説明

電気光学装置、その駆動回路および電子機器

【課題】 各駆動回路における基準電流のバラツキを抑制する。
【解決手段】 データ線駆動回路は複数の駆動回路241を配列してなる。各駆動回路2
41は、各々が入力端子と出力端子とを含む第1端子群T1および第2端子群T2を含む。
第1電流生成部311は、第1端子群T1の入力端子への入力信号に応じた基準電流Iref
1を生成する。第2電流生成部312は、第2端子群T2の入力端子への入力信号に応じた
基準電流Iref1を生成する。データ信号生成部35は、基準電流Iref1および基準電流I
ref2に応じた(これらの電流に応じて定まる電位Vrefに応じた)データ信号を生成する
。第1出力部331は、少なくとも基準電流Iref2に応じた信号を第1端子群T1の出力
端子から出力する。第2出力部332は、少なくとも基準電流Iref1に応じた信号を第2
端子群T2の出力端子から出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード(以下「OLED(Organic Light Emitting Diode)」
という)に代表される発光素子など各種の電気光学素子の挙動を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電気光学素子が配列された電気光学装置が各種の電子機器の表示装置や露光装置
として従来から提案されている。各電気光学素子の階調(例えば輝度)は、その電気光学
素子に対応したデータ線に供給されるデータ信号に応じて制御される。複数のデータ線に
対するデータ信号の供給のために複数の半導体チップが利用される構成もある。各半導体
チップでは、その半導体チップで生成された電流(以下「基準電流」という)を基準とし
て、階調データに応じたデータ信号が生成される。
【0003】
ただし、各半導体チップには製造プロセスに起因した特性(例えばトランジスタの閾値
電圧)の個体差が生じ得る。したがって、各電気光学素子に同じ階調が指定された場合で
あっても、データ信号の基礎となる基準電流が半導体チップごとに相違することによって
各電気光学素子の階調がバラつくという問題がある。このような問題の解決を目的として
、例えば特許文献1には、ひとつの基準電流発生回路で生成された基準電流を総ての半導
体チップに共通に供給する構成が開示されている。また、特許文献2には、各半導体チッ
プの基準電流に応じた信号をこれに隣接する半導体チップに供給してデータ信号の生成に
使用する構成が開示されている。
【特許文献1】特開2000−293245号公報(段落0008および図1)
【特許文献2】特開2005−49632号公報(段落0042および図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された構成においては、基準電流発生回路と各半導体
チップとを電気的に接続するための配線が長くなるため、基準電流発生回路から各半導体
チップに供給される基準電流が周辺回路からのノイズなど様々な要因によって変動し易い
という問題がある。一方、特許文献2に開示された構成においては、相互に隣接する各半
導体チップを接続する比較的に短い配線を介して基準電流が伝送されるから、配線におけ
る基準電流の変動は特許文献1の構成よりも抑制される。しかしながら、特許文献2の構
成においては、各半導体チップの特性のバラツキや配線でのノイズの重畳といった様々な
要因によって、各半導体チップにわたる伝送のたびに基準電流が累積的に変動していく。
したがって、基準電流の授受の方向に沿って下流側の半導体チップに供給される基準電流
ほど所期の電流値とのズレが増大するという問題がある。本発明は、このような事情に鑑
みてなされたものであり、各駆動回路における基準電流のバラツキを抑制するという課題
の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために、本発明に係る駆動回路は、データ信号に応じた光学状態と
なる電気光学素子を備えた電気光学装置の駆動回路であって、入力端子と出力端子とを各
々が含む第1端子群および第2端子群と、第1端子群の入力端子への入力信号に応じた第
1基準電流(例えば図4の基準電流Iref1)を生成する第1電流生成部と、第2端子群の
入力端子への入力信号に応じた第2基準電流(例えば図4の基準電流Iref2)を生成する
第2電流生成部と、第1基準電流および第2基準電流に応じたデータ信号を生成するデー
タ信号生成部と、少なくとも第2基準電流に応じた信号を第1端子群の出力端子に出力す
る第1出力部と、少なくとも第1基準電流に応じた信号を第2端子群の出力端子に出力す
る第2出力部とを具備する。
【0006】
この構成の駆動回路は、例えば、各駆動回路の第1端子群の入力端子と他の駆動回路の
第2端子群の出力端子とが導通するとともに各駆動回路の第1端子群の出力端子と他の駆
動回路の第2端子群の入力端子とが導通するように複数個が隣接して配置される(例えば
図7の各態様)。この構成において、第i番目の駆動回路における基準電流に応じた信号
を第2端子群の出力端子から第(i+1)番目の駆動回路の第1端子群の入力端子に供給す
ることによって、第(i+1)番目の駆動回路における基準電流が第i番目の駆動回路の基準電
流に応じて調整される。また、第(i+1)番目の駆動回路における基準電流に応じた信号
を第1端子群の出力端子から第i番目の駆動回路の第2端子群の入力端子に供給すること
によって、第i番目の駆動回路における基準電流が第(i+1)番目の駆動回路の基準電流に応
じて調整される(すなわち、第(i+1)番目の駆動回路の基準電流が第i番目の駆動回路の基
準電流にフィードバックされる)。以上のように、本発明によれば、各駆動回路における
基準電流がその駆動回路の両側に位置する駆動回路の基準電流に応じて調整されるように
(つまり基準電流が駆動回路が配列する方向に沿った双方向にわたって伝達されるように
)複数の駆動回路を配列することができる。したがって、基準電流がひとつの方向のみに
伝達される特許文献2の構成と比較して、各駆動回路における基準電流の相違を低減する
ことができる。
【0007】
別の観点において、各駆動回路の第2端子群の出力端子とその第1方向に隣接する他の
駆動回路の第1端子群の入力端子とが導通するように複数の駆動回路が相互に隣接して配
置される(例えば図6の態様(1a)や態様(2a))。この態様においては、第i番目の駆動回
路における基準電流に応じた信号を第2端子群の出力端子からその第1方向に隣接する第
(i+1)番目の駆動回路の第1端子群の入力端子に供給することによって、第(i+1)番目の
駆動回路の基準電流を第i番目の駆動回路の基準電流に応じて調整することができる。す
なわち、各駆動回路の基準電流を第1方向に向けて順次に調整することができる。一方、
各駆動回路の第2端子群の入力端子とその第1方向に隣接する他の駆動回路の第1端子群
の出力端子とが導通するように複数の駆動回路が相互に隣接して配置される(例えば図6
の態様(1b)や態様(2b))。この構成においては、各駆動回路の基準電流を第2方向に向け
て順次に調整することができる。以上のように、各駆動回路における基準電流の調整の方
向を各々の接続の態様に応じて選択することができる。したがって、駆動回路のレイアウ
トの自由度を向上させることができるという利点がある。
【0008】
なお、本発明における「電気光学素子」とは、電気エネルギの供給によって輝度や透過
率といった光学的な特性が変化する素子である。本発明における電気光学素子の典型例は
、OLED素子に代表される発光素子であるが、本発明が適用される範囲はこれに限定さ
れない。
【0009】
また、本発明においては、第1端子群および第2端子群のみが特定されているが、入力
端子や出力端子を含む他の端子群を含んだ構成も当然に本発明の範囲に含まれる。また、
第1電流生成部および第2電流生成部を含む3個以上の電流生成部を備えた駆動回路や、
第1出力部および第2出力部を含む3個以上の出力部を備えた駆動回路も当然に本発明の
範囲に含まれる。つまり、端子群と電流生成部と出力部とを含む組の2以上が配置された
構成であれば、そのうちのひとつの組の各部を「第1端子群」「第1電流生成部」および
「第1出力部」と把握するとともにもうひとつの組の各部を「第2端子群」「第2電流生
成部」および「第2出力部」と把握すれば、その他の組の有無を議論するまでもなく当然
に本発明の範囲に含まれる。
【0010】
本発明の望ましい態様は、半導体チップ(ICチップ)に集積された駆動回路であり、
第1端子群の各端子は半導体チップのひとつの縁辺に沿って配置され、第2端子群の各端
子はこれに対向する縁辺に沿って配置される。この態様によれば、所定の方向に配列され
た複数の半導体チップの各々が、各半導体チップの間隙に位置する比較的に短い配線によ
って電気的に接続される。したがって、配線におけるノイズの重畳に起因した各半導体チ
ップでの基準電流のバラツキを抑制することができる。もっとも、第1端子群や第2端子
群の各端子が半導体チップの周縁に沿って直線的に配列している必要は必ずしもない。す
なわち、第1端子群の各端子がデータ信号生成部に対して一方の側に配置され、第2端子
群の各端子がデータ信号生成部に対して他方の側に配置されていれば、各端子群における
端子の配置の態様の如何に拘わらず、各半導体チップの間隙に位置する配線を短縮できる
という効果は奏される。
【0011】
本発明の望ましい態様において、第1電流生成部は、第1端子群の入力端子への入力信
号に応じた第1電流を生成するトランジスタ(例えば図4の第1トランジスタ41)と当
該第1電流のミラー電流を第1基準電流として生成するトランジスタ(例えば図4の第2
トランジスタ42)とを有するカレントミラー回路を含み、第2電流生成部は、第2端子
群の入力端子への入力信号に応じた第2電流を生成するトランジスタと当該第2電流のミ
ラー電流を第2基準電流として生成するトランジスタとを有するカレントミラー回路を含
む。この態様によれば、入力信号に応じた基準電流を精度よく生成することができる。
【0012】
この態様において、第1電流生成部は、第1基準電流の経路上に配置されてゲートが基
準電位線に接続された第1電圧生成トランジスタを含み、第2電流生成部は、第2基準電
流の経路上に配置されてゲートが基準電位線に接続された第2電圧生成トランジスタを含
み、データ信号生成部は、基準電位線の電位(実施形態における電位Vref)を基準とし
てデータ信号を生成する。この態様によれば、基準電位線の電位が第1基準電流および第
2基準電流の双方に応じて調整されるから、各駆動回路にてデータ信号の生成の基準とな
る基準電位線の電位を均衡させることができる。また、第1電流生成部のカレントミラー
回路を構成する各トランジスタのゲートと第2電流生成部のカレントミラー回路を構成す
る各トランジスタのゲートとが相互に接続された構成によれば、第1基準電流と第2基準
電流とを迅速かつ確実に均等化することができる。
【0013】
本発明は、以上に説明した各態様の駆動回路を備えた電気光学装置としても特定される
。すなわち、この電気光学装置は、各々がデータ線に供給されるデータ信号に応じた光学
状態となる複数の電気光学素子と、本発明の何れかの態様に係る複数の駆動回路を配列し
てなるデータ線駆動回路と、各駆動回路における第1端子群の出力端子と当該駆動回路に
隣接する他の駆動回路における第2端子群の入力端子とを相互に接続する第1配線(例え
ば図6や図7における第1配線L1および第2配線L2の一方)とを具備する。この態様に
よれば、本発明の駆動回路と同様の作用および効果が奏される。
【0014】
この電気光学装置においては、各駆動回路の配列に沿った双方向にわたって基準電流の
調整が実施されるように、各駆動回路における第1端子群の入力端子と当該駆動回路に隣
接する他の駆動回路における第2端子群の出力端子とを相互に接続する第2配線(例えば
図6や図7における第1配線L1および第2配線L2の他方)を備えた構成としてもよい。
具体的な態様は例えば図7に例示される。また、複数の駆動回路の各々が半導体チップに
集積されて所定の方向に配列された構成のもとで、各半導体チップにおいては、所定の方
向に沿った一方の側に第1端子群の各端子が配置され、所定の方向に沿った他方の側に第
2端子群の各端子が配置されてもよい。この構成によれば、各半導体チップの間隙に位置
する比較的に短い配線によって各駆動回路を電気的に接続することができる。
【0015】
本発明の望ましい態様において、各基準電流の基準となる電圧信号を生成する基準設定
手段が設けられ、複数の駆動回路のうち少なくともひとつの駆動回路の入力端子には、基
準設定手段が生成した電圧信号が供給される。他の態様において、各基準電流の基準とな
る電流信号を生成する基準設定手段が設けられ、複数の駆動回路のうち少なくともひとつ
の駆動回路の入力端子には、基準設定手段が生成した電流信号が供給される。
【0016】
本発明に係る電気光学装置は各種の電子機器に利用される。この電子機器の典型例は、
電気光学装置を表示装置として利用した機器である。この種の電子機器としては、パーソ
ナルコンピュータや携帯電話機などがある。もっとも、本発明に係る電気光学装置の用途
は画像の表示に限定されない。例えば、光線の照射によって感光体ドラムなどの像担持体
に潜像を形成するための露光装置(露光ヘッド)としても本発明の電気光学装置を適用す
ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る電気光学装置の構成を示すブロック図である。同図に
示されるように、この電気光学装置Dは、多数の電気光学素子17が面状に配列された素
子アレイ部10と、各電気光学素子17を駆動するための走査線駆動回路22およびデー
タ線駆動回路24と、データ線駆動回路24で使用される信号を生成する基準設定回路2
6とを有する。
【0018】
図2は、各電気光学素子17の近傍の構成を拡大して示す回路図である。図1および図
2に示されるように、素子アレイ部10には、X方向に延在する複数の走査線12と、X
方向と交差するY方向に延在する複数のデータ線14とが形成される。各電気光学素子1
7は、走査線12とデータ線14との各交差に対応する位置に配置されてマトリクス状に
配列する。これらの電気光学素子17は、例えば、低分子または高分子あるいはデンドリ
マーといった有機EL(ElectroLuminescent)材料からなる発光層を陽極と陰極との間に
介在させたOLED素子(発光素子)である。図2に示されるように、本実施形態の電気
光学装置Dは、電気光学素子17の陽極がデータ線14に接続されるとともに陰極が走査
線12に接続されたパッシブマトリクス型の発光装置である。
【0019】
走査線駆動回路22は、複数の走査線12の各々を順番に選択する回路である。図3に
示されるように、走査線駆動回路22が選択した走査線12の電位はローレベルに設定さ
れ、非選択の走査線12の電位はハイレベルに設定される。
【0020】
図1に示されるように、素子アレイ部10に形成された複数のデータ線14は、n本を
単位としてN個のブロックB(B1,B2,……,BN)に区分される(nおよびNはとも
に自然数)。データ線駆動回路24は、各々が別個のブロックBに対応するN個の半導体
チップC(C1,C2,……,CN)を含む。各半導体チップCは平面的な外形が略長方形
状であり、長辺をX方向に向けた姿勢で各々がX方向に配列される。なお、相互に隣接す
る各半導体チップCは配線を介して電気的に接続されるが、その接続の具体的な態様につ
いては後述する。
【0021】
次に、図4は、半導体チップC(C1ないしCNの各々)の構成を示すブロック図である
。なお、同図においてはひとつの半導体チップCのみが例示されているが、データ線駆動
回路24を構成する総ての半導体チップC(C1ないしCN)は同様の構成である。
【0022】
図4に示されるように、半導体チップCは、これに対応するブロックBの各データ線1
4に対してデータ信号を出力する駆動回路241を含む。各データ線14に出力されるデ
ータ信号は、走査線駆動回路22が選択した走査線12とそのデータ線14との交差に対
応した電気光学素子17の階調に応じた電流信号である。各電気光学素子17の階調は外
部から供給される階調データGによって指定される。図3に示されるように、水平走査期
間にて走査線駆動回路22が選択した電気光学素子17はその水平走査期間にてデータ線
14を介して供給されるデータ信号に応じた輝度に発光する。
【0023】
図4に示されるように、駆動回路241は、第1端子群T1および第2端子群T2と、第
1電流生成部311および第2電流生成部312と、第1出力部331および第2出力部
332と、ひとつのブロックBに属するデータ線14の総本数に相当するn個のデータ信
号生成部35とを含む。
【0024】
第1端子群T1は、電圧入力端子Vin[1]と電流入力端子Iin[1]と電流出力端子Iout[1
]とを含む。同様に、第2端子群T2は、電圧入力端子Vin[2]と電流入力端子Iin[2]と電
流出力端子Iout[2]とを含む。電圧入力端子Vin[1]およびVin[2]の各々は外部(基準設
定回路26または他の半導体チップC)から電圧信号が供給される端子であり、電流入力
端子Iin[1]およびIin[2]の各々は外部から電流信号が供給される端子である。一方、電
流出力端子Iout[1]およびIout[2]の各々は、電流信号を外部(他の半導体チップC)に
出力するための端子である。図4に示されるように、第1端子群T1に属する各端子は、
略長方形状の半導体チップCのうちひとつの短辺aに沿って配列される。一方、第2端子
群T2に属する各端子は、この短辺aとは反対側の短辺bに沿って配列される。したがっ
て、第j段目の半導体チップCj(jは1≦j≦Nを満たす整数)の第1端子群T1は、そ
のX方向の負側に隣接する半導体チップCj-1の第2端子群T2と隣接し、半導体チップC
jの第2端子群T2は、そのX方向の正側に隣接する半導体チップCj+1の第1端子群T1と
隣接する。
【0025】
第1電流生成部311および第2電流生成部312は、データ信号の電流値の基準とな
る基準電流Iref(Iref1,Iref2)を生成するための回路である。第1電流生成部31
1および第2電流生成部312の各々は、nチャネル型の第1トランジスタ41および第
2トランジスタ42と、pチャネル型の電圧生成トランジスタ43とを含む。第1トラン
ジスタ41のゲートとドレインとは接続される。第1トランジスタ41および第2トラン
ジスタ42のソースはともに接地される。第1トランジスタ41と第2トランジスタ42
とは各々のゲートが相互に接続されてカレントミラー回路を構成する。一方、電圧生成ト
ランジスタ43は、ゲートおよびドレインの双方が第2トランジスタ42のドレインに接
続されるとともにソースが電源線19に接続される。電源線19には電源の高位側の電位
が供給される。また、第1電流生成部311および第2電流生成部312の各々の電圧生
成トランジスタ43はゲートが基準電位線37に対して共通に接続される。
【0026】
第1端子群T1の電圧入力端子Vin[1]は、第1電流生成部311に含まれる第1トラン
ジスタ41のゲートに接続され、第1端子群T1の電流入力端子Iin[1]は、この第1トラ
ンジスタ41のドレインに接続される。したがって、電圧入力端子Vin[1]に供給される
電圧信号または電流入力端子Iin[1]に供給される電流信号に応じた電流I1が第1電流生
成部311の第1トランジスタ41に流れる。そして、この電流I1に対応したミラー電
流(例えば電流I1と等しい電流)が、基準電流Iref1として、第1電流生成部311の
電圧生成トランジスタ43および第2トランジスタ42に流れる。
【0027】
第2端子群T2の各端子と第2電流生成部312の各部との関係も同様である。したが
って、第2端子群T2の電圧入力端子Vin[2]または電流入力端子Iin[2]に供給される信
号に応じた電流I2が第1トランジスタ41に流れ、この電流I2のミラー電流である基準
電流Iref2が第2電流生成部312の電圧生成トランジスタ43および第2トランジスタ
42に流れる。以上のように、第1電流生成部311の電圧生成トランジスタ43に基準
電流Iref1が流れるとともに第2電流生成部312の電圧生成トランジスタ43に基準電
流Iref2が流れることによって、基準電位線37は基準電流Iref1および基準電流Iref2
に応じた電位Vrefとなる。
【0028】
図4に示される各データ信号生成部35は、階調データG(本実施形態では8ビットの
デジタルデータ)によって指定された階調に応じた電流値のデータ信号を生成し、このデ
ータ信号をデータ出力端子351からデータ線14に出力する回路である。図5に示され
るように、本実施形態におけるひとつのデータ信号生成部35は、階調データGのビット
数に相当する8個のトランジスタTa(Ta0ないしTa7)と、各々のドレインがトランジ
スタTaのソースに接続された8個のトランジスタTb(Tb0ないしTb7)とを有するD/
A変換器である。
【0029】
トランジスタTa0ないしTa7の各々のゲートには階調データGの各ビット(D0ないし
D7)が供給される。また、ひとつのデータ信号生成部35に属するトランジスタTa0な
いしTa7のドレインはデータ出力端子351を介してデータ線14に共通に接続される。
一方、各トランジスタTbは、ソースが電源線19に接続されるとともにゲートが基準電
位線37に接続される。したがって、各トランジスタTbには基準電位線37の電位Vref
に応じた電流が流れる。トランジスタTb0ないしTb7の特性(特に利得係数)は、各々の
ゲートに共通の電位Vrefが供給されたときに各トランジスタTbに流れる電流が2のべき
乗に対応した比率(Tb0:Tb1:Tb2:Tb3:Tb4:Tb5:Tb6:Tb7=1:2:4:8
:16:32:64:128)となるように選定されている。
【0030】
以上の構成において、8個のトランジスタTa0ないしTa7のうち階調データGに応じた
トランジスタTaが選択的にオン状態とされる。こうしてオン状態となったトランジスタ
Taに対応した1以上のトランジスタTbに電流が流れ、これらの電流の加算に相当する電
流信号がデータ信号としてデータ出力端子351からデータ線14に出力される。各トラ
ンジスタTbの電流は基準電位線37の電位Vrefに応じて決定されるから、データ信号生
成部35によって生成されるデータ信号は電位Vrefに応じた電流値となる。
【0031】
第1出力部331および第2出力部332の各々はpチャネル型のトランジスタ44を
含む。第1出力部331のトランジスタ44はソースが電源線19に接続されるとともに
ドレインが第1端子群T1の電流出力端子Iout[1]に接続される。同様に、第2出力部3
32のトランジスタ44はソースが電源線19に接続されるとともにドレインが第2端子
群T2の電流出力端子Iout[2]に接続される。各トランジスタ44のゲートは基準電位線
37に対して共通に接続される。したがって、電位Vrefに応じた電流信号が第1出力部
331を介して電流出力端子Iout[1]から出力される。同様に、電位Vrefに応じた電流
信号が第2出力部332を介して電流出力端子Iout[2]から出力される。
【0032】
以上の構成において、第1端子群T1の電流入力端子Iin[1]に対する電流信号または電
圧入力端子Vin[1]に対する電圧信号に応じた基準電流Iref1が第1電流生成部311に
よって生成され、この基準電流Iref1に応じた電位Vrefが基準電位線37に供給される
。この電位Vrefは各データ信号生成部35においてデータ信号の基準として利用される
。また、電位Vrefが第2電流生成部312の電圧生成トランジスタ43のゲートに供給
されることによってその直下の第2トランジスタ42には電位Vrefに応じた基準電流Ir
ef2が流れる一方、この電位Vrefに応じた電流信号が第2出力部332のトランジスタ4
4を介して第2端子群T2の電流出力端子Iout[2]から出力される。以上のように、本実
施形態の半導体チップCにおいては、第1に、第1端子群T1の入力端子(Iin[1]または
Vin[1])への入力信号に応じた基準電流Iref1が生成され、第2に、この基準電流Iref
1に応じたデータ信号が生成および出力され、第3に、基準電流Iref1に応じた(さらに
は基準電流Iref1から生成された基準電流Iref2に応じた)電流信号が第2端子群T2の
電流出力端子Iout[2]から外部に出力される。第2端子群T2の電流入力端子Iin[2]に対
する電流信号の入力または電圧入力端子Vin[2]に対する電圧信号の入力が実行された場
合も同様である。すなわち、この場合には、第1に、第2端子群T2への入力信号に応じ
た基準電流Iref2が生成され、第2に、この基準電流Iref2に応じたデータ信号が生成お
よび出力され、第3に、基準電流Iref2(および基準電流Iref1)に応じた電流信号が第
1端子群T1の電流出力端子Iout[1]から外部に出力される。
【0033】
図1に示した基準設定回路26は、基準電位線37の電位Vrefを指定するための信号
を少なくともひとつの半導体チップC(以下では特に「マスターチップ」という)に供給
する手段である。本実施形態の基準設定回路26としては、電位Vrefの基準となる電圧
信号をマスターチップに供給するタイプ(以下「電圧出力型」という)および電位Vref
の基準となる電流信号をマスターチップに供給するタイプ(以下「電流出力型」という)
の何れかが設計時に選定されたうえで採用される。なお、以下では、データ線駆動回路2
4を構成するN個の半導体チップC1ないしCNのうちマスターチップ以外の半導体チップ
Cを「スレーブチップ」という。
【0034】
<B:各半導体チップCの配置および接続の態様>
図1に示したデータ線駆動回路24は、以上に説明した複数の半導体チップCを相互に
接続した構成となっている。例えば、各半導体チップCを図6または図7に例示された各
態様のように配置および接続することによってデータ線駆動回路24が構成される。実際
のデータ線駆動回路24の構成は、電気光学装置Dの各部のレイアウトや寸法、電気光学
装置Dと外部とを接続するための端子(図示略)の位置、あるいは、基準設定回路26が
電圧出力型であるか電流出力型であるかといった様々な要因に応じて、以下に例示される
態様やその他の態様のなかから適宜に選択される。
【0035】
(1)第1の態様
図6に示される態様(1a)および(1b)の各々は、基準設定回路26が電圧出力型である場
合のデータ線駆動回路24の構成である。このうち態様(1a)においては、各半導体チップ
Cjの第2端子群T2の電流出力端子Iout[2]とそのX方向の正側に隣接する半導体チップ
Cj+1の第1端子群T1の電流入力端子Iin[1]とが第1配線L1を介して相互に接続される
。X方向の最も負側に位置する半導体チップC1は、その電圧入力端子Vin[1]に基準設定
回路26からの電圧信号Sv0が入力されることによってマスターチップとして作用する。
このマスターチップにおいては、電圧信号Sv0の電圧値に応じた基準電流Iref1および電
位Vrefが生成されたうえで、この電位Vrefを基準としたデータ信号が生成されるととも
に電位Vrefに応じた電流信号Si[2]が電流出力端子Iout[2]から次段のスレーブチップ
(半導体チップC2)の電流入力端子Iin[1]に供給される。
【0036】
一方、各スレーブチップにおいては、前段の半導体チップCから入力された電流信号S
i[2]に応じた基準電流Iref1および電位Vrefの生成と、この電位Vrefに応じたデータ信
号および電流信号Si[2]の出力とが実行される。すなわち、各半導体チップC(スレーブ
チップ)の基準電流Iref1を決定する電流信号Si[2]がX方向の負側から正側に向かって
各半導体チップCを順番に伝播していく。この構成によれば、特許文献1に開示された構
成と比較して、各半導体チップC間の配線(第1配線L1)が短縮されるから、各半導体
チップCを連結する配線でのノイズに起因した基準電流Iref1のバラツキを抑制すること
ができる。
【0037】
また、態様(1b)においては、基準設定回路26による電圧信号Sv0の供給によってX方
向の最も正側の半導体チップCNがマスターチップとして機能する。そして、基準電流Ir
ef2に応じて各半導体チップCjの電流出力端子Iout[1]から出力される電流信号Si[1]が
、第2配線L2を介して、そのX方向の負側に位置する半導体チップCj-1の電流入力端子
Iin[2]に入力される。つまり、態様(1b)においては、態様(1a)とは逆に、電位Vrefを決
定する電流信号Si[1]がX方向の正側から負側に向かって順次に伝播していく。
【0038】
以上に説明したように、図4の構成の半導体チップCを利用すれば、マスターチップと
なる半導体チップCや電流信号Si(Si[1]またはSi[2])の伝播の方向を、各々の配線
の態様に応じて任意に選択することができる。すなわち、半導体チップC1をマスターチ
ップとして電流信号Si[2]をX方向の正側に伝送する構成(態様(1a))と、半導体チッ
プCNをマスターチップとして電流信号Si[1]をX方向の負側に伝送する構成(態様(1b)
)とで全く同じ構成の半導体チップCを共用することができる。したがって、データ線駆
動回路24の設計の変更に要するコストを低減しながらデータ線駆動回路24の設計の自
由度を向上させることができる。
【0039】
(2)第2の態様
図6の態様(2a)および態様(2b)の各々は、基準設定回路26が電流出力型である場合に
採用されるデータ線駆動回路24の構成である。このうち態様(2a)においては、基準設定
回路26による電流信号Si0の供給によってX方向の最も負側の半導体チップC1がマス
ターチップとなる。そして、態様(1a)と同様に、各半導体チップCjの電流出力端子Iout
[2]からそのX方向の正側の半導体チップCj+1の電流入力端子Iin[1]に電流信号Si[2]
が順次に供給される。一方、態様(2b)においては、X方向の最も正側に位置する半導体チ
ップCNがマスターチップとなり、相互に隣接する各半導体チップC間において電流信号
Si[1]がX方向の負側に伝播していく。
【0040】
図6に例示したように、図4の構成の半導体チップCを利用すれば、電圧出力型の基準
設定回路26が採用された構成と電流出力型の基準設定回路26が採用された構成とで全
く同じ構成の半導体チップCを共用することができる。この観点からしても、本実施形態
によれば設計の変更のコストを要することなくデータ線駆動回路24の設計の自由度を向
上させることが可能である。
【0041】
(3)第3の態様
図7の態様(3a)および態様(3b)の各々は、基準設定回路26が電圧出力型である場合に
採用されるデータ線駆動回路24の構成である。このうち態様(3a)においては、X方向の
最も負側に位置する半導体チップC1が電圧信号Sv0の供給によってマスターチップとな
る。また、各半導体チップCj(ここではC1ないしCN-1)とそのX方向の正側に隣接す
る半導体チップCj+1とに着目すると、半導体チップCjの電流出力端子Iout[2]と半導体
チップCj+1の電流入力端子Iin[1]とが第1配線L1を介して接続され、半導体チップCj
の電流入力端子Iin[2]と半導体チップCj+1の電流出力端子Iout[1]とが第2配線L2を
介して接続される。
【0042】
したがって、各半導体チップCjにおいては、その前段の半導体チップCj-1から供給さ
れる電流信号Si[2](半導体チップC1については基準設定回路26から供給される電圧
信号Sv0)に応じた基準電流Iref1が生成されるとともに、その後段の半導体チップCj+
1から供給される電流信号Si[1]に応じた基準電流Iref2が生成される。つまり、本態様
においては、半導体チップCjの基準電流Iref1に応じた電流信号Si[2]がその後段の半
導体チップCj+1の基準電流Iref1の基礎となる一方、この半導体チップCj+1から出力さ
れた電流信号Si[1]が、半導体チップCjでの基準電流Iref2の生成のためにフィードバ
ックされるということができる。ここで、各半導体チップCの特性に個体差がある場合に
は、ひとつの半導体チップCjに供給される電流信号Si[1]と電流信号Si[2]との電流値
の相違に起因して基準電流Iref1と基準電流Iref2とがバラつく場合がある。このような
場合であっても、基準電位線37の電位Vrefは基準電流Iref1と基準電流Iref2とに応
じたレベルに収束的に均衡していくから、各半導体チップCにおける電位Vrefのバラツ
キを抑制することができる。すなわち、基準電流がひとつの方向のみに伝播される特許文
献2の構成においてはその伝搬のたびに累積的に基準電流のズレが増大していくのに対し
、本実施形態においては、各駆動回路241に対してその配列に沿った双方向から電位V
refが調整されるから、各半導体チップCにおける電位Vrefを均等化し、これによって素
子アレイ部10における階調のムラを抑制することが可能となる。
【0043】
一方、図7に態様(3b)として例示されるように、X方向の最も負側の半導体チップC1
における電圧入力端子Vin[1]と最も正側の半導体チップCNにおける電圧入力端子Vin[2
]とに対して基準設定回路26から共通の電圧信号Sv0が供給される構成(すなわち半導
体チップC1およびCNの双方がマスターチップとして機能する構成)も採用される。この
態様によれば、態様(3a)と比較して、各半導体チップCにおける基準電位線37の電位V
refを迅速かつ確実に均等なレベルに安定化させることができる。
【0044】
なお、態様(3a)においてはマスターチップに電圧信号Sv0が入力される構成を例示した
が、図7に態様(4a)として例示されるように、各半導体チップCが態様(3a)と同様に配列
および接続された構成のもとで、マスターチップに電流信号Si0を入力する電流出力型の
基準設定回路26を採用してもよい。また、図7に態様(4b)として例示されるように、両
端に位置する各半導体チップC(C1およびCN)に対して同値の電流信号Si0がそれぞれ
供給される構成としてもよい。このように、相互に隣接する半導体チップC同士で双方向
にわたって電流信号(Si[1]およびSi[2])が授受される構成のもとでも、基準設定回路
26が電流出力型および電圧出力型の何れであるかに拘わらず同じ構成の半導体チップC
を汎用することができる。
【0045】
<C:変形例>
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば
以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0046】
(1)変形例1
以上の実施形態においては、各端子群T(第1端子群T1,第2端子群T2)が電圧入力
端子Vin(Vin[1],Vin[2])と電流入力端子Iin(Iin[1],Iin[2])と電流出力端子
Iout(Iout[1],Iout[2])とを含む構成を例示したが、各端子群Tを構成する端子の
態様はこの例示に限定されない。例えば、図8に示されるように、各端子群Tが電流入力
端子Iinおよび電流出力端子Ioutからなる構成(すなわち図4の構成から電圧入力端子
Vinが省略された構成)としてもよいし、図9に示されるように、各端子群Tが電圧入力
端子Vinおよび電流出力端子Ioutからなる構成(すなわち図4の構成から電流入力端子
Iinが省略された構成)としてもよい。すなわち、本発明においては、複数の端子群Tの
各々が少なくとも入力端子と出力端子とを備えていれば足り、ひとつの端子群Tを構成す
る入力端子や出力端子の個数、あるいは各々に入出力される信号が電圧信号および電流信
号の何れであるかは任意に変更される。
【0047】
(2)変形例2
図10に示されるように、第1電流生成部311の第1トランジスタ41および第2ト
ランジスタ42の各々のゲートと、第2電流生成部312の第1トランジスタ41および
第2トランジスタ42の各々のゲートとが配線Lを介して電気的に接続された構成として
もよい。この構成によれば、第1電流生成部311で生成される基準電流Iref1と第2電
流生成部312で生成される基準電流Iref2とを迅速かつ確実に一致させることができる

【0048】
(3)変形例3
図6および図7においては、X方向の端部に位置する半導体チップCがマスターチップ
とされた構成を例示したが、マスターチップの位置は任意に変更される。例えば、図11
に示されるように、中央に位置する半導体チップCが電圧信号Sv0または電流信号Si0の
供給によってマスターチップとされる構成としてもよい。図11に示されるように、本発
明においては、データ線駆動回路24を構成する総ての半導体チップC(駆動回路241
)が共通の構成である必要は必ずしもなく、また、ひとつの半導体チップCに形成される
端子群Tの総数も任意に変更される。
【0049】
(4)変形例4
電気光学素子17を所期の階調に駆動するための各部の構成は任意である。例えば以下
に例示する第1および第2の態様を採用することができる。
【0050】
(4−1)第1の態様
図12は、プリンタの露光ヘッド(ラインヘッド)に本発明を適用した場合の形態を示
すブロック図である。同図に示されるように、本態様においては複数の電気光学素子17
がX方向(すなわち用紙などの記録材の主走査方向)に配列される。したがって、本態様
においては図1に図示された走査線12や走査線駆動回路22は設けられない。また、図
12に示されるように、各電気光学素子17の陽極はこれに対応するデータ線14に接続
され、各電気光学素子17の陰極は接地線に共通に接続される。以上の構成において、階
調データGに応じたデータ信号がデータ線駆動回路24から各データ線14に対して順次
に出力されることによって各電気光学素子17は階調データGに応じた階調に制御される
。このように、走査線12やその各々を駆動する走査線駆動回路22は本発明において必
ずしも必要な要素ではない。
【0051】
(4−2)第2の態様
各電気光学素子17の階調を制御するための画素回路が電気光学素子17ごとに形成さ
れたアクティブマトリクス方式の電気光学装置Dにも本発明は適用される。図13は、ひ
とつの画素回路Pの具体的な態様を例示する回路図である。同図の画素回路Pは、図1に
示された走査線12とデータ線14との交差に対応するようにマトリクス状に配列される

【0052】
図13に示されるpチャネル型の駆動トランジスタTdrは、電気光学素子17に供給さ
れる電流Ielを制御するための手段である。電気光学素子17は、その陽極が駆動トラン
ジスタTdrのドレインに接続されるとともに陰極が接地線に接続される。駆動トランジス
タTdrのゲートとドレインとの間にはpチャネル型のトランジスタ51が介挿され、駆動
トランジスタTdrのゲートとソースとの間には容量素子52が介挿される。また、駆動ト
ランジスタTdrのソースはpチャネル型の選択トランジスタ53のドレインに接続される
。この選択トランジスタ53は、駆動トランジスタTdrのソースとデータ線14との導通
および非導通を切り替える手段であり、ソースがデータ線14に接続される。また、駆動
トランジスタTdrのソースと電源線との間にはnチャネル型のトランジスタ54が介挿さ
れる。トランジスタ51・選択トランジスタ53およびトランジスタ54の各々のゲート
は走査線12に対して共通に接続される。
【0053】
この構成のもと、水平走査期間にて走査線12がローレベルに設定されると、トランジ
スタ51がオン状態となって駆動トランジスタTdrがダイオード接続されるとともに、選
択トランジスタ53がオン状態となって駆動トランジスタTdrのソースがデータ線14に
接続される。したがって、駆動トランジスタTdrにはデータ信号が流れ、このときの駆動
トランジスタTdrのゲート−ソース間の電圧(すなわちデータ信号に応じた電圧)が容量
素子52に保持される。
【0054】
一方、水平走査期間が経過して走査線12がハイレベルに設定されると、トランジスタ
51および選択トランジスタ53がオフ状態に遷移するが、直前の水平走査期間で容量素
子52に保持された電圧は駆動トランジスタTdrのゲート−ソース間に印加され続ける。
一方、ハイレベルとなった走査線12によってトランジスタ54はオン状態に遷移する。
したがって、容量素子52の電圧に応じた電流(すなわち直前の水平走査期間におけるデ
ータ信号に応じた電流)Ielが電源線からトランジスタ54および駆動トランジスタTdr
を経由して電気光学素子17に供給される。電気光学素子17はこの電流Ielに対応した
輝度に発光する。
【0055】
(5)変形例5
以上の実施形態においてはアナログの電流信号であるデータ信号をデジタルの階調デー
タGから生成するD/A変換器をデータ信号生成部35として例示したが、データ信号の
態様やこれを生成するための回路の構成は図5の例示に限定されない。例えば、図14に
示されるように、パルス幅変調方式で電気光学素子17を駆動するデータ信号生成部35
を採用してもよい。同図に示されるトランジスタTcは、ゲートが基準電位線37に接続
されるとともにソースが電源線19に接続されたpチャネル型のトランジスタである。一
方、トランジスタTdは、トランジスタTcのドレインとデータ出力端子351(さらには
データ線14)との導通および非導通を信号SPWMに応じて制御するpチャネル型のトラ
ンジスタである。信号SPWMは、例えば、階調データGによって高階調が指定されるほど
、ローレベル(すなわちトランジスタTdをオン状態とするレベル)の時間密度が高くな
るように階調データGに応じて生成される。この構成においては、トランジスタTdがオ
ン状態となる期間にて選択的に基準電位線37の電位Vrefに応じた電流がトランジスタ
TcおよびトランジスタTdを経由してデータ線14に出力される。すなわち、階調データ
Gに応じた時間密度のパルス信号がデータ信号として出力される。この構成によっても、
電気光学素子17は階調データGに応じた階調(例えばデータ信号の時間密度に応じた輝
度)に制御される。なお、図14のデータ信号生成部35は、図2や図12に示したよう
にデータ線14のデータ信号が電気光学素子17に直接的に供給される構成に対して特に
好適である。
【0056】
(6)変形例6
以上の説明においてはOLED素子を利用した電気光学装置Dを例示したが、これ以外
の電気光学素子を利用した電気光学装置にも本発明は適用される。例えば、無機EL素子
を利用した表示装置、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)、表
面導電型電子放出ディスプレイ(SED:Surface-conduction Electron-emitter Disp
lay)、弾道電子放出ディスプレイ(BSD:Ballistic electron Surface emitting
Display)、発光ダイオードを利用した表示装置など各種の電気光学装置に本発明は適用
される。
【0057】
<D:応用例>
次に、本発明に係る電気光学装置を利用した電子機器について説明する。図15は、以
上に説明した何れかの形態に係る電気光学装置Dを表示装置として採用したモバイル型の
パーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は
、表示装置としての電気光学装置Dと本体部2010とを備える。本体部2010には、
電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。この電気光学装置D
は電気光学素子17にOLED素子を使用しているので、視野角が広く見易い画面を表示
できる。
【0058】
図16に、以上の実施形態に係る電気光学装置Dを適用した携帯電話機の構成を示す。
携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、な
らびに表示装置としての電気光学装置Dを備える。スクロールボタン3002を操作する
ことによって、電気光学装置Dに表示される画面がスクロールされる。
【0059】
図17に、以上の実施形態に係る電気光学装置Dを適用した携帯情報端末(PDA:Pe
rsonal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタ
ン4001および電源スイッチ4002、ならびに表示装置としての電気光学装置Dを備
える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報
が電気光学装置Dに表示される。
【0060】
なお、本発明に係る電気光学装置が適用される電子機器としては、図15から図17に
示したもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション
装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーショ
ン、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパ
ネルを備えた機器等などが挙げられる。また、本発明に係る電気光学装置の用途は画像の
表示に限定されない。例えば、光書込み型のプリンタや電子複写機といった画像形成装置
においては、用紙などの記録材に形成されるべき画像に応じて感光体を露光する書込みヘ
ッドが使用されるが、この種の書込みヘッドとしても本発明の電気光学装置(特に図12
に図示された態様)は利用される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】第1実施形態に係る電気光学装置の構成を示すブロック図である。
【図2】各電気光学素子の配列の態様を示す回路図である。
【図3】電気光学装置の動作の概要を示すタイミングチャートである。
【図4】ひとつの半導体チップに搭載された駆動回路の構成を示す回路図である。
【図5】データ信号生成部の構成を示す回路図である。
【図6】各半導体チップの配列の態様を例示する回路図である。
【図7】各半導体チップの配列の態様を例示する回路図である。
【図8】変形例に係る半導体チップの構成を示す回路図である。
【図9】変形例に係る半導体チップの構成を示す回路図である。
【図10】変形例に係る電気光学装置の構成を示すブロック図である。
【図11】各半導体チップの配列の別例を示すブロック図である。
【図12】露光装置として利用される電気光学装置の構成を示すブロック図である。
【図13】変形例に係る電気光学装置の画素回路の構成を示す回路図である。
【図14】データ信号生成部の別例を示す回路図である。
【図15】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図16】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図17】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
D……電気光学装置、10……素子アレイ部、12……走査線、14……データ線、17
……電気光学素子、22……走査線駆動回路、24……データ線駆動回路、26……基準
設定回路、C……半導体チップ、T1……第1端子群、T2……第2端子群、Vin[1],Vi
n[2]……電圧入力端子、Iin[1],Iin[2]……電流入力端子、Iout[1],Iout[2]……電
流出力端子、311……第1電流生成部,312……第2電流生成部、331……第1出
力部、331,332……第2出力部、43……電圧生成トランジスタ、35……データ
信号生成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ信号に応じた光学状態となる電気光学素子を備えた電気光学装置の駆動回路であ
って、
入力端子と出力端子とを各々が含む第1端子群および第2端子群と、
前記第1端子群の入力端子への入力信号に応じた第1基準電流を生成する第1電流生成
部と、
前記第2端子群の入力端子への入力信号に応じた第2基準電流を生成する第2電流生成
部と、
前記第1基準電流および前記第2基準電流に応じたデータ信号を生成するデータ信号生
成部と、
少なくとも前記第2基準電流に応じた信号を前記第1端子群の出力端子に出力する第1
出力部と、
少なくとも前記第1基準電流に応じた信号を前記第2端子群の出力端子に出力する第2
出力部と
を具備する駆動回路。
【請求項2】
半導体チップに集積された駆動回路であり、
前記第1端子群の各端子は前記データ信号生成部に対して一方の側に配置され、前記第
2端子群の各端子は前記データ信号生成部に対して他方の側に配置される
請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
前記第1電流生成部は、前記第1端子群の入力端子への入力信号に応じた第1電流を生
成するトランジスタと当該第1電流のミラー電流を前記第1基準電流として生成するトラ
ンジスタとを有するカレントミラー回路を含み、
前記第2電流生成部は、前記第2端子群の入力端子への入力信号に応じた第2電流を生
成するトランジスタと当該第2電流のミラー電流を前記第2基準電流として生成するトラ
ンジスタとを有するカレントミラー回路を含む
請求項1または請求項2に記載の駆動回路。
【請求項4】
前記第1電流生成部は、前記第1基準電流の経路上に配置されてゲートが基準電位線に
接続された第1電圧生成トランジスタを含み、
前記第2電流生成部は、前記第2基準電流の経路上に配置されてゲートが前記基準電位
線に接続された第2電圧生成トランジスタを含み、
前記データ信号生成部は、前記基準電位線の電位を基準としてデータ信号を生成する
請求項3に記載の駆動回路。
【請求項5】
前記第1電流生成部のカレントミラー回路を構成する各トランジスタのゲートと前記第
2電流生成部のカレントミラー回路を構成する各トランジスタのゲートとは相互に接続さ
れる
請求項3または請求項4に記載の駆動回路。
【請求項6】
前記第1端子群および前記第2端子群の各々は、電流信号が入力される端子および電圧
信号が入力される端子の少なくとも一方を前記入力端子として含み、前記出力端子は電流
信号を出力する端子である
請求項1から請求項5の何れかに記載の駆動回路。
【請求項7】
各々がデータ線に供給されるデータ信号に応じた光学状態となる複数の電気光学素子と

請求項1から請求項6の何れかに記載された複数の駆動回路を配列してなるデータ線駆
動回路と、
前記各駆動回路における第1端子群の出力端子と当該駆動回路に隣接する他の駆動回路
における第2端子群の入力端子とを相互に接続する第1配線と
を具備する電気光学装置。
【請求項8】
前記各駆動回路における第1端子群の入力端子と当該駆動回路に隣接する他の駆動回路
における第2端子群の出力端子とを相互に接続する第2配線
を具備する請求項7に記載の電気光学装置。
【請求項9】
前記複数の駆動回路は各々が半導体チップに集積されて所定の方向に配列され、
前記各半導体チップにおいては、前記所定の方向に沿った一方の側に前記第1端子群の
各端子が配置され、前記所定の方向に沿った他方の側に前記第2端子群の各端子が配置さ
れる
請求項7または請求項8に記載の電気光学装置。
【請求項10】
各基準電流の基準となる電圧信号を生成する基準設定手段を具備し、
前記複数の駆動回路のうち少なくともひとつの駆動回路の入力端子には、前記基準設定
手段が生成した電圧信号が供給される
請求項7に記載の電気光学装置。
【請求項11】
各基準電流の基準となる電流信号を生成する基準設定手段を具備し、
前記複数の駆動回路のうち少なくともひとつの駆動回路の入力端子には、前記基準設定
手段が生成した電流信号が供給される
請求項7に記載の電気光学装置。
【請求項12】
請求項7から請求項11の何れかに記載の電気光学装置を具備する電子機器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−11176(P2007−11176A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−194640(P2005−194640)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】