説明

電気機械の多機能センサシステム

【課題】電気機械(12)の多機能センサシステム(10)を提供する。
【解決手段】システムは、圧電振動センサ(16)と、随意選択で圧電振動センサと一体式とすることが可能である抵抗温度および部分放電センサ(16)と、振動、抵抗温度、および部分放電センサを囲繞するパッケージング(18)とを含む。他の実施形態によれば、電気機械の多機能センサシステムは、2つの対向する表面を備える圧電基板、第1対向表面の上に重なる第1側面電極、および第2対向表面の上に重なる第2側面電極を備える一体式圧電振動、部分放電、および抵抗温度センサと、第1側面電極および第2側面電極に選択的に一体化されたケーブルと、センサを囲繞するパッケージングとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には状態評価に関し、より具体的には電気機械の状態評価に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの異なるタイプの電気機械が、絶縁される電気導体を使用する。たとえば、モータおよび発電機は、一般に、巻かれた回転子および固定子を含み、あるいは事前に形成された巻線またはコイルを含むことが可能である。導体は、通常、電流を伝達する、またはそのような電流の流れによって磁場を生成するように作用する。絶縁システムは、組み立てられたシステムにおいて導体と巻線を互いにおよび隣接するコンポーネントから分離する。そのような絶縁システムは、様々なワニス系、テープ、コーティング、およびスリーブを含むことが可能である。絶縁システムの完全性は、絶縁システムが装備される電気機器の信頼性および耐用年数にとって重要である。
【0003】
絶縁状態を評価するオフライン方法は、過剰電圧、高電位、または高電圧ランプ試験、絶縁抵抗試験または偏光指標試験、サージ試験、「タンデルタ」試験または電力因子試験としても知られる散逸因子試験、およびオフライン部分放電試験を含む。従来のオフラインの技法は浸襲性でコストがかかることがあるが、その理由は、必要な診断試験を実施するために、電気機械を停止し、運用からはずされなければならないからである。
【0004】
いくつかのオンライン測定技法も、巻線の絶縁状態を監視するために利用可能である。振動測定および温度測定などの技法は、欠陥が生じた後でのみ深刻な欠陥状態を検出し、その結果、事前の保全およびサービスは困難になる。部分放電分析技法は、絶縁低下の初期症状を検出するが、高価で特別な機器を必要とする。通常、オンライン測定技法は、異なる感知機器およびパッケージングが異なるパラメータを評価するために使用されるように組み合わされる。具体的には、抵抗温度センサが、通常、巻かれて次いで成形される絶縁ベースの周りに導体を備える。結果として得られるパッケージングはかさばり、他のセンサパッケージングと一体化するのは容易ではない。
【特許文献1】米国特許第4849668号公報
【特許文献2】米国特許第4949001号公報
【特許文献3】米国特許第5869189号公報
【特許文献4】米国特許第6048622号公報
【特許文献5】米国特許第6629341号公報
【特許文献6】米国特許第7030366号公報
【特許文献7】米国特許出願公開第20050218560号公報
【特許文献8】米国特許出願公開第20050218906号公報
【特許文献9】米国特許出願公開第20050218907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気機械の状態を評価する多機能センサシステムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
簡潔には、一実施形態によれば、電気機械の多機能センサシステムは、圧電振動センサと、抵抗温度および部分放電センサと、振動、抵抗温度、および部分放電センサを囲繞するパッケージングとを備える。
【0007】
他の実施形態によれば、電気機械の多機能センサシステムは、2つの対向する表面を備える圧電基板、第1対向表面の上に重なる第1側面電極、および第2対向表面の上に重なる第2側面電極を備える一体式圧電振動、部分放電、および抵抗温度センサと、第1側面電極および第2側面電極に選択的に一体化されたケーブルと、センサを囲繞するパッケージングとを備える。
【0008】
他の実施形態によれば、発電機は、固定子スロットおよび固定子スロット内に配置された固定子バーを備える固定子と、固定子スロット内に配置されたセンサシステムとを備え、センサシステムは、圧電振動センサと、抵抗温度および部分放電センサと、振動、抵抗温度、および部分放電センサを囲繞するパッケージングとを備える。
【0009】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、ならびに利点は、以下の詳細な記述が、同じ符号が全図面にわたって同じ部分を表す添付の図面を参照して読まれるとき、よりよく理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態による多機能センサシステム10のブロック図である。センサシステム10は、電気機械12に対して配置され、通常はケーブル30および32によって信号をプロセッサ14に送信する。センサシステム10は、機械の動作中に感知するために機械12の指定位置に挿入する、または取り付けることによって配置されることが可能である。
【0011】
センサシステム10は、機械に関して振動、温度、および部分放電を感知するように構成される。一実施形態では、センサシステム10は、10ミリメートル未満または10ミリメートル等しい厚さを有する。追加または代替の実施形態では、一体式センサが、振動、温度、および部分放電を感知するために使用される。
【0012】
図2は、本発明のより具体的な実施形態による多機能センサシステムの側面図、図3はその透視図であり、センサシステム10は、圧電振動センサ16と、抵抗温度および部分放電センサ16と、振動、抵抗温度、および部分放電センサを囲繞するパッケージング18とを備える。
【0013】
パッケージング18は、任意の構造的に適切な電気絶縁材料を備えることが可能であり、一例には、ガラスとエポキシまたはポリエステルの複合物がある。パッケージング18は、センサシステムが挿入される空間に従って変化する高さを有し、通常、10ミリメートル未満または10ミリメートルに等しい厚さを有する。いくつかの応用例では、パッケージング18は、5ミリメートル未満またはそれ以下の厚さを有する。一例では、パッケージングの長さは少なくとも30センチメートルであり、幅は1センチメートルから10センチメートルの範囲である。
【0014】
図2および3の実施形態では、圧電振動センサは、抵抗温度および部分放電センサと一体式であり、一体式センサ16を備える。より具体的には、一体式センサは、2つの対向する表面26および28を備える圧電基板20と、第1対向表面26の上に重なる第1側面電極22と、第2対向表面28の上に重なる第2側面電極24とを備える。
【0015】
圧電基板20は、任意の適切な圧電材料を備えることが可能であり、一実施形態では、誘電体材料に埋め込まれた圧電ファイバ21を備える。1つのより具体的な実施形態では、圧電ファイバ21は、セラミックファイバまたは単一結晶ファイバ、あるいはその組み合わせを備え、基板20の誘電体膜材料は、ポリイミドなどのポリマーを備える。図9に示されたような代替実施形態では、圧電基板120は、モノリシック基板を備える。どちらの実施形態でも、任意の適切な圧電材料が、フッ化ポリビニリデンおよび鉛ジルコネートチタネートを含むいくつかの例と共に使用されることが可能である。一例では、圧電基板の厚さは、100マイクロメートルから500マクロメートルにわたる。より具体的な例では、圧電基板の厚さは、200マイクロメートルから300マイクロメートルにわたる。
【0016】
電極22および24は、任意の適切な導電性材料を備え、一実施形態では銅を備える。一例では、電極の厚さは、5マイクロメートルから200マイクロメートルにわたる。より具体的な例では、電極の厚さは、10マイクロメートルから15マイクロメートルにわたる。電極22(ならびに所望であれば電極24)は、いくつかの変形形態のいずれか1つでは、パターニングしない(シート)、またはパターニングすることが可能であり、いくつかの非限定的な例が、図4〜8に関して以下においてより詳細に議論される。
【0017】
センサシステム10は、同軸ケーブルをさらに備えることが可能である。図2の実施形態では、第1同軸ケーブル30が、第2側面電極24および第1側面電極22の第1端部34に結合され、第2同軸ケーブル32が、第2側面電極24および第1側面電極22の第2端部36に結合される。同軸ケーブルが使用されるとき、そのようなケーブルは、通常、絶縁によって外部導体から分離された中心導体を有する。2つの同軸ケーブルが例示のために示されているが、同軸ケーブルは必要ではない。他の例(図示せず)では、3つまたは4つの個別のケーブルが代替として使用されることが可能である。
【0018】
様々なパラメータの示度は、多重化またはろ過により同時にまたは並行して得ることが可能である。温度の感知では、該当する信号線は、第1側面電極22の第1端部34および第2端部36に結合された線である。電流(ミリアンペアの大きさ)が、結果として得られるDC電圧(温度の関数である)を測定する前に、ケーブルを経て注入されることが可能である。振動の感知では、該当する信号線は、第1側面電極22および第2側面電極24に結合された線である。圧電材料のひずみが、振動に比例する電荷を電極において生成し、10Hzから10MHzのスペクトルにおいて見ることができるが、通常、100Hzから10kHzの範囲に存在する。振動は、低周波数または高周波数である可能性があり、振動が、慣例的なタイプの振動(低周波数)であるか、または衝突もしくは衝撃のタイプの振動(高周波数)であるかによる。部分放電分析では、該当する信号線は、第1側面電極22の第1端部34および第2端部36に結合された線である。部分放電の対象のスペクトルは、通常、MHzから数10MHzの範囲にある。
【0019】
図4〜8は、様々な電極構成の概略図である。電極の少なくとも1つ(例示のために第1側面電極22として示されている)がパターニングされることが考慮されるが、これは必要ではない。接地平面に使用される他の電極も、パターニングする、またはパターニングしないことが可能である。図5は、第1側面電極および第2側面電極の導体を平行に配置させることによって、図4の実施形態を補完することが可能である第2側面電極124の電位パターンを示す。
【0020】
より具体的な実施形態では、第1側面電極は蛇行形状を備える。本明細書において使用される際、「蛇行形状」は、圧電ファイバ21にわたって振動する形状を意味することを意図する。たとえば、方形波電極122が図4に示され、3角形波電極222が図6に示され、正弦波電極322が図7に示されている。圧電ファイバが使用されるとき、蛇行形状が選択されない場合でも、電極を流れる電流が、測定されるひずみを創出するために使用される場合、電極の少なくともいくつかの部分が圧電ファイバを横断することが必要である。
【0021】
上記の例は例示を目的とする。上述されたように、パターニングは必要ではない。さらに、他の選択パターンが、代替として使用されることが可能である。他の例示的な電極の形状が図8に示され、陰影をつけられた電極形状224を備える。
【0022】
図9は、本発明の実施形態による多機能センサシステム110の透視図であり、センサ116が、2つの対向表面を備える圧電基板120と、第1対向表面に面する第1電極422と、第2対向表面に面する第2電極424とを備える。図9の例は、第1電極および第2電極に結合された同軸ケーブル38、44、および46と、圧電基板、第1電極および第2電極、ならびに同軸ケーブルを固定するためのパッケージング118として作用する成形コンパウンドとをさらに示す。一実施形態では、成形コンパウンドはエポキシを備える。
【0023】
図10は、圧電基板120、第1電極422、および第2電極424を含む本発明の実施形態による多機能センサシステム110の透視図であり、第1電極422および第2電極424は、圧電基板120に隣接して配置される。図10の実施形態は、第2基板220および第2基板220の上に配置された第3電極522をさらに備える。より具体的な実施形態では、第2電極424は、圧電基板120と第2基板220の間に配置された接地平面を備え、圧電振動センサ216は、圧電基板120ならびに第1電極422および第2電極424を備え、抵抗温度および部分放電センサ316は、第2基板220ならびに第2電極424および第3電極522を備える。接地平面は、第2基板または圧電基板の上に加えることが可能である。次いで、パッケージング(図示せず)がセンサの周りに施され、図2〜3のパッケージング18および図9のパッケージング118に関して議論されたものを含めて、任意の適切な材料を備えることが可能である。
【0024】
図11および12は、本発明の他の実施形態による発電機固定子の断面側面図である。これらの実施形態では、発電機112または212が、固定子スロット62ならびに固定子スロット内に配置された固定子バー64および66を備える固定子60と、固定子スロット内に配置されたセンサシステム310または410とを備える。2つの固定子バーが、例示のために単一スロットにおいて示されているが、この構成は必要ではない。センサシステムは、圧電振動センサと、抵抗温度および部分放電センサと、振動、抵抗温度、および部分放電センサ(たとえば図2、9、および10に示す)を囲繞するパッケージングとを備える。
【0025】
図11のより具体的な例では、固定子は、固定子スロット内に配置された固定子ウェッジ68をさらに備え、センサシステム310は、固定子ウェッジと固定子バーの間において固定子スロットに配置される。図12のより具体的な例では、センサシステム410は、固定子スロットの隣接する固定子バー間に配置される。
【0026】
本発明のある特徴のみが本明細書において図示および記述されたが、当業者なら多くの修正および変更を思いつくであろう。したがって、添付の請求項は、本発明の真の精神の範囲内にあるすべてのそのような修正および変更を網羅することを意図すると理解されたい。また、図面の符号に対応する特許請求の範囲中の符号は、単に本願発明の理解をより容易にするために用いられているものであり、本願発明の範囲を狭める意図で用いられたものではない。そして、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態による多機能センサシステムのブロック図である。
【図2】本発明の他の実施形態による多機能センサシステムの側面図である。
【図3】本発明の他の実施形態による多機能センサシステムの透視図である。
【図4】電極構成の概略図である。
【図5】電極構成の概略図である。
【図6】電極構成の概略図である。
【図7】電極構成の概略図である。
【図8】電極構成の概略図である。
【図9】本発明の他の実施形態による多機能センサシステムの透視図である。
【図10】本発明の他の実施形態による多機能センサシステムの側面図である。
【図11】本発明の他の実施形態による発電機固定子の断面側面図である。
【図12】本発明の他の実施形態による発電機固定子の断面側面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 センサシステム
110 センサシステム
210 センサシステム
310 センサシステム
410 センサシステム
12 電気機械
112 電気機械
212 電気機械
14 プロセッサ
16 センサ
116 センサ
216 センサ
316 センサ
18 パッケージング
118 パッケージング
20 基板
120 基板
220 基板
21 ファイバ
22 電極
122 電極
222 電極
322 電極
422 電極
522 電極
24 電極
124 電極
224 電極
424 電極
26 表面
28 表面
30 ケーブル
32 ケーブル
34 端部
36 端部
38 ケーブル
40 基板
42 電極
44 ケーブル
46 ケーブル
60 固定子
62 固定子スロット
64 固定子バー
66 固定子バー
68 固定子ウェッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動センサ(16)と、
抵抗温度および部分放電センサ(16)と、
前記振動、抵抗温度、および部分放電センサを囲繞するパッケージング(18)
とを備える、電気機械(12)の多機能センサシステム(10)。
【請求項2】
前記パッケージングが、10ミリメートル未満または10ミリメートルに等しい厚さを有する、請求項1記載のセンサシステム。
【請求項3】
前記圧電振動センサが、前記抵抗温度および部分放電センサと一体式であり、2つの対向する表面(26、28)を備える圧電基板(20)と、第1対向表面の上に重なる第1側面電極(22)と、第2対向表面の上に重なる第2側面電極(24)とを備える一体式センサを備える、請求項1記載のセンサシステム。
【請求項4】
前記第2側面電極および前記第1側面電極の第1端部(34)に結合された第1同軸ケーブル(30)と、前記第2側面電極および前記第1側面電極の第2端部(36)に結合された第2同軸ケーブル(32)とを備える2つの同軸ケーブル(30、32)をさらに備える、請求項3記載のセンサシステム。
【請求項5】
前記圧電基板が、モノリシック圧電基板および埋込みファイバ圧電基板のグループから選択される、請求項3記載のセンサシステム。
【請求項6】
センサシステム(410)が、固定子スロットの隣接する固定子バー間に配置される、請求項3記載のセンサシステム。
【請求項7】
センサシステム(310)が、固定子ウェッジと固定子バーの間において固定子スロットに配置される、請求項3記載のセンサシステム。
【請求項8】
前記センサが、2つの対向表面を備える圧電基板(120)と、第1対向表面に面する第1電極(422)と、第2対向表面に面する第2電極(424)とを備える、請求項1記載のセンサシステム。
【請求項9】
前記第1電極および前記第2電極に結合された同軸ケーブルと、前記圧電基板、前記第1電極および前記第2電極、ならびに前記同軸ケーブルを固定するための成形コンパウンドとをさらに備える、請求項8記載のセンサシステム。
【請求項10】
第2基板(220)、および前記第2基板の上に配置された第3電極(522)をさらに備え、前記第2電極が、前記圧電基板と前記第2基板の間に配置された接地平面を備え、前記圧電振動センサが、圧電基板ならびに前記第1電極および前記第2電極を備え、前記抵抗温度および部分放電センサが、前記第2基板ならびに前記第2電極および前記第3電極を備える、請求項9記載のセンサシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−3087(P2008−3087A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161189(P2007−161189)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】