説明

電気掃除機用ホース

【課題】 ホースのすべり性が良好であるとともに、応力集中を予防してホース強度や耐久性に優れた掃除機用ホースを提供する。
【解決手段】 凸条A1と凹条A2とがホ―ス軸方向に交互に並んで蛇腹状に設けられた合成樹脂製のホース壁を有する電気掃除機用ホースAにおいて、ホース壁凸条A1には、凸条A1の幅よりも狭い幅で、ホース外方に向けて突出する線状の突出部A3が、ホース壁と同一の樹脂材料で凸条に沿って設けられた電気掃除機用ホースとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性に優れた合成樹脂製の可撓性ホース、特に電気掃除機に使用される掃除機用ホースで凸条と凹条がホース軸方向に交互に蛇腹状に設けられた電気掃除機用ホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気掃除機本体と手元操作部との間に接続される掃除機用ホース(いわゆるクリーナホース)としては、ホースの可撓性や耐つぶれ性、意匠性や耐久性などを考慮したものが知られている。例えば、特許文献1には、断面略S字状の帯状帯を、互いに隣接する帯状体側縁部が重ね合わせられるように螺旋状に捲回すると共に接着一体化されてなる電気掃除機用ホースが開示され、そのホースは、ホース軸方向に凸条と凹条とが交互に並んで設けられた蛇腹状のホース壁を有するホースであって、ホース内壁部に隣接する接続部が円弧状断面で肉厚一定に形成されていることにより、ホースが曲がりやすく、気流共鳴音の発生を予防できることが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、電気掃除機用ホースのホース壁が、螺旋状に設けられた樹脂被覆鋼線の周りを覆うように接着一体化されると共に、ホース壁を構成するウレタン樹脂材料よりも硬度の高い小幅帯が、ホース壁における被覆鋼線の外周面上を覆うように螺旋巻きして接着一体化された電気掃除機用ホースが開示され、そのようなホースによればホース外周のべたつき感が少なく、耐摩耗性が向上できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際出願公開WO2007/138780号公報
【特許文献2】特開2002−5347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、これら掃除機用ホースにおいては、その引っ張り強度や耐久性、耐摩耗性といった、掃除機用ホースの機能・強度的な側面だけでなく、掃除を行う際にホースが取り扱いやすいように、ホースのすべり性も重視されるに至っている。即ち、ホースはフローリング材やフロア材等の床用素材に対し、引っかかりにくいものであることが好ましい。
【0006】
特許文献2のホースのように、ホース壁の凸条部分をより硬質の材料でおおって、ホースのべたつき感を低減することは、ホースのすべり性改善に一定の効果を与えるものであるが、ホースのすべり性向上に関しては、いまなお、他の解決手段が模索されている。
【0007】
また、特許文献2のホースのようなホース構造とする場合には、硬質の小幅帯と軟質のホース壁の境界部分でホース壁の剛性が急変するために、ホースの伸縮・曲げに伴って、その部分に応力集中が発生しやすくなり、その部分を起点としてホース壁が破壊しやすくなってしまうおそれがある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、ホースのすべり性が良好であるとともに、応力集中を予防してホース強度や耐久性に優れた掃除機用ホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、鋭意検討の結果、ホース壁の凸条部分に、凸条の幅よりも幅の狭い線状の突出部をホース壁と同一材料で設けると、すべり性が良好となると共に、応力集中が防止されて上記課題が解決されることを知見し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明は、凸条と凹条とがホ―ス軸方向に交互に並んで設けられた合成樹脂製のホース壁を有する電気掃除機用ホースであって、ホース壁凸条には、凸条の幅よりも狭い幅で、ホース外方に向けて突出する線状の突出部が、ホース壁と同一の樹脂材料で凸条に沿って設けられていることを特徴とする電気掃除機用ホース。である。
【0011】
さらに、本発明においては、突出部が連続した線状に設けられていることが好ましい。(請求項2)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ホース壁凸条に、凸条の幅よりも狭い幅で、ホース外方に向けて突出する線状の突出部が、ホース壁と同一の樹脂材料で凸条に沿って設けられていることにより、応力集中を予防してホースの強度や耐久性を維持しながら、ホースのすべり性を良好なものとすることができるという効果が得られる。
【0013】
そして、突出部を連続した線状に設けた場合には、そのようなホースを、いわゆるスパイラル製法によって効率的に製造できるという効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の電気掃除機用ホースが使用される電気掃除機の構成を示す図である。
【図2】本発明第1実施形態の電気掃除機用ホースの構造を示す部分断面図である。
【図3】本発明第1実施形態のホース壁の詳細な構造を示す断面図である。
【図4】本発明第1実施形態のホースの製造に用いられる帯状体の断面形状を示す図である。
【図5】本発明第2実施形態の電気掃除機用ホースの構造を示す部分断面図である。
【図6】本発明第3実施形態の電気掃除機用ホースのホース壁構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。本発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。
【0016】
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1には、本発明の電気掃除機用ホースが使用される電気掃除機の全体の外観を示す。図1において、電気掃除機用ホースAは合成樹脂材料製の可撓性ホースであり、掃除機本体10に設けられた吸気口に接続パイプ11を介してホースAの一端が接続され、ホースAの他端は手元操作部12に接続され、手元操作部12に連続して延長管13、続いて床用ノズル14が接続されて電気掃除機が構成されている。ホースAには電線が内蔵される場合があり、電線を内蔵する場合には、電線(図示せず)によって、掃除機本体10と手元操作部12との間が電気的に接続される。
【0017】
図2は本発明の第1実施形態の電気掃除機用ホースAの部分断面図であり、図3はそのホース壁部分の拡大断面図である。
電気掃除機用ホースAは、柔軟性を付与するために、その壁面がじゃばら状に成形されている。本実施形態の電気掃除機用ホースAは、略S字断面形状に押し出された帯状体を螺旋状に巻きつけて、隣接する条帯側縁部を互いに重ね合わせて接着一体化するスパイラル成形方法によって成形された可撓性ホースである。本実施形態においては備えられていないが、可撓性ホースAは、ホース壁を構成する樹脂材料よりも硬質な樹脂材料や鋼線などからなる硬質補強体を適宜備えるものであっても良い。
【0018】
本発明第1実施形態の電気掃除機用ホースAについて、より詳細に説明すると、ホースAのホース壁は、前記S字断面の帯状体が捲回一体化されることにより、ホース壁がホース外側に向かって凸に形成された凸条A1と、ホース壁がホース内側に向かって凹入するように形成された凹条A2とが、ホース軸方向に互いに交互に並ぶように設けられた蛇腹状のホース壁となっている。凸条と凹条とは、本実施形態においてはそれぞれ1条の螺旋状に設けられているが、螺旋の条数は、ホースの成形速度を向上させる目的や、電線の本数増加などに応じて、2条、3条またはそれ以上の多条に設けることもできる。
【0019】
ホース壁の凸条A1のホース外周面側には、さらにホース外側に向かって突出する突出部A3が設けられている。突出部A3は、凸条A1に沿って連続した線状に設けられると共に、突出部の幅Sは凸条A1の幅Wよりも狭い幅で設けられている。ここで、凸条や突出部の幅とは、ホース軸方向に沿った方向の幅である。突出部A3の幅Sは、凸条A1の幅Wに対し、例えばS=W/2となるように設けることができるが、W/8<S<3W/4、より好ましくはW/5<S<2W/3となるように設けることが、すべり性の良好なホースを提供する上で重要である。そして、突出部A3の高さ(ホース半径方向の高さ)は、ホース壁が床などに接触する際に、凸条A1の突出部以外の部分が接触しない程度の高さであることが好ましい。
【0020】
また、突出部A3と凸条A1とは、同一の樹脂材料によって一体に形成されている。
【0021】
本実施の形態においては、ホースAを、ポリエチレン樹脂とエチレン酢酸ビニル樹脂(EVA樹脂)とからなるコポリマー樹脂により製造する。 ホースAのホース壁面を構成する材料としては、その他の軟質樹脂材料を使用することもでき、例えば、軟質塩化ビニル樹脂や、オレフィン系樹脂(ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、EVA樹脂など)、ウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマ(オレフィン系熱可塑性エラストマ、スチレン系熱可塑性エラストマ、変性スチレン系熱可塑性エラストマなど)、およびそれらの混合組成物などを例示することができる。
【0022】
本発明第1実施形態の電気掃除機用ホースAの製造方法について説明する。ホースAはいわゆるスパイラル成形法と呼ばれる公知の方法により、製造することができる。即ち、ホース壁を構成する樹脂材料を、図4に示すような略S字状の断面形状で、押出機から半溶融状態で押出して、帯状体Tとする。そして、押し出された帯状体Tを、公知のホース成形軸に巻きつけ、ホース壁とする。即ち、螺旋条に捲回された状態において互いに隣接する側縁部T1,T2が互いに重ね合わせられるように、帯状体Tを螺旋状に捲回すると共に、その重ね合わせ部を接着材(好ましくは熱可塑性接着材)で接着一体化する。そして、ホースを冷却することにより、帯状体Tの断面形状を固定すると共に帯状体側縁部の接着処理を完了させて、蛇腹状に形成されたホース壁として、ホースが不定長に製造される。得られた不定長のホースを所定長さに切断すれば、電気掃除機用ホースAが得られる。
【0023】
本発明第1実施形態の電気掃除機用ホースAの作用効果について説明する。
本発明実施形態の電気掃除機用ホースAは、突出部A3も凸条A1も、共に同一の樹脂材料で一体に形成されているので、特許文献2に記載されたホースのような応力集中が発生しない。すなわち、特許文献2に記載のホースにおいては、硬質材料からなる部分と軟質材料からなる部分との境界部での応力集中が避けられなかったが、本実施形態においては、同一材料によってホース壁が形成されるので、そのような応力集中が発生せず、その結果、ホースが強度や耐久性に優れたものとなる。
【0024】
また、本発明のホースによれば、驚くべきことに、ホースのすべり性も向上する。図3にその断面を示したように、ホース壁の凸条A1に、幅の狭い突出部A3を線状に設ける場合には、従来の技術常識に従えば、ホース壁の外表面に突出する突出部A3が引っかかりやすくなって、あるいは、突出部A3と凸条A1の境界部に存在することになる溝状の部分A4も引っかかりやすくなる要因となって、ホースのすべり性はむしろ悪化するであろうことが予想されるが、予想に反して、すべり性が向上するのである。
【0025】
すべり性が向上する原理は定量的には明らかでないものの、突出部A3により凸条A1が床などに接触することを防止することで、突出部A3のみが床などに点接触するようになって、ごみやほこりがホース表面に付着しにくくなることもその要因の一つではないかと推定する。
【0026】
そして、突出部A3を凸条A1に沿って、連続した線状に設ける場合には、こうしたホースをいわゆるスパイラル成形法によって、既存の生産設備などを活用しながら効率的に製造できるという効果も得られる。
【実施例】
【0027】
上記実施形態のホースを作成して、すべり試験及び強度試験を行った。試験サンプルとして、内径38mm、ジャバラ高さ(凸条と凹条の段差)4mm、ジャバラピッチ6mm、凸条の幅3mm、突出部幅1mm、突出部高さ0.7mmとなるように上記第1実施形態に対応するホース(実施例)を作成した。比較例としては、突条が存在しない点を除いては同じ仕様のホース(比較例1)を作成した。また、他の比較例として、突出部に対応する部分を、ホース壁材料と比べ硬質な硬質補強体(ポリプロピレン製、幅2mm、高さ1mm)に置き換えたホース(比較例2)を作成した。
【0028】
上記実施例及び比較例に対してホースのすべり性の評価を行ったところ、実施例のホースが、フローリングの床などに対してホースを引きずった際の抵抗が比較例1のホースよりも小さく、すべり性が良好であることが確認できた。試験は、500mmの長さの試験サンプルの内部に1kgのウェートを配置した状態で、試験床上をホース軸方向に引っ張り、ホースが引きずれられる際の引きずり力(動摩擦力)をテンションゲージによって測定して行った。木質フローリング床での測定結果は、実施例のホースが400g重(3.9N)で、比較例1のホースが470g重(4.6N)であった。また、床用塩化ビニルシートの床での測定結果は、実施例のホースが550g重(5.4N)で、比較例1のホースが660g重(6.5N)であった。
【0029】
また、ホースの曲げ耐久試験を行ったところ、比較例2のホースにおいては、比較的早期に硬質補強体とホース壁の境界部からホースが裂けてしまったのに対し。実施例及び比較例1のホースは所定のホース寿命までホース壁の損傷が見られなかった。
【0030】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に本発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0031】
図5には、本発明第2実施形態の電気掃除機用ホース3を示す。凸条31や凹条32が交互に設けられる点や、凸条よりも幅狭の突出部33が凸条に沿って線状に設けられる点は、上記第1実施形態と共通である。一方、本実施形態においては、凸条31や凹条32がそれぞれ独立したリング状に設けられている。また、突出部33は、連続した線状ではなく、断続的な線状、即ち破線状に設けられている。このような電気掃除機用ホース3は、いわゆるコンジット成形と呼ばれる、キャタピラー状の移動金型を用いる連続ブロー成形法によって得ることができる。
【0032】
本実施形態においても、凸条よりも幅狭の突出部33が凸条31に沿って線状に設けられることによって、ホースのすべり性が向上すると共に、突出部33をホース壁と同一材料からなるものとすることによって、応力集中を予防してホースを強度や耐久性にすぐれたものとできる。
【0033】
図6には、本発明第3実施形態の電気掃除機用ホース4を示す。図6には、ホース壁部分の断面図を、ホース外周面側を図の上側として示す。ホース壁に凸条41や凹条42が交互に設けられる点や、凸条41よりも幅狭の突出部43が凸条に沿って線状に設けられる点は、上記実施形態と共通である。一方、本実施形態においては、凸条41の内周面に沿って、螺旋状に捲回された硬質補強体44が接着一体化されている。硬質補強体44は、硬鋼線441がポリプロピレン樹脂442によって被覆されて構成されており、ホース壁の凸条部分の内周面に接着一体化されている。
【0034】
本実施形態においても、凸条よりも幅狭の突出部43が凸条41に沿って線状に設けられることによって、ホースのすべり性が向上すると共に、突出部43をホース壁と同一材料からなるものとすることによって、応力集中を予防してホースを強度や耐久性にすぐれたものとできる。即ち、本発明の電気掃除機用ホースは、硬質補強体を備えるものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の電気掃除機用ホースは、すべり性に優れ、強度耐久性も良好とできるものであって、家庭用電気掃除機や産業用電気掃除機などに使用することができ、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0036】
A 電気掃除機用ホース
A1 凸条
A2 凹条
A3 突出部
T1,T2 帯状体側縁部
3 電気掃除機用ホース
31 凸条
32 凹条
33 突出部
4 電気掃除機用ホース
41 凸条
42 凹条
43 突出部
44 硬質補強体
441 硬鋼線
442 樹脂被覆
10 電気掃除機本体
11 接続パイプ
12 手元操作部
13 延長管
14 床用ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸条と凹条とがホ―ス軸方向に交互に並んで設けられた合成樹脂製のホース壁を有する電気掃除機用ホースであって、
ホース壁凸条には、凸条の幅よりも狭い幅で、ホース外方に向けて突出する線状の突出部が、ホース壁と同一の樹脂材料で凸条に沿って設けられていることを特徴とする電気掃除機用ホース。
【請求項2】
突出部が連続した線状に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電気掃除機用ホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−125393(P2011−125393A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284142(P2009−284142)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000108498)タイガースポリマー株式会社 (187)
【Fターム(参考)】