電気機械変換膜の製造方法、電気機械変換膜、電気機械変換膜群、電気機械変換素子の製造方法、電気機械変換素子、電気機械変換素子群、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、画像形成装置
【課題】所望の膜厚のパターン化した電気機械変換膜を製造する製造方法を提供する。
【解決手段】第1の電極上に部分的に表面改質を行う工程と、第1の電極上にゾルゲル液をインクジェット方式により部分的に塗布する工程と、部分的に塗布したゾルゲル液を乾燥・熱分解・結晶化する工程と、前記のゾルゲル液をインクジェット方式により部分的に塗布する工程と部分的に塗布したゾルゲル液を乾燥・熱分解・結晶化する工程とを繰返し行い所望の膜厚を得る工程と、でゾルゲル法にて電気機械変換膜を形成する電気機械変換膜の製造方法において、第1の電極上にゾルゲル液をインクジェット方式により部分的に塗布する工程では、第1層目のゾルゲル液の塗布の着弾時の隣接ドットが重なるように配置され、第2層目以降のゾルゲル液の塗布量を第1層目のゾルゲル液の塗布量より少量とし、着弾時の隣接ドットが重ならないように配置されるようにパターン化した。
【解決手段】第1の電極上に部分的に表面改質を行う工程と、第1の電極上にゾルゲル液をインクジェット方式により部分的に塗布する工程と、部分的に塗布したゾルゲル液を乾燥・熱分解・結晶化する工程と、前記のゾルゲル液をインクジェット方式により部分的に塗布する工程と部分的に塗布したゾルゲル液を乾燥・熱分解・結晶化する工程とを繰返し行い所望の膜厚を得る工程と、でゾルゲル法にて電気機械変換膜を形成する電気機械変換膜の製造方法において、第1の電極上にゾルゲル液をインクジェット方式により部分的に塗布する工程では、第1層目のゾルゲル液の塗布の着弾時の隣接ドットが重なるように配置され、第2層目以降のゾルゲル液の塗布量を第1層目のゾルゲル液の塗布量より少量とし、着弾時の隣接ドットが重ならないように配置されるようにパターン化した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械変換膜の製造方法、その電気機械変換膜の製造方法により製造された電気機械変換膜、電気機械変換膜群、前記電気機械変換膜の製造方法を用いた電気機械変換素子の製造方法、その電気機械変換素子の製造方法により製造された電気機械変換素子、電気機械変換素子群、その電気機械変換素子または電気機械変換素子群を用いた液体吐出ヘッド、その液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置、その液体吐出装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願に関連する背景技術としては以下のようなものがある。
非特許文献1(K.D.Budd,S.K.Dey,D.A.Payne,Proc.Brit.Ceram.Soc.36,107(1985))には、ゾルゲル法による金属複合酸化物の薄膜形成に関する技術が紹介されている。
非特許文献2(A.Kumar and G.M.Whitesides,Appl.Phys.Lett.,63,2002(1993))には、Au膜上にアルカンチオールが自己組織化単分子膜(SAM:Self Assembled Mon-layer)として形成できることが記載されている。そして、この現象を用いたマイクロコンタクトプリント法でSAMパターンを転写し、その後のエッチングなどのプロセスに利用することが記載されている。
特許文献1(特表2002−543429号公報)には、SAM分子の末端を化学修飾したアルカンチオールを反応基体前面に形成し、紫外線照射により部分的にSAMを除去し、生物分子や細胞アレイを形成する技術が紹介されている。
特許文献2(特開平4−168277号公報)には、ゾルゲル法を用いて基板上に複合酸化物の厚膜を形成し、空間光変調素子やインクジェットプリンタヘッドのアクチュエータ、センサに応用することが記載されている。
特許文献3(特開2005−310962号公報)には、エネルギーの付与によって臨界表面張力が変化する材料を含み、より臨界表面張力の大きな高表面エネルギー部3とより臨界表面張力の小さな低表面エネルギー部4との少なくとも臨界表面張力の異なる2つの部位を有する濡れ性変化層2と、この濡れ性変化層2に対して高表面エネルギー部3の部位に形成された導電層5と、濡れ性変化層2に対して少なくとも低表面エネルギー部4の部位に接して設けられた半導体層6と、により積層構造体1を構成することで、印刷法のような低コストでかつ材料使用効率の高い方法で、簡便に製造できる微細な導電層パターン及び高移動度の半導体層6を有する積層構造体1を提供できるようにしたことが記載されている。
特許文献4(特開2003−297825号公報)には、二つ以上のインクジェットヘッドを持ち、異なるゾルゲル液を吐出させ、一平面内に均一に混合した強誘電体薄膜を作製する作成方法が記載されている。
特許文献5(WO2003/098714号公報)には、圧電体薄膜を用いた液体噴射ヘッドの一般的な構成が記載されている。
特許文献6(特第4269172号公報)には、インクジェットヘッド用に調製されたゾルゲル液をインクジェットヘッドで吐出させて、強誘電体膜を形成する製造方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はプリンタ、ファクシミリ、複写装置、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置として使用されるインクジェット記録装置の液体吐出装置及びその液体吐出装置に用いられる液体吐出ヘッドに関するものである。
【0004】
液体吐出ヘッドの構成は以下のようなものである。
インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する加圧室(インク流路、加圧液室、圧力室、吐出室、液室等とも称される)と、加圧室内のインクを加圧する圧電素子などの電気機械変換素子、或いはヒータなどの電気熱変換素子、若しくはインク流路の壁面を形成する振動板とこれに対向する電極からなるエネルギー発生手段とを備えて、エネルギー発生手段で発生したエネルギーで加圧室内のインクを加圧することによってノズルからインク滴を吐出させる。
【0005】
ここで、本発明に係る液体吐出ヘッドの主要部である電気機械変換素子は、加圧室(圧力室)を構成する基板上に振動板やバッファ層等を介して配置した下部電極(第1の電極)の上に、電気・機械変換層(電気機械変換膜)、上部電極(第2の電極)を積層したものからなる。
ただし、複数の圧力室を有する場合には、各圧力室にインク吐出の圧力を発生させるのに個別の圧電素子が配置されており、この圧電素子は電気機械変換素子と総称される。
電気機械変換素子は電気的入力を機械的な変形に変換するもので、構成は電気的入力を実行する上部、下部の電極対とその間に圧電体などの膜が挟まれた積層構造をもつ。
圧電体としてはジルコン酸チタン酸鉛(PZT)セラミックスなどが用いられ、これらは複数の金属酸化物を主成分としているので一般に金属複合酸化物と称される。
【0006】
[従来の個別圧電素子の形成方法]
下部電極上に各種の真空成膜法(例えばスパッタリング法、MO−CVD法(金属有機化合物を用いた化学的気相成長法)、真空蒸着法、イオンプレーティング法)やゾルゲル法、水熱合成法、AD(エアロゾルデポジション)法、塗布・熱分解法(MOD)などの周知の成膜技術により金属複合酸化物の圧電膜を堆積させ、引き続き、上部電極を形成した後、フォトリソグラフィー・エッチングにより、上部電極のパターニングを行い、同様に圧電膜、下部電極のパターニングを行い個別化を実施している。
【0007】
金属複合酸化物、特にPZTはドライエッチングが容易な加工材ではない。
RIE(反応性イオンエッチング)でSi半導体デバイスは容易にエッチング加工できるが、この種の材料はイオン種のプラズマエネルギーを高めるため、ICPプラズマ、ECRプラズマ、ヘリコンプラズマを併用した特殊なRIEが成される(これは製造装置のコスト高を招く)。また下地電極膜との選択比は稼げない、特に大面積基板ではエッチング速度の不均一性は致命的である。
あらかじめ、所望する部位のみに難エッチング性のPZT膜を配置すれば、上記の加工工程が省略できるが、その試みは一部を除いて成されていない。
【0008】
[個別PZT膜形成の従来例]
水熱合成法:Ti金属上にPZTが選択成長するので、Ti電極をパターニングしておけば、その部位のみにPZT膜が成長する。この方法で十分な耐圧を有するPZT膜を得るには、膜厚が5μm以上の比較的厚い膜が好ましく(これ以下の膜厚では、電界印加で容易に絶縁破壊してしまう)、所望する任意の薄膜が得られない。またSi基板上に素子を形成する場合、水熱合成が強アルカリ性の水溶液下で合成されるため、Si基板の保護が必須となる。
【0009】
真空蒸着法:有機ELの製造にシャドウマスクが用いられ、発光層のパターニングが成されているが、PZT成膜は基板温度を500〜600℃にした状態で実行される。これは圧電性出現のためには複合酸化物が結晶化している必要があり、その結晶化膜を得るのに前記の基板温度が必須となる。一般的なシャドウマスクはステンレス製であり、Si基板とステンレス材の熱膨張差から、十分なマスキングが出来ないという問題があり、また、使い捨てシャドウマスクは実現性が低い。特にMO−CVD法やスパッタリング法では堆積膜の回り込み現象が大きく、さらに不向きである。
【0010】
AD法:あらかじめフォトリソグラフィーによりレジストパターンを形成し、レジストの無い部位にPZTを成膜する方法が知られている。AD法は先述の水熱合成法と同様に厚膜に有利であり、5μm以下の薄膜には不向きである。また、レジスト膜上にもPZT膜が堆積するので、研磨処理により一部の堆積膜を除去した後、リフトオフ工程を行う。大面積の均一研磨工程も煩雑であり、さらにレジスト膜は耐熱性が無いため、室温でAD成膜を実行し、ポストアニール処理を経て、圧電性を示す膜に変換している。
【0011】
ゾルゲル法:インクジェット法で塗布する例が紹介されているが、インクジェット用のインクは粘度が低いため基板となる白金上では濡れ広がってしまう。また、一度に多くのインクを塗布するとコーヒーステイン現象によりエッジが盛り上がり、中央部が薄くなるため、厚膜を得るには不向きである。
【0012】
本発明は以上の問題点を鑑みてなされたものであり、所望の膜厚のパターン化した電気機械変換膜を製造することができる電気機械変換膜の製造方法を提供し、さらには、その電気機械変換膜の製造方法により製造された電気機械変換膜、電気機械変換膜群、前記電気機械変換膜の製造方法を用いた電気機械変換素子の製造方法、その電気機械変換素子の製造方法により製造された電気機械変換素子、電気機械変換素子群、その電気機械変換素子または電気機械変換素子群を用いた液体吐出ヘッド、その液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置、その液体吐出装置を備えた画像形成装置、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明では以下のような解決手段を採っている。
本発明の第1の解決手段は、第1の電極上に部分的に表面改質を行う工程と、前記第1の電極上にゾルゲル液をインクジェット方式により部分的に塗布する工程と、該部分的に塗布したゾルゲル液を乾燥・熱分解・結晶化する工程と、前記のゾルゲル液をインクジェット方式により部分的に塗布する工程と該部分的に塗布したゾルゲル液を乾燥・熱分解・結晶化する工程とを繰返し行い所望の膜厚を得る工程と、でゾルゲル法にて電気機械変換膜を形成する電気機械変換膜の製造方法において、前記第1の電極上にゾルゲル液をインクジェット方式により部分的に塗布する工程では、第1層目のゾルゲル液の塗布の着弾時の隣接ドットが重なるように配置され、第2層目以降のゾルゲル液の塗布量を前記第1層目のゾルゲル液の塗布量より少量とし、着弾時の隣接ドットが重ならないように配置されるようにパターン化したことを特徴とする(請求項1)。
【0014】
本発明の第2の解決手段は、第1の解決手段の電気機械変換膜の製造方法において、前記第2層目以降のゾルゲル液の塗布領域が、前記第1層目のゾルゲル液の塗布領域よりも小さいパターンで形成されたことを特徴とする(請求項2)。
また、本発明の第3の解決手段は、第1または第2の解決手段の電気機械変換膜の製造方法において、前記第1の電極上に部分的に表面改質を行う工程では、前記第1の電極の表面改質をチオール化合物により行い、その後、フォトリソグラフィー・エッチングにより部分的にチオール化合物を除去したことを特徴とする(請求項3)。
【0015】
本発明の第4の解決手段は、電気機械変換膜であって、第1〜第3のいずれか一つの解決手段の電気機械変換膜の製造方法により製造したことを特徴とする(請求項4)。
また、本発明の第5の解決手段は、電気機械変換膜群であって、第4の解決手段の電気機械変換膜を複数個並べたことを特徴とする(請求項5)。
【0016】
本発明の第6の解決手段は、電気機械変換素子の製造方法であって、第1の電極上に第1〜第3のいずれか一つの解決手段の電気機械変換膜の製造方法により電気機械変換膜を形成し、該電気機械変換膜の上に第2の電極を配置したことを特徴とする(請求項6)。
また、本発明の第7の解決手段は、第6の解決手段の電気機械変換素子の製造方法において、前記第2の電極をインクジェット方式で形成したことを特徴とする(請求項7)。
さらに本発明の第8の解決手段は、第6または第7の解決手段の電気機械変換素子の製造方法において、前記電気機械変換膜が金属の複合酸化物からなり、前記第1の電極と前記第2の電極が、白金族元素、またはその酸化物、あるいはこれら数種の積層膜からなる電極から構成されたことを特徴とする(請求項8)。
【0017】
本発明の第9の解決手段は、電気機械変換素子であって、第6〜第8のいずれか一つの解決手段の電気機械変換素子の製造方法により製造したことを特徴とする(請求項9)。
また、本発明の第10の解決手段は、電気機械変換素子群であって、第9の解決手段の電気機械変換素子を複数個並べたことを特徴とする(請求項10)。
【0018】
本発明の第11の解決手段は、液体吐出ヘッドであって、第9の解決手段の電気機械変換素子または第10の解決手段の電気機械変換素子群を用いたことを特徴とする(請求項11)。
また、本発明の第12の解決手段は、液体吐出装置であって、第11の解決手段の液体吐出ヘッドを備えたことを特徴とする(請求項12)。
さらに本発明の第13の解決手段は、画像形成装置であって、第12の解決手段の液体吐出装置を備えたことを特徴とする(請求項13)。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、ゾルゲル法にて選択的に必要部位のみにインクジェット方式で所望の膜厚まで重ね塗布を行い、所望の膜厚のパターン化した電気機械変換膜を形成することができる。
この電気機械変換膜の重ね塗布時には、2回目以降の塗布領域が1回目の塗布領域より小さくなるように重ね塗布を行い、所望の電気機械変換膜を形成することができる。
また、ゾルゲル前駆体液の選択塗布を実施するにあたり、液体の濡れ性を制御するための表面改質を行う方法を提供することができる。
本発明では、前記の電気機械変換膜に第1の電極、第2の電極膜を配置させることにより電気機械変換素子を形成することができる。
この電気機械変換素子の第2の電極はインクジェット方式で形成することができる。また、これを達成すべき好適な下部電極膜を限定している。
さらに本発明では、前記電気機械変換素子を用いた液体吐出ヘッドを提供することができ、さらには、その液体吐出ヘッドを使用した液体吐出装置を提供することができ、その液体吐出装置を備えた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】基板上の電極の表面改質の工程を説明した図である。
【図2】インクジェット法でゾルゲル液(PZT前駆体溶液)を繰り返し塗布して電気機械変換膜を製造する工程を説明した図である。
【図3】図2の製造工程に用いられるインクジェット塗布装置の一例を示す概略斜視図である。
【図4】インクジェット塗布装置により下部電極上に1層目のゾルゲル液(PZT前駆体)が塗布された状態を示す概略断面図である。
【図5】インクジェット塗布装置により2層目の1回目のゾルゲル液(PZT前駆体)が塗布された状態を示す概略断面図である。
【図6】インクジェット塗布装置により2層目の2回目のゾルゲル液(PZT前駆体)が塗布された状態を示す概略断面図である。
【図7】PZT前駆体の1層目から2層目までの塗布の状態を表した平面図である。
【図8】図2及び図4〜図6に示すような繰り返し工程で得られた電気機械変換膜を複数個平行に並べた状態を示したものであり、電気機械変換膜群の一例を示す斜視図である。
【図9】図8の電気機械変換膜のAの部分を拡大した様子を示す図である。
【図10】本発明で得られた電気機械変換膜(PZT膜)のヒステリシス曲線を表す図である。
【図11】インクジェット法で上部電極を形成する様子を示す概略断面図である。
【図12】白金膜上の接触角測定結果を表す図である。
【図13】本発明の液体吐出ヘッドの構造例を示す概略断面図である。
【図14】本発明の複数の電気機械変換素子(電気機械変換素子群)を有する液体吐出ヘッドの構造例を示す概略断面図である。
【図15】本発明の液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置を搭載した画像形成装置(インクジェット記録装置)の概略構成例を示す斜視図である。
【図16】本発明の液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置を搭載した画像形成装置(インクジェット記録装置)の構成例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明は電気機械変換素子と、その電気機械変換素子を用いた液体吐出ヘッド及びそれを使用した液体吐出装置、さらにはその液体吐出装置を備えた画像形成装置を対象としている。
上記の液体吐出装置を備えた画像形成装置は、一般的にはインクジェット記録装置と呼ばれているものであり、以下にインクジェット記録装置について説明する。
【0022】
インクジェット記録装置には、騒音が極めて小さくかつ高速印字が可能であり、更にはインクの自由度があり安価な普通紙を使用できるなど多くの利点があるために、プリンタ、ファクシミリ、複写装置、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置として広く展開されている。
インクジェット記録装置において使用する液体吐出装置は、インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室(吐出室、加圧液室、圧力室、インク流路等とも称される)と、液室内のインクを吐出するための圧力発生手段で構成されている。
【0023】
上記のような圧力発生手段としては、圧電素子などの電気機械変換素子を用いて液室(以下、吐出室とする)の壁面を形成している振動板を変形変位させることでインク滴を吐出させるピエゾ型のもの、吐出室内に配設した発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いてインクの膜沸騰でバブルを発生させてインク滴を吐出させるバブル型(サーマル型)のものなどがある。更にピエゾ型のものにはd33方向の変形を利用した縦振動型、d31方向の変形を利用した横振動(ベンドモード)型、更には剪断変形を利用したシェアモード型等があるが、最近では半導体プロセスやMEMS(micro electro mechanical systems)の進歩により、Si基板に直接液室及びピエゾ素子を作り込んだ薄膜アクチュエータが提案されている。
上記のうち本発明に係る圧力発生手段は、ピエゾ型のd31方向の変形を利用した横振動(ベンドモード)型の電気機械変換素子である。
【0024】
本発明に係る電気機械変換素子の製造方法の一例として、ゾルゲル法によりパターン化した電気機械変換膜(PZT膜)の製造方法を以下に示す。
ここでは、下地基板の濡れ性を制御したPZT前駆体液の塗り分けをする。例えば非特許文献2に示されているアルカンチオールの特定金属上に自己配列する現象を利用する。具体的には以下の通りである。
・白金族金属にチオールは自己組織化単分子膜(SAM:Self Assembled Mon-layer)を形成する。
・下部電極に白金(Pt)を用い、その全面にSAM処理を行う。
・SAM膜上はアルキル基が配置しているので、疎水性になる。
・周知のフォトリソグラフィー・エッチングにより、このSAM膜をパターニングする。
・レジスト剥離後も、パターン化SAM膜は残っているので、この部位は疎水性であり、SAMを除去した部位は白金表面なので親水性である。
・インクジェット方式により親水性の領域にPZT前駆体を塗布する。
・表面エネルギーのコントラストにより塗布領域は親水性の領域のみとなる。
・PZT前駆体はインクジェットヘッドで塗布可能なように粘度、表面張力を調整する。
・このようにして第1のパターン化PZT前駆体塗膜をインクジェット方式で形成し、通常のゾルゲルプロセスに従って熱処理を行う。2回目以降は1層目の乾燥後のPZT前駆体膜の周辺部が盛り上がるため、所定の塗布位置以外へのPZT前駆体膜の広がりは発生しない。そのため2層目以降のインクジェットでの塗布時には表面処理は必要なく、工程の短縮化が可能となる。上記の塗布を繰り返して所定のPZT前駆体膜の膜厚を得る。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の具体的な実施例に関して添付図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
[実施例1]
本発明に係るゾルゲル法による電気機械変換膜の製造方法を説明する。
図1は基板上の電極の表面改質の工程を説明した図である。図1のAの基板1には第1の電極として図示されていない白金電極がスパッタ法により表面に形成されている。図1のBは基板1の表面全体にSAM膜2が形成された状態を示す。SAM膜2はアルカンチオール液に基板1をディップして自己配列させることで得られる。ここではCH3(CH2)−SHを使用した。図1のCはPZT前駆体を形成する部分のSAM膜を除去するために(必要部分のSAM膜を保護するために)、フォトリソグラフィーによりフォトレジスト3をパターニングした状態を示している。図1のCの状態で例えば酸素プラズマを基板表面に照射することによりPZT前駆体を形成する部分のSAM膜2を除去する。その後、レジスト3を剥離した状態を図1のDに示す。本工程により形成されたSAM膜の純水に対する接触角は92度であり疎水性を示し、SAM膜を除去した基板上のPtの接触角は54度と親水性となる。本実施例ではSAM膜を酸素プラズマで除去する例を説明したが、紫外線(UV)光の照射でも良い。
【0027】
次に図2にゾルゲル液をインクジェット法により図1の工程で形成した基板上の親水部に塗布する工程を示す。図1、図2のDの工程で疎水部4と親水部5にパターニングされた基板上の白金電極の親水領域に、インクジェット塗布装置のIJヘッド250によりゾルゲル液としてPZT前駆体溶液を塗布する(図2のE〜F)。
【0028】
図3は図2の工程に用いられるインクジェット塗布装置を説明するための概略斜視図である。図3において架台200の上に、Y軸駆動手段201が設置してあり、その上に基板202を搭載するステージ203がY軸方向に駆動できるように設置されている。なおステージ203には図示されていない真空、静電気などの吸着手段が付随しており基板202が固定されている。
また、X軸支持部材204にはX軸駆動手段205が取り付けられており、これにZ軸駆動手段211上に搭載されたヘッドベース206が取り付けられており、X軸方向に移動できるようになっている。ヘッドベース206の上には溶液(PZT前駆体溶液、または後述する白金インク等)を吐出させるIJヘッド208が搭載されている。このIJヘッドには図示されていない各溶液タンクから各々溶液供給用パイプ210を通って溶液が供給される。
【0029】
ゾルゲル液であるPZT前駆体溶液は、出発材料に酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、ノルマルブトキシドジルコニウムを用いた。酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後、脱水した。化学両論組成に対し鉛量を10モル%過剰にしてある。これは熱処理中のいわゆる鉛抜けによる結晶性低下を防ぐためである。
イソプロポキシドチタン、ノルマルブトキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、先記の酢酸鉛を溶解したメトキシエタノール溶液と混合することでPZT前駆体溶液を合成した。このPZT濃度は0.1モル/リットルにした。
【0030】
一度の成膜で得られる膜厚は100nmが好ましく、前駆体濃度は成膜面積と前駆体塗布量の関係から適正化される。図2のF及び図4はインクジェット塗布装置により下部電極(第1の電極)254上に1層目のPZT前駆体膜(電気機械変換膜)50が塗布された状態を示しており、接触角のコントラストのため前駆体溶液は親水部のみに広がりパターンを形成する。また、前駆体溶液は比較的乾燥が速いためコーヒーステイン現象が発生し、図4に示すように周縁部が土手のように盛り上がる。
これを第一の加熱(溶媒乾燥)として、120℃の加熱処理後、有機物の熱分解を行い90nmの膜厚を得た。
なお、図4において、符号250はIJヘッド、251はPZT前駆体溶液、254は下部電極(第1の電極)、255は基板(Si基板等からなる圧力室基板)、50は1層目のPZT前駆体膜(電気機械変換膜)である。
【0031】
1層目のPZT前駆体膜(電気機械変換膜)形成後、引き続きインクジェット塗布装置によりPZT前駆体溶液251を塗布する(図2のD’〜F’)。2層目の塗布時は1層目のパターンを間引き、隣接するドットが塗布直後に接触しないように2回に分けて塗布する。2層目の1回目のPZT前駆体51の塗布後の状態が図5である。お互いのドットが接触しないため溶液は全体に平らになるレべリングや、乾燥時にエッジが盛り上がるコーヒーステイン現象は発生していない。また前駆体溶液は比較的乾燥が速いので、ドットの状態ではすぐに乾燥するため、ドットの移動がなく、且つ連続して2回目の塗布が可能である。2層目の2回目のPZT前駆体52の塗布が終了した状態を図6に示す。2回目の塗布は1回目の塗布で間引いたドットの位置に塗布されるが、1回目で塗布されたドットは既に乾燥しているため、ドットの移動は起こらない。このときの膜厚は180nmであった。
【0032】
図7はPZT前駆体の1層目から2層目までの塗布の状態を表した平面図である。1層目ののPZT前駆体50の塗布直後は塗布されたドットはお互いに接触しているため、レベリングによる平坦化が進む。2層目の1回目のPZT前駆体51の塗布後は隣接ドットが接触していないため、お互いがドットの形状を保ったまま乾燥する。さらにその状態で2層目の2回目のPZT前駆体52を塗布することにより1回目と同様にパターンが広がらずに全面に塗布が可能である。
また、このときに、図7に示すように2層目の1回目のPZT前駆体51の塗布領域よりも2回目のPZT前駆体52の塗布領域を小さくすることで、図4に示す1層目の土手の中にドットが打ち込まれるためにパターンの広がりを確実に防止することができる。
【0033】
前記の工程を6回繰り返し540nmの膜を得たのち、結晶化熱処理(温度700℃)をRTA(急速熱処理)にて行った。この際、膜にクラックなどの不良は生じなかった。
さらに6回のSAM膜処理→PZT前駆体の選択塗布→120℃乾燥→500℃熱分解を行い、結晶化処理をした。このようにして形成した電気機械変換膜(図2のF’に示す電気機械変換膜253)にクラックなどの不良は生じなかった。また、電気機械変換膜253の膜厚は1000nmに達した。
【0034】
図8は、図2及び図4〜図6に示すような繰り返し工程で得られたパターン化膜(電気機械変換膜)253を複数個平行に並べた状態を示したものであり、電気機械変換膜群の一例を示している。
また、図8の電気機械変換膜253のAの部分を拡大した様子を図9に示す。図7で示す繰り返し塗布を行うことにより厚さ方向にはドットがブロックのように重ねられており、形状が乱れることなく膜厚を厚くすることができる。
【0035】
この電気機械変換膜(パターン化膜)に第2の電極として上部電極(白金)を成膜し、電気機械変換素子を形成して、電気特性、電気−機械変換能(圧電定数)の評価を行った。
この電気機械変換素子の電気機械変換膜(パターン化膜)の比誘電率は1220、誘電損失は0.02、残留分極は19.3μC/cm2、抗電界は36.5kV/cmであり、通常のセラミック焼結体と同等の特性を持つ。電気機械変換膜のP−Eヒステリシス曲線を図10に示す。
電気−機械変換能は電界印加による変形量をレーザードップラー振動計で計測し、シミュレーションによる合わせ込みから算出した。その圧電定数d31は120pm/Vとなり、こちらもセラミック焼結体と同等の値であった。これは液体吐出ヘッドとして十分設計できうる特性値である。
【0036】
上部電極を配置せずに、更なる厚膜化を試みた。すなわち、6回までの熱分解アニールのたびに結晶化処理を行い、これを10回繰り返したところ、膜厚保が5μmのパターン化PZT膜(電気機械変換膜)がクラックなどの欠陥を伴わずに得られた。
【0037】
[実施例2]
電気機械変換素子の第2の電極(上部電極)の形成に図3に示すインクジェット塗布装置を用いて、図11に示すようにPZT膜上の必要な部分のみに白金インク257を塗布した。塗布するときにはPZT前駆体を塗布したときと同様に接触角のコントラストを利用して塗布領域を規定した。上部電極256は短絡を防止するためにPZT膜パターンよりも小さい領域に塗布する必要があるため、PZT膜上にも撥水部を設ける必要がある。そのため本実施例では図11に示すように白金を形成しない部分にレジスト252をパターニングして白金インク257の塗布を行い、120℃で白金を乾燥処理した後にレジスト252を剥離して最終的に250℃で焼結した。焼成後の上部電極256の膜厚は0.5ミクロンであり、比抵抗は5×10-6オーム・センチであった。
【0038】
[実施例3]
本発明の第3の実施例では、電気機械変換膜を形成する第1の電極(下部電極)に用いられる他の白金族元素の電極膜として、ルテニウム、イリジウム、ロジウムを、各々チタン密着層を配置した熱酸化膜付きシリコンウェハ上に、スパッタリングで成膜した。SAM分子や、表面改質処理方法は実施例1と同じである。また、白金族合金として白金−ロジウム(ロジウム濃度は15wt%)の成膜も行った。また、イリジウム酸化膜の上にイリジウム金属、または白金膜を配置した試料についても行った。
SAM膜除去部位の水の接触角は5°以下(完全濡れ)であり、一方、SAM膜配置部位のそれは全ての試料において90.0°を示した。図12に白金膜試料の接触角測定結果を示す。
以上の結果から、第1の電極(下部電極)には、白金族元素、またはその酸化物、あるいはこれら数種の積層膜からなる電極を用いることができる。また、第2の電極(上部電極)についても同様の電極を用いることができる。
【0039】
[実施例4]
図13に電気機械変換素子を用いた1ノズルの液体吐出ヘッドの構成例を示す。この液体吐出ヘッドは、内部に圧力室21を設けたSi基板からなる圧力室基板20の上に、振動板(例えばSiの熱酸化膜等)30と密着層(例えばチタン密着層等)41を設け、その上に下部電極(第1の電極)42と電気機械変換膜43と上部電極(第2の電極)44からなる電気機械変換素子40を設けたものであり、圧力室基板20の下部にはノズル孔11を穿孔したノズル板10が接合されている。
また、図14は、電気機械変換素子40を複数個配置した電気機械変換素子群を用いた液体吐出ヘッドの構成例を示しており、各々の吐出ヘッド部の構成は図13と同様である。
本発明によれば、図13や図14中の電気機械変換素子40が実施例1〜3で説明した簡便な製造工程で(かつバルクセラミックスと同等の性能を持つように)圧力室基板20上に形成でき、その後の圧力室21形成のための裏面からのエッチング除去の後、ノズル孔11を有するノズル板10を接合することで、液体吐出ヘッドが構成できる。なお、図13や図14中には液体供給手段、流路、流体抵抗についての記述は省略した。
【0040】
[実施例5]
次に、本発明の液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置を搭載した画像形成装置(ここではインクジェット記録装置とする)の一例について図15及び図16を参照して説明する。なお、図15は同記録装置の概略斜視図、図16は同記録装置の機構部の構成説明図である。
このインクジェット記録装置は、記録装置本体81の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ93、キャリッジ93に搭載した本発明を実施した液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド)からなる記録ヘッド94、記録ヘッド94へインクを供給するインクカートリッジ95等で構成される液体吐出装置(印字機構部)82等を収納し、装置本体81の下方部には前方側から多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい)84を抜き差し自在に装着することができ、また、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒することができ、給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、印字機構部の液体吐出装置82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に用紙83を排紙する。
【0041】
液体吐出装置(印字機構部)82は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とでキャリッジ93を主走査方向に摺動自在に保持し、このキャリッジ93にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する本発明に係る液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド)からなる記録ヘッド94を複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。またキャリッジ93には記録ヘッド94に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ95を交換可能に装着している。
【0042】
インクカートリッジ95は上方に大気と連通する大気口、下方には記録ヘッド94へインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力により記録ヘッド94へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、記録ヘッドとしてここでは各色のインクジェットヘッド94を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。
【0043】
ここで、キャリッジ93は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド91に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド92に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間にタイミングベルト100を張装し、このタイミングベルト100をキャリッジ93に固定しており、主走査モーター97の正逆回転によりキャリッジ93が往復駆動される。
【0044】
一方、給紙カセット84にセットした用紙83を記録ヘッド94の下方側に搬送するために、給紙カセット84から用紙83を分離給装する給紙ローラ101及びフリクションパッド102と、用紙83を案内するガイド部材103と、給紙された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ104と、この搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105及び搬送ローラ104からの用紙83の送り出し角度を規定する先端コロ106とを設けている。搬送ローラ104は副走査モータ107によってギヤ列を介して回転駆動される。
【0045】
そして、キャリッジ93の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ104から送り出された用紙83を記録ヘッド94の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材109を設けている。この印写受け部材109の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111と拍車112を設け、さらに用紙83を排紙トレイ86に送り出す排紙ローラ113及び拍車114と、排紙経路を形成するガイド部材115,116とを配設している。
【0046】
記録時には、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド94を駆動することにより、停止している用紙83にインクを吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83を排紙する。
また、キャリッジ93の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、記録ヘッド94の吐出不良を回復するための回復装置117を配置している。回復装置117はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ93は印字待機中にはこの回復装置117側に移動されてキャッピング手段で記録ヘッド94をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止している。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持している。
【0047】
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で記録ヘッド94の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
【0048】
このように、図15、図16に示すインクジェット記録装置においては、本発明を実施した液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド)を搭載しているので、振動板駆動不良によるインク滴吐出不良がなく、安定したインク滴吐出特性が得られて、画像品質を向上することができる。
【符号の説明】
【0049】
1:基板
2:SAM膜
3:フォトレジスト
4:疎水部
5:親水部
10:ノズル板
11:ノズル
20:圧力室基板
21:圧力室
30振動板
40:電気機械変換素子
41:密着層
42:下部電極(第1の電極)
43:電気機械変換膜
44:上部電極(第2の電極)
50:1層目のPZT前駆体(電気機械変換膜)
51:2層目の1回目のPZT前駆体(電気機械変換膜)
52:2層目の2回目のPZT前駆体(電気機械変換膜)
81:装置本体
82:印字機構部(液体吐出装置)
83:用紙
84:給紙カセット
85:手差しトレイ
86:排紙トレイ
91:主ガイドロッド
92:従ガイドロッド
93:キャリッジ93
94:記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
95:インクカートリッジ
97:主走査モータ
98:駆動プーリ
99:従動プーリ
100:タイミングベルト
101:給紙ローラ
102:フリクションパッド
103:ガイド部材
104:搬送ローラ
105:搬送コロ
106:先端コロ
107:副走査モータ
109:印写受け部材
111:搬送コロ
112:拍車
113:排紙ローラ
114:拍車
115、116:ガイド部材
117:回復装置
200:架台
202:基板
203:ステージ
204:X軸支持部材
205:X軸駆動手段
206:ヘッドベース
208:IJヘッド
210:溶液供給パイプ
250:IJヘッド
251:PZT前駆体溶液
252:フォトレジスト
253:電気機械変換膜
254:下部電極(第1の電極)
255:基板
256:上部電極(第2の電極)
257:白金インク
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特表2002−543429号公報
【特許文献2】特開平4−168277号公報
【特許文献3】特開2005−310962号公報
【特許文献4】特開2003−297825号公報
【特許文献5】WO2003/098714号公報
【特許文献6】特第4269172号公報
【非特許文献】
【0051】
【非特許文献1】K.D.Budd,S.K.Dey,D.A.Payne,Proc.Brit.Ceram.Soc.36,107(1985)
【非特許文献2】A.Kumar and G.M.Whitesides,Appl.Phys.Lett.,63,2002(1993)
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械変換膜の製造方法、その電気機械変換膜の製造方法により製造された電気機械変換膜、電気機械変換膜群、前記電気機械変換膜の製造方法を用いた電気機械変換素子の製造方法、その電気機械変換素子の製造方法により製造された電気機械変換素子、電気機械変換素子群、その電気機械変換素子または電気機械変換素子群を用いた液体吐出ヘッド、その液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置、その液体吐出装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願に関連する背景技術としては以下のようなものがある。
非特許文献1(K.D.Budd,S.K.Dey,D.A.Payne,Proc.Brit.Ceram.Soc.36,107(1985))には、ゾルゲル法による金属複合酸化物の薄膜形成に関する技術が紹介されている。
非特許文献2(A.Kumar and G.M.Whitesides,Appl.Phys.Lett.,63,2002(1993))には、Au膜上にアルカンチオールが自己組織化単分子膜(SAM:Self Assembled Mon-layer)として形成できることが記載されている。そして、この現象を用いたマイクロコンタクトプリント法でSAMパターンを転写し、その後のエッチングなどのプロセスに利用することが記載されている。
特許文献1(特表2002−543429号公報)には、SAM分子の末端を化学修飾したアルカンチオールを反応基体前面に形成し、紫外線照射により部分的にSAMを除去し、生物分子や細胞アレイを形成する技術が紹介されている。
特許文献2(特開平4−168277号公報)には、ゾルゲル法を用いて基板上に複合酸化物の厚膜を形成し、空間光変調素子やインクジェットプリンタヘッドのアクチュエータ、センサに応用することが記載されている。
特許文献3(特開2005−310962号公報)には、エネルギーの付与によって臨界表面張力が変化する材料を含み、より臨界表面張力の大きな高表面エネルギー部3とより臨界表面張力の小さな低表面エネルギー部4との少なくとも臨界表面張力の異なる2つの部位を有する濡れ性変化層2と、この濡れ性変化層2に対して高表面エネルギー部3の部位に形成された導電層5と、濡れ性変化層2に対して少なくとも低表面エネルギー部4の部位に接して設けられた半導体層6と、により積層構造体1を構成することで、印刷法のような低コストでかつ材料使用効率の高い方法で、簡便に製造できる微細な導電層パターン及び高移動度の半導体層6を有する積層構造体1を提供できるようにしたことが記載されている。
特許文献4(特開2003−297825号公報)には、二つ以上のインクジェットヘッドを持ち、異なるゾルゲル液を吐出させ、一平面内に均一に混合した強誘電体薄膜を作製する作成方法が記載されている。
特許文献5(WO2003/098714号公報)には、圧電体薄膜を用いた液体噴射ヘッドの一般的な構成が記載されている。
特許文献6(特第4269172号公報)には、インクジェットヘッド用に調製されたゾルゲル液をインクジェットヘッドで吐出させて、強誘電体膜を形成する製造方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はプリンタ、ファクシミリ、複写装置、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置として使用されるインクジェット記録装置の液体吐出装置及びその液体吐出装置に用いられる液体吐出ヘッドに関するものである。
【0004】
液体吐出ヘッドの構成は以下のようなものである。
インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する加圧室(インク流路、加圧液室、圧力室、吐出室、液室等とも称される)と、加圧室内のインクを加圧する圧電素子などの電気機械変換素子、或いはヒータなどの電気熱変換素子、若しくはインク流路の壁面を形成する振動板とこれに対向する電極からなるエネルギー発生手段とを備えて、エネルギー発生手段で発生したエネルギーで加圧室内のインクを加圧することによってノズルからインク滴を吐出させる。
【0005】
ここで、本発明に係る液体吐出ヘッドの主要部である電気機械変換素子は、加圧室(圧力室)を構成する基板上に振動板やバッファ層等を介して配置した下部電極(第1の電極)の上に、電気・機械変換層(電気機械変換膜)、上部電極(第2の電極)を積層したものからなる。
ただし、複数の圧力室を有する場合には、各圧力室にインク吐出の圧力を発生させるのに個別の圧電素子が配置されており、この圧電素子は電気機械変換素子と総称される。
電気機械変換素子は電気的入力を機械的な変形に変換するもので、構成は電気的入力を実行する上部、下部の電極対とその間に圧電体などの膜が挟まれた積層構造をもつ。
圧電体としてはジルコン酸チタン酸鉛(PZT)セラミックスなどが用いられ、これらは複数の金属酸化物を主成分としているので一般に金属複合酸化物と称される。
【0006】
[従来の個別圧電素子の形成方法]
下部電極上に各種の真空成膜法(例えばスパッタリング法、MO−CVD法(金属有機化合物を用いた化学的気相成長法)、真空蒸着法、イオンプレーティング法)やゾルゲル法、水熱合成法、AD(エアロゾルデポジション)法、塗布・熱分解法(MOD)などの周知の成膜技術により金属複合酸化物の圧電膜を堆積させ、引き続き、上部電極を形成した後、フォトリソグラフィー・エッチングにより、上部電極のパターニングを行い、同様に圧電膜、下部電極のパターニングを行い個別化を実施している。
【0007】
金属複合酸化物、特にPZTはドライエッチングが容易な加工材ではない。
RIE(反応性イオンエッチング)でSi半導体デバイスは容易にエッチング加工できるが、この種の材料はイオン種のプラズマエネルギーを高めるため、ICPプラズマ、ECRプラズマ、ヘリコンプラズマを併用した特殊なRIEが成される(これは製造装置のコスト高を招く)。また下地電極膜との選択比は稼げない、特に大面積基板ではエッチング速度の不均一性は致命的である。
あらかじめ、所望する部位のみに難エッチング性のPZT膜を配置すれば、上記の加工工程が省略できるが、その試みは一部を除いて成されていない。
【0008】
[個別PZT膜形成の従来例]
水熱合成法:Ti金属上にPZTが選択成長するので、Ti電極をパターニングしておけば、その部位のみにPZT膜が成長する。この方法で十分な耐圧を有するPZT膜を得るには、膜厚が5μm以上の比較的厚い膜が好ましく(これ以下の膜厚では、電界印加で容易に絶縁破壊してしまう)、所望する任意の薄膜が得られない。またSi基板上に素子を形成する場合、水熱合成が強アルカリ性の水溶液下で合成されるため、Si基板の保護が必須となる。
【0009】
真空蒸着法:有機ELの製造にシャドウマスクが用いられ、発光層のパターニングが成されているが、PZT成膜は基板温度を500〜600℃にした状態で実行される。これは圧電性出現のためには複合酸化物が結晶化している必要があり、その結晶化膜を得るのに前記の基板温度が必須となる。一般的なシャドウマスクはステンレス製であり、Si基板とステンレス材の熱膨張差から、十分なマスキングが出来ないという問題があり、また、使い捨てシャドウマスクは実現性が低い。特にMO−CVD法やスパッタリング法では堆積膜の回り込み現象が大きく、さらに不向きである。
【0010】
AD法:あらかじめフォトリソグラフィーによりレジストパターンを形成し、レジストの無い部位にPZTを成膜する方法が知られている。AD法は先述の水熱合成法と同様に厚膜に有利であり、5μm以下の薄膜には不向きである。また、レジスト膜上にもPZT膜が堆積するので、研磨処理により一部の堆積膜を除去した後、リフトオフ工程を行う。大面積の均一研磨工程も煩雑であり、さらにレジスト膜は耐熱性が無いため、室温でAD成膜を実行し、ポストアニール処理を経て、圧電性を示す膜に変換している。
【0011】
ゾルゲル法:インクジェット法で塗布する例が紹介されているが、インクジェット用のインクは粘度が低いため基板となる白金上では濡れ広がってしまう。また、一度に多くのインクを塗布するとコーヒーステイン現象によりエッジが盛り上がり、中央部が薄くなるため、厚膜を得るには不向きである。
【0012】
本発明は以上の問題点を鑑みてなされたものであり、所望の膜厚のパターン化した電気機械変換膜を製造することができる電気機械変換膜の製造方法を提供し、さらには、その電気機械変換膜の製造方法により製造された電気機械変換膜、電気機械変換膜群、前記電気機械変換膜の製造方法を用いた電気機械変換素子の製造方法、その電気機械変換素子の製造方法により製造された電気機械変換素子、電気機械変換素子群、その電気機械変換素子または電気機械変換素子群を用いた液体吐出ヘッド、その液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置、その液体吐出装置を備えた画像形成装置、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明では以下のような解決手段を採っている。
本発明の第1の解決手段は、第1の電極上に部分的に表面改質を行う工程と、前記第1の電極上にゾルゲル液をインクジェット方式により部分的に塗布する工程と、該部分的に塗布したゾルゲル液を乾燥・熱分解・結晶化する工程と、前記のゾルゲル液をインクジェット方式により部分的に塗布する工程と該部分的に塗布したゾルゲル液を乾燥・熱分解・結晶化する工程とを繰返し行い所望の膜厚を得る工程と、でゾルゲル法にて電気機械変換膜を形成する電気機械変換膜の製造方法において、前記第1の電極上にゾルゲル液をインクジェット方式により部分的に塗布する工程では、第1層目のゾルゲル液の塗布の着弾時の隣接ドットが重なるように配置され、第2層目以降のゾルゲル液の塗布量を前記第1層目のゾルゲル液の塗布量より少量とし、着弾時の隣接ドットが重ならないように配置されるようにパターン化したことを特徴とする(請求項1)。
【0014】
本発明の第2の解決手段は、第1の解決手段の電気機械変換膜の製造方法において、前記第2層目以降のゾルゲル液の塗布領域が、前記第1層目のゾルゲル液の塗布領域よりも小さいパターンで形成されたことを特徴とする(請求項2)。
また、本発明の第3の解決手段は、第1または第2の解決手段の電気機械変換膜の製造方法において、前記第1の電極上に部分的に表面改質を行う工程では、前記第1の電極の表面改質をチオール化合物により行い、その後、フォトリソグラフィー・エッチングにより部分的にチオール化合物を除去したことを特徴とする(請求項3)。
【0015】
本発明の第4の解決手段は、電気機械変換膜であって、第1〜第3のいずれか一つの解決手段の電気機械変換膜の製造方法により製造したことを特徴とする(請求項4)。
また、本発明の第5の解決手段は、電気機械変換膜群であって、第4の解決手段の電気機械変換膜を複数個並べたことを特徴とする(請求項5)。
【0016】
本発明の第6の解決手段は、電気機械変換素子の製造方法であって、第1の電極上に第1〜第3のいずれか一つの解決手段の電気機械変換膜の製造方法により電気機械変換膜を形成し、該電気機械変換膜の上に第2の電極を配置したことを特徴とする(請求項6)。
また、本発明の第7の解決手段は、第6の解決手段の電気機械変換素子の製造方法において、前記第2の電極をインクジェット方式で形成したことを特徴とする(請求項7)。
さらに本発明の第8の解決手段は、第6または第7の解決手段の電気機械変換素子の製造方法において、前記電気機械変換膜が金属の複合酸化物からなり、前記第1の電極と前記第2の電極が、白金族元素、またはその酸化物、あるいはこれら数種の積層膜からなる電極から構成されたことを特徴とする(請求項8)。
【0017】
本発明の第9の解決手段は、電気機械変換素子であって、第6〜第8のいずれか一つの解決手段の電気機械変換素子の製造方法により製造したことを特徴とする(請求項9)。
また、本発明の第10の解決手段は、電気機械変換素子群であって、第9の解決手段の電気機械変換素子を複数個並べたことを特徴とする(請求項10)。
【0018】
本発明の第11の解決手段は、液体吐出ヘッドであって、第9の解決手段の電気機械変換素子または第10の解決手段の電気機械変換素子群を用いたことを特徴とする(請求項11)。
また、本発明の第12の解決手段は、液体吐出装置であって、第11の解決手段の液体吐出ヘッドを備えたことを特徴とする(請求項12)。
さらに本発明の第13の解決手段は、画像形成装置であって、第12の解決手段の液体吐出装置を備えたことを特徴とする(請求項13)。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、ゾルゲル法にて選択的に必要部位のみにインクジェット方式で所望の膜厚まで重ね塗布を行い、所望の膜厚のパターン化した電気機械変換膜を形成することができる。
この電気機械変換膜の重ね塗布時には、2回目以降の塗布領域が1回目の塗布領域より小さくなるように重ね塗布を行い、所望の電気機械変換膜を形成することができる。
また、ゾルゲル前駆体液の選択塗布を実施するにあたり、液体の濡れ性を制御するための表面改質を行う方法を提供することができる。
本発明では、前記の電気機械変換膜に第1の電極、第2の電極膜を配置させることにより電気機械変換素子を形成することができる。
この電気機械変換素子の第2の電極はインクジェット方式で形成することができる。また、これを達成すべき好適な下部電極膜を限定している。
さらに本発明では、前記電気機械変換素子を用いた液体吐出ヘッドを提供することができ、さらには、その液体吐出ヘッドを使用した液体吐出装置を提供することができ、その液体吐出装置を備えた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】基板上の電極の表面改質の工程を説明した図である。
【図2】インクジェット法でゾルゲル液(PZT前駆体溶液)を繰り返し塗布して電気機械変換膜を製造する工程を説明した図である。
【図3】図2の製造工程に用いられるインクジェット塗布装置の一例を示す概略斜視図である。
【図4】インクジェット塗布装置により下部電極上に1層目のゾルゲル液(PZT前駆体)が塗布された状態を示す概略断面図である。
【図5】インクジェット塗布装置により2層目の1回目のゾルゲル液(PZT前駆体)が塗布された状態を示す概略断面図である。
【図6】インクジェット塗布装置により2層目の2回目のゾルゲル液(PZT前駆体)が塗布された状態を示す概略断面図である。
【図7】PZT前駆体の1層目から2層目までの塗布の状態を表した平面図である。
【図8】図2及び図4〜図6に示すような繰り返し工程で得られた電気機械変換膜を複数個平行に並べた状態を示したものであり、電気機械変換膜群の一例を示す斜視図である。
【図9】図8の電気機械変換膜のAの部分を拡大した様子を示す図である。
【図10】本発明で得られた電気機械変換膜(PZT膜)のヒステリシス曲線を表す図である。
【図11】インクジェット法で上部電極を形成する様子を示す概略断面図である。
【図12】白金膜上の接触角測定結果を表す図である。
【図13】本発明の液体吐出ヘッドの構造例を示す概略断面図である。
【図14】本発明の複数の電気機械変換素子(電気機械変換素子群)を有する液体吐出ヘッドの構造例を示す概略断面図である。
【図15】本発明の液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置を搭載した画像形成装置(インクジェット記録装置)の概略構成例を示す斜視図である。
【図16】本発明の液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置を搭載した画像形成装置(インクジェット記録装置)の構成例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明は電気機械変換素子と、その電気機械変換素子を用いた液体吐出ヘッド及びそれを使用した液体吐出装置、さらにはその液体吐出装置を備えた画像形成装置を対象としている。
上記の液体吐出装置を備えた画像形成装置は、一般的にはインクジェット記録装置と呼ばれているものであり、以下にインクジェット記録装置について説明する。
【0022】
インクジェット記録装置には、騒音が極めて小さくかつ高速印字が可能であり、更にはインクの自由度があり安価な普通紙を使用できるなど多くの利点があるために、プリンタ、ファクシミリ、複写装置、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置として広く展開されている。
インクジェット記録装置において使用する液体吐出装置は、インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室(吐出室、加圧液室、圧力室、インク流路等とも称される)と、液室内のインクを吐出するための圧力発生手段で構成されている。
【0023】
上記のような圧力発生手段としては、圧電素子などの電気機械変換素子を用いて液室(以下、吐出室とする)の壁面を形成している振動板を変形変位させることでインク滴を吐出させるピエゾ型のもの、吐出室内に配設した発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いてインクの膜沸騰でバブルを発生させてインク滴を吐出させるバブル型(サーマル型)のものなどがある。更にピエゾ型のものにはd33方向の変形を利用した縦振動型、d31方向の変形を利用した横振動(ベンドモード)型、更には剪断変形を利用したシェアモード型等があるが、最近では半導体プロセスやMEMS(micro electro mechanical systems)の進歩により、Si基板に直接液室及びピエゾ素子を作り込んだ薄膜アクチュエータが提案されている。
上記のうち本発明に係る圧力発生手段は、ピエゾ型のd31方向の変形を利用した横振動(ベンドモード)型の電気機械変換素子である。
【0024】
本発明に係る電気機械変換素子の製造方法の一例として、ゾルゲル法によりパターン化した電気機械変換膜(PZT膜)の製造方法を以下に示す。
ここでは、下地基板の濡れ性を制御したPZT前駆体液の塗り分けをする。例えば非特許文献2に示されているアルカンチオールの特定金属上に自己配列する現象を利用する。具体的には以下の通りである。
・白金族金属にチオールは自己組織化単分子膜(SAM:Self Assembled Mon-layer)を形成する。
・下部電極に白金(Pt)を用い、その全面にSAM処理を行う。
・SAM膜上はアルキル基が配置しているので、疎水性になる。
・周知のフォトリソグラフィー・エッチングにより、このSAM膜をパターニングする。
・レジスト剥離後も、パターン化SAM膜は残っているので、この部位は疎水性であり、SAMを除去した部位は白金表面なので親水性である。
・インクジェット方式により親水性の領域にPZT前駆体を塗布する。
・表面エネルギーのコントラストにより塗布領域は親水性の領域のみとなる。
・PZT前駆体はインクジェットヘッドで塗布可能なように粘度、表面張力を調整する。
・このようにして第1のパターン化PZT前駆体塗膜をインクジェット方式で形成し、通常のゾルゲルプロセスに従って熱処理を行う。2回目以降は1層目の乾燥後のPZT前駆体膜の周辺部が盛り上がるため、所定の塗布位置以外へのPZT前駆体膜の広がりは発生しない。そのため2層目以降のインクジェットでの塗布時には表面処理は必要なく、工程の短縮化が可能となる。上記の塗布を繰り返して所定のPZT前駆体膜の膜厚を得る。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の具体的な実施例に関して添付図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
[実施例1]
本発明に係るゾルゲル法による電気機械変換膜の製造方法を説明する。
図1は基板上の電極の表面改質の工程を説明した図である。図1のAの基板1には第1の電極として図示されていない白金電極がスパッタ法により表面に形成されている。図1のBは基板1の表面全体にSAM膜2が形成された状態を示す。SAM膜2はアルカンチオール液に基板1をディップして自己配列させることで得られる。ここではCH3(CH2)−SHを使用した。図1のCはPZT前駆体を形成する部分のSAM膜を除去するために(必要部分のSAM膜を保護するために)、フォトリソグラフィーによりフォトレジスト3をパターニングした状態を示している。図1のCの状態で例えば酸素プラズマを基板表面に照射することによりPZT前駆体を形成する部分のSAM膜2を除去する。その後、レジスト3を剥離した状態を図1のDに示す。本工程により形成されたSAM膜の純水に対する接触角は92度であり疎水性を示し、SAM膜を除去した基板上のPtの接触角は54度と親水性となる。本実施例ではSAM膜を酸素プラズマで除去する例を説明したが、紫外線(UV)光の照射でも良い。
【0027】
次に図2にゾルゲル液をインクジェット法により図1の工程で形成した基板上の親水部に塗布する工程を示す。図1、図2のDの工程で疎水部4と親水部5にパターニングされた基板上の白金電極の親水領域に、インクジェット塗布装置のIJヘッド250によりゾルゲル液としてPZT前駆体溶液を塗布する(図2のE〜F)。
【0028】
図3は図2の工程に用いられるインクジェット塗布装置を説明するための概略斜視図である。図3において架台200の上に、Y軸駆動手段201が設置してあり、その上に基板202を搭載するステージ203がY軸方向に駆動できるように設置されている。なおステージ203には図示されていない真空、静電気などの吸着手段が付随しており基板202が固定されている。
また、X軸支持部材204にはX軸駆動手段205が取り付けられており、これにZ軸駆動手段211上に搭載されたヘッドベース206が取り付けられており、X軸方向に移動できるようになっている。ヘッドベース206の上には溶液(PZT前駆体溶液、または後述する白金インク等)を吐出させるIJヘッド208が搭載されている。このIJヘッドには図示されていない各溶液タンクから各々溶液供給用パイプ210を通って溶液が供給される。
【0029】
ゾルゲル液であるPZT前駆体溶液は、出発材料に酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、ノルマルブトキシドジルコニウムを用いた。酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後、脱水した。化学両論組成に対し鉛量を10モル%過剰にしてある。これは熱処理中のいわゆる鉛抜けによる結晶性低下を防ぐためである。
イソプロポキシドチタン、ノルマルブトキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、先記の酢酸鉛を溶解したメトキシエタノール溶液と混合することでPZT前駆体溶液を合成した。このPZT濃度は0.1モル/リットルにした。
【0030】
一度の成膜で得られる膜厚は100nmが好ましく、前駆体濃度は成膜面積と前駆体塗布量の関係から適正化される。図2のF及び図4はインクジェット塗布装置により下部電極(第1の電極)254上に1層目のPZT前駆体膜(電気機械変換膜)50が塗布された状態を示しており、接触角のコントラストのため前駆体溶液は親水部のみに広がりパターンを形成する。また、前駆体溶液は比較的乾燥が速いためコーヒーステイン現象が発生し、図4に示すように周縁部が土手のように盛り上がる。
これを第一の加熱(溶媒乾燥)として、120℃の加熱処理後、有機物の熱分解を行い90nmの膜厚を得た。
なお、図4において、符号250はIJヘッド、251はPZT前駆体溶液、254は下部電極(第1の電極)、255は基板(Si基板等からなる圧力室基板)、50は1層目のPZT前駆体膜(電気機械変換膜)である。
【0031】
1層目のPZT前駆体膜(電気機械変換膜)形成後、引き続きインクジェット塗布装置によりPZT前駆体溶液251を塗布する(図2のD’〜F’)。2層目の塗布時は1層目のパターンを間引き、隣接するドットが塗布直後に接触しないように2回に分けて塗布する。2層目の1回目のPZT前駆体51の塗布後の状態が図5である。お互いのドットが接触しないため溶液は全体に平らになるレべリングや、乾燥時にエッジが盛り上がるコーヒーステイン現象は発生していない。また前駆体溶液は比較的乾燥が速いので、ドットの状態ではすぐに乾燥するため、ドットの移動がなく、且つ連続して2回目の塗布が可能である。2層目の2回目のPZT前駆体52の塗布が終了した状態を図6に示す。2回目の塗布は1回目の塗布で間引いたドットの位置に塗布されるが、1回目で塗布されたドットは既に乾燥しているため、ドットの移動は起こらない。このときの膜厚は180nmであった。
【0032】
図7はPZT前駆体の1層目から2層目までの塗布の状態を表した平面図である。1層目ののPZT前駆体50の塗布直後は塗布されたドットはお互いに接触しているため、レベリングによる平坦化が進む。2層目の1回目のPZT前駆体51の塗布後は隣接ドットが接触していないため、お互いがドットの形状を保ったまま乾燥する。さらにその状態で2層目の2回目のPZT前駆体52を塗布することにより1回目と同様にパターンが広がらずに全面に塗布が可能である。
また、このときに、図7に示すように2層目の1回目のPZT前駆体51の塗布領域よりも2回目のPZT前駆体52の塗布領域を小さくすることで、図4に示す1層目の土手の中にドットが打ち込まれるためにパターンの広がりを確実に防止することができる。
【0033】
前記の工程を6回繰り返し540nmの膜を得たのち、結晶化熱処理(温度700℃)をRTA(急速熱処理)にて行った。この際、膜にクラックなどの不良は生じなかった。
さらに6回のSAM膜処理→PZT前駆体の選択塗布→120℃乾燥→500℃熱分解を行い、結晶化処理をした。このようにして形成した電気機械変換膜(図2のF’に示す電気機械変換膜253)にクラックなどの不良は生じなかった。また、電気機械変換膜253の膜厚は1000nmに達した。
【0034】
図8は、図2及び図4〜図6に示すような繰り返し工程で得られたパターン化膜(電気機械変換膜)253を複数個平行に並べた状態を示したものであり、電気機械変換膜群の一例を示している。
また、図8の電気機械変換膜253のAの部分を拡大した様子を図9に示す。図7で示す繰り返し塗布を行うことにより厚さ方向にはドットがブロックのように重ねられており、形状が乱れることなく膜厚を厚くすることができる。
【0035】
この電気機械変換膜(パターン化膜)に第2の電極として上部電極(白金)を成膜し、電気機械変換素子を形成して、電気特性、電気−機械変換能(圧電定数)の評価を行った。
この電気機械変換素子の電気機械変換膜(パターン化膜)の比誘電率は1220、誘電損失は0.02、残留分極は19.3μC/cm2、抗電界は36.5kV/cmであり、通常のセラミック焼結体と同等の特性を持つ。電気機械変換膜のP−Eヒステリシス曲線を図10に示す。
電気−機械変換能は電界印加による変形量をレーザードップラー振動計で計測し、シミュレーションによる合わせ込みから算出した。その圧電定数d31は120pm/Vとなり、こちらもセラミック焼結体と同等の値であった。これは液体吐出ヘッドとして十分設計できうる特性値である。
【0036】
上部電極を配置せずに、更なる厚膜化を試みた。すなわち、6回までの熱分解アニールのたびに結晶化処理を行い、これを10回繰り返したところ、膜厚保が5μmのパターン化PZT膜(電気機械変換膜)がクラックなどの欠陥を伴わずに得られた。
【0037】
[実施例2]
電気機械変換素子の第2の電極(上部電極)の形成に図3に示すインクジェット塗布装置を用いて、図11に示すようにPZT膜上の必要な部分のみに白金インク257を塗布した。塗布するときにはPZT前駆体を塗布したときと同様に接触角のコントラストを利用して塗布領域を規定した。上部電極256は短絡を防止するためにPZT膜パターンよりも小さい領域に塗布する必要があるため、PZT膜上にも撥水部を設ける必要がある。そのため本実施例では図11に示すように白金を形成しない部分にレジスト252をパターニングして白金インク257の塗布を行い、120℃で白金を乾燥処理した後にレジスト252を剥離して最終的に250℃で焼結した。焼成後の上部電極256の膜厚は0.5ミクロンであり、比抵抗は5×10-6オーム・センチであった。
【0038】
[実施例3]
本発明の第3の実施例では、電気機械変換膜を形成する第1の電極(下部電極)に用いられる他の白金族元素の電極膜として、ルテニウム、イリジウム、ロジウムを、各々チタン密着層を配置した熱酸化膜付きシリコンウェハ上に、スパッタリングで成膜した。SAM分子や、表面改質処理方法は実施例1と同じである。また、白金族合金として白金−ロジウム(ロジウム濃度は15wt%)の成膜も行った。また、イリジウム酸化膜の上にイリジウム金属、または白金膜を配置した試料についても行った。
SAM膜除去部位の水の接触角は5°以下(完全濡れ)であり、一方、SAM膜配置部位のそれは全ての試料において90.0°を示した。図12に白金膜試料の接触角測定結果を示す。
以上の結果から、第1の電極(下部電極)には、白金族元素、またはその酸化物、あるいはこれら数種の積層膜からなる電極を用いることができる。また、第2の電極(上部電極)についても同様の電極を用いることができる。
【0039】
[実施例4]
図13に電気機械変換素子を用いた1ノズルの液体吐出ヘッドの構成例を示す。この液体吐出ヘッドは、内部に圧力室21を設けたSi基板からなる圧力室基板20の上に、振動板(例えばSiの熱酸化膜等)30と密着層(例えばチタン密着層等)41を設け、その上に下部電極(第1の電極)42と電気機械変換膜43と上部電極(第2の電極)44からなる電気機械変換素子40を設けたものであり、圧力室基板20の下部にはノズル孔11を穿孔したノズル板10が接合されている。
また、図14は、電気機械変換素子40を複数個配置した電気機械変換素子群を用いた液体吐出ヘッドの構成例を示しており、各々の吐出ヘッド部の構成は図13と同様である。
本発明によれば、図13や図14中の電気機械変換素子40が実施例1〜3で説明した簡便な製造工程で(かつバルクセラミックスと同等の性能を持つように)圧力室基板20上に形成でき、その後の圧力室21形成のための裏面からのエッチング除去の後、ノズル孔11を有するノズル板10を接合することで、液体吐出ヘッドが構成できる。なお、図13や図14中には液体供給手段、流路、流体抵抗についての記述は省略した。
【0040】
[実施例5]
次に、本発明の液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置を搭載した画像形成装置(ここではインクジェット記録装置とする)の一例について図15及び図16を参照して説明する。なお、図15は同記録装置の概略斜視図、図16は同記録装置の機構部の構成説明図である。
このインクジェット記録装置は、記録装置本体81の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ93、キャリッジ93に搭載した本発明を実施した液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド)からなる記録ヘッド94、記録ヘッド94へインクを供給するインクカートリッジ95等で構成される液体吐出装置(印字機構部)82等を収納し、装置本体81の下方部には前方側から多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい)84を抜き差し自在に装着することができ、また、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒することができ、給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、印字機構部の液体吐出装置82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に用紙83を排紙する。
【0041】
液体吐出装置(印字機構部)82は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とでキャリッジ93を主走査方向に摺動自在に保持し、このキャリッジ93にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する本発明に係る液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド)からなる記録ヘッド94を複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。またキャリッジ93には記録ヘッド94に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ95を交換可能に装着している。
【0042】
インクカートリッジ95は上方に大気と連通する大気口、下方には記録ヘッド94へインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力により記録ヘッド94へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、記録ヘッドとしてここでは各色のインクジェットヘッド94を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。
【0043】
ここで、キャリッジ93は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド91に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド92に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間にタイミングベルト100を張装し、このタイミングベルト100をキャリッジ93に固定しており、主走査モーター97の正逆回転によりキャリッジ93が往復駆動される。
【0044】
一方、給紙カセット84にセットした用紙83を記録ヘッド94の下方側に搬送するために、給紙カセット84から用紙83を分離給装する給紙ローラ101及びフリクションパッド102と、用紙83を案内するガイド部材103と、給紙された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ104と、この搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105及び搬送ローラ104からの用紙83の送り出し角度を規定する先端コロ106とを設けている。搬送ローラ104は副走査モータ107によってギヤ列を介して回転駆動される。
【0045】
そして、キャリッジ93の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ104から送り出された用紙83を記録ヘッド94の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材109を設けている。この印写受け部材109の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111と拍車112を設け、さらに用紙83を排紙トレイ86に送り出す排紙ローラ113及び拍車114と、排紙経路を形成するガイド部材115,116とを配設している。
【0046】
記録時には、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド94を駆動することにより、停止している用紙83にインクを吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83を排紙する。
また、キャリッジ93の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、記録ヘッド94の吐出不良を回復するための回復装置117を配置している。回復装置117はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ93は印字待機中にはこの回復装置117側に移動されてキャッピング手段で記録ヘッド94をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止している。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持している。
【0047】
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で記録ヘッド94の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
【0048】
このように、図15、図16に示すインクジェット記録装置においては、本発明を実施した液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド)を搭載しているので、振動板駆動不良によるインク滴吐出不良がなく、安定したインク滴吐出特性が得られて、画像品質を向上することができる。
【符号の説明】
【0049】
1:基板
2:SAM膜
3:フォトレジスト
4:疎水部
5:親水部
10:ノズル板
11:ノズル
20:圧力室基板
21:圧力室
30振動板
40:電気機械変換素子
41:密着層
42:下部電極(第1の電極)
43:電気機械変換膜
44:上部電極(第2の電極)
50:1層目のPZT前駆体(電気機械変換膜)
51:2層目の1回目のPZT前駆体(電気機械変換膜)
52:2層目の2回目のPZT前駆体(電気機械変換膜)
81:装置本体
82:印字機構部(液体吐出装置)
83:用紙
84:給紙カセット
85:手差しトレイ
86:排紙トレイ
91:主ガイドロッド
92:従ガイドロッド
93:キャリッジ93
94:記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
95:インクカートリッジ
97:主走査モータ
98:駆動プーリ
99:従動プーリ
100:タイミングベルト
101:給紙ローラ
102:フリクションパッド
103:ガイド部材
104:搬送ローラ
105:搬送コロ
106:先端コロ
107:副走査モータ
109:印写受け部材
111:搬送コロ
112:拍車
113:排紙ローラ
114:拍車
115、116:ガイド部材
117:回復装置
200:架台
202:基板
203:ステージ
204:X軸支持部材
205:X軸駆動手段
206:ヘッドベース
208:IJヘッド
210:溶液供給パイプ
250:IJヘッド
251:PZT前駆体溶液
252:フォトレジスト
253:電気機械変換膜
254:下部電極(第1の電極)
255:基板
256:上部電極(第2の電極)
257:白金インク
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特表2002−543429号公報
【特許文献2】特開平4−168277号公報
【特許文献3】特開2005−310962号公報
【特許文献4】特開2003−297825号公報
【特許文献5】WO2003/098714号公報
【特許文献6】特第4269172号公報
【非特許文献】
【0051】
【非特許文献1】K.D.Budd,S.K.Dey,D.A.Payne,Proc.Brit.Ceram.Soc.36,107(1985)
【非特許文献2】A.Kumar and G.M.Whitesides,Appl.Phys.Lett.,63,2002(1993)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極上に部分的に表面改質を行う工程と、
前記第1の電極上にゾルゲル液をインクジェット方式により部分的に塗布する工程と、該部分的に塗布したゾルゲル液を乾燥・熱分解・結晶化する工程と、
前記のゾルゲル液をインクジェット方式により部分的に塗布する工程と該部分的に塗布したゾルゲル液を乾燥・熱分解・結晶化する工程とを繰返し行い所望の膜厚を得る工程と、
でゾルゲル法にて電気機械変換膜を形成する電気機械変換膜の製造方法において、
前記第1の電極上にゾルゲル液をインクジェット方式により部分的に塗布する工程では、第1層目のゾルゲル液の塗布の着弾時の隣接ドットが重なるように配置され、第2層目以降のゾルゲル液の塗布量を前記第1層目のゾルゲル液の塗布量より少量とし、着弾時の隣接ドットが重ならないように配置されるようにパターン化したことを特徴とする電気機械変換膜の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の電気機械変換膜の製造方法において、
前記第2層目以降のゾルゲル液の塗布領域が、前記第1層目のゾルゲル液の塗布領域よりも小さいパターンで形成されたことを特徴とする電気機械変換膜の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の電気機械変換膜の製造方法において、
前記第1の電極上に部分的に表面改質を行う工程では、前記第1の電極の表面改質をチオール化合物により行い、その後、フォトリソグラフィー・エッチングにより部分的にチオール化合物を除去したことを特徴とする電気機械変換膜の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の電気機械変換膜の製造方法により製造したことを特徴とする電気機械変換膜。
【請求項5】
請求項4記載の電気機械変換膜を複数個並べたことを特徴とする電気機械変換膜群。
【請求項6】
第1の電極上に請求項1〜3のいずれか一つに記載の電気機械変換膜の製造方法により電気機械変換膜を形成し、該電気機械変換膜の上に第2の電極を配置したことを特徴とする電気機械変換素子の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の電気機械変換素子の製造方法において、
前記第2の電極をインクジェット方式で形成したことを特徴とする電気機械変換素子の製造方法。
【請求項8】
請求項6または7記載の電気機械変換素子の製造方法において、
前記電気機械変換膜が金属の複合酸化物からなり、前記第1の電極と前記第2の電極が、白金族元素、またはその酸化物、あるいはこれら数種の積層膜からなる電極から構成されたことを特徴とする電気機械変換素子の製造方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一つに記載の電気機械変換素子の製造方法により製造したことを特徴とする電気機械変換素子。
【請求項10】
請求項9記載の電気機械変換素子を複数個並べたことを特徴とする電気機械変換素子群。
【請求項11】
請求項9記載の電気機械変換素子または請求項10記載の電気機械変換素子群を用いたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項12】
請求項11記載の液体吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項13】
請求項12記載の液体吐出装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
第1の電極上に部分的に表面改質を行う工程と、
前記第1の電極上にゾルゲル液をインクジェット方式により部分的に塗布する工程と、該部分的に塗布したゾルゲル液を乾燥・熱分解・結晶化する工程と、
前記のゾルゲル液をインクジェット方式により部分的に塗布する工程と該部分的に塗布したゾルゲル液を乾燥・熱分解・結晶化する工程とを繰返し行い所望の膜厚を得る工程と、
でゾルゲル法にて電気機械変換膜を形成する電気機械変換膜の製造方法において、
前記第1の電極上にゾルゲル液をインクジェット方式により部分的に塗布する工程では、第1層目のゾルゲル液の塗布の着弾時の隣接ドットが重なるように配置され、第2層目以降のゾルゲル液の塗布量を前記第1層目のゾルゲル液の塗布量より少量とし、着弾時の隣接ドットが重ならないように配置されるようにパターン化したことを特徴とする電気機械変換膜の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の電気機械変換膜の製造方法において、
前記第2層目以降のゾルゲル液の塗布領域が、前記第1層目のゾルゲル液の塗布領域よりも小さいパターンで形成されたことを特徴とする電気機械変換膜の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の電気機械変換膜の製造方法において、
前記第1の電極上に部分的に表面改質を行う工程では、前記第1の電極の表面改質をチオール化合物により行い、その後、フォトリソグラフィー・エッチングにより部分的にチオール化合物を除去したことを特徴とする電気機械変換膜の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の電気機械変換膜の製造方法により製造したことを特徴とする電気機械変換膜。
【請求項5】
請求項4記載の電気機械変換膜を複数個並べたことを特徴とする電気機械変換膜群。
【請求項6】
第1の電極上に請求項1〜3のいずれか一つに記載の電気機械変換膜の製造方法により電気機械変換膜を形成し、該電気機械変換膜の上に第2の電極を配置したことを特徴とする電気機械変換素子の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の電気機械変換素子の製造方法において、
前記第2の電極をインクジェット方式で形成したことを特徴とする電気機械変換素子の製造方法。
【請求項8】
請求項6または7記載の電気機械変換素子の製造方法において、
前記電気機械変換膜が金属の複合酸化物からなり、前記第1の電極と前記第2の電極が、白金族元素、またはその酸化物、あるいはこれら数種の積層膜からなる電極から構成されたことを特徴とする電気機械変換素子の製造方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一つに記載の電気機械変換素子の製造方法により製造したことを特徴とする電気機械変換素子。
【請求項10】
請求項9記載の電気機械変換素子を複数個並べたことを特徴とする電気機械変換素子群。
【請求項11】
請求項9記載の電気機械変換素子または請求項10記載の電気機械変換素子群を用いたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項12】
請求項11記載の液体吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項13】
請求項12記載の液体吐出装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−146601(P2011−146601A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7431(P2010−7431)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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