説明

電気化学デバイス

【課題】引出導体にビア導体部を用いた場合でも、該ビア導体部が設けられた部分がリフロー半田付け時の温度変化や実装後の温度変化等に伴う熱膨張収縮に基づいて生じる応力によって破損することを防止できる電気化学デバイスを提供する。
【解決手段】第1引出導体50は板状部22(上層22a)の厚さ方向に沿うビア導体部52を有していて、該ビア導体部52は板状部22の中心からずれた位置に設けられている。つまり、ビア導体部52は、リフロー半田付け時の温度変化や実装後の温度変化等に伴う熱膨張収縮に基づいて生じる応力が集中し易い板状部22の中心CTを避けて設けられているので、該熱膨張収縮に基づいて生じる応力が板状部22に加わっても、該板状部22のビア導体部52が設けられた部分が該応力によって破損する恐れを確実に回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板等の実装相手に対する表面実装を可能とした電気二重層キャパシタ等の電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、リフロー半田付けによって回路基板等の実装相手に対する表面実装を可能とした電気二重層キャパシタが開示されている。両文献1及び2に開示された電気二重層キャパシタは、基本的には、電解液を含浸した蓄電素子と、該蓄電素子を収容した密封容器と、該密封容器の下面に設けられた第1端子及び第2端子と、蓄電素子と第1端子とを電気的に接続する第1引出導体と、蓄電素子と第2端子とを電気的に接続する第2引出導体とを具備している。
【0003】
これら電気二重層キャパシタにあっては、第1端子,第2端子,第1引出導体及び第2引出導体の形成を容易とするため、密封容器の下壁をセラミック等の非金属材から成る別部品によって構成し、該別部品に導体ペーストを印刷し焼成することによってこれらを形成する手法が採用されている。
【0004】
第1引出導体及び第2引出導体がリフロー半田付け時や実装後に被り得る損傷、例えばクラックや腐食等を回避するには、該第1引出導体及び第2引出導体の露出面積を極力小さくすることが望ましいと言える。これを実現するため、特許文献2に開示された電気二重層キャパシタでは、第1引出導体及び第2引出導体の一方にビア導体部(孔に導体を充填したもの)を用いてその露出面積の低減を図っている。
【0005】
しかしながら、第1引出導体及び第2引出導体の少なくとも一方にビア導体部を用いる場合には、該ビア導体部が設けられた部分の強度が他の部分に比べて低下するため、同部分がリフロー半田付け時の温度変化や実装後の温度変化等に伴う熱膨張収縮に基づいて生じる応力によって破損する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−216952
【特許文献2】特開2007−201382
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、引出導体にビア導体部を用いた場合でも、該ビア導体部が設けられた部分がリフロー半田付け時の温度変化や実装後の温度変化等に伴う熱膨張収縮に基づいて生じる応力によって破損することを防止できる電気化学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、蓄電または発電が可能な電気化学素子を収容した密封容器の略矩形の下面に少なくとも1対の端子を有し、且つ、前記電気化学素子と前記各端子とを電気的に接続する少なくとも1対の引出導体を有する電気化学デバイスであって、前記各引出導体の少なくとも1つは、前記密封容器の下面を構成する部分にその厚さ方向に沿うビア導体部を有していると共に該ビア導体部と電気的に接続する円形部分及び該円形部分と連続する帯状部分を備えた導体部を有しており、前記ビア導体部は、前記密封容器を下面からみたとき、前記密封容器の下面の中心からずれた位置に設けられており、前記導体部の帯状部分は、非直線形を成している。
【0009】
この電気化学デバイスによれば、ビア導体部は、リフロー半田付け時の温度変化や実装後の温度変化等に伴う熱膨張収縮に基づいて生じる応力が集中し易い板状部の中心を避けて設けられているので、該熱膨張収縮に基づいて生じる応力が板状部に加わっても、該板状部のビア導体部が設けられた部分が該応力によって破損する恐れを確実に回避することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、引出導体にビア導体部を用いた場合でも、該ビア導体部が設けられた部分がリフロー半田付け時の温度変化や実装後の温度変化等に伴う熱膨張収縮に基づいて生じる応力によって破損することを防止できる電気化学デバイスを提供することができる。
【0011】
本発明の前記目的とそれ以外の目的と、構成特徴と、作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る電気化学デバイスの上面図である。
【図2】図1のx1−x1線に沿う断面図である。
【図3】図1に示した電気化学デバイスの下面図である。
【図4】図1から蓄電素子,筒状部及びシールリングを除外した図である。
【図5】図4から板状部の上層を除外した図である。
【図6】図2及び図4に示したビア導体部の位置を説明するための図である。
【図7】図2及び図4に示したビア導体部の位置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜図7は本発明に係る電気化学デバイスを示すもので、図1は電気化学デバイスの上面図、図2は図1のx1−x1線に沿う断面図、図3は図1に示した電気化学デバイスの下面図、図4は図1から蓄電素子,筒状部及びシールリングを除外した図、図5は図4から板状部の上層を除外した図、図6は図2及び図4に示したビア導体部の位置を説明するための図、図7は図2及び図4に示したビア導体部の位置の変形例を示す図である。尚、以下の説明では、図1における左右方向を長さ方向、上下方向を幅方向と称する。
【0014】
まず、図面に示した構造の電気化学デバイスを角型のPAS(ポリアセン系有機半導体)キャパシタとして用いた場合について説明する。
【0015】
このPASキャパシタは、図1〜図5に示すように、電解液を含浸した蓄電素子10と、該蓄電素子10を収容した密封容器20と、該密封容器20の下面に設けられた第1端子30及び第2端子40と、蓄電素子10と第1端子30とを電気的に接続する第1引出導体50と、蓄電素子10と第2端子40とを電気的に接続する第2引出導体60とを具備している。
【0016】
蓄電素子10は、上面視形状が矩形の第1極性部11及び第2極性部12と、第1極性部11と第2極性部12との間に介装された上面視形状が矩形のセパレータ13とから構成されている。第1極性部11及び第2極性部12はPASを主成分とした材料から成り、セパレータ13は高イオン透過度を有する材料、例えばガラス繊維,セルロース,レーヨン等の繊維系材料や、ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアミド,ポリイミド等の合成樹脂材料や、その他の材料から成る。
【0017】
第1極性部11の下面は、後述する第1引出導体50の第1導体部51の上面に導電材を介して電気的に接合されている。また、第2極性部12の上面は、後述する密封容器20の筒状部21の上壁21aの下面に導電材を介して電気的に接合されている。さらに、第1極性部11,第2極性部12及びセパレータ13には、プロピレンカーボネート等の溶媒に硼弗化トリエチルメチルアンモニウム等の電解質を所定濃度で溶解して成る電解液が含浸されている。
【0018】
密封容器20は、上面視形状が略矩形の筒状部21と、上面視形状が略矩形の板状部22と、筒状部21と板状部22との間に介装された上面視形状が矩形枠状のシールリング23とから構成されている。筒状部21は、ニッケルとコバルトと鉄の合金であるコバール(KOVAR:米国登録商標),ニッケルと鉄の合金であるアロイ,銅,アルミニウム,ステンレス,ニッケル,金等の金属から成り、板状部22はアルミナセラミックス等の非金属材から成り、シールリング23は筒状部21と同様の金属から成る。
【0019】
筒状部21は、上面視形状が矩形の上壁21aと、該上壁21aの外周縁から下向きに延びる矩形筒状の側壁21bと、該側壁21bの下縁から外側に横向きに延びる鍔21cとを有している。また、鍔21cの下面視幅は、シールリング23の上面視幅と略一致している。さらに、鍔21cの下面は、シールリング23の上面に導電材を介して電気的に接合されている。さらに、シールリング23の下面は、後述する第2引出導体60の第1導体部61の上面に導電材を介して電気的に接合されている。
【0020】
板状部22は、上層22a及び下層22bを有する2層構造を有しており、シールリング23を介して筒状部21の下面開口を閉塞している。また、上層22a及び下層22bの4つの角には、上面視形状が1/4円形の切欠き22a1及び22b1がそれぞれ形成されている。さらに、下層22bにおける長さ方向で対向する2辺の中央には、各辺から内側に窪んだ凹所22b2が形成されている。
【0021】
各凹所22b2は、図5に示すように、窪み深さDaが小さな部分(以下第1窪み部分Daと言う)と、該第1窪み部分Daの両側に存する窪み深さDbが大きな部分(以下第2窪み部分Dbと言う)とを有している。また、各第1窪み部分Daの幅Waは、各凹所22b2の幅Wbよりも小さい。
【0022】
第1端子30は、下面視形状が矩形で、板状部22の下面(下層22bの下面)の長さ方向一端部に設けられている。第2端子40は、下面視形状が矩形で、第1端子30との間に間隔が空くように板状部22の下面(下層22bの下面)の長さ方向他端部に設けられている。第1端子30及び第2端子40は、筒状部21と同様に、コバール,アロイ,銅,アルミニウム,ステンレス,ニッケル,金等の金属から成る。
【0023】
第1端子30及び第2端子40の一方には、極性を区別するための指標(図面では第1端子30の1つの角に設けた切除箇所30a)が設けられている。また、第1端子30の外側縁は、板状部22の下層22bにおける一方の凹所22b2の第1窪み部分Daに達していて、後述する第1引出導体50の第3導体部54の下縁と電気的に接続している。さらに、第2端子40の外側縁は、板状部22の下層22bにおける他方の凹所22b2の第1窪み部分Daに達していて、後述する第2引出導体60の第4導体部64の下縁と電気的に接続している。
【0024】
第1端子30及び第2端子40の外側縁を除く幅は、前記幅Waよりも大きく、且つ、前記幅Wbよりも小さい。また、第1端子30及び第2端子40の外側縁の幅は、前記幅Waと略一致している。
【0025】
第1引出導体50は、板状部22の上層22aの上面中央に設けられ、且つ、上面視形状が矩形の第1導体部51と、板状部22の上層22aに設けられ、且つ、上面視形状が円形のビア導体部52(上層22aの孔に導体を充填したもの)と、板状部22の上層22aと下層22bとの間に設けられ、且つ、上面視形状が略T字形の第2導体部53と、板状部22の下層22bにおける一方の凹所22b2の第1窪み部分Daの側壁に設けられた第3導体部54とから構成されている。つまり、第1引出導体50は、密封容器20の板状部22の厚さ方向に沿うビア導体部52を有している。第1導体部51,ビア導体部52,第2導体部53及び第3導体部54は、筒状部21と同様に、コバール,アロイ,銅,アルミニウム,ステンレス,ニッケル,金等の金属から成る。
【0026】
第1導体部51の上面視形状は、蓄電素子10の第1極性部11の下面視形状と略一致している。また、第2導体部53は、ビア導体部52よりも直径が大きな円形部分53aと、該円形部分53aの外周縁と連続する長さ方向の帯状部分53bと、該帯状部分53bの端と連続し、且つ、一方の凹所22b2の第1窪み部分Daに達する矩形部分53cとを有している。さらに、矩形部分53cの幅は、第3導体部54の幅、つまり、前記幅Waと略一致している。
【0027】
第1導体部51の下面はビア導体部52の上面と電気的に接続し、該ビア導体部52の下面は第2導体部53の円形部分53aの上面と電気的に接続し、該第2導体53の矩形部分53cの外縁は第3導体部54の上縁と電気的に接続している。即ち、密封容器20に収容された蓄電素子10の第1極性部11は、第1引出導体50を介して第1端子30に電気的に接続されている。
【0028】
第2引出導体60は、板状部22の上層22aの上面外周に設けられ、且つ、上面視形状が矩形枠状の第1導体部61と、板状部22の上層22aにおける2つの切欠き22a1の内側面に設けられた第2導体部62と、板状部22の上層22aと下層22bとの間に設けられ、且つ、上面視形状が略T字形の第3導体部63と、板状部22の下層22bにおける他方の凹所22b2の第1窪み部分Daの側壁に設けられた第4導体部64とから構成されている。第1導体部61,第2導体部62,第3導体部63及び第4導体部64は、筒状部21と同様に、コバール,アロイ,銅,アルミニウム,ステンレス,ニッケル,金等の金属から成る。
【0029】
第1導体部61の上面視幅は、シールリング23の上面視幅と略一致している。また、第3導体部63は、第2導体部62が設けられた切欠き22bに沿う2つの円弧部分63と、両円弧部分63を結ぶ幅方向の帯状部分63bと、該帯状部分63bの中央と連続し、且つ、他方の凹所22b2の第1窪み部分Daに達する矩形部分63cとを有している。さらに、矩形部分63cの幅は、第4導体部64の幅、つまり、前記幅Waと略一致している。
【0030】
第1導体部61の切欠き22a1に沿う部分は各第2導体部62の上端と電気的に接続し、該各第2導体部62の下端は第3導体部63の各円弧部分63の外縁と電気的に接続し、該第3導体63の矩形部分63cの外縁は第4導体部64の上縁と電気的に接続している。即ち、密封容器20に収容された蓄電素子10の第2極性部12は、密封容器20の筒状部21及びシールリング23と第2引出導体60を介して第2端子40に電気的に接続されている。
【0031】
前記PASキャパシタをリフロー半田付けによって回路基板等の実装相手に対して表面実装するとき、クリーム半田を予め塗布した金属パッド等の被接続箇所に第1端子30及び第2端子40が接触するようにPASキャパシタを実装相手に搭載し、搭載後のものをリフロー炉に投入して所期の半田付けを行う。
【0032】
ここで、図2,図4,図6及び図7を参照して、密封容器20の板状部22(上層22a)に設けられた第1引出導体50のビア導体部52の位置について説明する。
【0033】
密封容器20はリフロー半田付け時の温度変化や実装後の温度変化等に伴って熱膨張収縮する。密封容器20の板状部22は筒状部21及びシールリング23と別部品であり、しかも、筒状部21及びシールリング23と異材質であることから、該板状部22の熱膨張収縮の挙動は筒状部21及びシールリング23と異なったものとなる。また、板状部22のビア導体部52が設けられた部分は、孔によって連続性が断たれているために他の部分に比べて強度が低下する。
【0034】
前記熱膨張収縮に基づいて生じる応力は板状部22の中心CT(図4参照)に最も集中し易いため、ビア導体部52の位置が板状部22の中心CTと一致している場合は、該板状部22のビア導体部52が設けられた部分が該応力集中によって破損する恐れがある。
【0035】
この破損を回避するため、図2及び図4に示すように、ビア導体部52を板状部22の中心CTからずれた位置に設けている。具体的には、ビア導体部52を、その中心が板状部22の中心CTに対して長さ方向にLxだけずれ、且つ、幅方向にLyだけずれるように設けている。
【0036】
また、前記熱膨張収縮に基づいて生じる応力値は、図6に示す第1〜第4仮想ラインL1〜L4上で高値となる傾向があるため、ビア導体部52はこれら仮想ラインL1〜L4のそれぞれから外れるように位置させたほうが前記破損の恐れを回避する上で好ましい。因みに、第1仮想ラインL1は板状部22の幅方向で相対する2辺の中央を通るライン、第2仮想ラインL2は板状部22の他の2辺の中央を通るライン、第3仮想ラインL3は板状部22の相対する2角の頂点(切欠き22a1及び22b1があるためここでは仮想頂点)を通るライン、第4仮想ラインL4は板状部22の他の2角の頂点(切欠き22a1及び22b1があるためここでは仮想頂点)を通るラインである。
【0037】
さらに、前記第3,第4仮想ラインL3及びL4と直交するラインで切断したときの板状部22の縦断面積は角に向かうに従って徐々に小さくなるため、該第3,第4仮想ラインL3及びL4に沿う応力を考えると角に近づくほど耐破損に不利となる。つまり、図6に示す第5〜第8仮想ラインL5〜L8によって画成される仮想矩形領域(第5〜第8仮想ラインL5〜L8を含む)の外側領域は前記縦断面積が小さく、且つ、耐破損に不利な領域であるため、ビア導体部52は該仮想矩形領域の内側(第5〜第8仮想ラインL5〜L8を含まない)に位置させたほうが前記破損の恐れを回避する上で好ましい。因みに、第5仮想ラインL5は板状部22の幅方向の1辺と第1仮想ラインL1が交差する点と板状部22の長さ方向の1辺と第2仮想ラインL2が交差する点とを通るライン、第6仮想ラインL6は板状部22の長さ方向の1辺と第2仮想ラインL2が交差する点と板状部22の幅方向の他辺と第1仮想ラインL1が交差する点とを通るライン、第7仮想ラインL7は板状部22の幅方向の他辺と第1仮想ラインL1が交差する点と板状部22の長さ方向の他辺と第2仮想ラインL2が交差する点とを通るライン、第8仮想ラインL8は板状部22の長さ方向の他辺と第2仮想ラインL2が交差する点と板状部22の幅方向の1辺と第1仮想ラインL1が交差する点とを通るラインである。
【0038】
さらに、ビア導体部52の位置が板状部22の中心CTから遠くなると、該中心CTとビア導体部52との距離に依存して蓄電素子10の充放電能力にバラツキが生じる恐れがあるため、ビア導体部52は板状部22の中心CTに近付けたほうが好ましい。
【0039】
さらに、図4及び図5には第1接続導体53の帯状部分53bの長さを短くするためにビア導体部52を図4中における板状部22の中心CTの右側に位置させたが、図7に示すように、ビア導体部52を図7中における板状部22の中心CTの左側に位置させたような第1接続導体53’の形態を採用しても良い。図7に示した第1接続導体53’にあっては帯状部分53b’の長さが図4及び図5に示した第1接続導体53の帯状部分53bの長さよりも長くなるが、該帯状部分53b’の長さ方向及び幅方向の寸法比率を帯状部分53bのそれと同じにすれば両帯状部分53b及び53b’の抵抗値を同じにすることができる。
【0040】
換言すれば、第1接続導体53及び53’の帯状部分53b及び53b’は、前記PASキャパシタのESR(等価直列抵抗)の調整に利用できることになる。このESRの調整には、帯状部分53b及び53b’の長さ方向及び幅方向の寸法を可変する手法の他、帯状部分53b及び53b’を非直線形、例えばコ字形やV字形やU字形等として長さ方向の寸法を変えずに導電経路長を可変する手法が採用できる。
【0041】
このように、前述のPASキャパシタにあっては、第1引出導体50は板状部22(上層22a)の厚さ方向に沿うビア導体部52を有していて、該ビア導体部52は板状部22の中心からずれた位置に設けられている。つまり、ビア導体部52は、リフロー半田付け時の温度変化や実装後の温度変化等に伴う熱膨張収縮に基づいて生じる応力が集中し易い板状部22の中心CTを避けて設けられているので、該熱膨張収縮に基づいて生じる応力が板状部22に加わっても、該板状部22のビア導体部52が設けられた部分が該応力によって破損する恐れを確実に回避することができる。これにより、第1引出導体50にビア導体部52を用いた場合でも、該ビア導体部52が設けられた部分がリフロー半田付け時の温度変化や実装後の温度変化等に伴う熱膨張収縮に基づいて生じる応力によって破損することを防止できるPASキャパシタを提供することができる。
【0042】
また、ビア導体部52は、板状部22の相対する2辺の中央を通る第1仮想ラインL1と、板状部22の他の2辺の中央を通る第2仮想ラインL2と、板状部22の相対する2角の頂点を通る第3仮想ラインL3と、板状部22の他の2角の頂点を通る第4仮想ラインL4のそれぞれから外れて位置している。つまり、前記熱膨張収縮により生じる応力値は第1〜第4仮想ラインL1〜L4上で高値となる傾向があるため、ビア導体部52の位置をこれら仮想ラインL1〜L4のそれぞれから外れるように位置させることによって、板状部22のビア導体部52が設けられた部分が前記熱膨張収縮に基づいて生じる応力によって破損する恐れをより一層確実に回避することができる。
【0043】
さらに、ビア導体部52は、板状部22の相対する2辺と第1仮想ラインL1が交差する2つの点と他の2辺と第2仮想ラインが交差する2つの点とを順に通る第5〜第8仮想ラインL5〜L8によって画成された仮想矩形領域の内側に位置している。つまり、第3,第4仮想ラインL3及びL4と直交するラインで切断したときの板状部22の縦断面積は角に向かうに従って徐々に小さくなることから、第5〜第8仮想ラインL5〜L8によって画成される仮想矩形領域(第5〜第8仮想ラインL5〜L8を含む)の外側領域は前記縦断面積が小さく、且つ、耐破損に不利な領域であるため、ビア導体部52は該仮想矩形領域の内側(第5〜第8仮想ラインL5〜L8を含まない)に位置させることによって、板状部22のビア導体部52が設けられた部分が前記熱膨張収縮に基づいて生じる応力によって破損する恐れをより一層確実に回避することができる。
【0044】
さらに、板状部22(仮想22b)の長さ方向で対向する2辺の中央に各辺から内側に窪んだ凹所22b2が形成され、各凹所22b2は窪み深さが小さな第1窪み部分Daとと、該第1窪み部分Daの両側に存する窪み深さが大きな第2窪み部分Dbとを有している。また、第1端子30の外側縁は一方の凹所22b2の第1窪み部分Daに達していて、第1引出導体50の第3導体部54の下縁と電気的に接続し、一方、第2端子40の外側縁は他方の凹所22b2の第1窪み部分Daに達していて、第2引出導体60の第4導体部64の下縁と電気的に接続している。つまり、前記PASキャパシタをリフロー半田付けによって回路基板等の実装相手に対する表面実装するときに、第1端子30及び第4端子40の外側縁両側に存する第2窪み部分Dbをクリーム半田に含まれるフラックスの抜け道として利用することができるので、リフロー半田付け時に半田内にフラックスが残留し該残留フラックスの蒸発による気泡が半田内に残存して半田付け不良を生じる恐れを回避することができる。
【0045】
次に、図面に示した構造の電気化学デバイスを角型のリチウムイオンキャパシタとして用いた場合について説明する。
【0046】
このリチウムイオンキャパシタは、図1〜図5に示すように、電解液を含浸した蓄電素子10と、該蓄電素子10を収容した密封容器20と、該密封容器20の下面に設けられた第1端子30及び第2端子40と、蓄電素子10と第1端子30とを電気的に接続する第1引出導体50と、蓄電素子10と第2端子40とを第2引出導体60とを具備している。
【0047】
蓄電素子10は、上面視形状が矩形の第1極性部11及び第2極性部12と、第1極性部11と第2極性部12との間に介装された上面視形状が矩形のセパレータ13とから構成されている。第1極性部11を陽極とし第2極性部12を陰極とする場合、第1極性部11は活性炭を主成分とした材料から成り、第2極性部12はリチウムイオンを吸蔵可能な炭素材料を主成分とした材料から成っていて予め所定量のリチウムイオンがドーピングされた状態(リチウムプレドーピング)にある。このリチウムプレドーピングは、第2極性部12の表面に所定量の金属リチウムを接触させた状態で電解液を含浸させることにより進行し、全ての金属リチウムがリチウムイオンとなって第2極性部12内にドーピングされた時点で終了する。セパレータ13は高イオン透過度を有する材料、例えばガラス繊維,セルロース,レーヨン等の繊維系材料や、ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアミド,ポリイミド等の合成樹脂材料や、その他の材料から成る。
【0048】
第1極性部11の下面は、第1引出導体50の第1導体部51の上面に導電材を介して電気的に接合されている。また、第2極性部12の上面は、密封容器20の筒状部21の上壁21aの下面に導電材を介して電気的に接合されている。さらに、第1極性部11,第2極性部12及びセパレータ13には、プロピレンカーボネート等の溶媒に硼弗化リチウム等のリチウム電解質塩を所定濃度で溶解して成る電解液が含浸されている。
【0049】
このリチウムイオンキャパシタにおける他の構成は先に述べたPASキャパシタと同じであるのでその説明を省略する。また、このリチウムイオンキャパシタで得られる作用,効果は先に述べたPASキャパシタと同じであるのでその説明を省略する。
【0050】
以上、図面に示した構造の電気化学デバイスをPASキャパシタとして用いた場合とリチウムイオンキャパシタとして用いた場合とについて説明したが、図面に示した構造の電気化学デバイスを前記PASキャパシタ以外の電気二重層キャパシタとして用いた場合や前記リチウムイオンキャパシタ以外のレドックスキャパシタとして用いた場合でも前記同様の作用,効果を得ることができる。
【0051】
また、本発明は図面に示した構造に限定されるものではなく、特許請求の範囲に包含される構造の電気化学デバイスであれば、例えば端子及び引出導体を2対以上備える電気二重層キャパシタ及びレドックスキャパシタ等や、電気二重層キャパシタ及びレドックスキャパシタと種類が異なるリチウムイオン電池等の電池等にも適用可能であり、該適用によって前記同様の作用,効果を得ることができる。要するに、本発明は、蓄電または発電が可能な電気化学素子を収容した密封容器の下面に少なくとも1対の端子を有し、且つ、電気化学素子と各端子とを電気的に接続する少なくとも1対の引出導体を有する電気化学デバイスに広く適用可能であり、該適用によって前記同様の作用,効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0052】
10…発電素子、11…第1極性部、12…第2極性部、13…セパレータ、20…密閉容器、21…筒状部、22…板状部、23…シールリング、30…第1端子、40…第2端子、50…第1引出導体、51…第1導体部、52…ビア導体部、53,53’…第2導体部、54…第3導体部、60…第2引出導体、61…第1導体部、62…第2導体部、63…第3導体部、64…第4導体部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電または発電が可能な電気化学素子を収容した密封容器の略矩形の下面に少なくとも1対の端子を有し、且つ、前記電気化学素子と前記各端子とを電気的に接続する少なくとも1対の引出導体を有する電気化学デバイスであって、
前記各引出導体の少なくとも1つは、前記密封容器の下面を構成する部分にその厚さ方向に沿うビア導体部を有していると共に該ビア導体部と電気的に接続する円形部分及び該円形部分と連続する帯状部分を備えた導体部を有しており、
前記ビア導体部は、前記密封容器を下面からみたとき、前記密封容器の下面の中心からずれた位置に設けられており、
前記導体部の帯状部分は、非直線形を成している、
ことを特徴とする電気化学デバイス。
【請求項2】
前記導体部の円形部分は、前記ビア導体部よりも直径が大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−48260(P2013−48260A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−222019(P2012−222019)
【出願日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【分割の表示】特願2008−314553(P2008−314553)の分割
【原出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】