説明

電気機器の作動制御装置

【課題】瞬間温水交換器等の加熱機器の加熱作動を制御する送信器の電源を、無電源とすることで、コード類を不要となし、これにより、個室内にコードを張り巡らせることなく、簡単に設置することができ、しかも、該送信器を扉に取り付けることで、該扉の開閉動により加熱作動を開始させることができる加熱機器の作動制御装置を提供する。
【解決手段】瞬間温水交換器等の加熱機器が設置される個室の扉に、該加熱機器の作動スイッチをオン作動制御する発信器を配設し、該発信器は、自己発電可能な圧電発電装置を備え、該圧電発電装置で発電された電力により、加熱機器の作動スイッチをオン作動制御する信号を無線で送信する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、瞬間温水交換器を備えた人体の局部を洗浄する衛生洗浄装置や浴室に備えられた瞬間温水交換装置等の電気機器の作動を、該電気機器が備えられた室の扉の開閉作動により制御することで、最適温度までの加熱を確実に行うことができる電気機器の作動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、衛生洗浄装置における温水加熱方式には、特許文献1に示すように、ヒータで貯湯タンク内の湯を沸かす適量の温水使用を満足する貯湯式電気温水器を備えた衛生洗浄装置と、特許文献2に示すような使用の都度、瞬間温水交換器で加熱する衛生洗浄装置が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−184038号
【0004】
【特許文献2】特開2005−054456号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す貯湯式電気温水器を備えた衛生洗浄装置にあっては、常時適温に加熱保温していなければならないため、ランニングコストが掛かる、という問題を有しており、また、特許文献2に示す瞬間温水交換器で加熱する衛生洗浄装置にあっては、着座したときに加熱スイッチがオン作動させるものと、便座に近づいたことを検知して加熱スイッチをオン作動させるものが公知であるが、いずれも加熱時間が短いため、適温以下の温水が供給され易く不快であり、これを解決するためには、使用者が適温になるまで待機しなければならないため、使い勝手が非常に悪い、という問題を有していた。
【0006】
この発明は、かかる現状に鑑み創案されたものであって、その目的とするところは、瞬間温水交換器で加熱する機器の、加熱作動を制御する送信器の電源を、無電源とすることで、コード類を不要となし、これにより、室内にコードを張り巡らせることなく、簡単に設置することができ、しかも、該送信器を扉に取り付けることで、該扉の開閉動により加熱作動を開始させることができ、その結果、瞬間温水交換器を備えた機器の加熱時間を従来よりも数秒早めることができるので、適温までの加熱時間を十分確保することができる使い勝手に優れた瞬間温水交換器を備えた機器の作動制御装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、この発明に係る電気機器の作動制御装置は、請求項1に記載したように、個室の扉や該扉の開閉操作体に、個室内の電気機器の作動スイッチをオン作動制御する発信器を配設し、該発信器は、自己発電可能な圧電発電装置を備え、該圧電発電装置で発電された電力により、前記電気機器の作動スイッチをオン作動制御する信号を無線で送信することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電気機器の作動制御装置を技術的前提とし、前記圧電発電装置を、少なくとも一の板状に形成された圧電セラミックス体と、バネ材で形成された基部材と、該基部材の端部に固定された鋼球支持弾性体と、この鋼球支持弾性体の両端部にそれぞれ固定されて上記圧電セラミックス体を殴打して該圧電セラミックス体に衝撃を与える鋼球と、で構成し、上記扉を開作動により上記圧電発電装置の鋼球の一方を殴打して振動させ、他方の鋼球がその共振作用によって往復振動を連続して発電を繰り返すように構成したことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電気機器の作動制御装置を技術的前提とし、前記鋼球支持弾性体は、基部材から同じ長さを有して同基部材に固定されていると共に、該基部材の両端部に固定される鋼球も、ほぼ同じ形状・重量で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明にあっては、電気機器で加熱する機器の、加熱作動を制御する送信器の電源を、無電源とすることができ、その結果、コード類が不要となるので、室内にコードを張り巡らせることなく、簡単に設置することができ、しかも、該送信器を扉や該扉の開閉操作体に取り付けることで、該扉や該扉の開閉操作体の開作動により加熱作動を即時に開始させることができ、その結果、瞬間温水交換器等の電気機器を備えた機器の加熱時間を従来よりも数秒早めることができるので、適温までの加熱時間を十分確保することができ、使い勝手を向上させることができる。
【0011】
請求項2及び請求項3に記載の発明にあっては、簡単でかつ安価な機構により鋼球の打撃力を、簡単かつ小型の圧電発電装置で連続的に繰り返して得ることができるので、従来の圧電発電装置の数十倍という発電力が得られ、請求項1に記載の加熱機器の作動制御装置における発信電力として十分な発電力が得られる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面に示す発明の実施例に基づき、この発明を詳細に説明する。
【0013】
この発明の実施例は、この発明を、人体の局部を洗浄する衛生洗浄装置Wが設置されたトイレの扉8を開閉する開閉ノブ8Aに送信器(後記する送信部70と同じ。)を取り付けた例を示している。勿論、この発明にあってはこの例に限定されるものではなく、瞬間温水交換器を備えたシャワーが配設されてなる浴室等、扉を有する個室に取り付けられた各種加熱機器にも適用することができる。
【0014】
即ち、この実施例に係る衛生洗浄装置Wは、図1に示すように、洗浄のパターンを選択するコントローラ1、本体部4、便座部5および蓋部6で構成されている。尚、タンク3は、水道配管に接続されており、便器1内に洗浄水を供給する。
【0015】
本体部4には、便座部5および蓋部6が開閉自在に取り付けられる。さらに、本体部4には、ノズル部7を含む洗浄水供給機構が設けられるとともに、受信器80(図4参照)を備えた制御部が内蔵されている。本体部4の制御部は、無線を介して送信器(送信部70)と通信可能に接続されており、送信器(送信部70)より送信される信号に基いて、公知の構成からなる瞬間温水交換器(図示せず)や洗浄水供給機構を制御すると共に、便座部5に内蔵されたヒータ(図示せず)及び本体部4に設けられた脱臭装置(図示せず)や温風供給装置(図示せず)、照明の点灯等の制御も行う。
【0016】
このように構成されてなる衛生洗浄装置Wの瞬間温水交換器等の作動をオン作動させる送信器(送信部70)は、この実施例では図2に示す圧電発電装置30に組み込まれて構成されている。
【0017】
圧電発電装置30は、相対向する一対のフレーム31,31と、該各フレーム31に固定され、圧電セラミックス体10の固有振動が他の構造体に伝達しにくい柔状態で該圧電セラミックス体10をクッション材12を介して保持する板バネ(図示せず)と、この板バネに固定された圧電セラミックス体10と、上記一対のフレーム31,31間に掛け渡されたバネ材で形成されてなる基部材40と、該基部材40の中央部で前後に延びるように固定された弾性支持体41,42と、この弾性支持体41,42の両端部にそれぞれ固定されてなる硬質の鋼球である鋼球43,44とで構成されており、この一方の鋼球43に、開閉ノブ8Aを開方向に回動させたときの力Fを付与することで、他方の鋼球44が共振作用によって上下振動を連続して繰り返し、上記圧電セラミックス体10を殴打して該圧電セラミックス体10に衝撃を与え発電させるように構成されている。
【0018】
尚、開閉ノブ8Aを開方向に回動させたときの力Fは、該開閉ノブ8Aの軸8Bのフレーム側に固定された主ギア8Cから、該主ギア8Cと噛合して回転する従動ギア8Dを経て、この従動ギア8Dの回転により正逆方向に回転する殴打体8Eへと伝達される。
【0019】
即ち、この実施例では、上記開閉ノブ8Aを把持して、扉8を開く方向に回転操作すると、図2に示すように、主ギア8Cが回転し、この主ギア8Cの回転に伴って従動ギア8Dが主ギア8Cの回転方向とは逆方向に回転するので、該従動ギア8Dの回転に伴って殴打体8Eが従動ギア8Dと同じ方向に回動して上記圧電発電装置30の一方の鋼球43,43,43を殴打するように構成されている。
【0020】
勿論、この発明にあっては、上記圧電発電装置30を必ずしも開閉ノブ8Aに一体的に取り付ける必要はなく、例えば、圧電発電装置30のハウジングにバネ付勢されたスイッチを出没自在に配設し、該圧電発電装置30をトイレの扉8の邪魔にならない位置に取り付け、該扉8が開いたときに、該スイッチがバネ付勢力によって移動して上記鋼球43を殴打するように構成してもよく、この場合、上記スイッチの出没運動を回転運動に転換させることができる機構であれば、公知の各種機構を採用することもできる。
【0021】
ところで、この実施例では、棒状ステンレス等の金属体で形成されてなる上記弾性支持体41,42は、上記基部材40の接続点L0から同じ長さL1,L2を有して溶接固定されている。
【0022】
ここで、図2と図3に示す鋼球43,44を0.6gの鋼球で形成し、弾性支持体41,42をφ0.6のステンレス棒材(sus304−WPB)で形成し、かつ、L1,L2間長さを70mmとし、ステンレス材(sus301:t=0.4)で形成された基部材40のL0寸法を15mmに設定した場合、鋼球43,44の上下振幅ストロークは14〜15mmであった。この構成からなる圧電発電装置30による発電量を、公知の測定装置で電圧を測定した。その結果を、図4に示す。
【0023】
図4に示すデータからも明らかなように、上記一方の鋼球43に力Fを1度与えると、他方の鋼球44が振り子状に連続して振動を繰り返し、従来のような1回限りの殴打により得られる発電量の数十倍の発電が得られることが判る。即ち、この実施例では、L1=L2,43=44として、一方の固有振動数と他方の固有振動数とを同一に設定し、左右が共振するように構成されている。このように構成することで、一方の固有周波数(n・fo)を他方の固有周波数(fo)の整数倍にすることができ、その結果、一方の蓄積エネルギーを大きく(完成モーメントを大きく)することで、固有周波数は下がり、他方の鋼球44の振動継続時間を長くすることができる。
【0024】
また、この圧電発電装置30によれば、部品点数を大幅に削減することができ、コストダウンと共に、装置を非常に小さくすることができる。
【0025】
尚、上記実施例では、上記弾性支持体41,42と基部材40との連結を、溶接で行う場合を例にとり説明したが、この発明にあってはこれに限定されるものではなく、ねじ止めやかしめ止め、或は強力な接着剤を用い或はハンダ付け等の公知の手段で一体的に連結することもできる。
【0026】
ところで、上記圧電セラミックス体10は、この実施例では、同一材質、同一形状、同一厚さの2枚の板状の圧電セラミックス素子10a,10bを、各圧電セラミックス素子10a,10bの分極の極性を同一方向にし、かつ、該圧電セラミックス素子10a,10b間に、りん青銅や真鍮等の導電性金属で10μm〜50μmの厚さに形成された極薄の金属電極11を配置し、これら圧電セラミックス素子10a,10bと金属電極11を接合して構成されている。
【0027】
圧電セラミックス素子は、チタンジルコン酸亜鉛系の素材が用いられ、また、クッション材12としては、合成樹脂材、ゴム材或はこれらをスポンジ状に形成した軟質材料を用いることができ、具体的には発泡ポリエチレンが好適である。また、板バネは金属製に限らず、合成樹脂製の板材でも良く、さらに、この実施例では、鋼球43,44を、圧電セラミックス体10が破壊されていない程度に重量が重く発電効率が良好なタングステンや鉄などを用いることができ、また、圧電セラミックス体10の鋼球衝突面部をプロテクトするプロテクタは、加工性に優れたリン青銅やステンレス等の硬い金属或は合成樹脂などを用いることができる。
【0028】
そして、この実施例では上記金属電極11を上記極薄の厚さとすることで、該金属電極11による機械的な抵抗をごく僅かに抑えることができ、2つの圧電セラミックス素子10a,10bと金属電極11の接合面を中心(伸縮しない部位)にたわみ振動が発生したとしても、該たわみ振動の金属電極11による減衰を可及的に小さく抑えることができる。尚、この実施例の構成では、一方の側の圧電セラミックス素子10aが伸長すれば他方の側の圧電セラミックス素子10bは収縮し、かつ出力電圧の電極は逆方向となり、両圧電セラミックス素子10a,10bは並列に接続された発電構成となる。
【0029】
また、この実施例では、上記たわみ振動が行われると、一方の圧電セラミックス素子10a(又は10b)で伸長と伸縮との両方の作用が行われて、分極が打ち消されるということがなく効率的に発電が行われる。発電された電気エネルギーとしての電流は、両圧電セラミックス素子10a,10b及び金属電極11に導電接続されたリード線15を用いて取り出される。
【0030】
尚、本実施例では、2枚の圧電セラミックス素子10a,10bを、金属電極11を介装して積層した場合を例にとり説明したが、各圧電セラミックス素子10a(10b)自体を、それぞれ積層構造とすることができる。この積層構造では、複数枚の圧電セラミックス素子を接合(この場合は分極の極性も同一方向に)して、一方の圧電セラミックス素子10a(又は10b)を形成する。このように、圧電セラミックス素子10a(又は10b)自体を積層構造とし、これを例えば弾性特性を有する接着材により接合した場合には、この弾性効果により、材質的に強度に欠ける圧電セラミックス体10の曲がりが容易になって曲げ強度を維持することができる。尚、この発明において、圧電セラミックス体10の外形形状は特に限られるものではなく、円形、楕円形、三角形、四角形或いは多角形等、利用実施に対応させて適宜の形状のものを用いることができる。
【0031】
また、この実施例に用いられる板バネは、その中央部のみ或いは両端部を接着材で圧電セラミックス体10をクッション材12を介して固着することで、圧電セラミックス体10の振動を減衰させないように構成されている。圧電セラミックス体10が振動する場合、この圧電セラミックス体10を支持する部材は圧電セラミックス体10の振動を減衰させる要因になり、この減衰要因を取り除くために、クッション材12及び板バネを用いて極力圧電セラミックス体10を自由な状態におく。圧電セラミックス体10の歪みは、圧電セラミックス自体が持つ固有振動となって暫くの間、継続する。この固有振動を長く継続させるためには、この固有振動を圧電セラミックス体10以外の他の構成体に伝えないことが重要である。圧電セラミックス体10の固有振動は、電気エネルギーとして変換されるが、その他の構造体の振動は全て機械的な抵抗となって固有振動エネルギーを吸収してしまい、電気エネルギーとして取り出すことができない。このため、この実施例では、圧電セラミックス体10と他の構造体との間で上記固有振動が伝達しないような柔らかな接触を実現するための手段としてクッション材12及び板バネを用いることで、圧電セラミックス体10の固有振動を長く継続させることができ、発電効率が良くなる。勿論、このクッション材12及び板バネは圧電セラミックス体10に加えられる衝撃を緩和する作用をも有する。
【0032】
尚、本実施例では、上記圧電セラミックス体10を所謂並列構造とした場合を例にとり説明したが、この発明にあってはこれに限定されるものではなく、直列構造ものを用い、或いは、従来の公知構造からなる圧電セラミックス体を用いることができることは勿論であるが、最も発電効率が高いのは本実施例に係る圧電セラミックス体10の構造である。
【0033】
図5は、上記圧電発電装置30の発電部50で発電された電流を整流させる回路部30を示しており、該回路部60の充電部61には、整流手段62と充電手段63と判定手段64と放電スイッチ手段65とが備えられている。整流手段62は、発電部50で出力された交流電力を整流して脈流にする手段である。充電手段63は、整流手段62により得られた脈流を直流として充電する手段である。判定手段64は、充電手段63の充電量を圧電素子10の発電のタイミングに応じて間欠的に監視し判定する手段である。この手段では、充電量は監視の際にごく少量消費されるが、間欠的に監視しているので監視による電力の消費を抑え、充電量への影響を低減させている。放電スイッチ手段65は、判定手段64により充電手段63の充電量が発信可能なレベルに達したことが判定されたときに、充電手段63の放電を開始させ、後段の発信部70に電力を供給する手段である。
【0034】
発信部70には、通信制御手段71と信号スイッチ手段72と信号スイッチ手段73と放電停止手段74とが備えられている。通信制御手段71は、通信に必要な動作を行う手段であり、この手段は充電部61から電力が供給されることで開始される。この手段では、動作の開始により信号スイッチ手段72をONさせるように働くとともに、発信のためのデータを信号発生手段73に渡す。信号スイッチ手段72は、通信制御手段71によりONされて、信号スイッチ手段73に電力を供給する手段である。
【0035】
信号スイッチ手段73は、通信制御手段71より受け取った発信のためのデータを信号に変換して発信する。放電停止手段74は、充電部61からの電力の供給を停止させるように放電スイッチ手段65を動作させる手段である。この手段は、通信制御手段71が発信のために必要なデータを全て信号スイッチ手段73に渡し終わったら、通信制御手段71により動作させられる。
【0036】
図6は回路図であり、S点、+点、−点により接続される。整流手段62はダイオードD1〜D6により全波整流の回路が形成されており、発電部50から出力された交流電力をここで整流し脈流として後段に出力する。発電部50から取り出された4本のリード線のうち3本のリード線が結線され、3本のリード線が6個のダイオードD1〜D6に接続されている。
【0037】
充電手段63は、コンデンサC1を備えている。このコンデンサC1は、充電電池に代替してもよい。整流手段62で整流された脈流は、コンデンサC1に直流として逐次充電され、鋼球44が圧電セラミックス体10に衝突して発電を繰り返すたびにコンデンサC1の両端の電圧が高くなる。
【0038】
放電スイッチ手段65には、自己保持型電流スイッチが用いられている。本実施例では、相補トランジスタを用いており、PNPトランジスタTr1とNPNトランジスタTr2とを組み合わせている。この放電スイッチ手段65では、b点に、c点の電圧より約0.6V(Tr1により決まる値)低い電圧が印加されると、Tr1がONとなり、ほぼ同時にTr2がONとなる。このように放電スイッチ手段65がON状態となると、c点とd点の間はきわめて低いインピーダンスとなる。そして、充電手段63のコンデンサC1に貯めた電力を放電し、きわめて少ないロスで通信制御手段71に供給する。そして、このON状態は、自己保持状態となり放電停止するまで継続する。
【0039】
判定手段64は、コンデンサC2,C3と抵抗R1,R2を備えている。C3は誤動作防止用に設けたものである。コンデンサC2と抵抗R1は、圧電素子10からの出力である図5中に示すa点と放電スイッチ手段65の図5中に示すb点との間に設けられている。そして、この時定数で充電量の判定の際にb点に電圧を印加する時間を決めている。a点には鋼球44が圧電素子10に衝突する度に交流電力が発生するが、この電圧は、コンデンサC1の両端の電圧にダイオードD6の上棟方向の電圧を加えた値である。そして、コンデンサC1が充電により電圧上昇するとともにa点の交流電圧も上昇する。つまり、a点ではコンデンサC1両端の直流電圧にほぼ比例した交流電圧が、鋼球44が衝突するたびに、すなわち間欠的に得られる。そしてこのa点での交流電圧は、抵抗R1とコンデンサC2の時定数で決めたごく短時間で印加される。b点の電圧は抵抗R1,R2の分配比により決められ、上述したようにb点の電圧がc点の電圧よりも約0.6V(Tr1により決まる値)低い電圧の値を超えると放電スイッチ手段65がONとなる。
【0040】
ここでは、b点の電圧は、
c点の電圧×(1−R2/(R1+R2))
で示されるため、このb点の電圧がc点の電圧よりも約0.6V低い電圧「c点の電圧−約0.6V」と等しくなったときが判定の閾値となり、これをもって充電量のレベルを判定する。
【0041】
このため、R1とR2を調整することで放電を開始させる充電量を発信可能なレベルに調整することができる。このレベルは発信する信号に応じて任意に設定される。
【0042】
通信制御手段71は、通信制御回路75とコンデンサC7と抵抗R8とFET1を備えている。コンデンサC7は動作安定用に設けたものである。抵抗R8とFET1は通信制御回路75と信号スイッチ手段72を低消費電力でインターフェースするためのレベル変換に設けたものである。充電部61からの放電により通信制御回路75に電力が供給されると、通信制御回路75の内部で発信に必要な手順が実行される。なお、通信制御回路75は消費電力の小さいものである。
【0043】
信号スイッチ手段72は、PNPトランジスタTr4と抵抗R6,R7とコンデンサC6を備えている。信号発生手段73を構成する信号発生回路76が比較的大電力を必要とするために、この信号スイッチ手段72では大電力用トランジスタスイッチTr4を使って、信号発生回路76に電力を供給するよう構成している。信号スイッチ手段72では、通信制御回路75からの発信開始の指令がFET1と抵抗R7を通ってトランジスタTr4をONさせると、信号スイッチ手段73で発信を開始させるよう動作する。
【0044】
信号発生手段73は、上記信号発生回路76とアンテナ77を備えており、信号スイッチ手段72から電力が供給されると、通信制御回路72から受け取った発信のためのデータを無線信号に変換してアンテナ77から発信する。
【0045】
放電停止手段74は、PNPトランジスタTr3と抵抗R4,R5とコンデンサC4,C5とを備えている。コンデンサC4,C5は、誤動作防止用に設けている。この手段では、通信制御回路75が発信のために必要なデータを信号発生回路76に送出し終えたら、通信制御回路75から抵抗R4を通してトランジスタTr3をONさせる信号を出力する。トランジスタTr3がONとなると放電スイッチ手段65の自己保持は解除となり、コンデンサC5に貯まっていた電力の放電は停止して、発信動作は終了する。
【0046】
図5のブロック図に示すように、発電部50の出力が回路部60に取り出される。回路部60には、発電部50で発生した交流電力を整流して充電する充電部61と発信部70とが備えられている。そして、発信部70から発信された信号は、受信器80の受信部81に受信され、衛生洗浄装置Wの瞬間温水交換器等の加熱作動がオン作動する
【0047】
このように、本実施例では、回路部60で、圧電セラミックス体10が発電するたびにその出力から交流電圧を取り出し、これを判定手段64に用いて充電量を判定している。このような充電量の間欠的な判定は、充電量が増加するタイミングで効率よく判定される。その上、判定のために無駄な電力を消費することが大幅に抑制されるので、発信に必要な電力を素早く充電して発信部70に供給できる。
【0048】
発信部70から発信された信号が受信器80の受信部81に受信されると、上記瞬間温水交換器の他、洗浄水供給機構や、便座部5に内蔵されたヒータ(図示せず)及び本体部4に設けられた脱臭装置(図示せず)や温風供給装置(図示せず)、照明の点灯等の制御も行なわれるように構成することもできる。
【0049】
以上説明したように、この実施例に係る瞬間温水交換器で加熱する衛生洗浄装置Wにあっては、上記瞬間温水交換器の加熱作動や、洗浄水供給機構、便座部5に内蔵されたヒータ(図示せず)及び本体部4に設けられた脱臭装置、温風供給装置、照明の点灯等の制御する圧電発電装置30の電源を、無電源とすることができ、その結果、コード類が不要となるので、室内にコードを張り巡らせることなく、簡単に扉8に設置することができ、しかも、送信部70を備えた圧電発電装置30を扉8の開閉ノブ8Aに取り付けることで、該ノブ8Aの開作動により上記加熱作動を即時に開始させることができ、その結果、瞬間温水交換器を備えた衛生洗浄装置Wの加熱時間を従来よりも数秒早めることができるので、適温までの加熱時間を十分確保することができ、適温まで待機する必要が無くなるので、使い勝手を向上させることができる。
【0050】
また、この衛生洗浄装置Wにあっては、簡単でかつ安価な機構により鋼球44の打撃力を、簡単かつ小型の圧電発電装置30で連続的に繰り返して得ることができるので、従来の圧電発電装置の数十倍という発電力が得られ、瞬間温水交換器を備えた衛生洗浄装置Wの作動制御装置における発信電力として十分な発電力が得られると共に、ランニングコストを無くすることができる、という効果が得られる。
【0051】
尚、上記実施例では、開閉ノブ8Aで扉8を開けたときの制御について説明したが、開閉ノブ8Aは、図示しないバネ付勢力で、衛生洗浄装置Wを使用するときに自動的に水平状態に戻るため、このときの戻り回転による発電は、専ら充電用として用い、衛生洗浄装置Wを使用した後に、再び開閉ノブ8Aを扉開方向に回動してトイレから出るときに、再び送信作動を行い、一定時間経過後に自動的に脱臭装置や温風供給装置の作動を停止させ、或は、便座部5の加熱を停止させ、さらには、照明を自動的に消灯させるように構成してもよい。
【0052】
また、上記実施例では、本発明をトイレに適用した場合を例にとり説明したが、瞬間温水交換器を備えたシャワールーム等の浴室等の個室の戸や扉にも適用することができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明の実施例に係る衛生洗浄装置と扉に取り付けられた送信器(圧電発電装置)の関連を示す説明図である。
【図2】同圧電発電装置の構成を示す平面断面図である。
【図3】同圧電発電装置の構成を示す側面断面図である。
【図4】測定装置により測定された本圧電発電装置の発電量を示すグラフである。
【図5】同圧電発電装置の回路構成を示すブロック図である。
【図6】本実施例に用いられる受信器の構成例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0054】
W 衛生洗浄装置
2 便器
4 本体部
8 扉
8A 開閉ノブ
8B 軸
8C 主ギア
8D 従動ギア
8E 殴打体
10 圧電セラミックス体
12 クッション材
30 圧電発電装置
40 基部材
41,42 鋼球支持弾性体
43,44 鋼球
50 発電部
60 回路部
61 充電部
62 整流手段
63 充電手段
64 判定手段
65 放電スイッチ手段
70 発信部(送信器)
80 受信器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個室の扉や該扉の開閉操作体に、個室内の電気機器の作動スイッチをオン作動制御する発信器を配設し、該発信器は、自己発電可能な圧電発電装置を備え、該圧電発電装置で発電された電力により、前記電気機器の作動スイッチをオン作動制御する信号を無線で送信することを特徴とする電気機器の作動制御装置。
【請求項2】
前記圧電発電装置は、少なくとも一の板状に形成された圧電セラミックス体と、バネ材で形成された基部材と、該基部材の端部に固定された鋼球支持弾性体と、この鋼球支持弾性体の両端部にそれぞれ固定されて上記圧電セラミックス体を殴打して該圧電セラミックス体に衝撃を与える鋼球と、で構成し、上記扉を開作動により上記圧電発電装置の鋼球の一方を殴打して振動させ、他方の鋼球がその共振作用によって往復振動を連続して発電を繰り返すように構成したことを特徴とする請求項1に記載の電気機器の作動制御装置。
【請求項3】
前記鋼球支持弾性体は、基部材から同じ長さを有して同基部材に固定されていると共に、該基部材の両端部に固定される鋼球も、ほぼ同じ形状・重量で形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電気機器の作動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−319807(P2006−319807A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141871(P2005−141871)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(393012725)株式会社ユーエスシー (17)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】