説明

電気泳動表示装置の駆動方法、電気泳動表示装置、電気泳動表示装置の制御回路、及び電子機器

【課題】電気泳動表示装置の保持容量の電圧降下を温度にかかわらず所定範囲に抑える。
【解決手段】電気泳動表示装置の駆動方法は、複数の走査線(40)及び複数のデータ線(50)の交差に対応して夫々規定された複数の画素(20)からなる表示部(3)と、環境温度を検出する温度検出手段(111)とを備え、複数の画素の各々は、互いに対向して配置された画素電極(21)及び対向電極(22)間に配置され、電気泳動粒子を含む電気泳動素子(23)と、画素電極に電気的に接続され、画素電極に供給される画像信号を一時的に保持する保持容量(27)とを有する電気泳動表示装置(1)の駆動方法である。該駆動方法では、検出された環境温度が第1温度である場合、1フレーム期間が第1時間とされ、検出された環境温度が、第1温度よりも高い第2温度である場合、1フレーム期間が、第1時間よりも短い第2時間とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置の駆動方法、該駆動方法により駆動される電気泳動表示装置、該電気泳動表示装置の制御回路、及び該電気泳動表示装置を備える電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の駆動方法では、電気泳動表示装置に表示される画像の品質向上が図られる。例えば、特許文献1には、予め記憶された温度と基準駆動電圧との変換表に基づいて、データ線駆動電圧電源に対して基準駆動電圧の設定指示を行う駆動方法が記載されている。
【0003】
また、この種の駆動方法により駆動される電気泳動表示装置として、各画素部に保持容量としてのキャパシタを備え、該キャパシタに蓄えられた電荷により電気泳動素子が駆動される装置が提案されている。尚、この種の電気泳動表示装置では、該電気泳動表示装置に表示される画像が、複数回の書き込みによって書き換えられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4196615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気泳動素子を構成する電気泳動材料の電気抵抗は温度に依って変化する。すると、時定数が変化し、保持容量の両端の電位差の降下(即ち、電圧降下)スピードが変化する。具体的には、高温では電気泳動材料の電気抵抗が低くなり、時定数が短くなり、電圧降下が早くなる。他方、低温では電気泳動材料の電気抵抗が高くなり、時定数が長くなり、電圧降下が遅くなる。
【0006】
上述の特許文献1では、保持容量の電圧降下については考慮されていない。すると、高温では、例えば保持容量等に電圧を印加している期間が長くなる(即ち、画像の書き換え期間が長くなる)可能性があるという技術的問題点がある。他方、低温では、保持容量の電圧がほとんど降下していないにもかかわらず、該保持容量の再充電が行われるため、電力が過剰に消費される可能性があるという技術的問題点がある。
【0007】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、温度にかかわらず、保持容量の電圧降下を所定範囲に抑えることができる電気泳動表示装置の駆動方法、電気泳動表示装置、電気泳動表示装置の制御回路、及び電子機器を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電気泳動表示装置の駆動方法は、上記課題を解決するために、互いに交差するように設けられた複数の走査線及び複数のデータ線の交差に対応して夫々規定された複数の画素からなる表示部と、環境温度を検出する温度検出手段とを備え、前記複数の画素の各々は、互いに対向して配置された画素電極及び対向電極と、前記画素電極及び前記対向電極間に配置され、電気泳動粒子を含む電気泳動素子と、前記画素電極に電気的に接続され、前記画素電極に供給される画像信号を一時的に保持する保持容量と、を有する電気泳動表示装置の駆動方法であって、前記検出された環境温度が第1温度である場合、前記複数の走査線の各々が1回ずつ選択される期間である1フレーム期間を、第1時間とし、前記検出された環境温度が、前記第1温度よりも高い第2温度である場合、前記1フレーム期間を、前記第1時間よりも短い第2時間とする。
【0009】
本発明の電気泳動表示装置の駆動方法によれば、当該駆動方法により駆動される電気泳動表示装置は、互いに交差するように設けられた複数の走査線及び複数のデータ線の交差に対応して夫々規定された複数の画素からなる表示部と、環境温度を検出する、例えば温度センサ等である温度検出手段とを備える。複数の画素の各々は、互いに対向して配置された画素電極及び対向電極と、該画素電極及び対向電極間に配置され、電気泳動粒子を含む電気泳動素子と、画素電極に電気的に接続され、画素電極に供給される画像信号を一時的に保持する保持容量と、を有する。
【0010】
ここで、電気泳動表示装置は、その動作時に、保持容量(即ち、キャパシタ)に電荷が蓄えられ、該蓄えられた電荷により電気泳動素子が駆動されることによって、表示部に、画像信号に対応した画像が表示される。尚、表示部に表示される画像は、複数回の書き込みによって書き換えられる。
【0011】
当該駆動方法では、検出された環境温度が第1温度である場合、複数の走査線の各々が1回ずつ選択される期間である1フレーム期間が、第1時間とされる。他方、検出された環境温度が、該第1温度よりも高い第2温度である場合、1フレーム期間が、該第1時間よりも短い第2時間とされる。
【0012】
尚、「第2温度」は、例えば、表示部に表示される画像のコントラストが、許容範囲を超えて低下し始める環境温度等して設定されている。
【0013】
本願発明者の研究によれば、以下の事項が判明している。即ち、電気泳動素子を構成する電気泳動材料の電気抵抗は温度に依って変化する。この結果、温度に依って時定数が変化し、保持容量の電圧降下の速度が変化する。このため、何らの対策も採らず、常に一定回数の書き込みによって表示部に表示される画像を書き換えるとすると、環境温度が比較的高温では、電圧降下が比較的早いため、例えば画像の書き換え期間が長くなる可能性がある。他方、環境温度が比較的低温では、電圧降下が比較的遅いため、保持容量の再充電が比較的頻繁に行われることによって、電力が過剰に消費される可能性がある。
【0014】
しかるに本発明では、上述の如く、検出された環境温度が第1温度である場合、1フレーム期間が第1時間とされ、検出された環境温度が、該第1温度よりも高い第2温度である場合、1フレーム期間が、該第1時間よりも短い第2時間とされる。つまり、本発明では、環境温度が第1温度よりも高い第2温度となった場合、1フレーム期間が、第1時間よりも短い第2時間とされる(言い換えれば、リフレッシュレートが増加する)。
【0015】
比較的高温である第2温度では、保持容量の電圧降下が比較的早くなることに対応して1フレーム期間が比較的短い第2時間となるので、比較的頻繁に保持容量が再充電され、もって、保持容量の電圧降下を抑制することができる。他方、比較的低温である第1温度では、保持容量の電圧降下が比較的遅くなることに対応して1フレーム期間が比較的長い第1時間となるので、保持容量の充電回数が抑制され、もって、電力の消費量を抑制することができる。
【0016】
本発明の電気泳動表示装置は、上記課題を解決するために、互いに交差するように設けられた複数の走査線及び複数のデータ線の交差に対応して夫々規定された複数の画素からなる表示部と、環境温度を検出する温度検出手段とを備え、前記複数の画素の各々は、互いに対向して配置された画素電極及び対向電極と、前記画素電極及び前記対向電極間に配置され、電気泳動粒子を含む電気泳動素子と、前記画素電極に電気的に接続され、前記画素電極に供給される画像信号を一時的に保持する保持容量とを有し、前記検出された環境温度が第1温度である場合、前記複数の走査線の各々が1回ずつ選択される期間である1フレーム期間を、第1時間とし、前記検出された環境温度が、前記第1温度よりも高い第2温度である場合、前記1フレーム期間を、前記第1時間よりも短い第2時間とする駆動手段を更に備える。
【0017】
本発明の電気泳動表示装置によれば、上述した本発明の電気泳動表示装置と同様に、温度にかかわらず、保持容量の電圧降下を所定範囲に抑えることができる。
【0018】
本発明の電気泳動表示装置の制御回路は、上記課題を解決するために、互いに交差するように設けられた複数の走査線及び複数のデータ線の交差に対応して夫々規定された複数の画素からなる表示部と、環境温度を検出する温度検出手段とを備え、前記複数の画素の各々は、互いに対向して配置された画素電極及び対向電極と、前記画素電極及び前記対向電極間に配置され、電気泳動粒子を含む電気泳動素子と、前記画素電極に電気的に接続され、前記画素電極に供給される画像信号を一時的に保持する保持容量と、を有する電気泳動表示装置の制御回路であって、前記検出された環境温度が第1温度である場合、前記複数の走査線の各々が1回ずつ選択される期間である1フレーム期間を、第1時間とすることを示す信号を出力し、前記検出された環境温度が、前記第1温度よりも高い第2温度である場合、前記1フレーム期間を、前記第1時間よりも短い第2時間とすることを示す信号を出力する。
【0019】
本発明の電気泳動表示装置の制御回路によれば、上述した本発明の電気泳動表示装置と同様に、温度にかかわらず、保持容量の電圧降下を所定範囲に抑えることができる。
【0020】
本発明の電子機器は、上記課題を解決するために、上述した本発明の電気泳動表示装置を備える。
【0021】
本発明の電子機器によれば、上述した本発明の電気泳動表示装置を具備してなるので、温度にかかわらず、保持容量の電圧降下を所定範囲に抑えることができる。この結果、例えばコントラストの低下を抑制することができるので、高品質な画像を表示可能な、例えば、腕時計、電子ペーパー、電子ノート、携帯電話、携帯用オーディオ機器などの各種電子機器を実現できる。
【0022】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電気泳動表示装置の表示部の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画素の電気的な構成を示す等価回路図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電気泳動表示装置の駆動方法の要部を示すフローチャートである。
【図5】温度と、フレームレート及びフレーム回数との関係を規定するテーブルの一例である。
【図6】保持容量の電圧の時間変化の一例を、温度毎に示す特性図である。
【図7】電気泳動表示装置を適用した電子機器の一例としての電子ペーパーの構成を示す斜視図である。
【図8】電気泳動表示装置を適用した電子機器の他の例としての電子ノートの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る電気泳動表示装置、及び該電気泳動表示装置を備える電子機器の各実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0025】
<電気泳動表示装置>
(電気泳動表示装置の構成)
本発明の電気泳動表示装置の実施形態について、図1乃至図3を参照して説明する。尚、以下の図では、各層・各部材を図面上で認識可能な大きさとするため、該各層・各部材毎に縮尺を異ならしめている。
【0026】
先ず、本実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【0027】
図1において、電気泳動表示装置1は、表示部3、制御回路10、温度センサ111、表示体駆動回路130及び表示体電源回路200を備えて構成されている。尚、表示部3と制御回路10とは、互いに分離可能に構成されていてもよい。
【0028】
本発明に係る「温度検出手段」の一例としての、温度センサ111は、環境温度を検出する。ここで、温度センサ111は、例えば表示部3(即ち、パネル)の裏面の中央に配置される。尚、温度センサ111の位置は、表示部3の裏面の中央に限らず、例えば、表示部3の裏面の端、ディスプレイフレームのうち常時ユーザの手が触れていない部分等、環境温度を正確に(言い換えれば、ユーザの体温の影響を受けずに)検出可能な位置であれば、どこに配置されていてもかまわない。また、温度センサ111は、一つに限らず、複数個設けられていてもよい。
【0029】
温度センサ111から出力された環境温度を示す信号は、ADC(Analog Digital Converter)112においてデジタル値に変換され、該変換された値がRAM(Random Access Memory)113に格納される。
【0030】
本発明に係る「駆動手段」の一例としての、制御回路10は、CPU(Central Processing Unit)101、表示体駆動回路102、フラッシュROM(Read Only Memory)103、及びRAM104を備えて構成されている。
【0031】
ここで、フラッシュROM103には、例えばパーソナルコンピュータ等から転送された画像データ等が格納されている。RAM104には、次回表示部3に描画される画像データが一時的に保持されている。表示体駆動制御回路102は、CPU101を介して取得された、例えば、RAM104に保持されている画像データ、RAM113に格納されている環境温度等に基づいて、表示体電源回路200及び表示体駆動回路130を制御して、表示部3に表示される画像の書き替えを行う。
【0032】
表示体駆動回路130は、後述する走査線駆動回路131、データ線駆動回路132及び共通電位供給回路133を備えて構成されている。
【0033】
次に、電気泳動表示装置1の表示部3について、図2を参照して説明を加える。図2は、本実施形態に係る電気泳動表示装置の表示部の構成を示すブロック図である。尚、図2では、説明の便宜上、図1において示した部材のうち、直接関係のない部材については図示を省略している。
【0034】
図2において、表示部3には、m行×n列分の画素20がマトリックス状(二次元平面的)に配列されている。また、表示部3には、m本の走査線40(即ち、走査線Y1、Y2、…、Ym)と、n本のデータ線50(即ち、データ線X1、X2、…、Xn)とが互いに交差するように設けられている。具体的には、m本の走査線40は、行方向(即ち、X方向)に延在し、n本のデータ線50は、列方向(即ち、Y方向)に延在している。m本の走査線40とn本のデータ線50との交差に対応して画素20が配置されている。
【0035】
制御回路10は、走査線駆動回路131、データ線駆動回路132及び共通電位供給回路133の動作を制御する。制御回路10は、例えば、クロック信号、スタートパルス等のタイミング信号を各回路に供給する。
【0036】
走査線駆動回路131は、制御回路10から供給されるタイミング信号に基づいて、走査線Y1、Y2、…、Ymの各々に走査信号をパルス的に順次供給する。データ線駆動回路132は、制御回路10から供給されるタイミング信号に基づいて、データ線X1、X2、…、Xnに画像信号を供給する。共通電位供給回路133は、共通電位線93に共通電位Vcomを供給する。
【0037】
尚、制御回路10、走査線駆動回路131、データ線駆動回路132及び共通電位供給回路133には、各種の信号が入出力されるが、本実施形態と特に関係のないものについては説明を省略する。
【0038】
次に、電気泳動表示装置1の画素20における原理的構成について、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態に係る画素の電気的な構成を示す等価回路図である。
【0039】
図3において、画素20は、画素スイッチング用トランジスター24と、画素電極21と、共通電極22と、電気泳動素子23と、保持容量27とを備えている。
【0040】
画素スイッチング用トランジスター24は、例えばN型トランジスターで構成されている。画素スイッチング用トランジスター24は、そのゲートが走査線40に電気的に接続されており、そのソースがデータ線50に電気的に接続されており、そのドレインが画素電極21及び保持容量27に電気的に接続されている。
【0041】
画素スイッチング用トランジスター24は、データ線駆動回路132(図2参照)からデータ線50を介して供給される画像信号を、走査線駆動回路131(図2参照)から走査線40を介してパルス的に供給される走査信号に応じたタイミングで、画素電極21及び保持容量27に出力する。
【0042】
画素電極21には、データ線駆動回路132からデータ線50及び画素スイッチング用トランジスター24を介して、画像信号が供給される。画素電極21は、電気泳動素子23を介して共通電極22と互いに対向するように配置されている。
【0043】
本発明に係る「対向電極」の一例としての、共通電極22は、共通電位Vcomが供給される共通電位線93に電気的に接続されている。
【0044】
電気泳動素子23は、電気泳動粒子をそれぞれ含んでなる複数のマイクロカプセルから構成されている。
【0045】
保持容量27は、誘電体膜を介して対向配置された一対の電極からなり、一方の電極が、画素電極21及び画素スイッチング用トランジスター24に電気的に接続され、他方の電極が共通電位線93に電気的に接続されている。保持容量27によって画像信号を一定期間だけ維持することができる。
【0046】
(電気泳動表示装置の駆動方法)
次に、上述の如く構成された電気泳動表示装置1の駆動方法について、図4乃至図6を参照して説明する。
【0047】
表示部3上に表示された画像が書き換えられる際の電気泳動表示装置1の駆動方法を図4のフローチャートを参照して説明する。図4は、本実施形態に係る電気泳動表示装置の駆動方法の要部を示すフローチャートである。
【0048】
図4において、先ず、ユーザにより画面書き替えボタン121(図1参照)が押下されると、制御回路10におけるCPU101は、RAM113に格納されている、温度センサ111により測定された環境温度を取得する(ステップS101)。
【0049】
次に、CPU101は、取得された環境温度と、例えばROM103に格納されている、温度とフレームレート及びフレーム回数との関係を規定するテーブル(図5参照)を参照して、今回の画像を書き換える際のフレームレートを決定する(ステップS102)。図5は、温度と、フレームレート及びフレーム回数との関係を規定するテーブルの一例である。
【0050】
次に、CPU101は、決定されたフレームレートが、現在設定されている(即ち、前回の書き替え時の)フレームレートと異なるか否かを判定する(ステップS103)。決定されたフレームレートが、現在設定されているフレームレートと同じであると判定された場合(ステップS103:No)、CPU101は、フレームレートを変更せずに、表示部3上に表示される画像の書き替えを行うように、表示体駆動制御回路102を介して、表示体駆動回130及び表示体電源回路200を夫々制御する(ステップS104)。
【0051】
他方、決定されたフレームレートが、現在設定されているフレームレートと異なっていると判定された場合(即ち、前回の書き替え時から環境温度が変化している場合)(ステップS103:Yes)、CPU101は、フレームレートを、ステップS102の処理で決定されたフレームレートに更新して(ステップS105)、該更新されたフレームレートで表示部3上に表示される画像の書き替えを行うように、表示体駆動制御回路102を介して、表示体駆動回130及び表示体電源回路200を夫々制御する(ステップS104)。
【0052】
ここで、保持容量27の両端の電位差の時間変化について、図6を参照して説明する。図6は、保持容量の電圧の時間変化の一例を、温度毎に示す特性図である。
【0053】
図6に示すように、環境温度が比較的高温では(点線参照)、常温(実線参照)に比べてフレームレートが高くなっているため、比較的頻繁に保持容量27の充電が行われる。このため、保持容量27の電圧降下の程度を、常温時と同程度に抑えることができる。この結果、保持容量27の実効電圧を比較的高く維持することができ、もって、表示部3に表示される画像の書き換えを比較的短時間で行うことができる。
【0054】
他方、環境温度が比較的低温では(一点鎖線参照)、常温に比べてフレームレートが低くなっているため、保持容量27の電圧降下の程度が、例えば常温時と同程度になるまで、保持容量27の充電が行われない。この結果、保持容量27の充電回数を抑制することができ、もって、電力の消費量を抑制することができる。
【0055】
<電子機器>
次に、上述した電気泳動表示装置を適用した電子機器について、図7及び図8を参照して説明する。以下では、上述した電気泳動表示装置を電子ペーパー及び電子ノートに適用した場合を例にとる。
【0056】
図7は、電子ペーパー400の構成を示す斜視図である。
【0057】
図7に示すように、電子ペーパー400は、上述した実施形態に係る電気泳動表示装置を表示部401として備えている。電子ペーパー400は可撓性を有し、従来の紙と同様の質感及び柔軟性を有する書き換え可能なシートからなる本体402を備えて構成されている。
【0058】
図8は、電子ノート500の構成を示す斜視図である。
【0059】
図8に示すように、電子ノート500は、図7で示した電子ペーパー400が複数枚束ねられ、カバー501に挟まれているものである。カバー501は、例えば外部の装置から送られる表示データを入力するための表示データ入力手段(図示せず)を備える。これにより、その表示データに応じて、電子ペーパーが束ねられた状態のまま、表示内容の変更や更新を行うことができる。
【0060】
上述した電子ペーパー400及び電子ノート500は、上述した実施形態に係る電気泳動表示装置を備えるので、温度にかかわらず、保持容量の電圧降下を所定範囲に抑えることができる。この結果、例えばコントラストの低下を抑制することができるので、高品質な画像を表示可能な、高品質な画像表示を行うことが可能である。
【0061】
尚、これらの他に、腕時計、携帯電話、携帯用オーディオ機器などの電子機器の表示部に、上述した本実施形態に係る電気泳動表示装置を適用することができる。
【0062】
尚、上述した実施形態では、温度センサ111により直接的に環境温度を検出しているが、例えばリーク電流量を検出して、該検出されたリーク電流量に基づいて、間接的に環境温度を検出してもよい。或いは、検出されたリーク電流の変動に基づいて、電気泳動材料の電気抵抗の変動を推定して、該推定された電気抵抗の変動に応じて、表示部3に表示される画像を書き換える際のフレームレートを設定又は変更してもよい。
【0063】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気泳動表示装置の駆動方法、電気泳動表示装置、該電気泳動表示装置の制御回路、及び該電気泳動表示装置を備える電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
1…電気泳動表示装置、3…表示部、10…制御回路、20…画素、21…画素電極、22…共通電極、23…電気泳動素子、27…保持容量、40…走査線、50…データ線、111…温度センサ、130…表示体駆動回路、200…表示体電源回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差するように設けられた複数の走査線及び複数のデータ線の交差に対応して夫々規定された複数の画素からなる表示部と、環境温度を検出する温度検出手段とを備え、前記複数の画素の各々は、互いに対向して配置された画素電極及び対向電極と、前記画素電極及び前記対向電極間に配置され、電気泳動粒子を含む電気泳動素子と、前記画素電極に電気的に接続され、前記画素電極に供給される画像信号を一時的に保持する保持容量と、を有する電気泳動表示装置の駆動方法であって、
前記検出された環境温度が第1温度である場合、前記複数の走査線の各々が1回ずつ選択される期間である1フレーム期間を、第1時間とし、
前記検出された環境温度が、前記第1温度よりも高い第2温度である場合、前記1フレーム期間を、前記第1時間よりも短い第2時間とする
ことを特徴とする電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項2】
前記検出された環境温度が高い程、前記1フレーム期間の長さが短くなることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項3】
環境温度と前記1フレーム期間の長さとの関係を定めるテーブルを予め記憶し、
前記検出された環境温度と前記記憶されたテーブルとに基づいて、前記1フレーム期間の長さを特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気泳動表示装置の駆動方法。
【請求項4】
互いに交差するように設けられた複数の走査線及び複数のデータ線の交差に対応して夫々規定された複数の画素からなる表示部と、
環境温度を検出する温度検出手段と
を備え、
前記複数の画素の各々は、
互いに対向して配置された画素電極及び対向電極と、
前記画素電極及び前記対向電極間に配置され、電気泳動粒子を含む電気泳動素子と、
前記画素電極に電気的に接続され、前記画素電極に供給される画像信号を一時的に保持する保持容量と
を有し、
前記検出された環境温度が第1温度である場合、前記複数の走査線の各々が1回ずつ選択される期間である1フレーム期間を、第1時間とし、前記検出された環境温度が、前記第1温度よりも高い第2温度である場合、前記1フレーム期間を、前記第1時間よりも短い第2時間とする駆動手段を更に備える
ことを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項5】
互いに交差するように設けられた複数の走査線及び複数のデータ線の交差に対応して夫々規定された複数の画素からなる表示部と、環境温度を検出する温度検出手段とを備え、前記複数の画素の各々は、互いに対向して配置された画素電極及び対向電極と、前記画素電極及び前記対向電極間に配置され、電気泳動粒子を含む電気泳動素子と、前記画素電極に電気的に接続され、前記画素電極に供給される画像信号を一時的に保持する保持容量と、を有する電気泳動表示装置の制御回路であって、
前記検出された環境温度が第1温度である場合、前記複数の走査線の各々が1回ずつ選択される期間である1フレーム期間を、第1時間とすることを示す信号を出力し、
前記検出された環境温度が、前記第1温度よりも高い第2温度である場合、前記1フレーム期間を、前記第1時間よりも短い第2時間とすることを示す信号を出力する
ことを特徴とする電気泳動表示装置の制御回路。
【請求項6】
請求項4に記載の電気泳動表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−242567(P2011−242567A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113948(P2010−113948)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】