説明

電気機器用コネクタ

【課題】用途や特性にあわせたフェライトコアの選択が可能な、電気機器用コネクタを提供する。
【解決手段】電気機器用コネクタは、コネクタ本体(11)と、ケーブルを挿通可能なフェライトコア(12)と、前記フェライトコアを格納し、前記コネクタ本体に着脱可能なフェライトコア固定部材(15)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EMI対策を施した電気機器用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信基地局は、PHS基地局に代表される低出力で小型の屋外設置タイプの基地局と、携帯電話基地局に代表される高出力で大型のキャビネット内に設置するタイプの基地局があった。しかし、大型であった携帯電話基地局も小型化の技術が進んできており、設置性の面からも屋外設置タイプが求められつつある。屋外設置タイプの基地局は密閉構造が求められるため、外部接続用コネクタも対応したものが求められる。
【0003】
また、基地局にはEMI(Electro Magnetic Interference)対策が求められるが、基地局の設置状態によっては、基地局単体で個別にEMI対策を実施する必要がある。例えば、EMI対策を施した外部ケーブルを用いる場合、設置条件によって外部ケーブルの長さを調整する必要があるため、外部ケーブルの張設作業が煩雑となる。したがって、フェライトコア等のEMI対策部材を基地局筐体内に設ける必要がある。
【0004】
図9は、従来の、基地局の筐体内でEMI対策を行う場合の電気機器用コネクタを示す図である。図9(a)は電気機器用コネクタの斜視図であり、図9(b)は電気機器用コネクタを筐体10のコネクタ取付け穴101に取付けた状態を示す図である。従来のEMI対策では、コネクタ本体11と電源コネクタ14との間のケーブル13に、EMI対策用のフェライトコア12を取付けていた。しかし、このままでは、振動によりフェライトコア12が筐体10内部の他のデバイスと接触するおそれや、フェライトコア12の重みによりケーブル破損や電源コネクタ14の接触不良が発生するおそれがあるため、固定具を別途用意する等して、フェライトコア12を筐体等に固定しなければならなかった。
【0005】
一方、EMI対策を施した電気機器用コネクタとして、コネクタ本体にフェライトコアを内蔵したものや、コネクタハウジング内におけるコネクタ要素とケーブル挿通部との間に磁性流体を注入したものが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−127533号公報
【特許文献2】特開2009−259560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の電気機器用コネクタでは、コネクタとフェライトコアとが完全な一体成型となっているため、後からフェライトコアを変更することはできず、用途や特性にあわせてフェライトコアを選択することができないという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上記問題を解決するため、用途や特性にあわせたフェライトコアの選択が可能な、電気機器用コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る電気機器用コネクタは、コネクタ本体と、ケーブルを挿通可能なフェライトコアと、前記フェライトコアを格納し、前記コネクタ本体に着脱可能なフェライトコア固定部材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る電気機器用コネクタにおいて、前記フェライトコア固定部材は、外周面上に、ターンさせるケーブルを保持する切り欠き部を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る電気機器用コネクタにおいて、前記フェライトコア固定部材は、観音開き又は分割可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コネクタとフェライトコアとを少ない占有体積で、確実に固定することができる。また、コネクタとフェライトコアとを完全な一体成型とはせず、着脱可能な構成にすることで、フェライトコアを用途や特性にあわせて自由に選択することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による第1の実施形態の電気機器用コネクタを示す図である。
【図2】本発明による第1の実施形態の電気機器用コネクタに用いるフェライトコア固定部材を示す図である。
【図3】本発明による第1の実施形態の電気機器用コネクタの取付けを示す図である。
【図4】本発明による第2の実施形態の電気機器用コネクタを示す図である。
【図5】本発明による第2の実施形態の電気機器用コネクタの取付けを示す図である
【図6】本発明による第3の実施形態の電気機器用コネクタを示す図である。
【図7】本発明による第4の実施形態の電気機器用コネクタを示す図である。
【図8】本発明による第4の実施形態の電気機器用コネクタに用いるフェライトコア固定部材を示す図である。
【図9】従来例の電気機器用コネクタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による電気機器用コネクタの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明による第1の実施形態の電気機器用コネクタ1を示す図である。第1の実施形態の電気機器用コネクタ1は、フランジタイプのコネクタ本体11(以下、単にコネクタ本体11とも称する)と、フェライトコア12(図1では不図示、図2で図示)と、フェライトコア固定部材15とを備える。コネクタ本体11は、ケーブル13を介して電源コネクタ14に接続される。
【0016】
コネクタ本体11は、ネジ穴111にネジを挿入して筐体10にネジ止めされる。電源コネクタ14は、筐体内部の電源回路(図示せず)に接続され、コネクタ本体11を介して筐体外部から供給される電源電圧を、該電源回路に供給する。
【0017】
フェライトコア12は、筒状に形成されており、中空部にケーブル13を挿通して配置され、ケーブル13から放射されるノイズを除去する。
【0018】
フェライトコア固定部材15は、例えば樹脂で成形されており、フェライトコア12を内部に格納する。図2は、フェライトコア固定部材15の外観図であり、図2(a)は正面図、図2(b)は断面図である。図2(a)に示すように、フェライトコア固定部材15は中空部151を有しており、図2(b)に示すように、中空部151にフェライトコア12を格納して保持する。
【0019】
図2(c)は、フェライトコア固定部材15を観音開きしたときの斜視図である。図2(c)に示すように、フェライトコア固定部材15は、開閉部分に固定用の爪部152とそれに対応する開口部153を有しており、観音開きをすることができるとともに、固定用の爪部152と開口部153とを掛止させることにより閉じて固定することができるように形成されている。なお、固定用の爪部152及び開口部153の形状は、図示した形状に限定されるものではなく、フェライトコア固定部材15を開閉できるように形成されたものであればよい。また、フェライトコア固定部材15は、2分割できるように形成してもよい。
【0020】
なお、観音開き又は分割ができないフェライトコア固定部材15を用いることも可能である。図2(d)は、観音開き又は分割ができないフェライトコア固定部材15の斜視図である。図2(d)に示すように、フェライトコア固定部材15は、中空部151がフェライトコア12と勘合するように形成される。
【0021】
また、フェライトコア固定部材15は、一方の端面に1つ以上の突起部154を有しており、コネクタ本体11のケーブル13接続側の端面は、突起部154に対応する固定部材取付け穴112を有している。突起部154を固定部材取付け穴112に挿着することにより、コネクタ本体11にフェライトコア固定部材15を着脱自在に取付けることができる。なお、突起部154の形状は、図示した形状に限定されるものではなく、コネクタ本体11と着脱できるように形成されたものであればよい。
【0022】
図3は、電気機器用コネクタ1を筐体10のコネクタ取付け穴101に取付けた状態を示す図である。図から明らかなように、フェライトコア固定部材15は、筐体10の外側から挿入されるため、筐体10のコネクタ取付け穴101の径に入る大きさにする必要がある。なお、金属や樹脂による構造では、取付け時に微小な隙間が生じるため(説明のため、図中ではコネクタ本体11と筐体10との間の隙間を拡大して示している)、Oリング16を設けて防水性を確保する。
【0023】
このように、実施例1の電気機器用コネクタ1によれば、フェライトコア12を格納したフェライトコア固定部材15をフェライトコア12に取付けることができるので、フェライトコア12を確実に固定し、かつコンパクトな構成にすることができる。また、フェライトコア固定部材15がコネクタ本体11と着脱可能であり、フェライトコア固定部材15をコネクタ本体11から取り外して格納されたフェライトコア12を交換することが可能となるので、使用用途や必要に応じて特性にあったフェライトコア12を自由に選択することができるようになる。
【0024】
次に、本発明による第2の実施形態の電気機器用コネクタについて、図面を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同じ構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0025】
(第2の実施形態)
図4は、本発明による第2の実施形態の電気機器用コネクタ2を示す図である。第2の実施形態の電気機器用コネクタ2は、直挿しタイプのコネクタ本体20と、フェライトコア12と、フェライトコア固定部材15とを備える。第2の実施形態の電気機器用コネクタ2は、第1の実施形態の電気機器用コネクタ1と比較して、コネクタ本体の形状のみが相違する。
【0026】
直挿しタイプのコネクタ本体20は、基部21と固定リング22とからなる。図5は、電気機器用コネクタ2を筐体10のコネクタ取付け穴101に取付けた状態を示す図である。筐体10のコネクタ取付け穴101に取付ける際には、基部21を筐体10の内側から挿入し、筐体10の外側から固定リング22を螺合する。直挿しタイプのコネクタ本体20を用いる場合には、フランジタイプのコネクタ本体11を用いる場合とは異なり、フェライトコア固定部材15は取付け時に筐体10のコネクタ取付け穴101を通らない。なお、金属や樹脂による構造では、取付け時に微小な隙間が生じるため(説明のため、図中では直挿しタイプのコネクタ本体20と筐体10との間の隙間を拡大して示している)、Oリング16を設けて防水性を確保する。
【0027】
このように、実施例2の電気機器用コネクタ2によれば、フェライトコア固定部材15が取付け時に筐体10のコネクタ取付け穴101を通らないため、フェライトコア固定部材15はコネクタ取付け穴101の大きさに対する制約を受けず、大きなフェライトコアを用いることも可能となる。
【0028】
次に、本発明による第3の実施形態の電気機器用コネクタについて、図面を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同じ構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0029】
(第3の実施形態)
図6は、本発明による第3の実施形態の電気機器用コネクタ3を示す図である。第3の実施形態の電気機器用コネクタ3は、コネクタ本体11と、分割型のフェライトコア12と、フェライトコア固定部材15とを備える。第3の実施形態の電気機器用コネクタ3は、第1の実施形態の電気機器用コネクタ1と比較して、フェライトコア12の形状のみが相違する。なお、図中ではフランジタイプのコネクタ本体11を示しているが、直挿しタイプのコネクタ本体20を用いてもよいのは勿論である。
【0030】
図6では説明のため、分割型のフェライトコア12及びフェライトコア固定部材15をコネクタ本体11に取付ける前の状態を示している。分割型のフェライトコア12、及び観音開き又は分割可能なフェライトコア固定部材15を使用することで、ケーブル13に電源コネクタ14を接続した後でも、フェライトコア12及びフェライトコア固定部材15をケーブル13に取付け、フェライトコア12を格納したフェライトコア固定部材15をコネクタ本体11に挿着することができる。
【0031】
このように、第3の実施形態の電気機器用コネクタ3によれば、ケーブル13に電源コネクタ14を接続した後でも、容易にフェライトコア12を取付けたり交換したりすることができる。よって、特に、試作品のEMI対策で電源コネクタ14接続後にフェライトコアの必要性や最適なフェライトコアの検証等をする際に、検証時間を短縮することができる。
【0032】
次に、本発明による第4の実施形態の電気機器用コネクタ4について、図面を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同じ構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0033】
(第4の実施形態)
一般に、フェライトコアのEMC(Electro Magnetic Compatibility)特性はインピーダンスで決まり、次式(1)で表される。式(1)によれば、フェライトコアにケーブルをターンさせることで、フェライトコアのインピーダンス特性を調整することができる。
【0034】
Z=z×形状ファクター×N2 (1)
ここで、Zはインピーダンス、zは材料特性、形状ファクターは断面積÷平均磁路長の値、Nはターン数を表す。
【0035】
そこで、第4の実施形態の電気機器用コネクタ4は、フェライトコア12にケーブル13をターンさせる場合を考慮したものである。図7は、本発明による第4の実施形態の電気機器用コネクタ4を示す図である。第4の実施形態の電気機器用コネクタ4は、コネクタ本体11と、フェライトコア12と、フェライトコア固定部材15とを備える。第4の実施形態の電気機器用コネクタ4は、第1の実施形態の電気機器用コネクタ1と比較して、フェライトコア固定部材15の形状のみが相違する。なお、図中ではフランジタイプのコネクタ本体11を示しているが、直挿しタイプのコネクタ本体20を用いてもよく、また、分割タイプのフェライトコア12を用いてもよいのは勿論である。
【0036】
図8は、第4の実施形態のフェライトコア固定部材15を示す図であり、図8(a)はフェライトコア固定部材15の正面図を示し、図8(b)はケーブル13をターンさせたときの側面図を示す。図8(a)に示すように、第4の実施形態のフェライトコア固定部材15は、外周面上に、中心軸と平行な方向に、ターンさせるケーブル13を保持する切り欠き部155を1つ以上有する。ケーブル13をターンさせる場合には、図8(b)に示すように、切り欠き部155に沿ってケーブル13をターンさせ、フェライトコア固定部材15の外側に位置するケーブルを切り欠き部155に保持する。
【0037】
このように、実施例4の電気機器用コネクタ4によれば、ケーブル13をターンさせる場合には、外側に位置するケーブルを切り欠き部に保持できるため、インピーダンス特性を安定化させ、フェライトコア固定部材15の外側に位置するケーブルのノイズの干渉を軽減させることができる。
【0038】
上述の各実施例は、代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができ、さらに各実施例を組み合わせて別の実施例を実現することができることは当業者に明らかである。従って、本発明は、上述の実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、フラットケーブルにフェライトコアを取付ける場合には薄型のフェライトコアを用い、フェライトコア固定部材の形状を筒状ではなく薄型のフェライトコアに合わせた形状とすることができる。
【符号の説明】
【0039】
1,2,3,4 電気機器用コネクタ
10 筐体
11 フランジタイプのコネクタ本体
30 直挿しタイプのコネクタ本体
12 フェライトコア
13 ケーブル
14 電源コネクタ
15 フェライトコア固定部材
16 Oリング
101 コネクタ取付け穴
31 基部
32 固定リング
111 ネジ穴
112 固定部材取付け穴
151 中空部
152 爪部
153 開口部
154 突起部
155 切り欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタ本体と、
ケーブルを挿通可能なフェライトコアと、
前記フェライトコアを格納し、前記コネクタ本体に着脱可能なフェライトコア固定部材と、
を備えることを特徴とする電気機器用コネクタ。
【請求項2】
前記フェライトコア固定部材は、外周面上に、ターンさせるケーブルを保持する切り欠き部を有することを特徴とする、請求項1に記載の電気機器用コネクタ。
【請求項3】
前記フェライトコア固定部材は、観音開き又は分割可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電気機器用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−48846(P2012−48846A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187310(P2010−187310)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】