電気機器のDINレール取付構造
【課題】固定爪部の応力割れを防止するとともに、取付強度を向上するようにした電気機器のDINレール取付構造を提供する。
【解決手段】電気機器に予め設けられた合成樹脂製の装着部2は、DINレール3と嵌合する嵌合溝4と、嵌合溝4の一方の側面部5Aに形成された固定爪部6a,6bと、他方の側面部5Bに形成された可動爪部10とを備える。さらに、DINレール3の縁部下面に弾発的に当接して縁部を装着部2側に押圧する弾性手段としての樹脂バネ部8が、装着部2に一体的に形成されている。
【解決手段】電気機器に予め設けられた合成樹脂製の装着部2は、DINレール3と嵌合する嵌合溝4と、嵌合溝4の一方の側面部5Aに形成された固定爪部6a,6bと、他方の側面部5Bに形成された可動爪部10とを備える。さらに、DINレール3の縁部下面に弾発的に当接して縁部を装着部2側に押圧する弾性手段としての樹脂バネ部8が、装着部2に一体的に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御盤に配備されたDIN(ドイツ工業規格)レールを用いて、電源機器や制御機器等の電気機器を制御盤に取付けるための取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電源機器や制御機器等の電気機器を制御盤に取付ける際には、電気機器に予めDINレール装着のための装着部を設けておき、この装着部を制御盤に配備されたDINレールに装着することが一般的である。
そして、このような装着部の従来例としては、図13に示すように、DINレール50と嵌合する嵌合溝51と、嵌合溝51の一方の側面部に形成された固定爪部52と、他方の側面部に形成された可動爪部53とを備えるとともに、嵌合溝51の底面部54に突起55を形成し、この突起55によりDINレール50の縁部を押圧することにより、DINレール50に対して、装着部の横滑り(電気機器の横滑りに相当)を防止する構成のものが知られている(特開平9−311710号公報参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−311710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の構造では、突起55により常に固定爪部52に負荷が作用する状態になっているため、固定爪部52の応力割れの原因となっている。
また、突起55により固定爪部52に負荷が作用していることから、固定爪部52の実質的な強度は、固定爪部52本来の強度に突起55による力を減じたものとなり、取付限界強度を落とす原因となっている。
【0005】
本発明は、上記の実情を鑑みて考え出されたものであり、その目的は、固定爪部の応力割れを防止するとともに、取付強度を向上するようにした電気機器のDINレール取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、DINレールと嵌合する嵌合溝と、嵌合溝の両側面部のうちの一方の側面部に形成された固定爪部と、他方の側面部に形成された可動爪部とを備えた装着部を、予め電気機器に設けておき、固定爪部と可動爪部の両者でDINレールの両側に突き出た縁部をそれぞれ押圧挟持してDINレール上に電気機器を保持する電気機器のDINレール取付構造であって、前記DINレールの縁部下面に弾発的に当接して前記縁部を装着部側に押圧する弾性手段が、前記一方の側面部に設けられていることを特徴とする。
【0007】
上記の如く、弾性手段がDINレールの縁部下面に弾発的に当接して縁部を装着部側に押圧することにより、装着部をDINレールに装着した状態では、固定爪部はDINレールの縁部と接触しておらず、固定爪部に負荷が作用していない。従って、従来例のように常に負荷が作用することによる応力割れの発生が防止できる。
また、弾性手段による押圧力が予めDINレールの縁部に作用しているため、固定爪部の実質的な強度は、固定爪部本来の強度に弾性手段の付勢力を加えたものとなる。一方、従来例では、固定爪部の実質的な強度は、固定爪部本来の強度に突起による力を減じたものとなる。従って、固定爪部の実質的な強度が従来例に比べて格段に向上することになり、このことは取付強度の向上をもたらすことになる。
さらに、DINレールの縁部の厚みにバラツキがあっても、弾性手段による押圧力がDINレールの縁部に常に作用しているため、装着部の横滑り(電気機器の横滑りに相当)を防止できる。
【0008】
本発明における弾性手段は、DINレールの縁部下面に対して垂直方向に押圧してもよく、斜め方向に押圧するようにしてもよい。特に、斜め方向に押圧する場合は、弾性手段の押圧力の水平方向の分力によって、DINレールの幅方向のガタツキを防止できる。
【0009】
本発明における弾性手段は装着部に一体的に形成された構成であってもよく、装着部とは別個の部品を用いてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
(1)弾性手段がDINレールの縁部下面に弾発的に当接して縁部を装着部側に押圧することにより、装着部をDINレールに装着した初期状態では、固定爪部はDINレールの縁部と接触しておらず、固定爪部に負荷が作用していない。従って、従来例のように常に負荷が作用することによる応力割れの発生が防止できる。
【0011】
(2)弾性手段による押圧力が予め縁部に作用しているため、固定爪部の実質的な強度は、固定爪部本来の強度に弾性手段の付勢力を加えたものとなる。一方、従来例では、固定爪部の実質的な強度は、固定爪部本来の強度に突起による力を減じたものとなる。従って、固定爪部の実質的な強度が従来例に比べて格段に向上することになり、このことは取付強度の向上をもたらすことになる。
【0012】
(3)弾性手段による押圧力がDINレールの縁部に常に作用しているため、装着部の横滑り(電気機器の横滑りに相当)を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る電気機器のDINレール取付構造を実施の形態に基づいて詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0014】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1に係るDINレール取付構造の平面図である。電気機器1の底部には合成樹脂製の装着部2が取付けられており、この装着部2をDINレール3に装着することにより、電気機器1が取付けられる。
【0015】
図2は装着部2の正面図であり、図3は装着部2の分解斜視図であり、図4は装着部2の平面図であり、図5は図4の矢視A−A断面図であり、図6は図4の矢視B−B断面図である。装着部2には、DINレール3と嵌合する嵌合溝4が形成されている。この嵌合溝4の一方の側面部5Aには、嵌合溝4の奥行き方向(図4の上下方向)に間隔をあけて一対の固定爪部6a,6bが形成されている。そして、この固定爪部6aと固定爪部6bとの間には、側面部5Aに形成された直線状の2本の切欠き7a,7bによって板バネ状に構成された樹脂バネ部8が側面部5Aに一体的に形成されている。なお、この樹脂バネ部8は別部品で構成するようにしてもよい。
【0016】
樹脂バネ部8の先端は、DINレール3の縁部3aの下面3a1に弾発的に当接し、縁部3aの下面3a1に対して垂直方向X(図6参照)に押圧している。なお、装着部2がDINレール3に装着された初期状態では、固定爪部6a,6bと縁部3aの下面3a1との間には間隙が形成されている(図5参照)。即ち、装着部2がDINレール3に装着された初期状態では、DINレール3の縁部3aは、樹脂バネ部8によってのみ挟持されており、固定爪部6a,6bによる挟持はなされていない。勿論、電気機器1に振動等が作用し、樹脂バネ部8の付勢力よりも大きい負荷が樹脂バネ部8に作用した場合は、樹脂バネ部8に加えて固定爪部6a,6bによっても挟持されることになる。
【0017】
一方、嵌合溝4の他方の側面部5Bには、合成樹脂製の可動爪部10が配置されている。この可動爪部10は、可動体11の先端(図4の右端)に一体的に形成されている。この可動体11は、一方の側面部5Aに向けて前・後進可能に装着部2に装着されている。また、可動体11には係止片12a,12bが一体的に形成されており、この係止片12a,12bは装着部2の底面に形成されている係止溝13a,13bに嵌り込むようになっている。なお、係止溝13a,13bは、断面が山状の境界部14a,14bによって溝部S1,S2に2分割されている。そして、DINレール3が装着されていない状態では、係止片12a,12bが係止溝13a,13bの溝部S1に嵌り込んでおり、DINレール3装着時には、可動体11を前進させると、係止片12a,12bが係止溝13a,13bの溝部S2に嵌りこみ、可動体11がロックされるようになっている。また、DINレール3取り外し時には、可動体11を後退させると、係止片12a,12bが係止溝13a,13bの溝部S2から外れて溝部S1に嵌りこみ、可動体11のロック状態が解除されるようになっている。
【0018】
次いで、DINレール3に装着部2を装着する動作について説明する。先ず、DINレール3を装着部2の嵌合溝4に沿わせ、縁部3aを樹脂バネ部8に挟み込み、この状態で可動体11を前進させて可動爪部10でDINレール3の縁部3bを挟み込む。なお、可動体11は前進位置でロック状態となる。これにより、DINレール3に装着部2が装着される。この装着された初期状態では、樹脂バネ部8の先端が縁部3aの下面3a1を押圧しているが、固定爪部6a,6bは縁部3aの下面3a1とは接触していない。装着部2をDINレール3から取り外すときは、可動体11を後退させて可動体11のロック状態を解除すればよい。
【0019】
このような構成により、固定爪部6a,6bの応力割れを防止できるとともに、取付強度が向上し、さらに装着部2の横滑り(電気機器1の横滑りに相当)を防止することができる。
【0020】
以下に、その理由を詳述する。従来例では、図13に示すように、突起55によって固定爪部52には常に矢印N方向に負荷が作用していた。これに対して、本実施の形態では、DINレール3に装着された初期状態では、固定爪部6a,6bが縁部3aの下面3a1と接触していないので、固定爪部6a,6bに負荷が作用しない。従って、常に負荷が作用することに起因した応力割れを防止できる。
【0021】
また、従来例では、固定爪部52には矢印N1方向に力が作用しているのに対して、本実施の形態では、樹脂バネ部8により縁部3aに対して矢印N1方向とは反対方向N2(図6参照、衝撃を緩和する方向に相当)に力が作用している。これによって、従来例では、固定爪部の実質的な強度は、固定爪部本来の強度に突起による力を減じたものであるのに対して、本実施の形態では、固定爪部の実質的な強度は、固定爪部本来の強度に樹脂バネ部8の付勢力を加えたものとなる。その結果、固定爪部の実質的な強度が、従来例に比べて格段向上したことになる。
【0022】
(実施の形態2)
図7は実施の形態2の断面図である。本実施の形態2は、樹脂バネ部8の押圧方向が斜め方向Dであることを特徴とするものである。このような構成により、樹脂バネ部8の押圧力の垂直方向の分力がDINレール3の縁部3aを押圧する機能を果たし、樹脂バネ部8の押圧力の水平方向の分力がDINレールの幅方向のガタツキを防止する機能を果たす。
【0023】
(実施の形態3)
図8は実施の形態3の断面図である。本実施の形態3では、樹脂バネ部8に代えて、樹脂板バネ20(又は線バネ)を準備し、この板バネ20を、嵌合溝4の一方の側面部5Aに配設したことを特徴とするものである。このような構成によってもまた、実施の形態1と同様の作用・効果を奏する。
【0024】
(実施の形態4)
図9は実施の形態4の断面図である。本実施の形態4では、樹脂バネ部8に代えて、軸25の回りに回動可能な可動板26を一方の側面部5Aに設けるとともに、可動板26の他端部26Aをコイルバネ27によって矢印方向Kに付勢して、可動板26の一端部26BがDINレール3の縁部3aの下面3a1を押圧するように構成したことを特徴とするものである。このような構成によってもまた、実施の形態1と同様の作用・効果を奏する。
【0025】
(実施の形態5)
図10は実施の形態5の断面図である。本実施の形態5では、樹脂バネ部8に代えて、上下方向に移動可能な可動体30を一方の側面部5Aに設けるとともに、可動体30の他端部30Aをコイルバネ27によって上方に付勢して、可動体30の一端部30BがDINレール3の縁部3aの下面3a1を押圧するように構成したことを特徴とするものである。このような構成によってもまた、実施の形態1と同様の作用・効果を奏する。
【0026】
(実施の形態6)
図11は実施の形態6の断面図である。本実施の形態6は、上記実施の形態4におけるコイルバネ27に代えて、トーションバネ35を用いたものである。このような構成によってもまた、実施の形態1と同様の作用・効果を奏する。
【0027】
(実施の形態7)
図12は実施の形態7の断面図である。本実施の形態7は、上記実施の形態5におけるコイルバネ27に代えて、トーションバネ35を用いたものである。このような構成によってもまた、実施の形態1と同様の作用・効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、電源機器や制御機器等の電気機器を、制御盤に配備されたDINレールを用いて取付けるための取付構造に好適に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態1に係るDINレール取付構造の平面図である。
【図2】装着部2の正面図である。
【図3】装着部2の分解斜視図である。
【図4】装着部2の平面図である。
【図5】図4の矢視A−A断面図である。
【図6】図4の矢視B−B断面図である。
【図7】実施の形態2の断面図である。
【図8】実施の形態3の断面図である。
【図9】実施の形態4の断面図である。
【図10】実施の形態5の断面図である。
【図11】実施の形態6の断面図である。
【図12】実施の形態7の断面図である。
【図13】従来例の正面図である。
【符号の説明】
【0030】
1:電気機器 2:装着部
3:DINレール 3a,3b:縁部
3a1:縁部3aの下面 4:嵌合溝
5A:一方の側面部 5B:他方の側面部
6a,6b:固定爪部 7a,7b:切欠き
8:樹脂バネ部 10:可動爪部
20:板バネ 26:可動板
27:コイルバネ 30:可動体
35:トーションバネ
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御盤に配備されたDIN(ドイツ工業規格)レールを用いて、電源機器や制御機器等の電気機器を制御盤に取付けるための取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電源機器や制御機器等の電気機器を制御盤に取付ける際には、電気機器に予めDINレール装着のための装着部を設けておき、この装着部を制御盤に配備されたDINレールに装着することが一般的である。
そして、このような装着部の従来例としては、図13に示すように、DINレール50と嵌合する嵌合溝51と、嵌合溝51の一方の側面部に形成された固定爪部52と、他方の側面部に形成された可動爪部53とを備えるとともに、嵌合溝51の底面部54に突起55を形成し、この突起55によりDINレール50の縁部を押圧することにより、DINレール50に対して、装着部の横滑り(電気機器の横滑りに相当)を防止する構成のものが知られている(特開平9−311710号公報参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−311710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の構造では、突起55により常に固定爪部52に負荷が作用する状態になっているため、固定爪部52の応力割れの原因となっている。
また、突起55により固定爪部52に負荷が作用していることから、固定爪部52の実質的な強度は、固定爪部52本来の強度に突起55による力を減じたものとなり、取付限界強度を落とす原因となっている。
【0005】
本発明は、上記の実情を鑑みて考え出されたものであり、その目的は、固定爪部の応力割れを防止するとともに、取付強度を向上するようにした電気機器のDINレール取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、DINレールと嵌合する嵌合溝と、嵌合溝の両側面部のうちの一方の側面部に形成された固定爪部と、他方の側面部に形成された可動爪部とを備えた装着部を、予め電気機器に設けておき、固定爪部と可動爪部の両者でDINレールの両側に突き出た縁部をそれぞれ押圧挟持してDINレール上に電気機器を保持する電気機器のDINレール取付構造であって、前記DINレールの縁部下面に弾発的に当接して前記縁部を装着部側に押圧する弾性手段が、前記一方の側面部に設けられていることを特徴とする。
【0007】
上記の如く、弾性手段がDINレールの縁部下面に弾発的に当接して縁部を装着部側に押圧することにより、装着部をDINレールに装着した状態では、固定爪部はDINレールの縁部と接触しておらず、固定爪部に負荷が作用していない。従って、従来例のように常に負荷が作用することによる応力割れの発生が防止できる。
また、弾性手段による押圧力が予めDINレールの縁部に作用しているため、固定爪部の実質的な強度は、固定爪部本来の強度に弾性手段の付勢力を加えたものとなる。一方、従来例では、固定爪部の実質的な強度は、固定爪部本来の強度に突起による力を減じたものとなる。従って、固定爪部の実質的な強度が従来例に比べて格段に向上することになり、このことは取付強度の向上をもたらすことになる。
さらに、DINレールの縁部の厚みにバラツキがあっても、弾性手段による押圧力がDINレールの縁部に常に作用しているため、装着部の横滑り(電気機器の横滑りに相当)を防止できる。
【0008】
本発明における弾性手段は、DINレールの縁部下面に対して垂直方向に押圧してもよく、斜め方向に押圧するようにしてもよい。特に、斜め方向に押圧する場合は、弾性手段の押圧力の水平方向の分力によって、DINレールの幅方向のガタツキを防止できる。
【0009】
本発明における弾性手段は装着部に一体的に形成された構成であってもよく、装着部とは別個の部品を用いてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
(1)弾性手段がDINレールの縁部下面に弾発的に当接して縁部を装着部側に押圧することにより、装着部をDINレールに装着した初期状態では、固定爪部はDINレールの縁部と接触しておらず、固定爪部に負荷が作用していない。従って、従来例のように常に負荷が作用することによる応力割れの発生が防止できる。
【0011】
(2)弾性手段による押圧力が予め縁部に作用しているため、固定爪部の実質的な強度は、固定爪部本来の強度に弾性手段の付勢力を加えたものとなる。一方、従来例では、固定爪部の実質的な強度は、固定爪部本来の強度に突起による力を減じたものとなる。従って、固定爪部の実質的な強度が従来例に比べて格段に向上することになり、このことは取付強度の向上をもたらすことになる。
【0012】
(3)弾性手段による押圧力がDINレールの縁部に常に作用しているため、装着部の横滑り(電気機器の横滑りに相当)を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る電気機器のDINレール取付構造を実施の形態に基づいて詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0014】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1に係るDINレール取付構造の平面図である。電気機器1の底部には合成樹脂製の装着部2が取付けられており、この装着部2をDINレール3に装着することにより、電気機器1が取付けられる。
【0015】
図2は装着部2の正面図であり、図3は装着部2の分解斜視図であり、図4は装着部2の平面図であり、図5は図4の矢視A−A断面図であり、図6は図4の矢視B−B断面図である。装着部2には、DINレール3と嵌合する嵌合溝4が形成されている。この嵌合溝4の一方の側面部5Aには、嵌合溝4の奥行き方向(図4の上下方向)に間隔をあけて一対の固定爪部6a,6bが形成されている。そして、この固定爪部6aと固定爪部6bとの間には、側面部5Aに形成された直線状の2本の切欠き7a,7bによって板バネ状に構成された樹脂バネ部8が側面部5Aに一体的に形成されている。なお、この樹脂バネ部8は別部品で構成するようにしてもよい。
【0016】
樹脂バネ部8の先端は、DINレール3の縁部3aの下面3a1に弾発的に当接し、縁部3aの下面3a1に対して垂直方向X(図6参照)に押圧している。なお、装着部2がDINレール3に装着された初期状態では、固定爪部6a,6bと縁部3aの下面3a1との間には間隙が形成されている(図5参照)。即ち、装着部2がDINレール3に装着された初期状態では、DINレール3の縁部3aは、樹脂バネ部8によってのみ挟持されており、固定爪部6a,6bによる挟持はなされていない。勿論、電気機器1に振動等が作用し、樹脂バネ部8の付勢力よりも大きい負荷が樹脂バネ部8に作用した場合は、樹脂バネ部8に加えて固定爪部6a,6bによっても挟持されることになる。
【0017】
一方、嵌合溝4の他方の側面部5Bには、合成樹脂製の可動爪部10が配置されている。この可動爪部10は、可動体11の先端(図4の右端)に一体的に形成されている。この可動体11は、一方の側面部5Aに向けて前・後進可能に装着部2に装着されている。また、可動体11には係止片12a,12bが一体的に形成されており、この係止片12a,12bは装着部2の底面に形成されている係止溝13a,13bに嵌り込むようになっている。なお、係止溝13a,13bは、断面が山状の境界部14a,14bによって溝部S1,S2に2分割されている。そして、DINレール3が装着されていない状態では、係止片12a,12bが係止溝13a,13bの溝部S1に嵌り込んでおり、DINレール3装着時には、可動体11を前進させると、係止片12a,12bが係止溝13a,13bの溝部S2に嵌りこみ、可動体11がロックされるようになっている。また、DINレール3取り外し時には、可動体11を後退させると、係止片12a,12bが係止溝13a,13bの溝部S2から外れて溝部S1に嵌りこみ、可動体11のロック状態が解除されるようになっている。
【0018】
次いで、DINレール3に装着部2を装着する動作について説明する。先ず、DINレール3を装着部2の嵌合溝4に沿わせ、縁部3aを樹脂バネ部8に挟み込み、この状態で可動体11を前進させて可動爪部10でDINレール3の縁部3bを挟み込む。なお、可動体11は前進位置でロック状態となる。これにより、DINレール3に装着部2が装着される。この装着された初期状態では、樹脂バネ部8の先端が縁部3aの下面3a1を押圧しているが、固定爪部6a,6bは縁部3aの下面3a1とは接触していない。装着部2をDINレール3から取り外すときは、可動体11を後退させて可動体11のロック状態を解除すればよい。
【0019】
このような構成により、固定爪部6a,6bの応力割れを防止できるとともに、取付強度が向上し、さらに装着部2の横滑り(電気機器1の横滑りに相当)を防止することができる。
【0020】
以下に、その理由を詳述する。従来例では、図13に示すように、突起55によって固定爪部52には常に矢印N方向に負荷が作用していた。これに対して、本実施の形態では、DINレール3に装着された初期状態では、固定爪部6a,6bが縁部3aの下面3a1と接触していないので、固定爪部6a,6bに負荷が作用しない。従って、常に負荷が作用することに起因した応力割れを防止できる。
【0021】
また、従来例では、固定爪部52には矢印N1方向に力が作用しているのに対して、本実施の形態では、樹脂バネ部8により縁部3aに対して矢印N1方向とは反対方向N2(図6参照、衝撃を緩和する方向に相当)に力が作用している。これによって、従来例では、固定爪部の実質的な強度は、固定爪部本来の強度に突起による力を減じたものであるのに対して、本実施の形態では、固定爪部の実質的な強度は、固定爪部本来の強度に樹脂バネ部8の付勢力を加えたものとなる。その結果、固定爪部の実質的な強度が、従来例に比べて格段向上したことになる。
【0022】
(実施の形態2)
図7は実施の形態2の断面図である。本実施の形態2は、樹脂バネ部8の押圧方向が斜め方向Dであることを特徴とするものである。このような構成により、樹脂バネ部8の押圧力の垂直方向の分力がDINレール3の縁部3aを押圧する機能を果たし、樹脂バネ部8の押圧力の水平方向の分力がDINレールの幅方向のガタツキを防止する機能を果たす。
【0023】
(実施の形態3)
図8は実施の形態3の断面図である。本実施の形態3では、樹脂バネ部8に代えて、樹脂板バネ20(又は線バネ)を準備し、この板バネ20を、嵌合溝4の一方の側面部5Aに配設したことを特徴とするものである。このような構成によってもまた、実施の形態1と同様の作用・効果を奏する。
【0024】
(実施の形態4)
図9は実施の形態4の断面図である。本実施の形態4では、樹脂バネ部8に代えて、軸25の回りに回動可能な可動板26を一方の側面部5Aに設けるとともに、可動板26の他端部26Aをコイルバネ27によって矢印方向Kに付勢して、可動板26の一端部26BがDINレール3の縁部3aの下面3a1を押圧するように構成したことを特徴とするものである。このような構成によってもまた、実施の形態1と同様の作用・効果を奏する。
【0025】
(実施の形態5)
図10は実施の形態5の断面図である。本実施の形態5では、樹脂バネ部8に代えて、上下方向に移動可能な可動体30を一方の側面部5Aに設けるとともに、可動体30の他端部30Aをコイルバネ27によって上方に付勢して、可動体30の一端部30BがDINレール3の縁部3aの下面3a1を押圧するように構成したことを特徴とするものである。このような構成によってもまた、実施の形態1と同様の作用・効果を奏する。
【0026】
(実施の形態6)
図11は実施の形態6の断面図である。本実施の形態6は、上記実施の形態4におけるコイルバネ27に代えて、トーションバネ35を用いたものである。このような構成によってもまた、実施の形態1と同様の作用・効果を奏する。
【0027】
(実施の形態7)
図12は実施の形態7の断面図である。本実施の形態7は、上記実施の形態5におけるコイルバネ27に代えて、トーションバネ35を用いたものである。このような構成によってもまた、実施の形態1と同様の作用・効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、電源機器や制御機器等の電気機器を、制御盤に配備されたDINレールを用いて取付けるための取付構造に好適に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態1に係るDINレール取付構造の平面図である。
【図2】装着部2の正面図である。
【図3】装着部2の分解斜視図である。
【図4】装着部2の平面図である。
【図5】図4の矢視A−A断面図である。
【図6】図4の矢視B−B断面図である。
【図7】実施の形態2の断面図である。
【図8】実施の形態3の断面図である。
【図9】実施の形態4の断面図である。
【図10】実施の形態5の断面図である。
【図11】実施の形態6の断面図である。
【図12】実施の形態7の断面図である。
【図13】従来例の正面図である。
【符号の説明】
【0030】
1:電気機器 2:装着部
3:DINレール 3a,3b:縁部
3a1:縁部3aの下面 4:嵌合溝
5A:一方の側面部 5B:他方の側面部
6a,6b:固定爪部 7a,7b:切欠き
8:樹脂バネ部 10:可動爪部
20:板バネ 26:可動板
27:コイルバネ 30:可動体
35:トーションバネ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DINレールと嵌合する嵌合溝と、嵌合溝の両側面部のうちの一方の側面部に形成された固定爪部と、他方の側面部に形成された可動爪部とを備えた装着部を、予め電気機器に設けておき、固定爪部と可動爪部の両者でDINレールの両側に突き出た縁部をそれぞれ押圧挟持してDINレール上に電気機器を保持する電気機器のDINレール取付構造であって、
前記DINレールの縁部下面に弾発的に当接して前記縁部を装着部側に押圧する弾性手段が、前記一方の側面部に設けられていることを特徴とする電気機器のDINレール取付構造。
【請求項2】
前記弾性手段の押圧方向は、前記DINレールの縁部下面に対して垂直方向若しくは斜め方向である、請求項1記載の電気機器のDINレール取付構造。
【請求項3】
前記弾性手段は装着部に一体的に形成されている、請求項2記載の電気機器のDINレール取付構造。
【請求項4】
前記弾性手段は装着部とは別個の部品である、請求項2記載の電気機器のDINレール取付構造。
【請求項1】
DINレールと嵌合する嵌合溝と、嵌合溝の両側面部のうちの一方の側面部に形成された固定爪部と、他方の側面部に形成された可動爪部とを備えた装着部を、予め電気機器に設けておき、固定爪部と可動爪部の両者でDINレールの両側に突き出た縁部をそれぞれ押圧挟持してDINレール上に電気機器を保持する電気機器のDINレール取付構造であって、
前記DINレールの縁部下面に弾発的に当接して前記縁部を装着部側に押圧する弾性手段が、前記一方の側面部に設けられていることを特徴とする電気機器のDINレール取付構造。
【請求項2】
前記弾性手段の押圧方向は、前記DINレールの縁部下面に対して垂直方向若しくは斜め方向である、請求項1記載の電気機器のDINレール取付構造。
【請求項3】
前記弾性手段は装着部に一体的に形成されている、請求項2記載の電気機器のDINレール取付構造。
【請求項4】
前記弾性手段は装着部とは別個の部品である、請求項2記載の電気機器のDINレール取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−68852(P2006−68852A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255074(P2004−255074)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】
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