説明

電気二重層キャパシタ電極用活性炭およびその製造方法

【課題】炭素材料のアルカリ賦活剤との濡れ性を改善することにより、炭素材料と賦活剤との接触効率を向上させ、原料炭素材料と賦活剤の反応を効率的に進行させることができる電気二重層キャパシタ電極用活性炭の製造方法を提供する。
【解決手段】炭素材料をそのままもしくは焼成処理したものを平均粒子径が0.5μm〜15μmの範囲に粒度調整して得られる炭素粉末を酸素含有量が3質量%以上となるように酸化処理し、得られる酸化処理物をアルカリ賦活剤で賦活処理することを特徴とする電気二重層キャパシタ電極用活性炭の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタ電極用活性炭およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭は炭化処理をしたヤシガラや、石油コークス、石炭コークスなどの炭素材料を賦活して多孔質構造としたものである。表面積の大きい多孔質の活性炭は、吸着剤や触媒担体、電気二重層キャパシタ、リチウム二次電池などの電極材料などに多用されている。特に、ハイブリッドカーなどに使用する電気二重層キャパシタにおいて、エネルギー密度、即ち、静電容量を増大するために、その電極材料として微細孔が効果的に形成された結晶化度が高く、かつ表面積の大きい活性炭が求められている。
【0003】
かかる電気二重層キャパシタの電極材料に使用可能な微細孔が効果的に形成された活性炭の工業生産には、石油コークスなどの炭素材料と水酸化カリウムなどのアルカリ金属化合物とを不活性ガス雰囲気中などで、例えば、600〜1200℃の範囲で加熱し、アルカリ金属を黒鉛結晶層間に侵入させて反応させる賦活方法が一般的に使用されている(特許文献1)。このような賦活において、層状の縮合多環炭素化合物が積層された層状構造にアルカリ金属が侵入し、微細孔が形成される。
炭素材料を原料としてアルカリ賦活剤で賦活して電気二重層キャパシタ電極用活性炭を製造する方法において、賦活剤は炭素材料に対する重量比で通常2〜4倍を混合して用いる。特に、目標とする比表面積値が2000〜3000m/gと大きい場合には、“賦活剤/炭素材料”比率も大きくして製造する。しかしながら、アルカリ賦活剤が製造コストに占める割合は大きいため、アルカリ賦活剤の使用割合をできるだけ小さくすることが望まれる。
【0004】
炭素材料とアルカリ賦活剤の混合において、炭素材料は撥水性であるため水溶性であるアルカリ賦活剤との濡れ性が悪く、単純に2種類を混合するのみでは賦活剤と炭素材料との接触が不充分であるため、賦活剤の多くが賦活反応に使用されず、得られる賦活物(活性炭)の比表面積は小さい。
そのため、それらを強く接触させる手段として、ボールミルやヘンシェルミキサーなどの機械的に混合する方法やアルカリ賦活剤を溶融状態にして混合する方法などが知られている(特許文献2)。しかしながらいずれの方法においても、賦活反応をより効率的に進めるためには理論量よりも多く賦活剤を用いる必要があり、コストアップの要因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−059923号公報
【特許文献2】特開2002−134369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、上記課題に対し、炭素材料のアルカリ賦活剤との濡れ性を改善することにより、炭素材料と賦活剤との接触効率を向上させ、原料炭素材料と賦活剤の反応を効率的に進行させることができるという考えの下に、各種検討を行った。
その結果、炭素材料を平均粒子径が0.5μm〜15μmの範囲に粒度調整して得られる炭素粉末を、酸素含有量が3質量%以上となるように酸化処理して得られる酸化処理物が、アルカリ賦活剤との濡れ性を大きく改善することができ、かかる酸化処理物を用いることによりアルカリ賦活剤との接触効率を向上させ、これまでの方法では賦活されずに残されていた部分も賦活されるため、著しく大きな比表面積を有する活性炭を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
すなわち、本発明によれば、これまでと同じ比表面積の活性炭を製造する場合、少量の賦活剤で賦活が可能となるだけでなく、賦活反応が均一に進行し、従来に比較して優れた活性炭が得られる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、炭素材料をそのままもしくは焼成処理したものを平均粒子径が0.5μm〜15μmの範囲に粒度調整して得られる炭素粉末を酸素含有量が3質量%以上となるように酸化処理し、得られる酸化処理物をアルカリ賦活剤で賦活処理することを特徴とする電気二重層キャパシタ電極用活性炭の製造方法に関する。
【0008】
また本発明は、炭素材料が易黒鉛化性であることを特徴とする前記記載の活性炭の製造方法に関する。
また本発明は、焼成処理温度が500℃〜900℃の範囲であることを特徴とする前記記載の活性炭の製造方法に関する。
また本発明は、酸化処理物とアルカリ賦活剤との混合割合が、酸化処理物:アルカリ賦活剤=1:1〜1:4(質量比)の範囲であることを特徴とする前記記載の活性炭の製造方法に関する。
【0009】
また本発明は、前記記載の製造方法により得られる電気二重層キャパシタ電極用活性炭に関する。
さらに本発明は、前記記載の活性炭を電極に用いた電気二重層キャパシタに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、炭素材料とアルカリ賦活剤との反応を極めて効率よく進行させることができ、その結果、アルカリ賦活剤の使用量を従来より低減することが可能で、製造コストを大幅に削減できる。また、本発明の方法により、均一性の優れた活性炭を得ることができ、それを電気二重層キャパシタの電極に用いることにより、単位体積当たりの静電容量の大きい活性炭が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】炭素電極材を評価するために用いたラミネートセルの構成を示す。
【図2】キャパシタの初期特性(静電容量、内部抵抗)の測定方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳述する。
本発明において出発原料として用いる炭素材料としては、易黒鉛化性炭素材が好ましく用いられる。易黒鉛化性炭素材としては、石油コークスや石炭コークス等が挙げられ、また、メソフェーズピッチやそれを紡糸したメソフェーズピッチ繊維を不融化・炭素化したもの等を挙げることができる。これらの中では石油コークスが好ましい。
【0013】
石油コークスは石油の重質留分を500℃程度の高温で熱分解(コーキング)して得られる固形の炭素を主成分とする製品であり、通常の石炭系のコークスに対して石油コークスと呼ぶ。石油コークスにはディレード・コーキング法によるものとフルイド・コーキング法によるものとがあり、現在においては前者によるものが大半を占めている。本発明においては、この石油コークスでコーカーから取り出されたままの状態である石油生コークス(生コークス)を用いるのが好ましい。ディレード・コーキング法により生産される生コークスは揮発分が通常6〜13質量%であり、フルイド・コーキング法により生産される生コークスは揮発分が通常4〜7質量%である。本発明においてはいずれの方法による生コークスを用いてもよいが、容易に入手が可能でかつ品質の安定したディレード・コーキング法により生産される生コークスが特に好適である。
【0014】
上記石油の重質留分としては、特に限定されないが、石油類を減圧蒸留したときに残渣油として得られる重質油、石油類を流動接触分解した際に得られる重質油、石油類を水素化脱硫した際に得られる重質油、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0015】
本発明においては、(1)上記炭素材料を粒度調整し、ついで酸化処理を行い、しかる後、アルカリ賦活剤と混合し賦活反応を行うか、(2)上記炭素材料を焼成処理したのち、粒度調整を行い、ついで酸化処理を行い、しかる後、アルカリ賦活剤と混合し賦活反応を行う。
【0016】
炭素材料を焼成処理する場合は、好ましくは500〜900℃、より好ましくは500〜800℃の温度範囲にて不活性ガス中で実施される。その際、昇温速度については特に制限はないが、あまり遅すぎても処理工程に時間がかかり、逆にあまり急激な温度上昇は揮発分の爆発的な揮散を招き、結晶構造を破壊することがあるため、通常は30〜600℃/時、より好ましくは60〜300℃/時程度の昇温速度とすることが望ましい。
目標の焼成温度に達した後は、一定時間その温度を保持するのが好ましい。この保持時間は、たとえば10分〜2時間程度である。
【0017】
本発明においては、炭素材料を酸化処理する前に、粒度調整することが必要である。
粒度調整は、平均粒子径が0.5〜15μm、好ましくは1〜12μm、より好ましくは1〜8μmの範囲内となるように行う。かかる炭素材料の粒子径が0.5μm未満では、粒子同士の融着による粒子径の増大を招くため好ましくなく、また粒子径が15μmを超えると、目的とする活性炭の粒子径より大きくなるため好ましくない。
炭素材料の粒子径を調整する方法は特に限定されないが、通常、ジェットミル等の粉砕手段で粉砕する方法を挙げることができる。
【0018】
次に、粒度調整した炭素材料を酸化処理する。酸化処理により炭素材料とアルカリ賦活剤との濡れ性を向上することができる。
酸化処理は、処理後の炭素材料中の酸素含有量が3質量%以上、好ましくは4質量%以上になるように処理することが必要である。処理後の炭素材料中の酸素含有量が3質量%未満であると、アルカリ賦活剤との濡れ性が充分改善されないため賦活作用が発揮されないため好ましくない。また炭素材料中の酸素含有量があまり多過ぎても好ましくなく、炭素材料中の酸素含有量の上限は20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。20質量%を超えると炭素分の収率の低下が大きくなるが、濡れ性改善の効果はあまり大きくならない。
上記酸化処理は、通常、酸化性ガスの存在下に炭素材料を加熱するか、または、酸水溶液中に炭素材料を浸漬して行われる。
【0019】
酸化性ガスの存在下に炭素材料を加熱する場合は、酸化性ガスとしては、空気、酸素、オゾン、一酸化窒素、水蒸気、塩素等が挙げられるが、空気、酸素が好ましく用いられ、空気が特に好ましく用いられる。
酸化処理時の酸化性ガスによる酸化条件は、酸化性ガスの酸化力により異なり、酸化処理後の酸化程度により適宜決定することができるが、酸化処理後の酸素含有量が上記の範囲を満たすように行うことが必要である。
具体的には、空気を酸化性ガスとして用いた場合の酸化処理条件としては、酸化処理温度は220〜500℃が好ましく、より好ましくは250〜450℃である。酸化処理温度が220℃未満だと酸化反応が不十分となり、また500℃を超えると酸化反応が進み過ぎるため好ましくない。また、酸化処理時間については特に制限はないが、目的の温度に達してから10分〜2時間程度保持しておくのが好ましい。
【0020】
また、酸水溶液中に炭素材料を浸漬して酸化処理を行う場合には、酸処理に使用される酸としては、硝酸、硫酸、酢酸などが挙げられ、その他の酸化剤として過酸化水素水などが挙げられる。酸処理条件は用いる酸の酸化力により異なるが、例えば硝酸を用いた場合、10〜70%水溶液中、好ましくは20〜60%水溶液中にて、通常、酸化処理温度0〜100℃、好ましくは20〜80℃で、1〜120分間、好ましくは10〜60分間処理する。
【0021】
次に、酸化処理した炭素材料はアルカリ賦活剤と混合する混合工程と賦活反応を行う賦活工程によって処理される。
炭素材料とアルカリ賦活剤との混合方法は、従来のボールミルやヘンシェルミキサーなどの機械的に混合する方法や、アルカリ賦活剤を溶融状態にして混合する方法などはもちろん適用が可能であるが、本発明においては、炭素材料の濡れ性が向上することにより、アルカリ賦活剤水溶液と炭素材料を湿式で混合する方法も可能であり、この混合方法を採用することにより、さらに少ないアルカリ賦活剤で賦活することが可能となる。すなわち本発明においては、アルカリ賦活剤の使用量を通常より少なくしても、目的の活性炭を得ることができることが特徴である。すなわち、炭素材料と賦活剤との混合割合は、両者の質量比(炭素材料:賦活剤)が1:1〜1:4の範囲が好ましく、1:1〜1:3の範囲がより好ましく、1:1.2〜1:2.5の範囲がさらに好ましい。
【0022】
賦活反応に使用するアルカリ賦活剤としては、例えば、KOH、NaOH、RbOH、CsOHが挙げられる。中でも賦活効果の観点からKOHが好ましい。
賦活処理の反応条件は、この反応を充分に進行させることができれば特に限定されず、通常の活性炭の製造で行われる公知の賦活処理と同様の反応条件で行うことができる。例えば、アルカリ賦活剤を酸化処理後の炭素材料と混合し、好ましくは400℃以上、より好ましくは600℃以上、更に好ましくは700℃以上の高温の温度条件のもと加熱することにより行うことができる。なお、この加熱温度の上限は賦活反応が支障なく進行する温度であれば特に限定されないが、900℃以下が好ましい。
【0023】
賦活反応により得られた賦活物は次いで洗浄処理される。賦活物の洗浄方法としては、賦活物を洗浄液により洗浄し、固液分離する方法が好ましく採用される。例えば、賦活物を洗浄液に浸漬し、必要に応じて撹拌、加熱を行い、洗浄液と混合したのち、洗浄液を除去する方法を挙げることができる。
洗浄液としては、水および酸水溶液を用いることが好ましく、例えば、水による洗浄、酸水溶液による洗浄、さらに水による洗浄などを適宜組み合わせて用いることができる。
酸水溶液としては、塩酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸等のハロゲン化水素酸、硫酸、炭酸等の無機酸を好ましい例として挙げることができる。酸水溶液の濃度は、例えば、0.01〜3Nを挙げることができる。これらの洗浄液による洗浄は、必要に応じて複数回反復して行うことができる。
【0024】
洗浄物中に残留するアルカリ金属の量については、電気二重層キャパシタとした場合に悪影響を及ぼす可能性のある水準よりも低い量(好ましくは1000質量ppm以下)であれば特に限定されないが、通常、例えば、洗浄排水のpHが7〜8程度になるように洗浄すると共に、できるだけアルカリ金属分を除去するように洗浄することが望ましい。洗浄後は通常行われる乾燥工程を経て、目的の活性炭を得ることができる。
【0025】
本発明により得られる活性炭は、通常、平均粒子径が0.5〜12μm、比表面積が1500〜3000m/gであり、賦活処理後の活性炭の窒素ガス吸着法による細孔直径が0.1〜50nmの細孔容積が0.5〜3ml/g、水銀圧入法による細孔直径が0.05〜300μmの細孔容積が0.4〜5ml/g、残存アルカリ金属量は200質量ppm以下である。
上記の特性を持つ本発明の活性炭を電気二重層キャパシタの電極に用いることにより、単位体積当たりの静電容量の大きい電気二重層キャパシタを提供することができる。
【0026】
次に、本発明の電気二重層キャパシタについて説明する。
本発明の電気二重層キャパシタは、前記のように調製された活性炭を含む電極を備えることを特徴とするものである。
該電極は、例えば、活性炭と結着剤、さらに好ましくは導電剤を加えて構成され、またさらに集電体と一体化した電極であっても良い。
ここで使用する結着剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィン/ビニルエーテル共重合体架橋ポリマー等のフッ素化ポリマー、カルボキシメチルセルロース等のセルロース類、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等のビニル系ポリマー、ポリアクリル酸等が挙げられる。電極中における結着剤の含有量は特に限定されないが、活性炭と結着剤の合計量に対して、通常0.1〜30質量%程度の範囲内で適宜選択される。
【0027】
導電剤としては、カーボンブラック、粉末グラファイト、酸化チタン、酸化ルテニウム等の粉末が用いられる。電極中における導電剤の配合量は、配合目的に応じて適宜選択されるが、活性炭、結着剤及び導電剤の合計量に対して、通常1〜50質量%、好ましくは2〜30質量%程度の範囲内で適宜選択される。
なお、活性炭、結着剤、導電剤を混合する方法としては、公知の方法が適宜適用され、例えば、結着剤を溶解する性質を有する溶媒を上記成分に加えてスラリー状としたものを集電体上に均一に塗布する方法や、あるいは溶媒を加えないで上記成分を混練した後に常温または加熱下で加圧成形する方法が採用される。
また、集電体としては、公知の材質および形状のものを使用することができ、例えば、アルミニウム、チタン、タンタル、ニッケル等の金属、あるいはステンレス等の合金を用いることができる。
【0028】
本発明の電気二重層キャパシタの単位セルは、一般に上記電極を正極及び負極として一対用い、セパレータ(ポリプロピレン繊維不織布、ガラス繊維不織布、合成セルロース紙等)を介して対向させ、電解液中に浸漬することによって形成される。
電解液としては、公知の水系電解液、有機系電解液を使用することができるが、有機系電解液を用いることがより好ましい。このような有機系電解液としては、電気化学の電解液の溶媒として使用されているものを用いることができ、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、スルホラン誘導体、3−メチルスルホラン、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリル、グルタロニトリル、バレロニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、メチルフォルメート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等を挙げることができる。なお、これらの電解液を混合して使用してもよい。
【0029】
また、有機電解液中の支持電解質としては特に限定されないが、電気化学の分野又は電池の分野で通常使用される塩類、酸類、アルカリ類等の各種のものが使用でき、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩、環状4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等が挙げられ、(CNBF、(C(CH)NBF、(CPBF、(C(CH)PBF等が好ましいものとして挙げられる。電解液中のこれらの塩の濃度は、通常0.1〜5mol/l、好ましくは0.5〜3mol/l程度の範囲内で適宜選択される。
電気二重層キャパシタのより具体的な構成は特に限定されないが、例えば、厚さ10〜500μmの薄いシート状またはディスク状の一対の電極(正極と負極)の間にセパレータを介して金属ケースに収容したコイン型、一対の電極をセパレータを介して捲回してなる捲回型、セパレータを介して多数の電極群を積み重ねた積層型等が挙げられる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、各種分析方法は下記のとおりである。
酸素質量%:元素分析装置((株)住化分析センター製、NCH−22F型)を用いて試料の炭素質量%、水素質量%、窒素質量%を求め、残りを酸素質量%とした。
揮発分:JIS M8812「石炭類及びコークス類−工業分析法」に記載の方法に準拠して測定した。
比表面積・細孔容積:自動比表面積測定装置(日本ベル(株)製、BELSORP−miniII型)を用いて、窒素ガス吸着より求めた吸着等温線からBET法で算出した。
粒度分布測定:レーザー回折式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA−950型)を用いて水を分散媒として少量の界面活性剤を添加し超音波を照射した後、測定した。得られた体積基準の粒度積分曲線より50%粒子径(平均粒子径)を求めた。
【0031】
(実施例1)
平均粒子径2mm以下の石油生コークスを平均粒子径が8μmとなるようにジェットミルで粉砕した。この粉砕物を空気雰囲気中で昇温速度200℃/時間で昇温し、250℃で1時間保持して酸化処理した。この酸化処理物100質量部に対して水酸化カリウム200質量部を加えてボールミルで混合し、さらに、窒素ガス雰囲気中、750℃で1時間処理して賦活反応を行った。反応後に水洗及び酸洗浄(塩酸を使用)を繰り返して、炭素材中に残存する金属カリウムを除去し、乾燥して賦活物(電気二重層キャパシタ電極用活性炭)を得た。得られた賦活物、すなわち電極用活性炭(電極用炭素材)の窒素ガス吸着法(BET法)による比表面積は2380m/gであり、細孔容積は1.129cm/gであった。
得られた電極用炭素材を使用して、カーボンブラックおよび顆粒状ポリテトラフロオロエチレン(PTFE)を混合し、プレスすることにより、厚みが150μm〜200μm程度の炭素電極シートを作製した。このシートから所定のサイズに電極を切り出し、図1に示すラミネートセルを作製することにより、キャパシタとしての炭素電極材の評価を行った。なお、電解液には1.5Mのトリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート(TEMA・BF)のプロピレンカーボネート(PC)溶液を用いた。
次に、前記ラミネートセルを用いて、キャパシタの初期特性(静電容量、内部抵抗)を測定した。測定方法を図2に示す。静電容量については、キャパシタに蓄えられる全エネルギー量を測定し、その値から静電容量を算出した(エネルギー換算法)。内部抵抗については、放電開始直後のIRドロップより算出した。さらに、キャパシタのレート特性として、定電流放電値を0.36mA/cm〜72mA/cmまで変化させたときの静電容量を測定した。レート特性の結果は0.36mA/cm放電時の静電容量を基準として、各定電流放電時の静電容量の維持率として求めた。
結果を表1および表2に示す。また、実施例2〜6、比較例1〜5の賦活条件と結果をまとめて表1および表2に示す。
【0032】
(実施例2)
実施例1での酸化処理温度を450℃とする以外は同条件にて得られた酸化処理物100質量部に対して水酸化カリウム140質量部を水に溶解して混合し、130℃で5時間乾燥して得られた混合物について賦活反応を行った以外は、実施例1と同様の操作で電極用活性炭を製造した。得られた賦活物(電極用炭素材)の窒素ガス吸着法(BET法)による比表面積は1694m/gであり、細孔容積は0.790cm/gであった。
【0033】
(実施例3)
実施例1で得られたと同じ酸化処理物100質量部に対して水酸化カリウム160質量部をボールミル混合した以外は、実施例1と同様の操作で電極用活性炭を製造した。得られた賦活物(電極用炭素材)の窒素ガス吸着法(BET法)による比表面積は1608m/gであり、細孔容積は0.757cm/gであった。
【0034】
(実施例4)
実施例1に用いたと同じ生コークス粉砕物を10%硝酸中で60℃1時間処理した。放冷後、処理物をろ過して炉液がpH4以上となるまで洗浄し、110℃で5時間乾燥した。処理物の物性を表1に示す。この処理物を実施例1と同様にして水酸化カリウムとの混合、賦活、洗浄、乾燥して活性炭を得た。比表面積は2512m/g、細孔容積は1.202cm/gであった。
【0035】
(実施例5)
実施例1に用いたと同じ原料生コークスを窒素ガス雰囲気中、550℃1時間焼成した。そのときの昇温速度は200℃/時間とした。この焼成物を平均粒径が7μmとなるようにジェットミルで粉砕し、粉砕物を実施例3と同様にして450℃1時間酸化処理した。処理物の元素分析値を表1に示す。さらに処理物を実施例1と同様にして水酸化カリウムと混合し、700℃で1時間賦活後、洗浄、乾燥して活性炭を得た。比表面積は2755m/g、細孔容積は1.323cm/gであった。
【0036】
(実施例6)
実施例5に用いたと同じ酸化処理物を実施例1と同様の方法で水酸化ナトリウムと混合し、750℃で1時間賦活後、洗浄、乾燥して活性炭を得た。比表面積は1704m/g、細孔容積は0.926cm/gであった。
【0037】
(比較例1)
実施例1に用いたと同じ原料生コークスをジェットミルで粉砕したもの(平均粒径8μm)を、酸化処理することなく実施例1と同様にして賦活、洗浄、乾燥して活性炭を得た。この比表面積は2013m/gであった。
【0038】
(比較例2)
実施例1に用いたと同じ原料生コークスをジェットミルで粉砕したもの(平均粒径8μm)を、酸化処理することなく実施例2と同様にして賦活、洗浄、乾燥して活性炭を得た。得られた賦活物(電極用炭素材)の窒素ガス吸着法(BET法)による比表面積は768m/gであり、細孔容積は0.363cm/gであった。
【0039】
(比較例3)
実施例3と同様の操作で酸化処理を行い、酸化処理物100質量部に対して水酸化カリウム70質量部を水に溶解して混合した以外は、実施例3と同様にして電極用活性炭を製造した。得られた賦活物(電極用炭素材)の窒素ガス吸着法(BET法)による比表面積は569m/gであり、細孔容積は0.267cm/gであった。
【0040】
(比較例4)
実施例1に用いたと同じ原料生コークスをジェットミルで粉砕したもの(平均粒径8μm)を、空気雰囲気中で昇温速度200℃/時間で昇温し、200℃で1時間保持して処理した。この処理物を実施例1と同様にして賦活、洗浄、乾燥して活性炭を得た。この比表面積は2062m/gであった。
【0041】
(比較例5)
実施例5で粒度調整して得られたと同じ粉砕物を空気雰囲気中で昇温速度200℃/時間で昇温し、200℃で1時間保持して処理した。この処理物を実施例5と同様にして賦活、洗浄、乾燥して活性炭を得た。この比表面積は1756m/gであった。
【0042】
【表1】

【表2】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の方法により、アルカリ賦活剤を従来よりも少ない使用量で炭素材料との反応を極めて効率よく進行させることができるため、低コストで、かつ均一性に優れ、単位体積当たりの静電容量の大きい活性炭を得ることができ、工業的価値は極めて大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素材料をそのままもしくは焼成処理したものを平均粒子径が0.5μm〜15μmの範囲に粒度調整して得られる炭素粉末を酸素含有量が3質量%以上となるように酸化処理し、得られる酸化処理物をアルカリ賦活剤で賦活処理することを特徴とする電気二重層キャパシタ電極用活性炭の製造方法。
【請求項2】
炭素材料が易黒鉛化性であることを特徴とする請求項1に記載の活性炭の製造方法。
【請求項3】
焼成処理温度が500℃〜900℃の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の活性炭の製造方法。
【請求項4】
酸化処理物とアルカリ賦活剤との混合割合が、酸化処理物:アルカリ賦活剤=1:1〜1:4(質量比)の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の活性炭の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により得られる電気二重層キャパシタ電極用活性炭。
【請求項6】
請求項5記載の活性炭を電極に用いた電気二重層キャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−136856(P2011−136856A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297122(P2009−297122)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】