説明

電気再生式純水製造装置

【課題】複数組の脱塩室及び濃縮室から構成され、脱塩室には陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂が収容される電気再生式純水製造装置であって、高度の熟練した技術を必要とせず、容易に組み立て可能であり、しかも、イオン交換樹脂の本来の特性を損なう恐れがない電気再生式純水製造装置を提供する。
【解決手段】脱塩室81,82に収容されるイオン交換樹脂が、膨潤イオン交換樹脂をその全体の重量が1〜10重量%減少するまで乾燥した後、濃度5〜15重量%の水溶性高分子水溶液と混合し、この際、膨潤イオン交換樹脂に対する水溶性高分子の使用割合は0.5〜5重量%の範囲とし、次いで、得られた混合物をシート状に加圧成形し、30〜60℃で乾燥して得られたシート状のイオン交換樹脂成形物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気再生式純水製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高純度の純水を製造するための超純水製造システムには、一般に、前処理装置としての逆浸透膜処理装置(RO装置)と、このRO装置の透過水を高度処理する脱イオン装置としての電気再生式純水製造装置とが組み込まれている。RO装置の性能は、温度によって大きく影響を受けるため、熱交換器を通して温度制御した、通常35℃以下、好ましくは30℃以下の一定温度の原水が供給され、また、電気再生式純水製造装置にも上記と同温度のRO装置処理水(透過水)が供給される。
【0003】
従来より、上記の電気再生式純水製造装置として、陽極を備えた陽極室と陰極を備えた陰極室との間に陰イオン交換膜および陽イオン交換膜を交互に配列して順次形成される複数組の脱塩室および濃縮室から構成され、脱塩室には陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂が収容される電気再生式純水製造装置が提案されている。
【0004】
ところで、上記の陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂は各脱塩室にそれぞれ充填されて収容されるが、イオン交換樹脂の充填は、各部屋に均一に充填されることが大切であり、脱塩室内では液の流れがショートパスするような空間を生じること無く、且つ電気的な偏りが生じることの無いことが求められる。
【0005】
しかしながら、上記の要求を満足するようにして、直径0.3〜0.8mmのイオン交換樹脂を脱塩室内に充填することは、高度の熟練した技術を要し、相当な時間をも必要として経済的ではない。なお、上記のイオン交換樹脂は、官能基の保護や割れ防止の観点から、水分を含んだ膨潤状態で取り扱われ、上記の直径は膨潤状態における値である。因に、膨潤状態のイオン交換樹脂の含水率は、その種類によって異なるが、樹脂に対する値として通常30〜60重量%である。
【0006】
そこで、上記の問題を解決するため、熱可塑性ポリマーと熱硬化性ポリマーの混合物からなる結合剤ポリマーを用いてイオン交換樹脂粒子を結合してなる多孔質イオン交換体が提案されている(特許文献1)。
【0007】
しかしながら、上記の多孔質イオン交換体では次のような問題がある。すなわち、結合剤ポリマーとイオン交換樹脂粒子の混練には120〜130℃の高温度が必要であるため、イオン交換樹脂の本来の特性を損なう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−192716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、陽極を備えた陽極室と陰極を備えた陰極室との間に陰イオン交換膜および陽イオン交換膜を交互に配列して順次形成される複数組の脱塩室および濃縮室から構成され、脱塩室には陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂が収容される電気再生式純水製造装置であって、高度の熟練した技術を必要とせず、容易に組み立て可能であり、しかも、イオン交換樹脂の本来の特性を損なう恐れがない電気再生式純水製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、陽極を備えた陽極室と陰極を備えた陰極室との間に陰イオン交換膜および陽イオン交換膜を交互に配列して順次形成される複数組の脱塩室および濃縮室から構成され、脱塩室には陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂が収容される電気再生式純水製造装置であって、上記の脱塩室に収容されるイオン交換樹脂が次の製造法で得られたシート状のイオン交換樹脂成形物であることを特徴とする電気再生式純水製造装置に存する。
【0011】
<イオン交換樹脂成形物の製造法>
膨潤イオン交換樹脂をその全体の重量が1〜10重量%減少するまで乾燥した後、濃度5〜15重量%の水溶性高分子水溶液と混合し、この際、膨潤イオン交換樹脂に対する水溶性高分子の使用割合は0.5〜5重量%の範囲とし、次いで、得られた混合物をシート状に加圧成形し、30〜60℃で乾燥してシート状のイオン交換樹脂成形物を得る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高度の熟練した技術を必要とせず、容易に組み立て可能であり、しかも、イオン交換樹脂の本来の特性を損なう恐れがない電気再生式純水製造装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は電気再生式純水製造装置の一例の垂直縦断正面の全体略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
先ず、一般的な電気再生式純水製造装置について説明する。
【0015】
電気再生式純水製造装置(1)の基本的構成は、陽極室(3)と陰極室(5)との間に陰イオン交換膜(61)および陽イオン交換膜(71)を交互に配列して順次形成される複数組の脱塩室(81)、(82)…および濃縮室(91)、(92)…から構成される。
【0016】
すなわち、陰イオン交換膜(61)と陽イオン交換膜(71)とに挟まれて脱塩室(81)が構成され、同様にして陰イオン交換膜(62)と陽イオン交換膜(72)とに挟まれて第2の脱塩室(82)が形成される。この様にして図示の装置の場合は5個の脱塩室が形成されている。一方、陽イオン交換膜(71)と陰イオン交換膜(62)とに挟まれて第1濃縮室(91)が形成され、同様にして陽イオン交換膜(72)と陰イオン交換膜(63)とに挟まれて第2濃縮室(92)が形成される。この様にして図示の装置の場合は4個の濃縮室が形成されている。そして、上記5個の脱塩室には陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂の混合物(A)がそれぞれ収容される。
【0017】
5個の各脱塩室には、並行して被処理水(脱イオンされる水)を脱塩室側流入管(131)から供給する。処理水(脱イオンされた水)は脱塩室側流出管(132)から流出される。4個の濃縮室には、並行して被処理水を濃縮室側流入管(141)から供給する。各濃縮室に供給された被処理水は、濃縮されて濃縮水として濃縮室側流出管(142)から排出される。また、濃縮室への供給と同時に被処理水を陽極室側流入管(121)から陽極室(3)に、陰極室側流入管(123)から陰極室(5)にそれぞれ導入し、各々、陽極室側流出管(122)、陰極室側流出管(124)から排出される。
【0018】
脱塩室および濃縮室を形成するためのイオン交換膜としては、通常の電気透析装置で採用されているものが使用され、例えば、商品名「セレミオン」(旭硝子社製)、「ネオセプタ」(トクヤマ社製)、「アシプレックス」(旭化成社製)等の市販品が挙げられる。
【0019】
上記の脱塩室に充填されるイオン交換樹脂としては、通常の純水製造時の脱塩処理に使用されている陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂を使用することもできる。例えば、強酸性陽イオン交換樹脂としては、「ダイヤイオン(三菱化学(株)登録商標)SK1B」、「PK208」等、強塩基性陰イオン交換樹脂としては、「ダイヤイオンSA10A」、「PA316」等が挙げられる。
【0020】
上記のイオン交換樹脂は、再生型および塩型の何れの型で使用してもよいが、水質の立ち上がりを早くするのには再生型を使用するのがよい。陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂とは、両者の交換容量が同じとなる量で使用される。なお、陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂の再生型混合樹脂としては、例えば、三菱化学(株)製の商品「SMT100L」等がある。
【0021】
次に、電気再生式純水製造装置の脱塩室に収容されるシート状のイオン交換樹脂成形物について説明する。
【0022】
本発明においては、次の製造法、すなわち、膨潤イオン交換樹脂をその全体の重量が1〜10重量%減少するまで乾燥した後、濃度5〜15重量%の水溶性高分子水溶液と混合し、この際、膨潤イオン交換樹脂に対する水溶性高分子の使用割合は0.5〜5重量%の範囲とし、次いで、得られた混合物をシート状に加圧成形し、30〜60℃で乾燥してシート状のイオン交換樹脂成形物を得る方法で得られたシート状のイオン交換樹脂成形物を使用する。
【0023】
上記の水溶性高分子としては、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール(以下PVAという)、ポリピニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。PVAは、その部分アセタール化物、4級アンモニウム塩等によるそのカチオン変性物、スルホン酸ナトリウム等によるそのアニオン変性物等の誘導体であってもよい。これらの中では特にPVAが好ましい。PVAは、ケン化度が98モル%以上で重合度が1000〜3500のものが好適である。
【0024】
前記のイオン交換樹脂成形物の形状は、脱塩室に円滑に充填し得る限り特に制限されないが、一般的に、脱塩室の形状が縦長の長方形であり、縦300〜900mm、横130〜500mm、幅3〜10mmであることを考慮し、シート形状とされる。具体的には、脱塩室の形状と略同一のシート形状、また、当該シート形状を複数枚に裁断したのと同等の短冊形状とされる。実際的には、脱塩室の寸法より大型のシート形状のイオン交換樹脂成形物を得、これを上記のような適宜の寸法に裁断して使用する。また、イオン交換樹脂成形物は、陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂とで別々に作成してもよいし、両者を一緒にして混合樹脂として作成してもよい。
【0025】
シート状のイオン交換樹脂成形物の具体的な製造法は次の通りである。
【0026】
(1)膨潤イオン交換樹脂をその全体の重量が1〜10重量%減少するまで乾燥する。乾燥の程度が上記の範囲未満の場合は、次の操作で使用するバインダーとしての水溶性高分子水溶液が樹脂の表面を流れるために樹脂同士の固着ができず成形困難である。一方、乾燥の程度が上記の範囲を超える場合は、水溶性高分子水溶液が樹脂内部に吸収され過ぎるため樹脂同士が塊となって成形困難とる。本発明では、膨潤イオン交換樹脂の表面層付近のみを乾燥させることにより、可能な限り、点接触している樹脂同士の当該接触点のみでの固着(点固着)が起こることを企図しており、斯かる観点から上記の乾燥の程度は決定されている。本発明において、好ましい乾燥の程度は、膨潤イオン交換樹脂の全体の重量が2〜8重量%減少する範囲である。乾燥機は、公知の乾燥機の中から上記の様な低度な乾燥が出来る種類の乾燥機を適宜選択して使用する。その一例は堅型送風乾燥機である。
【0027】
(2)乾燥処理された膨潤イオン交換樹脂を濃度5〜15重量%の水溶性高分子水溶液と混合し、この際、膨潤イオン交換樹脂に対する水溶性高分子の使用割合は0.5〜5重量%の範囲とする。水溶性高分子水溶液の濃度が5重量%未満の場合は、粘度が低すぎるため、樹脂同士の接触点における水溶性高分子水溶液の溜まり量が不足し、樹脂同士の固着が困難となる。一方、水溶性高分子水溶液の濃度が15重量%を超える場合は、粘度が高すぎるため、樹脂同士の接触点以外の隙間にも水溶性高分子水溶液の溜まり、本発明が企図している前記の点固着が阻害される。膨潤イオン交換樹脂に対する水溶性高分子の使用割合が0.5重量%未満の場合も上記と同趣旨により樹脂同士の固着が困難となる。一方、膨潤イオン交換樹脂に対する水溶性高分子の使用割合が5重量%を超える場合も上記と同趣旨により本発明が企図している前記の点固着が阻害される。混合処理は、適当な容器を使用し、大型スパチュラ等により、目視にて均一になるように行う。混合時間は、一回当りの処理量にもよるが、通常1〜10分、好ましくは3〜7分である。混合時間が1分未満の場合は、均一混合が困難であり、10分を超える場合は、樹脂同士の接触点以外の隙間にも水溶性高分子水溶液が浸入し、しかも、水溶性高分子水溶液の粘度が上昇し、シート状に成形することが困難となる恐れがある。
【0028】
(3)得られた混合物をシート状に加圧成形する。この際に使用するシート成形型枠の作成は例えば次のように行うことが出来る。
【0029】
パンチングメタルの上に金網を重ねて台座を作成し、金網の上に濾布を載せ、その上に、型材を使用して適当な大きさの成形型枠を設ける。金網は乾燥を良好に行うために使用され、濾布はシート状のイオン交換樹脂成形物の離型を容易にするために使用される。従って、適当な材質を選択する必要があり、例えばポリエステル製の濾布は好適に使用することが出来る。
【0030】
加圧成形は、シート成形型枠内に前記の混合物を流し込んだ後、適当なローラで加圧処理することによって行うことが出来る。この場合、ローラに混合物が付着しないように、シート成形型枠内に流し込まれた混合物の上に前記と同様の濾布を載せて加圧処理するのが好ましい。
【0031】
(4)シート状に加圧成形された成形物を30〜60℃で乾燥してシート状のイオン交換樹脂成形物を得る。この場合、乾燥は、シート成形型枠内から脱型せず、シート成形型枠と共に乾燥機に収納して行うのが好ましい。また、シート成形型枠を乾燥機に収納する前に、上面に適当な蓋、例えば、前記の台座と同様にパンチングメタルの上に金網を重ねた構造の蓋を載せて固定し、乾燥中に、台座と蓋とが上下逆になるように操作するのが好ましい。斯かる操作により、全体的に均一な乾燥が可能となる。乾燥機としては、例えば堅型送風乾燥機が好適に使用される。斯かる乾燥機は、導入する圧縮空気によって湿度調節が可能である。乾燥温度が30℃未満の場合は、水溶性高分子が固着する前に下部に流れ易いという問題があり、60℃を超える場合は、成形物の表面付近が優先的に乾燥されるために反りが発生するという問題がある。好ましい乾燥温度は40〜50℃である。シート状のイオン交換樹脂成形物の残存水分は、通常10〜60重量%、好ましくは30〜50重量%である。ここでいう残存水分とは、使用した膨潤イオン交換樹脂および水溶性高分子水溶液の全体を基準とした残存水分量を意味する。
【0032】
本発明の電気再生式純水製造装置は、脱塩室に収容されるイオン交換樹脂が前述の特定の製造法で得られたシート状のイオン交換樹脂成形物であることを特徴とする。斯かる本発明の電気再生式純水製造装置は、高度の熟練した技術を必要とせず、容易に組み立て可能であり、しかも、イオン交換樹脂の本来の特性を損なう恐れがないという特徴を有する。
【0033】
そして、本発明の電気再生式純水製造装置は、基本的には従来と同様の方法で使用されるが、図1に示す脱塩室側流入管(131)から供給する被処理水の温度は、通常35℃以下、好ましくは30℃以下、更には好ましくは20〜25℃である。
【実施例】
【0034】
次に、実施例および比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
比較例1:
【0035】
図1に示す様な構造を有する電気再生式純水製造装置であって、脱塩室が5室および濃縮室が4室から成る装置を使用し、実験を行った。脱塩室は、縦600mm、横130mm、幅8mmであり、濃縮室は、縦600mm、横130mm、幅2mmである。
【0036】
陰イオン交換膜としては、セレミオンAMD[旭硝子(株)製、セレミオンは同社登録商標]を使用し、その寸法は、縦600mm、横130mmである。陽イオン交換膜としては、セレミオンCMD[旭硝子(株)製]を使用し、その寸法は、縦600mm、横130mmである。
【0037】
陽極(21)及び(22)としては、チタンを板状にしたものに白金メッキを施したものを、陰極(41)及び(42)としては、SUS316を板状にしたものを使用した。陽極(21)及び(22)の寸法は、それぞれ、縦600mm、横130mmとした。陰極(41)及び(42)の寸法も同様に、それぞれ、縦600mm、横130mmとした。
【0038】
脱塩室に充填するイオン交換樹脂としては、陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂の再生型混合樹脂(三菱化学(株)製の商品「ダイヤイオンSMT100L」、含水率:50重量%))を使用した。
【0039】
そして、湿潤状態の上記のイオン交換樹脂を脱塩室に充填した。イオン交換樹脂の充填は、脱塩室の室枠と他の部材との間にイオン交換樹脂が入り込むと種々の問題を惹起するため、細心の注意を払い次のように行った。すなわち、薬さじを使用し、少量ずつ充填し、脱塩室の室枠の高さと同じ高さまで充填した。
【0040】
次いで、脱塩室流入管(131)から脱塩室に導電率4μS/cmの被処理水を2.8cm/秒の流速で供給し、20A/mの電流を流し、脱イオン通水試験を行った。処理水の導電率の変化が大きかったが、最終的に電気抵抗10MΩの脱イオン水が得られた。運転停止後、電気再生式純水製造装置を解体して観察した結果、脱塩室の入口側(下部側)に隙間があることが確認された。
【0041】
実施例1:
<シート成形型枠の作成>
550mm×970mmの大きさで厚さが1mmのSUS製パンチングメタル(孔径4mm、開口率30%)と同大きさで厚さが0.2mmステンレス製金網(孔径0.15mm、開口率37%)のステンレス金網とを用意し、パンチングメタルの上にSUS製金網を重ねた台座を作成した。そして、台座の金網に上記と同大きさのポリエステル製の濾布(NBC(株)社製の商品「T−NO90T」)を載せ、その上に、アルミ製の型材を使用し、500mm×950mmの大きさで厚さが8mmの成形型枠を設けた。型材の固定はポルト締めで行った。
【0042】
<シート状のイオン交換樹脂成形物の作成>
比較例1で使用したのと同じ湿潤状態のイオン交換樹脂をその全体の重量が5重量%減少するまで堅型送風乾燥機内で乾燥した。一方、重合度2400、ケン化度が98モル%以上のポリビニルアルコールを水に溶解させて10重量%濃度の水溶液を調製した。
【0043】
次いで、大型スパチュラを使用し、容器内にて、上記のイオン交換樹脂5130gとポリビニルアルコール水溶液823gとを5分間かけて目視にて均一になるように混合し、その後、直ちに、シート成形型枠の中に流し込んだ。流し込み量は前記の成形型枠の体積と同一量し、予め計算によって求めておいた。
【0044】
次いで、成形型枠に流し込んだ混合物の上に前記と同じポリエステル製の濾布を載せ、その上から、直径50mmのSUS製ローラで加圧処理して平滑化した。その後、蓋として前記と同じSUS製金網とSUS製パンチングメタルとを順次に載せてポルト締めによって固定した。
【0045】
次いで、堅型送風乾燥機内に上記の蓋付きシート成形型枠を水平に収納し、温度45℃、湿度30%以下(乾燥機内に導入する圧縮空気によって湿度調節)の条件下、時々、台座と蓋とが上下逆になるように操作し、シート状のイオン交換樹脂成形物の残存水分が40重量%となるまで乾燥した。
【0046】
次いで、堅型送風乾燥機から上記の蓋付きシート成形型枠を取り出し、シート状のイオン交換樹脂成形物を脱型し、ビニール製袋で2重に梱包し、平板状の重り(2.5kg)を載せ、室温まで放冷した。次いで、シート状のイオン交換樹脂成形物を取り出し、電気再生式純水製造装置の脱塩室にピッタリと充填し得る大きさに裁断して使用に供した。
【0047】
<電気再生式純水製造装置の組立>
比較例1において、薬さじを使用して脱塩室にイオン交換樹脂を充填するのに代えて、脱塩室に前記のシート状のイオン交換樹脂成形物を充填すること以外は、比較例1と同様にして電気再生式純水製造装置の組立を行った。シート状のイオン交換樹脂成形物の脱塩室への充填は極めて容易に行うことが出来た。
【0048】
次いで、比較例1と同様に、脱塩室流入管(131)から脱塩室に導電率4μS/cmの被処理水(水温23℃)を2.8cm/秒の流速で供給し、20A/mの電流を流し、脱イオン通水試験を行ったところ、電気抵抗18MΩの脱イオン水が得られた。運転停止後、電気再生式純水製造装置を解体して観察した結果、脱塩室のイオン交換樹脂の充填状態は良好であり隙間などは確認されなかった。
【符号の説明】
【0049】
1:電気透析槽本体
21:陽極
22:陽極
3:陽極室
41:陰極
42:陰極
43:共通陰極
5:陰極室
61:陰イオン交換膜
71:陽イオン交換膜
81:脱塩室
91:濃縮室
121:陽極室流入管
122:陽極室流出管
123:陰極室流入管
124:陰極室流出管
131:脱塩室流入管
132:脱塩室流出管
141:濃縮室流入管
142:濃縮室流出管
A:陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂の混合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極を備えた陽極室と陰極を備えた陰極室との間に陰イオン交換膜および陽イオン交換膜を交互に配列して順次形成される複数組の脱塩室および濃縮室から構成され、脱塩室には陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂が収容される電気再生式純水製造装置であって、上記の脱塩室に収容されるイオン交換樹脂が次の製造法で得られたシート状のイオン交換樹脂成形物であることを特徴とする電気再生式純水製造装置。
<イオン交換樹脂成形物の製造法>
膨潤イオン交換樹脂をその全体の重量が1〜10重量%減少するまで乾燥した後、濃度5〜15重量%の水溶性高分子水溶液と混合し、この際、膨潤イオン交換樹脂に対する水溶性高分子の使用割合は0.5〜5重量%の範囲とし、次いで、得られた混合物をシート状に加圧成形し、30〜60℃で乾燥してシート状のイオン交換樹脂成形物を得る。
【請求項2】
水溶性高分子がポリビニルアルコールである求項1に記載のイオン交換樹脂の充填方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−234288(P2010−234288A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85807(P2009−85807)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000232863)日本錬水株式会社 (75)
【Fターム(参考)】