説明

電気接続箱の取付構造

【課題】良好な防水性が得られるとともに、外装ケースを小型化・簡略化できる電気接続箱の取付構造を提供する。
【解決手段】 電気接続箱10は、アンダーカバー11の第1側部11Aが、嵌合方向に対して略平行な第1車体面17に支持部材19を介して支持されるとともに、アッパーカバー12の上板12Aが、嵌合方向に対して略直交する第2車体面18に当接される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジンルーム等に配置される電気接続箱の取付構造に係り、特に、自動車の組立後や修理後に外部検査機器の外部コネクタと接続するための検査用コネクタを内部に収容した電気接続箱の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように、自動車のエンジンルーム等に配置される電気接続箱90は、各種の部品等を収容するアンダーカバー91と、アンダーカバー91の上面開口を覆うことにより内部への被水を防ぐアッパーカバー92とからなる外装ケース93を備え、適宜な固定手段によりアンダーカバー91およびアッパーカバー92を相対的に固定することにより防水性が得られ、アンダーカバー91が車体に支持される。
【0003】
この電気接続箱90は、固定手段による固定が不十分であった場合や、固定手段が経時変化により劣化した場合にも防水性を維持するために、アンダーカバー91およびアッパーカバー92における環状に形成された互いの合わせ面に凹凸嵌合部91A,92Aが設けられている。
この電気接続箱90は、アンダーカバー91にアッパーカバー92を被せたときに凹凸嵌合部91A,92Aが互いに嵌合することによりアンダーカバー91およびアッパーカバー92間にラビリンスシールが形成される(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平5−62125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した電気接続箱90は、アンダーカバー91およびアッパーカバー92間の防水性を維持するために、換言すればアンダーカバー91およびアッパーカバー92が互いに離反しないように維持するための強固な固定手段が必要であるため、外装ケース93の構造が複雑となるという問題がある。
さらに、前述した電気接続箱90は、ラビリンスシールを構成する幅広な凹凸嵌合部91A,92Aがアンダーカバー91およびアッパーカバー92にそれぞれ必要であるため、外装ケース93を小型化できないという問題がある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好な防水性が得られるとともに、外装ケースを小型化・簡略化できる電気接続箱の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電気接続箱は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1) アンダーカバーと、前記アンダーカバーの上面開口を塞ぐアッパーカバーとを備える外装ケースが車体に取り付けられる電気接続箱の取付構造であって、前記車体に対して前記アンダーカバーおよび前記アッパーカバーが個別に支持されること。
【0007】
ここで、支持とは、例えばボルト結合,ピン結合,スナップリング,係止爪等により車体に固定する構造や、あるいはまた、アンダーカバーおよびアッパーカバーの嵌合方向に対して直交する車体面をアンダーカバーあるいはアッパーカバーに当接させる構造等を指す。
【0008】
(2) 上記(1)の構成の電気接続箱の取付構造であって、
前記アンダーカバーの側部が、前記アンダーカバーおよび前記アッパーカバーの嵌合方向に対して略平行な前記車体の第1車体面に支持部材を介して支持されるとともに、前記アッパーカバーの上部が、前記嵌合方向に対して略直交する前記車体の第2車体面に当接されること。
【0009】
(3) 上記(2)の構成の電気接続箱の取付構造であって、
外装ケースが、前記アッパーカバーの前記上部に形成された挿通孔と、前記挿通孔を閉鎖するキャップと、を更に備えるとともに、前記車体が、前記第2車体面を厚み方向に貫通するとともに前記挿通孔に連通する連通部を備えていること。
【0010】
(4) 上記(1)の構成の電気接続箱の取付構造であって、
前記アンダーカバーの側部の外側面と、前記アッパーカバーの環状部の内側面とが相互に係合するとともに密着し、さらに、前記側部の端面と、前記アッパーカバーの内側に設けられたリブの端面とが当接すること。
【0011】
上記(1)の構成の電気接続箱の取付構造によれば、車体に対してアンダーカバーおよびアッパーカバーが個別に支持されるため、車体に取り付けられた状態ではアンダーカバーおよびアッパーカバーが互いに離反しないことになる。
すなわち、上記(1)の構成の電気接続箱の取付構造によれば、アンダーカバーおよびアッパーカバーを相互に嵌合させた状態を維持するために、従来のように強固な固定手段が必要なく、従来に比較して外装ケースの構造を小型化・簡略化できることになる。
【0012】
また、上記(1)の構成の電気接続箱の取付構造によれば、固定手段の不具合を想定してラビリンスシールを形成するための部位がアンダーカバーおよびアッパーカバーに必要がないため、例えばアンダーカバーの外側面がアッパーカバーの内側面に摺接する簡易な入れ子状の嵌合構造を採用でき、これによっても外装ケースの構造を小型化・簡略化できることになる。
【0013】
上記(2)の構成の電気接続箱の取付構造によれば、アンダーカバーが第1車体面に支持された状態において、アンダーカバーから離反しようとするアッパーカバーが第2車体面により規制されるため、第2車体面に対してアッパーカバーを固定するための部材等が必要ないことになる。
【0014】
上記(3)の構成の電気接続箱の取付構造によれば、挿通孔および第2車体面の連通部を通じて、外装ケースの内部を部分的に露呈させることができるため、例えば外装ケースに収容された検査用コネクタを外部検査機器の外部コネクタに接続することにより、車体の各所に配置された各種電子部品が正常に機能するか否かを自動車の組立後や修理後に確認する検査作業を容易に行えることになる。
【0015】
上記(4)の構成の電気接続箱の取付構造によれば、入れ子状に嵌合されたアンダーカバーおよびアッパーカバー間の狭小部位における複数箇所に防水性が得られるため、外装ケースの小型化と防水性とを高次元で両立できることになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電気接続箱の取付構造によれば、良好な防水性が得られるとともに、外装ケースを小型化・簡略化できるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る第1実施形態を示す断面図、図2は本発明に係る第2実施形態を示す断面図、図3は変形例を示す模式図である。
【0018】
(第1実施形態)
図1(A)に示すように、電気接続箱10は、アンダーカバー11と、アンダーカバー11の上面開口を塞ぐアッパーカバー12とから構成される外装ケース13を備え、自動車のエンジンルームを構成する車体14に沿って配置される。
アンダーカバー11およびアッパーカバー12は、例えばポリエチレン,ポリエチレン,ナイロン等により形成されている。
図1(B)に示すように、アンダーカバー11は、第1側部11A、第2側部11B、第3側部11Cを有している。
【0019】
第1側部11A、第2側部11B、第3側部11Cは、平面相似形状の筒状とされ、アッパーカバー12に向かってアンダーカバー11が段階的に先細り形状となるように配列されている。第1側部11A、第2側部11B間の段差寸法は、アッパーカバー12の肉厚寸法に対応している。
第2側部11Bの外側面には、第3側部11Cに向かって先細りとなる爪部15が形成されている。
【0020】
アッパーカバー12は、上板12Aと、上板12Aの周部に連結された環状部12Bと、環状部12Bの内面側に形成されたリブ12Cとを備えている。
このアッパーカバー12は、環状部12Bの内面に前述した爪部が係合可能な凹部16が設けられているとともに、環状部12Bの端面が第3側部11Cの端面に当接可能となっている。
【0021】
このような外装ケース13は、アンダーカバー11の上面開口をアッパーカバー12により塞ぎ、アンダーカバー11の爪部15とアッパーカバー12の凹部16とを係合させることにより、アンダーカバー11およびアッパーカバー12が互いに離反しないように相互に固定される。
【0022】
この際、外装ケース13は、環状部12Bの端面と、第1側部11A、第2側部11B間の段差面11Dとが密着して防水性が得られ、爪部15および凹部16の係合箇所よりも下方における第2側部11Bの外側面と環状部12Bの内側面とが密着して防水性が得られ、爪部15および凹部16の係合箇所よりも上方における第2側部11Bの外側面と環状部12Bの内側面とが密着して防水性が得られ、さらに第3側部11Cの端面と環状部12Cの端面とが密着して防水性が得られ、四重の防水性が得られる。
【0023】
このような電気接続箱10は、車体14を構成する第1車体面17および第2車体面18に沿って取り付けられる。第1車体面17は略垂直面とされ、第2車体面18は下向き面とされ、第1車体面17および第2車体面18は互いに交差するように配向されている。
そして、電気接続箱10は、アッパーカバー12の上板12Aが第2車体面18に当接して支持された状態でアンダーカバー11の第1側部11Aの外側面が第1車体面17に支持部材19を介して支持される。
【0024】
換言すれば、アッパーカバー12の上板12Aは、アンダーカバー11およびアッパーカバー12の嵌合方向(図1中、上下方向)に対して略直交する第2車体面18に当接して支持される。
また、アンダーカバー11の側部は、アンダーカバー11およびアッパーカバー12の嵌合方向に対して略平行な第1車体面17に支持部材19を介して支持される。
【0025】
支持部材19は、第1側部11Aの外側面および第1車体面17のうちの一方に設けられ、第1側部11Aの外側面および第1車体面17のうちの他方に対して着脱可能な構造であればよく、例えばボルト,ピン,スナップリング,係止爪等を例示できる。
【0026】
このような第1実施形態において、外装ケース13の内部を露呈させるにあたっては、まず支持部材19を解除することにより外装ケース13を車体14から離反させ、次いでアンダーカバー11からアッパーカバー12を取り外す。
【0027】
以上のような第1実施形態によれば、車体14に対してアンダーカバー11およびアッパーカバー12が個別に支持されるため、車体14に取り付けられた状態ではアンダーカバー11およびアッパーカバー12が互いに離反せず、これによりアンダーカバー11およびアッパーカバー12を相互に嵌合させた状態を維持するために、従来のように強固な固定手段が必要なく、従来に比較して外装ケース13の構造を小型化・簡略化できる。
【0028】
また、前述した第1実施形態によれば、固定手段の不具合を想定した防水構造が必要ないため、これによっても外装ケース13の構造を小型化・簡略化できる。
そして、前述した第1実施形態によれば、入れ子状に嵌合されたアンダーカバー11の第1側部11A、第2側部11Bとアッパーカバー12の環状部12Bとの間において得られる三重の防水性と、さらに第3側部11Cの端面と環状部12Bの端面とが密着して得られる防水性とによる四重の防水性が得られるため、従来に比較して外装ケース13の小型化と防水性とを高次元で両立できる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態を図2に基づいて説明する。なお、以下に説明する第2実施形態において、前述した第1実施形態において説明した部材と同様な部材については、第1実施形態において使用した符号と同一符号を図面に付して、その説明を省略することとする。
【0030】
図2に示す第2実施形態において、電気接続箱20の外装ケース23は、アッパーカバー22の上板22Aに挿通孔27が設けられているとともに、挿通孔27を閉鎖するキャップ29が設けられている。
挿通孔27は、外装ケース23に収容された検査用コネクタが露呈する位置に設けられている。検査用コネクタは、車体24の各所に配置された各種電子部品が正常に機能するか否かを自動車の組立後や修理後に確認するために、外部検査機器の外部コネクタに接続される。
キャップ29は、挿通孔27に対して圧入、螺合等の適宜な構造により着脱可能に取り付けられている。
【0031】
車体24は、第2車体面28を構成する板部材28Aを厚み方向に貫通する連通部26が設けられている。
連通部26は、板部材28Aを平面略U字状に切り欠くことにより形成され、車体24に電気接続箱20が取り付けられたときに、挿通孔27に対応する位置に設けられている。
【0032】
このような第2実施形態においては、挿通孔27および板部材28Aの連通部26を通じて、外装ケース23に収容された検査用コネクタを露呈させることができるため、検査用コネクタを外部検査機器の外部コネクタに接続することにより、車体14に電気接続箱20を取り付けたままの状態で検査作業を容易に行える。
【0033】
なお、前述した第1実施形態および第2実施形態においては、略垂直な第1車体面17に支持部材19を介してアンダーカバー11の第1側部11Aが支持され、略水平な下向き面である第2車体面18,28にアッパーカバー12,22の上板12A,22Aが当接して支持された形態を例示したが、図3に示す形態も本発明に含まれる。
【0034】
すなわち、図3(A)に示す電気接続箱30は、車体14の第1車体面17に対してアンダーカバー11の側部およびアッパーカバー12の側部が支持部材19を介して個別に支持される。
また、図3(B)に示す電気接続箱40は、アッパーカバー12の側部が支持部材19を介して車体14の第1車体面17に支持され、第1車体面17に対して交差する上向き面である第2車体面18Aに対してアンダーカバー11の底部が接触して支持される。
【0035】
さらに、図3(C)に示す電気接続箱50は、アンダーカバー11の上部およびアッパーカバー12の底部が、車体14の下向き面である第2車体面18と、第2車体面18に対向する第3車体面18Aとの支持部材19を介して個別に支持される。
そして、図3(D)に示す電気接続箱60は、車体14の第1車体面17に対してアンダーカバー11の側部が支持部材19を介して支持され、アッパーカバー12の上部がL字状の支持部材19Aを介して第1車体面17に支持される。
【0036】
その他、アンダーカバー,アッパーカバー,外装ケース,車体,電気接続箱,側部,嵌合方向,第1車体面,支持部材,上部,第2車体面,挿通孔,キャップ,連通部,環状部,リブは、第1実施形態および第2実施形態において示した形状,形態等に限定されず、本発明を達成できる範囲での変形,変更は本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、良好な防水性が得られるとともに、外装ケースを小型化・簡略化できるという効果を有する電気接続箱の取付構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る第1実施形態を示す全体図および要部断面図である。
【図2】本発明に係る第2実施形態を示す平面図および全体図である。
【図3】本発明の変形例を示す模式図である。
【図4】従来例を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0039】
10,20,30,40,50,60 電気接続箱
11 アンダーカバー
11A 第1側部(側部)
12,22 アッパーカバー
12A 上板(上部)
12B 環状部
12C リブ
13,23 外装ケース
14,24車体
17 第1車体面
18,18A,28 第2車体面
19,19A 支持部材
26 連通部
27 挿通孔
29 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンダーカバーと、前記アンダーカバーの上面開口を塞ぐアッパーカバーとを備える外装ケースが車体に取り付けられる電気接続箱の取付構造であって、
前記車体に対して前記アンダーカバーおよび前記アッパーカバーが個別に支持されることを特徴とする電気接続箱の取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電気接続箱の取付構造であって、
前記アンダーカバーの側部が、前記アンダーカバーおよび前記アッパーカバーの嵌合方向に対して略平行な前記車体の第1車体面に支持部材を介して支持されるとともに、
前記アッパーカバーの上部が、前記嵌合方向に対して略直交する前記車体の第2車体面に当接されることを特徴とする電気接続箱の取付構造。
【請求項3】
請求項2に記載の電気接続箱の取付構造であって、
外装ケースが、前記アッパーカバーの前記上部に形成された挿通孔と、前記挿通孔を閉鎖するキャップと、を更に備えるとともに、
前記車体が、前記第2車体面を厚み方向に貫通するとともに前記挿通孔に連通する連通部を備えていることを特徴とする電気接続箱の取付構造。
【請求項4】
請求項1に記載の電気接続箱の取付構造であって、
前記アンダーカバーの側部の外側面と、前記アッパーカバーの環状部の内側面とが相互に係合するとともに密着し、
さらに、前記側部の端面と、前記アッパーカバーの内側に設けられたリブの端面とが当接することを特徴とする電気接続箱の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−278738(P2009−278738A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126295(P2008−126295)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】