用した。この造粒フェノール樹脂を650℃に設定した電気炉に10kg/hで装入し、造粒炭を得る。その後、この造粒炭を1kg/hで、810℃に設定したロータリーキルン中に連続的に供給し、水蒸気を10m3/hで流し、第一段の賦活処理を実施する。製造した活性炭を回収した後、さらに500℃に設定したロータリーキルン中に連続的に1kg/hで装入し、第二段酸素賦活処理を酸素濃度2vol%の窒素との混合ガス20Nm3/hを流すことにより実施する。この回収した二段賦活処理造粒品を実施例1と同じく、ジェットミルにより一次粒子まで解砕した上で比表面積を求め、実施例1と同じように静電容量も測定した。
【0032】
実施例3
原料としては、平均粒径7μmの球形フェノール樹脂を、PVA樹脂をバインダーとして、造粒したものを使用した。この造粒フェノール樹脂を650℃に設定した電気炉に10kg/hで装入し、造粒炭を得る。その後、この造粒炭5kgをロータリーキルン中に仕込み900℃になるまで、窒素雰囲気下280℃/hで昇温し、一定温度に達した後、水蒸気を10m3/hで流し、第一段の賦活処理を実施する。その後窒素雰囲気下、280℃/hで降温しながら熱処理を行い、550℃になった時点で、第二段の酸素賦活処理を酸素濃度5vol%の窒素との混合ガス3Nm3/hを流すことにより、実施する。その後、窒素雰囲気下、90℃/hで降温しながら熱処理を行った。この回収した二段賦活処理造粒品を実施例1と同じく、ジェットミルにより一次粒子まで解砕した上で比表面積を求め、さらに非水系電解液での静電容量の測定を以下に述べる方法で行った。
【0033】
活性炭80mgに、導電材としてアセチレンブラック10mg、結合剤としてポリテトラフルオロエチレン5mg、メタノール1ccを混合し、メノウ乳鉢で引き伸ばしてペーストを作成する。次に、ペーストを直径13mm角に裁断した後、プレス機を使って圧縮し、円盤状電極体を得る。これをあらかじめ150℃で7時間以上乾燥させた後、常温に戻す。さらに、電極体に電解液として2mol/トリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレートのプロピレンカーボネート溶液を含浸し、セパレータを介して対向させ、電気二重層キャパシタ評価用セルを作成した。評価は次の通り行った。
【0034】
試作したキャパシタを20℃の恒温槽において30分以上放置した後、2.5Vで30分、定電圧充電を行う。1分間の時間を置いた後、0.5mA/cm2で定電流放電を行った。このときの放電カーブから、1.0Vから0.5Vまで低下するときの時間から、静電容量を求めた。
【0035】
実施例4
原料としては、平均粒径7μmの球形フェノール樹脂を、そのまま使用した。このフェノール樹脂を700℃に設定した電気炉に5kg/hで装入し、造粒炭を得る。その後、この造粒炭5kgと水酸化カリウム10kgとを均一に混合したものをニッケル金属性のロータリーキルン中に仕込み800℃になるまで、窒素雰囲気下280℃/hで昇温し、一定時間保持し、第一段の賦活処理を実施する。その後窒素雰囲気下、280℃/hで降温し、生成したアルカリ金属を水蒸気で失活した上で、回収・洗浄した上で乾燥する。その後、この得られた活性炭を皿状の容器に入れ、第二段の酸素賦活処理を酸素濃度5vol%の窒素との混合ガス3Nm3/hを流すことにより、600℃で実施する。この回収した活性炭について比表面積を求め、さらに非水系電解液での静電容量の測定を実施例3と同様な方法で行った。
【0036】
それぞれの実施例の第一段賦活処理のみの結果を比較例として麦1に纏めた。

【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明によれば電気二重層キャパシタを構成している材料である活性炭の細孔分布を、二段酸素賦活処理をすることでコントロールし、体積あたりの容量密度を向上させ、大電流での充放電特性に優れたキャパシタを作ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体のBET比表面積が900〜1,500m2/gであり、MP法により測定される2nmより小さいミクロ細孔の比表面積が800m2/g以上で、その比表面積とBJH法により測定される2nm以上のメソ細孔の比表面積の比であるミクロ/メソ比が、10〜14であることを特徴とする水溶液系の電気二重層キャパシタ用活性炭。
【請求項2】
表面官能基量が、0.3〜1.5mmol/gである請求項1に記載の水溶液系の電気二重層キャパシタ用活性炭。
【請求項3】
全体のBET比表面積が1,000〜2,500m2/gであり、MP法により測定される2nmより小さいミクロ細孔の比表面積が900m2/g以上で、その比表面積とBJH法により測定される2nm以上のメソ細孔の比表面積の比であるミクロ/メソ比が、3〜7であることを特徴とする非水溶液系の電気二重層キャパシタ用活性炭。
【請求項4】
表面官能基量が、0.3〜1.5mmol/gである請求項3に記載の非水溶液系の電気二重層キャパシタ用活性炭。
【請求項5】
原料炭素材料に、主にミクロ細孔領域を形成する第一段賦活処理を実施した後に、主にメソ細孔領域を形成する第二段酸素賦活処理を実施することを特徴とする電気二重層キャパシタ用活性炭の製造方法。
【請求項6】
第一段賦活処理と第二段酸素賦活処理との間で熱処理を行う請求項5に記載の電気二重層キャパシタ用活性炭の製造方法。
【請求項7】
第二段酸素賦活処理後に熱処理を行う請求項5または6に記載の電気二重層キャパシタ用活性炭の製造方法。
【請求項8】
第一段賦活処理が、水蒸気賦活、二酸化炭素賦活、アルカリ賦活、塩化亜鉛賦活またはリン酸賦活である請求項5〜7のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ用活性炭の製造方法。
【請求項9】
第二段酸素賦活処理方法における酸素濃度が0.5〜20vol%であり、酸素賦活処理温度が、350〜700℃である請求項5〜8のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ用活性炭の製造方法。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれか1項に記載の方法で製造されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ用活性炭。

【公開番号】特開2010−105836(P2010−105836A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277642(P2008−277642)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(591067794)JFEケミカル株式会社 (220)
【Fターム(参考)】