説明

電気機械変換器及びその製造方法

本発明は、電気機械変換器及びこの変換器の製造方法に関するものである。変換器は、膜(3)と、2つの電極(1、2)であってその間の電界を制御又は測定できる当該電極と、支持構造体(4、5)とを有し、この支持構造体上には、前記膜(3)が、電界によって相互作用的に振動するよう配置されている。本発明によれば、支持構造体(4、5)は、複数の支持点(4、5)を有し、これら支持点は、膜(3)に複数の平行な振動子が形成されるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響エネルギーを電気信号に変換する又は電気信号を音響エネルギーに変換する電気機械変換器に関するものである。本発明は、特に、請求項1の前文に記載の電気機械変換器に関するものである。
【0002】
本発明は、請求項12の前文に記載の電気機械変換器の製造方法にも関するものである。
【0003】
代表的な電気機械変換器とは、拡声器又はマイクロホンである。例えば、自動車電話のような携帯型の電気通信装置には、マイクロホン及び拡声器が設けられている。代表的な自動車電話のマイクロホンは、エレクトレットマイクロホンである。拡声器は、代表的には、音声コイル又は圧電素子を有する。
【0004】
携帯電話製品の開発における1つの目的は、装置に含まれる構成部材を、例えば電話機のケースのような装置の機械的構造体に一体化させて現在よりもよりコンパクトにすることである。この開発の目的は、より小型でより簡単な装置及びより費用のかからない製造方法を得ることにある。
【0005】
最も近い先行技術の解決方法によれば、荷電された膜は、そのエッジにおいて支持されており、膜の一方又は両方の側に存在しうる電極から適切な距離に配置されている。欧州特許出願公開第1244053号明細書には、自己荷電型の絶縁高分子膜を利用する携帯電話拡声器及びマイクロホンが開示されている。この欧州特許出願公開明細書に開示されている解決方法においては、電気機械誘電体(EMD)膜は、そのエッジで支持されケースの表面と一体化されている。EMD膜は、拡声器として作用する場合には、このEMD膜に金属電極を介して電気回路から接続された電気信号を、膜を前後に振動させることにより音響エネルギーに変換する。これに対して、マイクロホンとして作用する場合には、EMD膜は音響エネルギーを電気信号に変換する。
【0006】
本発明は、非常に高度で経済的な変換器及びその製造方法を得ること目的としており、これによれば、変換器は、他の構造体、例えば装置のケース構造体の一部に一体化させうるようになる。
【0007】
本発明は、変換器に複数の平行な変換器素子を設けるという考えに基づくものである。従って、本発明によれば、振動膜は、支持構造体により複数の位置で支持されるように2つの電極の影響範囲内に位置し、それにより膜が、複数の支持点を有してその間で振動しうるようになっている。即ち、変換器は、電極と相互に作用する複数の平行な振動子から形成されている。更に、支持構造体は、振動空間が膜の両側に維持されるように配置されており、それにより膜は、当該膜の両方の表面の方向に振動しうるようになる。
【0008】
ある例では、膜と電極構造体との間に配置されたリッジにより、膜を少なくとも一つの電極に圧接する。従って、リッジ間に保持されている膜の部分が振動しうる。リッジは、例えば、1つの電極か、双方の電極か、電極外部の支持構造体か、実際に振動する膜か、又は膜及び支持表面間に位置する別個のアダプタ構造体に形成することができる。
【0009】
他の例では、膜の周囲の空所は、開口部又はチャネルにより外部の空気又は空気のある広い空間に結合されているため、空所内の空気の圧縮が振動に対する抵抗にはならない。ある例では、これらの開口部又はチャネルは、振動する膜と変換器の周囲環境との間における音の進行にも有利な効果を有しうる。いくつかの例では、開口部又はチャネルを電極構造体に形成する。
【0010】
本発明の例では、電極を代表的に比較的剛性があるように製造し、この電極に対して膜を支持構造体により配置することにより、この電極がほぼ静止している状態で振動が主として振動膜に生じるようにする。このように、上述の電極の材料は、膜に対して十分剛性があるものを選択する。電極自体の材料は、導電性にしてもよいし、又は導電性に表面処理してもよい。電極の材料は、電極材料内に開口部、即ち膜及びその周囲環境間のチャネルを形成しうるものとするのが好ましい。
【0011】
いくつかの例では、支持構造体及び電極の表面が振動空間、即ち空所を画成し、膜が振動しうるようにする。この場合、支持構造体は、膜の表面に対して平行な格子マトリクス、竿状体又は柱状体のような隆起したパターンを形成し、それにより平行な振動空間のグループが形成されるようにする。これらの隆起したパターンは、不規則なものにすることもできる。このような振動空間は、互いに接続してもよいし、それぞれ独立したものとすることもできる。
【0012】
より詳細には、本発明による変換器は、本願の特許請求の範囲における請求項1の特徴部分に記載した事項を特徴とする。
【0013】
また、本発明による製造方法は、本願の特許請求の範囲における請求項12及び16の特徴部分に記載した事項を特徴とする。
【0014】
本発明を用いることにより顕著な効果が得られる。本発明を用いることにより、スペースをほとんど必要とせず、製造方法の簡単な変換器素子が得られる。
【0015】
本発明には、顕著な追加の効果を奏する多くの好的例がある。例えば、ある例では、膜の振動距離を容易に制御しうるように、例えば500〜2000μC/m2 程度の大きな静電荷を有する膜を使用することができる。この製造方法は、製造費用を低くしたままで、大量生産に容易に利用することができる。
【0016】
以下に、本発明を、添付図面を参照して実施例により説明する。これらの実施例は、請求の範囲により規定される保護範囲を限定することを目的としていない。
【0017】
図1aは、複数の平行な変換器素子を有する変換器の断面を示す(図面の上方)。図1aは、2つの平行な変換器素子をより詳細に示すものでもある。図1aの変換器素子は、振動するように構成した膜3を有し、この膜3は、永久荷電及びバイアス電圧の双方又はいずれか一方により帯電される。この膜3は、複数の平行な振動子が膜3に形成されるように、リッジ4及び5間でいくつかの支持点により支持されている。図1aの実施例において、リッジ4及び5は細長状になっており、図1aの面に対して直角の方向に変換器全体を通って延在している。対応する片のリッジ4及び5は、膜3のそれぞれ反対側の面で平行になり且つ隣接して配置されるよう設けられている。このように、図1aの実施例において、リッジ4及び5は平行な振動子を互いに分離している。しかし、ある実施例では、リッジ4及び5が、少なくとも他の幾つかの振動子と接触するようにする。例えば、リッジ4及び5が点を形成する実施例の場合である。リッジ4及び5が、図1aの面に対して直角方向に短い場合には、図1aもこのような実施例になりうる。
【0018】
図1aの実施例において、リッジ4及び5は、例えば、適切なプラスチックとすることができる基礎材料6に形成されている。電極1及び2は、基礎材料の1つの面を表面処理して導電層(例えば金属層)にすることにより基礎材料の表面に形成されている。表面処理の前に、基礎材料6内に、リッジ4の間及びリッジ5の間に位置する開口部7を形成する。製造技術によっては、開口部7並びにリッジ4及び5は、基礎材料片6の形成と関連付けして製造することができる。
【0019】
図1aによる膜3は、複数の支持点によりリッジ4及び5間で押圧されており、残りの支持点間の膜3の部分が自由に振動しうるようになっている。膜の振動を可能にするために、基礎材料片6は、隣接するリッジ4間及びこれに対応する隣接するリッジ5間に凹部を有する。これらの凹部により、膜3内に、振動空間8、即ち空所が形成される。これら空所8は、開口部7を通して、基礎材料片6を包囲している空間と連通するしている為、膜3が振動すると空所8の空気圧は開口部7を通じて均等化しうる。このことは膜3の振動抵抗を低減させる。図1aに示される開口部7は、これに相当する機能を果たし得る他の対応する開口部又はチャネルに置き換えることができる。ある実施例では、これら開口部7又は相当するチャネルを、可撓性の膜を用いて閉鎖しうる。この場合、この可撓性の膜は、ほこりや水分が空所8に入り膜3並びに電極1及び2に接触するのを防止する。但し、空所8内の空気圧により可撓性の膜が振動することで、空所内の空気圧は効率的に均等化を生じ、膜3から変換器の周囲に音を伝達し、或いはその逆方向に音を伝達する。
【0020】
図1aの実施例においては、電極1及び2は、開口部7の内表面まで延在している。このことは、適切な表面処理を用いることにより達成できる。但し、開口部7まで電極を延在させること必要ではないが、この構造を用いることにより、膜3に指向しうる電界の強度を増大させることができる。
【0021】
図1bは、他の実施例の2つの断面を示す。この実施例において、基礎材料片6並びに電極1及び2は図1aの実施例と同様に製造されているが、対応する片のリッジ4及びリッジ5は、異なる方向、例えば互いに直角に配置されている。従って、図1bの実施例において、リッジ4及び5は、平行な振動子の一部を分離しているにすぎない。図1bの上方の図面は、リッジ5に沿った断面を示しているため、この断面において、膜3の面はリッジ4間の空所8に包囲されているように見える。しかし、空所8は、膜の少なくとも一方の面において互いに結合しており、このことは、リッジ4に沿った断面(図1b下方の図面)により示すことができる。
【0022】
図1a及び1bに示す実施例においては、帯電した膜3が2つの電極1及び2間に装着されている。電極1、2即ち基礎材料片6に形成されたリッジ4及び5は、膜3の支持構造体を形成し、これにより、電極1及び2間で膜3が押圧されている。リッジ4、5及び電極表面により、帯電した膜に対する振動空間8が形成される。支持構造体を形成するリッジは、例えば柱状、竿状又はネット状に成形できる。しかし、このような支持構造体自体は、規則的な形状を有するリッジその他の支持点を必要とするわけではない。代わりに、支持点を、不規則なパターンに配置することもできる。考えられる幾つかのパターンを図4a、4b及び4cに示す。チャネル又は開口部7は、電極にも形成されている。
【0023】
図1aにおいて、電極に形成されているリッジ4及び5は、膜3が、その表面の平行な面の同一点で二方向に振動しうるように各々反対側に配置されている。図1bにおいて、電極に形成されたリッジ4及び5と、膜3の振動空間8とは、膜3の表面の平行な面の異なる位置に配置されている為、この場合も膜3は二方向に振動しうるが、膜3の表面の平行な面の異なる位置で振動する。
【0024】
図2は他の支持構造体及び電極構造体を示す。これらは、例えば、図1a及び1bに示される電極構造体に代えて用いることができるものである。図2の上方に示される支持構造体において、リッジ5は、電極2の製造後にこの電極2の表面に形成される。これらの支持構造体は、例えば、既知の印刷技術又はエッチング技術を用いることにより製造することができる。図2の下方の図面において、電極表面2は、開口部7及び空所8の領域にのみ形成されている。この場合、導電層が、リッジ5の表面に存在しないことになる。このような実施例による支持構造体及び電極を使用する場合は、変換器の膜3自体を導電性にすることもできる。電極1及び2と膜3を接触させる場合、変換器の電気的動作を妨げることのないように、膜の導電率を小さくする必要がある。
【0025】
図3aは、膜3の振動空間8及び支持構造体を形成するための他の解決方法を示す。図3aの解決方法においては、支持構造体を膜の一部として形成している。この場合、基礎材料片6並びに電極1及び2の表面を平坦にすることができ、それにより電極の製造を容易にすることができる。図3aの上方の図面は、この実施例による膜3を示しており、この膜3は、前述した実施例のリッジ4及び5に対応する突起部4、5を有する。前述した実施例と同様に、突起部即ちリッジ4、5は、電極1及び2間の膜3を、膜が振動可能で且つ構造を機械的に十分に信頼性のあるものとなるように支持しうる細長状のリッジ、柱状物、竿状物などの任意の形状の突起にすることができる。
【0026】
図3bは、膜3の振動空間8及び支持構造体を一方の面に形成する解決方法を示す。図3bの例においては、膜の一方の面にのみ、膜3の一部として支持構造体が形成されている。膜3の他方の表面に、例えばアルミニウム又は金にするのが好ましい薄肉の金属薄膜13が形成されている。この金属薄膜は、一方の電極として作用しうる。図3bの上方の図面には、この種の膜の構造及びその拡大断面図が示されている。この実施例において、膜3には、前述の実施例のリッジ4及び5に対応する突起部4及び5が設けられている。上述した実施例と同様に、突起即ちリッジ4、5は、電極2の表面に対して膜3を、膜が振動可能に且つ構造を機械的に十分に信頼性しうるように支持しうる細長状のリッジ、柱状物、竿状物等の任意の突起部にすることができる。図3bの下方の図面において、1つの電極2の表面に取付けられた膜構造体3が示されている。この場合、膜3の反対側の表面に第一電極1が形成される。
【0027】
図3bの実施例による膜構造体は、第二電極2を有する殆ど全ての表面に極めて簡単且つ経済的に変換器を製造できる。この実施例によれば、変換器を極めて薄肉にすることもできる。この種の変換器は、例えば小型の電子装置に用いるのに極めて適しており、変換器は、例えば装置ケースに直接取付けうるものとなる。
【0028】
図4a、4b及び4cは、数種の好適な支持構造体の例を示す。図において、リッジ又は他の支持構造体は黒色にして示している。図4aの構造において、支持構造体は竿状により形成されており、膜の両面においてグリッド状に配置されている。図4b及び4cの実施例においては、支持構造体を、異なる形状の柱状体から形成している。リッジ又はその他の支持構造体により形成される隣接する支持点間の代表的距離は、200μm〜5mmである。
【0029】
電極は、十分に導電性の材料から構成することもできるし、或いは導電性材料により表面処理することにより得ることもできる。電極構造体は、膜及び周囲環境間で音を伝達しうるようにする必要がある。このことは、例えば、電極構造体に開口部7を形成することにより達成できる。電極が可撓性材料である場合、変換器を立体的に形成できる。振動する膜が小さい平行な振動子に形成されているため、変換器構造体を湾曲させることができる。電極は、例えば、表面処理により導電材料を例えば0.1〜5mmの厚さに設けた高分子膜にすることができる。
【0030】
変換器の電極は、携帯型装置のケーシングに形成することができ、この場合電極はケースの一部を形成するため有利である。上述したように、平行な素子から形成した変換器構造体は湾曲させうる為、好適例による変換器は、携帯型装置のケースの曲部に配置することもできる。このことは、携帯型装置の設計及び形状に関して極めて有利である。これは、小型の携帯型装置に充分大きな平面状の変換器を配置することは、その装置の設計及び形状に著しい制約を課すおそれがある為である。本発明の好適例による変換器構造体は、モバイルステーションのケース構造体のような湾曲片の一部として一体化しうる。同様にして、この変換器は、カメラ若しくはコンピュータ、又は眼鏡、ペン若しくはその他の構造体にも配置しうる。変換器は、利用可能な空間に嵌合させるために、ほとんどいかなる形状にすることもできる。
【0031】
電極の厚さ等の寸法並びに開口部の形状及び寸法は、利用可能な信号電圧、膜の機械的特性及び電荷の大きさに基づき決定する。寸法は、また、利用する製造方法及びその能力によっても決定される。開口部は、支持構造体の間、好ましくは支持構造体と電極表面とにより画成される中央の空間に位置する。開口部の数、寸法、形状及び位置は、膜の振動を制限せず十分強力な音圧を達成しうるようなものとするのが好ましい。ステータ電極の構造は、この構造体に吸収される音響エネルギーができるだけ少なくなるようなものとする。電極に形成される開口部の直径は、例えば10μm〜2000μmにすることができるが、一般的に、実際上は約200μm〜約1000μmにする。
【0032】
制御電圧は、例えば、構造体に形成された導体から電極に印加する。構造体は、高いインピーダンスを有するので、ある実施例では、高い接触抵抗を許容することもできる。このことにより、変換器構造体の製造において、様々な接続方法を使用しうるようになる。
【0033】
膜と別個の電極を当該膜3の両側に配置した実施例を上に説明した。しかし、変換器は、導電材料により膜を表面処理して、振動する膜3の表面に第二電極が形成されるよう構成することもできる。しかし、膜3と別個に電極を製造すれば、振動幅がより広くなるため、多くの実施例では、膜3と別個の2つの電極1及び2を製造するのが好ましい。
【0034】
支持構造体(例えばリッジ4及び5)は、導電性材料にする必要はないし、これらの表面を導電性に処理する必要もない。支持構造体の最大高さは、代表的には1000μmより小さく、実際上は通常20μm〜200μmである。実施例ではこの寸法は、必要な音圧及びそのために必要となる膜3の動きの自由度に基づいて決定される。
【0035】
膜3を永久荷電させるか、又は膜3にバイアス電圧を接続して電荷を形成する。バイアス電圧を発生させるために、膜の内側又はその表面に金属化部分又は他の導電構造体を設ける。多くの実施例において、膜3は、ポリマーから形成した永久荷電させた絶縁膜にすることができる。膜の代表的な厚さは2〜200μmである。
【0036】
膜は、例えば接着剤又は超音波溶着を用いて電極構造体に取り付けることができる。膜は、適度に緊張させることができる。膜は、例えばコロナ放電を用いて帯電させることもできる。
【0037】
変換器素子は、例えば、第一電極を最初に製造することにより製造しうる。電極は、例えば、射出成形により絶縁プラスチックから製造できる。その後、このプラスチック片の一方の表面を表面処理して導電性にする。電極は、例えば金属のようなそれ自体導電性の材料をミリングするなどして、他の方法及び他の材料を用いて製造できる、同様にして、第一電極に対する対応片を形成する第二電極を製造することもできる。
【0038】
次に、振動する膜を製造する。膜は、例えば、適切な膜材料からの切り出しにより形成しうる。このように、実際の膜の製造方法は周知であり、また適切な膜材料は膜材料の製造業者から入手できる。同様に、電極は既製のピースとして注文できるため、電極及び膜の製造順序自体は重要ではない。
【0039】
その後に、電極間に膜を配置し、電極を適当な力で一緒に押圧する。膜が所定の位置に確実に維持されるようにしたければ、接着剤を用いて電極の双方又はいずれか一方に膜を接着しておくことができる。接着剤は、例えば、電極に設けられたリッジ若しくは他の支持点又は膜の表面に適量配置できる。或いは又、他の方法、例えば熱圧縮法又は超音波溶着法を使用して膜を電極構造体に接続することもできる。
【0040】
ある実施例においては、膜を電極に取り付けて電極と一緒に押圧する前に、膜を予め所定量だけ緊張させておくことにより、変換器に形成される平行な振動子が対応する張力を予め受けるようにする。予め加える張力の大きさにより、形成される変換器素子の振動特性に影響を及ぼすことができる。膜を電極に取り付けたら、適切な帯電方法、例えばコロナ放電を使用して膜を帯電させることができる。帯電処理は、正に帯電させるものでも、負に帯電させるものでもよい。製造の際に、予め帯電させた膜を使用することもできる。この場合、帯電処理は不要になる。しかし、膜を取付けた後に帯電処理を行うと所定の有利な効果が得られる。この場合、少なくともある実施例において、後の製造工程で膜の電荷保持率を改善できる。これにより、膜の荷電密度をより大きくすることができる。
【0041】
次の工程において、永久荷電させた膜−電極製造物を、例えば装置のケースとすることができる第二電極構造体に取り付ける。これにより上述した変換器構造体が形成される。第二電極を装置のケース、例えばモバイルステーションのケースに形成する場合、電極の金属化処理を実行する際に、このケースの表面に他の必要な導体又は導電パターンを形成することもできる。一例において、アンテナの製造を同じ製造工程で行うことができる。
【0042】
ある実施例においては、双方の電極を1ピースに形成して、このピースが第一電極及び第二電極を形成する第一領域及び第二領域を有するようにする。更に、このピースは、第一及び第二領域間に可撓性部分やヒンジなどを有するようにして、これら第1及び第2領域が、回転して互いに対向して第1及び第2電極が構成されるようにすることができる。膜は、これらの電極間に位置させることができ、必要に応じて、いずれかの電極に接着その他の方法により取付けることができる。一方の電極は、装置のケースに形成することもできるし、又は膜電極製造アダプタ接続部若しくはヒンジ等を用いてケースに取り付けることもでき、この場合それにより、膜電極製造物を装置のケースの適所に容易に固定しうるようにしたり、必要に応じて取外して新しいものと容易に交換しうるようにすることができる。
【0043】
本発明の範囲内で、上述した実施例と異なる本発明の実施例を想定することもできる。上述した寸法は、実施例として示すものであり、特定の実施例に適した構造体を表しているに過ぎない。従って、これらは本願の特許請求の範囲に記載されている本発明の保護範囲を制限することを目的としていない。更に一般的には、構造体の寸法は、利用可能な信号電圧、膜の機械的特性及び電荷の大きさに基づいて特定する。寸法の選択は、使用する製造方法及びその能力によっても影響を受ける。同様に、所定の用途における条件に適合するように、変換器及びその製造方法の細部に必要な変形を加える。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1a】図1aは、本発明による変換器を示す断面図である。
【図1b】図1bは、本発明の他の実施例による変換器素子を示す断面図である。
【図2】図2は、図1a及び1bに示される電極及び支持構造体の変形例である2つの電極及び支持構造体を示す断面図である。
【図3a】図3aは、膜の支持構造体を当該膜の一部として形成した本発明の一実施例を示す断面図である。
【図3b】図3bは、膜の支持構造体を膜の一部として形成した本発明の他の実施例を示す断面図である。
【図4a】図4aは、膜の表面に向かって見た場合の他の支持構造体のパターンを示す線図である。
【図4b】図4bは、膜の表面に向かって見た場合の更に他の支持構造体のパターンを示す線図である。
【図4c】図4cは、膜の表面に向かって見た場合の更に他の支持構造体のパターンを示す線図である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響エネルギーを電気信号に変換する又は電気信号を音響エネルギーに変換する電気機械変換器であって、この変換器は、膜(3)と、2つの電極(1、2)であってその間の電解を制御又は測定できる当該電極と、支持構造体(4、5)とを有し、前記膜(3)は、電界により相互作用的に振動するように前記支持構造体上に配置されており、前記支持構造体(4、5)は、複数の平行な振動子が膜(3)に形成されるよう配置された複数の支持点(4、5)を有している当該電気機械変換器において、
前記支持構造体(4、5)が、前記膜(3)の恒久的な一部分として形成されていることを特徴とする電気機械変換器。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機械変換器において、
前記支持構造体(4、5)及び前記電極(1、2)が、前記膜(3)の両側に、平行な振動子のための空所(8)を画成しており、それにより、当該膜(3)がその休止位置から両方向に振動しうるようになっていることを特徴とする電気機械変換器。
【請求項3】
請求項2に記載の電気機械変換器において、
空所(8)の少なくとも幾つかが、前記膜(3)の両側に互いにほぼ対向して配置されており、それにより変換器が複数の振動子を有し、これら振動子は、前記膜(3)の休止位置から二方向に振動し得るようになっており、振動子が第一及び第二の方向に振動する場合に、前記膜(3)の振動する表面領域が、ほぼ同じ寸法であり且つ当該膜(3)内の同じ位置に存在することを特徴とする電気機械変換器。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の電気機械変換器において、
少なくとも一つの開口部又はチャネル(7)が、それぞれの前記空所(8)に接続しており、それにより空所(8)の内部空間が、この変換器の外部空間と又は少なくとも他の幾つかの空所(8)と均圧接続していることを特徴とする電気機械変換器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気機械変換器において、
少なくとも一つの電極(1)が固定された構造体を形成しており、前記膜(3)及び前記電極(1)が前記支持構造物(4、5)のみを通じて互いに接触するように、前記固定された構造体に対して可動膜(3)が取付けられていることを特徴とする電気機械変換器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気機械変換器において、
前記膜が、永久荷電された電気機械絶縁膜であり、この膜が振動する際にもその厚さがほぼ同じままであることを特徴とする電気機械変換器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気機械変換器において、
前記支持構造体(4、5)と、前記膜(3)と、前記第一電極(1)とが、例えば接着又は溶着により互いに恒久的に取付けられワンピースになっており、このピースが、第二電極(2)に対して取付けられているか、又は圧接されていることを特徴とする電気機械変換器。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の電気機械変換器において、
一方の電極(1)が、前記膜(3)の表面に形成されていることを特徴とする電気機械変換器。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の電気機械変換器において、
前記膜(3)が、当該膜(3)の一方の側にのみ前記支持構造体(4、5)を有することを特徴とする電気機械変換器。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の電気機械変換器において、
この変換器が装置ケースの一部として取り付けられており、前記第一電極(1)が前記膜(3)の表面に形成されており、且つ前記第二電極(2)が前記装置ケースの表面に形成されていることを特徴とする電気機械変換器。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の電気機械変換器において、
前記膜(3)が、永久荷電された電気機械絶縁膜であることを特徴とする電気機械変換器。
【請求項12】
膜(3)と、2つの電極(1、2)であって、その間の電界を制御又は測定できる当該電極と、支持構造体(4、5)であって、その上には、前記膜(3)が電界により相互作用的に振動するよう配置された当該支持構造体とを有する電気機械変換器の製造方法であって、
互いに離れた複数の支持点(4、5)を有するように前記支持構造体(4、5)を形成する工程と、
前記膜(3)に複数の平行な振動子が形成されるように、前記膜(3)、前記電極(1、2)及び前記支持構造体(4、5)を位置決めする工程と
を有する当該電気機械変換器の製造方法において、
前記第一電極(1)、前記膜(3)及び前記膜(3)の支持構造体(4、5)を有する組合わせピースを形成する工程と、
この組合わせピースの製造後に、前記膜(3)に電荷を帯電させる工程と
を有することを特徴とする電気機械変換器の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の電気機械変換器の製造方法において、
前記第一電極(1)を、前記膜(3)の表面に形成することを特徴とする電気機械変換器の製造方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の電気機械変換器の製造方法において、
前記膜(3)の取付前に、当該膜(3)を伸張させて予め張力を与えておくことを特徴とする電気機械変換器の製造方法。
【請求項15】
請求項12〜14に記載の電気機械変換器の製造方法において、
前記膜(3)が電気機械絶縁膜(3)であり、この膜を帯電させる際に永久荷電させることを特徴とする電気機械変換器の製造方法。
【請求項16】
電気機械変換器用の膜−電極対の製造方法において、
電極(1)を得る工程と、
膜(3)を得る工程と、
独立した支持構造体(4)、又は前記電極(1)若しくは前記膜(3)に恒久的に取り付けられた支持構造体(4)を得る工程と、
前記膜(3)が前記電極(1)から少なくとも一部離れて位置するように、前記電極(1)、前記膜(3)及び前記支持構造体(4)を互いに取り付ける工程と、
この取り付けられた膜(3)に電荷を帯電させる工程と
を有することを特徴とする膜−電極対の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の膜−電極対の製造方法において、
前記膜(3)が所定の張力を予め有するように、前記電極(1)、前記膜(3)及び前記支持構造体(4)を互いに取付けることを特徴とする膜−電極対の製造方法。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の膜−電極対の製造方法において、
前記膜(3)が電気機械絶縁膜(3)であり、この膜に帯電処理を行う際に永久荷電を付与することを特徴とする膜−電極対の製造方法。

【図2】
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【公表番号】特表2007−515090(P2007−515090A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516232(P2006−516232)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/FI2004/000382
【国際公開番号】WO2004/114720
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(505476065)ペルロス テクノロジー オサケユキチュア (2)
【Fターム(参考)】