説明

電気化学表示パネルおよび電気化学表示パネルの製造方法

【課題】高開口率と低抵抗とを共に実現することができ、高画質で信頼性の高い電気化学表示パネルを提供すること。
【解決手段】透明基板に細い凹部を形成し、凹部を金属で充填して透明基板と略同一面の細くて深い金属電極を形成し、金属電極を画素の駆動電圧を供給する電源の配線とするとともに、画素電極を金属電極の内側に広く形成することで、高開口率と低抵抗とを共に実現することができ、高画質で信頼性の高い電気化学表示パネルを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学表示パネルおよび電気化学表示パネルの製造方法に関し、特に観察側基板上に画素電極を有する電気化学表示パネルおよび電気化学表示パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、視認性に優れ、低消費電力な表示素子が求められている。現在一般に用いられるCRT、PDP、LCDといった自発光の表示素子や発光体から発せられる光を変調するような表示素子は、明るく見やすいが、消費電力が大きいという問題を抱える。
【0003】
低消費電力という観点からは、一旦表示した画像を、無電力状態でも保持し続けるメモリ特性を有することが望ましく、さらには駆動電圧が低いことが望まれる。
【0004】
このような特性を備える表示素子として、電極上の酸化還元反応による光吸収状態の可逆変化を利用したエレクトロクロミック方式や、銀または銀を化学構造中に有する化合物を含む電解液から電極上への銀の析出と電解液への溶解とを利用するエレクトロデポジション方式等の電気化学表示素子を用いた電気化学表示パネルが注目されている。
【0005】
エレクトロクロミック方式およびエレクトロデポジション方式ともに、表示原理としては、電極上での酸化還元反応による反応物質単独での光吸収の変化を利用したものであり、LCDに比べて偏光板やバックライトといった追加部材も不要であり、低コスト化および省プロセス化に有利な表示素子である。
【0006】
これらの電気化学表示素子の構成には、特許文献1に開示されている観察側基板OB上に共通電極CEを有し、反対側基板RB上に画素電極PEを有するタイプと、特許文献2に開示されている観察側基板OB上に画素電極PEを有し、反対側基板RB上に共通電極CEを有するタイプとが考えられる。図12に、特許文献1および特許文献2に示された電気化学表示素子の構成を模式的に示す。
【0007】
これらを比較すると、図12(a)に示す、特許文献1に開示されている反対側基板RB上に画素電極PEを有するタイプよりも、図12(b)に示す、特許文献2に開示されている観察側基板OS上に画素電極PEを有するタイプの方が、酸化還元反応による反応物質単独での光吸収の変化の発生する位置BKが画素電極PE上に限られるために、画像にじみが少なく、電気化学表示パネルの高画質化に有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3985667号公報
【特許文献2】特開2004−191945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に示された電気化学表示素子の構成を用いて、表示パネルの大型化を図ろうとすると、画素電極に電流を供給するための電源の配線が長くなるために配線抵抗が増大し、電圧降下による画質のムラ、劣化等が発生する。その対策として配線の幅を太くすると、画素電極の面積即ち画素の開口率が低下するために、画素のコントラストが低下し、表示性能が劣化する。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、製造工程の複雑化と高価格化を招くことなく、高開口率と低抵抗とを共に実現することができ、高画質で信頼性の高い電気化学表示パネルおよび電気化学表示パネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、下記構成により達成することができる。
【0012】
1.画素毎に分割された透明な画素電極を有する観察側基板と、
共通電極を有する共通電極基板と、
対向された前記観察側基板と前記共通電極基板との間に封入された電解液とを備えた電気化学表示パネルにおいて、
前記観察側基板は、
凹部を有する透明基板と、
前記凹部を金属で充填して形成された金属電極と、
前記画素電極と前記金属電極との間の導通を制御するためのトランジスタとを有することを特徴とする電気化学表示パネル。
【0013】
2.前記金属電極は、各々の前記画素を囲む格子状に形成されていることを特徴とする前記1に記載の電気化学表示パネル。
【0014】
3.前記金属電極は、複数の前記画素を囲む格子状に形成されていることを特徴とする前記1に記載の電気化学表示パネル。
【0015】
4.前記画素は、行および列に2次元マトリクス状に配置され、
前記金属電極は、各々の前記行又は前記列毎にストライプ状に形成されていることを特徴とする前記1に記載の電気化学表示パネル。
【0016】
5.前記画素は、行および列に2次元マトリクス状に配置され、
前記金属電極は、複数の前記行又は複数の前記列毎にストライプ状に形成されていることを特徴とする前記1に記載の電気化学表示パネル。
【0017】
6.前記凹部は、エッチング加工により形成されることを特徴とする前記1から5の何れか1項に記載の電気化学表示パネル。
【0018】
7.前記凹部は、型押し加工により形成されることを特徴とする前記1から5の何れか1項に記載の電気化学表示パネル。
【0019】
8.画素毎に分割された透明な画素電極を有する観察側基板と、
共通電極を有する共通電極基板と、
前記観察側基板と前記共通電極基板との間に封入された電解液とを備えた電気化学表示パネルの製造方法において、
前記観察側基板を形成する観察側基板形成工程を備え、
前記観察側基板形成工程は、
透明基板の表面に凹部を形成する凹部形成工程と、
前記凹部を含む前記透明基板の表面に金属の膜を成膜する金属膜成膜工程と、
前記凹部を除く前記透明基板の表面に形成された前記金属の膜を化学機械研磨により除去し、金属電極を形成する研磨工程と、
前記画素電極と、前記金属電極との間の導通を制御するためのトランジスタを形成するトランジスタ形成工程と、
前記画素電極を形成する画素電極形成工程とを有することを特徴とする電気化学表示パネルの製造方法。
【0020】
9.前記研磨工程で形成された前記金属電極の表面の高さは、前記透明基板の表面の高さと略同一、または前記透明基板の表面の高さよりも前記凹部側に低いことを特徴とする前記8に記載の電気化学表示パネルの製造方法。
【0021】
10.前記凹部形成工程において、
前記凹部は、エッチング加工により形成されることを特徴とする前記8または9に記載の電気化学表示パネルの製造方法。
【0022】
11.前記凹部形成工程において、
前記凹部は、型押し加工により形成されることを特徴とする前記8または9に記載の電気化学表示パネルの製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、透明基板に凹部を形成し、凹部を金属で充填して金属電極を形成することで、高開口率と低抵抗とを共に実現することができ、高画質で信頼性の高い電気化学表示パネルを提供することができる。
【0024】
また、観察側基板を形成する観察側基板形成工程に、透明基板の表面に凹部を形成する凹部形成工程と、凹部を含む透明基板の表面に金属の膜を形成する金属膜成膜工程と、凹部を除く金属の膜を化学機械研磨により除去し、金属電極を形成する研磨工程とを有することで、製造工程の複雑化と高価格化を招くことなく、高開口率と低抵抗とを共に実現することができ、高画質で信頼性の高い電気化学表示パネルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明における電気化学表示パネルの第1の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明における電気化学表示パネルの第1の実施の形態の画素の構成を示す断面模式図である。
【図3】本発明における電気化学表示パネルの第1の実施の形態の観察側基板の構成を示す模式図である。
【図4】本発明における電気化学表示パネルの第1の実施の形態の製造方法を示すメイン工程表である。
【図5】図4の工程S11の詳細を示すサブ工程表である。
【図6】図5の各工程を示す断面模式図(1/2)である。
【図7】図5の各工程を示す断面模式図(2/2)である。
【図8】凹部を形成する他の方法を説明するための断面模式図である。
【図9】本発明における電気化学表示パネルの第2の実施の形態の観察側基板の構成を示す模式図である。
【図10】本発明における電気化学表示パネルの第3の実施の形態の観察側基板の構成を示す模式図である。
【図11】本発明における電気化学表示パネルの第4の実施の形態の観察側基板の構成を示す模式図である。
【図12】特許文献1および特許文献2に示された電気化学表示素子の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限らない。なお、図中、同一あるいは同等の部分には同一の番号を付与し、重複する説明は省略することがある。
【0027】
最初に、本発明における電気化学表示パネルの第1の実施の形態について、図1から図3を用いて説明する。図1は、本発明における電気化学表示パネルの第1の実施の形態の構成を示すブロック図である。ここでは、エレクトロデポジション方式(以下、ED方式と言う)の表示素子(以下、ED素子と言う)を用いた電気化学表示パネルを例にとって説明するが、エレクトロクロミック方式の表示素子を用いた電気化学表示パネルであっても同様である。
【0028】
図1において、電気化学表示パネル1は、パネル上にm行n列(m、nは正の整数)の2次元マトリクス状に配置された画素Pjk(j、kは正の整数で、1≦j≦m、1≦k≦n)、m行の垂直走査を行う垂直走査回路31、n列の水平走査を行う水平走査回路21、画素Pjkの駆動電圧を供給する電源Vddおよび画素Pjkの共通電位を供給するコモン電源Vcom等で構成される。図1では、画素P11、P12、P21、P22の4画素を例示している。
【0029】
なお、画素Pjkの配列は2次元マトリクス状に限るものではなく、例えばハニカム配列等であってもよい。
【0030】
垂直走査回路31は、電気化学表示パネル1を駆動するために外部から供給される垂直駆動信号Sgに基づいて、垂直走査線Gj(1≦j≦m)を順次アクティブ状態(例えば高電位)に制御する。水平走査回路21は、電気化学表示パネル1を駆動するために外部から供給される水平駆動信号Ssに基づいて、水平走査線Sk(1≦k≦n)を順次アクティブ状態(例えば高電位)に制御する。
【0031】
画素Pjkは、選択トランジスタQ1および駆動トランジスタQ2の2個の薄膜トランジスタTFTと、ED素子ED等で構成される。ED素子EDは、各画素毎に設けられた画素電極111と、全画素共通の共通電極211との間に、電解液301が封入されて構成されている。共通電極211は共通電源Vcomに接続されている。
【0032】
2個の薄膜トランジスタTFTは、所謂アクティブマトリクス方式の構成をとっている。選択トランジスタQ1は、ゲートG1が垂直走査線Gjに接続され、ソースSO1が水平走査線Skに接続され、ドレインD1が駆動トランジスタQ2のゲートG2に接続されている。駆動トランジスタQ2は、ソースSO2が電源Vddに接続され、ドレインD2がED素子EDの画素電極111に接続されている。
【0033】
垂直走査線Gjがアクティブ状態にある時、即ち画素Pjkの選択トランジスタQ1がオン状態にある時に、水平走査線Skがアクティブ状態にされることで、画素Pjkの駆動トランジスタQ2がオン状態となり、駆動トランジスタQ2を介して画素電極111が電源Vddに接続される。
【0034】
これによって、画素電極111と共通電極211との間に正負両極性の電圧が印加されることにより、両電極の表面で銀の酸化還元反応が行われ、画素電極111の表面では、還元状態の黒い銀の状態と、酸化状態の透明な銀の状態とが可逆的に切り替えられ、画素Pjkに表示が行われる。
【0035】
図2は、本発明における電気化学表示パネルの第1の実施の形態の構成を示す断面模式図である。ここでは、1画素の断面を示してある。
【0036】
図2において、電気化学表示パネル1は、電気化学表示パネル1の観察側の基板である観察側基板100、観察側基板100に対向する共通電極基板200および観察側基板100と共通電極基板200との間に封入された電解液301等で構成される。
【0037】
共通電極基板200は、基板201等で構成される。また、ED素子EDを構成する共通電極211は、共通電極基板200の一部として形成される。
【0038】
観察側基板100は、透明基板101、金属電極MLおよび選択トランジスタQ1と駆動トランジスタQ2との2個の薄膜トランジスタTFT等で構成される。また、ED素子EDを構成する画素電極111は、例えば酸化インジウムスズ(ITO)等の透明電極であり、観察側基板100の一部として形成される。
【0039】
さらに詳細に見ると、透明基板101は細い溝状の凹部155を有している。金属電極MLは、凹部155を例えばCu等の金属で充填して形成された細い線状の電極で、金属電極MLの表面の高さは、透明基板101の表面の高さと略同一、または透明基板101の表面よりも凹部155側に僅かに低い。金属電極MLと薄膜トランジスタTFTとは絶縁層103によって絶縁されている。
【0040】
凹部155を深くすることで、細い線状の電極であっても金属電極MLの抵抗値を低くすることができる。また、金属電極MLの表面の高さを透明基板101の表面の高さと略同一または透明基板101の表面の高さよりも凹部155側に僅かに低くすることで、透明基板101の表面上に金属電極MLを形成するよりも、絶縁層103による金属電極MLのカバレッジがよくなるので、金属電極MLの電解液301による腐食を防止でき、信頼性が高くなる。
【0041】
金属電極MLは画素Pjkの駆動電圧を供給する電源Vddに接続されている。金属電極MLと駆動トランジスタQ2のソースSO2とは、絶縁層103に形成されたコンタクトホールCHを介して電気的に接続されている。なお、図の右側に示した金属電極MLは、図3で後述する画素Pjkの周囲を囲むように細い格子状に形成された金属電極MLである。
【0042】
薄膜トランジスタTFTは、通常のトップゲート型の薄膜トランジスタである。画素電極111は、駆動トランジスタQ2のドレインD2と、層間絶縁膜105およびゲート絶縁膜107に開口されたコンタクトホールを介して電気的に接続されている。
【0043】
図では、選択トランジスタQ1のドレインD1と駆動トランジスタQ2のゲートG2とを接続する配線と、画素電極111と駆動トランジスタQ2のドレインD2とを接続する配線とが交差しているように見えるが、図の紙面垂直方向にずれた位置で配線されており、交差することはない。
【0044】
図3は、本発明における電気化学表示パネルの第1の実施の形態の観察側基板の構成を示す模式図である。ここでは、観察側基板100を画素電極111の側から見た時の4画素分の構成を示してある。
【0045】
図3において、金属電極MLは、各々の画素Pjkの周囲を囲むように、細い格子状に形成されている。上述したように、電極材料として金属を用い、凹部155を深くすることで、細い線幅でも低抵抗の電極を実現することができ、画素Pjkの駆動電圧を供給する電源Vddの配線として用いても抵抗による電圧降下はほとんどない。
【0046】
金属電極MLと薄膜トランジスタTFTとは、コンタクトホールCHを介して電気的に接続されている。薄膜トランジスタTFTと画素電極111とについても同様である。
【0047】
画素電極111は、格子状の金属電極MLの内側に形成されている。ここで、画素電極111は金属電極MLとオーバーラップしても構わない。金属電極MLは細いので、画素電極111の面積を広くすることができ、開口率の向上に寄与することができる。
【0048】
上述したように、本発明における電気化学表示パネルの第1の実施の形態によれば、透明基板に画素の周囲を囲むように細くて深い格子状の凹部を形成し、凹部を金属で充填して透明基板と略同一面の細くて深い格子状の金属電極を形成し、金属電極を画素の駆動電圧を供給する電源の配線とするとともに、画素電極を格子状の金属電極の内側に広く形成することで、高開口率と低抵抗とを共に実現することができ、高画質で信頼性の高い電気化学表示パネルを提供することができる。
【0049】
次に、本発明における電気化学表示パネルの第1の実施の形態の製造方法について、図4から図7を用いて説明する。図4は、本発明における電気化学表示パネルの第1の実施の形態の製造方法を示すメイン工程表である。
【0050】
図4において、ここでは、液晶ディスプレイの製造で用いられる真空貼り合わせ法を用いる場合について説明するが、これに限定されるものではなく、例えば同じく液晶ディスプレイの製造で用いられる真空注入法を用いても製造可能である。
【0051】
工程S11(観察側基板形成サブ工程)
観察側基板100を形成する工程である。
【0052】
透明基板101上に金属電極ML、選択トランジスタQ1と駆動トランジスタQ2との2個の薄膜トランジスタTFTおよび画素電極111等が形成され、観察側基板100が形成される。詳細は図5で説明する。
【0053】
工程S21(共通電極基板形成工程)
共通電極基板200を形成する工程である。
【0054】
基板201の上にスパッタ法等により共通電極211が形成されて、共通電極基板200が形成される。基板201の材料としては、ガラスやポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明基板材料を用いることができる他に、必ずしも透明である必要はないので、ステンレスフォイルやポリイミドといった基板材料も用いることができる。また、共通電極211としては、銀電極や銀パラジウム電極等の化学的に安定な金属電極を用いることができる。
【0055】
工程S31(シール剤塗布工程)
共通電極基板200上にシール剤を塗布する工程である。
【0056】
次の工程S33で注入される電解液301をシーリングするためのシール剤が、共通電極211が形成された共通電極基板200の周縁部に、ディスペンサ等により所定の厚さに塗布される。
【0057】
工程S33(電解液滴下工程)
共通電極基板200上に電解液301を滴下する工程である。
【0058】
共通電極基板200上に塗布されたシール剤の内側に、電解液301がディスペンサ等により滴下される。
【0059】
電解液301としては、銀または銀を化学構造中に含む化合物、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物が用いられる。
【0060】
電解液301の層の厚さを保つためのスペーサを電解液301中に混入させてもよい。スペーサとしては、例えば、液晶ディスプレイ等に使用されているガラス製、アクリル樹脂製、シリカ製等の微小真球を用いることができる。さらに、電解液301の透明な状態における白色度を高めるために、電解液301にTiOやZnO等の金属酸化物微粒子を分散させたり、共通電極211上に金属酸化物微粒子を水溶性高分子等のバインダを用いて多孔質化した散乱層を設けてもよい。
【0061】
なお、工程S31でのシール剤の塗布および工程S33での電解液301の滴下を共通電極基板200に対して行ったが、これに限るものではなく、観察側基板100に対して行ってもよい。
【0062】
工程S35(基板貼り合わせ工程)
観察側基板100と共通電極基板200とを貼り合わせる工程である。
【0063】
真空雰囲気中で、工程S11で形成された観察側基板100と、工程S33で電解液301が注入された共通電極基板200とが対向され、位置あわせされて加圧接合され、UV光照射や加熱等のシール剤に適した方法でシール剤が硬化されて、電気化学表示パネル1の貼り合わせが終了する。
【0064】
次に、図4の工程S11(観察側基板形成サブ工程)の詳細について、図5から図7を用いて説明する。図5は、図4の工程S11の詳細を示すサブ工程表であり、図6および図7は、図5の各工程を示す断面模式図である。
【0065】
図5の各工程を、図6および図7を参照しながら説明する。
【0066】
工程S101(凹部形成工程)
透明基板101に凹部155を形成する工程である。
【0067】
図6(a)に示すように、透明基板101上にレジスト151が塗布され、透明基板101の凹部155が形成される位置に、例えばフォトリソグラフィ法等で開口パターン153が形成される。開口パターン153の形成方法としては、フォトリソグラフィ法以外に、スクリーン印刷法、インクジェット塗布法、フレキソ印刷法等の周知の方法が挙げられる。
【0068】
透明基板101の材料としては、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英等の電子デバイスに使用されている硬質の材料や、フレキシブルなプラスチックで構成されたものを用いることができる。
【0069】
このプラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)等を用いることができ、またこれらのプラスチック材料で構成された基板の特性を高める為に、その表面に公知の表面コートや表面処理を行ったものを用いることが好ましい。
【0070】
続いて、図6(b)に示すように、開口パターン153を介して、例えばエッチング法により、透明基板101に細くて深い凹部155が形成される。透明基板101をエッチングすることで、深い凹部155を形成することができる。次に、レジスト151が剥離されて、凹部155を有する透明基板101が完成される。この状態を図6(c)に示す。
【0071】
工程S103(金属膜成膜工程)
透明基板101の凹部155が形成された面に金属膜157を成膜する工程である。
【0072】
図6(d)に示すように、透明基板101の凹部155内部および凹部155が形成された面上に、例えばスパッタ法により、例えばCu等の金属膜が成膜される。
【0073】
成膜方法としては、スパッタ法以外に、真空蒸着法、無電界メッキ法、電界メッキ法等多くの方法が適用可能であり、また、これらの方法を組み合わせてもよい。例えば、スパッタ法で下地膜を成膜し、電界メッキ法で厚膜化する方法等である。また、金属膜の材料としては、Cu以外に、Au、Pt、Ag、Alおよびそれらの合金等が挙げられる。
【0074】
工程S105(研磨工程)
金属膜157を研磨して、金属電極MLを形成する工程である。
【0075】
透明基板101上に成膜された金属膜157を、化学機械研磨法により研磨して、金属膜157を透明基板101の凹部155内部のみに残すことで、細くて深い金属電極MLが形成される。この状態を図6(e)に示す。
【0076】
形成された金属電極MLの表面の高さが、透明基板101の表面の高さと略同一、または透明基板101の表面の高さよりも凹部155側に僅かに低くなるまで研磨されることが好ましい。これによって、凹部155内部以外の金属膜157を完全に除去することができる。また、透明基板101の表面上に金属電極MLを形成するよりも、絶縁層103による金属電極MLのカバレッジがよくなるので、金属電極MLの電解液301による腐食を防止でき、信頼性が高くなる。
【0077】
なお、化学機械研磨法とは、研磨対象物である透明基板101をキャリアと呼ばれる部材で保持し、研磨布または研磨パッドを張った平板(ラップ)に押し付けて、金属膜157の材料に応じた各種化学成分および硬質の微細な砥粒を含んだスラリーを流しながら、一緒に相対運動させることで研磨を行う方法である。
【0078】
工程S107(絶縁膜成膜工程)
透明基板101上に絶縁膜103を成膜する工程である。
【0079】
透明基板101の金属電極MLが形成された面上に、例えばスピンコート法で、例えばアクリル樹脂の絶縁膜が成膜される。成膜方法としては、スピンコート法以外に、スパッタ法、真空蒸着法等が適用可能である。また、絶縁膜103の材料としては、アクリル樹脂やシリコーン、フッ素等の有機材料や、SiO、SiN等の無機材料が適用可能であるが、透明性の高い材料が望ましい。
【0080】
工程S109(コンタクトホール形成工程)
絶縁膜103にコンタクトホールを形成する工程である。
【0081】
絶縁膜103の金属電極ML上の所定の位置に、例えばフォトリソグラフィ法で、コンタクトホールCHが形成される。この状態を図7(a)に示す。コンタクトホールCHの形成方法としては、フォトリソグラフィ法以外に、レーザ加工法、エッチング法、感光性樹脂を成膜し露光、現像する方法や、インクジェット法により樹脂を透明基板101上に直接印刷することで、絶縁膜103とコンタクトホールCHとを同時に形成する方法等、多くの方法を用いることができる。
【0082】
工程S111(トランジスタ形成工程)
絶縁膜103上に、選択トランジスタQ1と駆動トランジスタQ2との2個の薄膜トランジスタTFTを形成する工程である。
【0083】
絶縁膜103上に、周知の方法により、選択トランジスタQ1と駆動トランジスタQ2との2個の薄膜トランジスタTFTが形成される。この状態を図7(b)に示す。形成される2個の薄膜トランジスタTFTは、トップゲート型の薄膜トランジスタである。駆動トランジスタQ2のソースSO2形成時に、ソースSO2の材料をコンタクトホールCH内に流入させることで、金属電極MLと駆動トランジスタQ2のソースSO2とが電気的に接続される。
【0084】
なお、工程S109(コンタクトホール形成工程)を、工程S111(トランジスタ形成工程)の途中に入れることで、選択トランジスタQ1と駆動トランジスタQ2との2個の薄膜トランジスタTFTを、ボトムゲート型の薄膜トランジスタとすることも可能である。
【0085】
工程S113(画素電極形成工程)
画素電極111を形成する工程である。
【0086】
薄膜トランジスタTFTのゲート絶縁膜107上に、周知の方法により、例えば酸化インジウムスズ(ITO)の透明の画素電極111が形成される。この状態を図7(c)に示す。画素電極111と駆動トランジスタQ2のドレインD2とは、薄膜トランジスタTFTの層間絶縁膜105およびゲート絶縁膜107に開口されたコンタクトホールに流入した画素電極111の材料によって電気的に接続される。
【0087】
画素電極111は、酸化インジウムスズ(ITO)以外に、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、アモルファス酸化物半導体(IGZO)等の透明な無機酸化物をスパッタ法を用いて、あるいは、ポリスチレンスルホン酸ドープポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT/PSS)に代表される透明な導電性高分子を各種ウェットコーティング法を用いて成膜することで形成できる。
【0088】
以上の各工程を経て、観察側基板100が形成される。
【0089】
上述した工程S101(凹部形成工程)では、透明基板101にエッチング法により凹部155を形成したが、他の方法でも凹部155を形成することができる。これを、図8を用いて説明する。図8は、凹部を形成する他の方法を説明するための断面模式図である。ここでは、ナノインプリント法を用いて凹部155を形成する方法について説明する。
【0090】
図8(a)において、例えばポリエーテルサルフォン(PES)等の透明なベース板101a上に、例えば塗布法により、例えば透明な紫外線(UV)硬化性樹脂層101bが形成される。ベース板101aとUV硬化性樹脂層101bとを合わせて、透明基板101とする。一方、凹部155が形成される位置に凸部163を有する押し型161が用意される。
【0091】
図8(b)において、押し型161の凸部163がUV硬化性樹脂層101bに型押しされて、凸部163の形状がUV硬化性樹脂層101bに転写される。
【0092】
図8(c)において、押し型161を取り去った後に、UV硬化性樹脂層101bに紫外線UVが照射されて、UV硬化性樹脂層101bが硬化されることで、透明基板101に凹部155が形成される。
【0093】
図8の方法を用いることで、エッチングには不向きな材料やフレキシブルな材料の透明基板101に対しても、より簡単に凹部155を形成することができる。
【0094】
上述したように、本発明における電気化学表示パネルの第1の実施の形態の製造方法によれば、観察側基板を形成する観察側基板形成工程に、透明基板の表面に細くて深い凹部を形成する凹部形成工程と、凹部を含む透明基板の表面に金属の膜を形成する金属膜成膜工程と、凹部を除く金属の膜を化学機械研磨により除去し、金属電極を形成する研磨工程とを有し、透明基板と略同一面の細くて深い格子状の金属電極を画素の駆動電圧を供給する電源の配線とすることで、製造工程の複雑化と高価格化を招くことなく、高開口率と低抵抗とを共に実現することができ、高画質で信頼性の高い電気化学表示パネルの製造方法を提供することができる。
【0095】
次に、本発明における電気化学表示パネルの第2の実施の形態について、図9を用いて説明する。図9は、本発明における電気化学表示パネルの第2の実施の形態の観察側基板の構成を示す模式図である。
【0096】
第2の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、金属電極MLが、図3に示したように、各々の画素Pjkの周囲を囲むように細い格子状に形成されているのではなく、図9に示すように、複数(図の例では4個)の画素Pjkの周囲を囲むように細い格子状に形成されている点である。その他については、第1の実施の形態と同じであるので、説明は省略する。また、製造方法についても同じであるので、説明は省略する。
【0097】
金属電極MLを図9のような構成にすることで、図3の構成よりも画素Pjk間に配線される金属電極MLの本数が少なくなるので、その分、画素電極111を広くすることができ、開口率を大きくすることができる。電極材料として金属を用い、凹部155を深くすることで、配線本数を少なくしても低抵抗の電極を実現することができ、画素Pjkの駆動電圧を供給する電源Vddの配線として用いても抵抗による電圧降下はあまりない。
【0098】
上述したように、本発明における電気化学表示パネルの第2の実施の形態によれば、透明基板に複数の画素の周囲を囲むように細くて深い格子状の凹部を形成し、凹部を金属で充填して透明基板と略同一面の細くて深い格子状の金属電極を形成し、金属電極を画素の駆動電圧を供給する電源の配線とするとともに、画素電極を格子状の金属電極の内側に広く形成することで、高開口率と低抵抗とを共に実現することができ、高画質で信頼性の高い電気化学表示パネルを提供することができる。
【0099】
次に、本発明における電気化学表示パネルの第3の実施の形態について、図10を用いて説明する。図10は、本発明における電気化学表示パネルの第3の実施の形態の観察側基板の構成を示す模式図である。
【0100】
第3の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、金属電極MLが、図3に示したように、各々の画素Pjkの周囲を囲むように細い格子状に形成されているのではなく、図10に示すように、画素Pjkの行又は列毎に(図の例では列毎に)ストライプ状に形成されている点である。その他については、第1の実施の形態と同じであるので、説明は省略する。また、製造方法についても同じであるので、説明は省略する。
【0101】
金属電極MLを図10のような構成にすることで、図3の構成の画素Pjkの行間の金属電極MLの配線がなくなるので、その分、画素電極111を広くすることができ、開口率を大きくすることができる。電極材料として金属を用い、凹部155を深くすることで、配線本数を少なくしても低抵抗の電極を実現することができ、画素Pjkの駆動電圧を供給する電源Vddの配線として用いても抵抗による電圧降下はあまりない。
【0102】
上述したように、本発明における電気化学表示パネルの第3の実施の形態によれば、透明基板に画素の行又は列毎に細くて深いストライプ状の凹部を形成し、凹部を金属で充填して透明基板と略同一面の細くて深いストライプ状の金属電極を形成し、金属電極を画素の駆動電圧を供給する電源の配線とするとともに、画素電極を格子状の金属電極の内側に広く形成することで、高開口率と低抵抗とを共に実現することができ、高画質で信頼性の高い電気化学表示パネルを提供することができる。
【0103】
次に、本発明における電気化学表示パネルの第4の実施の形態について、図11を用いて説明する。図11は、本発明における電気化学表示パネルの第4の実施の形態の観察側基板の構成を示す模式図である。
【0104】
第4の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、金属電極MLが、図3に示したように、各々の画素Pjkの周囲を囲むように細い格子状に形成されているのではなく、図11に示すように、画素Pjkの複数の行又は複数の列毎に(図の例では2列毎に)ストライプ状に形成されている点である。その他については、第1の実施の形態と同じであるので、説明は省略する。また、製造方法についても同じであるので、説明は省略する。
【0105】
金属電極MLを図11のような構成にすることで、図3の構成の画素Pjkの行間の金属電極MLの配線がなくなるとともに、列間の金属電極MLの配線本数も少なくなるので、その分、画素電極111を広くすることができ、開口率を大きくすることができる。電極材料として金属を用い、凹部155を深くすることで、配線本数を少なくしても低抵抗の電極を実現することができ、画素Pjkの駆動電圧を供給する電源Vddの配線として用いても抵抗による電圧降下はあまりない。
【0106】
上述したように、本発明における電気化学表示パネルの第4の実施の形態によれば、透明基板に画素の複数の行又は複数の列毎に細くて深いストライプ状の凹部を形成し、凹部を金属で充填して透明基板と略同一面の細くて深いストライプ状の金属電極を形成し、金属電極を画素の駆動電圧を供給する電源の配線とするとともに、画素電極を格子状の金属電極の内側に広く形成することで、高開口率と低抵抗とを共に実現することができ、高画質で信頼性の高い電気化学表示パネルを提供することができる。
【0107】
以上に述べたように、本発明によれば、透明基板に凹部を形成し、凹部を金属で充填して金属電極を形成することで、高開口率と低抵抗とを共に実現することができ、高画質で信頼性の高い電気化学表示パネルを提供することができる。
【0108】
また、観察側基板を形成する観察側基板形成工程に、透明基板の表面に凹部を形成する凹部形成工程と、凹部を含む透明基板の表面に金属の膜を形成する金属膜成膜工程と、凹部を除く金属の膜を化学機械研磨により除去し、金属電極を形成する研磨工程とを有することで、製造工程の複雑化と高価格化を招くことなく、高開口率と低抵抗とを共に実現することができ、高画質で信頼性の高い電気化学表示パネルの製造方法を提供することができる。
【0109】
なお、本発明に係る電気化学表示パネルおよび電気化学表示パネルの製造方法を構成する各構成の細部構成および細部動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【実施例】
【0110】
以下に、本発明の実施の形態の詳細な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限るものではない。ここでは、4種類の実施例および2種類の比較例の観察側基板100を作製して、特性を評価した。さらに、上記の観察側基板100を用いて4種類の実施例および2種類の比較例の電気化学表示パネル1を作製して、特性を評価した。
【0111】
(実施例1)
実施例1は、第1の実施の形態の例である。
【0112】
以下の各サブ工程によって、観察側基板100を形成した。
【0113】
工程S101(凹部形成工程)
透明基板101として厚さ0.7mmの無アルカリガラスを用い、これに、レジスト151として厚さ100nmのCr膜をスパッタ法で成膜し、フォトリソグラフィ法でパターニングして開口パターン153を形成した。開口パターン153は、図3に示した格子状パターンとした。
【0114】
バッファードフッ酸(BHF)をエッチング液として、開口パターン153を介して透明基板101をエッチングして凹部155を形成し、硝酸アンモニウムセリウムと硝酸との混合液に浸漬することでレジスト151を除去した。形成された凹部155の形状は、幅10μm、深さ2μm、格子ピッチ200μmであった。
【0115】
工程S103(金属膜成膜工程)
透明基板101上に、密着層としてスパッタ法でCrを厚さ30nm成膜し、Cr膜の上に金属膜157としてスパッタ法でCuを厚さ1μm成膜し、電界メッキでCuを厚さ4μmまで厚膜化した。
【0116】
工程S105(研磨工程)
エムエーティー社製の化学機械研磨装置と、セイミケミカル社製のCu用のスラリー(商品名:アプラナドール)を用いて、金属膜157を化学機械研磨して、凹部155中のCu膜を除く金属膜157を除去して金属電極MLを形成した。形成された金属電極MLの表面の高さは、透明基板101の表面よりも0.1μm低くなるように研磨した。
【0117】
工程S107(絶縁膜成膜工程)
透明基板101の金属電極MLが形成された面上に、絶縁膜103として、JSR社製の感光性アクリル樹脂(PC403)を、スピンコート法で厚さ1.5μmに成膜した。
【0118】
工程S109(コンタクトホール形成工程)
露光、現像工程により、絶縁膜103の所定の位置に所定の形状のコンタクトホールCHを形成した。
【0119】
工程S111(トランジスタ形成工程)
コンタクトホールCHが形成された透明基板101上に、周知の技術により、薄膜トランジスタTFTを形成した。
【0120】
工程S113(画素電極形成工程)
薄膜トランジスタTFTが形成された透明基板101上に、周知の技術により、酸化インジウムスズ(ITO)の画素電極111を可能な限り広く形成した。
【0121】
以上の各サブ工程を経て完成した観察側基板100は、図3の形状をしており、画素面積に占める表示面積の割合(以下、開口率と言う)は90.3%、金属電極MLの観察側基板100の単位面積当たりの抵抗値(以下、シート抵抗と言う)は0.20Ω/□であった。
【0122】
(実施例2)
実施例2は、第2の実施の形態の例である。画素Pjkと金属電極MLとの配置を図9に示した形にした以外は、実施例1と同じにした。得られた実施例2の観察側基板100の開口率は95.1%、シート抵抗は0.35Ω/□であった。
【0123】
(実施例3)
実施例3は、第4の実施の形態の例である。画素Pjkと金属電極MLとの配置を図11に示した形にした以外は、実施例1と同じにした。得られた実施例3の観察側基板100の開口率は97.5%、シート抵抗は0.41Ω/□であった。
【0124】
(実施例4)
実施例4は、実施例1の透明基板101を図8の構成に変えたものである。
【0125】
工程S101(凹部形成工程)
ベース板101aとして厚さ0.1mmのポリエーテルサルフォン(PES)基板を用い、これに、塗布法により、厚さ2μmの紫外線(UV)硬化性樹脂層101bを形成して、透明基板101とした。凹部155を形成する位置に凸部163を有する押し型161を用いて、0.1MPaで型押しして、凸部163の形状をUV硬化性樹脂層101bに転写した。凸部163の形状は、図3に示した格子状パターンとした。
【0126】
離型後、UV硬化性樹脂層101bに紫外線照射を行って硬化させ、凹部155を有する透明基板101を得た。形成された凹部155の形状は、幅2.5μm、深さ2μm、格子ピッチ200μmであった。これ以外は実施例1と同じとした。得られた実施例4の観察側基板100の開口率は97.5%、シート抵抗は0.40Ω/□であった。
【0127】
(比較例1)
厚さ0.7mmの無アルカリガラス板の上にCuを厚さ2μmで成膜し、フォトリソグラフィ法でパターニングして、実施例1の金属電極MLと同様の格子状のCu電極を有する透明基板111を得た。比較例1の透明基板101では、エッチングで高アスペクト比のパターニングを行うことが困難であるために、Cu電極の線幅が15〜20μmと大きくばらついた。
【0128】
この透明基板101を用いて、実施例1の工程S107以降の各工程を行い、観察側基板100を得た。得られた比較例1の観察側基板100の開口率は、Cu電極の線幅のばらつきの影響で、測定箇所によって85.6%〜81.0%とばらつきがあった。シート抵抗は0.16Ω/□であった。
【0129】
(比較例2)
厚さ0.7mmの無アルカリガラス板の上にCuを厚さ1μmで成膜した。それ以外は比較例1と同じにした。比較例1と同様にCu電極の線幅が8〜12μmと大きくばらついたために、得られた比較例2の観察側基板100の開口率は、測定箇所によって92.2%〜88.4%とばらつきがあった。シート抵抗は0.65Ω/□と高くなった。
【0130】
上述した6種類の観察側基板100を用いて、周知の方法で3.5インチの電気化学表示パネル1を作製し、表示特性を測定した。表示特性としては、(1)白Y値、(2)面内ムラ、(3)駆動安定性、の3項目を測定した。
【0131】
(1)白Y値は、電気化学表示パネル1の全面に白表示をさせた時の反射率であり、白表示時の表示面の中央部を、コニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM3700dを用いて測定した時の測定値である。
【0132】
(2)面内ムラは、電気化学表示パネル1の全面に中間階調の表示をさせた時の反射率のバラツキで、表示面の中央部が中間階調となるように駆動パルスを印加し、表示面の電源Vddおよび共通電源Vcom入力側から10mmの位置と、電源Vddおよび共通電源Vcom入力側と対向する側から10mmの位置とを、コニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM3700dを用いて測定した時の測定値の差である。
【0133】
(3)駆動安定性は、白表示と黒表示とを毎秒1回交互に繰り返す動作耐久テストである。
【0134】
測定結果を、上述した開口率およびシート抵抗とともに、表1に示す。
【0135】
【表1】

【0136】
実施例1では、(1)白Y値=52.9%と高く、(2)面内ムラ=2%と非常に少なく、(3)駆動安定性=10万回の駆動後も、機能は勿論のこと、性能にも殆ど変化が見られず、高い信頼性が確保されていることが確認できた。
【0137】
実施例2では、(1)白Y値=58.7%と高く、(2)面内ムラ=4%と良好であり、(3)駆動安定性=10万回の駆動後も、機能は勿論のこと、性能にも殆ど変化が見られず、高い信頼性が確保されていることが確認できた。
【0138】
実施例3では、(1)白Y値=61.8%と非常に高く、(2)面内ムラ=5.5%と良好であり、(3)駆動安定性=10万回の駆動後も、機能は勿論のこと、性能にも殆ど変化が見られず、高い信頼性が確保されていることが確認できた。
【0139】
実施例4では、(1)白Y値=61.8%と非常に高く、(2)面内ムラ=5.5%と良好であり、(3)駆動安定性=10万回の駆動後も、機能は勿論のこと、性能にも殆ど変化が見られず、高い信頼性が確保されていることが確認できた。
【0140】
比較例1では、(1)白Y値=47.6%〜42.6%とやや低くかつバラツキが大きく、(2)面内ムラ=2%と非常に少なく、(3)駆動安定性=2000回の駆動で、パネル内部に気泡が発生して表示不能となり、信頼性に問題があることが確認できた。
【0141】
比較例2では、(1)白Y値=55.2%〜50.7%と高いがバラツキが大きく、(2)面内ムラ=10.5%と非常に大きく、(3)駆動安定性=5000回の駆動で、パネル内部に気泡が発生して表示不能となり、信頼性に問題があることが確認できた。
【0142】
比較例1および2の(3)駆動安定性での問題は、Cu電極がエッチングで透明基板101の上に形成されており、高さが絶縁層103の厚さに対して高いために、絶縁層103によるCu電極のエッジ部のカバレッジが悪く、Cu電極が電解液301に触れて腐食して溶け出したためと考えられる。
【0143】
以上の結果から、本発明の有効性が実証できた。
【符号の説明】
【0144】
1 電気化学表示パネル
21 水平走査回路
31 垂直走査回路
100 観察側基板
101 透明基板
103 絶縁層
111 画素電極
155 凹部
200 共通電極基板
201 基板
211 共通電極
301 電解液
Pjk (j行k列の位置の)画素
ED ED素子(エレクトロデポジション方式の表示素子)
Vdd 電源
Vcom 共通電源
ML 金属電極
CH コンタクトホール
Q1 選択トランジスタ
Q2 駆動トランジスタ
TFT 薄膜トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素毎に分割された透明な画素電極を有する観察側基板と、
共通電極を有する共通電極基板と、
対向された前記観察側基板と前記共通電極基板との間に封入された電解液とを備えた電気化学表示パネルにおいて、
前記観察側基板は、
凹部を有する透明基板と、
前記凹部を金属で充填して形成された金属電極と、
前記画素電極と前記金属電極との間の導通を制御するためのトランジスタとを有することを特徴とする電気化学表示パネル。
【請求項2】
前記金属電極は、各々の前記画素を囲む格子状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学表示パネル。
【請求項3】
前記金属電極は、複数の前記画素を囲む格子状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学表示パネル。
【請求項4】
前記画素は、行および列に2次元マトリクス状に配置され、
前記金属電極は、各々の前記行又は前記列毎にストライプ状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学表示パネル。
【請求項5】
前記画素は、行および列に2次元マトリクス状に配置され、
前記金属電極は、複数の前記行又は複数の前記列毎にストライプ状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学表示パネル。
【請求項6】
前記凹部は、エッチング加工により形成されることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の電気化学表示パネル。
【請求項7】
前記凹部は、型押し加工により形成されることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の電気化学表示パネル。
【請求項8】
画素毎に分割された透明な画素電極を有する観察側基板と、
共通電極を有する共通電極基板と、
前記観察側基板と前記共通電極基板との間に封入された電解液とを備えた電気化学表示パネルの製造方法において、
前記観察側基板を形成する観察側基板形成工程を備え、
前記観察側基板形成工程は、
透明基板の表面に凹部を形成する凹部形成工程と、
前記凹部を含む前記透明基板の表面に金属の膜を成膜する金属膜成膜工程と、
前記凹部を除く前記透明基板の表面に形成された前記金属の膜を化学機械研磨により除去し、金属電極を形成する研磨工程と、
前記画素電極と、前記金属電極との間の導通を制御するためのトランジスタを形成するトランジスタ形成工程と、
前記画素電極を形成する画素電極形成工程とを有することを特徴とする電気化学表示パネルの製造方法。
【請求項9】
前記研磨工程で形成された前記金属電極の表面の高さは、前記透明基板の表面の高さと略同一、または前記透明基板の表面の高さよりも前記凹部側に低いことを特徴とする請求項8に記載の電気化学表示パネルの製造方法。
【請求項10】
前記凹部形成工程において、
前記凹部は、エッチング加工により形成されることを特徴とする請求項8または9に記載の電気化学表示パネルの製造方法。
【請求項11】
前記凹部形成工程において、
前記凹部は、型押し加工により形成されることを特徴とする請求項8または9に記載の電気化学表示パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−145590(P2011−145590A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7921(P2010−7921)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】