説明

電気接続箱

【課題】 コネクタのケースに対する保持力を高める。
【解決手段】 PCBコネクタ60のハウジング61の背面には、後方に突出したのち直角に立ち上がったL字形をなす係止片73が形成される。カバー50の裏面には、一対の突壁55の間に所定深さの係止溝56が形成される。カバー50がケース20の上面に被着されることに伴い、係止溝56内に、PCBコネクタ60側の係止片73の立ち上がり部73Aが進入する。PCBコネクタ60に対して相手コネクタが嵌合または離脱される際に、前後方向に押されまたは引かれる力が作用しても、前後に揺れるように変位することが規制され、そのため雄端子62が変形することが回避される。もって雄端子62の半田付け部65が、クラックが入る等の損傷を受けることが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等に装備される電気接続箱として、基板用コネクタを搭載したプリント回路基板をケース内に収容し、コネクタを外部に臨ませた構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。より具体的な例としては、プリント回路基板の端部に基板用コネクタがその嵌合面を回路基板の板面に沿った方向に向けて搭載され、このコネクタに装着された端子金具が回路基板の導電路に対してフロー半田により接続され、この回路基板が一面に開口したケース内に収容されるとともに、コネクタがケースの開口縁側から外部に臨んで配されている。
ここで基板用コネクタには、ワイヤハーネスの端末に取り付けられたコネクタ等の相手コネクタが嵌合または離脱されることから高い保持力が要求され、そのため基板用コネクタは、ケースの開口縁にねじで止められて固定されるようになっている。
【特許文献1】特開2000−21477公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかるに従来、基板用コネクタを固定する部分の構造は、コネクタの側面の底部から取付板を張り出して設け、この取付板をケースの開口縁にねじ止めする程度であったため、相手コネクタの嵌合・離脱時の力の掛け方によっては、基板用コネクタが上部側を揺らすように変位する可能性が否定できない。そうすると、その影響が装着された端子金具にまで及び、例えば半田付け部分にクラックが入る等の不具合が出るおそれがあった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、回路構成板に搭載されたコネクタのケースに対する保持力を高めるところにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、回路構成板にはコネクタがその嵌合面を前記回路構成板の板面に沿った方向に向けて搭載され、このコネクタに装着された端子金具が前記回路構成板の導電路に対して半田付けにより接続されており、前記回路構成板が一面に開口したケース内に収容されて前記コネクタが前記ケースの開口縁側から外部に臨んで配されるとともに、前記ケースの開口面にカバーが被着された電気接続箱であって、前記カバーと前記コネクタとの間には、前記コネクタが相手コネクタとの嵌合方向に沿った方向へ変位することを規制する規制手段が設けられている構成としたところに特徴を有する。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記カバーの裏面と前記コネクタの上面との間には、前記カバーの被着に伴って互いに嵌合する凹凸部が設けられているところに特徴を有する。
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記カバーには、前記コネクタの両側面を挟持する挟持部が設けられているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0006】
<請求項1の発明>
コネクタに相手コネクタが嵌合または離脱されると、コネクタに対して前後方向に押されまたは引かれる力が作用するが、カバーとコネクタとの間に設けられた規制手段によって、コネクタが回路構成板に対して前後方向に相対的に変位することが規制される。すなわちコネクタが端子金具を弾性変形させつつ変位することが回避されるから、端子金具の半田付け部分が、クラックが入る等の損傷を受けることが防止される。もって、コネクタと回路構成板との間の電気的な接続について、高い信頼性を得ることができる。
【0007】
<請求項2の発明>
カバーがケースに被着されると、カバーの裏面とコネクタの上面に設けられた凹凸部が互いに嵌合し、コネクタが相手コネクタとの嵌合方向に沿って変位することが規制される。
<請求項3の発明>
カバーが被着されることに伴い、カバーに設けられた挟持部がコネクタの両側面を挟持する。例えば相手コネクタを嵌合・離脱する場合のコネクタのこじりが生じ難く、端子金具が弾性変形することが避けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<実施形態>
以下、本発明の一実施形態を図1ないし図14によって説明する。
本実施形態の電気接続箱は、図1及び図2に示すように、回路構成板10と、この回路構成板10を収容すべくフレーム21と放熱板40とからなるケース20と、カバー50とから構成されており、さらにPCBコネクタ60とヒューズボックス80とが装着されるようになっている。なお、ヒューズボックス80には別の中継コネクタ90が嵌合される。
以下、各構成部材において、図2の左手前側を前方、右奥側を後方として説明する。
【0009】
回路構成板10は、図4に示すように、プリント回路基板11(以下、回路基板11という)と、回路基板11の裏面側に配されるバスバー基板15とから構成され、表面側にリレー等の電気部品12が実装されるようになっている。
回路基板11は、長方形における左前端側の角を落としたような外形形状に形成されており、その表裏両面には所定のパターンで導電路が形成されている。また、回路基板11の前部側には、PCBコネクタ60の雄端子62(図5参照)を挿入するためのスルーホール13が形成されている。
【0010】
バスバー基板15は、導電性に優れた金属板を打ち抜いて形成され、電力回路となる所定の導電路を形成しつつ回路基板11とほぼ整合した外形形状に形成され、その後縁から、複数本のバスバー16を並べて突設した形状である。これらのバスバー16のうち、正面から見た左端の1本を除いてほぼ左側の領域にわたって配されたバスバー16Aは、回路基板11の表面側において二度直角曲げされることで、先端が後方に向けて水平に突出しており、かつ、先端にヒューズ差し込み用のスリットが切られている。また、残りのバスバー16Bは、さらに二度直角曲げされることで、先端が前方に向けて水平に突出している。なお、バスバー基板15における回路基板11のスルーホール13の形成領域と対応する領域には、窓孔17(図5参照)が開口されている。
回路基板11とバスバー基板15とは、絶縁性を有する薄い粘着シート(図示せず)を介して一体的に貼り付けられている。
【0011】
PCBコネクタ60は、図5にも示すように、横長で前面に開口した合成樹脂製のハウジング61を備え、このハウジング61には、L形に曲げ形成された雄端子62が、一端を開口内に突出させ、他端を奥壁63を貫通して下向きに突出させた姿勢で、二段に並んで装着されている。各雄端子62の下向きの突出端は、回路基板11に開口されたスルーホール13に上方から挿入され、裏面側においてスルーホール13に形成されたランド部と半田付けにより接続されるようになっている(半田付け部65)。また、PCBコネクタ60の下面には、その後縁側に左右一対の取付脚66が形成されている。この取付脚66は、回路構成板10の表面に当てられ、下面側から挿通孔14に通したタッピンねじ67がねじ込まれて固定されるようになっている。
【0012】
ケース20は全体としては、回路構成板10を収容するべく浅皿状に形成されており、周壁に相当するフレーム21の底面側に、放熱板40が嵌められて張られた構造である。
フレーム21は合成樹脂製であって、図6及び図8に示すように、上記した回路基板11並びにバスバー基板15を内側にほぼ緊密に嵌めることができる形状に形成されている。
フレーム21におけるほぼ4つの角の上面には、位置決めピン22が立てられている。上記した回路構成板10のバスバー基板15並びにバスバー16の対応した位置には、位置決めピン22が嵌まる位置決め孔18が開口されている。
【0013】
放熱板40は、電気部品12から発生する熱を放熱するためのものであって、熱伝導率の高いアルミニウム等の金属板により、図9に示すように、フレーム21の外形とほぼ同じ形状に形成されている。放熱板40の前部側には、PCBコネクタ60に装着された雄端子62のうち、回路基板11の下面側に突出した端部との干渉を避けるために、逃がし凹部41が形成されている。放熱板40の周縁部には、タッピンねじ42(図11)の挿通孔43が適宜間隔を開けて形成されており、放熱板40の周縁部がフレーム21の下面に嵌められ、タッピンねじ42をねじ込むことで固定されるようになっている。一方、放熱板40の上面には、回路構成板10のバスバー基板15が、絶縁性の接着剤44(図10参照)によって貼着されるようになっている。
なお、放熱板40の後縁からは、取付片45が斜め下方に逃げた姿勢で形成されている。
【0014】
さて、上記した回路構成板10に搭載されたPCBコネクタ60は、ケース20のフレーム21における前縁側、より詳細には図8に示すように、前縁の右端から、左側の角が落とされた部分に少し入った領域にわたって載置されて固定されるようになっている。そのため、図6及び図7に示すように、フレーム21の前縁における内面には、載置領域の左右両端に対応する位置に、一対の取付台24が形成されている。この取付台24の上面である取付面25は、同一高さに形成されている。
【0015】
各取付面25には、背の低い円柱状をなす嵌合突部26が形成されている。嵌合突部26の上面には、ねじ孔27(下孔)が下向きに形成されている。このねじ孔27には、図11に示すように、頭部30A付きのタッピンねじ30がねじ込み可能とされている。タッピンねじ30は、頭部30Aの下面が嵌合突部26の上面に当たるまでねじ込み可能であり、頭部30Aは、嵌合突部26よりも大きな径を有している。
【0016】
一方、PCBコネクタ60側では、図7に示すように、ハウジング61の左右の側面のほぼ中央高さ位置に、取付板70が張り出し形成されている。各取付板70には、上記の嵌合突部26に対して径方向に若干のクリアランスを持って嵌合可能な貫通孔71が形成されている。貫通孔71の下側の口縁にはガイド用に面取りが施されており、上記したタッピンねじ30の頭部30Aは、この貫通孔71の上側の口縁に係止可能となっている。
ここで特筆すべきは、取付板70の板厚sが、嵌合突部26の突出高さhよりも所定寸法小さく設定されている。言い換えると、貫通孔71が嵌合突部26に嵌合されて取付板70の下面が取付面25に当たった場合に、貫通孔71の上側の口縁と、嵌合突部26に最大にねじ込まれたタッピンねじ30の頭部30Aとの間に、上記寸法分のクリアランスが確保される設定となっている。
【0017】
また、PCBコネクタ60に対して相手側コネクタが嵌合・離脱された場合の保持力をより高めるための対策が、カバー50を利用して講じられている。
カバー50は合成樹脂製であって、図13,14にも示すように、概ねケース20の上面開口を覆うように装着可能であり、前端側には、PCBコネクタ60の後面側を覆う高位部51が形成されているとともに、後端側には、ヒューズボックス80の一部を嵌めて逃がす逃がし凹部52が形成されている。カバー50の左右の側面には撓み変形可能なロック片53が設けられている一方、フレーム21の左右の側壁には、ロック片53に係止して仮止めするロック突部32が設けられている。また、カバー50の後端側の両端部には、タッピンねじ(図示せず)の装着凹部54が設けられ、フレーム21の左右の側壁の上面に設けられたねじ孔33(下孔)にねじ込み可能とされている。
【0018】
ここで、カバー50の高位部51の裏面には、図3及び図14に示すように、前縁に沿った位置と、その奥側の位置とに、一対の突壁55が所定間隔を開けた平行姿勢でほぼ全幅にわたって形成されており、両突壁55の間に、所定深さの係止溝56が形成されている。奥側の突壁55は補強リブ57で補強されている。
これに対して、PCBコネクタ60の背面側には、図12及び図14に示すように、図示3枚の係止片73が形成されている。係止片73は、後方に突出したのち直角に立ち上がったL字形に形成されており、PCBコネクタ60の3つの部屋のそれぞれの背面側に位置するようにして、互いに間隔を開けて一列に並んで形成されている。そして、詳しくは後記するように、カバー50がケース20の上面に対して正規に被せられた場合に、係止片73の立ち上がり部73Aが、係止溝56内に差し込まれるようになっている。
また、上記した高位部51の前縁における左右両端部からは、図13に示すように、PCBコネクタ60におけるハウジング61の左右の側面を挟持可能な挟持部58が、前方に突出するようにして設けられている。
【0019】
ヒューズボックス80は合成樹脂製であって、図2に示すように、フレーム21の後面側を全長にわたって覆うような横長形状に形成され、長さ方向の両端部に、前面に開口したコネクタ部81が設けられているとともに、その間の正面から見た左側にヒューズ装着部82が、右側に端子収容部83がそれぞれ設けられている。
ヒューズ装着部82には、図14に示すように、ヒューズ84が装着される複数の装着孔82Aが後面側に開口して設けられ、各装着孔82Aでは、その下部側に、先端が後方を向いたバスバー16Aが圧入により装着されるとともに、上部側には、このバスバー16と対をなすタブ状の接続端子85が同じく圧入により装着され、タブ状の接続端子85の前端は、クランク状に曲げ形成されて前方に突出している。一方、コネクタ部81と端子収容部83とには、先端が前方を向いたバスバー16Bが収容されるようになっている。
【0020】
ヒューズボックス80におけるヒューズ装着部82と端子収容部83とにわたる領域の前面には、中継コネクタ90が結合可能とされており、ヒューズ装着部82及び端子収容部83から前面に突出した接続端子85、バスバー16Bの上辺が、中継コネクタ90における前面に開口した嵌合部91内に進入するようになっている。
【0021】
続いて、電気接続箱の製造工程の一例を説明する。金属板素材をプレス加工することによりバスバー基板15が形成され、このバスバー基板15の上面に、絶縁性の粘着シート(図示せず)を介して回路基板11が一体的に貼着されて回路構成板10が形成される。そのとき、バスバー基板15の後縁から突出したバスバー16が既述した形状に曲げ加工される。そののち電気部品12が、回路基板11並びにバスバー基板15の導電路に対してリフロー半田付けにより実装される。
【0022】
次に、図4に示すように、PCBコネクタ60が回路基板11の表面の前縁側に載置され、それとともに雄端子62の下向きの突出端が回路基板11の対応するスルーホール13に貫通される。続いて図5に示すように、回路基板11の表面に当てられた取付脚66がタッピンねじ67によって固定される。そののち、雄端子62は裏面側においてスルーホール13に形成されたランド部に対して、フロー半田により半田付けされて接続される(半田付け部65)。
【0023】
このように、PCBコネクタ60が搭載された回路構成板10が、図6に示すように、フレーム21に対して上方から組み付けられる。このとき、バスバー基板15並びにバスバー16に形成された位置決め孔18に対して、フレーム21の上面に突設された位置決めピン22が挿入されることで位置決めされる。また、図7及び図8に示すようにPCBコネクタ60の左右の取付板70に開口された貫通孔71に、フレーム21の取付面25に立てられた嵌合突部26が嵌合される。
【0024】
次に、放熱板40の上面の全面に絶縁性の接着剤44が塗布され、図9及び図10に示すように、放熱板40は、回路構成板10におけるバスバー基板15の下面並びにフレーム21の下面に対して密着して貼り付けられる。そののち、図11に示すように、放熱板40の周縁に開口された挿通孔43にタッピンねじ42を挿入して、フレーム21の下面に形成されたねじ孔34(下孔)にねじ込むことで固定される。これにより、回路構成板10がケース20に対して固定されたことになる。
【0025】
続いて、PCBコネクタ60がフレーム21に対して固定される。すなわち、図11の右側に示すように、PCBコネクタ60の取付板70の貫通孔71が嵌合された嵌合突部26のねじ孔27に対して、頭部30A付きのタッピンねじ30がねじ込まれる。タッピンねじ30は、同図の左側に示すように、頭部30Aの下面が嵌合突部26の上面に当たるまでねじ込まれ、タッピンねじ30の頭部30Aが、取付板70の貫通孔71における上側の口縁に係止して抜け止めされる。
【0026】
ここで例えば、PCBコネクタ60が回路構成板10から浮く方向に位置ずれしていると、取付板70を単に取付面25に対してねじ止めした場合には、雄端子62を弾性変形させつつ、取付脚66で受けられていないPCBコネクタ60の主に前端側が沈むように変位するおそれがある。
しかしながら本実施形態では、取付板70の板厚sが嵌合突部26の突出高さhよりも小さく設定されているから、仮にPCBコネクタ60が回路構成板10から浮く方向に位置ずれしていたとしても、図11に拡大して示すように、タッピンねじ30の頭部30Aと貫通孔71の口縁との間に未だクリアランスが残され、取付板70が無理に押さえ付けられることはない。すなわちPCBコネクタ60が雄端子62を弾性変形させつつ下方に変位するといったことが回避され、そのため、雄端子62が回路基板11のスルーホール13に対して半田付けされた部分65に残留応力が生じることが防止される。したがって半田付け部65が、クラックが入る等の損傷を受けることが防止される。
【0027】
PCBコネクタ60のねじ止めが完了したら、フレーム21内にゲル等のポッティング剤(図示せず)が投入され、回路基板11の表面がポッティング剤で被覆されることによって防水性が確保される。
その後、図13に示すように、カバー50が上方から被せられる。カバー50は、ロック片53を撓み変形させつつ押し込まれ、正規位置まで押し込まれると、ロック片53がフレーム21に設けられたロック突部32に弾性的に係止される。
【0028】
この間、図14に示すように、カバー50の高位部51の裏面に設けられた係止溝56内に、PCBコネクタ60の背面に設けられた係止片73の立ち上がり部73Aが進入し、すなわちPCBコネクタ60の前後方向の変位が規制される。それとともに図1に示すように、左右の挟持部58が、PCBコネクタ60の左右の側面を挟む。カバー50に対してロックが掛かったら、カバー50の後端側の左右両端部の装着凹部54に入れられたタッピンねじが、フレーム21の左右の側壁の上面に設けられたねじ孔33にねじ込まれて固定される。
【0029】
続いて、予め接続端子85が装着されたヒューズボックス80が、ケース20の後端縁に組み付けられる。
ヒューズボックス80の組み付けに伴い、ヒューズ装着部82では、図14に示すように、バスバー基板15に突設されたバスバー16Aが、対応する装着孔82Aにおける下部側に進入して装着される。また、端子収容部83やコネクタ部81では、先端が前方を向いたバスバー16Bが収容される。最後に、ヒューズボックス80の前面に中継コネクタ90が嵌合され、図1に示すように電気接続箱が完成される。
【0030】
この電気接続箱に対しては、ヒューズ装着部82の各装着孔82Aに後面からヒューズ84が装着される。また、PCBコネクタ60と中継コネクタ90に対しては、前面から相手側のコネクタ(図示せず)が嵌合される。そして、この電気接続箱は、PCBコネクタ60を下方に向けた縦向きの姿勢で、リレーボックスのケーシング内に収容され、その状態で放熱板40の取付片45を介してエンジンルームのフェンダー側の車両パネルに取り付けられて使用される。
【0031】
特に、PCBコネクタ60に対して相手コネクタが嵌合され、またメンテナンス等において離脱されると、PCBコネクタ60に対して前後方向に押されまたは引かれる力が作用する。ここでPCBコネクタ60は、両側面の取付板70がねじ止めされているとは言えども、上下方向に若干の変位可能となっているため、上部側が前後に揺れるように変位する可能性がある。しかしながら、PCBコネクタ60の背面に設けられた係止片73の立ち上がり部73Aが、フレーム21に固定されたカバー50の裏面の係止溝56に進入していることから、上記のようにPCBコネクタ60の上部側が前後に揺れるように変位することが規制される。すなわち、PCBコネクタ60が雄端子62を弾性変形させつつ前後に変位するといったことが回避される。
また、カバー50に設けられた挟持部58がPCBコネクタ60の両側面を挟持していることで、相手コネクタを嵌合・離脱する場合のこじりが生じ難く、雄端子62が変形することが避けられる。もって、同様に雄端子62の半田付け部65が、クラックが入る等の損傷を受けることが防止される。
【0032】
以上説明したように本実施形態によれば、カバー50の裏面に設けられた係止溝56内に、PCBコネクタ60の背面に設けられた係止片73の立ち上がり部73Aが嵌まることで、PCBコネクタ60の前後方向の移動が規制される。すなわち、PCBコネクタ60に対して相手コネクタが嵌合または離脱される際に、前後方向に押されまたは引かれる力が作用しても、PCBコネクタ60が前後に揺れるように変位することが規制される。そのため、雄端子62が変形することが回避され、もって雄端子62の半田付け部65が、クラックが入る等の損傷を受けることが防止される。その結果、PCBコネクタ60と回路構成板10との間の電気的な接続について、高い信頼性を得ることができる。
しかも、PCBコネクタ60の前後方向の移動規制は、カバー50を被着することに伴って自ずから行われるから、作業性に優れる。
【0033】
また、カバー50に設けられた挟持部58がPCBコネクタ60の両側面を挟持していることで、相手コネクタを嵌合・離脱する場合のこじりが生じ難く、同じく雄端子62が変形することが避けられる。これも、雄端子62の半田付け部65の損傷を防ぐことに実効がある。
【0034】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態とは逆に、カバー側に係止片を、PCBコネクタ側に係止溝を形成するようにしてもよい。
(2)規制手段となる凹凸部は、ピンとこれが嵌まる孔のようなものであってもよい。
(3)PCBコネクタの端子金具を回路構成板の導電路に接続する手段としては、リフロー半田による表面実装であってもよく、このようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。
(4)上記実施形態ではケースの底板が放熱板で形成されているが、ケースの底板が放熱板とは別に設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気接続箱の外観斜視図
【図2】分解斜視図
【図3】カバーの裏面から見た斜視図
【図4】PCBコネクタを回路構成板に搭載する前の状態の斜視図
【図5】PCBコネクタを回路構成板に搭載した状態の一部切欠側面図
【図6】回路構成板をフレームに嵌める動作を示す斜視図
【図7】同一部切欠正面図
【図8】回路構成板をフレーム内に嵌めた状態の平面図
【図9】フレームの下面に放熱板を装着する動作を示す斜視図
【図10】フレームの下面に放熱板が装着された状態の側断面図
【図11】PCBコネクタをフレームに固定する動作を示す一部切欠正面図
【図12】PCBコネクタをフレームに固定した状態の後面側から見た斜視図
【図13】カバーを被着する動作を示す斜視図
【図14】カバーを被着した状態の側断面図
【符号の説明】
【0036】
10…回路構成板
11…プリント回路基板
13…スルーホール
20…ケース
21…フレーム
40…放熱板
50…カバー
55…突壁
56…係止溝(凹凸部:規制手段)
58…挟持部
60…PCBコネクタ
61…ハウジング
62…雄端子(端子金具)
65…半田付け部
73…係止片
73A…立ち上がり部(凹凸部:規制手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路構成板にはコネクタがその嵌合面を前記回路構成板の板面に沿った方向に向けて搭載され、このコネクタに装着された端子金具が前記回路構成板の導電路に対して半田付けにより接続されており、前記回路構成板が一面に開口したケース内に収容されて前記コネクタが前記ケースの開口縁側から外部に臨んで配されるとともに、前記ケースの開口面にカバーが被着された電気接続箱であって、
前記カバーと前記コネクタとの間には、前記コネクタが相手コネクタとの嵌合方向に沿った方向へ変位することを規制する規制手段が設けられていることを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記カバーの裏面と前記コネクタの上面との間には、前記カバーの被着に伴って互いに嵌合する凹凸部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記カバーには、前記コネクタの両側面を挟持する挟持部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−50753(P2006−50753A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227146(P2004−227146)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】