電気式ヒータユニット
【課題】コスト増を招くことなく、ヒータコア要素の積層段数が多くなっても確実に発熱素子とチューブの相互接触面積を保つことができる電気式ヒータユニットを提供すること。
【解決手段】通電により発熱するPTC素子12を内挿したチューブ6に放熱フィン7,8を固定してヒータコア要素5とし、該ヒータコア要素5を複数個積層することで構成した多段積層コアの上下左右4方向の外周をフロントハウジング1、エンドハウジング2、アッパーエンドプレート3、ロアエンドプレート4により保持した電気式ヒータユニットH/U1において、多段積層コアのうち、積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の間に要素隙間tを設定し、該要素隙間tの位置に要素隙間tを拡大する方向に弾性力を付与する波形バネ11を設定した。
【解決手段】通電により発熱するPTC素子12を内挿したチューブ6に放熱フィン7,8を固定してヒータコア要素5とし、該ヒータコア要素5を複数個積層することで構成した多段積層コアの上下左右4方向の外周をフロントハウジング1、エンドハウジング2、アッパーエンドプレート3、ロアエンドプレート4により保持した電気式ヒータユニットH/U1において、多段積層コアのうち、積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の間に要素隙間tを設定し、該要素隙間tの位置に要素隙間tを拡大する方向に弾性力を付与する波形バネ11を設定した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータコア要素を複数個積層することで構成した多段積層コアの上下左右4方向の外周をフレーム部材により保持した電気式ヒータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、発熱素子として、PTC(Positive Temperature Coefficientの略)素子を用いた電気式ヒータユニットの場合、PTC素子は、電極シートから供給した電気によって発熱する。そして、PTC素子からの熱は、チューブを経由し放熱フィンに伝導し、該放熱フィンを通過する風を、熱交換作用により温風とする。したがって、PTC素子とチューブの相互接触面積が広いほど、効率よく熱交換を行うことができる。このため、弾性による圧着力を作用させ、PTC素子とチューブの相互接触面積を確保するようにしている。
【0003】
従来、発熱素子とチューブの間に圧着力を作用させるため、最外側のフレーム部材であるエンドプレートと、該エンドプレートに接するヒータコア要素との間に板状バネ部材を設定する電気式ヒータユニットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、発熱素子とチューブの間に圧着力を作用させるため、積層方向に締め付け力を作用させ、放熱フィン自体に弾性を持たせるようにした電気式ヒータユニットが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−85695号公報
【特許文献2】特許第3794116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の電気式ヒータユニットにあっては、最外側のフレーム部材と、これに接するヒータコア要素との間からのみ弾性力が付与されるものである。このため、ヒータコア要素の積層段数が多くなったとき、最外側のフレーム部材から離れた位置にあるヒータコア要素では、発熱素子とチューブの間に圧着力が作用しない。つまり、ヒータコア要素の積層段数が多くなるほど、発熱素子とチューブの相互接触面積を確保することができない、という問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載された従来の電気式ヒータユニットにあっては、放熱フィン自体に弾性を持たせるようにしていたため、放熱フィンの形状が特殊な形状となり、フィン加工として一般に行われているルーバ加工を採用することができず、コスト増を招く、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、コスト増を招くことなく、ヒータコア要素の積層段数が多くなっても確実に発熱素子とチューブの相互接触面積を保つことができる電気式ヒータユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明では、通電により発熱する発熱素子を内挿したチューブに放熱フィンを固定してヒータコア要素とし、該ヒータコア要素を複数個積層することで構成した多段積層コアの上下左右4方向の外周をフレーム部材により保持した電気式ヒータユニットにおいて、
前記多段積層コアのうち、積層方向に隣接するヒータコア要素とヒータコア要素の間に要素隙間を設定し、該要素隙間の位置に要素隙間を拡大する方向に弾性力を付与する板状バネ部材を設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
よって、本発明の電気式ヒータユニットにあっては、積層方向に隣接するヒータコア要素とヒータコア要素の間に設定された板状バネ部材により、隣接するヒータコア要素の要素隙間を拡大する方向に弾性力が付与される。
このため、コア要素間の板状バネ部材により、複数個積層されたヒータコア要素のそれぞれに対して少なくとも一方向から弾性力が付与され、この弾性力が、発熱素子とチューブを圧着する圧着力となる。言い換えると、最外側のフレーム部材から近いヒータコア要素であっても、また、最外側のフレーム部材から最も離れたヒータコア要素であっても、全く同様に圧着力が作用し、ヒータコア要素の積層段数が多くなっても確実に発熱素子とチューブの相互接触面積が保たれる。
この結果、放熱フィンの形状を特殊形状とすることのない構成を採用したことにより、コスト増を招くことなく、ヒータコア要素の積層段数が多くなっても確実に発熱素子とチューブの相互接触面積を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の電気式ヒータユニットを実現する最良の形態を、図面に示す実施例1〜実施例3に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の電気式ヒータユニットH/U1を示す分解斜視図である。図2は、実施例1の電気式ヒータユニットH/U1を示す図で、(a)は正面図を示し、(b)は図2(a)のA−A線断面図を示す。図3は、実施例1の電気式ヒータユニットH/U1を示す図2(b)のB部拡大断面図である。図4は、実施例1の電気式ヒータユニットH/U1におけるフィンプレートを示す斜視図である。図5は、実施例1の電気式ヒータユニットH/U1における波形バネ11をあらわす図であり、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【0012】
実施例1の電気式ヒータユニットH/U1は、自動車の空調ユニットに内蔵されているヒータコアの後流位置に設定される。そして、冬期等での発進時やエンジンアイドルストップ時等であって、エンジン冷却水を媒体とするヒータコアによる暖房性能が発揮されないとき、ヒータコアによる暖房を補助するために用いられる。また、低燃費運転時等であって、エンジン冷却水の温度が上昇せず暖房能力が不足するとき、ヒータコアによる暖房を補完するために用いられる。
【0013】
実施例1の電気式ヒータユニットH/U1は、図1及び図2に示すように、フロントハウジング1(フレーム部材)と、エンドハウジング2(フレーム部材)と、アッパーエンドプレート3(フレーム部材)と、ロアエンドプレート4(フレーム部材)と、ヒータコア要素5と、チューブ6と、第1放熱フィン7(放熱フィン)と、第2放熱フィン8(放熱フィン)と、第1フィンプレート9と、第2フィンプレート10と、波形バネ11(板状バネ部材)と、PTC素子12(発熱素子)と、を備えている。
【0014】
前記ヒータコア要素5は、通電により発熱するPTC素子12を内挿したチューブ6に第1放熱フィン7と第2放熱フィン8を固定したものをいう。そして、実施例1の場合、前記ヒータコア要素5を3個積層することで多段積層コアを構成している。
【0015】
前記多段積層コアは、図1及び図2に示すように、右方向からのフロントハウジング1と、左方向からのエンドハウジング2と、上方向からのアッパーエンドプレート3と、下方向からのロアエンドプレート4により、外周を保持している。
【0016】
前記フロントハウジング1には、電気コネクタ接続部1aが設けられ、補助暖房時や補完暖房時、電気コネクタが接続され、PTC素子12に外部から電気を印加する。前記エンドハウジング2には、チューブ6の端部を差し込むチューブ溝2aが形成されている。前記アッパーエンドプレート3及び前記ロアエンドプレート4には、図2(b)に示すように、端部の第1放熱フィン7と第2放熱フィン8の位置決めする位置決め突起3a,4aが形成されている。
【0017】
そして、前記多段積層コアのうち、積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の間に要素隙間tを設定し、該要素隙間tの位置に要素隙間tを拡大する方向に弾性力を付与する波形バネ11を設定している。
【0018】
実施例1の場合、前記チューブ6は、図3に示すように、アウターチューブ61とインナーチューブ62を積層方向に移動可能に嵌合することで構成している。そして、前記ヒータコア要素5は、前記アウターチューブ61に第1放熱フィン7を固定し、前記インナーチューブ62に第2放熱フィン8を固定し、前記アウターチューブ61と前記インナーチューブ62により囲まれる空間内に、ポジションプレート13により位置決めされたPTC素子12と電極シート14と絶縁シート15を積層することで構成している。
【0019】
実施例1の場合、積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の間の要素隙間tには、図3に示すように、第1放熱フィン7を位置決めする第1フィンプレート9と、第2放熱フィン8を位置決めする第2フィンプレート10を設定している。そして、前記波形バネ11を、前記第1フィンプレート9と前記第2フィンプレート10の間の位置に介装している。
【0020】
前記第1フィンプレート9と前記第2フィンプレート10は、図4に示すように、長方形板材の両長辺部に等間隔にて切り込みを入れ、切り込み部を交互に上側と下側に曲げることで、一方の曲げ突起をフィン位置決め突起9a,10aとし、他方の曲げ突起をバネ位置決め突起9b,10bとしている。つまり、実施例1では、第1放熱フィン7の幅と第2放熱フィン8の幅と波形バネ11の幅とを一致させることで、第1フィンプレート9と第2フィンプレート10として、同じフィンプレート部品を用いている。
【0021】
実施例1では、板状バネ部材として、図5に示すように、バネ鋼による長方形板材を波形形状とした波形バネ11を用いている。そして、前記波形バネ11は、図1及び図2に示すように、積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の全ての要素隙間tの位置(2箇所位置)に設定している。
【0022】
次に、作用を説明する。
実施例1の電気式ヒータユニットH/U1における作用を、「PTC素子とチューブの相互接触面積確保作用」、「多段化による相互接触面積確保作用」に分けて説明する。
【0023】
[PTC素子とチューブの相互接触面積確保作用]
図6は、実施例1の電気式ヒータユニットH/U1において波形バネ11により弾性力を付与している状態を示す作用説明図である。
【0024】
実施例1の電気式ヒータユニットH/U1は、3段積層であり積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の全ての要素隙間tの位置(2箇所位置)に波形バネ11を設定している。したがって、2箇所位置に設定された波形バネ11,11により、隣接するヒータコア要素5,5の要素隙間tを拡大する上下方向に弾性力(4方向)が付与される。そして、最外周位置にて力を受けるアッパーエンドプレート3とロアエンドプレート4から弾性力の反力(2方向)が付与される。このため、全てのコア要素間に設定された波形バネ11,11により、3個積層されたヒータコア要素5,5,5のそれぞれに対し、図6の矢印に示すように、上下両方向から弾性力(合計6方向)が付与される。
【0025】
そして、この弾性力が、チューブ6を構成するアウターチューブ61とインナーチューブ62を互いに接近させる方向の圧着力となる。この圧着力により両チューブ61,62が接近すると、ポジションプレート13により位置決めされたPTC素子12と電極シート14と絶縁シート15が互いに密着し、さらに、PTC素子12が押し上げられて、アウターチューブ61の内面に圧着する。
【0026】
この圧着力は、アッパーエンドプレート3とロアエンドプレート4から近い2つのヒータコア要素5,5であっても、また、アッパーエンドプレート3とロアエンドプレート4から離れた中央部のヒータコア要素5であっても、全く同様に作用する。
【0027】
したがって、PTC素子12とアウターチューブ61の内面との相互接触面積が広く保たれる。このため、PTC素子12からの熱は、アウターチューブ61を経由し第1放熱フィン7に伝導し、第1放熱フィン7を通過する風を、効率の良い熱交換作用により温風とする。また、PTC素子12からの熱は、アウターチューブ61からインナーチューブ62を経由し第2放熱フィン8に伝導し、第2放熱フィン8を通過する風を、効率の良い熱交換作用により温風とする。
【0028】
[多段化による相互接触面積確保作用]
図7は、実施例1の3段積層による電気式ヒータユニットH/U1に対しヒータコア要素を追加することで6段積層による電気式ヒータユニットH/U1'とした場合において波形バネ11により弾性力を付与している状態を示す作用説明図である。
【0029】
実施例1の3段積層による電気式ヒータユニットH/U1を多段化し、6段積層による電気式ヒータユニットH/U1'とした場合について説明する。なお、6段積層の電気式ヒータユニットH/U1'の場合にも、隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の全ての要素隙間tの位置(5箇所位置)に波形バネ11を設定している。
【0030】
したがって、5箇所位置に設定された波形バネ11,11,11,11,11により、隣接するヒータコア要素5,5の要素隙間tを拡大する上下方向に弾性力(10方向)が付与される。そして、最外周位置にて力を受けるアッパーエンドプレート3とロアエンドプレート4から弾性力の反力(2方向)が付与される。このため、全てのコア要素間に設定された波形バネ11,11,11,11,11により、6個積層されたヒータコア要素5,5,5,5,5,5のそれぞれに対し、図7の矢印に示すように、上下両方向から弾性力(合計12方向)が付与される。
【0031】
そして、この弾性力が、チューブ6を構成するアウターチューブ61とインナーチューブ62を互いに接近させる方向の圧着力となる。この圧着力により両チューブ61,62が接近すると、ポジションプレート13により位置決めされたPTC素子12と電極シート14と絶縁シート15が互いに密着し、さらに、PTC素子12が押し上げられて、アウターチューブ61の内面に圧着する。
【0032】
この圧着力は、アッパーエンドプレート3とロアエンドプレート4から最も近い2つのヒータコア要素5,5であっても、また、アッパーエンドプレート3とロアエンドプレート4から最も離れた中央部のヒータコア要素5であっても、全く同様に作用する。
【0033】
したがって、ヒータコア要素5の積層段数が、例えば、3段から6段というように、多くなっても確実にPTC素子12とアウターチューブ61の内面との相互接触面積を保つことができる。
【0034】
次に、効果を説明する。
実施例1の電気式ヒータユニットH/U1にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0035】
(1) 通電により発熱する発熱素子(PTC素子12)を内挿したチューブ6に放熱フィン7,8を固定してヒータコア要素5とし、該ヒータコア要素5を複数個積層することで構成した多段積層コアの上下左右4方向の外周をフレーム部材(フロントハウジング1、エンドハウジング2、アッパーエンドプレート3、ロアエンドプレート4)により保持した電気式ヒータユニットH/U1において、前記多段積層コアのうち、積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の間に要素隙間tを設定し、該要素隙間tの位置に要素隙間tを拡大する方向に弾性力を付与する板状バネ部材(波形バネ11)を設定したため、コスト増を招くことなく、ヒータコア要素5の積層段数が多くなっても確実に発熱素子とチューブ6の相互接触面積を保つことができる。
【0036】
(2) 前記チューブ6は、アウターチューブ61とインナーチューブ62を積層方向に移動可能に嵌合することで構成し、前記ヒータコア要素5は、前記アウターチューブ61に第1放熱フィン7を固定し、前記インナーチューブ62に第2放熱フィン8を固定し、前記アウターチューブ61と前記インナーチューブ62により囲まれる空間内に、ポジションプレート13により位置決めされた発熱素子(PTC素子12)と電極シート14と絶縁シート15を積層することで構成したため、板状バネ部材により付与される弾性力によりアウターチューブ61とインナーチューブ62が互いに接近するように相対移動し、この相対移動により、PTC素子12と電極シート14と絶縁シート15を密着させ、かつ、PTC素子12をチューブ6の内面に確実に圧着することができる。
【0037】
(3) 前記積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の間の要素隙間tには、第1放熱フィン7を位置決めする第1フィンプレート9と、第2放熱フィン8を位置決めする第2フィンプレート10を設定し、前記板状バネ部材(波形バネ11)は、前記第1フィンプレート9と前記第2フィンプレート10の間の位置に介装したため、板状バネ部材がこじれを生じることなく両フィンプレート9,10間に設定され、確実に板状バネ部材が持つ弾性力を第1放熱フィン7と第2放熱フィン8に付与することができる。
【0038】
(4) 前記第1フィンプレート9と前記第2フィンプレート10は、長方形板材の両長辺部に等間隔にて切り込みを入れ、切り込み部を交互に上側と下側に曲げることで、一方の曲げ突起をフィン位置決め突起9a,10aとし、他方の曲げ突起をバネ位置決め突起9b,10bとしたため、同じフィンプレート部品を第1フィンプレート9と第2フィンプレート10として兼用しながら、積層方向に隣接する第1放熱フィン7と第2放熱フィン8の位置決めを行うことができると共に、両放熱フィン7,8に対する板状バネ部材の位置決めを行うことができる。
【0039】
(5) 前記板状バネ部材は、バネ鋼による長方形板材を波形形状とした波形バネ11であるため、各波形頂部から分散された弾性力を、積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5に付与することで、均一性の高い圧着力により、発熱素子とチューブの相互接触面積を広く保つことができる。
【0040】
(6) 前記板状バネ部材(波形バネ11)は、積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の全ての要素隙間tの位置に設定したため、積層された全てのヒータコア要素5に対し、2方向から弾性力を付与することで、ヒータコア要素5の積層段数が多くなっても、フレーム部材から最も離れたヒータコア要素5に対し高い圧着力を与えることができる。
【実施例2】
【0041】
実施例2は、要素段間のうち1段置きの位置に板状バネ部材を設定するようにした例である。
【0042】
まず、構成を説明する。
図8は、実施例2の6段積層による電気式ヒータユニットH/U2を示す正面図である。
【0043】
実施例2の電気式ヒータユニットH/U2は、図8に示すように、フロントハウジング1(フレーム部材)と、エンドハウジング2(フレーム部材)と、アッパーエンドプレート3(フレーム部材)と、ロアエンドプレート4(フレーム部材)と、ヒータコア要素5と、チューブ6と、第1放熱フィン7(放熱フィン)と、第2放熱フィン8(放熱フィン)と、第1フィンプレート9と、第2フィンプレート10と、波形バネ11(板状バネ部材)と、を備えている。
【0044】
前記波形バネ11は、積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の要素段間のうち、1段置きの要素隙間tの位置に設定される。つまり、波形バネ11は、上から1段目と2段目要素隙間tの位置と、上から3段目と4段目要素隙間tの位置と、上から5段目と6段目要素隙間tの位置と、の3箇所の位置に設定されている。なお、他の構成は、実施例1と同様であるので、対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
次に、作用を説明する。
実施例2の6段積層による電気式ヒータユニットH/U2では、3箇所位置に設定された波形バネ11,11,11により、隣接するヒータコア要素5,5の要素隙間tを拡大する上下方向に弾性力(6方向)が付与される。そして、最外周位置にて力を受けるアッパーエンドプレート3とロアエンドプレート4から弾性力の反力(2方向)が付与される。
【0046】
このため、6個積層されたヒータコア要素5,5,5,5,5,5のうち、アッパーエンドプレート3とロアエンドプレート4から最も近い2つのヒータコア要素5,5に対しては、図8の矢印に示すように、上下両方向から弾性力(合計4方向)が付与される。また、アッパーエンドプレート3とロアエンドプレート4から離れた4つのヒータコア要素5,5,5,5に対しては、図8の矢印に示すように、上方向または下方向から弾性力(合計4方向)が付与される。
【0047】
そして、この弾性力が、チューブ6を構成するアウターチューブ61とインナーチューブ62を互いに接近させる方向の圧着力となる。この圧着力により両チューブ61,62が接近すると、ポジションプレート13により位置決めされたPTC素子12と電極シート14と絶縁シート15が互いに密着し、さらに、PTC素子12が押し上げられて、アウターチューブ61の内面に圧着する。すなわち、積層された全てのヒータコア要素5に対し、少なくとも1方向から弾性力を付与することで、必要な圧着力が確保される。
【0048】
また、実施例2の電気式ヒータユニットH/U2のように、6段積層によって多段化した場合、同じ6段積層で全ての要素隙間tの位置に波形バネ11を設定した図7に示す電気式ヒータユニットH/U1'との対比から明らかなように、電気式ヒータユニットH/U2の積層方向長さを短縮でき、これによってコンパクト化を図ることができる。
【0049】
図9は、実施例2の変形例で7段積層による電気式ヒータユニットH/U2'を示す正面図である。
この7段積層による電気式ヒータユニットH/U2'では、1段置きにならない場所が生じ、4箇所位置に設定された波形バネ11,11,11,11により、隣接するヒータコア要素5,5の要素隙間tを拡大する上下方向に弾性力(8方向)が付与される。そして、最外周位置にて力を受けるアッパーエンドプレート3とロアエンドプレート4から弾性力の反力(2方向)が付与される。
【0050】
このため、7個積層されたヒータコア要素5,5,5,5,5,5,5のうち、アッパーエンドプレート3から最も近い2つのヒータコア要素5,5に対しては、図9の矢印に示すように、上下両方向から弾性力(合計4方向)が付与される。また、ロアエンドプレート4から最も近い1つのヒータコア要素5に対しては、図9の矢印に示すように、上下両方向から弾性力(合計2方向)が付与される。そして、アッパーエンドプレート3とロアエンドプレート4から離れた4つのヒータコア要素5,5,5,5に対しては、図9の矢印に示すように、上方向または下方向から弾性力(合計4方向)が付与される。なお、他の作用は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0051】
次に、効果を説明する。
実施例2の電気式ヒータユニットH/U2にあっては、実施例1の(1)〜(5)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0052】
(7) 前記板状バネ部材(波形バネ11)は、積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の要素段間のうち、1段置きの要素隙間tの位置に設定したため、積層された全てのヒータコア要素5に対し、少なくとも1方向から弾性力を付与することで必要な圧着力を確保しながら、多段化した場合、全ての要素隙間tの位置に板状バネ部材を設定する場合に比べ、ヒータユニットの積層方向長さの短縮によるコンパクト化を図ることができる。
【実施例3】
【0053】
実施例3は、チューブとして、積層方向に加わる力が大きいほど扁平形状に変形する可撓性チューブを採用した例である。
【0054】
まず、構成を説明する。
図10は、実施例3の電気式ヒータユニットH/U3におけるチューブ構造を示す拡大断面図である。
【0055】
実施例3の電気式ヒータユニットH/U3におけるチューブ構造は、図10に示すように、第1放熱フィン7と、第2放熱フィン8と、可撓性チューブ63と、PTC素子12(発熱素子)と、ポジションプレート13と、電極シート14と、絶縁シート15と、を備えている。
【0056】
前記可撓性チューブ63は、弾性変形量が大きなばね性かつ導電性のある金属等により成形され、積層方向に加わる力が大きいほど扁平形状に変形する。なお、他の構成は、実施例1,2と同様であるので、対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
次に、作用を説明する。
実施例3の電気式ヒータユニットH/U3では、波形バネ11により少なくとも一方向から弾性力が付与されると、この弾性力が、可撓性チューブ63を扁平形状に変形させる圧着力となる。この圧着力により可撓性チューブ63の両放熱フィン7,8が設けられた部分2が接近すると、ポジションプレート13により位置決めされたPTC素子12と電極シート14と絶縁シート15が互いに密着し、さらに、PTC素子12が可撓性チューブ63の内面に圧着する。なお、他の作用は、実施例1,2と同様であるので、説明を省略する。
【0058】
次に、効果を説明する。
実施例3の電気式ヒータユニットH/U3にあっては、実施例1の(1),(3)〜(6)、実施例2の(7)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0059】
(8) 前記チューブ6は、積層方向に加わる力が大きいほど扁平形状に変形する可撓性チューブ63により構成し、前記ヒータコア要素5は、前記可撓性チューブ63に第1放熱フィン7と第2放熱フィン8を固定し、前記可撓性チューブ63の空間内に、ポジションプレート13により位置決めされたPTC素子12と電極シート14と絶縁シート15を積層することで構成したため、板状バネ部材により付与される弾性力により可撓性チューブ63が積層方向の対向面が互いに接近するように扁平形状に変形し、この扁平変形により、PTC素子12と電極シート14と絶縁シート15を密着させ、かつ、PTC素子12を可撓性チューブ63の内面に確実に圧着することができる。
【0060】
以上、本発明の電気式ヒータユニットを実施例1〜実施例3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0061】
実施例1〜3では、板状バネ部材として、波形バネ11を用いる例を示した。しかし、板状バネ部材としては、要素隙間tを拡大する方向に弾性力を付与する板状バネ部材であれば、具体的な形状は、波形バネ11に限られることはない。例えば、図11に示すように、プレート部21aと複数の波状バネ部21bの組み合わせによる第1板状バネ21としても良い。また、図12に示すように、プレート部22aと、該プレート部22aの切り込みから一方向に折り曲げ突出させた複数の湾曲面状バネ部22bによる第2板状バネ22としても良い。また、図13に示すように、プレート部23aと、該プレート部23aの切り込みから一方向に折り曲げ突出させた複数の多角面状バネ部23bによる第3板状バネ23としても良い。また、図14に示すように、プレート部24aと、該プレート部24aの切り込みから交互に異なる方向に折り曲げ突出させた複数の多角面状バネ部24bによる第4板状バネ24としても良い。また、図15に示すように、プレート部25aと、該プレート部25aの切り込みから交互に異なる方向に折り曲げ突出させた複数の湾曲面状バネ部25bによる第5板状バネ25としても良い。
【0062】
実施例1〜3では、積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の間の要素隙間tに、第1放熱フィン7を位置決めする第1フィンプレート9と、第2放熱フィン8を位置決めする第2フィンプレート10を設定し、両フィンプレート9,10の間の位置に板状バネ部材を介装する例を示した。しかし、一方の放熱フィン側にのみフィンプレートを設定し、他方の放熱フィン側には、フィン位置決め機能と板バネ機能を兼用するフィンプレート一体型バネ部材を設定する例としても良い。例えば、図16に示すように、フィンプレート部31aと、該フィンプレート部31aの切り込みから一方向に折り曲げ突出させた複数の多角面状バネ部31bによる第1フィンプレート付き板状バネ31としても良い。また、図17に示すように、フィンプレート部32aと、該フィンプレート部32aの切り込みから一方向に折り曲げ突出させた複数の湾曲面状バネ部32bによる第2フィンプレート付き板状バネ32としても良い。また、図18に示すように、フィンプレート部33aと、該フィンプレート部33aの切り込みから交互に異なる方向に折り曲げ突出させた複数の多角面状バネ部33bによる第3フィンプレート付き板状バネ33としても良い。また、図19に示すように、フィンプレート部34aと複数の波状バネ部34bの組み合わせによる第4フィンプレート付き板状バネ34としても良い。また、図20に示すように、フィンプレート部35aと、該フィンプレート部35aの切り込みから交互に異なる方向に折り曲げ突出させた複数の湾曲面状バネ部35bによる第5フィンプレート付き板状バネ35としても良い。
【0063】
実施例1〜3では、発熱素子として、PTC素子を用いる例を示した。しかし、外部からの通電により発熱するサーミスタ素子であれば、PTC素子に限られることはない。
【0064】
要するに、多段積層コアのうち、積層方向に隣接するヒータコア要素とヒータコア要素の間に要素隙間を設定し、要素隙間の位置に要素隙間を拡大する方向に弾性力を付与する板状バネ部材を設定したものであれば、実施例1〜3に限られることはない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
実施例1〜3では、自動車の空調ユニットに内蔵されているヒータコアによる暖房を補助あるいは補完する電気式ヒータユニットとしての適用例を示した。しかし、建物等を含む様々な箇所において、暖房装置や暖房補助装置や暖房補完装置の用途として用いられる電気式ヒータユニットに対しても適用することができる。要するに、通電により発熱する発熱素子を内挿したチューブに放熱フィンを固定してヒータコア要素とし、該ヒータコア要素を複数個積層することで構成した多段積層コアの上下左右4方向の外周をフレーム部材により保持した電気式ヒータユニットであれば適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施例1の電気式ヒータユニットH/U1を示す分解斜視図である。
【図2】実施例1の電気式ヒータユニットH/U1を示す図で、(a)は正面図を示し、(b)は図2(a)のA−A線断面図を示す。
【図3】実施例1の電気式ヒータユニットH/U1を示す図2(b)のB部拡大断面図である。
【図4】実施例1の電気式ヒータユニットH/U1におけるフィンプレートを示す斜視図である。
【図5】実施例1の電気式ヒータユニットH/U1における波形バネ11をあらわす図で、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【図6】実施例1の電気式ヒータユニットH/U1において波形バネ11により弾性力を付与している状態を示す作用説明図である。
【図7】実施例1の3段積層による電気式ヒータユニットH/U1に対しヒータコア要素を追加することで6段積層による電気式ヒータユニットH/U1'とした場合において波形バネ11により弾性力を付与している状態を示す作用説明図である。
【図8】実施例2の6段積層による電気式ヒータユニットH/U2を示す正面図である。
【図9】実施例2の変形例で7段積層による電気式ヒータユニットH/U2'を示す正面図である。
【図10】実施例3の電気式ヒータユニットH/U3におけるチューブ構造を示す拡大断面図である。
【図11】板状バネ部材の一例である第1板状バネ21をあらわす図であり、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【図12】板状バネ部材の一例である第2板状バネ22をあらわす図であり、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【図13】板状バネ部材の一例である第3板状バネ23をあらわす図であり、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【図14】板状バネ部材の一例である第4板状バネ24をあらわす図であり、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【図15】板状バネ部材の一例である第5板状バネ25をあらわす図であり、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【図16】フィンプレート一体型バネ部材の一例である第1フィンプレート付き板状バネ31をあらわす図であり、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【図17】フィンプレート一体型バネ部材の一例である第2フィンプレート付き板状バネ32をあらわす図であり、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【図18】フィンプレート一体型バネ部材の一例である第3フィンプレート付き板状バネ33をあらわす図であり、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【図19】フィンプレート一体型バネ部材の一例である第4フィンプレート付き板状バネ34をあらわす図であり、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【図20】フィンプレート一体型バネ部材の一例である第5フィンプレート付き板状バネ35をあらわす図であり、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【符号の説明】
【0067】
H/U1,H/U2,H/U3 電気式ヒータユニット
1 フロントハウジング(フレーム部材)
2 エンドハウジング(フレーム部材)
3 アッパーエンドプレート(フレーム部材)
4 ロアエンドプレート(フレーム部材)
5 ヒータコア要素
6 チューブ
61 アウターチューブ
62 インナーチューブ
63 可撓性チューブ
7 第1放熱フィン(放熱フィン)
8 第2放熱フィン(放熱フィン)
9 第1フィンプレート
10 第2フィンプレート
11 波形バネ(板状バネ部材)
12 PTC素子(発熱素子)
13 ポジションプレート
14 電極シート
15 絶縁シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータコア要素を複数個積層することで構成した多段積層コアの上下左右4方向の外周をフレーム部材により保持した電気式ヒータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、発熱素子として、PTC(Positive Temperature Coefficientの略)素子を用いた電気式ヒータユニットの場合、PTC素子は、電極シートから供給した電気によって発熱する。そして、PTC素子からの熱は、チューブを経由し放熱フィンに伝導し、該放熱フィンを通過する風を、熱交換作用により温風とする。したがって、PTC素子とチューブの相互接触面積が広いほど、効率よく熱交換を行うことができる。このため、弾性による圧着力を作用させ、PTC素子とチューブの相互接触面積を確保するようにしている。
【0003】
従来、発熱素子とチューブの間に圧着力を作用させるため、最外側のフレーム部材であるエンドプレートと、該エンドプレートに接するヒータコア要素との間に板状バネ部材を設定する電気式ヒータユニットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、発熱素子とチューブの間に圧着力を作用させるため、積層方向に締め付け力を作用させ、放熱フィン自体に弾性を持たせるようにした電気式ヒータユニットが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−85695号公報
【特許文献2】特許第3794116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の電気式ヒータユニットにあっては、最外側のフレーム部材と、これに接するヒータコア要素との間からのみ弾性力が付与されるものである。このため、ヒータコア要素の積層段数が多くなったとき、最外側のフレーム部材から離れた位置にあるヒータコア要素では、発熱素子とチューブの間に圧着力が作用しない。つまり、ヒータコア要素の積層段数が多くなるほど、発熱素子とチューブの相互接触面積を確保することができない、という問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載された従来の電気式ヒータユニットにあっては、放熱フィン自体に弾性を持たせるようにしていたため、放熱フィンの形状が特殊な形状となり、フィン加工として一般に行われているルーバ加工を採用することができず、コスト増を招く、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、コスト増を招くことなく、ヒータコア要素の積層段数が多くなっても確実に発熱素子とチューブの相互接触面積を保つことができる電気式ヒータユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明では、通電により発熱する発熱素子を内挿したチューブに放熱フィンを固定してヒータコア要素とし、該ヒータコア要素を複数個積層することで構成した多段積層コアの上下左右4方向の外周をフレーム部材により保持した電気式ヒータユニットにおいて、
前記多段積層コアのうち、積層方向に隣接するヒータコア要素とヒータコア要素の間に要素隙間を設定し、該要素隙間の位置に要素隙間を拡大する方向に弾性力を付与する板状バネ部材を設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
よって、本発明の電気式ヒータユニットにあっては、積層方向に隣接するヒータコア要素とヒータコア要素の間に設定された板状バネ部材により、隣接するヒータコア要素の要素隙間を拡大する方向に弾性力が付与される。
このため、コア要素間の板状バネ部材により、複数個積層されたヒータコア要素のそれぞれに対して少なくとも一方向から弾性力が付与され、この弾性力が、発熱素子とチューブを圧着する圧着力となる。言い換えると、最外側のフレーム部材から近いヒータコア要素であっても、また、最外側のフレーム部材から最も離れたヒータコア要素であっても、全く同様に圧着力が作用し、ヒータコア要素の積層段数が多くなっても確実に発熱素子とチューブの相互接触面積が保たれる。
この結果、放熱フィンの形状を特殊形状とすることのない構成を採用したことにより、コスト増を招くことなく、ヒータコア要素の積層段数が多くなっても確実に発熱素子とチューブの相互接触面積を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の電気式ヒータユニットを実現する最良の形態を、図面に示す実施例1〜実施例3に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の電気式ヒータユニットH/U1を示す分解斜視図である。図2は、実施例1の電気式ヒータユニットH/U1を示す図で、(a)は正面図を示し、(b)は図2(a)のA−A線断面図を示す。図3は、実施例1の電気式ヒータユニットH/U1を示す図2(b)のB部拡大断面図である。図4は、実施例1の電気式ヒータユニットH/U1におけるフィンプレートを示す斜視図である。図5は、実施例1の電気式ヒータユニットH/U1における波形バネ11をあらわす図であり、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【0012】
実施例1の電気式ヒータユニットH/U1は、自動車の空調ユニットに内蔵されているヒータコアの後流位置に設定される。そして、冬期等での発進時やエンジンアイドルストップ時等であって、エンジン冷却水を媒体とするヒータコアによる暖房性能が発揮されないとき、ヒータコアによる暖房を補助するために用いられる。また、低燃費運転時等であって、エンジン冷却水の温度が上昇せず暖房能力が不足するとき、ヒータコアによる暖房を補完するために用いられる。
【0013】
実施例1の電気式ヒータユニットH/U1は、図1及び図2に示すように、フロントハウジング1(フレーム部材)と、エンドハウジング2(フレーム部材)と、アッパーエンドプレート3(フレーム部材)と、ロアエンドプレート4(フレーム部材)と、ヒータコア要素5と、チューブ6と、第1放熱フィン7(放熱フィン)と、第2放熱フィン8(放熱フィン)と、第1フィンプレート9と、第2フィンプレート10と、波形バネ11(板状バネ部材)と、PTC素子12(発熱素子)と、を備えている。
【0014】
前記ヒータコア要素5は、通電により発熱するPTC素子12を内挿したチューブ6に第1放熱フィン7と第2放熱フィン8を固定したものをいう。そして、実施例1の場合、前記ヒータコア要素5を3個積層することで多段積層コアを構成している。
【0015】
前記多段積層コアは、図1及び図2に示すように、右方向からのフロントハウジング1と、左方向からのエンドハウジング2と、上方向からのアッパーエンドプレート3と、下方向からのロアエンドプレート4により、外周を保持している。
【0016】
前記フロントハウジング1には、電気コネクタ接続部1aが設けられ、補助暖房時や補完暖房時、電気コネクタが接続され、PTC素子12に外部から電気を印加する。前記エンドハウジング2には、チューブ6の端部を差し込むチューブ溝2aが形成されている。前記アッパーエンドプレート3及び前記ロアエンドプレート4には、図2(b)に示すように、端部の第1放熱フィン7と第2放熱フィン8の位置決めする位置決め突起3a,4aが形成されている。
【0017】
そして、前記多段積層コアのうち、積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の間に要素隙間tを設定し、該要素隙間tの位置に要素隙間tを拡大する方向に弾性力を付与する波形バネ11を設定している。
【0018】
実施例1の場合、前記チューブ6は、図3に示すように、アウターチューブ61とインナーチューブ62を積層方向に移動可能に嵌合することで構成している。そして、前記ヒータコア要素5は、前記アウターチューブ61に第1放熱フィン7を固定し、前記インナーチューブ62に第2放熱フィン8を固定し、前記アウターチューブ61と前記インナーチューブ62により囲まれる空間内に、ポジションプレート13により位置決めされたPTC素子12と電極シート14と絶縁シート15を積層することで構成している。
【0019】
実施例1の場合、積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の間の要素隙間tには、図3に示すように、第1放熱フィン7を位置決めする第1フィンプレート9と、第2放熱フィン8を位置決めする第2フィンプレート10を設定している。そして、前記波形バネ11を、前記第1フィンプレート9と前記第2フィンプレート10の間の位置に介装している。
【0020】
前記第1フィンプレート9と前記第2フィンプレート10は、図4に示すように、長方形板材の両長辺部に等間隔にて切り込みを入れ、切り込み部を交互に上側と下側に曲げることで、一方の曲げ突起をフィン位置決め突起9a,10aとし、他方の曲げ突起をバネ位置決め突起9b,10bとしている。つまり、実施例1では、第1放熱フィン7の幅と第2放熱フィン8の幅と波形バネ11の幅とを一致させることで、第1フィンプレート9と第2フィンプレート10として、同じフィンプレート部品を用いている。
【0021】
実施例1では、板状バネ部材として、図5に示すように、バネ鋼による長方形板材を波形形状とした波形バネ11を用いている。そして、前記波形バネ11は、図1及び図2に示すように、積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の全ての要素隙間tの位置(2箇所位置)に設定している。
【0022】
次に、作用を説明する。
実施例1の電気式ヒータユニットH/U1における作用を、「PTC素子とチューブの相互接触面積確保作用」、「多段化による相互接触面積確保作用」に分けて説明する。
【0023】
[PTC素子とチューブの相互接触面積確保作用]
図6は、実施例1の電気式ヒータユニットH/U1において波形バネ11により弾性力を付与している状態を示す作用説明図である。
【0024】
実施例1の電気式ヒータユニットH/U1は、3段積層であり積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の全ての要素隙間tの位置(2箇所位置)に波形バネ11を設定している。したがって、2箇所位置に設定された波形バネ11,11により、隣接するヒータコア要素5,5の要素隙間tを拡大する上下方向に弾性力(4方向)が付与される。そして、最外周位置にて力を受けるアッパーエンドプレート3とロアエンドプレート4から弾性力の反力(2方向)が付与される。このため、全てのコア要素間に設定された波形バネ11,11により、3個積層されたヒータコア要素5,5,5のそれぞれに対し、図6の矢印に示すように、上下両方向から弾性力(合計6方向)が付与される。
【0025】
そして、この弾性力が、チューブ6を構成するアウターチューブ61とインナーチューブ62を互いに接近させる方向の圧着力となる。この圧着力により両チューブ61,62が接近すると、ポジションプレート13により位置決めされたPTC素子12と電極シート14と絶縁シート15が互いに密着し、さらに、PTC素子12が押し上げられて、アウターチューブ61の内面に圧着する。
【0026】
この圧着力は、アッパーエンドプレート3とロアエンドプレート4から近い2つのヒータコア要素5,5であっても、また、アッパーエンドプレート3とロアエンドプレート4から離れた中央部のヒータコア要素5であっても、全く同様に作用する。
【0027】
したがって、PTC素子12とアウターチューブ61の内面との相互接触面積が広く保たれる。このため、PTC素子12からの熱は、アウターチューブ61を経由し第1放熱フィン7に伝導し、第1放熱フィン7を通過する風を、効率の良い熱交換作用により温風とする。また、PTC素子12からの熱は、アウターチューブ61からインナーチューブ62を経由し第2放熱フィン8に伝導し、第2放熱フィン8を通過する風を、効率の良い熱交換作用により温風とする。
【0028】
[多段化による相互接触面積確保作用]
図7は、実施例1の3段積層による電気式ヒータユニットH/U1に対しヒータコア要素を追加することで6段積層による電気式ヒータユニットH/U1'とした場合において波形バネ11により弾性力を付与している状態を示す作用説明図である。
【0029】
実施例1の3段積層による電気式ヒータユニットH/U1を多段化し、6段積層による電気式ヒータユニットH/U1'とした場合について説明する。なお、6段積層の電気式ヒータユニットH/U1'の場合にも、隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の全ての要素隙間tの位置(5箇所位置)に波形バネ11を設定している。
【0030】
したがって、5箇所位置に設定された波形バネ11,11,11,11,11により、隣接するヒータコア要素5,5の要素隙間tを拡大する上下方向に弾性力(10方向)が付与される。そして、最外周位置にて力を受けるアッパーエンドプレート3とロアエンドプレート4から弾性力の反力(2方向)が付与される。このため、全てのコア要素間に設定された波形バネ11,11,11,11,11により、6個積層されたヒータコア要素5,5,5,5,5,5のそれぞれに対し、図7の矢印に示すように、上下両方向から弾性力(合計12方向)が付与される。
【0031】
そして、この弾性力が、チューブ6を構成するアウターチューブ61とインナーチューブ62を互いに接近させる方向の圧着力となる。この圧着力により両チューブ61,62が接近すると、ポジションプレート13により位置決めされたPTC素子12と電極シート14と絶縁シート15が互いに密着し、さらに、PTC素子12が押し上げられて、アウターチューブ61の内面に圧着する。
【0032】
この圧着力は、アッパーエンドプレート3とロアエンドプレート4から最も近い2つのヒータコア要素5,5であっても、また、アッパーエンドプレート3とロアエンドプレート4から最も離れた中央部のヒータコア要素5であっても、全く同様に作用する。
【0033】
したがって、ヒータコア要素5の積層段数が、例えば、3段から6段というように、多くなっても確実にPTC素子12とアウターチューブ61の内面との相互接触面積を保つことができる。
【0034】
次に、効果を説明する。
実施例1の電気式ヒータユニットH/U1にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0035】
(1) 通電により発熱する発熱素子(PTC素子12)を内挿したチューブ6に放熱フィン7,8を固定してヒータコア要素5とし、該ヒータコア要素5を複数個積層することで構成した多段積層コアの上下左右4方向の外周をフレーム部材(フロントハウジング1、エンドハウジング2、アッパーエンドプレート3、ロアエンドプレート4)により保持した電気式ヒータユニットH/U1において、前記多段積層コアのうち、積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の間に要素隙間tを設定し、該要素隙間tの位置に要素隙間tを拡大する方向に弾性力を付与する板状バネ部材(波形バネ11)を設定したため、コスト増を招くことなく、ヒータコア要素5の積層段数が多くなっても確実に発熱素子とチューブ6の相互接触面積を保つことができる。
【0036】
(2) 前記チューブ6は、アウターチューブ61とインナーチューブ62を積層方向に移動可能に嵌合することで構成し、前記ヒータコア要素5は、前記アウターチューブ61に第1放熱フィン7を固定し、前記インナーチューブ62に第2放熱フィン8を固定し、前記アウターチューブ61と前記インナーチューブ62により囲まれる空間内に、ポジションプレート13により位置決めされた発熱素子(PTC素子12)と電極シート14と絶縁シート15を積層することで構成したため、板状バネ部材により付与される弾性力によりアウターチューブ61とインナーチューブ62が互いに接近するように相対移動し、この相対移動により、PTC素子12と電極シート14と絶縁シート15を密着させ、かつ、PTC素子12をチューブ6の内面に確実に圧着することができる。
【0037】
(3) 前記積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の間の要素隙間tには、第1放熱フィン7を位置決めする第1フィンプレート9と、第2放熱フィン8を位置決めする第2フィンプレート10を設定し、前記板状バネ部材(波形バネ11)は、前記第1フィンプレート9と前記第2フィンプレート10の間の位置に介装したため、板状バネ部材がこじれを生じることなく両フィンプレート9,10間に設定され、確実に板状バネ部材が持つ弾性力を第1放熱フィン7と第2放熱フィン8に付与することができる。
【0038】
(4) 前記第1フィンプレート9と前記第2フィンプレート10は、長方形板材の両長辺部に等間隔にて切り込みを入れ、切り込み部を交互に上側と下側に曲げることで、一方の曲げ突起をフィン位置決め突起9a,10aとし、他方の曲げ突起をバネ位置決め突起9b,10bとしたため、同じフィンプレート部品を第1フィンプレート9と第2フィンプレート10として兼用しながら、積層方向に隣接する第1放熱フィン7と第2放熱フィン8の位置決めを行うことができると共に、両放熱フィン7,8に対する板状バネ部材の位置決めを行うことができる。
【0039】
(5) 前記板状バネ部材は、バネ鋼による長方形板材を波形形状とした波形バネ11であるため、各波形頂部から分散された弾性力を、積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5に付与することで、均一性の高い圧着力により、発熱素子とチューブの相互接触面積を広く保つことができる。
【0040】
(6) 前記板状バネ部材(波形バネ11)は、積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の全ての要素隙間tの位置に設定したため、積層された全てのヒータコア要素5に対し、2方向から弾性力を付与することで、ヒータコア要素5の積層段数が多くなっても、フレーム部材から最も離れたヒータコア要素5に対し高い圧着力を与えることができる。
【実施例2】
【0041】
実施例2は、要素段間のうち1段置きの位置に板状バネ部材を設定するようにした例である。
【0042】
まず、構成を説明する。
図8は、実施例2の6段積層による電気式ヒータユニットH/U2を示す正面図である。
【0043】
実施例2の電気式ヒータユニットH/U2は、図8に示すように、フロントハウジング1(フレーム部材)と、エンドハウジング2(フレーム部材)と、アッパーエンドプレート3(フレーム部材)と、ロアエンドプレート4(フレーム部材)と、ヒータコア要素5と、チューブ6と、第1放熱フィン7(放熱フィン)と、第2放熱フィン8(放熱フィン)と、第1フィンプレート9と、第2フィンプレート10と、波形バネ11(板状バネ部材)と、を備えている。
【0044】
前記波形バネ11は、積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の要素段間のうち、1段置きの要素隙間tの位置に設定される。つまり、波形バネ11は、上から1段目と2段目要素隙間tの位置と、上から3段目と4段目要素隙間tの位置と、上から5段目と6段目要素隙間tの位置と、の3箇所の位置に設定されている。なお、他の構成は、実施例1と同様であるので、対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
次に、作用を説明する。
実施例2の6段積層による電気式ヒータユニットH/U2では、3箇所位置に設定された波形バネ11,11,11により、隣接するヒータコア要素5,5の要素隙間tを拡大する上下方向に弾性力(6方向)が付与される。そして、最外周位置にて力を受けるアッパーエンドプレート3とロアエンドプレート4から弾性力の反力(2方向)が付与される。
【0046】
このため、6個積層されたヒータコア要素5,5,5,5,5,5のうち、アッパーエンドプレート3とロアエンドプレート4から最も近い2つのヒータコア要素5,5に対しては、図8の矢印に示すように、上下両方向から弾性力(合計4方向)が付与される。また、アッパーエンドプレート3とロアエンドプレート4から離れた4つのヒータコア要素5,5,5,5に対しては、図8の矢印に示すように、上方向または下方向から弾性力(合計4方向)が付与される。
【0047】
そして、この弾性力が、チューブ6を構成するアウターチューブ61とインナーチューブ62を互いに接近させる方向の圧着力となる。この圧着力により両チューブ61,62が接近すると、ポジションプレート13により位置決めされたPTC素子12と電極シート14と絶縁シート15が互いに密着し、さらに、PTC素子12が押し上げられて、アウターチューブ61の内面に圧着する。すなわち、積層された全てのヒータコア要素5に対し、少なくとも1方向から弾性力を付与することで、必要な圧着力が確保される。
【0048】
また、実施例2の電気式ヒータユニットH/U2のように、6段積層によって多段化した場合、同じ6段積層で全ての要素隙間tの位置に波形バネ11を設定した図7に示す電気式ヒータユニットH/U1'との対比から明らかなように、電気式ヒータユニットH/U2の積層方向長さを短縮でき、これによってコンパクト化を図ることができる。
【0049】
図9は、実施例2の変形例で7段積層による電気式ヒータユニットH/U2'を示す正面図である。
この7段積層による電気式ヒータユニットH/U2'では、1段置きにならない場所が生じ、4箇所位置に設定された波形バネ11,11,11,11により、隣接するヒータコア要素5,5の要素隙間tを拡大する上下方向に弾性力(8方向)が付与される。そして、最外周位置にて力を受けるアッパーエンドプレート3とロアエンドプレート4から弾性力の反力(2方向)が付与される。
【0050】
このため、7個積層されたヒータコア要素5,5,5,5,5,5,5のうち、アッパーエンドプレート3から最も近い2つのヒータコア要素5,5に対しては、図9の矢印に示すように、上下両方向から弾性力(合計4方向)が付与される。また、ロアエンドプレート4から最も近い1つのヒータコア要素5に対しては、図9の矢印に示すように、上下両方向から弾性力(合計2方向)が付与される。そして、アッパーエンドプレート3とロアエンドプレート4から離れた4つのヒータコア要素5,5,5,5に対しては、図9の矢印に示すように、上方向または下方向から弾性力(合計4方向)が付与される。なお、他の作用は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0051】
次に、効果を説明する。
実施例2の電気式ヒータユニットH/U2にあっては、実施例1の(1)〜(5)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0052】
(7) 前記板状バネ部材(波形バネ11)は、積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の要素段間のうち、1段置きの要素隙間tの位置に設定したため、積層された全てのヒータコア要素5に対し、少なくとも1方向から弾性力を付与することで必要な圧着力を確保しながら、多段化した場合、全ての要素隙間tの位置に板状バネ部材を設定する場合に比べ、ヒータユニットの積層方向長さの短縮によるコンパクト化を図ることができる。
【実施例3】
【0053】
実施例3は、チューブとして、積層方向に加わる力が大きいほど扁平形状に変形する可撓性チューブを採用した例である。
【0054】
まず、構成を説明する。
図10は、実施例3の電気式ヒータユニットH/U3におけるチューブ構造を示す拡大断面図である。
【0055】
実施例3の電気式ヒータユニットH/U3におけるチューブ構造は、図10に示すように、第1放熱フィン7と、第2放熱フィン8と、可撓性チューブ63と、PTC素子12(発熱素子)と、ポジションプレート13と、電極シート14と、絶縁シート15と、を備えている。
【0056】
前記可撓性チューブ63は、弾性変形量が大きなばね性かつ導電性のある金属等により成形され、積層方向に加わる力が大きいほど扁平形状に変形する。なお、他の構成は、実施例1,2と同様であるので、対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
次に、作用を説明する。
実施例3の電気式ヒータユニットH/U3では、波形バネ11により少なくとも一方向から弾性力が付与されると、この弾性力が、可撓性チューブ63を扁平形状に変形させる圧着力となる。この圧着力により可撓性チューブ63の両放熱フィン7,8が設けられた部分2が接近すると、ポジションプレート13により位置決めされたPTC素子12と電極シート14と絶縁シート15が互いに密着し、さらに、PTC素子12が可撓性チューブ63の内面に圧着する。なお、他の作用は、実施例1,2と同様であるので、説明を省略する。
【0058】
次に、効果を説明する。
実施例3の電気式ヒータユニットH/U3にあっては、実施例1の(1),(3)〜(6)、実施例2の(7)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0059】
(8) 前記チューブ6は、積層方向に加わる力が大きいほど扁平形状に変形する可撓性チューブ63により構成し、前記ヒータコア要素5は、前記可撓性チューブ63に第1放熱フィン7と第2放熱フィン8を固定し、前記可撓性チューブ63の空間内に、ポジションプレート13により位置決めされたPTC素子12と電極シート14と絶縁シート15を積層することで構成したため、板状バネ部材により付与される弾性力により可撓性チューブ63が積層方向の対向面が互いに接近するように扁平形状に変形し、この扁平変形により、PTC素子12と電極シート14と絶縁シート15を密着させ、かつ、PTC素子12を可撓性チューブ63の内面に確実に圧着することができる。
【0060】
以上、本発明の電気式ヒータユニットを実施例1〜実施例3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0061】
実施例1〜3では、板状バネ部材として、波形バネ11を用いる例を示した。しかし、板状バネ部材としては、要素隙間tを拡大する方向に弾性力を付与する板状バネ部材であれば、具体的な形状は、波形バネ11に限られることはない。例えば、図11に示すように、プレート部21aと複数の波状バネ部21bの組み合わせによる第1板状バネ21としても良い。また、図12に示すように、プレート部22aと、該プレート部22aの切り込みから一方向に折り曲げ突出させた複数の湾曲面状バネ部22bによる第2板状バネ22としても良い。また、図13に示すように、プレート部23aと、該プレート部23aの切り込みから一方向に折り曲げ突出させた複数の多角面状バネ部23bによる第3板状バネ23としても良い。また、図14に示すように、プレート部24aと、該プレート部24aの切り込みから交互に異なる方向に折り曲げ突出させた複数の多角面状バネ部24bによる第4板状バネ24としても良い。また、図15に示すように、プレート部25aと、該プレート部25aの切り込みから交互に異なる方向に折り曲げ突出させた複数の湾曲面状バネ部25bによる第5板状バネ25としても良い。
【0062】
実施例1〜3では、積層方向に隣接するヒータコア要素5とヒータコア要素5の間の要素隙間tに、第1放熱フィン7を位置決めする第1フィンプレート9と、第2放熱フィン8を位置決めする第2フィンプレート10を設定し、両フィンプレート9,10の間の位置に板状バネ部材を介装する例を示した。しかし、一方の放熱フィン側にのみフィンプレートを設定し、他方の放熱フィン側には、フィン位置決め機能と板バネ機能を兼用するフィンプレート一体型バネ部材を設定する例としても良い。例えば、図16に示すように、フィンプレート部31aと、該フィンプレート部31aの切り込みから一方向に折り曲げ突出させた複数の多角面状バネ部31bによる第1フィンプレート付き板状バネ31としても良い。また、図17に示すように、フィンプレート部32aと、該フィンプレート部32aの切り込みから一方向に折り曲げ突出させた複数の湾曲面状バネ部32bによる第2フィンプレート付き板状バネ32としても良い。また、図18に示すように、フィンプレート部33aと、該フィンプレート部33aの切り込みから交互に異なる方向に折り曲げ突出させた複数の多角面状バネ部33bによる第3フィンプレート付き板状バネ33としても良い。また、図19に示すように、フィンプレート部34aと複数の波状バネ部34bの組み合わせによる第4フィンプレート付き板状バネ34としても良い。また、図20に示すように、フィンプレート部35aと、該フィンプレート部35aの切り込みから交互に異なる方向に折り曲げ突出させた複数の湾曲面状バネ部35bによる第5フィンプレート付き板状バネ35としても良い。
【0063】
実施例1〜3では、発熱素子として、PTC素子を用いる例を示した。しかし、外部からの通電により発熱するサーミスタ素子であれば、PTC素子に限られることはない。
【0064】
要するに、多段積層コアのうち、積層方向に隣接するヒータコア要素とヒータコア要素の間に要素隙間を設定し、要素隙間の位置に要素隙間を拡大する方向に弾性力を付与する板状バネ部材を設定したものであれば、実施例1〜3に限られることはない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
実施例1〜3では、自動車の空調ユニットに内蔵されているヒータコアによる暖房を補助あるいは補完する電気式ヒータユニットとしての適用例を示した。しかし、建物等を含む様々な箇所において、暖房装置や暖房補助装置や暖房補完装置の用途として用いられる電気式ヒータユニットに対しても適用することができる。要するに、通電により発熱する発熱素子を内挿したチューブに放熱フィンを固定してヒータコア要素とし、該ヒータコア要素を複数個積層することで構成した多段積層コアの上下左右4方向の外周をフレーム部材により保持した電気式ヒータユニットであれば適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施例1の電気式ヒータユニットH/U1を示す分解斜視図である。
【図2】実施例1の電気式ヒータユニットH/U1を示す図で、(a)は正面図を示し、(b)は図2(a)のA−A線断面図を示す。
【図3】実施例1の電気式ヒータユニットH/U1を示す図2(b)のB部拡大断面図である。
【図4】実施例1の電気式ヒータユニットH/U1におけるフィンプレートを示す斜視図である。
【図5】実施例1の電気式ヒータユニットH/U1における波形バネ11をあらわす図で、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【図6】実施例1の電気式ヒータユニットH/U1において波形バネ11により弾性力を付与している状態を示す作用説明図である。
【図7】実施例1の3段積層による電気式ヒータユニットH/U1に対しヒータコア要素を追加することで6段積層による電気式ヒータユニットH/U1'とした場合において波形バネ11により弾性力を付与している状態を示す作用説明図である。
【図8】実施例2の6段積層による電気式ヒータユニットH/U2を示す正面図である。
【図9】実施例2の変形例で7段積層による電気式ヒータユニットH/U2'を示す正面図である。
【図10】実施例3の電気式ヒータユニットH/U3におけるチューブ構造を示す拡大断面図である。
【図11】板状バネ部材の一例である第1板状バネ21をあらわす図であり、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【図12】板状バネ部材の一例である第2板状バネ22をあらわす図であり、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【図13】板状バネ部材の一例である第3板状バネ23をあらわす図であり、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【図14】板状バネ部材の一例である第4板状バネ24をあらわす図であり、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【図15】板状バネ部材の一例である第5板状バネ25をあらわす図であり、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【図16】フィンプレート一体型バネ部材の一例である第1フィンプレート付き板状バネ31をあらわす図であり、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【図17】フィンプレート一体型バネ部材の一例である第2フィンプレート付き板状バネ32をあらわす図であり、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【図18】フィンプレート一体型バネ部材の一例である第3フィンプレート付き板状バネ33をあらわす図であり、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【図19】フィンプレート一体型バネ部材の一例である第4フィンプレート付き板状バネ34をあらわす図であり、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【図20】フィンプレート一体型バネ部材の一例である第5フィンプレート付き板状バネ35をあらわす図であり、(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【符号の説明】
【0067】
H/U1,H/U2,H/U3 電気式ヒータユニット
1 フロントハウジング(フレーム部材)
2 エンドハウジング(フレーム部材)
3 アッパーエンドプレート(フレーム部材)
4 ロアエンドプレート(フレーム部材)
5 ヒータコア要素
6 チューブ
61 アウターチューブ
62 インナーチューブ
63 可撓性チューブ
7 第1放熱フィン(放熱フィン)
8 第2放熱フィン(放熱フィン)
9 第1フィンプレート
10 第2フィンプレート
11 波形バネ(板状バネ部材)
12 PTC素子(発熱素子)
13 ポジションプレート
14 電極シート
15 絶縁シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により発熱する発熱素子を内挿したチューブに放熱フィンを固定してヒータコア要素とし、該ヒータコア要素を複数個積層することで構成した多段積層コアの上下左右4方向の外周をフレーム部材により保持した電気式ヒータユニットにおいて、
前記多段積層コアのうち、積層方向に隣接するヒータコア要素とヒータコア要素の間に要素隙間を設定し、該要素隙間の位置に要素隙間を拡大する方向に弾性力を付与する板状バネ部材を設定したことを特徴とする電気式ヒータユニット。
【請求項2】
請求項1に記載された電気式ヒータユニットにおいて、
前記チューブは、アウターチューブとインナーチューブを積層方向に移動可能に嵌合することで構成し、
前記ヒータコア要素は、前記アウターチューブに第1放熱フィンを固定し、前記インナーチューブに第2放熱フィンを固定し、前記アウターチューブと前記インナーチューブにより囲まれる空間内に、ポジションプレートにより位置決めされた発熱素子と電極シートと絶縁シートを積層することで構成したことを特徴とする電気式ヒータユニット。
【請求項3】
請求項2に記載された電気式ヒータユニットにおいて、
前記積層方向に隣接するヒータコア要素とヒータコア要素の間の要素隙間には、第1放熱フィンを位置決めする第1フィンプレートと、第2放熱フィンを位置決めする第2フィンプレートを設定し、
前記板状バネ部材は、第1フィンプレートと前記第2フィンプレートの間の位置に介装したことを特徴とする電気式ヒータユニット。
【請求項4】
請求項3に記載された電気式ヒータユニットにおいて、
前記第1フィンプレートと前記第2フィンプレートは、長方形板材の両長辺部に等間隔にて切り込みを入れ、切り込み部を交互に上側と下側に曲げることで、一方の曲げ突起をフィン位置決め突起とし、他方の曲げ突起をバネ位置決め突起としたことを特徴とする電気式ヒータユニット。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載された電気式ヒータユニットにおいて、
前記板状バネ部材は、バネ鋼による長方形板材を波形形状とした波形バネであることを特徴とする電気式ヒータユニット。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載された電気式ヒータユニットにおいて、
前記板状バネ部材は、積層方向に隣接するヒータコア要素とヒータコア要素の全ての要素隙間位置に設定したことを特徴とする電気式ヒータユニット。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載された電気式ヒータユニットにおいて、
前記板状バネ部材は、積層方向に隣接するヒータコア要素とヒータコア要素の要素段間のうち、1段置きの要素隙間位置に設定したことを特徴とする電気式ヒータユニット。
【請求項8】
請求項1、請求項3乃至請求項7の何れか1項に記載された電気式ヒータユニットにおいて、
前記チューブは、積層方向に加わる力が大きいほど扁平形状に変形する可撓性チューブにより構成し、
前記ヒータコア要素は、前記可撓性チューブに第1放熱フィンと第2放熱フィンを固定し、前記可撓性チューブの空間内に、ポジションプレートにより位置決めされた発熱素子と電極シートと絶縁シートを積層することで構成したことを特徴とする電気式ヒータユニット。
【請求項1】
通電により発熱する発熱素子を内挿したチューブに放熱フィンを固定してヒータコア要素とし、該ヒータコア要素を複数個積層することで構成した多段積層コアの上下左右4方向の外周をフレーム部材により保持した電気式ヒータユニットにおいて、
前記多段積層コアのうち、積層方向に隣接するヒータコア要素とヒータコア要素の間に要素隙間を設定し、該要素隙間の位置に要素隙間を拡大する方向に弾性力を付与する板状バネ部材を設定したことを特徴とする電気式ヒータユニット。
【請求項2】
請求項1に記載された電気式ヒータユニットにおいて、
前記チューブは、アウターチューブとインナーチューブを積層方向に移動可能に嵌合することで構成し、
前記ヒータコア要素は、前記アウターチューブに第1放熱フィンを固定し、前記インナーチューブに第2放熱フィンを固定し、前記アウターチューブと前記インナーチューブにより囲まれる空間内に、ポジションプレートにより位置決めされた発熱素子と電極シートと絶縁シートを積層することで構成したことを特徴とする電気式ヒータユニット。
【請求項3】
請求項2に記載された電気式ヒータユニットにおいて、
前記積層方向に隣接するヒータコア要素とヒータコア要素の間の要素隙間には、第1放熱フィンを位置決めする第1フィンプレートと、第2放熱フィンを位置決めする第2フィンプレートを設定し、
前記板状バネ部材は、第1フィンプレートと前記第2フィンプレートの間の位置に介装したことを特徴とする電気式ヒータユニット。
【請求項4】
請求項3に記載された電気式ヒータユニットにおいて、
前記第1フィンプレートと前記第2フィンプレートは、長方形板材の両長辺部に等間隔にて切り込みを入れ、切り込み部を交互に上側と下側に曲げることで、一方の曲げ突起をフィン位置決め突起とし、他方の曲げ突起をバネ位置決め突起としたことを特徴とする電気式ヒータユニット。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載された電気式ヒータユニットにおいて、
前記板状バネ部材は、バネ鋼による長方形板材を波形形状とした波形バネであることを特徴とする電気式ヒータユニット。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載された電気式ヒータユニットにおいて、
前記板状バネ部材は、積層方向に隣接するヒータコア要素とヒータコア要素の全ての要素隙間位置に設定したことを特徴とする電気式ヒータユニット。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載された電気式ヒータユニットにおいて、
前記板状バネ部材は、積層方向に隣接するヒータコア要素とヒータコア要素の要素段間のうち、1段置きの要素隙間位置に設定したことを特徴とする電気式ヒータユニット。
【請求項8】
請求項1、請求項3乃至請求項7の何れか1項に記載された電気式ヒータユニットにおいて、
前記チューブは、積層方向に加わる力が大きいほど扁平形状に変形する可撓性チューブにより構成し、
前記ヒータコア要素は、前記可撓性チューブに第1放熱フィンと第2放熱フィンを固定し、前記可撓性チューブの空間内に、ポジションプレートにより位置決めされた発熱素子と電極シートと絶縁シートを積層することで構成したことを特徴とする電気式ヒータユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−170121(P2009−170121A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3875(P2008−3875)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
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