説明

電気光学装置

【課題】ガラス基板の一方面側に接着剤層によってプラスチックカバーを接着した構造を採用した場合でも、温度サイクル試験においてプラスチックカバーがガラス基板から剥離することを抑制することのできる電気光学装置を提供すること。
【解決手段】入力機能付きの電気光学装置100において、入力パネル2に用いたガラス基板20の第1面20aの側には、透光性のゲル状シートからなる接着剤層40によってプラスチックカバー90が接着されている。接着剤層40は、ガラス基板20側に接する第1接着剤層41と、プラスチックカバー90に接する第2接着剤層42とを備えており、第2接着剤層42は、第1接着剤層41より、弾性率が低く、柔らかい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の一方面側に接着剤層によってプラスチックカバーが接着された電気光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、カーナビゲーション、パーソナルコンピューター、券売機、銀行の端末等の電子機器では、近年、液晶パネル等の表面にタッチパネル(入力装置)が配置された電気光学装置が用いられている。かかる電気光学装置では、入力位置を検出する電極が透光性基板上に形成されているとともに、透光性基板に対して入力操作側には透光性のカバーが接着されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−83491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成において、図9(a)に示すように、透光性基板としてガラス基板20を用い、カバーとしてプラスチックカバー90を用いると、プラスチックカバー90はガラス基板20と比較して熱膨張係数が大きいため、温度サイクル試験においてプラスチックカバー90がガラス基板20から剥離するという問題点がある。すなわち、プラスチックカバー90は、低温雰囲気では、図9(b)に示すように、外周側がガラス基板20から浮き上がるように変形しようとする一方、高温雰囲気では、図9(c)に示すように、中央側がガラス基板20から浮き上がるように変形しようとする。このため、温度サイクル試験において、プラスチックカバー90と接着剤層40との界面、あるいはガラス基板と接着剤との界面で剥離が起こりやすい。かかる剥離は、プラスチックカバー90が長方形である場合、その長手方向の端部で特に発生しやすい傾向にある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、ガラス基板の一方面側に接着剤層によってプラスチックカバーを接着した構造を採用した場合でも、温度サイクル試験においてプラスチックカバーがガラス基板から剥離することを抑制することのできる電気光学装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、ガラス基板と、該ガラス基板の一方面側に接着剤層によって接着されたプラスチックカバーと、を有する電気光学装置において、前記接着剤層は、前記ガラス基板側に接する第1接着剤層と、前記プラスチックカバーに接する第2接着剤層と、を備え、前記第2接着剤層は、前記第1接着層より弾性率が低いことを特徴とする。
【0007】
本発明において、「ガラス基板側」とは、ガラス基板自身、およびガラス基板に形成された保護層等を含む意味である。また、「接着」「接着剤層」とは、接合後も粘性が保持される「粘着」「粘着剤」も含む意味である。
【0008】
本発明では、ガラス基板とプラスチックカバーとを接着する接着剤層は、ガラス基板側に接する第1接着剤層と、プラスチックカバーに接する第2接着剤層とを備え、第2接着剤層は、前記第1接着層より弾性率が低く、柔らかい。このため、プラスチックカバーがガラス基板と比較して熱膨張係数が大きいことが原因で、低温雰囲気で外周側がガラス基板から浮き上がるようにプラスチックカバーが変形しようとした場合、および高温雰囲気で中央側がガラス基板から浮き上がるようにプラスチックカバーが変形しようとした場合でも、かかる変形に第2接着剤層が追従する。このため、温度サイクル試験において、プラスチックカバーがガラス基板から剥離するという不具合の発生を抑制することができる。ここで、第1接着剤層および第2接着剤層の双方の弾性率を低くすると、ガラス基板とプラスチックカバーとの間で位置ずれが発生しやすくなるが、本発明では、接着剤層の一部のみ(第2接着剤層のみ)の弾性率を低くしたため、かかる位置ずれは発生しない。
【0009】
本発明において、前記ガラス基板に対して前記プラスチックカバーが位置する側とは反対側に画像生成用の電気光学パネルを備え、前記ガラス基板において、前記プラスチックカバーが位置する側の面、および前記プラスチックカバーが位置する側とは反体側の面のうちの少なくとも一方には、入力位置を静電容量方式あるいは抵抗膜方式で検出するための入力位置検出用電極が設けられている構成を採用することができる。
【0010】
本発明は、前記プラスチックカバーが前記ガラス基板より大きい場合に適用すると効果的である。すなわち、プラスチックカバーがガラス基板より大きい場合には、温度変化に伴ってプラスチックカバーが大きく変形しようとするため、プラスチックカバーがガラス基板から剥離しようとする力が大きいが、本発明によれば、かかる場合でも、プラスチックカバーがガラス基板から剥離するという不具合の発生を抑制することができる。
【0011】
本発明において、前記第1接着剤層および前記第2接着剤層はいずれも、ゲル状の粘着剤層であることが好ましい。ゲル状の粘着剤であれば、剥離シート上に形成された状態で市販されているので、液状の接着剤を用いる場合と比較して、ガラス基板とプラスチックカバーとの接着を効率よく行なうことができる。また、ゲル状の粘着剤層であれば、予め、剥離シート上で第1接着剤層および第2接着剤層が積層されたものをガラス基板あるいはプラスチックカバーに取り付けた後、ガラス基板とプラスチックカバーとを貼り合せる方法を採用することができる。また、別々の剥離シート上に形成された第1接着剤層および第2接着剤層を各々、ガラス基板およびプラスチックカバーに取り付けた後、ガラス基板とプラスチックカバーとを貼り合せる方法を採用することができる。これらのいずれの方法でも液状の接着剤を用いる場合と比較して、ガラス基板とプラスチックカバーとの接着を効率よく行なうことができる。さらに、ゲル状の粘着剤は、液状の接着剤を硬化させたものと比較して接着力が比較的弱いが、本発明によれば、かかる場合でも、プラスチックカバーと第2接着剤層との界面で剥離するという不具合の発生を抑制することができる。
【0012】
本発明において、前記第1接着剤層と前記第2接着剤層は、互いの形成範囲が等しいことが好ましい。このように構成すると、予め、剥離シート上で第1接着剤層および第2接着剤層が積層されたものをガラス基板あるいはプラスチックカバーに取り付けた後、ガラス基板とプラスチックカバーとを貼り合せる方法を採用することができる。
【0013】
本発明において、前記第2接着剤層は、前記第1接着剤層より形成範囲が広い構成を採用してもよい。このように構成すると、剥離しやすい第2接着剤層とプラスチックカバーとを強固に接着することができるので、プラスチックカバーと第2接着剤層との界面で剥離するという不具合の発生を抑制することができる。
【0014】
本発明において、前記第2接着剤層は、前記第1接着剤層より前記プラスチックカバーに対する接着力が大きいことが好ましい。このように構成すると、温度サイクル試験を行っても、プラスチックカバーと第2接着剤層との界面で剥離が発生しにくい。
【0015】
本発明において、前記第1接着剤層は、前記第2接着剤層より前記ガラス基板に対する接着力が大きいことが好ましい。このように構成すると、第1接着剤層の弾性率が高い場合でも、ガラス基板と第1接着剤層との界面で剥離するという不具合の発生を抑制することができる。
【0016】
本発明を適用した電気光学装置は、携帯電話、カーナビゲーション、パーソナルコンピューター、券売機、銀行の端末等の電子機器に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1に係る入力機能付きの電気光学装置の全体構成を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る入力機能付きの電気光学装置を構成する各部材の位置関係等を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る入力機能付きの電気光学装置の入力パネルに形成した入力位置検出用電極の平面的なレイアウトを模式的に示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る入力機能付きの電気光学装置の入力パネルに形成した導電膜に示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る入力機能付きの電気光学装置の入力パネル(ガラス基板)とプラスチックカバーとの接着構造を模式的に示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る入力機能付きの電気光学装置の断面構成を模式的に示す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る入力機能付きの電気光学装置の入力パネル(ガラス基板)とプラスチックカバーとの接着構造を模式的に示す説明図である。
【図8】本発明に係る入力機能付きの電気光学装置を用いた電子機器の説明図である。
【図9】従来の電気光学装置のガラス基板)とプラスチックカバーとの接着構造を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明では、図9に示す構成との対応関係が分りやすいように、対応する部分には同一の符号を付して説明する。また、以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0019】
[実施の形態1]
(全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る入力機能付きの電気光学装置の全体構成を模式的に示す説明図であり、図1(a)、(b)は、電気光学装置の斜視図、および電気光学装置の一部を切り欠いて示す斜視図である。図2は、本発明の実施の形態1に係る入力機能付きの電気光学装置を構成する各部材の位置関係等を模式的に示す説明図であり、図2(a)、(b)は各々、入力機能付きの電気光学装置の平面構成を模式的に示す説明図、および断面構成を模式的に示す説明図である。なお、図2(a)において、電気光学装置に用いたプラスチックカバーについては太い実線で示し、ガラス基板については太くて長い点線で示し、入力領域については一点鎖線で示し、フレキシブル配線基板については二点鎖線で示し、プラスチックカバーの遮光部については右上がりの実線を付した領域によって示してある。
【0020】
図1および図2において、本形態の入力機能付きの電気光学装置100は、液晶パネルからなる電気光学パネル5と、この電気光学パネル5において表示光を出射する側に重ねて配置された入力パネル2(タッチパネル)と、入力パネル2において入力操作が行われる側に重ねて配置されたプラスチックカバー90とを有している。
【0021】
本形態において、入力パネル2および電気光学パネル5はいずれも長方形の平面形状を備えており、入力パネル2を平面視した際の中央領域が入力領域2aである。また、電気光学パネル5において、入力パネル2の入力領域2aに対して平面視で重なる領域が画像表示領域である。
【0022】
プラスチックカバー90は、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂/Polymethyl methacrylate)やPC(ポリカーボネート/Polycarbonate)等の硬質の透光性プラスックの薄い板であり、入力パネル2および電気光学パネル5と同様、長方形の平面形状を備えている。但し、プラスチックカバー90は、入力パネル2および電気光学パネル5より大きい。プラスチックカバー90において、入力パネル2および電気光学パネル5が位置する側の面91には、入力領域2aの周りを囲むように矩形枠状の遮光層90aが形成されている。本形態において、遮光層90aはプラスチックカバー90に対して印刷等により形成された黒色領域であり、電気光学パネル5の光源や導光板の端部から漏れた光を遮断し、表示光の出射側(入力操作側)に漏れるのを防止する。
【0023】
電気光学パネル5は、透過型や半透過反射型のアクティブマトリクス型の液晶パネルであり、電気光学パネル5に対して入力パネル2が配置されている側とは反対側(表示光の出射側とは反対側)にはバックライト装置(図示せず)が配置されている。バックライト装置は、例えば、電気光学パネル5に対して配置された透光性の導光板と、導光板の側端部に向けて白色光等を出射する発光ダイオード等の光源とを備えており、光源から出射された光は、導光板の側端部から入射した後、導光板内を伝搬しながら電気光学パネル5に向けて出射される。導光板と電気光学パネル5との間には、光散乱シートやプリズムシート等のシート状光学部材が配置されることもある。
【0024】
電気光学パネル5には、表示光の出射側に第1偏光板81が重ねて配置され、その反対側に第2偏光板82が重ねて配置されている。これらの第1偏光板81および第2偏光板82は、アクリル樹脂系等といった透光性の接着剤(図示せず)によって電気光学パネル5に接着されている。また、入力パネル2は、アクリル樹脂系等といった透光性の接着剤(図示せず)によって第1偏光板81に接着されている。
【0025】
電気光学パネル5は、表示光の出射側に配置された透光性の素子基板50と、この素子基板50に対して対向配置された透光性の対向基板60とを備えている。対向基板60と素子基板50とは、矩形枠状のシール材71により貼り合わされており、対向基板60と素子基板50との間においてシール材71で囲まれた領域内に液晶層55が保持されている。素子基板50において、対向基板60と対向する面には複数の画素電極58がITO(Indium Tin Oxide)膜等の透光性導電膜により形成され、対向基板60において、素子基板50と対向する面には共通電極68がITO膜等の透光性導電膜により形成されている。なお、電気光学パネル5がIPS(In Plane Switching)方式や、FFS(Fringe Field Switching)方式である場合、共通電極68は素子基板50の側に設けられる。また、素子基板50が表示光の出射側に配置されることもある。素子基板50において、対向基板60の縁から張り出した張出領域59には駆動用IC75がCOG実装されているとともに、張出領域59にはフレキシブル基板73が接続されている。なお、素子基板50には、素子基板50上のスイッチング素子と同時に駆動回路を形成することもある。
【0026】
(入力パネル2の詳細構成)
図3は、本発明の実施の形態1に係る入力機能付きの電気光学装置100の入力パネル2(ガラス基板20)に形成した入力位置検出用電極の平面的なレイアウトを模式的に示す説明図である。図4は、本発明の実施の形態1に係る入力機能付きの電気光学装置の入力パネルに形成した導電膜に示す説明図であり、図4(a)、(b)、(c)、(d)は各々、入力位置検出用電極21を構成する電極パターンの平面的な構成を示す説明図、ガラス基板20をA−A′断面図、B−B′断面図、およびC−C′断面図である。なお、以下の説明では、入力パネル2に用いたガラス基板20の基板面で互いに交差する方向(本形態では、直交する方向)を各々X方向およびY方向として説明する。
【0027】
図1および図2に示すように、入力パネル2は、静電容量方式のタッチパネルを構成しており、1枚のガラス基板20を有している。ガラス基板20の第1面20aおよび第2面20bのうち、入力操作側に位置する第1面20aには入力位置検出用電極21が形成されている。また、ガラス基板20の第1面20aにおいて、端部20e、20f、20g、20hのうち、端部20eには、入力位置検出用電極21に電気的接続するパッド27cが形成されており、かかるパッド27cには異方性導電材36を介してフレキシブル基板35が接続されている。
【0028】
図2、図3および図4(a)、(b)に示すように、本形態の入力パネル2において、ガラス基板20の第1面20aにおいて、入力領域2aの内側には複数の入力位置検出用電極21が形成されている。入力位置検出用電極21は、第1方向(矢印Yで示す方向)に延在する複数列の第1透光性電極パターン211と、第1方向に交差する第2方向(矢印Xで示す方向)に延在する複数列の第2透光性電極パターン212とを備えている。かかる第1透光性電極パターン211、および第2透光性電極パターン212は、ITO膜等の第1導電膜4aにより形成されている。
【0029】
本形態において、第1透光性電極パターン211と第2透光性電極パターン212とはガラス基板20の同一面上(第1面20a)に同一層により形成されている。このため、ガラス基板20の第1面20aには、第1透光性電極パターン211と第2透光性電極パターン212との交差部218が複数、存在する。そこで、本形態では、第1透光性電極パターン211はY方向で繋がって延在している一方、第2透光性電極パターン212は交差部218で途切れている。また、第1透光性電極パターン211および第2透光性電極パターン212の上層側には、シリコン酸化膜等からなる透光性の層間絶縁膜214が形成され、かかる層間絶縁膜214の上層には、交差部218で途切れている第2透光性電極パターン212同士を電気的に接続する透光性の中継電極215が形成されている。このため、第2透光性電極パターン212はX方向で電気的に接続されている。本形態において、中継電極215は、ITO膜等の第2導電膜4bにより形成されている。また、中継電極215の上層にはシリコン酸化膜等からなる保護膜216が形成されている。なお、層間絶縁膜214については交差部218のみに形成してもよい。
【0030】
第1透光性電極パターン211および第2透光性電極パターン212は各々、交差部218で挟まれた領域に菱形形状の大面積のパッド部211a、212a(大面積部分)を備えており、第1透光性電極パターン211において交差部218に位置する連結部分211cは、パッド部211aより幅の狭い細幅形状になっている。また、中継電極215も、パッド部211a、212aより幅の狭い細幅形状で短冊状に形成されている。
【0031】
ガラス基板20の第1面20aにおいて入力領域2aの外側領域には、第1透光性電極パターン211および第2透光性電極パターン212の各々から延在する配線27a、27bが形成されている。配線27a、27bの端部はパッド27cになっており、かかるパッド27cに対して、図1および図2に示すフレキシブル基板35の配線が電気的接続されている。
【0032】
本形態では、配線27a、27bを構成するにあたって、図4(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、まず、第1透光性電極パターン211および第2透光性電極パターン212を構成する第1導電膜4aを配線27a、27bの形成領域に沿って延在させてある。また、本形態では、中継電極215を構成する第2導電膜4bを配線27a、27bに積層させてある。このため、配線27a、27bは、第1導電膜4aと第2導電膜4bとの多層構造になっており、配線抵抗が低い。さらに、配線27a、27bの端部には、クロム等の金属層4cが形成されており、かかる金属層4cによってパッド27cが構成されている。
【0033】
入力パネル2では、フレキシブル基板35を介して出力された信号に基づいて、複数の入力位置検出用電極21(第1透光性電極パターン211および第2透光性電極パターン212)に結合する静電容量を監視する。かかる監視において、ガラス基板20への指の近接等がない状態では、複数の入力位置検出用電極21に結合する静電容量は同一である。これに対して、プラスチックカバー90に指が接近すると、接近個所に位置する入力位置検出用電極21(第1透光性電極パターン211および第2透光性電極パターン212)では、指とパッド部211a、212aとの間に生成された静電容量が加算された静電容量が検出される。従って、ガラス基板20に対する指の接近位置を検出することができる。
【0034】
(ガラス基板20とプラスチックカバー90との貼り合わせ構造)
図5は、本発明の実施の形態1に係る入力機能付きの電気光学装置100の入力パネル2(ガラス基板20)とプラスチックカバー90との接着構造を模式的に示す説明図であり、図5(a)、(b)、(c)は、常温の様子、低温雰囲気中での様子、および高温雰囲気中での様子を示す説明図である。
【0035】
図2(b)および図5(a)に示すように、本形態では、ガラス基板20の第1面20aの側には、厚さが100〜500μmの接着剤層40によってプラスチックカバー90が接着されている。ここで、プラスチックカバー90は、ガラス基板20より大きく、四方に張り出している。本形態において、接着剤層40は、ガラス基板20側に接する第1接着剤層41と、プラスチックカバー90に接する第2接着剤層42とを備えており、第1接着剤層41と第2接着剤層42とは密着している。かかる第1接着剤層41および第2接着剤層42はいずれも、アクリル樹脂系、シリコーン樹脂系、ウレタン樹脂系等のゲル状シート(シート状粘着剤)であり、透光性および弾性を備えている。本形態において、第1接着剤層41および第2接着剤層42には、例えば、弾性率が1×104N/m2以上、かつ、1×108N/m2以下のアクリル樹脂系のゲル状シートが用いられている。
【0036】
ここで、第1接着剤層41および第2接着剤層42はいずれも、アクリル樹脂系のゲル状シートであるが、第2接着剤層42は、第1接着剤層41より、弾性率が例えば3倍〜300倍程度低く、柔らかい。また、本形態において、第2接着剤層42については、第1接着剤層41よりプラスチックカバー90に対する接着力が大きくしてある。すなわち、第1接着剤層41および第2接着剤層42をアクリル樹脂系のゲル状組成物から構成する際、使用する材料や重合度を変えてある。例えば、アクリル樹脂系のゲル状組成物は、アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステル]を主モノマー成分とするアクリル系ポリマーを主成分又はベースポリマーとして用いられるが、(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル等が挙げられる。従って、これらの(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステルを単独あるいは2種以上を混合して使用する際の材料や重合度を、第1接着剤層41と第2接着剤層42の間で変えてある。
【0037】
このような構成を採用したため、ガラス基板20とプラスチックカバー90の熱膨張係数を比較すると、プラスチックカバー90は、ガラス基板20と比較して熱膨張係数が著しく大きいが、温度サイクル試験においてプラスチックカバー90がガラス基板20から剥離するという事態を回避することができる。すなわち、プラスチックカバー90は、低温雰囲気では、図5(b)に示すように、外周側がガラス基板20から浮き上がるように変形しようとするが、かかる変形に第2接着剤層42が追従する。また、高温雰囲気では、図5(c)に示すように、プラスチックカバー90は、中央側がガラス基板20から浮き上がるように変形しようとするが、かかる変形に第2接着剤層42が追従する。従って、プラスチックカバー90と接着剤層40との界面、あるいはガラス基板20と接着剤層40との界面で剥離が起こることを抑制することができる。
【0038】
ここで、第1接着剤層41および第2接着剤層42はいずれも、形成領域がガラス基板20の平面サイズと等しく、第1接着剤層41と第2接着剤層42とは完全に重なっている。しかも、第1接着剤層41および第2接着剤層42はいずれも、ゲル状シートである。従って、ガラス基板20とプラスチックカバー90とを接着剤層40(第1接着剤層41および第2接着剤層42)によって接着する際には、予め第1接着剤層41と第2接着剤層42とが剥離シートに積層されているシートを用いることができる。それ故、剥離シートから第1接着剤層41および第2接着剤層42をガラス基板20あるいはプラスチックカバー90に転写した後、ガラス基板20とプラスチックカバー90とを貼り合せることができる。かかる方法によれば、ガラス基板20とプラスチックカバー90とを効率よく貼り合せることができる。
【0039】
なお、別々の剥離シート上に形成された第1接着剤層41および第2接着剤層42を各々、ガラス基板20およびプラスチックカバー90に取り付けた後、ガラス基板20とプラスチックカバー90とを貼り合せてもよい。
【0040】
これらのいずれの方法でも液状の接着剤を用いる場合と比較して、ガラス基板20とプラスチックカバー90との接着を効率よく行なうことができる。さらに、ゲル状の粘着剤は、液状の接着剤を硬化させたものと比較して接着力が比較的弱いが、本形態によれば、かかる場合でも、プラスチックカバー90に接する第2接着剤層42は柔らかい。従って、プラスチックカバー90が変形してもプラスチックカバー90と第2接着剤層42との界面で剥離するという不具合の発生を抑制することができる。
【0041】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の入力機能付きの電気光学装置100では、ガラス基板20とプラスチックカバー90とを接着する接着剤層40は、ガラス基板20側に接する第1接着剤層41と、プラスチックカバー90に接する第2接着剤層42とを備え、第2接着剤層42は、第1接着剤層41より弾性率が低く、柔らかい。このため、プラスチックカバー90がガラス基板20と比較して熱膨張係数が大きいことが原因でプラスチックカバー90が変形しようとした場合でも、かかる変形に第2接着剤層42は無理なく追従する。このため、温度サイクル試験において、ガラス基板20と第1接着剤層41との界面、第1接着剤層41と第2接着剤層42との界面、および第2接着剤層42とプラスチックカバー90との界面のいずれにも過大な力が加わらないので、プラスチックカバー90がガラス基板20から剥離するという不具合の発生を抑制することができる。
【0042】
ここで、第1接着剤層41および第2接着剤層42の双方の弾性率を低くすると、ガラス基板20とプラスチックカバー90との間で位置ずれが発生しやすくなるが、本形態では、接着剤層40の一部のみ(第2接着剤層42のみ)の弾性率を低くしたため、かかる位置ずれは発生しない。
【0043】
また、本形態では、プラスチックカバー90がガラス基板20より大きいため、プラスチックカバー90が変形した際にプラスチックカバー90がガラス基板20から剥離しようとする力が大きいが、本形態によれば、かかる場合でも、プラスチックカバー90がガラス基板20から剥離するという不具合の発生を抑制することができる。
【0044】
[実施の形態2]
図6は、本発明の実施の形態2に係る入力機能付きの電気光学装置の断面構成を模式的に示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と略同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0045】
実施の形態1に係る入力機能付きの電気光学装置100では、ガラス基板20の第1面20aに入力位置検出用電極21が形成されていたが、図6に示すように、本形態では、ガラス基板20の第2面20bに入力位置検出用電極21が形成されている。
【0046】
但し、本形態でも、実施の形態1と同様、ガラス基板20の第1面20aには、接着剤層40によってプラスチックカバー90が接着されている。また、本形態でも、実施の形態1と同様、ガラス基板20の第1面20aとプラスチックカバー90とを接着する接着剤層40は、ガラス基板20側に接する第1接着剤層41と、プラスチックカバー90に接する第2接着剤層42とを備え、第2接着剤層42は、第1接着剤層41より弾性率が低く、柔らかい。このため、プラスチックカバー90がガラス基板20と比較して熱膨張係数が大きいことが原因で温度変化に伴ってプラスチックカバー90が変形しても、かかる変形に第2接着剤層42は追従する。このため、温度サイクル試験において、プラスチックカバー90がガラス基板20から剥離するという不具合の発生を抑制することができる等、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0047】
[実施の形態3]
図7は、本発明の実施の形態3に係る入力機能付きの電気光学装置100の入力パネル2(ガラス基板20)とプラスチックカバー90との接着構造を模式的に示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と略同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0048】
実施の形態1に係る入力機能付きの電気光学装置100では、ガラス基板20側に接する第1接着剤層41と、プラスチックカバー90に接する第2接着剤層42とが同一サイズであったが、本形態の電気光学装置100では、第1接着剤層41はガラス基板20とサイズが同一で、第2接着剤層42はプラスチックカバー90とサイズが同一である。このため、第2接着剤層42は第1接着剤層41よりサイズが大きい。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0049】
このように、本形態においては、第2接着剤層42は第1接着剤層41よりサイズが大きい。このため、剥離しやすい第2接着剤層42とプラスチックカバー90とを強固に接着することができるので、プラスチックカバー90と第2接着剤層42との界面で剥離するという不具合の発生を抑制することができる。
【0050】
[実施の形態4]
上記実施の形態1〜3では、第2接着剤層42を第1接着剤層41より弾性率が低くし、かつ、第2接着剤層42については、第1接着剤層41よりプラスチックカバー90に対する接着力が大きくしてある。本形態では、さらに、第1接着剤層41については、第2接着剤層42よりガラス基板20に対する接着力が大きくしてある。このように構成すると、第1接着剤層41の弾性率が高い場合でも、ガラス基板20と第1接着剤層41との界面で剥離するという不具合の発生を抑制することができる。
【0051】
かかる関係は、同一系統の粘着剤を使う限り比較的実現し難しいが、第1接着剤層41および第2接着剤層42として異なる系統の粘着剤を用いることにより比較的容易に実現することができる。例えば、第1接着剤層41および第2接着剤層42のうちの一方をアクリル樹脂系とし、他方をシリコーン樹脂系とすることにより実現することができる。
【0052】
[他の実施の形態]
上記実施の形態1〜4では、第1接着剤層41および第2接着剤層42の双方を粘着剤としたが、第1接着剤層41については液状の接着剤を硬化させたものを用い、第2接着剤層42については粘着剤を用いてもよい。
【0053】
上記実施の形態1〜4では、入力パネル2が静電容量型であったが、入力パネル2が抵抗膜方式である場合に本発明を適用してもよい。抵抗膜方式の入力パネル2の場合、一対の基板において対向する面に入力位置検出用電極を形成する。従って、抵抗膜方式の入力パネル2において入力操作側に用いたガラス基板20とプラスチックカバー90とを接着剤層40で接着するのに本発明を適用してもよい。
【0054】
上記実施の形態1〜4では、入力パネル2のガラス基板20にプラスチックカバー90を接着するのに本発明を適用したが、電気光学パネル5に用いたガラス基板にプラスチックカバー90を接着するのに本発明を適用してもよい。
【0055】
[電子機器への搭載例]
次に、上述した実施形態に係る入力機能付きの電気光学装置100を適用した電子機器について説明する。図8(a)に、入力機能付きの電気光学装置100を備えたモバイル型のパーソナルコンピューターの構成を示す。パーソナルコンピューター2000は、表示ユニットとしての入力機能付きの電気光学装置100と本体部2010を備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。図8(b)に、入力機能付きの電気光学装置100を備えた携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、並びに表示ユニットとしての入力機能付きの電気光学装置100を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、入力機能付きの電気光学装置100に表示される画面がスクロールされる。図8(c)に、入力機能付きの電気光学装置100を適用した情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、並びに表示ユニットとしての入力機能付きの電気光学装置100を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が入力機能付きの電気光学装置100に表示される。
【0056】
なお、入力機能付きの電気光学装置100が適用される電子機器としては、図8に示すものの他、デジタルスチールカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型、モニター直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、銀行端末等の電子機器等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示部として、前述した入力機能付きの電気光学装置100が適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
2a・・入力領域、2・・入力パネル、5・・電気光学パネル、20・・ガラス基板、21・・入力位置検出用電極、40・・接着剤層、41・・第1接着剤層、42・・第2接着剤層、90・・プラスチックカバー、100・・入力機能付きの電気光学装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、該ガラス基板の一方面側に接着剤層によって接着されたプラスチックカバーと、を有する電気光学装置において、
前記接着剤層は、前記ガラス基板側に接する第1接着剤層と、前記プラスチックカバーに接する第2接着剤層と、を備え、
前記第2接着剤層は、前記第1接着層より弾性率が低いことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記ガラス基板に対して前記プラスチックカバーが位置する側とは反対側に画像生成用の電気光学パネルを備え、
前記ガラス基板において、前記プラスチックカバーが位置する側の面、および前記プラスチックカバーが位置する側とは反体側の面のうちの少なくとも一方には、入力位置を静電容量方式あるいは抵抗膜方式で検出するための入力位置検出用電極が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記プラスチックカバーは、前記ガラス基板より大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記第1接着剤層および前記第2接着剤層はいずれも、ゲル状の粘着剤層であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記第1接着剤層と前記第2接着剤層は、互いの形成範囲が等しいことを特徴とする請求項4のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記第2接着剤層は、前記第1接着剤層より形成範囲が広いことを特徴とする請求項4の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記第2接着剤層は、前記第1接着剤層より前記プラスチックカバーに対する接着力が大きいことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記第1接着剤層は、前記第2接着剤層より前記ガラス基板に対する接着力が大きいことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の電気光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−53262(P2011−53262A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199456(P2009−199456)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】