電気化学反応装置およびその製造方法
【課題】 組み立て時の取り扱いが容易で、かつ構造が簡単で、耐久性に優れ、低いランニングコストの、電気化学反応装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の電気化学反応装置10は、内面側のアノード2と、外面側のカソード5と、該アノード2およびカソード5によって挟まれる固体電解質1とで構成される筒状体のMEA7と、常温より高い稼働温度に加熱するためのヒータ41と、MEAの内面側に装入され、アノードに接するコイル状金属線12とを備え、そのコイル状金属線12は、筒状体の内面に沿い、線の形態で、少なくとも稼働温度で該筒状体7の内面に接触することを特徴とする。
【解決手段】 本発明の電気化学反応装置10は、内面側のアノード2と、外面側のカソード5と、該アノード2およびカソード5によって挟まれる固体電解質1とで構成される筒状体のMEA7と、常温より高い稼働温度に加熱するためのヒータ41と、MEAの内面側に装入され、アノードに接するコイル状金属線12とを備え、そのコイル状金属線12は、筒状体の内面に沿い、線の形態で、少なくとも稼働温度で該筒状体7の内面に接触することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学反応装置およびその製造方法であって、より具体的には、簡単な構造で、耐久性に優れ、効率のよい反応をさせることができる、電気化学反応装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境への意識の高まりから、廃ガス中の臭気成分であるアンモニア等を、ppmオーダーまで分解することを目的とする除害装置に関心が集まっている。たとえば半導体製造装置の廃ガスには、アンモニア、水素等が含まれるのが普通であり、アンモニアの異臭を完全に除去するには、ppmオーダーにまで除害する必要がある。この目的のために、半導体製造装置の廃ガス放出の際にスクラバーを通して、薬品を含む水に有害ガスを吸収させる方法が多く用いられてきた。
一方、エネルギーや薬品等の投入なしに、安価なランニングコストを得るために、水素酸素燃料電池型分解方式を用いた、半導体製造装置の排気ガス処理の提案もされている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−45472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のスクラバーによれば、アンモニア等の除害はppmオーダーまで可能であるが、薬品や外部エネルギー(燃料)を必要とし、さらに触媒の定期的交換やメンテナンスを要し、ランニングコストが高いという問題がある。さらに装置が大掛かりとなり、たとえば既存の設備に付加的に設ける場合に配置が難しい場合も生じる。
一方、水素酸素燃料電池型分解方式については、ppmオーダーまでの除害を追求すると、燃料極側に排気ガスの長い流路が必要となり、圧力損失の増大を招く。さらに、水素酸素燃料電池分解方式におけるMEA(Membrane Electrode Assembly)は、強度的に脆弱であり、組み立て時の取り扱いが非常に難しいという問題がある。とくに多層に組み立てる場合に非常な注意を払っても、簡単に破損が生じやすく、その結果、組み立て工数の増大や歩留まり低下を招きやすい。
【0005】
上記のガス除害装置における水素酸素燃料電池の問題とは離れて、一般に、電気化学反応装置におけるMEAは、焼結体で構成されるので、強度的に脆く、簡単に破損するので、製造歩留まりが低い。このような、MEAの強度的な脆さは、ガス除害だけでなく、たとえば電力を生む燃料電池などにおいても共通する問題である。
【0006】
本発明は、組み立て時の取り扱いが容易で、かつ構造が簡単で、耐久性に優れ、低いランニングコストの、電気化学反応装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気化学反応装置は、内面側の第1電極と、外面側の第2電極と、該第1電極および第2電極によって挟まれる固体電解質とで構成される、筒状体のMEAと、MEAを常温より高い稼働温度に加熱するための加熱装置と、筒状体のMEAの内面側に装入され、第1電極に接する第1集電体とを備える。そして、第1集電体は、導電線で形成され、その導電線は、筒状体の内面に沿って、線の形態で、少なくとも稼働温度で該筒状体の内面に接触していることを特徴とする。
【0008】
上記の筒状体のMEAは、構造が非常に簡単であり、除害装置に組み立てる際、強度的に安定しており、また組み立てた後において高い耐久性を得ることができる。このような筒状体のMEAの内面側への集電体の配置は、狭隘な場所であるため、泣き所である。筒の内側という狭隘な場所に、第1電極と第1電極との反応成分(気体、液体)とを接触させるスペースを確保しながら集電体を配置することは非常な困難を伴う。しかし、上記のように、線の形態で内面に接触することを目的に形成された導電線の集電体を装入することで、第1電極と第1電極反応成分(気体、液体)とを接触させるスペースを確保しながら、非常に簡単に第1電極の集電体を配置することができる。すなわち、線の形態で内面に導電接触する集電体とすることで、第1電極と第1電極成分(気体または液体)とを接触をさせる部分を確保することが自ずと可能となる。たとえば筒状体のMEAが複雑に曲がりくねった形状をとる場合、本発明では、線の形態で内面に導電接触する集電体の送り込みに相応の工数を要するが、大量生産可能な工業的な製造形態で、確実に第1集電体を配置することができる。導電線には、金属線などを用いることができる。導電線の断面は、円形、楕円、矩形、など何でもよく、帯状の線であってもよい。
線の形態(または重なった線の形態)で接触するとは、導電線が筒状体内に埋め込まれず、筒状体の外部に位置する導電線が筒状体の内筒の表面に接触または当接して、すなわち線接触して、導通することをいう。
また、導電線は縒り線であってもよく、この場合、MEAの面には、重なった線の形態で、接触することになる。また導電線の編み目の交差部が、筒状体の内筒表面に接触等する場合も、重なった線の形態で接触する部分を含むことになる。重なった線の形態での接触は、線の形態での接触に含まれる。
筒状体MEAにおけるもう一つの大きな利点は、上記の他に、反応長さを容易に長くできることである。板状の積層タイプのMEAでは、熱膨張差に起因する歪み、それを抑え込むことで簡単に生じる破損があり、サイズに制約を課せられる。この点、筒状体は、歪みが生じにくく、1つのMEAのみである。すなわちMEAを複数、積層することがない。このため、長手方向に長い、直筒、曲がり筒のMEAを比較的容易に製造することができる。
上記の電気化学反応は、350℃〜1000℃の温度で実用レベルの反応速度に達するので、加熱装置は、MEAを外側から囲むヒータ等にするのがよい。
筒状体MEAの外面側電極(第2電極)の集電体は、簡略な形態から完備した形態まで、各種あるものとするが、第2電極の導電率が高い場合、単に配線の接続部程度のもの(非常に簡略な形態)であってもよい。
さらに筒状体のMEAの内径等を調整することで、低圧損を容易に実現することができる。また電気化学反応には薬液等が不要なので、ランニング経費を低くすることができる。
また、上記のMEAを、複数本、並列配置することで、時間当たりの反応量を増大させることができる。
【0009】
第1集電体は、導電接続材料を用いることなく、前記稼働温度で前記導電線の熱膨張によって前記筒状体の内面に接触しているものとできる。内面電極(第1電極)を全面にわたって所定の割合で露出させながら、導電接着剤を塗布する困難さは容易に推測でき、上記の構成によって、このような困難さは不要となる。たとえば白金ペーストを所定の連続パターンで内筒表面に塗布して焼成するという、困難な作業は不要となる。熱膨張係数は、金属線は、セラミックス等より数十パーセント、大きいのが普通である。このため、稼働温度で導電接触していて、常温に下げる過程で、接触抵抗が増大し、または所定の箇所で非導電状態になってもよい。
【0010】
第1集電体は、常温において、長手方向に弾性的に延伸されてその外径を小さくされるものとできる。これによって常温での組み立て時に、弾性変形させて容易に装入させることができる。金属の熱膨張係数は、10〜200×10−7/Kなので、稼働温度と常温との温度差に起因する熱膨張では、常温での組み立て時に、弾性変形なしで装入を容易にするほどの大きな隙間(熱膨張)を期待することはできない。そこで、装入に際しては、弾性変形させて、ガイドとなるワイヤや棒状部材を用いることで、容易に内筒へと挿入し、開放して、弾性力で当接させることができる。弾性変形を開放したとき、常温では、第1集電体は、内面に当接していなくてもよいが、導電線(主に金属線)とMEAの熱膨張の差を考慮すると、ほとんど当接するほど近接していることになる。しかし厳密には、常温では当接することは必要ない。常温で当接している場合、接触状態(導電状態)は、上記の稼働温度でも維持されるのが普通である。これによって、第1集電体を弾性変形させて、筒状体の中を通して、放して、留める、という非常に簡単な作業に対して、内筒中への導電ペースト塗布および焼成などの面倒な作業をする必要がない。
【0011】
第1集電体を、筒状体のMEAの内面側を通る加工された1本の導電線(立体一筆書き線)により形成することができる。上記の立体一筆書き線は、容易に加工できる。そして、立体一筆書き線は、常温で弾性変形に富み、取り扱いが容易であり、筒状体の内面への装入も非常に簡単にできる。このため、製造工数を節減することができ、また製造歩留まりを向上させることができる。稼働温度において強度が所定レベル以上あり、熱膨張率がMEAを構成するセラミックスより大きい金属を線材に用いることで、稼働温度において確実な導電状態を維持することができる。
【0012】
第1集電体を、複数本の導電線について、接合、編み、などの加工を少なくとも1つ施すことで、一体に形成したものとすることができる。これによって、製造時の簡単さに加えて、高温での稼働において高温変形が生じにくく、確実にMEA内面と導通状態を維持することができる構造を得ることができる。
【0013】
第1集電体を、稼働温度において筒状体のMEAを内面側から支持するステント構造体とすることができる。これによって、医学分野の技術や、既存の製造装置を用いて、簡単に第1集電体を得ることができる。
ステントの語は、もともとは、血管、気管、食道などの管腔臓器内に留置してその内腔を開存させる目的で用いられる金属線等で形成された管の内側支持構造をさす。本発明におけるステント構造体は、医学上の管の内側支持構造と類似させて、筒状体MEAの内面に、線または重なり線の形態で当接して支持する構造体を指し、線の組み立て構造が医学上のステントと同じか、類似するものを含む。さらに、上記の形態の構造体である限り、医学分野にない線の組み立て構造であってもよい。ステント構造体は、製造時に装入の際に弾性変形することが望ましい。かつ、高温で使用されるので、常温での剛性等が所定レベル以上あること(簡単に高温軟化しない構造)が望ましい。また、稼働温度における内面側からの支持は、とくに応力値範囲の限定はなく、ステント構造体が稼働温度において筒状体の内面に当接していれば支持しているものと解する。すなわち当接していれば、本発明における第1集電体は集電という目的を達成することができる。ただし、ステント構造体は、医学分野で用いられている構造を持つ場合に、明確に当該ステント構造体であると特定することができ、その他の場合には、上述のいずれかの構造を持つ集電体として特定されることが多い。また、ステント構造体は、それ自体が拡張する自己拡張型のステント構造体でも、第1集電体を内面側に挿入後バルーン等で拡張するバルーン拡張型どちらのタイプでもかまわないが、挿入後拡張する操作を省けるので、自己拡張型が好ましい。
【0014】
筒状体のMEAの内に、内径断面の中心からMEAの内面にかけて板状部の密度を低下させて、流体を中心から内面に追い込むようにする内面追い込み部材を、1つ以上、さらに備えることができる。これによって、燃料ガス等の素通りを防止して内面側電極で電気化学反応させながら、圧力損失を減らすことができる。内径断面の中心からMEAの内面にかけて板状部の密度の低下は、厳密でなくてもよく、たとえば、径方向に2等分の領域(中心部、内面側縁部)に分けて、それぞれの領域で板状部の平均密度が低下していればよい。
【0015】
MEAにおける、第1電極をアノードとし、第2電極をカソードとすることができる。アノードには還元性の気体または液体を導入し、カソードには酸化性の気体または液体を導入するので、これによってMEAの内側には還元性成分を流すことになる。この結果、導電線が金属線であっても高温酸化されないので、第1電極との接点を、メンテナンスフリーで、低抵抗の状態に維持することができる。
【0016】
アンモニアを含む気体を除害するために用いられ、筒状体のMEAの内側にアンモニアを流し、MEAの外側を大気に接触させることができる。アンモニアは微量の漏出で刺激臭を感じさせるので、筒状体の内側に流して電気化学反応により極低濃度にまで分解することで、アンモニアを排出する半導体製造装置の除害装置として好適に用いることができる。すなわち、出口でのアンモニア濃度のモニタが容易であり、さらに、不測の事故などに備えて予備的な装置を、アンモニアを漏らすことなく、簡単かつ確実に連結することができる。製造時には、平板積層型のMEAに比べて、寸法等の許容範囲が広く製造が容易であるために比較的安価に製造することができる。そして、長期間にわたる高温(使用)−常温(不使用)の熱サイクルにも高い耐久性を示すことができる。
【0017】
第2電極は、銀粒子と、イオン導電性セラミックスとを有し、集電体を兼ね、別体の第2電極の集電体を含まないことができる。これによって部品点数を減らしながら、たとえば、第2電極と大気等との接触を阻害する物を最大限減らして、第2電極での酸素イオン生成反応を促進することができる。また、第2電極の集電体を省略することで、たとえばその第2電極の集電体の高温酸化による劣化に配慮しなくて済む。
【0018】
筒状体のMEAを、直筒体、曲がった曲筒体、蛇行する蛇行筒体、らせん状のらせん筒体、のいずれかとすることができる。本発明の電気化学反応装置では、電極において反応する燃料成分等に気体または液体を用いるので、筒状体のMEAの形状は、装置の用途、使用場所等に応じて、多くの形状を選択できることが望ましい。そして、どのような複雑な筒状体の形状であっても、上記のいずれの第1集電体によっても、内面側の第1電極の全体にわたって、非常に簡単に、かつ確実に、導電をとることができる。複雑な筒状体であるほど、上記の第1集電体は、他の態様の集電体とは比較にならない簡単さと確実さで、集電機能を果たすことができる。
【0019】
本発明の電気化学反応装置の製造方法は、常温より高い稼働温度で稼働させるための電気化学装置を製造する。この製造方法では、内面側の第1電極と、外面側の第2電極と、該第1電極および第2電極によって挟まれる固体電解質とで構成される、筒状体のMEAを形成する工程と、MEAの第1電極の集電体となる、導電線で形成された第1集電体を準備する工程と、第1集電体を、該MEAの内面側に装入する工程とを備え、筒状体のMEAの形成工程、および第1集電体の準備工程では、導電線が、少なくとも稼働温度で該筒状体の内面に、線の形態で、接触するように設定することを特徴とする。
【0020】
上記の方法によって、筒状体のMEAの内側という狭隘な場所に、第1電極と第1電極成分(気体または液体)とを接触させるスペースを確保した上で、第1集電体を、内面に挿通させながら、簡単かつ確実に、配置することができる。このため、高い製造歩留まりで効率よく大量生産することができる。
【0021】
第1集電体の装入工程では、第1集電体を、長手方向に弾性的に延伸してその外径を小さくして筒状体のMEAに入れて、所定位置で放す、ことができる。また、とくに第1集電体が自己拡張型のステント構造体の場合には、当該ステント構造体を、筒状体のMEAより小さい直径に圧縮した状態で入れて、所定位置で放すことにより、その弾性的に自己拡張し留置させることができる。
これによって、直筒体MEAでも曲筒体MEAでも、簡単に、第1集電体またはステント構造体を装入することができる。筒状体のMEAの内面側の集電体の配置として、これ以上、簡単かつ確実な方法は容易に見いだすことが難しいほどである。なお、第1集電体またはステント構造体を内面側に入れて、放したあとで、当該第1集電体またはステント構造体をずれ等が生じないように留めるなどの工程は、当然、あってよい。外部の配線と接続をとるために、端子等に留めることは必要である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、組み立て時の取り扱いが容易で、かつ構造が簡単で、耐久性に優れ、低いランニングコストの電気化学反応装置およびその製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1における電気化学反応装置であるアンモニア分解装置を示す図である。
【図2】図1のアンモニア分解装置における電気化学反応を説明するための図である。
【図3】アノードでの電気化学反応を説明するための図である。
【図4】アノードにおける多孔性を示す図である。
【図5】カソードでの電気化学反応を説明するための図である。
【図6】円筒形MEAの製造方法のフローチャートである。
【図7】本発明の電気化学反応装置の製造方法を示す図である。
【図8】(a)は1つの電気化学反応装置の配置、(b)は複数の電気化学反応装置を配置、を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態2における電気化学反応装置である燃料電池を示す図である。
【図10】図9の燃料電池の第1集電体の構造を示す図であり、(a)は単線をサインカーブ状の帯に加工した状態、(b)は図9の燃料電池に用いた形態であり、(a)の帯をらせん状に巻いた状態を示す。
【図11】第1集電体をステント構造体とする場合の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の電気化学反応装置の実施の形態は、電気化学反応を進行させるかぎりどのような装置でもよく、電力を生じる燃料電池などの発電装置でもよいし、電力を投入して電気分解を進行させる電気分解装置でもよい。また、装置の主目的が有害ガスを分解する除害装置(発電および電力投入)であってもよいし、発電して電力を供給することを目的とする電池であってもよい。表1に、本発明の電気化学反応装置が用いられる、数例のみを示すが、このほかに燃料電池の名称で知られる、近年、技術蓄積の著しい分野の装置に用いることもできる。
【0025】
【表1】
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における電気化学反応装置であるガス除害装置、とくにアンモニア分解装置10を示す図である。このアンモニア分解装置10では、円筒形の固体電解質1の内面を覆うようにアノード(第1電極)2が設けられ、また外面を覆うようにカソード(第2電極)5が設けられて、円筒形MEA7(1,2,5)が形成されている。筒状体は、一般には、らせん状やサーペンタイン状などに曲がりくねっていてもよいが、図1の場合は、直円筒形のMEAである。本実施の形態の電気化学反応装置10では、稼働温度において、円筒形のMEA7の内面に、らせん状の金属線12が線の形態で接触して集電(導通)している。稼働温度は、650℃〜950℃の温度域にある。
【0027】
金属線12とMEA7の熱膨張の差は、稼働温度では両者が接触しながら、常温では両者の間に大きな間隙ができるほど大きくない。このため、らせん状金属線12は、応力がかからないフリーな状態で、かつ常温で、その螺旋径は、MEA7の内径よりは少し大きく設定するのがよい。そして、常温で、らせん状金属線12を円筒形MEA7の内面側に入れるとき、らせん状金属線12を軸線方向に伸ばして、らせんの外径(螺旋径)をMEAの内径より確実に小さくするのがよい。装入状態では、らせん状金属線は軸線方向に少し伸ばされて、螺旋径はMEA7の内径に合わせて小さくなる。すなわちフリーな状態におけるらせん状金属線よりも少し伸ばされて、外径は小さくされてMEA7の内面に接触している。このため、装入状態では、らせん状金属線12は拡がろうとして、MEA7の内面側電極(アノード)2に弾性力で押し付けられる。この弾性力は、あくまで常温で生じているものである。稼働温度で、らせん状金属線12とMEA7の内面とが接触さえしていればよいので、上記の弾性力は生じていなくてもよい。
【0028】
らせん状金属線12には高温での強度等を考慮してニッケル線を用いるのがよい。ニッケル線の径は、電気化学反応装置10で生じる電流によって変わる。たとえば、内径18mmの円筒MEA7をアンモニア除害装置に用いる場合、直径1mmのニッケル線とする。ニッケルの線膨張係数は、1.3×10−5K−1である。これに対してMEAの電極に用いられるLaSrCrO、YSZ等は0.8〜1.2×10−5K−1である。金属のほうが数十%、線膨張係数が大きい。
【0029】
この電気化学反応装置であるアンモニア分解装置10では、アンモニアを含んだ気体を円筒形MEA7の内面側(アノード2)に導入し、外面側(カソード5)は、空気に触れさせる。カソード5は空気中の酸素(O2)と反応する。円筒形MEA7の内面のアノード2に導入されたアンモニアは、酸素イオンと次のアノード反応をする。
(アノード反応):2NH3+3O2−→N2+3H2O+6e−
反応後の気体であるN2+3H2Oは、円筒形の内面側(内筒)を通って流れてゆく。また、外面のカソード5と接触する空気中の酸素は、外部配線から供給される電子e−と、次のカソード反応をする。
(カソード反応):O2+2e−→2O2−
カソード応の結果、MEA7の外面で生じた酸素イオンO2−は、固体電解質1を経由して、内面側のアノード2へと、厚み方向に沿って移動する。上記の電気化学反応は、温度650℃〜950℃の高温で、実用可能な分解速度を得ることができる。このため、ヒータ等の加熱装置41を備える。
上記のアンモニア分解の電気化学反応は、表1における反応R1に対応する。アンモニア分解の反応は、表1に示すように上記のR1以外に、反応R2,R3,R5がある。反応R2およびR3は、上記の反応R1と同じように、発電をする反応であるが、反応R5は、電力を投入する反応である。なお、半導体製造装置の排気には、アンモニアの他に水素も含まれるので、その場合には、反応R4も並行的に進行し、どちらも発電反応であり、負荷に電力を供給することができる。
【0030】
上記のような円筒形MEA7は、素材自体は脆弱(強度的に)であるが、(a1)円筒形であることによって強度を高めることができる。薄片状のMEAを多段に積層した板状多層MEAに比べて、強度的に安定している。このため、ガス分解装置10に組み立てる際の取り扱いにおいて、少しの力の付加で破損する等の事態が避けられ、(a2)製造歩留まりの向上を得ることができる。板状多層MEAの場合、高い寸法精度がないと、少しの押さえ込みなどによって簡単に破損してしまう。また、組み立てた後でも、稼働と非稼働とのサイクルで、加熱と冷却とを繰り返すので、板状多層MEAの場合は、熱膨張の差により応力集中部から破損しやすい。この点でも、円筒形MEA7は、端部で固定するので、(a3)加工精度はそれほど高くする必要はなく、(a4)加熱と冷却のサイクルで熱膨張の差により破損が発生する応力集中部は少ない。このため、使用と不使用とを繰り返す長期間にわたる耐久性にも優れている。その上、円筒形MEA7の長さは、容易に伸ばせるので、(a5)反応長を長くすることが容易であり、一つの円筒形MEAの能力を拡大しやすい。
さらに、本実施の形態におけるガス分解装置10では、アンモニアを円筒の内面側に通すので、極低濃度にまで分解することで、アンモニアを密封しながら実際上、消滅させることができる。このため円筒形という簡単な構造を用いることで、上記(a1)〜(a5)を得ることができる。
【0031】
図2は、図1のアンモニア分解装置10をより詳しく説明するための模式図である。アンモニア分解装置10では、上記のアノード反応およびカソード反応の結果、電力を発生するが、図2に示すように、電力はこのシステムに配置した負荷、たとえば加熱のためのヒータに供給して、電力費用の低減に寄与することができる。筒状体MEA7の内面側に、金属線構造体の集電体12を装入する大きな理由の一つが、アノード2の導電率が低い(電気抵抗がやや大きい)という点にある。この点を説明するために、筒状体MEA7を形成する材料について説明する。
アノード2は、表面酸化されて酸化層を有する金属粒連鎖体21と、酸素イオン導電性のセラミックス22とを主要部とする焼結体とするのがよい。酸素イオン導電性のセラミックス22としては、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンガレート)などを用いることができる。
また、カソード5は、銀(Ag)51と、酸素イオン導電性のセラミックス52とを主成分とする焼結体とするのがよい。この場合の酸素イオン導電性のセラミックス52として、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)、SSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト)などを用いるのがよい。
固体電解質1は、酸素イオン導電性がある、固体酸化物、溶融炭酸塩、リン酸、固体高分子などを用いることができる。円筒形に焼結されたものを購入する。固体酸化物1としては、SSZ、YSZ、SDC、LSGMなどを用いるのがよい。
【0032】
上記の材料で形成されたカソード5は、銀粒子51の含有などによって導電率は高い。このため、図2に示すように、カソード5の端にのみ接続端子部55を設けるだけでよい。しかし、アノード2は、導電率の高い材料を含まず導電率が低く、すなわち電気抵抗を示し、集電体の配置が必要になる。筒状体の内面側に、有害物質を流す利点を上記のように挙げたが、集電体を筒状体の内面側に確実に配置する技術はこれまで十分にあるとはいえず、むしろ、今後の需要が見込まれるにもかかわらず、これといった技術がない。筒状体の内径は十分大きくないのが普通であり、この中に、(e1)分解対象のガス成分を流して、内面電極と接触させて十分反応させるスペースを確保しながら、(e2)内面電極に接触して導電を確実にとることができる構造の集電体を、(e3)困難な作業を要しないで、簡単に工業的に実現したものは、これまで知られていない。内面側に流すガス成分は、還元性気体であるため、導電をとる作用(e2)を長期間にわたってさらに確実にすることができる。
本実施の形態では、弾性変形できるらせん状金属線、とくにらせん状ニッケル線を用いることで、上記(e1)〜(e3)を容易に実現することができる。らせん状金属線12は、ことわるまでもなく、一筆書き線の導電線である。本実施の形態では、直円筒MEAなので、上記(e3)の効果の有効性は、絶大とは感じられないかもしれないが、サーペンタイン状、コイル状などに湾曲した筒状体MEA7の場合には、本発明における導電性構造体の有効性の大きさを認識することができる。
【0033】
図3は、アノード2における電気化学反応を説明するための図である。アノード2は、上述のように、表面酸化された金属粒連鎖体21と、SSZ22との焼結体で構成される。金属粒連鎖体21の金属は、ニッケル(Ni)とするのがよい。Niに鉄(Fe)を少し含むものであってもよい。さらに好ましくはTiを2〜10000ppm程度の微量含むものである。
(1)Ni自体、アンモニアの分解を促進する触媒作用を有する。また、FeやTiを微量含むことでさらに触媒作用を高めることができる。さらに、このNiを酸化させて形成されたニッケル酸化物は、これら金属単味の促進作用をさらに大きく高めることができる。
(2)上記の触媒作用に加えて、アノードにおいて、酸素イオンを分解反応に参加させている。すなわち、分解を電気化学反応のなかで行う。上記のアノード反応2NH3+3O2−→N2+3H2O+6e−では、酸素イオンの寄与があり、アンモニアの分解速度を大きく向上させる。
(3)アノード反応では、自由な電子e−が生じる。電子e−がアノード2に滞留すると、アノード反応の進行は、妨げられる。金属粒連鎖体21は、ひも状に細長く、酸化層21bで被覆された中身21aは良導体の金属(Ni)である。電子e−は、ひも状の金属粒連鎖体の長手方向に、スムースに流れる。このため、電子e−がアノード2に滞留することはなく、金属粒連鎖体21の中身21aを通って、外に流れる。金属粒連鎖体21により、電子e−の通りが、非常に良くなるが、酸化層21bが形成されるので、全体的に導電率はそれほど高くなく、上記の集電体12の配置が必要となる。
図4は、SEM(Scanning Electron Microscopy)によるアノード2を示す断面図(二次電子像)である。図4によれば、アノード2は、サイズの大きい気孔2hが高い密度で分散しており、気孔率が高い多孔体であることが分かる。その結果、気孔率が高い多孔体であるため、アノード反応が生じる表面箇所が高密度で存在する。
要約すると、本発明の実施の形態におけるアノードは、次の(1)、(2)および(3)の作用を有する。
(1)ニッケル粒連鎖体のニッケル酸化層による分解反応の促進(高い触媒機能)
(2)酸素イオンによる分解促進(電気化学反応の中での分解促進)
(3)金属粒連鎖体のひも状良導体による電子の導通性確保(しかし、電子伝導性は集電体を不要とするほどは向上されない。)
上記の(1)、(2)および(3)によって、アノード反応は非常に大きく促進される。温度を上げて、触媒に分解対象ガスを接触させるだけで、その分解対象ガスの分解は進行する。しかし、上記のように、電気化学反応装置である燃料電池を構成する素子において、カソード5からイオン導電性の固体電解質1を経て、酸素イオンを反応に関与させ、その結果、生じる電子を外に導通させることで、上記の(1)、(2)および(3)により、分解反応速度は飛躍的に向上する。
【0034】
図5は、カソード5における電気化学反応を説明するための図である。本実施の形態におけるカソード5は、上述のように、Ag粒子51と、LSM52とで構成される。この中で、Ag51はカソード反応O2+2e−→2O2−を大きく促進させる触媒機能を有する。この結果、カソード反応は非常に大きい速度で進行することができる。
【0035】
次に、図6により、円筒形MEA7の製造方法の概要について説明する。図6には、アノード2、およびカソード5ごとに、焼成を行う工程を示す。まず、市販されている円筒形固体電解質1を購入して準備する。次いで、カソード5を形成する場合は、所定の流動性を持つようにカソード構成材料を溶媒に溶かした溶液を調整して、円筒形固体電解質の内面に均等になるように塗布する。次いで、カソード5に適切な焼成条件で焼成する。このあとアノード2の形成に移る。図6に示す製造方法の他に、多くのバリエーションがある。焼成回数を1回ですます場合で、図6に示すように、各部分ごとに焼成を行うのではなく、塗布状態のまま、各部分を形成して、最後に、各部分の最大公約数的な条件で焼成を行う。この他、多くのバリエーションがあり、各部分を構成する材料と、目標とする分解効率と、製造経費等を総合的に考えて製造条件を決めることができる。
【0036】
上記の円筒形MEAの製造方法における各部分の材料、焼成条件等の具体例は、次のとおりである。
1.アノード
(1)金属粒連鎖体21
金属粒連鎖体21は、還元析出法によって製造するのがよい。この金属粒連鎖体21の還元析出法については、特開2004−332047号公報などに詳述されている。ここで紹介されている還元析出法は、還元剤として3価チタン(Ti)イオンを用いる方法であり、析出する金属粒(Ni粒など)は微量のTiを含む。このため、Ti含有量を定量分析することで、3価チタンイオンによる還元析出法で製造されたものと特定することができる。3価チタンイオンとともに存在する金属イオンを変えることで、所望の金属の粒を得ることができる。Niの場合はNiイオンを共存させる。Feイオンを微量加えると、微量Feを含むNi粒連鎖体が形成される。
また、連鎖体を形成するには、金属が強磁性金属であり、かつ所定のサイズ以上であることを要する。NiもFeも強磁性金属なので、金属粒連鎖体を容易に形成することができる。サイズについての要件は、強磁性金属が磁区を形成して、相互に磁力で結合し、その結合状態のまま金属の析出→金属層の成長が生じて、金属体として全体が一体になる過程で、必要である。所定サイズ以上の金属粒が磁力で結合した後も、金属の析出は続き、たとえば結合した金属粒の境界のネックは、金属粒の他の部分とともに、太く成長する。アノード2に含まれる金属粒連鎖体21の平均直径Dは5nm以上、500nm以下の範囲とするのがよい。また、平均長さLは0.5μm以上、1000μm以下の範囲とするのがよい。また、上記平均長さLと平均径Dとの比は3以上とするのがよい。ただし、これら範囲外の寸法を持つものであってもよい。
(2)表面酸化
金属粒連鎖体または金属粒の表面酸化処理は、(i)気相法による熱処理酸化、(ii)電解酸化、(iii)化学酸化の3種類が好適な手法である。(i)では大気中で500〜700℃にて1〜30分処理するのがよい。最も簡便な方法であるが、酸化膜厚の制御が難しい。(ii)では標準水素電極基準で3V程度に電位を印加し、陽極酸化することにより表面酸化を行うが、表面積に応じ電気量により酸化膜厚を制御できる特徴がある。しかし、大面積化した場合、均一に酸化膜をつけることは難しい手法である。(iii)では硝酸などの酸化剤を溶解した溶液に1〜5分程度浸漬することで表面酸化する。酸化膜厚は時間と温度、酸化剤の種類でコントロールできるが薬品の洗浄が手間となる。いずれの手法も好適であるが、(i)または(iii)がより好ましい。
望ましい酸化層の厚みは、1nm〜100nmであり、より好ましくは10nm〜50nmの範囲とする。ただし、この範囲外であってもかまわない。酸化皮膜が薄すぎると触媒機能が不十分となる。また、わずかな還元雰囲気でもメタライズされてしまう恐れがある。逆に酸化皮膜が厚すぎると触媒性は充分保たれるが、反面、界面での電子伝導性が損なわれ、発電性能が低下する。
(3)焼成条件
SSZの原料粉末の平均径は0.5μm〜50μm程度とする。表面酸化された金属粒連鎖体21と、SSZ22との配合比は、mol比で0.1〜10の範囲とする。焼結方法は、たとえば大気雰囲気中で、温度1200℃〜1600℃の範囲に、30分〜180分間保持することで行う。
【0037】
2.カソード
(1)銀
Ag粒子の平均径は、10nm〜100nmとするのがよい。
(2)焼成条件
SSZの平均径は0.5μm〜50μm程度のものを用いるのがよい。銀と、SSZとの配合比は、0.01〜10程度とするのがよい。焼成条件は、大気雰囲気で、1000℃〜1600℃に、30分〜180分間程度保持する。
【0038】
図1および図2に示す、コイル状金属線の集電体12は、既存の方法により製造することができる。金属線には、銅線、銅合金線、アルミニウム線、アルミニウム合金線、他の種類の、金属線または合金線、を用いることができる。線径は、0.1mm〜5mm程度のうちから目的に応じて、適切な径を選ぶことができる。らせんの軸線方向のピッチ(螺旋ピッチ)は、アノード反応のためにアノード2の露出する部分を確保する必要があり、応力がかからないフリーな状態で少なくとも線径の0.5倍以上の間隔をあけた螺旋とするのがよい。
【0039】
図7に示すように、上記の導電線構造体とくにコイル状金属線12を準備して、図6によって作製した、または購入した、円筒形MEA7に、そのコイル状金属線12を弾性変形させて入れて、弾性変形を開放する(放す)。コイル状金属線12の装入のために、ガイドとなるワイヤや棒状部品を、当該コイル状金属線の先の部分に取り付けて、そのガイドのワイヤ等を先に円筒内に通しながら入れてもよい。コイル状金属線12の螺旋径は、応力がかからない状態では、円筒形MEA7の内径よりは大きくしておく。装入によって、らせん状金属線を軸線方向に伸ばして、螺旋ピッチの間隔を大きくすることで、螺旋径を小さくして、円筒形MEA7の内面側に入るようにする。この装入の際の螺旋ピッチの間隔の拡大によって、アノード反応を生じるアノード表面をアンモニアに対して、十分露出させることができる。
図7に示す製造方法では、前提条件として、筒状体のMEAの形成工程、および第1集電体の準備工程では、導電線が、少なくとも稼働温度で該筒状体の内面に、線の形態で、接触するように設定する。
常温で、上記のようにらせん状金属線12がMEA7の内面に押し付けられていれば、両者の熱膨張率の差は、それほど大きくないので、稼働温度においても接触(導電)は保たれる。両者の熱膨張率の差が大きい場合、押し付けが大きいと稼働温度までの昇温中に座屈が生じて、押し付けが十分得られないことがある。このため稼働温度で確実に接触(導通)を得るために、常温ではむしろ押し付け(接触)が生じていないほうが好ましい場合もある。
【0040】
図8(a)は、1つの円筒形MEA7を用いた場合のガス除害装置であり、また、図8(b)は、図8(a)に示すものを、複数(12個)、並列に配置した構成のガス除害装置である。1つのMEA7では処理容量が不足する場合に、複数の並列配置は、面倒な加工無しに容量増大をはかることができる。複数のどの円筒形MEA7についても、内面側に金属線構造体の集電体を装入し、その内面側にアンモニアを含む気体を流す。円筒形MEA7の外面側は、スペースSを設けて高温の空気または高温の酸素に触れさせるようにする。円筒形MEA7の内面側をアンモニアを含む気体を流すのであるが、当該気体が素通りしてはアンモニア濃度を極低濃度にすることは難しい。このため、内径断面の中心からMEA7の内面へと放射状に、素通り妨害部(遮蔽部)の密度を低下させた内面追い込み部材45などを、圧力損失とアンモニア出口濃度とを考慮して、配置するのがよい。内面追い込み部材45は、アンモニアを含む気体が導入する入口に傘の先を向けた傘状の部材や、透過孔が設けられ、中心から縁にかけて透過孔密度が増大する傘状部材などであってもよい。
また、加熱装置であるヒータ41については、複数、並列配置した円筒形MEA7の全体をまとめて結束する態様により、設けることができる。このような全体をまとめて結束する態様をとることで、小型化をはかることができる。
【0041】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2における電気化学反応装置である燃料電池10を示す図である。この燃料電池置10では、円筒形の固体電解質1の内面を覆うようにアノード(第1電極)2が設けられ、また外面を覆うようにカソード(第2電極)5が設けられて、円筒形MEA7(1,2,5)が形成されている。筒状体は、一般には、らせん状やサーペンタイン状などに曲がりくねっていてもよいが、図9の場合は、やや湾曲した筒状体のMEA7である。本実施の形態の電気化学反応装置10では、円筒形のMEA7の内面に、金属線または導電線によるステント構造体14を装入して、内面電極の集電体とした点に特徴がある。稼働温度において、ステント構造体14は、筒状体のMEA7を内面側から支持している。
ステントの語は、もともとは、血管、気管、食道などの管腔臓器内に留置してその内腔を開存させる目的で用いられる金属線等で形成された管の内側支持構造をさす。本発明におけるステント構造体は、医学上の管の内側支持構造と類似させて、筒状体MEAの内面に、線または重なり線の形態で当接して支持する構造体を指し、線の組み立て構造が医学上のステントと同じか、類似するものを含む。さらに、上記の形態の構造体である限り、医学分野にない線の組み立て構造であってもよい。ステント構造体は、製造時に装入の際に弾性変形することが望ましい。かつ、高温で使用されるので、常温での剛性等が所定レベル以上あること(簡単に高温軟化しない構造)が望ましい。また、稼働温度における内面側からの支持は、とくに応力値範囲の限定はなく、ステント構造体が稼働温度において筒状体の内面に当接していれば支持しているものと解する。すなわち当接していれば、本発明における第1集電体は集電という目的を達成することができる。ただし、ステント構造体は、医学分野で用いられている構造を持つ場合に、明確に当該ステント構造体であると特定することができ、その他の場合には、上述のいずれかの構造を持つ集電体として特定されることが多い。それでも構わない。
【0042】
図9に示すステント構造体14を、図10によって説明する。図10(a)では、金属線がサーペンタイン状またはサインカーブ状に加工されて、幅Wの帯状体とされている。図10(b)は、この帯状体をらせん状に加工したステント構造体14を示す図である。図9に示すステント構造体14は、図10(b)に示すものと同じ構造を有する。
ステント構造体14は、応力がかからないフリーな状態での外径は、MEA7の内径よりは少し大きく設定してあり、MEA7の内面側に装入する際に弾性変形させる。装入状態では、ステント構造体は長手方向に少し伸ばされて、外径はMEA7の内径に合わせて小さくなる。このため、装入状態では、ステント構造体14は拡がろうとして、常温では、MEA7の内面側電極(アノード)2に弾性力で押し付けられる。
燃料電池10が稼働状態になる高温においては、弾性力は全く無いかほとんど無いが、(1)線膨張率をMEA7より大きくして(通常、金属はガラス等のセラミックスより数十%大きい)、かつ(2)高温でも所定レベル以上の強度を持つ、という条件を課すことで、高温でも内面電極2とステント構造体14との導電状態を維持することができる。
【0043】
図9に示す燃料電池10は、表1における反応R4を実現する。アノード反応は、H3+O2−→H2O+2e−であり、カソード反応は、O2+4e−→2O2−である。水素が燃料として燃料極(アノード2)に導入され、酸素が空気極(カソード5)に導入される。反応R4の結果、電力が発生するので、この電力をバッテリに蓄電して、または蓄電することなく使用時にタイミングを合わせて、電力需要に対応することができる。
【0044】
燃料としての水素を筒状体MEA7の内面側を流すことで、アンモニア分解装置について述べたように、強度的に安定した装置を得ることができる。すなわち、MEA7の素材は強度的に脆弱であるが、(a1)円筒形であることによって強度を高めることができる。薄片状のMEAを多段に積層した板状多層MEAに比べて、強度的に安定している。このため、燃料電池10に組み立てる際の取り扱いにおいて、少しの力の付加で破損することが避けられ、(a2)製造歩留まりの向上を得ることができる。板状多層MEAの場合、高い寸法精度がないと、少しの押さえ込みなどによって簡単に破損してしまう。また、組み立てた後でも、稼働と非稼働とのサイクルで、加熱と冷却とを繰り返すので、板状多層MEAの場合は、応力集中部から亀裂を発生して破損にいたりやすい。この点で、円筒形MEA7は、単に端部で固定するので、(a3)加工精度はそれほど高くする必要はなく、(a4)加熱と冷却のサイクルで亀裂が発生しやすい応力集中部は少ない。このため、使用と不使用とを繰り返す長期間にわたる耐久性にも優れている。その上、円筒形MEA7の長さは、容易に伸ばせるので、(a5)反応長を長くすることが容易であり、一つの円筒形MEAの能力を拡大しやすい。
【0045】
本実施の形態では、ステント構造体14を用いることで、下記の(e1)〜(e3)を容易に実現することができる。すなわち、筒状体の内径は十分大きくないのが普通であり、この中に、(e1)燃料の水素を流して、内面電極と接触させて十分反応させるスペースを確保しながら、(e2)内面電極に接触して導電を確実にとることができる構造の集電体を、(e3)困難な作業を要しないで、簡単に工業的に実現することができる。
【0046】
実施の形態2における燃料電池10についても、図8(b)に示すように、複数の燃料電池をまとめてヒータ41によって加熱してもよいし、また、内面側に追い込み部材45を配置してもよい。また、多段に直列に接続して、水素を上段から下段へと流してもよい。
【0047】
図11は、図9および図10に示すステント構造体に対する変形例を示す図である。このステント構造体は、金属線を編んで形成されている。導電線による円筒形の外面は、凹凸があるように見えるが、実際の円筒形MEA7の内面に確実にフィットするものである。図11に示す変形例のステント構造体14についても、図9および図10に示すステント構造体と同様に、(e1)〜(e3)の作用効果を得ることができる。
ステント構造体については2例のみ示したが、多くのその他のバリエーションを用いることができる。
【0048】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、組み立て時の取り扱いが容易で、かつ構造が簡単で、耐久性に優れ、低いランニングコストの、電気化学反応装置およびその製造方法を得ることができる。とくに、組み立て時の取り扱いが容易な筒状体のMEAを用いた場合、内面電極の集電体の配置に苦しむ場合が多いが、本発明では、非常に簡単に内面電極の集電体を形成することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 円筒形固体電解質、2 アノード、5 カソード、7 円筒形MEA、
10 ガス分解装置(アンモニア分解装置)、12 コイル状金属線(導電線構造体)、14 ステント構造体(導電線構造体)、21 金属粒連鎖体、21a 金属粒連鎖体の芯部(金属部)、21b 酸化層、22 アノードのイオン導電性セラミックス(SSZなど)、41 加熱装置(ヒーター)、45 内面追い込み部材、51 銀粒子、52 カソードのイオン導電性セラミックス(LSMなど)、S 外面側スペース(空気接触用スペース)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学反応装置およびその製造方法であって、より具体的には、簡単な構造で、耐久性に優れ、効率のよい反応をさせることができる、電気化学反応装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境への意識の高まりから、廃ガス中の臭気成分であるアンモニア等を、ppmオーダーまで分解することを目的とする除害装置に関心が集まっている。たとえば半導体製造装置の廃ガスには、アンモニア、水素等が含まれるのが普通であり、アンモニアの異臭を完全に除去するには、ppmオーダーにまで除害する必要がある。この目的のために、半導体製造装置の廃ガス放出の際にスクラバーを通して、薬品を含む水に有害ガスを吸収させる方法が多く用いられてきた。
一方、エネルギーや薬品等の投入なしに、安価なランニングコストを得るために、水素酸素燃料電池型分解方式を用いた、半導体製造装置の排気ガス処理の提案もされている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−45472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のスクラバーによれば、アンモニア等の除害はppmオーダーまで可能であるが、薬品や外部エネルギー(燃料)を必要とし、さらに触媒の定期的交換やメンテナンスを要し、ランニングコストが高いという問題がある。さらに装置が大掛かりとなり、たとえば既存の設備に付加的に設ける場合に配置が難しい場合も生じる。
一方、水素酸素燃料電池型分解方式については、ppmオーダーまでの除害を追求すると、燃料極側に排気ガスの長い流路が必要となり、圧力損失の増大を招く。さらに、水素酸素燃料電池分解方式におけるMEA(Membrane Electrode Assembly)は、強度的に脆弱であり、組み立て時の取り扱いが非常に難しいという問題がある。とくに多層に組み立てる場合に非常な注意を払っても、簡単に破損が生じやすく、その結果、組み立て工数の増大や歩留まり低下を招きやすい。
【0005】
上記のガス除害装置における水素酸素燃料電池の問題とは離れて、一般に、電気化学反応装置におけるMEAは、焼結体で構成されるので、強度的に脆く、簡単に破損するので、製造歩留まりが低い。このような、MEAの強度的な脆さは、ガス除害だけでなく、たとえば電力を生む燃料電池などにおいても共通する問題である。
【0006】
本発明は、組み立て時の取り扱いが容易で、かつ構造が簡単で、耐久性に優れ、低いランニングコストの、電気化学反応装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気化学反応装置は、内面側の第1電極と、外面側の第2電極と、該第1電極および第2電極によって挟まれる固体電解質とで構成される、筒状体のMEAと、MEAを常温より高い稼働温度に加熱するための加熱装置と、筒状体のMEAの内面側に装入され、第1電極に接する第1集電体とを備える。そして、第1集電体は、導電線で形成され、その導電線は、筒状体の内面に沿って、線の形態で、少なくとも稼働温度で該筒状体の内面に接触していることを特徴とする。
【0008】
上記の筒状体のMEAは、構造が非常に簡単であり、除害装置に組み立てる際、強度的に安定しており、また組み立てた後において高い耐久性を得ることができる。このような筒状体のMEAの内面側への集電体の配置は、狭隘な場所であるため、泣き所である。筒の内側という狭隘な場所に、第1電極と第1電極との反応成分(気体、液体)とを接触させるスペースを確保しながら集電体を配置することは非常な困難を伴う。しかし、上記のように、線の形態で内面に接触することを目的に形成された導電線の集電体を装入することで、第1電極と第1電極反応成分(気体、液体)とを接触させるスペースを確保しながら、非常に簡単に第1電極の集電体を配置することができる。すなわち、線の形態で内面に導電接触する集電体とすることで、第1電極と第1電極成分(気体または液体)とを接触をさせる部分を確保することが自ずと可能となる。たとえば筒状体のMEAが複雑に曲がりくねった形状をとる場合、本発明では、線の形態で内面に導電接触する集電体の送り込みに相応の工数を要するが、大量生産可能な工業的な製造形態で、確実に第1集電体を配置することができる。導電線には、金属線などを用いることができる。導電線の断面は、円形、楕円、矩形、など何でもよく、帯状の線であってもよい。
線の形態(または重なった線の形態)で接触するとは、導電線が筒状体内に埋め込まれず、筒状体の外部に位置する導電線が筒状体の内筒の表面に接触または当接して、すなわち線接触して、導通することをいう。
また、導電線は縒り線であってもよく、この場合、MEAの面には、重なった線の形態で、接触することになる。また導電線の編み目の交差部が、筒状体の内筒表面に接触等する場合も、重なった線の形態で接触する部分を含むことになる。重なった線の形態での接触は、線の形態での接触に含まれる。
筒状体MEAにおけるもう一つの大きな利点は、上記の他に、反応長さを容易に長くできることである。板状の積層タイプのMEAでは、熱膨張差に起因する歪み、それを抑え込むことで簡単に生じる破損があり、サイズに制約を課せられる。この点、筒状体は、歪みが生じにくく、1つのMEAのみである。すなわちMEAを複数、積層することがない。このため、長手方向に長い、直筒、曲がり筒のMEAを比較的容易に製造することができる。
上記の電気化学反応は、350℃〜1000℃の温度で実用レベルの反応速度に達するので、加熱装置は、MEAを外側から囲むヒータ等にするのがよい。
筒状体MEAの外面側電極(第2電極)の集電体は、簡略な形態から完備した形態まで、各種あるものとするが、第2電極の導電率が高い場合、単に配線の接続部程度のもの(非常に簡略な形態)であってもよい。
さらに筒状体のMEAの内径等を調整することで、低圧損を容易に実現することができる。また電気化学反応には薬液等が不要なので、ランニング経費を低くすることができる。
また、上記のMEAを、複数本、並列配置することで、時間当たりの反応量を増大させることができる。
【0009】
第1集電体は、導電接続材料を用いることなく、前記稼働温度で前記導電線の熱膨張によって前記筒状体の内面に接触しているものとできる。内面電極(第1電極)を全面にわたって所定の割合で露出させながら、導電接着剤を塗布する困難さは容易に推測でき、上記の構成によって、このような困難さは不要となる。たとえば白金ペーストを所定の連続パターンで内筒表面に塗布して焼成するという、困難な作業は不要となる。熱膨張係数は、金属線は、セラミックス等より数十パーセント、大きいのが普通である。このため、稼働温度で導電接触していて、常温に下げる過程で、接触抵抗が増大し、または所定の箇所で非導電状態になってもよい。
【0010】
第1集電体は、常温において、長手方向に弾性的に延伸されてその外径を小さくされるものとできる。これによって常温での組み立て時に、弾性変形させて容易に装入させることができる。金属の熱膨張係数は、10〜200×10−7/Kなので、稼働温度と常温との温度差に起因する熱膨張では、常温での組み立て時に、弾性変形なしで装入を容易にするほどの大きな隙間(熱膨張)を期待することはできない。そこで、装入に際しては、弾性変形させて、ガイドとなるワイヤや棒状部材を用いることで、容易に内筒へと挿入し、開放して、弾性力で当接させることができる。弾性変形を開放したとき、常温では、第1集電体は、内面に当接していなくてもよいが、導電線(主に金属線)とMEAの熱膨張の差を考慮すると、ほとんど当接するほど近接していることになる。しかし厳密には、常温では当接することは必要ない。常温で当接している場合、接触状態(導電状態)は、上記の稼働温度でも維持されるのが普通である。これによって、第1集電体を弾性変形させて、筒状体の中を通して、放して、留める、という非常に簡単な作業に対して、内筒中への導電ペースト塗布および焼成などの面倒な作業をする必要がない。
【0011】
第1集電体を、筒状体のMEAの内面側を通る加工された1本の導電線(立体一筆書き線)により形成することができる。上記の立体一筆書き線は、容易に加工できる。そして、立体一筆書き線は、常温で弾性変形に富み、取り扱いが容易であり、筒状体の内面への装入も非常に簡単にできる。このため、製造工数を節減することができ、また製造歩留まりを向上させることができる。稼働温度において強度が所定レベル以上あり、熱膨張率がMEAを構成するセラミックスより大きい金属を線材に用いることで、稼働温度において確実な導電状態を維持することができる。
【0012】
第1集電体を、複数本の導電線について、接合、編み、などの加工を少なくとも1つ施すことで、一体に形成したものとすることができる。これによって、製造時の簡単さに加えて、高温での稼働において高温変形が生じにくく、確実にMEA内面と導通状態を維持することができる構造を得ることができる。
【0013】
第1集電体を、稼働温度において筒状体のMEAを内面側から支持するステント構造体とすることができる。これによって、医学分野の技術や、既存の製造装置を用いて、簡単に第1集電体を得ることができる。
ステントの語は、もともとは、血管、気管、食道などの管腔臓器内に留置してその内腔を開存させる目的で用いられる金属線等で形成された管の内側支持構造をさす。本発明におけるステント構造体は、医学上の管の内側支持構造と類似させて、筒状体MEAの内面に、線または重なり線の形態で当接して支持する構造体を指し、線の組み立て構造が医学上のステントと同じか、類似するものを含む。さらに、上記の形態の構造体である限り、医学分野にない線の組み立て構造であってもよい。ステント構造体は、製造時に装入の際に弾性変形することが望ましい。かつ、高温で使用されるので、常温での剛性等が所定レベル以上あること(簡単に高温軟化しない構造)が望ましい。また、稼働温度における内面側からの支持は、とくに応力値範囲の限定はなく、ステント構造体が稼働温度において筒状体の内面に当接していれば支持しているものと解する。すなわち当接していれば、本発明における第1集電体は集電という目的を達成することができる。ただし、ステント構造体は、医学分野で用いられている構造を持つ場合に、明確に当該ステント構造体であると特定することができ、その他の場合には、上述のいずれかの構造を持つ集電体として特定されることが多い。また、ステント構造体は、それ自体が拡張する自己拡張型のステント構造体でも、第1集電体を内面側に挿入後バルーン等で拡張するバルーン拡張型どちらのタイプでもかまわないが、挿入後拡張する操作を省けるので、自己拡張型が好ましい。
【0014】
筒状体のMEAの内に、内径断面の中心からMEAの内面にかけて板状部の密度を低下させて、流体を中心から内面に追い込むようにする内面追い込み部材を、1つ以上、さらに備えることができる。これによって、燃料ガス等の素通りを防止して内面側電極で電気化学反応させながら、圧力損失を減らすことができる。内径断面の中心からMEAの内面にかけて板状部の密度の低下は、厳密でなくてもよく、たとえば、径方向に2等分の領域(中心部、内面側縁部)に分けて、それぞれの領域で板状部の平均密度が低下していればよい。
【0015】
MEAにおける、第1電極をアノードとし、第2電極をカソードとすることができる。アノードには還元性の気体または液体を導入し、カソードには酸化性の気体または液体を導入するので、これによってMEAの内側には還元性成分を流すことになる。この結果、導電線が金属線であっても高温酸化されないので、第1電極との接点を、メンテナンスフリーで、低抵抗の状態に維持することができる。
【0016】
アンモニアを含む気体を除害するために用いられ、筒状体のMEAの内側にアンモニアを流し、MEAの外側を大気に接触させることができる。アンモニアは微量の漏出で刺激臭を感じさせるので、筒状体の内側に流して電気化学反応により極低濃度にまで分解することで、アンモニアを排出する半導体製造装置の除害装置として好適に用いることができる。すなわち、出口でのアンモニア濃度のモニタが容易であり、さらに、不測の事故などに備えて予備的な装置を、アンモニアを漏らすことなく、簡単かつ確実に連結することができる。製造時には、平板積層型のMEAに比べて、寸法等の許容範囲が広く製造が容易であるために比較的安価に製造することができる。そして、長期間にわたる高温(使用)−常温(不使用)の熱サイクルにも高い耐久性を示すことができる。
【0017】
第2電極は、銀粒子と、イオン導電性セラミックスとを有し、集電体を兼ね、別体の第2電極の集電体を含まないことができる。これによって部品点数を減らしながら、たとえば、第2電極と大気等との接触を阻害する物を最大限減らして、第2電極での酸素イオン生成反応を促進することができる。また、第2電極の集電体を省略することで、たとえばその第2電極の集電体の高温酸化による劣化に配慮しなくて済む。
【0018】
筒状体のMEAを、直筒体、曲がった曲筒体、蛇行する蛇行筒体、らせん状のらせん筒体、のいずれかとすることができる。本発明の電気化学反応装置では、電極において反応する燃料成分等に気体または液体を用いるので、筒状体のMEAの形状は、装置の用途、使用場所等に応じて、多くの形状を選択できることが望ましい。そして、どのような複雑な筒状体の形状であっても、上記のいずれの第1集電体によっても、内面側の第1電極の全体にわたって、非常に簡単に、かつ確実に、導電をとることができる。複雑な筒状体であるほど、上記の第1集電体は、他の態様の集電体とは比較にならない簡単さと確実さで、集電機能を果たすことができる。
【0019】
本発明の電気化学反応装置の製造方法は、常温より高い稼働温度で稼働させるための電気化学装置を製造する。この製造方法では、内面側の第1電極と、外面側の第2電極と、該第1電極および第2電極によって挟まれる固体電解質とで構成される、筒状体のMEAを形成する工程と、MEAの第1電極の集電体となる、導電線で形成された第1集電体を準備する工程と、第1集電体を、該MEAの内面側に装入する工程とを備え、筒状体のMEAの形成工程、および第1集電体の準備工程では、導電線が、少なくとも稼働温度で該筒状体の内面に、線の形態で、接触するように設定することを特徴とする。
【0020】
上記の方法によって、筒状体のMEAの内側という狭隘な場所に、第1電極と第1電極成分(気体または液体)とを接触させるスペースを確保した上で、第1集電体を、内面に挿通させながら、簡単かつ確実に、配置することができる。このため、高い製造歩留まりで効率よく大量生産することができる。
【0021】
第1集電体の装入工程では、第1集電体を、長手方向に弾性的に延伸してその外径を小さくして筒状体のMEAに入れて、所定位置で放す、ことができる。また、とくに第1集電体が自己拡張型のステント構造体の場合には、当該ステント構造体を、筒状体のMEAより小さい直径に圧縮した状態で入れて、所定位置で放すことにより、その弾性的に自己拡張し留置させることができる。
これによって、直筒体MEAでも曲筒体MEAでも、簡単に、第1集電体またはステント構造体を装入することができる。筒状体のMEAの内面側の集電体の配置として、これ以上、簡単かつ確実な方法は容易に見いだすことが難しいほどである。なお、第1集電体またはステント構造体を内面側に入れて、放したあとで、当該第1集電体またはステント構造体をずれ等が生じないように留めるなどの工程は、当然、あってよい。外部の配線と接続をとるために、端子等に留めることは必要である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、組み立て時の取り扱いが容易で、かつ構造が簡単で、耐久性に優れ、低いランニングコストの電気化学反応装置およびその製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1における電気化学反応装置であるアンモニア分解装置を示す図である。
【図2】図1のアンモニア分解装置における電気化学反応を説明するための図である。
【図3】アノードでの電気化学反応を説明するための図である。
【図4】アノードにおける多孔性を示す図である。
【図5】カソードでの電気化学反応を説明するための図である。
【図6】円筒形MEAの製造方法のフローチャートである。
【図7】本発明の電気化学反応装置の製造方法を示す図である。
【図8】(a)は1つの電気化学反応装置の配置、(b)は複数の電気化学反応装置を配置、を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態2における電気化学反応装置である燃料電池を示す図である。
【図10】図9の燃料電池の第1集電体の構造を示す図であり、(a)は単線をサインカーブ状の帯に加工した状態、(b)は図9の燃料電池に用いた形態であり、(a)の帯をらせん状に巻いた状態を示す。
【図11】第1集電体をステント構造体とする場合の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の電気化学反応装置の実施の形態は、電気化学反応を進行させるかぎりどのような装置でもよく、電力を生じる燃料電池などの発電装置でもよいし、電力を投入して電気分解を進行させる電気分解装置でもよい。また、装置の主目的が有害ガスを分解する除害装置(発電および電力投入)であってもよいし、発電して電力を供給することを目的とする電池であってもよい。表1に、本発明の電気化学反応装置が用いられる、数例のみを示すが、このほかに燃料電池の名称で知られる、近年、技術蓄積の著しい分野の装置に用いることもできる。
【0025】
【表1】
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における電気化学反応装置であるガス除害装置、とくにアンモニア分解装置10を示す図である。このアンモニア分解装置10では、円筒形の固体電解質1の内面を覆うようにアノード(第1電極)2が設けられ、また外面を覆うようにカソード(第2電極)5が設けられて、円筒形MEA7(1,2,5)が形成されている。筒状体は、一般には、らせん状やサーペンタイン状などに曲がりくねっていてもよいが、図1の場合は、直円筒形のMEAである。本実施の形態の電気化学反応装置10では、稼働温度において、円筒形のMEA7の内面に、らせん状の金属線12が線の形態で接触して集電(導通)している。稼働温度は、650℃〜950℃の温度域にある。
【0027】
金属線12とMEA7の熱膨張の差は、稼働温度では両者が接触しながら、常温では両者の間に大きな間隙ができるほど大きくない。このため、らせん状金属線12は、応力がかからないフリーな状態で、かつ常温で、その螺旋径は、MEA7の内径よりは少し大きく設定するのがよい。そして、常温で、らせん状金属線12を円筒形MEA7の内面側に入れるとき、らせん状金属線12を軸線方向に伸ばして、らせんの外径(螺旋径)をMEAの内径より確実に小さくするのがよい。装入状態では、らせん状金属線は軸線方向に少し伸ばされて、螺旋径はMEA7の内径に合わせて小さくなる。すなわちフリーな状態におけるらせん状金属線よりも少し伸ばされて、外径は小さくされてMEA7の内面に接触している。このため、装入状態では、らせん状金属線12は拡がろうとして、MEA7の内面側電極(アノード)2に弾性力で押し付けられる。この弾性力は、あくまで常温で生じているものである。稼働温度で、らせん状金属線12とMEA7の内面とが接触さえしていればよいので、上記の弾性力は生じていなくてもよい。
【0028】
らせん状金属線12には高温での強度等を考慮してニッケル線を用いるのがよい。ニッケル線の径は、電気化学反応装置10で生じる電流によって変わる。たとえば、内径18mmの円筒MEA7をアンモニア除害装置に用いる場合、直径1mmのニッケル線とする。ニッケルの線膨張係数は、1.3×10−5K−1である。これに対してMEAの電極に用いられるLaSrCrO、YSZ等は0.8〜1.2×10−5K−1である。金属のほうが数十%、線膨張係数が大きい。
【0029】
この電気化学反応装置であるアンモニア分解装置10では、アンモニアを含んだ気体を円筒形MEA7の内面側(アノード2)に導入し、外面側(カソード5)は、空気に触れさせる。カソード5は空気中の酸素(O2)と反応する。円筒形MEA7の内面のアノード2に導入されたアンモニアは、酸素イオンと次のアノード反応をする。
(アノード反応):2NH3+3O2−→N2+3H2O+6e−
反応後の気体であるN2+3H2Oは、円筒形の内面側(内筒)を通って流れてゆく。また、外面のカソード5と接触する空気中の酸素は、外部配線から供給される電子e−と、次のカソード反応をする。
(カソード反応):O2+2e−→2O2−
カソード応の結果、MEA7の外面で生じた酸素イオンO2−は、固体電解質1を経由して、内面側のアノード2へと、厚み方向に沿って移動する。上記の電気化学反応は、温度650℃〜950℃の高温で、実用可能な分解速度を得ることができる。このため、ヒータ等の加熱装置41を備える。
上記のアンモニア分解の電気化学反応は、表1における反応R1に対応する。アンモニア分解の反応は、表1に示すように上記のR1以外に、反応R2,R3,R5がある。反応R2およびR3は、上記の反応R1と同じように、発電をする反応であるが、反応R5は、電力を投入する反応である。なお、半導体製造装置の排気には、アンモニアの他に水素も含まれるので、その場合には、反応R4も並行的に進行し、どちらも発電反応であり、負荷に電力を供給することができる。
【0030】
上記のような円筒形MEA7は、素材自体は脆弱(強度的に)であるが、(a1)円筒形であることによって強度を高めることができる。薄片状のMEAを多段に積層した板状多層MEAに比べて、強度的に安定している。このため、ガス分解装置10に組み立てる際の取り扱いにおいて、少しの力の付加で破損する等の事態が避けられ、(a2)製造歩留まりの向上を得ることができる。板状多層MEAの場合、高い寸法精度がないと、少しの押さえ込みなどによって簡単に破損してしまう。また、組み立てた後でも、稼働と非稼働とのサイクルで、加熱と冷却とを繰り返すので、板状多層MEAの場合は、熱膨張の差により応力集中部から破損しやすい。この点でも、円筒形MEA7は、端部で固定するので、(a3)加工精度はそれほど高くする必要はなく、(a4)加熱と冷却のサイクルで熱膨張の差により破損が発生する応力集中部は少ない。このため、使用と不使用とを繰り返す長期間にわたる耐久性にも優れている。その上、円筒形MEA7の長さは、容易に伸ばせるので、(a5)反応長を長くすることが容易であり、一つの円筒形MEAの能力を拡大しやすい。
さらに、本実施の形態におけるガス分解装置10では、アンモニアを円筒の内面側に通すので、極低濃度にまで分解することで、アンモニアを密封しながら実際上、消滅させることができる。このため円筒形という簡単な構造を用いることで、上記(a1)〜(a5)を得ることができる。
【0031】
図2は、図1のアンモニア分解装置10をより詳しく説明するための模式図である。アンモニア分解装置10では、上記のアノード反応およびカソード反応の結果、電力を発生するが、図2に示すように、電力はこのシステムに配置した負荷、たとえば加熱のためのヒータに供給して、電力費用の低減に寄与することができる。筒状体MEA7の内面側に、金属線構造体の集電体12を装入する大きな理由の一つが、アノード2の導電率が低い(電気抵抗がやや大きい)という点にある。この点を説明するために、筒状体MEA7を形成する材料について説明する。
アノード2は、表面酸化されて酸化層を有する金属粒連鎖体21と、酸素イオン導電性のセラミックス22とを主要部とする焼結体とするのがよい。酸素イオン導電性のセラミックス22としては、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンガレート)などを用いることができる。
また、カソード5は、銀(Ag)51と、酸素イオン導電性のセラミックス52とを主成分とする焼結体とするのがよい。この場合の酸素イオン導電性のセラミックス52として、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)、SSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト)などを用いるのがよい。
固体電解質1は、酸素イオン導電性がある、固体酸化物、溶融炭酸塩、リン酸、固体高分子などを用いることができる。円筒形に焼結されたものを購入する。固体酸化物1としては、SSZ、YSZ、SDC、LSGMなどを用いるのがよい。
【0032】
上記の材料で形成されたカソード5は、銀粒子51の含有などによって導電率は高い。このため、図2に示すように、カソード5の端にのみ接続端子部55を設けるだけでよい。しかし、アノード2は、導電率の高い材料を含まず導電率が低く、すなわち電気抵抗を示し、集電体の配置が必要になる。筒状体の内面側に、有害物質を流す利点を上記のように挙げたが、集電体を筒状体の内面側に確実に配置する技術はこれまで十分にあるとはいえず、むしろ、今後の需要が見込まれるにもかかわらず、これといった技術がない。筒状体の内径は十分大きくないのが普通であり、この中に、(e1)分解対象のガス成分を流して、内面電極と接触させて十分反応させるスペースを確保しながら、(e2)内面電極に接触して導電を確実にとることができる構造の集電体を、(e3)困難な作業を要しないで、簡単に工業的に実現したものは、これまで知られていない。内面側に流すガス成分は、還元性気体であるため、導電をとる作用(e2)を長期間にわたってさらに確実にすることができる。
本実施の形態では、弾性変形できるらせん状金属線、とくにらせん状ニッケル線を用いることで、上記(e1)〜(e3)を容易に実現することができる。らせん状金属線12は、ことわるまでもなく、一筆書き線の導電線である。本実施の形態では、直円筒MEAなので、上記(e3)の効果の有効性は、絶大とは感じられないかもしれないが、サーペンタイン状、コイル状などに湾曲した筒状体MEA7の場合には、本発明における導電性構造体の有効性の大きさを認識することができる。
【0033】
図3は、アノード2における電気化学反応を説明するための図である。アノード2は、上述のように、表面酸化された金属粒連鎖体21と、SSZ22との焼結体で構成される。金属粒連鎖体21の金属は、ニッケル(Ni)とするのがよい。Niに鉄(Fe)を少し含むものであってもよい。さらに好ましくはTiを2〜10000ppm程度の微量含むものである。
(1)Ni自体、アンモニアの分解を促進する触媒作用を有する。また、FeやTiを微量含むことでさらに触媒作用を高めることができる。さらに、このNiを酸化させて形成されたニッケル酸化物は、これら金属単味の促進作用をさらに大きく高めることができる。
(2)上記の触媒作用に加えて、アノードにおいて、酸素イオンを分解反応に参加させている。すなわち、分解を電気化学反応のなかで行う。上記のアノード反応2NH3+3O2−→N2+3H2O+6e−では、酸素イオンの寄与があり、アンモニアの分解速度を大きく向上させる。
(3)アノード反応では、自由な電子e−が生じる。電子e−がアノード2に滞留すると、アノード反応の進行は、妨げられる。金属粒連鎖体21は、ひも状に細長く、酸化層21bで被覆された中身21aは良導体の金属(Ni)である。電子e−は、ひも状の金属粒連鎖体の長手方向に、スムースに流れる。このため、電子e−がアノード2に滞留することはなく、金属粒連鎖体21の中身21aを通って、外に流れる。金属粒連鎖体21により、電子e−の通りが、非常に良くなるが、酸化層21bが形成されるので、全体的に導電率はそれほど高くなく、上記の集電体12の配置が必要となる。
図4は、SEM(Scanning Electron Microscopy)によるアノード2を示す断面図(二次電子像)である。図4によれば、アノード2は、サイズの大きい気孔2hが高い密度で分散しており、気孔率が高い多孔体であることが分かる。その結果、気孔率が高い多孔体であるため、アノード反応が生じる表面箇所が高密度で存在する。
要約すると、本発明の実施の形態におけるアノードは、次の(1)、(2)および(3)の作用を有する。
(1)ニッケル粒連鎖体のニッケル酸化層による分解反応の促進(高い触媒機能)
(2)酸素イオンによる分解促進(電気化学反応の中での分解促進)
(3)金属粒連鎖体のひも状良導体による電子の導通性確保(しかし、電子伝導性は集電体を不要とするほどは向上されない。)
上記の(1)、(2)および(3)によって、アノード反応は非常に大きく促進される。温度を上げて、触媒に分解対象ガスを接触させるだけで、その分解対象ガスの分解は進行する。しかし、上記のように、電気化学反応装置である燃料電池を構成する素子において、カソード5からイオン導電性の固体電解質1を経て、酸素イオンを反応に関与させ、その結果、生じる電子を外に導通させることで、上記の(1)、(2)および(3)により、分解反応速度は飛躍的に向上する。
【0034】
図5は、カソード5における電気化学反応を説明するための図である。本実施の形態におけるカソード5は、上述のように、Ag粒子51と、LSM52とで構成される。この中で、Ag51はカソード反応O2+2e−→2O2−を大きく促進させる触媒機能を有する。この結果、カソード反応は非常に大きい速度で進行することができる。
【0035】
次に、図6により、円筒形MEA7の製造方法の概要について説明する。図6には、アノード2、およびカソード5ごとに、焼成を行う工程を示す。まず、市販されている円筒形固体電解質1を購入して準備する。次いで、カソード5を形成する場合は、所定の流動性を持つようにカソード構成材料を溶媒に溶かした溶液を調整して、円筒形固体電解質の内面に均等になるように塗布する。次いで、カソード5に適切な焼成条件で焼成する。このあとアノード2の形成に移る。図6に示す製造方法の他に、多くのバリエーションがある。焼成回数を1回ですます場合で、図6に示すように、各部分ごとに焼成を行うのではなく、塗布状態のまま、各部分を形成して、最後に、各部分の最大公約数的な条件で焼成を行う。この他、多くのバリエーションがあり、各部分を構成する材料と、目標とする分解効率と、製造経費等を総合的に考えて製造条件を決めることができる。
【0036】
上記の円筒形MEAの製造方法における各部分の材料、焼成条件等の具体例は、次のとおりである。
1.アノード
(1)金属粒連鎖体21
金属粒連鎖体21は、還元析出法によって製造するのがよい。この金属粒連鎖体21の還元析出法については、特開2004−332047号公報などに詳述されている。ここで紹介されている還元析出法は、還元剤として3価チタン(Ti)イオンを用いる方法であり、析出する金属粒(Ni粒など)は微量のTiを含む。このため、Ti含有量を定量分析することで、3価チタンイオンによる還元析出法で製造されたものと特定することができる。3価チタンイオンとともに存在する金属イオンを変えることで、所望の金属の粒を得ることができる。Niの場合はNiイオンを共存させる。Feイオンを微量加えると、微量Feを含むNi粒連鎖体が形成される。
また、連鎖体を形成するには、金属が強磁性金属であり、かつ所定のサイズ以上であることを要する。NiもFeも強磁性金属なので、金属粒連鎖体を容易に形成することができる。サイズについての要件は、強磁性金属が磁区を形成して、相互に磁力で結合し、その結合状態のまま金属の析出→金属層の成長が生じて、金属体として全体が一体になる過程で、必要である。所定サイズ以上の金属粒が磁力で結合した後も、金属の析出は続き、たとえば結合した金属粒の境界のネックは、金属粒の他の部分とともに、太く成長する。アノード2に含まれる金属粒連鎖体21の平均直径Dは5nm以上、500nm以下の範囲とするのがよい。また、平均長さLは0.5μm以上、1000μm以下の範囲とするのがよい。また、上記平均長さLと平均径Dとの比は3以上とするのがよい。ただし、これら範囲外の寸法を持つものであってもよい。
(2)表面酸化
金属粒連鎖体または金属粒の表面酸化処理は、(i)気相法による熱処理酸化、(ii)電解酸化、(iii)化学酸化の3種類が好適な手法である。(i)では大気中で500〜700℃にて1〜30分処理するのがよい。最も簡便な方法であるが、酸化膜厚の制御が難しい。(ii)では標準水素電極基準で3V程度に電位を印加し、陽極酸化することにより表面酸化を行うが、表面積に応じ電気量により酸化膜厚を制御できる特徴がある。しかし、大面積化した場合、均一に酸化膜をつけることは難しい手法である。(iii)では硝酸などの酸化剤を溶解した溶液に1〜5分程度浸漬することで表面酸化する。酸化膜厚は時間と温度、酸化剤の種類でコントロールできるが薬品の洗浄が手間となる。いずれの手法も好適であるが、(i)または(iii)がより好ましい。
望ましい酸化層の厚みは、1nm〜100nmであり、より好ましくは10nm〜50nmの範囲とする。ただし、この範囲外であってもかまわない。酸化皮膜が薄すぎると触媒機能が不十分となる。また、わずかな還元雰囲気でもメタライズされてしまう恐れがある。逆に酸化皮膜が厚すぎると触媒性は充分保たれるが、反面、界面での電子伝導性が損なわれ、発電性能が低下する。
(3)焼成条件
SSZの原料粉末の平均径は0.5μm〜50μm程度とする。表面酸化された金属粒連鎖体21と、SSZ22との配合比は、mol比で0.1〜10の範囲とする。焼結方法は、たとえば大気雰囲気中で、温度1200℃〜1600℃の範囲に、30分〜180分間保持することで行う。
【0037】
2.カソード
(1)銀
Ag粒子の平均径は、10nm〜100nmとするのがよい。
(2)焼成条件
SSZの平均径は0.5μm〜50μm程度のものを用いるのがよい。銀と、SSZとの配合比は、0.01〜10程度とするのがよい。焼成条件は、大気雰囲気で、1000℃〜1600℃に、30分〜180分間程度保持する。
【0038】
図1および図2に示す、コイル状金属線の集電体12は、既存の方法により製造することができる。金属線には、銅線、銅合金線、アルミニウム線、アルミニウム合金線、他の種類の、金属線または合金線、を用いることができる。線径は、0.1mm〜5mm程度のうちから目的に応じて、適切な径を選ぶことができる。らせんの軸線方向のピッチ(螺旋ピッチ)は、アノード反応のためにアノード2の露出する部分を確保する必要があり、応力がかからないフリーな状態で少なくとも線径の0.5倍以上の間隔をあけた螺旋とするのがよい。
【0039】
図7に示すように、上記の導電線構造体とくにコイル状金属線12を準備して、図6によって作製した、または購入した、円筒形MEA7に、そのコイル状金属線12を弾性変形させて入れて、弾性変形を開放する(放す)。コイル状金属線12の装入のために、ガイドとなるワイヤや棒状部品を、当該コイル状金属線の先の部分に取り付けて、そのガイドのワイヤ等を先に円筒内に通しながら入れてもよい。コイル状金属線12の螺旋径は、応力がかからない状態では、円筒形MEA7の内径よりは大きくしておく。装入によって、らせん状金属線を軸線方向に伸ばして、螺旋ピッチの間隔を大きくすることで、螺旋径を小さくして、円筒形MEA7の内面側に入るようにする。この装入の際の螺旋ピッチの間隔の拡大によって、アノード反応を生じるアノード表面をアンモニアに対して、十分露出させることができる。
図7に示す製造方法では、前提条件として、筒状体のMEAの形成工程、および第1集電体の準備工程では、導電線が、少なくとも稼働温度で該筒状体の内面に、線の形態で、接触するように設定する。
常温で、上記のようにらせん状金属線12がMEA7の内面に押し付けられていれば、両者の熱膨張率の差は、それほど大きくないので、稼働温度においても接触(導電)は保たれる。両者の熱膨張率の差が大きい場合、押し付けが大きいと稼働温度までの昇温中に座屈が生じて、押し付けが十分得られないことがある。このため稼働温度で確実に接触(導通)を得るために、常温ではむしろ押し付け(接触)が生じていないほうが好ましい場合もある。
【0040】
図8(a)は、1つの円筒形MEA7を用いた場合のガス除害装置であり、また、図8(b)は、図8(a)に示すものを、複数(12個)、並列に配置した構成のガス除害装置である。1つのMEA7では処理容量が不足する場合に、複数の並列配置は、面倒な加工無しに容量増大をはかることができる。複数のどの円筒形MEA7についても、内面側に金属線構造体の集電体を装入し、その内面側にアンモニアを含む気体を流す。円筒形MEA7の外面側は、スペースSを設けて高温の空気または高温の酸素に触れさせるようにする。円筒形MEA7の内面側をアンモニアを含む気体を流すのであるが、当該気体が素通りしてはアンモニア濃度を極低濃度にすることは難しい。このため、内径断面の中心からMEA7の内面へと放射状に、素通り妨害部(遮蔽部)の密度を低下させた内面追い込み部材45などを、圧力損失とアンモニア出口濃度とを考慮して、配置するのがよい。内面追い込み部材45は、アンモニアを含む気体が導入する入口に傘の先を向けた傘状の部材や、透過孔が設けられ、中心から縁にかけて透過孔密度が増大する傘状部材などであってもよい。
また、加熱装置であるヒータ41については、複数、並列配置した円筒形MEA7の全体をまとめて結束する態様により、設けることができる。このような全体をまとめて結束する態様をとることで、小型化をはかることができる。
【0041】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2における電気化学反応装置である燃料電池10を示す図である。この燃料電池置10では、円筒形の固体電解質1の内面を覆うようにアノード(第1電極)2が設けられ、また外面を覆うようにカソード(第2電極)5が設けられて、円筒形MEA7(1,2,5)が形成されている。筒状体は、一般には、らせん状やサーペンタイン状などに曲がりくねっていてもよいが、図9の場合は、やや湾曲した筒状体のMEA7である。本実施の形態の電気化学反応装置10では、円筒形のMEA7の内面に、金属線または導電線によるステント構造体14を装入して、内面電極の集電体とした点に特徴がある。稼働温度において、ステント構造体14は、筒状体のMEA7を内面側から支持している。
ステントの語は、もともとは、血管、気管、食道などの管腔臓器内に留置してその内腔を開存させる目的で用いられる金属線等で形成された管の内側支持構造をさす。本発明におけるステント構造体は、医学上の管の内側支持構造と類似させて、筒状体MEAの内面に、線または重なり線の形態で当接して支持する構造体を指し、線の組み立て構造が医学上のステントと同じか、類似するものを含む。さらに、上記の形態の構造体である限り、医学分野にない線の組み立て構造であってもよい。ステント構造体は、製造時に装入の際に弾性変形することが望ましい。かつ、高温で使用されるので、常温での剛性等が所定レベル以上あること(簡単に高温軟化しない構造)が望ましい。また、稼働温度における内面側からの支持は、とくに応力値範囲の限定はなく、ステント構造体が稼働温度において筒状体の内面に当接していれば支持しているものと解する。すなわち当接していれば、本発明における第1集電体は集電という目的を達成することができる。ただし、ステント構造体は、医学分野で用いられている構造を持つ場合に、明確に当該ステント構造体であると特定することができ、その他の場合には、上述のいずれかの構造を持つ集電体として特定されることが多い。それでも構わない。
【0042】
図9に示すステント構造体14を、図10によって説明する。図10(a)では、金属線がサーペンタイン状またはサインカーブ状に加工されて、幅Wの帯状体とされている。図10(b)は、この帯状体をらせん状に加工したステント構造体14を示す図である。図9に示すステント構造体14は、図10(b)に示すものと同じ構造を有する。
ステント構造体14は、応力がかからないフリーな状態での外径は、MEA7の内径よりは少し大きく設定してあり、MEA7の内面側に装入する際に弾性変形させる。装入状態では、ステント構造体は長手方向に少し伸ばされて、外径はMEA7の内径に合わせて小さくなる。このため、装入状態では、ステント構造体14は拡がろうとして、常温では、MEA7の内面側電極(アノード)2に弾性力で押し付けられる。
燃料電池10が稼働状態になる高温においては、弾性力は全く無いかほとんど無いが、(1)線膨張率をMEA7より大きくして(通常、金属はガラス等のセラミックスより数十%大きい)、かつ(2)高温でも所定レベル以上の強度を持つ、という条件を課すことで、高温でも内面電極2とステント構造体14との導電状態を維持することができる。
【0043】
図9に示す燃料電池10は、表1における反応R4を実現する。アノード反応は、H3+O2−→H2O+2e−であり、カソード反応は、O2+4e−→2O2−である。水素が燃料として燃料極(アノード2)に導入され、酸素が空気極(カソード5)に導入される。反応R4の結果、電力が発生するので、この電力をバッテリに蓄電して、または蓄電することなく使用時にタイミングを合わせて、電力需要に対応することができる。
【0044】
燃料としての水素を筒状体MEA7の内面側を流すことで、アンモニア分解装置について述べたように、強度的に安定した装置を得ることができる。すなわち、MEA7の素材は強度的に脆弱であるが、(a1)円筒形であることによって強度を高めることができる。薄片状のMEAを多段に積層した板状多層MEAに比べて、強度的に安定している。このため、燃料電池10に組み立てる際の取り扱いにおいて、少しの力の付加で破損することが避けられ、(a2)製造歩留まりの向上を得ることができる。板状多層MEAの場合、高い寸法精度がないと、少しの押さえ込みなどによって簡単に破損してしまう。また、組み立てた後でも、稼働と非稼働とのサイクルで、加熱と冷却とを繰り返すので、板状多層MEAの場合は、応力集中部から亀裂を発生して破損にいたりやすい。この点で、円筒形MEA7は、単に端部で固定するので、(a3)加工精度はそれほど高くする必要はなく、(a4)加熱と冷却のサイクルで亀裂が発生しやすい応力集中部は少ない。このため、使用と不使用とを繰り返す長期間にわたる耐久性にも優れている。その上、円筒形MEA7の長さは、容易に伸ばせるので、(a5)反応長を長くすることが容易であり、一つの円筒形MEAの能力を拡大しやすい。
【0045】
本実施の形態では、ステント構造体14を用いることで、下記の(e1)〜(e3)を容易に実現することができる。すなわち、筒状体の内径は十分大きくないのが普通であり、この中に、(e1)燃料の水素を流して、内面電極と接触させて十分反応させるスペースを確保しながら、(e2)内面電極に接触して導電を確実にとることができる構造の集電体を、(e3)困難な作業を要しないで、簡単に工業的に実現することができる。
【0046】
実施の形態2における燃料電池10についても、図8(b)に示すように、複数の燃料電池をまとめてヒータ41によって加熱してもよいし、また、内面側に追い込み部材45を配置してもよい。また、多段に直列に接続して、水素を上段から下段へと流してもよい。
【0047】
図11は、図9および図10に示すステント構造体に対する変形例を示す図である。このステント構造体は、金属線を編んで形成されている。導電線による円筒形の外面は、凹凸があるように見えるが、実際の円筒形MEA7の内面に確実にフィットするものである。図11に示す変形例のステント構造体14についても、図9および図10に示すステント構造体と同様に、(e1)〜(e3)の作用効果を得ることができる。
ステント構造体については2例のみ示したが、多くのその他のバリエーションを用いることができる。
【0048】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、組み立て時の取り扱いが容易で、かつ構造が簡単で、耐久性に優れ、低いランニングコストの、電気化学反応装置およびその製造方法を得ることができる。とくに、組み立て時の取り扱いが容易な筒状体のMEAを用いた場合、内面電極の集電体の配置に苦しむ場合が多いが、本発明では、非常に簡単に内面電極の集電体を形成することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 円筒形固体電解質、2 アノード、5 カソード、7 円筒形MEA、
10 ガス分解装置(アンモニア分解装置)、12 コイル状金属線(導電線構造体)、14 ステント構造体(導電線構造体)、21 金属粒連鎖体、21a 金属粒連鎖体の芯部(金属部)、21b 酸化層、22 アノードのイオン導電性セラミックス(SSZなど)、41 加熱装置(ヒーター)、45 内面追い込み部材、51 銀粒子、52 カソードのイオン導電性セラミックス(LSMなど)、S 外面側スペース(空気接触用スペース)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面側の第1電極と、外面側の第2電極と、該第1電極および第2電極によって挟まれる固体電解質とで構成される、筒状体のMEA(Membrane Electrode Assembly)と、
前記MEAを常温より高い稼働温度に加熱するための加熱装置と、
前記筒状体のMEAの内面側に装入され、前記第1電極に接する第1集電体とを備え、
前記第1集電体は、導電線で形成され、その導電線は、前記筒状体の内面に沿って、線の形態で、少なくとも前記稼働温度で該筒状体の内面に接触していることを特徴とする、電気化学反応装置。
【請求項2】
前記第1集電体は、導電接続材料を用いることなく、前記稼働温度で前記導電線の熱膨張によって前記筒状体の内面に接触していることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記第1集電体は、常温において、長手方向に弾性的に延伸されてその外径を小さくされるものであることを特徴とする、請求項1または2に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記第1集電体が、前記筒状体のMEAの内面側を通る加工された1本の導電線(立体一筆書き線)により形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学反応装置。
【請求項5】
前記第1集電体が、複数本の前記導電線について、接合、編み、などの加工が少なくとも1つ施されることで、一体に形成されたものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学反応装置。
【請求項6】
前記第1集電体が、前記稼働温度において前記筒状体のMEAを内面側から支持するステント構造体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気化学反応装置。
【請求項7】
前記MEAにおける、第1電極をアノードとし、第2電極をカソードとすることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気化学反応装置。
【請求項8】
アンモニアを含む気体を除害するために用いられ、前記筒状体のMEAの内側にアンモニアを流し、前記MEAの外側を大気に接触させることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気化学反応装置。
【請求項9】
前記第2電極は、銀粒子と、イオン導電性セラミックスとを有し、集電体を兼ね、別体の第2電極の集電体を含まないことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気化学反応装置。
【請求項10】
前記筒状体のMEAが、直筒体、曲がった曲筒体、蛇行する蛇行筒体、らせん状のらせん筒体、のいずれかであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の電気化学反応装置。
【請求項11】
常温より高い稼働温度で稼働させるための電気化学装置を製造する方法であって、
内面側の第1電極と、外面側の第2電極と、該第1電極および第2電極によって挟まれる固体電解質とで構成される、筒状体のMEAを形成する工程と、
前記MEAの第1電極の集電体となる、導電線で形成された第1集電体を準備する工程と、
前記第1集電体を、該MEAの内面側に装入する工程とを備え、
前記筒状体のMEAの形成工程、および第1集電体の準備工程では、前記導電線が、少なくとも前記稼働温度で該筒状体の内面に、線の形態で、接触するように設定することを特徴とする、電気化学反応装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1集電体の装入工程では、前記第1集電体を、長手方向に弾性的に延伸してその外径を小さくして前記筒状体のMEAに入れて、所定位置で放す、ことを特徴とする、請求項11に記載の電気化学反応装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1集電体の装入工程では、前記第1集電体が自己拡張型のステント構造体であって、前記筒状体のMEAより小さい直径に圧縮した状態で入れて、所定位置で放すことにより、その弾性的に自己拡張し留置させる、ことを特徴とする、請求項11または12に記載の電気化学反応装置の製造方法。
【請求項1】
内面側の第1電極と、外面側の第2電極と、該第1電極および第2電極によって挟まれる固体電解質とで構成される、筒状体のMEA(Membrane Electrode Assembly)と、
前記MEAを常温より高い稼働温度に加熱するための加熱装置と、
前記筒状体のMEAの内面側に装入され、前記第1電極に接する第1集電体とを備え、
前記第1集電体は、導電線で形成され、その導電線は、前記筒状体の内面に沿って、線の形態で、少なくとも前記稼働温度で該筒状体の内面に接触していることを特徴とする、電気化学反応装置。
【請求項2】
前記第1集電体は、導電接続材料を用いることなく、前記稼働温度で前記導電線の熱膨張によって前記筒状体の内面に接触していることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記第1集電体は、常温において、長手方向に弾性的に延伸されてその外径を小さくされるものであることを特徴とする、請求項1または2に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記第1集電体が、前記筒状体のMEAの内面側を通る加工された1本の導電線(立体一筆書き線)により形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学反応装置。
【請求項5】
前記第1集電体が、複数本の前記導電線について、接合、編み、などの加工が少なくとも1つ施されることで、一体に形成されたものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学反応装置。
【請求項6】
前記第1集電体が、前記稼働温度において前記筒状体のMEAを内面側から支持するステント構造体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気化学反応装置。
【請求項7】
前記MEAにおける、第1電極をアノードとし、第2電極をカソードとすることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気化学反応装置。
【請求項8】
アンモニアを含む気体を除害するために用いられ、前記筒状体のMEAの内側にアンモニアを流し、前記MEAの外側を大気に接触させることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気化学反応装置。
【請求項9】
前記第2電極は、銀粒子と、イオン導電性セラミックスとを有し、集電体を兼ね、別体の第2電極の集電体を含まないことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気化学反応装置。
【請求項10】
前記筒状体のMEAが、直筒体、曲がった曲筒体、蛇行する蛇行筒体、らせん状のらせん筒体、のいずれかであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の電気化学反応装置。
【請求項11】
常温より高い稼働温度で稼働させるための電気化学装置を製造する方法であって、
内面側の第1電極と、外面側の第2電極と、該第1電極および第2電極によって挟まれる固体電解質とで構成される、筒状体のMEAを形成する工程と、
前記MEAの第1電極の集電体となる、導電線で形成された第1集電体を準備する工程と、
前記第1集電体を、該MEAの内面側に装入する工程とを備え、
前記筒状体のMEAの形成工程、および第1集電体の準備工程では、前記導電線が、少なくとも前記稼働温度で該筒状体の内面に、線の形態で、接触するように設定することを特徴とする、電気化学反応装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1集電体の装入工程では、前記第1集電体を、長手方向に弾性的に延伸してその外径を小さくして前記筒状体のMEAに入れて、所定位置で放す、ことを特徴とする、請求項11に記載の電気化学反応装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1集電体の装入工程では、前記第1集電体が自己拡張型のステント構造体であって、前記筒状体のMEAより小さい直径に圧縮した状態で入れて、所定位置で放すことにより、その弾性的に自己拡張し留置させる、ことを特徴とする、請求項11または12に記載の電気化学反応装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−14309(P2011−14309A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156037(P2009−156037)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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