説明

電気接触子およびそれを備える検査冶具

【課題】所定の接触圧で被接触物に接触させることが可能で、かつ、撓み量を所定量以上とすることが可能な電気接触子を提供すること。
【解決手段】導電性およびバネ性を有する薄板によって一体で形成される電気接触子2は、一端部を構成する第1接触部2cと、他端部を構成する第2接触部2dと、第1接触部2cと第2接触部2dとを繋ぐとともに電気接触子2の長手方向へ電気接触子2を変形させるための変形部2eとを備えている。変形部2eは、第1接触部2cに繋がる第1変形部2jと、第2接触部2dに繋がる第2変形部2kと、第1変形部2jと第2変形部2kとの間に配置される第3変形部2mとを備えている。第3変形部2mのバネ定数は、第1変形部2jのバネ定数および第2変形部2kのバネ定数よりも小さくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板や電子部品等の電気的特性を検査するための電気接触子およびこの電気接触子を備える検査冶具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、回路基板の配線パターンあるいはIC等の集積回路の短絡や断線等の異常を発見するための電気的検査には、検査対象物に接触する複数の電気接触子を備える検査冶具が使用されている。この種の検査冶具では、一般的に、線状に形成された接触ピンが電気接触子として使用されている。また、電気接触子として、板バネを用いた検査冶具も知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【0003】
特許文献1および2に記載の電気接触子は、2枚の板体と板体間を繋ぐ帯状物とから構成されている。この電気接触子では、一方の板体の端部が検査対象物に接触し、この一方の板体が検査対象物に接触すると、帯状物が弾性変形する。なお、特許文献1および2に記載の帯状物はたとえば、サインカーブ状に形成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−170360号公報
【特許文献2】特開2004−144663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検査対象物の電気的検査を行うための検査冶具では、電気接触子を所定の接触圧で検査対象物に接触させないと、検査対象物と検査装置の本体側とを適切に導通させることは困難である。また、電気接触子の撓み量が所定量以上でないと、複数の電気接触子のそれぞれを検査対象物に確実に接触させることは困難である。
【0006】
しかしながら、特許文献1および2に記載の電気接触子では、帯状物がたとえばサインカーブ状に形成されており、帯状物部分のバネ定数は比較的大きい。そのため、特許文献1および2に記載の電気接触子を所定の接触圧で検査対象物に接触させることは可能であるが、電気接触子の撓み量を所定量以上とすることは困難である。
【0007】
そこで、本発明の課題は、所定の接触圧で被接触物に接触させることが可能で、かつ、撓み量を所定量以上とすることが可能な電気接触子およびこの電気接触子を備える検査冶具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、導電性およびバネ性を有する薄板によって一体で形成される電気接触子において、一端部を構成するとともに所定の第1被接触物に接触する第1接触部と、他端部を構成するとともに所定の第2被接触物に接触する第2接触部と、第1接触部と第2接触部とを繋ぐとともに電気接触子の長手方向へ電気接触子を変形させるための変形部とを備え、変形部は、第1接触部に繋がる第1変形部と、第2接触部に繋がる第2変形部と、第1変形部と第2変形部との間に配置される第3変形部とを備え、第3変形部のバネ定数は、第1変形部のバネ定数および第2変形部のバネ定数よりも小さくなっていることを特徴とする。
【0009】
本発明の電気接触子では、第1接触部と第2接触部とを繋ぐ変形部が、第1変形部と、第2変形部と、第1変形部のバネ定数および第2変形部のバネ定数よりもバネ定数の小さな第3変形部とを備えている。そのため、第1接触部が第1被接触物に接触し、第2接触部が第2被接触物に接触すると、まず、比較的バネ定数の小さな第3変形部が主として変形し、その後、比較的バネ定数の大きな第1変形部および第2変形部が変形する。その結果、本発明では、バネ定数の小さな第3変形部の変形によって、電気接触子の撓み量を所定量以上とすることが可能になり、かつ、バネ定数の大きな第1変形部および第2変形部の変形によって、所定の接触圧で電気接触子を第1被接触物および第2被接触物に接触させることが可能になる。
【0010】
また、本発明の電気接触子では、比較的バネ定数が大きくて変形しにくい第1変形部が第1接触部に繋がり、同じく変形しにくい第2変形部が第2接触部に繋がっている。そのため、電気接触子の変形時に応力が集中しやすい第1接触部と第1変形部との境界部分および第2接触部と第2変形部との境界部分の機械強度を向上させることができる。その結果、本発明では、電気接触子の破壊を抑制することができる。
【0011】
本発明において、変形部は、略ジグザグ状に形成されるとともに、第1変形部および第2変形部は、長手方向に平行な第1平面に略平行な方向で変形する曲面状に形成され、第3変形部は、複数の平面部と、複数の平面部を繋ぐとともに第1変形部および第2変形部よりも大きな曲率でかつ第1平面に略平行な方向で変形する接続曲面部とを備えることが好ましい。このように構成すると、バネ定数が比較的大きな第1変形部および第2変形部とバネ定数の比較的小さな第3変形部とを備える変形部を容易に形成することが可能になる。
【0012】
本発明において、第3変形部は、長手方向に向かって平面部から突出する突起部を備えることが好ましい。このように構成すると、比較的バネ定数が小さくて変形しやすい第3変形部の過剰な変形を抑制することができ、第3変形部の破壊を抑制することができる。
【0013】
本発明において、突起部は、平面部の端部側であって、長手方向における複数の接続曲面部の間に形成されていることが好ましい。このように構成すると、第3変形部がジグザグ状に形成される場合であっても、電気接触子の変形時には、突起部を介して平面部の端部側同士を短絡させることが可能になる。したがって、第3変形部における電気抵抗値を低減することが可能になる。また、第3変形部のインダクタンスを低減することが可能になり、電気接触子の高周波特性を向上させることが可能になる。
【0014】
本発明において、第1平面に直交する方向での変形部の厚さは、変形部の幅よりも大きくなっていることが好ましい。このように構成すると、変形部でのバネ定数の設定が容易になる。
【0015】
本発明において、第3変形部の一端は第1変形部に繋がり、第3変形部の他端は第2変形部に繋がっていることが好ましい。このように構成すると、電気接触子の構成を簡素化することができる。
【0016】
本発明において、第1変形部のバネ定数と第2変形部のバネ定数とは略等しいことが好ましい。第1変形部のバネ定数と第2変形部のバネ定数とが相違する場合には、電気接触子の変形時にバネ定数の小さな方の変形量が大きくなるため、バネ定数の小さな第1変形部または第2変形部に破壊が発生しやすくなるが、このように構成すると、第1変形部および第2変形部を略均等に変形させることが可能になり、第1変形部および第2変形部の破壊を抑制することができる。
【0017】
本発明の電気接触子は、第2被接触物としての電極と、電気接触子が配置される配置孔が複数形成される配置部材とを備える検査冶具に用いることができる。この検査冶具では、電気接触子の撓み量を所定量以上とすることが可能になり、かつ、所定の接触圧で電気接触子を第1被接触物および第2被接触物に接触させることが可能になる。また、電気接触子の破壊を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の電気接触子および検査冶具では、所定の接触圧で電気接触子を被接触物に接触させることが可能になるとともに、電気接触子の撓み量を所定量以上とすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(検査冶具の構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる検査冶具1を示す正面図である。図2は、図1のE−E方向から検査冶具1を示す図である。図3は、図1に示す検査冶具1の内部構造を説明するための拡大断面図である。図4は、図3のF−F方向から電気接触子2および配置部材4を示す拡大図である。なお、図2では、一部の電気接触子2および配置孔4aにのみ符号を付している。
【0021】
本形態の検査治具1は、回路基板やIC等の検査対象物(図示省略)の電気的特性を検査して、検査対象物の短絡や断線等の異常を発見するための電気的検査に用いられる。特に、本形態の検査冶具1は、検査対象物に形成される検査用端子の配置ピッチが狭い検査対象物の検査に適している。
【0022】
この検査治具1は、図1〜図3に示すように、検査対象物の検査用端子に接触する先端部2aを有する複数の電気接触子2(以下、「接触子2」とする。)と、接触子2の後端部2bのそれぞれが接触する複数の電極3と、複数の接触子2がそれぞれ1枚ずつ配置される配置孔4aが複数形成された配置部材4と、電極3を保持する電極保持部材5と、検査冶具1が搭載される検査装置(図示省略)の本体部と検査治具1とを電気的に接続するための配線部6とを備えている。配線部6は、複数の導線7(図3参照)によって構成されている。
【0023】
接触子2は、導電性およびバネ性を有する薄板によって一体で形成されている。たとえば、接触子2は、ニッケル合金等の薄板で形成されている。この接触子2は、非常に薄くかつ非常に小さく形成されている。接触子2の詳細な構成については後述する。
【0024】
配置部材4は、絶縁性材料によってブロック状に形成されている。この配置部材4には、上述のように、複数の配置孔4aが形成されている。具体的には、配置部材4には、図1の上下方向に貫通する配置孔4aが複数形成されている。なお、図2では、便宜上、縦方向および横方向に所定ピッチで均等に配置孔4aが形成された配置部材4を図示しているが、実際には、検査対象物の検査用端子の配置に対応するように、複数の配置孔4aが配置部材4に形成されている。
【0025】
配置孔4aは、略丸孔状に形成されている。具体的には、配置孔4aは、端部(図3の下端部)に形成される小径孔4bと、小径孔4bより内径が大きい大径孔4cとから構成されている。小径部4bと大径孔4cとの境界部分には、段部4dが形成されている。
【0026】
電極保持部材5は、配置部材4と同様に、絶縁性材料によってブロック状に形成されている。この電極保持部材5は、ネジ等の固定手段によって配置部材4に固定されている。
【0027】
本形態では、配線部6を構成する複数の導線7のそれぞれの先端部分が電極3となっている。具体的には、図3に示すように、導線7の先端部分が電極保持部材5に接着固定されており、電極保持部材5に接着固定された部分が電極3となっている。電極3は、配置孔4aの径方向の中心位置と電極3の径方向の中心位置とが略一致するように、電極保持部材5に保持されている。電極3には、1枚の接触子2の後端部2bが接触している。
【0028】
導線7は、たとえば、銅線の回りに絶縁層となる絶縁被膜(図示省略)が形成されたエナメル線である。この導線7の先端(図3における電極3の下端面、すなわち、接触子2の後端部2bの接触面)には、所定のメッキ層が形成されている。
【0029】
(電気接触子の構成)
図5は、図3に示す接触子2の斜視図である。図6は、図3に示す接触子2の一部を拡大した拡大図であり、(A)は図3のG部の拡大図、(B)は図3のH部の拡大図、(C)は図3のJ部の拡大図である。なお、以下の説明では、図3の左右方向をX方向、上下方向をY方向、紙面垂直方向をZ方向とする。また、X方向とY方向とで形成される平面をXY平面、Z方向とX方向とで形成される平面をZX平面とする。
【0030】
接触子2は、図5等に示すように、先端部2aを含む第1接触部としての先端側接触部2cと、後端部2bを含む第2接触部としての後端側接触部2dと、接触子2の長手方向となるY方向へ接触子2を変形ささせるための変形部2eとを備えている。変形部2eは、先端側接触部2cと後端側接触部2dとを繋いでいる。また、先端側接触部2cは接触子2の一端部を構成し、後端側接触部2dは接触子2の他端部を構成している。なお、本形態では、検査対象物は、先端側接触部2cが接触する第1被接触物であり、電極3は、後端側接触部2dが接触する第2被接触物である。
【0031】
本形態では、Z方向が接触子2の厚さ方向となる。図4に示すように、接触子2の厚さは小径孔4bの径よりも小さくなっている。また、図5に示すように、接触子2の厚さは略均一となっている。なお、接触子2の長さはたとえば、2〜4mm程度となっている。
【0032】
先端側接触部2cは、先端部2aを含む幅狭部2fと、幅狭部2fよりもX方向の幅が広い幅広部2gとから構成されている。幅狭部2fの幅は、小径孔4bの径より小さくなっており、幅狭部2fが小径孔4bに挿入できるように設定されている。また、幅狭部2fの先端側部分の幅は、先端部2aに向かうにしたがって狭くなっている。幅広部2gの幅は、小径孔4bよりも大きくかつ大径孔4cの径よりも小さくなっており、幅広部2gが小径孔4bに挿入できずかつ大径孔4cに挿入できるように設定されている。
【0033】
図3に示すように、幅狭部2fは、小径孔4bの中に配置されている。また、幅狭部2fの長さ(Y方向の長さ)は、小径孔4bの長さよりも長くなっている。そのため、配置孔4a内に配置され、後端部2bが電極3に接触した状態の接触子2の先端側は、配置部材4の端面4eから突出している。すなわち、図3に示すように、幅狭部2fの先端側は、端面4eから突出している。たとえば、端面4eからの幅狭部2fの先端側の突出量は、100μmである。
【0034】
後端側接触部2dは、大径孔4cの中に配置されている。この後端側接触部2dの幅は、先端側接触部2cの幅広部2gの幅とほぼ等しくなっている。また、後端接触部2dの後端側部分の幅は、後端部2bに向かうにしたがって狭くなっている。
【0035】
変形部2eは、先端側接触部2cに繋がる第1変形部2jと、後端側接触部2dに繋がる第2変形部2kと、第1変形部2jと第2変形部2kとの間に配置される第3変形部2mとを備え、大径孔4cの中に配置されている。この変形部2eは全体として略ジグザグ状に形成されている。本形態では、第3変形部2mの一端が第1変形部2jに直接繋がり、第3変形部2mの他端が第2変形部2kに直接繋がっている。
【0036】
第1変形部2jは、略ジグザグ状に形成されている。具体的には、第1変形部2jは、XY平面に略平行な方向で変形する曲面状に形成されている。本形態では、図6(A)に示すように、第1変形部2jは、略半円筒状に形成された複数の部分曲面部2n同士を繋いだ曲面状に形成されている。部分曲面部2nの幅H1は、略均一になっている。なお、第1変形部2jは、略正弦波の曲面状に形成されても良い。
【0037】
図6(C)に示すように、第1変形部2jの、先端側接触部2cとの境界部2pの幅H4は、部分曲面部2nの幅H1よりも広くなっている。また、境界部2pの外側は、図6(C)に示すように、応力の集中を避けるため、曲面状に形成されている。なお、境界部2pは、X方向における先端側接触部2cの略中心位置で、部分曲面部2nと先端側接触部2cとを繋いでいる。
【0038】
第2変形部2kは、第1変形部2jと同様に形成されている。すなわち、第2変形部2kは、略ジグザグ状に形成されるとともに、XY平面に略平行な方向で変形する曲面状に形成されている。具体的には、第2変形部2kは、略半円筒状に形成された複数の部分曲面部2n同士を繋いだ曲面状に形成されている。また、第2変形部2kの、後端側接触部2dとの境界部2vは、境界部2pと同様に形成され、X方向における後端側接触部2dの略中心位置で、部分曲面2nと後端側接触部2dとを繋いでいる。
【0039】
第3変形部2mは、略ジグザグ状に形成されている。具体的には、図6(B)に示すように、第3変形部2mは、ZX平面に略平行な複数の平面部2qと、複数の平面部2qを繋ぐとともにXY平面に略平行な方向で変形する接続曲面部2rとを備えている。接続曲面部2rは、略半円筒状に形成されている。また、接続曲面部2rの曲率は、部分曲面部2nの曲率よりも大きくなっている。たとえば、接続曲面部2rの曲率は、部分曲面部2nの曲率の約3倍程度となっている。
【0040】
平面部2qの幅H2および接続曲面部2rの幅H3(図6(B)参照)は、略均一になっている。本形態では、幅H2、H3は、部分曲面部2nの幅H1と略等しくなっている。また、X方向における接続曲面部2rの外周間距離D1(図6(B)参照)は、部分曲面部2nの外径(すなわち、X方向における部分曲面部2nの外周間距離D2)と略等しくなっている。たとえば、外周間距離D1は100μm程度となっている。
【0041】
また、第3変形部2mは、平面部2qからY方向に向かって突出する突起部2sを備えている。この突起部2sは、Z方向から見た形状が矩形状になるように形成されるとともに、平面部2qのX方向端部(すなわち、接続曲面部2rとの境界部)に形成されている。具体的には、図6(B)に示すように、突起部2sは、Y方向における複数の接続曲面部2rの間に形成されている。すなわち、突起部2sは、平面部2qの、接続曲面部2rとの境界部において接続曲面部2rの外周側に形成され、接続曲面部2rとの境界部において接続曲面部2rの内周側には形成されていない。また、平面部2qのX方向端部に形成される突起部2sは、所定の隙間t1を介してY方向で対向している。この隙間t1はたとえば4μmであり、幅H1〜H3の約半分程度となっている。
【0042】
図5に示すように、本形態では、変形部2eの厚さは、部分曲面部2nの幅H1、平面部2qの幅H2および接続曲面部2rの幅H3よりも大きくなっている。すなわち、変形部2eの厚さは、境界部2p、2vを除く変形部2eの幅H1〜H3よりも大きくなっている。たとえば、変形部2eの厚さは50μm〜100μmであり、幅H1〜H3は5μm〜15μmである。本形態では、変形部2eの厚さは、幅H1〜H3の約6倍となっており、変形部2eのアスペクト比は高くなっている。
【0043】
上述のように、第3変形部2mは、複数の平面部2qと、部分曲面部2nよりも曲率の大きな複数の接続曲面部2rとによって形成されている。そのため、第3変形部2mのバネ定数は、第1変形部2jのバネ定数および第2変形部2kのバネ定数よりも小さくなっている。また、上述のように、第2変形部2kは、第1変形部2jと同様に形成されており、第1変形部2jのバネ定数と第2変形部2kのバネ定数とは略等しくなっている。
【0044】
本形態では、検査対象物の検査時に先端部2aが検査用端子に接触すると、主としてY方向へ接触子2が変形する(撓む)。具体的には、まず、対向する突起部2s同士が接触するまで第3変形部2mが主として変形する。このときには、接触子2の撓み量に対して接触子2のバネ圧は緩やかに上昇する。その後、第1変形部2jおよび第2変形部2kが変形する。このときには、接触子2の撓み量に対して接触子2のバネ圧は急激に上昇する。
【0045】
(電気接触子の製造方法)
図7は、図3に示す接触子2の製造工程の前半を説明するための斜視図である。図8は、図3に示す接触子2の製造工程の後半を説明するための斜視図である。
【0046】
以上のように構成された接触子2は、フォトリソグラフィー技術と金属メッキ技術とを組み合わせることにより製造される。具体的には、接触子2は、以下のように製造される。
【0047】
まず、図7(A)に示すように、基板11上に感光性高分子材料であるフォトレジスト12を形成(成膜)する。その後、図7(B)に示すように、接触子2の形状に対応する形状の孔13aが形成されたマスク13でフォトレジスト12の表面を覆い、マスク13の表面(図7の上面)から紫外線やX線を照射(露光)する。また、紫外線やX線を照射した後、所望のアルカリ溶液等に浸す(現像する)と、接触子2の形状に対応する孔がフォトレジスト12に形成(モールド形成)される。
【0048】
その後、電気メッキ加工を行って、図8(A)に示すように、フォトレジスト12に形成された孔の中に接触子2となる肉厚のメッキ体14を形成する。その後、図8(B)に示すように、フォトレジスト12を除去する。また、メッキ体14を基板11から剥離する。基板11からメッキ体14が剥離されると、接触子2が完成する。なお、本形態では、電気メッキ技術によりメッキ体14を形成しているが、無電解メッキ技術によりメッキ体14を形成しても良い。
【0049】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、先端側接触部2cと後端側接触部2dとを繋ぐ変形部2eが、第1変形部2jと、第2変形部2kと、第1変形部2jおよび第2変形部2kよりもバネ定数の小さな第3変形部2mとを備えている。そのため、上述のように、先端部2aが検査用端子に接触すると、まず、第3変形部2mが主として変形し、その後、第1変形部2jおよび第2変形部2kが変形する。したがって、本形態では、バネ定数の小さな第3変形部2mを変形させて、接触子2の撓み量を所定量以上とすることが可能になる。また、本形態では、バネ定数の大きな第1変形部2jおよび第2変形部2kの変形によって、所定の接触圧で接触子2を検査対象物に接触させることが可能になる。
【0050】
また、本形態では、比較的バネ定数が大きくて変形しにくい第1変形部2jが先端側接触部2cに繋がり、同じく変形しにくい第2変形部2kが後端側接触部2dに繋がっている。そのため、接触子2の変形時に応力が集中しやすい先端側接触部2cと第1変形部2jとの境界部2pおよび後端側接触部2dと第2変形部2kとの境界部2vの機械強度を向上させることができる。その結果、接触子2の破壊を抑制することができる。
【0051】
本形態では、変形部2eは、略ジグザグ状に形成されている。また、第1変形部2jおよび第2変形部2kは、XY平面に略平行な方向で変形する曲面状に形成され、第3変形部は、複数の平面部2qと、複数の平面部2qを繋ぐとともにXY平面に略平行な方向で変形する接続曲面部2rとから構成されている。そのため、バネ定数が比較的大きな第1変形部2j、第2変形部2kおよびバネ定数の比較的小さな第3変形部2mを備える変形部2eをフォトリソグラフィー技術と金属メッキ技術とを組み合わせることによって比較的容易に形成することができる。また、本形態では、変形部2eの厚さは、変形部2eの幅H1〜H3よりも大きくなっている。そのため、変形部2eでのバネ定数の設定が容易になる。
【0052】
本形態では、第3変形部2mは、平面部2qからY方向に向かって突出する突起部2sを備えている。そのため、比較的バネ定数が小さくて変形しやすい第3変形部2mの過剰な変形を抑制することができ、第3変形部2mの破壊を抑制することができる。
【0053】
特に本形態では、突起部2sは、平面部2qの端部側、かつ、Y方向における接続曲面部2rの間に形成されている。そのため、上述のように、接触子2が変形すると、対向する突起部2s同士が接触する。したがって、第3変形部2mがジグザグ状に形成される場合であっても、接触子2の変形時には、突起部2sを介して平面部2q同士を短絡させることができる。具体的には、平面部2qと接続曲面部2rとの境界部の外周側同士を短絡させることができる。その結果、検査対象物の検査時には、第3変形部2mの電気抵抗値を低減することができ、検査対象物の適切な検査が可能になる。
【0054】
また、接触子2が変形すると、対向する突起部2s同士が接触するため、第3変形部2mのインダクタンスを低減することができる。その結果、電気接触子2の高周波特性を向上させることができる。
【0055】
本形態では、第3変形部2mの一端が第1変形部2jに繋がり、他端が第2変形部2kに繋がっている。そのため、接触子2の構成を簡素化することができる。
【0056】
本形態では、第1変形部2jのバネ定数と第2変形部2kのバネ定数とが略等しくなっている。そのため、検査対象物の検査時における第1変形部2jの変形量と第2変形部2kの変形量とを略等しくすることが可能になり、第1変形部2jおよび第2変形部2kの破壊を抑制することができる。
【0057】
(他の実施の形態)
上述した形態では、第3変形部2mの一端が第1変形部2jに直接繋がっている。この他にもたとえば、第3変形部2mの一端と第1変形部2jとの間に、第3変形部2mのバネ定数および第1変形部2jのバネ定数と異なるバネ定数を有する第4変形部が配置されても良い。すなわち、第3変形部2mの一端が第4変形部の一端に繋がり、第4変形部の他端が第1変形部2jに繋がっても良い。この場合には、第4変形部のバネ定数は、第3変形部2mのバネ定数より小さくても良いし、第1変形部2jのバネ定数より大きくても良いが、接触子2の破壊を抑制するためには、第4変形部のバネ定数は、第3変形部2mのバネ定数よりも大きくかつ第1変形部2jのバネ定数より小さいことが好ましい。
【0058】
また、第3変形部2mの一端と第1変形部2jとの間に、第4変形部に加え、バネ定数の異なる1以上の部分変形部が配置されても良い。同様に、第3変形部2mの他端と第2変形部2kとの間に、第4変形部等のバネ定数の異なる1以上の部分変形部が配置されても良い。
【0059】
上述した形態では、第1変形部2jのバネ定数と第2変形部2kのバネ定数とが略等しくなっている。この他にもたとえば、第1変形部2jのバネ定数と第2変形部2kのバネ定数とが異なっていても良い。
【0060】
上述した形態では、第1変形部2jおよび第2変形部2kは、XY平面に略平行な方向で変形する曲面状に形成されている。この他にもたとえば、第1変形部2jおよび/または第2変形部2kは、第3変形部2mと同様に、複数の平面部と、複数の平面部を繋ぐとともにXY平面に略平行な方向で変形する接続曲面部とによって形成されても良い。
【0061】
上述した形態では、第3変形部2mの平面部2qは、ZX平面と略平行になっている。この他にもたとえば、平面部2qは、ZX平面に対して傾斜していても良い。また、第3変形部2mは、第1変形部2j、第2変形部2kと同様に、XY平面に略平行な方向で変形する曲面状に形成されても良い。
【0062】
上述した形態では、変形部2eの厚さは略均一になっており、第1変形部2jの厚さ、第2変形部2kの厚さおよび第3変形部2mの厚さは略等しくなっている。この他にもたとえば、第1変形部2jおよび第2変形部2kの厚さと、第3変形部2mの厚さとが異なっていても良い。また、上述した形態では、部分曲面部2nの幅H1、平面部2qの幅H2および接続曲面部2rの幅H3は、略均一になっている。この他にもたとえば、幅H2および幅H3と幅H1とが異なっていても良い。また、厚さや幅H1〜H3が異なることで、第3変形部2mのバネ定数が第1変形部2jおよび第2変形部2kのバネ定数よりも小さく設定されても良い。
【0063】
上述した形態では、変形部2eの厚さは、部分曲面部2nの幅H1、平面部2qの幅H3および接続曲面部2rの幅H4よりも大きくなっている。この他にもたとえば、変形部2eの厚さは、幅H1〜H3と同じであっても良いし、幅H1〜H3よりも小さくても良い。
【0064】
上述した形態では、突起部2sは、平面部2qのX方向端部に形成されているが、突起部2sは、X方向における平面部2qの中心部に形成されても良い。また、上述した形態では、導線7の先端部分が電極3となっており、この電極3が電極保持部材5に保持されているが、プリント基板上に電極3が形成されても良い。この場合には、電極3が形成されるプリント基板が配置部材4に固定される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる検査冶具を示す正面図である。
【図2】図1のE−E方向から検査冶具を示す図である。
【図3】図1に示す検査冶具の内部構造を説明するための拡大断面図である。
【図4】図3のF−F方向から電気接触子および配置部材を示す拡大図である。
【図5】図3に示す接触子の斜視図である。
【図6】図3に示す接触子の一部を拡大した拡大図であり、(A)は図3のG部の拡大図、(B)は図3のH部の拡大図、(C)は図3のJ部の拡大図である。
【図7】図3に示す接触子の製造工程の前半を説明するための斜視図である。
【図8】図3に示す接触子の製造工程の後半を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
1 検査冶具
2 接触子(電気接触子)
2c 先端側接触部(第1接触部)
2d 後端側接触部(第2接触部)
2e 変形部
2j 第1変形部
2k 第2変形部
2m 第3変形部
2q 平面部
2r 接続曲面部
2s 突起部
3 電極(第2被接触物)
4 配置部材
4a 配置孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性およびバネ性を有する薄板によって一体で形成される電気接触子において、
一端部を構成するとともに所定の第1被接触物に接触する第1接触部と、他端部を構成するとともに所定の第2被接触物に接触する第2接触部と、上記第1接触部と上記第2接触部とを繋ぐとともに上記電気接触子の長手方向へ上記電気接触子を変形させるための変形部とを備え、
上記変形部は、上記第1接触部に繋がる第1変形部と、上記第2接触部に繋がる第2変形部と、上記第1変形部と上記第2変形部との間に配置される第3変形部とを備え、
上記第3変形部のバネ定数は、上記第1変形部のバネ定数および上記第2変形部のバネ定数よりも小さくなっていることを特徴とする電気接触子。
【請求項2】
前記変形部は、略ジグザグ状に形成されるとともに、
前記第1変形部および前記第2変形部は、前記長手方向に平行な第1平面に略平行な方向で変形する曲面状に形成され、
前記第3変形部は、複数の平面部と、複数の上記平面部を繋ぐとともに前記第1変形部および前記第2変形部よりも大きな曲率でかつ上記第1平面に略平行な方向で変形する接続曲面部とを備えることを特徴とする請求項1記載の電気接触子。
【請求項3】
前記第3変形部は、前記長手方向に向かって前記平面部から突出する突起部を備えることを特徴とする請求項2記載の電気接触子。
【請求項4】
前記突起部は、前記平面部の端部側であって、前記長手方向における複数の前記接続曲面部の間に形成されていることを特徴とする請求項3記載の電気接触子。
【請求項5】
前記第1平面に直交する方向での前記変形部の厚さは、前記変形部の幅よりも大きくなっていることを特徴とする請求項2から4いずれかに記載の電気接触子。
【請求項6】
前記第3変形部の一端は前記第1変形部に繋がり、前記第3変形部の他端は前記第2変形部に繋がっていることを特徴とする請求項1から5いずれかに記載の電気接触子。
【請求項7】
前記第1変形部のバネ定数と前記第2変形部のバネ定数とは略等しいことを特徴とする請求項1から6いずれかに記載の電気接触子。
【請求項8】
請求項1から7いずれかに記載の電気接触子と、前記第2被接触物としての電極と、前記電気接触子が配置される配置孔が複数形成される配置部材とを備えることを特徴とする検査冶具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−128218(P2009−128218A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304311(P2007−304311)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(597121717)株式会社コーヨーテクノス (9)
【出願人】(502215007)東和電気株式会社 (1)
【出願人】(504417641)マイクロプレシジョン株式会社 (18)
【Fターム(参考)】