説明

電気化学セル構造および製作方法

【課題】ぶれ(にじみ)およびグレースケール(コントラスト)に関する画像品質を向上させた電気化学セル(色素増感太陽電池)を提供する。
【解決手段】第1の導電層402;第1の導電層の上に設けられた、互いに離間した複数の隣接する金属酸化物セルを含む金属酸化物層403;金属酸化物層の上に設けられた機能色素層405;第2の導電層406;および機能色素層と第2の導電層との間に設けられた電解質405:を含み、第1および第2の導電層のうち少なくとも一つが透明であり;および機能色素層が有機溶媒インクから形成された電気化学セル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セル構造および製作方法に関する。さらに好ましくは、本発明は色
の電気化学セル構造の生成に使用されるインクに関する。
【背景技術】
【0002】
国際エネルギー機関の「世界のエネルギー展望」は、世界の一次エネルギーの需要は2
000年から2030年までに毎年1.7%増加するであろうと予測している。同展望は
またこの需要の90%が化石燃料によって満たされるであろうと予測している。その結果
、2000年から2030年までに二酸化炭素が毎年1.8%増加し、2030年には3
80億ドルに達するであろう。この高まる汚染傾向への対抗策として、太陽電池を初めと
するよりクリーンで再生可能なエネルギー源が長い間歓迎されてきた。一方現在は、高度
なシリコン系太陽電池が広く商業的に利用可能であるが、その取り込みは高い生産コスト
、堅牢性の欠如および関連する大表面の露出要件に起因する外観上の汚染を理由に、遅い
ものであった。
【0003】
色素増感型太陽電池(DSSC)は、結晶性太陽電池の代替法であり、結晶性太陽電池
よりも生産コストが安い。しかしながら、DSSCは結晶性太陽電池よりも効率が低い。
したがってDSSCは、有効な発電ジェネータとなるためには大幅な対象面積を必要とす
る。以下、従来のDSSC構造について説明する。
【0004】
特許文献1は典型的なDSSCを開示している。図1に示すようにDSSC10は、第
1の透明な絶縁層1;第1の透明な導電性酸化物(TCO)電極層2;透明な二酸化チタ
ン(Ti02)の金属酸化物層3;増感剤(色素)4の分子単層;電解質層5;第2の透
明な導電性酸化物(TCO)電極層6;および第2の透明な絶縁層7を含む。
【0005】
DSSCは可視光を直接吸収することによって電荷を生成する。大部分の金属酸化物は
光を主として電磁スペクトルの紫外光領域で吸収するため、増感剤(色素)4が金属酸化
物層3の表面に吸収され、太陽電池の光吸収領域を可視光領域まで拡大する。
【0006】
金属酸化物層3および増感剤(色素)層4が吸収できる光の量を増加させるため、金属
酸化物層3の少なくとも一部が多孔性とされ、金属酸化物層3の表面積を増加させる。こ
の増加した表面積は増加した量の増感剤(色素)4を担持することができ、その結果光吸
収が増加し、およびDSSCのエネルギー変換効率が10%を超えるよう改善する。
【0007】
エレクトロクロミック表示素子(ECD)は比較的新しい電気化学的、双安定性表示素
子である。その用途はDSSCとは異なるものの、これらデバイスは図1に示す多くの物
理的特性を共有し、増感剤(色素)層4をエレクトロクロミック材料層で交換し、該エレ
クトロクロミック材料層は電流または電圧がデバイス全体に印加されると可逆的な色の変
化を受け、酸化した状態では透明でありおよび還元された状態では着色されている。
【0008】
十分な負の電位が第1の透明な導電性酸化物(TCO)電極層2に印加される場合、第
2の透明な導電性電極酸化物(TCO)層6が接地電位に保たれる一方、電子は金属酸化
物半導体層3の導電性結合へと注入され、および吸着された分子を還元する(着色工程)
。正の電位が第1の透明な導電性酸化物(TCO)電極層2に印加される場合は逆の工程
が発生し、および分子は漂白される(透明になる)。
【0009】
平面基板の上の単一のエレクトロクロミック分子単層は、漂白された状態と漂白されて
いない状態との間に強い色のコントラストを提供するほどには、十分な光を吸収しないで
あろう。したがって、多孔性が高く表面積が大きいナノ結晶性の金属酸化物層3を使用し
て、電子発色団の上に結合するより大きな有効表面積を提供することによって、漂白され
ていない状態での光吸収を促進する。光が厚い金属酸化物層3を通過する際、増感剤(色
素)4によって着色された何百という分子の単層を通過し、強力な吸収を行う。
【0010】
両方の電気化学的デバイス構造は類似しているため、出願人らは例としてDSSCの製
造方法のみを記載する。同様に、この工程はほとんど修正することなくECD製造に適用
することができるであろう。
【0011】
図1に示すDSSC10を製造するために、スクリーン印刷、ドクターブレーディング
、スパッタリングまたは高粘性ペーストのスプレーコーティングなどいくつかの技法のう
ち任意の一つを使用して、数ミクロンの厚さの金属酸化物層3を、第1の透明な導電性酸
化物(TCO)電極層2の上に蒸着する。典型的なペーストは水または有機溶媒系の金属
酸化物のナノ粒子懸濁液(直径5〜500nm)、典型的には二酸化チタン(Ti02
、ポリエチレングリコール(PEG)など粘性修飾結合剤、およびトリトン−Xなど界面
活性剤から成る。蒸着の後、ペーストを乾燥させて溶媒を除去し、および次に450℃ま
での温度で焼結させる。この高温工程は金属酸化物の粒径および密度を変更し、およびポ
リエチレングリコール(PEG)など有機結合剤構成物の除去を確実に行って、全体にわ
たって良好な導電性経路および明確に定義された材料の多孔性を提供する。また焼結も、
金属酸化物粒子3と第1の透明な導電性酸化物(TCO)電極層2との間の良好な電気的
接触を提供する。
【0012】
乾燥および冷却の後、多孔性の金属酸化物層3を低濃度の(<1mM)増感剤(色素)
溶液に長時間、典型的には24時間、浸漬することによって、増感剤(色素)4で被覆し
、多くの場合、カルボン酸誘導体を含む機能的リガンド構造を介して、増感剤(色素)4
の金属酸化物層3への吸収を可能にする。この工程で使用される典型的な溶媒はアセトニ
トリルまたはエタノールである。その理由は、水性溶液は増感剤(色素)4の金属酸化物
層3の表面への吸収を阻害するからである。
【0013】
第1の透明な導電性酸化物(TCO)電極層2の上に、多孔性の金属酸化物層3および
増感剤(色素)層4を形成した後、次に第2の透明な導電性酸化物(TCO)電極層6を
組み付ける。両電極層2、6を周辺スペーサ誘電性カプセル材料とともにサンドイッチし
て少なくとも10μmの電極間ギャップを作成し、その後電解質層5で充填する。スペー
サ材料は最も一般的には封止シールを提供する熱可塑性プラスチックである。最も一般的
には有機溶媒中のヨウ化物/三ヨウ化物塩である電解質層5がひとたび導入されると、D
SSCは、水の進入およびしたがってデバイスの劣化を防止するために、熱可塑性ガスケ
ット、エポキシ樹脂またはUV硬化樹脂のいずれかで残存する開口部をすべて封止ことに
よって完成する。
【0014】
DSSCを製作するために使用されたすべてでないとしても大部分の材料は、空気中で
および大気圧条件下で取り扱うことができ、結晶性太陽電池の製作に関連する高価な真空
工程の必要性を除去することができる。その結果、DSSCは結晶性太陽電池よりも低い
コストで製造することができる。
【0015】
ECDの製作工程はいくつかの例外があるがDSSCの製作工程に非常に類似している
。多孔性の金属酸化物層3は多くの場合スクリーン印刷によってパターン化され、所望の
電極画像を提供することによって、デバイスは選択された領域を着色または漂白すること
によって情報を伝えることができる。さらに、増感剤(色素)層4は吸収された電子発色
団材料層に置換される。さらに、浸透性の拡散性反射体層、典型的には焼結した金属酸化
物の大きな粒子を、第1および第2の電極層2、6の間に配置し、見た目の画像コントラ
ストを増大させることができる。
【0016】
特許文献2もDSSC100を開示している。図2に示すように、DSSC100は、
ガラスまたはプラスチック製の第1の基板101;第1の透明な導電性酸化物(TCO)
層102;二酸化チタン(TiO2)層103、色素層104;電解質層105;第2の
透明な導電性酸化物(TCO)層106;ガラスまたはプラスチック製の第2の基板10
7;および絶縁ウェブ108、109を含む。絶縁ウェブ108、109を使用して、D
SSC100中に各セル110を形成する。
【0017】
絶縁ウェブ108と絶縁ウェブ109との間に形成された個別のセル110は、絶縁ウ
ェブ109と絶縁ウェブ108との間に形成された隣接する個別のセル110とは異なる
。その理由は、Ti02層103および電解質層105はそれぞれの隣接する個別のセル
110において交換可能であるからである。このように、隣接する個別のセル110の電
気的極性は反対である。異なる層のこの交互の分割の結果、電気的に導電性の層102お
よび106から導電性の層を形成し、各導電性の層111は、ある個別のセル110の正
の(負の)極を隣接する個別のセル110の負の(正の)極に接続する。結果生じる構造
は、多層構造を組み入れる必要なしに、DSSC全体の出力電圧を増加させる方法を提供
する。
【0018】
特許文献3は多色型DSSC200を開示する。図3に示すように、多色型DSSC2
00は、第1の透明な電極層201;透明なTi02の半導体層202、透明な半導体層
202の表面に吸収された4色の感作色素吸収部203、204、205、206;キャ
リア輸送層207;第2の透明な電極層208;および第1および第2の電極層201、
208に取り付けられた補助電極209を含む。
【0019】
多色型DSSC200は、透明な半導体層202を赤色の増感色素吸収部203とのみ
合致する開口部を有するマスクで覆い、透明な半導体層202を赤色の増感色素に所定時
間浸し、赤色の増感色素から透明な半導体層202を除去し、およびマスクを除去する。
次に、透明な半導体層202を緑色の増感色素吸収部204とのみ合致する開口部を有す
るマスクで覆い、透明な半導体層202を緑色の増感色素に所定時間浸し、緑色の増感色
素から透明な半導体層202を除去し、およびマスクを除去する。次に、透明な半導体層
202を青色の増感色素吸収部205とのみ合致する開口部を有するマスクで覆い、透明
な半導体層202を青色の増感色素に所定時間浸し、青色の増感色素から透明な半導体層
202を除去し、およびマスクを除去する。最後に、透明な半導体層202を黒色の増感
色素に所定時間浸し、および黒色の増感色素から透明な半導体層202を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第4,927,721号明細書、「光電気化学セル」、M Gratzelら
【特許文献2】米国特許第5,830,597号明細書、「光化学セルの生成方法および装置」、H Hoffmann
【特許文献3】米国特許第6,310,282B1号明細書、「光起電力変換素子および色素−増感光起電力電池」、Sakuraiら
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、従来の多色型DSSC200にあっては、別々の色素吸収部203、2
04、205、206および透明な半導体層202を介した色のにじみに関して画像品質
が低いこと、およびグレースケール(コントラスト)制御にかけるという問題点を有して
いた。
【0022】
入射光子の電流への変換効率を向上させるために、およびDSSCの性能の安定性/再
現性を制御するために、金属酸化物層の物理的特性、およびしたがって増感剤(色素)分
子の吸収を精密に制御することが重要である。しかしながら、スクリーン印刷を使用する
金属酸化物層の製作の結果、残存する閉塞したまたは汚れたスクリーンセル、基板表面か
らの分離中のスクリーンへの密着による±5%の膜厚のばらつき、および粘性のペースト
を完全に除去できないことによる捕捉された泡の膨張をきたす。ドクターブレーディング
など他の方法もまた、大幅な空間的な逸脱をきたさなければ、明確に画成された厚い金属
酸化物層を提供できないという問題点がある。したがって、引き続き生じる多孔性および
膜質のばらつきはこのような金属酸化物層全体にわたって発生する可能性があり、その結
果、DSSCおよびECDのそれぞれに対して、効率および画像品質の劣化をきたす。
【0023】
ECDの場合、より高い画質すなわちピクセル構成されたディスレイのドット/インチ
(dpi)を増加させるためにさらに細かい金属酸化物層の機構を作成する要求によって
、スクリーン印刷の需要はさらに激化する。dpiが増加すると、最も小さい機構の寸法
は、スクリーンメッシュの大きさがメッシュ分割幅に近づくにつれ限定される。
【0024】
したがって、DSSCおよびECDに関して、上述の製作技法を使用して、機能的に増
感した多孔性の厚い金属酸化物層に基づく電気化学的デバイスの製作は、デバイスの再現
性および大型のデバイス生産への適合性の観点からみて、不適切である。
【0025】
そこで、本発明に係るいくつかの態様は、上述した先行技術の電気化学セル(DSSC
およびECD)を製造する問題点に対処し、これらを製作する効率を向上させ、およびし
たがってコストを低下させることを目的とする。さらに本発明は、先行技術よりもぶれ(
にじみ)およびグレースケール(コントラスト)に関する画像品質が向上した多色型電気
化学セルを生産することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明に係る電気化学セルは、第1の導電層と、前記第1の導電層の上に設けられた、
互いに離間した複数の隣接する金属酸化物セルを含む金属酸化物層と、前記金属酸化物層
の上に設けられた機能色素層と、第2の導電層と、前記機能色素層と第2の導電層との間
に設けられた電解質と、を含み、前記第1の導電層および第2の導電層のうち少なくとも
一つが透明であり、前記機能色素層が有機溶媒を含むインクからから形成されたことを特
徴とする。
本発明に係る電気化学セルの製造方法は、第1の導電層と、前記第1の導電層の上に設
けられた、互いに離間した複数の隣接する金属酸化物セルを含む金属酸化物層と、前記金
属酸化物層の上に設けられた機能色素層と、第2の導電層と、前記機能色素層と前記第2
の導電層との間に設けられた電解質と、を含む電気化学セルの製造方法であって、前記機
能色素層を有機溶媒を含む第1のインクを用いて形成することを特徴とする。
本発明に係る他の電気化学セルの製造方法は、第1の導電層と、前記第1の導電層の上
に設けられた、互いに離間した複数の隣接する金属酸化物セルを含む金属酸化物層と、金
属酸化物層の上に設けられた機能色素層と、第2の導電層と、前記機能色素層と前記第2
の導電層との間に設けられた電解質と、を含む電気化学セルの製造方法であって、前記機
能色素層を、第1の溶媒と第2の溶媒とを含む第1のインクを用いて形成することを特徴
とする。
上記の電気化学セルの製造方法において、前記第1の溶媒および前記第2の溶媒が異な
る沸点を有するようにしてもよい。
上記の電気化学セルの製造方法において、前記第1の溶媒が前記第2の溶媒の沸点より
も高い沸点を有するようにしてもよい。
上記の電気化学セルの製造方法において、前記第1の溶媒が略150℃よりも高い沸点
を有するようにしてもよい。
上記の電気化学セルの製造方法において、前記第1の溶媒は、前記第1のインクに体積
で5%含まれ、前記第2の溶媒は、前記第1のインクに体積で95%含まれるようにして
もよい。
上記の電気化学セルの製造方法において、前記第1の溶媒は、前記第1のインクに体積
で40%未満含まれるようにしてもよい。
上記の電気化学セルの製造方法において、前記第1の溶媒が1,3−ジメチル−2−イ
ミダゾリジノンであり、前記第2の溶媒が3−メチル−2−オキサゾリジノンであるよう
にしてもよい。
上記の電気化学セルの製造方法において、前記機能色素層を、前記第1のインクに加え
て、前記第1のインクに含まれる第1の色素とは異なる色を呈する第2の色素を含む第2
のインクを用いて形成するようにしてもよい。
上記の電気化学セルの製造方法において、前記第1の色素及び前記第2の色素のうち少
なくとも一つが電気化学セルの発電に寄与するようにしてもよい。
上記の電気化学セルの製造方法において、機能色素層の色の深度は、前記第1のインク
の滴の大きさを調製することにより設定されるようにしてもよい。
上記の電気化学セルの製造方法において、前記機能色素層の色の深度は、前記第1のイ
ンクの液滴の数を調製することによって設定されるようにしてもよい。
上記の電気化学セルの製造方法において、前記機能色素層の色の深度は、前記第1のイ
ンクに含まれる色素の濃度を調整することにより設定されるようにしてもよい。
本発明の第1の実施形態では、電気化学セルを提供する。電気化学セルは、第1の導電
層;第1の導電層の上に設けられた、互いに離間した複数の隣接する金属酸化物セルを含
む金属酸化物層;金属酸化物層の上に設けられた機能色素層;第2の導電層;および機能
色素層と第2の導電層との間に設けられた電解質:を含み、第1および第2の導電層のう
ち少なくとも一つが透明であり;および機能色素層が有機溶媒インクから形成されること
を特徴とする。
【0027】
一実施形態において、有機溶媒インクは第1の溶媒および第2の溶媒を含む。別の実施
形態において、第1の溶媒および第2の溶媒は異なる沸点を有する。別の実施形態におい
て、第1の溶媒は第2の溶媒の沸点よりも高い沸点を有する。別の実施形態において、第
1の溶媒が略150℃よりも高い沸点を有する。別の実施形態において、第1の溶媒は体
積比5%の有機溶媒インクであり、および第2の溶媒は体積比95%の有機溶媒インクで
ある。別の実施形態において、第1の溶媒は体積比40%未満の有機溶媒インクである。
別の実施形態において、第1の溶媒が1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンであり、
および第2の溶媒が3−メチル−2−オキサゾリジノンである。
【0028】
別の実施形態において、機能色素層は少なくとも異なる2色の有機溶媒インクを含むこ
とによって、複数の隣接する金属酸化物セルのうち少なくともいくつかが異なる色を有す
る。別の実施形態において、少なくとも異なる2色の有機溶媒インクのうち少なくとも一
つが電気化学セルの発電に寄与する。別の実施形態において、少なくとも1つの金属酸化
物セル中の機能色素層の色の深度が金属酸化物層の厚さを変化させることによって変化す
る。別の実施形態において、少なくとも1つの金属酸化物セル中の機能色素層の色の深度
がその上に形成される有機溶媒インクの滴の大きさを変化させることによって変化する。
別の実施形態において、少なくとも1つの金属酸化物セル中の機能色素層の色の深度がそ
の上に形成される有機溶媒インクの滴の数を変化させることによって変化する。別の実施
形態において、少なくとも1つの金属酸化物セル中の機能色素層の色の深度がその上に形
成される有機溶媒インクの濃度を変化させることによって変化する。
【0029】
一実施形態において、電気化学セルは、第1の導電層の上に形成され、および複数の隣
接する金属酸化物セルのそれぞれを囲繞する分離手段:をさらに含む。別の実施形態にお
いて、分離手段は、ポリマーパターンまたはポリイミドパターンである。別の実施形態に
おいて、分離手段の少なくとも一部が疎水性および/または疎油性であり、および第1の
導電層が親水性および/または親油性である。別の実施形態において、分離手段が第1の
導電層の上にセルのマトリクスを形成する。別の実施形態において、金属酸化物セルのそ
れぞれが略正方形、略円形、略六角形、または略長方形である。別の実施形態において、
分離手段はバンクである。
【0030】
一実施形態において、電気化学セルは機能色素層の第1の導電層とは反対側に設けられ
た反射体層:をさらに含む。別の実施形態において、電気化学セルは電解質と第2の導電
層との間に形成された電極触媒層:をさらに含む。別の実施形態において、電極触媒層は
、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウムまたはオスミウムのいずれかで
ある。
【0031】
一実施形態において、電気化学セルは、第1の導電層の金属酸化物とは反対側に第1の
絶縁基板:をさらに含む。別の実施形態において、電気化学セルは第2の導電層の電解質
とは反対側に第2の絶縁基板:をさらに含む。別の実施形態において、第1の絶縁基板が
ガラスまたはプラスチックである。別の実施形態において、金属酸化物層が二酸化チタン
層である。別の実施形態において、金属酸化物層が金属酸化物の粒子を含み、および機能
色素層が金属酸化物の粒子の表面上に形成されたことを特徴とする。別の実施形態におい
て、第1および第2の導電層は連続層である。別の実施形態において、第1の導電層が透
明な導電性酸化物層である。別の実施形態において、第2の導電層が透明な導電性酸化物
層である。別の実施形態において、電気化学セルが色素増感型太陽電池である。別の実施
形態において、電気化学セルがエレクトロクロミック表示素子である。別の実施形態にお
いて、機能色素層が電子発色団層である。
【0032】
本発明の第2の実施形態では、電気化学セルを提供する。電気化学セルは第1の導電層
;第1の導電層の上に設けられた金属酸化物層;金属酸化物層の上に設けられた機能色素
層;第2の導電層;および機能色素層と第2の導電層との間に設けられた電解質:を含み
、第1および第2の導電層のうち少なくとも一つが透明であり;および機能色素層が、第
1の溶媒および第2の溶媒を含む二成分溶媒インクから形成されることを特徴とする。
【0033】
一実施形態において、第1の溶媒および第2の溶媒は異なる沸点を有する。別の実施形
態において、第1の溶媒は第2の溶媒の沸点よりも高い沸点を有する。別の実施形態にお
いて、第1の溶媒が略150℃よりも高い沸点を有する。別の実施形態において、第1の
溶媒は体積比5%の二成分溶媒インクであり、および第2の溶媒は体積比95%の二成分
溶媒インクである。別の実施形態において、第1の溶媒は体積比40%未満の二成分溶媒
インクである。別の実施形態において、第1の溶媒が1,3−ジメチル−2−イミダゾリ
ジノンであり、および第2の溶媒が3−メチル−2−オキサゾリジノンである。
【0034】
別の実施形態において、少なくとも1つの金属酸化物セル中の機能色素層の色の深度が
金属酸化物層の厚さを変化させることによって変化する。別の実施形態において、少なく
とも1つの金属酸化物セル中の機能色素層の色の深度がその上に形成される有機溶媒イン
クの滴の大きさを変化させることによって変化する。別の実施形態において、少なくとも
1つの金属酸化物セル中の機能色素層の色の深度がその上に形成される有機溶媒インクの
滴の数を変化させることによって変化する。別の実施形態において、少なくとも1つの金
属酸化物セル中の機能色素層の色の深度がその上に形成される有機溶媒インクの濃度を変
化させることによって変化する。別の実施形態において、第1の導電層が透明であり、お
よび機能色素層の第1の導電層とは反対側に設けられた反射体層:をさらに含む。
【0035】
一実施形態において、電気化学セルは電解質と第2の導電層との間に形成された電極触
媒層:をさらに含む。別の実施形態において、電極触媒層は、白金、ルテニウム、ロジウ
ム、パラジウム、イリジウムまたはオスミウムのいずれかである。別の実施形態において
、電気化学セルは第1の導電層の金属酸化物とは反対側に第1の絶縁基板:をさらに含む
。別の実施形態において、電気化学セルは第2の導電層の電解質とは反対側に第2の絶縁
基板:をさらに含む。別の実施形態において、第1の絶縁基板がガラスまたはプラスチッ
クである。別の実施形態において、金属酸化物層が二酸化チタン層である。
【0036】
別の実施形態において、金属酸化物層が金属酸化物の粒子を含み、および機能色素層が
金属酸化物の粒子の表面上に形成されることを特徴とする。別の実施形態において、第1
および第2の導電層が連続層である。別の実施形態において、第1の導電層が透明な導電
性酸化物層である。別の実施形態において、第2の導電層が透明な導電性酸化物層である
。別の実施形態において、電気化学セルが色素増感型太陽電池である。別の実施形態にお
いて、電気化学セルがエレクトロクロミック表示素子である。
【0037】
本発明の第3の実施形態では、電気化学セルを形成する方法を提供する。該方法は、第
1の導電層を形成する;第1の導電層の上に、互いに離間した複数の隣接する金属酸化物
セルを含む金属酸化物層を形成する;金属酸化物層の上に有機溶媒インクから形成された
機能色素層を形成する;および機能色素層と第2の導電層との間に電解質を提供する:こ
とを含み、第1および第2の導電層のうち少なくとも一つが透明であることを特徴とする

【0038】
一実施形態において、有機溶媒インクは第1の溶媒および第2の溶媒を含む。別の実施
形態において、第1の溶媒および第2の溶媒は異なる沸点を有する。別の実施形態におい
て、第1の溶媒は第2の溶媒の沸点よりも高い沸点を有する。別の実施形態において、第
1の溶媒が略150℃よりも高い沸点を有する。別の実施形態において、第1の溶媒は体
積比5%の有機溶媒インクであり、および第2の溶媒は体積比95%の有機溶媒インクで
ある。別の実施形態において、第1の溶媒は体積比40%未満の有機溶媒インクである。
別の実施形態において、第1の溶媒が1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンであり、
および第2の溶媒が3−メチル−2−オキサゾリジノンである。
【0039】
一実施形態において、第1の導電層の上に形成され、および複数の隣接する金属酸化物
セルのそれぞれを囲繞する分離手段を形成する:ことをさらに含む。別の実施形態におい
て、金属酸化物層が第1の導電層の上にインクジェット印刷される。別の実施形態におい
て、金属酸化物層が第1の導電層の上に1ステップでインクジェット印刷される。別の実
施形態において、有機溶媒インクが金属酸化物層の隣接する金属酸化物セルの上にインク
ジェット印刷される。別の実施形態において、第1の導電層が透明であり、および該方法
は機能色素層の少なくとも1つの透明な導電層とは反対側に反射体層を提供する:ことを
さらに含む。
【0040】
一実施形態において、該方法は:電解質と第2の導電層との間に電極触媒層を提供する
:ことをさらに含む。別の実施形態において、該方法は、第1の導電層を第1の絶縁基板
の上に形成することによって、第1の絶縁基板と金属酸化物層とが第1の導電層の反対側
にある:ことをさらに含む。別の実施形態において、該方法は、第2の導電層を第2の絶
縁基板の上に形成することによって、第2の絶縁基板と電解質とが第1の導電層の互いに
反対側にある:ことをさらに含む。
【0041】
本発明の第4の実施形態では、電気化学セルを形成する方法を提供する。該方法は、第
1の導電層を形成する;第1の導電層の上に金属酸化物層を形成する;金属酸化物層の上
に、第1の溶媒および第2の溶媒を含む二成分有機溶媒インクから形成された機能色素層
を形成する;第2の導電層を形成する;および機能色素層と第2の導電層との間に電解質
を提供する:ことを含み、第1および第2の導電層のうち少なくとも一つが透明であるこ
とを特徴とする。
【0042】
一実施形態において、第1の溶媒および第2の溶媒は異なる沸点を有する。別の実施形
態において、第1の溶媒は第2の溶媒の沸点よりも高い沸点を有する。別の実施形態にお
いて、第1の溶媒は略150℃よりも高い沸点を有する。別の実施形態において、第1の
溶媒が体積比5%の二成分溶媒インクであり、および第2の溶媒が体積比95%の二成分
溶媒インクである。別の実施形態において、第1の溶媒が体積比40%未満の二成分溶媒
インクである。別の実施形態において、第1の溶媒が1,3−ジメチル−2−イミダゾリ
ジノンであり、および第2の溶媒が3−メチル−2−オキサゾリジノンである。
【0043】
別の実施形態において、金属酸化物層が第1の導電層の上にインクジェット印刷される
。別の実施形態において、金属酸化物層が第1の導電層の上に1ステップでインクジェッ
ト印刷される。別の実施形態において、二成分溶媒インクが金属酸化物層の隣接する金属
酸化物セルの上にインクジェット印刷される。別の実施形態において、第1の導電層が透
明であり、および機能色素層の少なくとも1つの透明な導電層とは反対側に反射体層を提
供する:ことをさらに含む。
【0044】
一実施形態において、該方法は電解質と第2の導電層との間に電極触媒層を提供する:
ことをさらに含む。別の実施形態において、該方法は第1の導電層を第1の絶縁基板の上
に形成することによって、第1の絶縁基板と金属酸化物層とが第1の導電層の反対側にあ
る:ことをさらに含む。一実施形態において、第2の導電層を第2の絶縁基板の上に形成
することによって、第2の絶縁基板と電解質とが第1の導電層の互いに反対側にある:こ
とをさらに含む。
【発明の効果】
【0045】
上記構成によれば、インクジェット印刷を使用する本発明の電気化学セルの製作方法は
、フォーマットのスケーリング(拡大または縮小)に機械的ハードウェアへの再投資を必
要としないため、スクリーン印刷による製作よりも有利である。この理由は、インクジェ
ットの製作がソフトウェア制御され、および新しいスクリーンを発注する費用を伴わずに
ソフトウェアを再構成できるからである。さらに、パターンスクリーンは約100回の使
用しか持続しないため、インクジェットヘッドはパターンスクリーンよりも大幅に耐久性
が高いという効果がある。
【0046】
さらに、インクジェットの製作によって可能となるドロップオンデマンドの配列は、ス
クリーン印刷よりは無駄が少ない。蒸着したそれぞれの層を乾燥させ次にその上に印刷し
て厚い蒸着を生成する従来のインクジェット上書きとは異なり、閉じ込めた領域に大量の
液体をドーズして所要の蒸着厚さを提供するインクジェット塗りつぶし技法は、破壊のな
い金属酸化物を生成することが、これまで示されてきた。さらに、塗りつぶしを可能にす
るために使用されるバンク構造の使用を介した表面の閉じ込めによって、長い範囲にわた
る均一な材料分布を、およびしたがって均一および再現可能な性能を確保する。さらに、
バンク構造の使用を介した表面の閉じ込めによって、色分解による異なる色に着色された
セル間の画質を向上させる。
【0047】
バンク構造には任意の適当な材料を使用することができる。しかしながら、これら材料
をポリマー、およびより好ましくはポリイミドのパターンとして蒸着することが好ましい

【0048】
上述の説明は例示目的のみになされ、および、当業者によっておよび本発明の範囲から
逸脱することなく修正することができることが理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】典型的な先行技術の色素増感型太陽電池(DSSC)を示す図。
【図2】別の先行技術のDSSCを示す図。
【図3】先行技術の多色型DSSCを示す図。
【図4】本発明の第1の実施形態の電気化学セルを示す図。
【図5】本発明の電気化学セルの製作のための工程フロー図。
【図6】本発明の第2の実施形態の電気化学セルを示す図。
【図7】ピラミッド状の金属酸化物形状をみとめる正方形の画素セルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の実施形態を、さらに細かく例示する目的のためのみに、および図面に基
づいて説明する。本発明は、色素増感型太陽電池(DSSC)またはエレクトロクロミッ
ク表示素子(ECD)などの電気化学セルに関する。図4を参照にすると、本発明のある
電気化学セル400は、第1の透明な絶縁基板層401;第1の透明な導電性酸化物(T
CO)電極層402;金属酸化物層403;増感剤(色素)/エレクトロクロミック材料
層404;電解質層405;第2のTCO電極層406;および第2の透明な絶縁基板層
407を含む。
【0051】
第1および第2の透明な絶縁基板層401、407は好ましくはガラスまたはプラスチ
ックである。金属酸化物層403は、好ましくは二酸化チタン(Ti02)および半導体
である。
【0052】
金属酸化物層403は好ましくは、その表面上への増感剤(色素)/エレクトロクロミ
ック材料層404の密着を促進する材料であることが望ましい。加えて、金属酸化物40
3の粒子は合理的に光透過性でなければならない。500nmよりも大きい粒子は不透明
であると予測され、および一般的には本発明における用途において適切とみなされない。
このような大きな粒子もまた、インクジェットノズルの閉塞を起こしうる。
【0053】
本発明の第1の実施形態において、金属酸化物層403を塗布する前に、第1のTCO
層402の上にバンク構造410が形成され、そのため、金属酸化物層403は絶縁され
たセルから形成される。一実施形態において、バンク構造410はポリマーまたはポリイ
ミドから形成されてもよい。
【0054】
好ましくは、金属酸化物層403を形成するために使用される金属酸化物の特性に応じ
て、バンク構造はその一部が疎水性および/または疎油性であり、一方TCO層402は
親水性および/または親油性である。
【0055】
バンク構造410は、第1のTCO層402上の個々の画素セルのマトリクスを形成す
る任意の所望の形状をとることができ、該形状内において絶縁された金属酸化物セルが形
成されるため、どの金属酸化物もバンク構造410と架橋して短絡をきたすことはない。
【0056】
電気化学セルがECDである場合、すべての金属酸化物セル(画素)が互いに電気的に
絶縁され、画像形成を制御することが必要不可欠である。電気化学セルがDSSCである
場合は金属酸化物セルの電気的な絶縁性は必要不可欠ではないが、活性デバイス領域全体
にわたって金属酸化物の均一な分布を維持することが好ましい。
【0057】
ECD電気化学セルは、複数のマイクロ電気化学セルから成るとみなすことができ、お
よび異なるマイクロ電気化学セルは、異なる色に着色された電子発色団層404を有して
もよい。各マイクロ電気化学セルは他のマイクロ電気化学セルとは離れており、これらは
ともにバンク構造410によってECDを形成する。各マイクロ電気化学セルの幅は好ま
しくは20μmから500μmである。
【0058】
本発明の別の実施形態において、電解質層405と第2のTCO層406との間に電極
触媒層を形成することができる。電極触媒層は好ましくは厚さが2mmを超え、および電
解質の再生を促進するよう選択される。DSSCの場合有効な電極触媒性金属は、白金群
の金属;白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウムまたはオスミウムから選
択することができる。電極触媒層の使用によって本発明の電気化学セルの全体的性能を改
善する。
【0059】
本発明は、本発明の電気化学セル400を製作する方法にも関連する。図5は本発明の
電気化学セル400の製作のための工程フロー図を示す。
【0060】
TCO層402は、図5aの第1の透明な絶縁基板層401の上に形成される。好まし
くはTCO層402は、8〜10Ω/sqの表面抵抗率を有し、およびインジウムスズ酸
化物またはフッ素をドープした酸化スズから成る。フッ素をドープした酸化スズは、安価
でありおよび高温焼結段階中に不活性であるため、好ましい。
【0061】
次に、バンク構造410が図5bのTCO層402の上に製作される。本発明の第1の
実施形態において、バンク構造410は正方形の画素セルのマトリクスを形成する。TC
O層402の上にバンク構造410を形成するために、光反応性ポリイミドソース材料が
TCO層402の上に被覆され、および乾燥される。次に、画素セルのマトリクスの形状
のマスクがTCO層402に塗布される。紫外(UV)光がマスクを介して照射され、曝
露領域にポリイミドの架橋をきたす。非曝露領域は化学現像によって除去され、およびバ
ンク構造410が350℃で熱硬化される。
【0062】
次に、バンク構造410を有するTCO層402を、酸素または酸素と四フッ化炭素プ
ラズマによって処理し、曝露領域に残存するポリイミドを除去する。次に、四フッ化炭素
(CF4)プラズマ処理が加えられ、その結果、ポリイミドバンク構造410が疎水性と
なり、一方TCO層402の親水特性は保持したままである。
【0063】
次に、上方にバンク構造410を形成したTCO層402の上に、金属酸化物層403
がインクジェット印刷される。金属酸化物インクは、分離した画素セルのそれぞれに噴射
され、図5cの金属酸化物層403を形成する。好ましくは、体積分率(v/v)が10
%以下の濃度で、直径500nm未満の粒子を含有する水性のコロイド二酸化チタン(T
iO2)インクが使用される。溶液とインクジェットヘッドとの適合性を確保するために
、金属酸化物インクは他の添加剤を含有してもよい。蒸着の後、金属酸化物層403を乾
燥させ、および次に300℃以上で空気中で焼結する。
【0064】
デバイス領域全体にわたる金属酸化物層403の厚さの精密制御は、DSSCまたはE
CDの画像をその上に形成できる均一なキャンバスを提供するためには必要不可欠である
。金属酸化物層403の厚さは水性コロイドTi02インクの濃度、および蒸着体積によ
って制御される。結果生じる金属酸化物層403のピーク厚さの偏差は、基板面積50c
2に対して画素セル間で1.5%未満である。
【0065】
次に増感剤(色素)404は、画素セルのそれぞれにインクジェット印刷され、その上
に金属酸化物層403が形成される。この製作方法によって、バンク構造410の各画素
セルが画像の画素に対応するカラー画像を作成するために、異なる色の増感剤(色素)4
04を異なる画素セルに塗布することによって、異なる色の画素セルを形成することがで
きる。したがって、200ドット/インチ(dpi)以上の解像度を有する高画像品質の
電気化学セルを作成することができる。異なる色の増感剤(色素)404は図5dの金属
酸化物層403に吸収される。増感剤(色素)404を固定した後、完全な構造をエタノ
ール中で洗浄し窒素中で吹き付け乾燥することによって、過剰な増感剤(色素)404お
よび残存する溶媒を除去する。
【0066】
次に、その上方に多孔性の金属酸化物層403および増感剤(色素)層404が形成さ
れた第1のTCO層402には、第2のTCO層406が組み付けられる。両電極層40
2、406は周辺スペーサと一緒にサンドイッチされ、電極間ギャップを形成し、その後
電解質層405を充填する。ひとたび電解質層405が導入されると、残りの開口部を密
封することによってDSSCが完成する。
【0067】
本発明の電気化学セルにおいて電極触媒層が所望される場合、次に、電極層402、4
06が一緒にサンドイッチされる前に、電極触媒層が第2のTCO層406の上に形成さ
れる。
【0068】
インクジェットヘッドは、TCO層402上の精密位置に明確に定義された水性コロイ
ド金属酸化物インク滴を±1.5%未満の体積のばらつきで提供することができる。さら
にこの体積精度1.5%以下とは、市販のプリンターヘッドの精度を表している。この数
値を1%以下に低下させることができるいくつかの産業用ヘッドおよび補完的技術が利用
可能である。
【0069】
インクジェット蒸着によって、所要のバンク構造410の各画素セル内にあるTCO層
402の上への金属酸化物の正確な位置決めが可能である。このようにして、金属酸化物
層403の厚さを精密に制御することができ、および均一な多孔性の金属酸化物層403
を得ることができる。
【0070】
バンク構造410の少なくとも一部が疎水性および/または疎油性であり、およびTC
O層402の少なくとも一部が親水性および/または親油性である場合、バンク構造41
0は蒸着した金属酸化物インクに反発し、こうして標的表面の上で蒸着した金属酸化物イ
ンク滴の最終位置を修正し、およびインクジェットノズル軸からの横方向の固有の逸脱±
15μmを補正する。この反発は、とりわけECDの場合、バンク構造410と架橋する
金属酸化物403を原因とする画素短絡を防止するために有益である。またバンク構造4
10はECD画素どうしの間に、そうでなければバンクレスフリー印刷に必要な30μm
のスペーシングよりも、より狭いギャップを形成することができ、これによってECDで
はより高い活性領域率を得ることができるとともに、画像品質を高めることができる。
【0071】
金属酸化物層403はそれが有効に機能するために数ミクロンの厚さを持つべきである
。伝統的なインクジェット印刷では、蒸着した各を層乾燥および焼結し、および次に別の
インクの層で上書きするなどを行う上書き技法を使用することによって、滴の厚さを所望
の形状に形成し、所望の厚さに到達させることができる。
【0072】
しかしながら、本発明の方法は塗りつぶし技法を用いており、これによって体積の大き
い金属酸化物インクが1回の通過でバンク構造410の各画素セルへと導入される。バン
ク構造410は、金属酸化物インクが隣接する画素セルへと広がることを防止する。この
工程を使用すると、所望の厚さの金属酸化物層403を生成するためには1回の乾燥およ
び焼結を必要とするのみである。バンク構造410は、色の付いた増感剤(色素)404
が隣接する画素セルへと広がることも防止し、したがって色のにじみも防止する。
【0073】
増感剤(色素)インク溶液は毛管作用を介して多孔性の金属酸化物層403へと吸収さ
れる。仮にバンク構造410を使用して金属酸化物層403を分離画素セルへと分離しな
いとしたら、その場合、インクジェットヘッドからの噴射後ただちに増感剤(色素)40
4が金属酸化物層403全体に広がり、および画像品質は低下したであろう。
【0074】
蒸着したインクは多孔性の金属酸化物層403全体のみに広がるため、連続する金属酸
化物層403を使用することによって、インクジェット色素上書きによる画像の色の深度
の制御が困難になる。解像度および色のコントラストを高めるため、および増感剤(色素
)404の色の深度を制御できるようにするため、金属酸化物層403を分離した画素セ
ルへと分離し、その結果あるセルに導入された増感剤(色素)404はそのセル内に残存
する。このようにしてバンク構造410を使用して、横方向の液体の分散を防止する。
【0075】
さらに、バンク構造410を使用することによって、金属酸化物層403は均一なおよ
び再現可能な全体の断面形状を持つことができ、画像全体にわたって色の深度を均一にす
ることに役立っている。所要の画像品質を提供するため、バンク構造410によって画成
された画素セルは実行可能なかぎり小さいことが望ましい。
【0076】
DSSCの場合、すべてのカラー画素セルが、増感剤(色素)404を使用して着色さ
れるよう要求されているわけではない。しかし、画像に使用される少なくともいくつかの
色は、好ましくは増感剤(色素)404で着色されるべきである。画像の残りの画素セル
は、画像には寄与するが電気化学セル発電には寄与しない「不活性」色素を用いて製作す
ることができる。「不活性」色素と記載されているが、「不活性」色素は金属酸化物層4
03と化学的に結合して良好な画像安定性を提供するべきである。一色のみの着色増感剤
(色素)404が使用される場合、黒色が好ましい。その理由は黒色の増感剤(色素)4
04はエネルギー変換効率が高いからである。
【0077】
しかしながら、すべての画素セルを電気化学セル発電に寄与する増感剤(色素)404
を用いて着色して、出力を最大化することが好ましい。その理由は、複数の分離した画素
セルを使用すると、本発明の電気化学セルの面積あたりのエネルギー変換効率を低下させ
るからである。さらに、一部の画素セルのみが電気化学セル発電に寄与する増感剤(色素
)404を用いて着色される場合、本発明の電気化学セルのエネルギー変換効率はさらに
低下する。
【0078】
増感剤(色素)404の色の深度は、バンク構造410の各画素セルに印刷された滴の
大きさおよび数の調整によって制御することができる。さらに増感剤(色素)404の色
の深度は、金属酸化物層403の厚さの調整によって制御することができる。
【0079】
写真品質の画像を提供するために、少なくとも4色のインク;画像構成に応じてシアン
、マゼンタ、黄および黒、または赤、緑、青および黒が必要である。これら着色された増
感剤(色素)404の多くはすでに存在しており、すなわち、RuII(dmbpy)2
dcbpy)C12は公知の黄色の色素であり、N719は公知の紫/赤色の色素であり
、およびFeII錯体は公知の青色の色素である。一つの画素セル内にカラーミックスを作
成するために、前もって定められた量の1色を該画素セルに噴射して、その後異なる量の
別の色で上書きしてもよい。
【0080】
公知のDSSC浸漬溶液は、金属酸化物の表面に色素の分子を固定するために、低沸点
の溶媒に溶解した色素を含む。しかしながら、これら溶液はインクジェット印刷技術との
併用には適していない。その理由は、インクジェットヘッドノズルのプレートで発生しう
る溶媒の急速な蒸発によって、ノズル周辺に溶質が蓄積し、その結果閉塞をきたしうるか
らである。
【0081】
さらに、インクジェット印刷による1回の通過でデバイスの表面上に蒸着できる液体は
非常に少量であり、典型的には0.5nl/ピクセルであり、および低沸点の溶媒が使用
されたとしたら室温では急速に蒸発して乾燥状態となり、完全に乾燥するまで10秒もか
からないであろう。この時間規模は、色素が金属酸化物の表面に吸収されるために必要な
時間規模、典型的には24時間と比較すると短すぎる。したがって、典型的な浸漬用の色
素溶液はインクジェット蒸着には適していない。
【0082】
あるいは、インクジェット印刷が可能なインクを、色素を高沸点の溶媒に溶解すること
によって形成して、ノズルの閉塞および印刷された表面の乾燥の問題点を軽減することも
できるであろう。しかしながら、高沸点の溶媒は有害であることが多く、典型的には粘性
がありこの溶媒のインクジェット印刷を困難にする。これらの高い粘性は、蒸着したイン
クの金属酸化物膜への浸透を低下させる。さらに、金属酸化物の表面に色素が固定された
後は、色素分子に損害を与えうる温度まで加熱しない限り、溶媒を除去することは難しい
であろう。
【0083】
粘性が低く、除去が簡単で、沸点の高い「完全な溶媒」が特定できたと仮定すると、次
に印刷した後溶媒は、色素が化学吸着するために十分長い時間、典型的には0.3mMの
色素濃度では24時間、残存してなければならないであろう。この時間規模は達成可能で
あるが、各工程が数時間ではなく数分以内に完了すべき大量生産には有利ではない。この
問題点を克服するひとつの方法は色素の濃度を上げることである。文献による報告は、色
素濃度を0.3mMから21mMへと増加させることによって、色素吸収時間が24時間
から10分に減少することを示している。
【0084】
このような高濃度のインクは蒸着表面上での色素固定時間を改善する(短縮する)が、
この概念的インクは、印刷された画像のグレースケールの目盛を減少させ、0.3mMの
インク33滴が、10mMの濃度1滴と同じ色素ローディングを含むまでになるであろう

【0085】
したがって、たとえ「完全な溶媒」を見出すことができたとしても、金属酸化物層の上
での色素固定時間を短縮するために高濃度の色素を使用しなければならないことを理由に
グレースケール制御が不足するため、画像品質が大幅に低下するであろう。
【0086】
したがって、本発明の好ましい実施形態において、増感剤(色素)404は二成分溶媒
溶液中で溶解され、低沸点のバルク溶媒および高沸点の残存溶媒を含むインクジェット印
刷可能なインクを形成する。例えば二成分溶媒インクは、体積比5%のDMI(1,3−
ジメチル−2−イミダゾリジノン)溶媒および体積比95%のNMO(3−メチル−2−
オキサゾリジノン)溶媒中の1mMのN719色素を含んでもよい。NMOの沸点は88
℃であり、DMIの沸点は226℃である。
【0087】
好ましくは、残存する溶媒は150℃よりも大幅に高い沸点を有する。さらに好ましく
は、残存する溶媒は体積比40%未満の二成分溶媒インクである。
【0088】
本発明の二成分溶媒インクがインクジェット印刷に使用される場合、ノズルからの二成
分溶媒インクの噴出に引き続き、バルク溶媒は残存する溶媒を表面上に残したまま、非常
に急速に蒸発する。残存する溶媒の沸点は高いため、インクは印刷された表面の上では液
体のままであり、金属酸化物層と結合する時間が確実により長くなる。さらに、バルク溶
媒の蒸発によって、色素濃度を約1mMから10mM超へと増加させるため、これによっ
て色素の吸収時間を減少させる一方、インクジェットのグレースケール制御を保つ。要す
るに、高濃度の色素インク溶液が印刷後に標的表面の上に形成される。たとえば、上記例
の体積比5%のDMIおよび体積比95%のNMO中の1mMのN719は、HMOが印
刷された表面から蒸発した後、DMI中の20mMのN719へと変換されるであろう。
【0089】
本発明の二成分溶媒インクは、インクジェットヘッドのノズルを閉塞しないという点で
、インクジェット印刷に役立つ。その理由は、バルク溶媒はノズル領域から簡単に蒸発し
うるが、残存する溶媒は液体のまま残り、およびノズル周辺での乾燥した溶質の形成を防
止するからである。
【0090】
さらに、インク物理的特性はバルク溶媒によって支配され、より沸点の高い残存する溶
媒よりも、沸点が低く多くの場合粘性の低いバルク溶媒によって、より簡単に合成インク
をインクジェット印刷に適したものとするであろう。
【0091】
最終的に、単一の高沸点溶媒インクに記載された場合とは異なり、二成分インク溶液は
微量のインク滴を印刷することができるため正確なグレースケール目盛制御を可能にする
。例えば、上記に記載された1mMの二成分溶媒インクを1滴印刷することは、純粋なD
MI中の20mMの色素0.05滴を印刷することと等価である。
【0092】
バルク溶媒はインクの必要な特性を提供する一方、残存する溶媒はバルク溶媒の濃度を
変更するために使用することができ、および短い工程時間内で色素分子を金属酸化物の表
面上に固定させることができる。二成分溶媒インクの工程時間は、単一溶媒タイプのイン
クと比較して、10分の1未満とすることもできる。さらに、二成分溶媒インクの使用に
よって、インクジェットヘッドからの安定したインク噴出を提供する。
【0093】
インクの色を作成するために(一剤または複数の)溶媒と混合される色素は、溶解性で
なければならない。さらに、溶媒は色素と混和性および適合性でなければならない。さら
に、インクの表面張力および粘性を調整するために、界面活性剤をインクに添加すること
ができる。
【0094】
本発明の別の実施形態において、不活性、拡散性、白色の反射体層412を、図6に示
すように増感剤(色素)層404と第2のTCO層406との間に設けて、電気化学セル
の画像品質を高めることができる。白色の反射体層412は、これと対比して画像を見る
ことができる明瞭なバックグラウンドを提供する。また、白色の反射体層412は増感剤
(色素)層404を通る光経路を2倍にして、電気化学セルの効率を高めることができる
。白色の反射体層412は大きな(ミクロン単位の)Ti02粒子から形成してもよい。
この効果を提供するために、白色の反射体層を他の位置に設けることができるのは明らか
である。例えば、第2の導電層および対応する基板が透明な場合、反射体層を基板の後方
または基板と導電層との間に設けてもよい。さらに、好ましいことではあるが、反射体層
が白色である必要はない−代わりに、所望の画像に応じて他の色を使用することができる

【0095】
塗りつぶし技法を使用して金属酸化物インクで各画素セルを充填する場合、正方形の画
素セルのマトリクスを有するバンク構造410は、図7に示す疑似ピラミッド状の乾燥し
た金属酸化物形状を生成する。バンク構造410は、蒸着した金属酸化物インクをTCO
層402の画素セル内の局所領域に閉じ込めるよう作用する。この閉じ込めがなければ、
金属酸化物インクは、蒸着のあとTCO層402全体に自由に分布し、連続する金属酸化
物層403を形成したであろう。
【0096】
本発明のバンク構造410は、連続する金属酸化物層403と比較して、破壊なしに曲
げ応力に対応する金属酸化物層403の力を増加させる。これによって、プラスチック製
の第1の絶縁基板401など可撓性の基板401を活用することができる。
【0097】
本発明の第1の実施形態において、バンク構造410は図9に示す正方形の画素セルの
マトリクスを含む。しかしながら、画素セルは正方形であることに限定されない。本発明
の電気化学セル400がECDである場合、活性マトリクスバックプレーン製作技術と適
合性があることから、正方形の画素が好ましい。しかしながら、本発明の電気化学セル4
00がDSSCである場合、正方形、円形および六角形の画素セルなどいくつかの異なる
画素セルの形状を使用することができる。
【0098】
本発明のDSSCは、エネルギー変換効率(η)、開回路電圧(VOC)、短絡回路電流
(ISC)および充填比(FF)がそれぞれ5.0%、0.48V、15mA/cm2およ
び56%となるよう作成された。50cm2の基板面積に対する本発明の電気化学セルの
エネルギー変換効率のばらつきは、1.5%未満である。その理由は、本発明の方法のイ
ンクジェット製作の工程安定性である。
【0099】
より広いバンク構造410は、画像品質の低下によってECDの動作に、および活性領
域の減少に起因した効率の低下によってDSSCの動作に有害である。したがって、バン
ク構造410の好ましい幅は0.2μmから20μmである。0.2μmは、費用効果の
高いフォトリソグラフィによるバンク構造410の製作の限界解像度である。20μmは
、最低の公知の表示解像度72dpiと比較して、画像および性能の深刻な劣化が阻害的
にならない、最大のバンク構造410の有効幅と考えられている。インクジェット技術を
用いることによって、1mm2未満という親水性画素セルの大きさは簡単に達成可能であ
るが、数百ミクロン未満の長さが好ましい。
【0100】
DSSCの場合、光の吸収は多孔性の金属酸化物層403の厚さに比例する。薄すぎる
場合、入射光の画分は金属酸化物層403中を制約を受けずに通過するが、電位効率の損
失を伴う。厚すぎる場合は、ひとたび有用な光がすべて完全に吸収されてしまうと、残り
の金属酸化物層403の厚さはどれも冗長となる。したがって好ましくは、蒸着した金属
酸化物層403の厚さは0.5μmから20μmの間にあるべきである。
【0101】
さらに、インクジェット印刷によって生成された金属酸化物層403の厚さが、スクリ
ーン印刷と比較して均一であることから、インクジェット印刷を使用する場合は最適な金
属酸化物層403の厚さをより薄くすることができる。
【0102】
さらに、スクリーン印刷の場合、インクの粘性はインクジェット印刷に好ましい粘性よ
りもはるかに高くなければならない。したがって、粘性を増加させるために添加された材
料は焼結工程で除去しなければならない。その結果、蒸着後で焼結前の金属酸化物層40
3の厚さは、スクリーン印刷のほうがインクジェット印刷よりも大きくならなければなら
ない。
【0103】
金属酸化物インクを塗布する前に、バンク構造410を使用して、TCO層402の上
に分離した画素セルのマトリクスを形成するが、本発明はバンクに限定されない。TCO
層402の内部にトラフを作成するなど、分離した画素セルをTCO層402の上に形成
する任意の方法を使用してもよい。
【0104】
さらに、本発明の電気化学セルを機能させるために、第1の透明な導電性酸化物層40
2を酸化物材料から形成することは必要不可欠ではない。さらに、本発明の電気化学セル
を機能させるために、第2の透明な導電性酸化物層406が透明である、または酸化物材
料から形成することは必要不可欠ではない。実際、第2の基板(または完成したデバイス
中におけるいずれかの基板)を提供することは必要不可欠ではない。
【符号の説明】
【0105】
400・・・電気化学セル、401・・・第1の絶縁基板層、402・・・第1の導電
性酸化物(TCO)電極層402、403・・・金属酸化物層、404・・・増感剤(色
素)層、405・・・電解質層、406・・・第2のTCO電極層、407・・・第2の
絶縁基板層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電層と、
前記第1の導電層の上に設けられた、互いに離間した複数の隣接する金属酸化物セルを
含む金属酸化物層と、
前記金属酸化物層の上に設けられた機能色素層と、
第2の導電層と、
前記機能色素層と第2の導電層との間に設けられた電解質と、を含み、
前記第1の導電層および第2の導電層のうち少なくとも一つが透明であり、
前記機能色素層が有機溶媒を含むインクからから形成された
ことを特徴とする電気化学セル。
【請求項2】
第1の導電層と、第1の導電層の上に設けられた、互いに離間した複数の隣接する金属
酸化物セルを含む金属酸化物層と、金属酸化物層の上に設けられた機能色素層と、第2の
導電層と、前記機能色素層と前記第2の導電層との間に設けられた電解質と、を含む電気
化学セルの製造方法であって、
前記機能色素層を、有機溶媒を含む第1のインクを用いて形成すること、
を特徴とする電気化学セルの製造方法。
【請求項3】
第1の導電層と、第1の導電層の上に設けられた、互いに離間した複数の隣接する金属
酸化物セルを含む金属酸化物層と、金属酸化物層の上に設けられた機能色素層と、第2の
導電層と、前記機能色素層と前記第2の導電層との間に設けられた電解質と、を含む電気
化学セルの製造方法であって、
前記機能色素層を、第1の溶媒と第2の溶媒とを含む第1のインクを用いて形成するこ
と、
を特徴とする電気化学セルの製造方法。
【請求項4】
第1の溶および第2の溶媒が異なる沸点を有することを特徴とする請求項3に記載の電
気化学セルの製造方法。
【請求項5】
前記第1の溶媒が前記第2の溶媒の沸点よりも高い沸点を有することを特徴とする請求
項3又は4に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項6】
前記第1の溶媒が略150℃よりも高い沸点を有することを特徴とする請求項3から請
求項5のいずれかに記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項7】
前記第1の溶媒は、前記第1のインクに体積で5%含まれ、
前記第2の溶媒は、前記第1のインクに体積で95%含まれることを特徴とする請求項
3乃至6のいずれかに記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項8】
前記第1の溶媒は、前記第1のインクに体積で40%未満含まれることを特徴とする請
求項3から6のいずれかに記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項9】
前記第1の溶媒が1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンであり、
前記第2の溶媒が3−メチル−2−オキサゾリジノンであることを特徴とする請求項3
から8のいずれかに記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項10】
前記機能色素層を、前記第1のインクに加えて、前記第1のインクに含まれる第1の色
素とは異なる色を呈する第2の色素を含む第2のインクを用いて形成する、請求項3から
9のいずれかに記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項11】
前記第1の色素及び前記第2の色素のうち少なくとも一つが電気化学セルの発電に寄与
することを特徴とする請求項10に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項12】
機能色素層の色の深度は、前記第1のインクの滴の大きさを調製することにより設定さ
れることを特徴とする請求項2から11のいずれかに記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項13】
前記機能色素層の色の深度は、前記第1のインクの液滴の数を調製することによって設
定されることを特徴とする請求項2から12のいずれかに記載の電気化学セルの製造方法

【請求項14】
前記機能色素層の色の深度は、前記第1のインクに含まれる色素の濃度を調整すること
により設定されることを特徴とする請求項2から13のいずれかに記載の電気化学セルの
製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−94520(P2012−94520A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245313(P2011−245313)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【分割の表示】特願2006−316008(P2006−316008)の分割
【原出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】