電気的筋肉活動の監視
局所化グループの電極(7、8、10から12)を患者の皮膚の上に適用してその信号を監視することを含む、(子宮活動などの)筋肉の電気的活動を非侵襲的に監視するための方法。電極(7、8、10から12)は、その筋肉信号寄与がソースの非定常性にかかわらず単一のソースをシミュレートするように十分に局所化される。信号は増幅、フィルタリングおよびディジタル化される。次いでこれらは独立成分分析(ICA)によってディジタル的にフィルタリングおよび処理されて、他のソースから筋肉活動ソースを分離する。この方法を使用して、追加電極(1から6、9)および関連回路(32から39)を用いて、母体の子宮活動と、胎児の活動と、母体および胎児の心臓活動とを同時に監視してもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的筋肉活動を非侵襲的に監視するための方法および装置に関する。とりわけ、妊娠および陣痛時の子宮収縮の監視に関する(しかしこれに限定されない)。
【背景技術】
【0002】
子宮筋層活動は妊娠および陣痛を通して変化する。子宮筋層−子宮の筋肉領域−は決して完全には緩和せず、妊娠初期から一定間隔で収縮する。これらの収縮は痛みがなく、ブラクストン・ヒックス(Braxton Hicks)収縮として知られている。妊娠の第2期の終わりまでには、子宮活動は、ほぼ毎分小さな局所的収縮に制限されており、30分から60分ごとに大きな収縮がある。これらの大きな収縮は、陣痛の開始まで第3期を通して頻度および強度が増す。陣痛の開始は、痛みを伴う収縮の頻度と、頸部の進行性開大に基づいた主観的判断である。早期陣痛は依然として新生児の死亡および疾病の主要原因である。Costeloe K、Gibson AT、Marlow N、Wilkinson ARによる現在のEPI治療(EPIcure)研究は、「瀕死の状態で生まれた新生児の退院に対する結果(The outcome to discharge from hospital for babies born at the threshold of viability)」に注目している。これは、イギリスで妊娠23週から25週で生まれた新生児の約50%が、重大な長期にわたる障害を有するということを示唆している。正常な陣痛を通して、収縮の強度、頻度および期間は10分毎に2回から4回の収縮に増え、初期の陣痛では20秒から、陣痛の第1段階の終わりまでには40秒から90秒へと漸進的に長くなる。これは、Llewelyn Jonesによって「産科学および婦人科学の基礎(Fundamentals of Obstetrics and Gynaecology)」に説明されている。従って、早期陣痛の事前警告を与えるために、子宮活動を定期的に監視することは非常に望ましい。
【0003】
子宮の収縮を監視するための既存の方法は主観的であり、原則として陣痛の開始を予測するためには収縮の頻度だけに頼っている。妊娠中、これは一般的に、とりわけ最初の妊娠においては正確さに欠ける症候性自己監視に頼っている。第3期には、分娩監視装置(tocodynamometer)を使用してもよく、これは、子宮が腹壁にかける圧力を監視する圧力トランスデューサである。これは腹部の周りに固定されて、収縮の頻度を示し、収縮の大きさを主観的に測定するものであり、トランスデューサが適用される圧力と場所の影響を受けやすい。
【0004】
子宮内圧力モニタは、子宮圧を判断するための既知の正確なツールである。子宮腔に経頸管的に置かれたカテーテルによって子宮内および羊膜の液圧を検出および測定するように設計されている。これは、子宮の収縮の強度、期間および頻度を監視するために使用される。上記のパラメータを監視する際のその正確さにかかわらず、これは体内への侵襲性手順を伴い、一般的に臨床環境でのみ使用される。確実な非侵襲性技術が使用可能ならば、これは臨床医学者によって容易に受け入れられるであろう。
【0005】
子宮筋電図(EMG)つまり子宮筋電図検査(EHG)は1849年に発見された。長年の研究にもかかわらず、確実な非侵襲性EHG測定を得ることの技術的困難によってこれは他の電気生理学監視技術に比べてかなり実用的でないものになってしまった。多数の研究は既に、侵襲性手段を介してEHGを記録しており、また収縮活動のメカニズムを理解しようと試みていた。Garfieldらの「子宮筋細胞収縮のコントロール:ギャップ結合の役割および調整(Control of Myometrial Contractility:Role and Regulation of Gap Junctions)」Oxford Rev.Reprod.Biol.10:436−490、1988年;Devedeux D、Marque C、Mansour S、Germain G、Duchene J、1992年、子宮、子宮筋電図検査:産科学および婦人科学についてのアメリカン・ジャーナルの批評(Uterine、electromyography:a critical review、American Journal of Obstetrics and Gynecology)、VOL.169、No.6 pp1636−1653。
【0006】
多数の研究は、信号の雑音除去および不要な生物アーチファクトの除去は、良好な解釈に必要であることを認めているが、EHGの非侵襲性経腹壁的記録は、差動対の電極を中心とした信号取得機器を使用して可能であることを示してきた。これらの研究には、Simpson N.A.B.らによる、1998年「ヒトの妊娠の陣痛の開始に関連する子宮の電気的活動の変化(Changes in uterine electrical activity associated with onset of labour in human pregnancy)」、生理学ジャーナル(Journal of physiology)507.P、68P;Lenman H、Marque Cによる「子宮筋電図検査信号における母体心電図の拒絶(Rejection of the Maternal Electrocardiogram in the Electrohysterogram Signal)」、2000年、IEEE Transactions on Biomed.Eng.Vol.47、No.8がある。
【0007】
子宮EMGの抽出の確実性を改良して、その正確な分類を可能にするために、より最近の研究は、早期陣痛の予測を可能にするための収縮性波形の雑音除去および妊娠中の収縮の特徴づけに関している。Carre P、Lenman H、Fernandez C、Marque C、1998年、「非破壊ウェーブレット変換による子宮EHGの雑音除去(Denoising of the Uterine EHG by an Undecimated Wavelet Transform)」、IEEE Transactions on Biomed.Eng.Vol.45,No.9;Khalil M、2000年、子宮EMG分析:変化検出および分類のための動的アプローチ(Uterine EMG Analysis:A Dynamic Approach for Change Detection and Classification)」、IEEE Transactions on Biomed.Eng.Vol.47,No.6を参照されたい。
【0008】
さらなる研究は、子宮EMGに基づいた陣痛の診断に焦点を合わせており、Rosenberg Eによる1996年の米国特許第5483970号明細書「陣痛の診断用の装置および方法(Apparatus and Methods for the Diagnosis of Labour)」を参照されたい。この参照は患者の腹部の子宮EMGを観察している。これは、伝導異常を補償しつつ、収縮波の周りにエンベロープを形成して腹部にわたる収縮の進行を監視する技術を使用している。そして得られた情報は直流オフセット技術と結び付けられて子宮頸管の開大を判断する。この装置は、技術がうまくいくように、電極の具体的な配置と種々の座標システムの選択とに依拠している。この2つは間接的に関連しているが、装置は、胎児の状態よりも陣痛の進行を監視することに焦点を当てている。
【0009】
陣痛の成り行きと胎児の状態を監視するためのツールに加えて、非侵襲性子宮EMGと出生前スクリーニングおよび監視用の非侵襲性胎児心電図(fECG)との組み合わせを提案する研究は少ない。国際公開第02/096288号パンフレット(以下「WO/288号」)は、胎児心電図を抽出するのにいずれの信号およびいずれの方法が特に使用されているのかを抽出するためにいずれの技術が使用されているかは不明ではあるが、母体の子宮と、母体および胎児の心臓活動と、胎児の脳の活動とを検出および分析するための装置を提案している。これは、胎児の脳の活動のための(推定上胎児の)頭皮電極と、完全には非侵襲性でないことを示している経頸管的かつ経膣的ならびに経腹壁的な記録に言及している。心臓QRSTトレースはドップラー超音波とパルス酸素濃度計および/または他の方法で得ることができることを示している。また、fECGについて示されている対象周波数帯域、1Hzから5Hzおよび20Hzから200Hzは0.5Hzから150Hzの想定範囲にないが、経腹壁的電気信号を記録することを示している。この範囲は600人以上の患者に関するPCT国際特許出願第GB2002/004410号明細書(以下「GB4410号」)に関連した研究中に発見され、心電図に関するアメリカ心臓協会スタンダード(American Heart Association Standards for Electrocardiography)によって示されている。しかしながら、GB4410号以前には十分正確にそれを測定することができないために、fECGに具体的に適用されている現在のスタンダードはない。WO/288号において心筋活動電位の大きさは110から140mVと記されている。2KΩの電極の皮膚インピーダンスを有する腹部電極は、約200μVの母体信号を検出する傾向がある。
【0010】
国際公開第00/054650号パンフレットはまた非侵襲性fECGおよび子宮収縮について記している。これは、子宮の収縮によるモーションアーチファクトと母体ECGアーチファクトとが補償されたfECGを生成するために、母体ECGと共に、子宮信号を雑音基準ソースとして使用する適合的信号処理フィルタアルゴリズム(ASPFA)を開示している。表面EMG信号は、子宮の収縮を監視するのに使用可能であることが示されている。電極位置が特定される必要がないということを強調する一方で、電極対は共に配置されて、母体ECG用の基準電極はASPFAを支援するためにそれに応じて配置される必要がある。子宮筋電図の性質、その抽出方法および/またはその臨床的重要性についての説明はないと思われる。
【0011】
EMG信号を生成する母体の腹部電極を使用した子宮活動の監視は、欧州特許出願第1166715A2号明細書に開示されている。受信EMG信号は、アナログフィルタによって、またはマイクロプロセッサによってディジタル的にフィルタリングされて、子宮活動を監視する。
【0012】
子宮の収縮は、卵管と子宮の結合部分にあるペースメーカー細胞の部位で促進(instigate)されると言われている。バースト(burst)と称されるものがこの部位で発生される場合に効果的な収縮が生じる。バーストは子宮の上部に最も集中しているが、毎秒約2cmの割合で子宮にわたって広がり、「産科学および婦人科学の基礎(Fundamentals of Obstetrics and Gynaecology)」においてLlewellyn Jonesによって説明されているように、収縮の最高潮は子宮全体にわたる。
【0013】
上記のように、子宮活動は妊娠期間にわたって生じ、非常に早い段階から活動電位が生じている。種々のタイプの特徴および波形は、DevedeuxらによるAm J Obstet Gynecol,1993年「子宮筋電図検査:批評(Uterine Electromyography:A Critical Review)」に説明されているように、電気的子宮筋活動によるものであり、これらは以下のように説明可能である。低速波、これはインビボ(in vivo)測定ではなく腹部の子宮測定に関連し、従って皮膚のストレッチなどの機械的アーチファクトによって生成されたと考えられ、その周期は通常収縮期間に等しい。高速波について、著者は、妊娠および分娩時の子宮の収縮と関連した低周波数帯域(0.1から0.6Hz)と、分娩時だけの進行性収縮に関連した高周波数帯域(0.6から3Hz)とに分離している。Devedeuxらは、固定的なペースメーカー部位はなく、その代わり、心臓細胞のように、子宮筋細胞は隣接する細胞(ペースメーカー追従細胞)から発生した活動電位によって励起されたり、それ自体のインパルス(ペースメーカー細胞)を生成したりすることができる、と結論付けている。各細胞はこれら2つの機能を交互に行なうことができるとも示されている。これは、すでに始まっている陣痛中に子宮上部におけるペースメーカー活動の集中増大によって説明可能な分娩時の機械的要因に焦点を当てているが、Llewellyn Jonesの「産科学および婦人科学の基礎(Fundamentals of Obstetrics and Gynaecology)」に反するように思われる。
【0014】
Devedeuxらはインビボ技術、つまり子宮に取り付けられた電極によってなされた内部測定について説明しており、また12から25mVの振幅の信号を検出しているが、彼らは、これらの値は腹部の記録について極めて縮小されていることを結論付けている。彼らはまた、収縮の振幅は基準として使用されるべきではないが、子宮筋電図検査のスペクトルドメインをより強調して使用されるすべきであると結論付けている。これは周波数コンテンツを保持しつつ効率的に信号から雑音除去するにはとりわけ好都合である。
【0015】
陣痛中の胎児および母親の両者についての従来の監視はドップラー超音波および分娩監視(cardiotocography、CTG)などのツールに頼っており、これらは感度および特異度に欠ける。CTGは分娩監視装置とドップラー超音波とを組み合わせて、収縮と心拍をそれぞれ同時に監視する装置である。これらの2つの測定の組み合わせによって、胎児の状態の測定が、とりわけ子宮の収縮に応答して、心拍の加速および減速に基づいて形成可能になる。Dawes/Redman基準は、特定の時間基準の下で、加速、減速、胎児の動きおよび心拍変化を見るCTGと共に使用される、胎児の状態の測定の一例である。しかしながら、真性糖尿病などの状態において、この基準は、心拍の大きな変化がないために役に立たない。Tincello DGらによる「真性糖尿病患者における胎児の心拍記録のコンピュータ分析(Computerised analysis of fetal heart rate recordings in patients with diabetes mellitus):Dawes Redman基準は胎児の状態の有効なインジケータとはなりえない」、周産期医学ジャーナル(Journal of Perinatal medicine)、1998年;26(2):102−6を参照されたい。
【0016】
CTGの診断的使用は、リスクの高い妊娠における周産期死亡率や疾病率に対して効果が限定的であるように思われる。Cochraneのデータベースは、CTGによって判断された妊娠において周産期死亡率は増加の傾向にあること(確率比2.85、95%信頼区間0.99から7.12)を示している。リスクの高い妊娠におけるドップラー超音波の使用は多数の産科治療結果を改良しているように思われ、また周産期死亡を減少させる一助となるように思われるが、リスクの低い母集団においては利点があるとは示されていない。分娩監視装置の配置、適用圧力、子宮壁圧、皮下脂肪限界およびデータ解釈などの変数はその有効性について重大な影響を有しているが、CTGには自宅でのリスクの高いグループに対する移動監視が提供されることもある。Dyson Donald Cらは、1998年の「早期陣痛の恐れがある女性の監視(Monitoring Women at Risk for Preterm Labor)」New Eng Journal of Medicine Volume338:15−19において、在宅CTG監視を使用する女性は、看護士の訪問を毎週受けている女性ほど良好な結果を得ていないことを示している。このことは、子宮の収縮の発生、スペクトルコンテンツおよび大きさに関する定量的かつ非侵襲性測定を提供する装置に対する要件があるだろうことを示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、子宮の収縮によって生じるような電気的筋肉活動の非侵襲性検出のための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、電気的筋肉活動を非侵襲的に監視するための方法を提供しており、筋肉活動は定常性または非定常性であり、以下のステップを組み込むことによって特徴付けられている。
a)定常信号を分離するのに適した信号分離方式を提供するステップと、
b)筋肉活動を検出するように、患者の皮膚の外側に複数の低雑音信号電極であって、
i)信号電極の筋肉信号寄与が、筋肉ソースの非定常性にかかわらず、信号分離方式への単一の筋肉ソースを模し、
ii)信号分離方式によって検出されたソース数は電極数以下であるように、十分に局所化されている信号電極を置くステップと、
c)電極から受信した信号に信号分離方式を適用して、筋肉ソースを分離するステップ。
【0019】
本発明は、筋肉活動が非定常性であるにもかかわらず、定常信号を分離するのに適した信号分離方式を使用して筋肉ソースを分離することができるという利点を提供しており、これは後述するような多数のこのような技術を備えている。
【0020】
筋肉活動は子宮活動でもありうる。信号分離方式は以下に定義されるような瞬間アルゴリズムに基づいていてもよく、また独立成分分析(ICA)であってもよい。信号分離方式を適用するステップは、信号電極からの信号より導き出された処理データにICAを適用してもよく、このデータは、隣接するブロックの対において各後続ブロックがそれぞれの先行ブロックの一定割合のデータを組み込むように連続重複ブロックに配置されており、また異なるブロックのICA処理において導き出された独立ソースを再配列して、信号スワッピングについて補正するために補正スキームが適用される。
【0021】
信号電極を置くステップは、ペースメーカー活動の想定部位の近くの位置の直立した患者に対して、へその高さまたはこれより上に4個または5個の信号電極を置くステップを備えていてもよい。信号電極は第1のセットの信号電極であってもよく、信号電極を置くステップは、その筋肉信号寄与に対して十分に局所化されていない位置の患者の皮膚に第2のセットの信号電極を置いて、単一のソースを信号分離方式にシミュレートするステップを含んでいてもよく、そして信号分離方式は非定常性筋肉活動を監視するための第1のセットの信号電極を介して導き出された信号と、定常性筋肉活動を監視するための第1および第2のセットの信号電極を介して導き出された信号とを用いる。
【0022】
信号分離方式は母体および胎児の心臓活動と、子宮活動と、母体の筋肉活動と、胎児ECGおよび母体ECGとを同時に取得することができる。周波数選択的フィルタリングを用いて、センサよりも信号が多い範囲を制限することによって、母体および胎児の心臓活動と、子宮活動との分離を容易にすることができる。
【0023】
別の態様において、本発明は、電気的筋肉活動を非侵襲的に監視するための装置を提供しており、この筋肉活動は定常性または非定常性であり、この装置は
a)定常信号を分離するのに適した信号分離方式を実現するためのコンピュータ装置と、
b)筋肉活動を検出するために、患者の皮膚(40)の外側に置かれた複数の低雑音信号電極であって、
i)電極の筋肉信号寄与が、筋肉ソースの非定常性にもかかわらず、信号分離方式への単一の筋肉ソースを模し、
ii)信号分離方式によって検出されたソース数が電極数以下であるように、十分に局所化されている電極と、
c)電極から受信した信号を、コンピュータ装置による信号分離方式の適用に適したディジタル信号に処理して、筋肉ソースを分離するための処理手段と、を組み込んでいる装置によって特徴づけられている。
【0024】
本発明の装置に関する態様は、方法に関する態様の特徴に必要な変更を加えたものに類似の好ましい特徴を有する。
【0025】
次に、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して例示によって説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1および図2を参照すると、本発明を使用する子宮の電気的活動と、分娩監視装置からの機械的活動の同時記録は患者の陣痛時に行われて、信号処理が電気的な子宮活動を抽出するために適用された。機械的活動は一般に20で示されており、電気的活動は、22a、22bおよび22cなどの電気的な子宮のバースト活動のパルス列によって示される。2つの形態の活動が共通の時間軸に対してプロットされて示される。図2は、子宮の電気的活動の単一のバースト22b内の個々の活動電位を、電圧および時間的尺度を拡張して示している。
【0027】
次に図3を参照すると、本発明を実現するのに適した装置は一般的に30で示されている。これは、母親の皮膚の表面に置いて、そこから生成された電圧信号を監視するのに適した多数の電極1、2、3、GおよびRを備えている。ここでGは接地電極を示しており、Rは基準電極を、1から3は信号電極を示している。便宜上、電極1などの5個のみが示されているが、本発明の本例においては、後述のように14個の電極、つまり1から12と番号が付された12個の信号電極(4から12は図示せず)と共にGおよびR電極が使用された。電極1などはそれぞれのスクリーンリード32aから32e(総称的に32)を介してリードボックス34に接続されており、これはまたコンピュータ36に接続されている。
【0028】
リードボックス34は信号電極1などからの信号用の処理回路を含んでおり、34aに差し込まれて示されている。回路は2つの信号電極1および2について示されており、点Dは他の信号電極に対する同様の回路を示している。回路は信号電極1などごとに、それぞれ低雑音差動増幅器37と、それぞれのハイパスおよびローパスアンチエイリアスフィルタ38とを備えている。フィルタ38は共通のマルチチャネルアナログ/ディジタルコンバータ(ADC)39に接続されている。増幅器37は基準電極Rからの信号を、それぞれの信号電極1などからの信号より減算して、その結果得られた差分信号を増幅する。差分信号はADC39によってディジタル信号に変換されて、そしてコンピュータ36を使用して記録および処理されて、詳細に後述されるように、母体の子宮信号とfECG信号とを分離する。
【0029】
市販の脳波検査(EEG)システムは、原入力コンポジットデータ、つまり30での処理後の電極からの信号を取得および表示するための適合にふさわしい。ここでコンポジットという表現は、電極信号が異なるソースからの信号の混合であるという事実を示している。コンピュータ36はMicromed Electronics UK Ltdから供給されたポータブルEEGシステム(SYS98−Port24−CL)によるコンピュータである。これは、Microsoft Windows(登録商標) NTオペレーティングシステムのバッテリ電源ラップトップコンピュータ実行システム’98のEEG記録/分析ソフトウェア(SYS−98)である。SYS−98ソフトウェアは便宜的なインタフェースを、ボックス34からディスプレイ装置(スクリーン、図示せず)およびデータ記憶媒体(ハードディスク)に提供する。本発明の本例を実現するために、特定用途向けのあつらえて作ったソフトウェアが開発されており、コンピュータ36で実行される。あつらえて作ったソフトウェアによって、EEG固有ソフトウェアによって記録されたデータは、子宮活動および胎児負担を分離するために読み取りおよび処理されることが可能となる。これはまた、このような活動および負担(例えば、子宮活動の期間、強度、頻度スペクトル、およびfECGの胎児心拍、PR、QRS、QTインターバル)から導き出されたパラメータの表示を提供する。あつらえて作ったソフトウェアの動作について以下により詳細に説明する。コンピュータ36のタイプは明確には重要ではないが、記録、処理および表示ソフトウェアを実行するための十分な処理容量と、記録データ、処理結果および表示自体を保存するための十分なメモリとを有していることが必要である。好ましくは、コンピュータはポータブルであるべきである。患者に容易に転送するために提供されるだけではなく、ポータブルコンピュータはメイン電源および関連雑音とは分離されたバッテリで実行されてもよい。
【0030】
(本発明に固有の処理データとは対照的な)原コンポジットデータ用のコンピュータディスプレイスクリーン(図示せず)と記録および表示ソフトウェア、ならびにその接続リードを含む、リードボックス34およびコンピュータ36はすべてポータブルEEGシステムの一部である。
【0031】
電極1などはNeuroline(登録商標)によって製造された市販の使い捨て粘着神経電極(タイプ710 01−K)である。電極1などの最優先事項は、これらが低雑音であり、かつ2kΩ未満の皮膚のインピーダンスとなるように患者に容易に取り付けられるタイプであることである。さらにこれらは、処理ソフトウェアによる効果的な信号分離を可能にするように数において十分でなければならない。それぞれのスクリーンリード32を具備する各電極1などは、それぞれ単一かつ別個のデータチャネルをマルチチャネル記録に与える。
【0032】
市販されている710 01−K電極は10cm長の通常の(未スクリーン)ケーブルを取り付けている。このタイプが選択されたのは、取り付けられたケーブル長が最短で使用可能であるからである。この長さのワイヤが約1cmであること、あるいは、これは電気的雑音をさらに削減するように電極がスクリーンリード32に直接取り付けられていることが好ましい。fECGに固有のより短いケーブルを具備する使い捨て電極が同じ設計で作られてもよい。
【0033】
スクリーンリード32は、生物医学的用途にふさわしいタイプの0.9mmの同軸スクリーンケーブルから作られている。これらは、fECG記録時の雑音レベルを3μV未満に低下させるために十分にスクリーニングされなければならない。電気的スクリーニングのために接地に接続されている外部金属ケースを有するDタイプコネクタ(図示せず)によってリードボックス34に接続される。スクリーンリード32は信号電極1などをリードボックス34に接続する。各スクリーンリード32を備える同軸ケーブルの外部ブレードメッシュ層が、リードボックス34の分離接地と、Dタイプコネクタの金属ケースとに接続される。接地電極Gはまたリードボックス34の分離接地に接続される。これは、増幅器38によって拒絶される共通のモード干渉に対して、母体へのリターンバイアス電流経路を提供する。
【0034】
8個以上の信号電極1などは一般的に、fECG抽出が適切な腹部カバレージを提供して、十分明確なソースへの信号分離を可能にするように十分でなければならない。例えば、GB4410号にあるような信号分離を使用して、2個から3個の明らかに独立したソースは一般的に母体の心臓について検出され、通常は胎児1人につき1個から2個である。子宮の収縮からのアーチファクトの分離は、少数のソースがあるために3個の電極と、狭い対象周波数帯域とにより可能である。追加電極によって、母体の呼吸、不要な電気的干渉などとの関連物などの不要なアーチファクトの分離が可能になる。
【0035】
図4は、子宮活動と胎児心電図(fECG)を同時に監視するのに適した、母親の腹部上への電極1などの可能な配置のある図である。本例において、12個の信号電極1から12と、接地電極Gと共通基準電極Rはすべて、母親の皮膚40の外部表面に取り付けられている。対応する電極の参照番号が付された円によって、配置は図面に示されている。共通の基準電極Rおよび接地電極Gは母親のへそNに隣接して取り付けられて、残りは母親の腹部領域の実質的に全体にわたって分散される。母親の身長に関して、電極1から5はへそNより下に、電極6から9はへそNと同じレベルに、電極10から12は、胸骨の底部と、へそと同じレベルにある電極6から9のラインとの中間より上に置かれる。電極10から12は、妊娠後期および陣痛時に、子宮の上部または基底部の高さと実質的に同じレベルになる位置にある。
【0036】
電極1から12は、電極のほぼ六角形の配置が平らな腹部カバレージに便宜上用いられることを示すネットワークライン42によってリンク付けられて示されている。これは、約10cmの電極分離による12個の腹部電極の定間隔の配置をもたらす。この接続において、子宮の監視について、隣接する電極は最大12cm分離されることが好ましい。この限界は女性により大きな腹部を提供するために設定される。腹部のサイズは、電極の展開を制限することによって限界を示すために、より低い限界を規定する必要はない。良好な子宮およびfECG信号分離を総合的に達成するために、信号電極1から12は好ましくは、近づけすぎて置かれるべきではなく、また腹部の広いカバレージを伴うべきである。図面に示されているような実際の配置は、腹部の一方から他方への、また陰毛から子宮のほぼ上限までの範囲を含んでいる。子宮のほぼ上限は妊娠期間から、あるいは妊娠後期に生じる子宮の最大高さに十分な標準構成に従って判断可能である。電極1などは非侵襲性であるために、子宮活動の取得に必要な少数の電極の場合に助産師や訓練を受けた一般人による適切な配置が容易に達成可能であることは本発明の1つの特徴である。
【0037】
母親およびリードの組み合わせによって形成されたループの磁束リンクを介して電気的および磁気的雑音を削減するために、全リード32は、皮膚40とその全長にわたって相互に、可能な限り近くに維持されるべきである。各リードはカラーバンドの形態のマーカーを組み込んで、隣接する電極間の12cmの制限を示し、迅速かつ適切な電極配置を容易にすることができる。
【0038】
取り付けおよび記録に備えて、理想的には母親は快適にベッドに横たわり、リードボックス34は近くにあるが、患者にもベッドフレームにも触れることはない。母親は、不随意な筋肉活動の減少に役立つように数分間リラックス可能にされるべきである。子宮の対象周波数帯域はfECGに対して狭く、また干渉にそれ程影響を受けやすくないために、これは子宮の監視のためよりもfECGについてより必要である。
【0039】
子宮、心臓および他の活動から生じる電圧信号は、皮膚40に取り付けられた信号電極1から12およびRによってピックアップされる。信号はスクリーンリード32を介してリードボックス34に通される。リードボックス34はSAM 25R「ヘッドボックス」と称されており、Micromed ElectronicsのEEGシステムの一部である。ECGリードボックスとは対照的なEEGヘッドボックスの利点は、前者は優れた低雑音電気回路と、多数の使用可能な入力チャネルとを有しているという点である。入力チャネルはユニポーラ使用向けに構成される。
【0040】
本例に関連するSAM 25Rリードボックスの更なる仕様は、接触防止安全接続、4KHzサンプリング、1kHzのカットオフ周波数を有するローパスアンチエイリアスフィルタ、512Hzにダウンサンプリングされたソフトウェア、0.3Hzから256Hzのパスバンド、および2mVの電圧範囲をカバーする12ビットの解像度である。
【0041】
SAM 25Rリードボックス34は便利な市販の装置であり、この理由で使用されていた。しかしながら、いくつかの点で本発明の目的には非理想的な特徴を有している。その入力においてハイパス/ローパスフィルタと、雑音レベル0.16μV、つまり他のEEGシステムと比較する場合に、またはあつらえたリードボックスの設計による場合に達成可能なほど低くはない(<0.1μV)雑音レベルの増幅器とを有している。ハイパスフィルタは、現在の0.3Hzではなく0.1Hz未満の周波数を拒絶するために有用に再設計されてもよく、またローパスフィルタは、1kHzに対して、200Hzより高い周波数を拒絶する。これは、低周波数の子宮成分の減衰を低下させ、高周波数の雑音を拒絶して、アンチエイリアスを改良する。
【0042】
検出されたソース電圧は、妊娠や陣痛の段階に応じて、0.3Hzから3Hzの周波数範囲で、7μVから250μVに及ぶ。断続的なスパイク活動(40Hzから150Hz)もまた定期的に観察される。これは、後に説明する信号処理によって子宮活動とfECGから分離される。それは腹部の筋肉組織と関連していると考えられる。子宮の収縮の開始と関連がありそうな腹部の筋肉組織と横隔膜の随意収縮以外の断続的なスパイク活動と収縮との間には重要な相関性は見られなかった。
【0043】
リードボックス34への複数のチャネル入力がユニポーラ構成において使用される。つまり、電圧読み取りが各腹部電極1から12と共通の基準電極Rとの間で行われる。従来技術のfECG装置は、ソースの位置の局所化雑音を除去しようとするバイポーラ読み取りを行うことによって、システム雑音の問題を解決しようとした。
【0044】
リードボックス34内で、各信号電極1から12からのアナログ電圧信号はそれぞれの差動増幅器37の一方の入力に供給され、基準電極Rからの電圧信号はもう一方に供給される。従って、各差動増幅器37は、関連信号電極1から12で発生した電圧と、基準電圧(R)で発生した電圧との差に比例する増幅信号を出力する。結果として生じた増幅信号はそれぞれのアンチエイリアスローパスフィルタ38でフィルタリングされて、同時マルチチャネルA/Dコンバータ39によってディジタル化される。マルチチャネルA/Dコンバータ39を使用することの利点は、同時サンプリングが電極1から12からの全チャネルに配置可能であることであり、これは後続の信号処理に対して望ましい特徴である。そしてこれらのディジタル化信号は信号処理のためにコンピュータ36にパスされる。
【0045】
ユニポーラ構成には利点があるが、バイポーラ構成は決して除外されないことに注目すべきである。後者は、このようなバイポーラ構成が必要な場合は、ディジタル化ユニポーラチャネル出力間の差を取ることによって簡単に複製されてもよい。
【0046】
子宮活動およびfECGの記録を行うための機器をセットアップする際に、可能な限り低レベルに環境およびシステム雑音を低下させることが重要である。以下の手順は十分な低雑音記録を生成するために発見された。
i)母親の皮膚40は標準研磨剤配合テープ(例えば、3Mによって製造された「Skinprep」)を使用して軽く擦られてから、アルコールまたは水ベースの綿棒で消毒される。
ii)電極1から12、GおよびRは軽く指で押して皮膚40に取り付けられる。
iii)そして電極1から12、GおよびRは対応するスクリーンリード32に接続される。
iv)スクリーンリード32はDタイプスクリーンコネクタ(図示せず)を介してリードボックス34に接続される。
v)装置30はメイン電源とは別にバッテリ電源が入れられる。
vi)電極1から12、GおよびRの皮膚インピーダンスが測定されて、2kΩを超える皮膚インピーダンスを有する電極が再印加される。
vii)スクリーンリード32は集められて、磁気ピックアップを最小化するために母親の皮膚40の近くに維持される。
viii)装置30は腹部電極1から12から導き出されたリアルタイム信号を表示するように設定される、つまり、これは各電極と関連したそれぞれの記録チャネルを有している。
ix)(メインなどの)電気干渉の考えうるソースは可能ならば切断する。
x)コンピュータ36はボックス34からのコンポジット原データを記録して、これらを更なる分析および処理のためにそのハードディスクに保存し、かつ/またはこのようなデータを連続的に処理および表示してもよい。
【0047】
次に図5を、そして図3および図4をもう一度参照すると、コンピュータ36内の信号処理は一般的に、ソフトウェア実現手順50のフロー図によって示される。コンピュータ36はリードボックス34から、それぞれの信号電極1から12に関連する12個の別個のディジタル信号を受信する。コンピュータ36はこれらのディジタル信号を2個の処理スレッドを介して並行して処理する。ソフトウェアで実現された2個のフィルタ52および54はそれぞれ子宮スレッドおよび心臓スレッドを定義しており、また全12個の信号は両者によって並行してフィルタリングされる。
【0048】
子宮フィルタ52は子宮活動を分離するものであり、減衰が60dBで、パスバンドが0から3Hz、ストップバンドが7Hzである9個のタップのローパス無限インパルス応答(IIR)バターワース(Butterworth)フィルタである。これは3.5Hzの3dBポイントと、0.01dBのパスバンドリップルを有している。子宮活動の低周波数成分を保存する必要があるために、ハイパスフィルタリングを有していない。フィルタリングは、既知の種類のゼロ位相フォワード/リバースディジタルフィルタリング技術を使用して実現される。
【0049】
fECG信号について、信号サンプリングは、子宮信号に必要な周波数の10倍を超える最低512Hzの周波数でなければならず、これは、後者のほうが低い周波数コンテンツを有しているからである。ボックス34からの全信号はfECGに適したレートでコンピュータによってサンプリングされる。子宮フィルタ52によってフィルタリングされた信号は次に56で、約50Hzサンプリングレートまで、因数10(データの90%削減)によって低下させられて、不要な周波数バンドを拒絶することによって計算を少なくし、信号分離を改良する。後続の処理のために異なる局所化グループの電極からの信号の選択を可能にするので、52で全12個の信号をフィルタリングおよび縮小することは便宜的である。
【0050】
58において、一部の信号は、選択された電極からのみの信号に集中するように省略されている。本例において、これらの信号のうちの5個だけが子宮チャネルに保持されている。5個の保持された信号は、34での処理後に図4の電極7、8、10、11および12から得られたものである。60において、ブラインド信号分離(BSS)が(後述のように)実行されて、異なるタイプの信号(またはソース)を分離する。引き続き、62において、分離された信号は子宮またはその他に分類される。(複数の)子宮ソースは他の分離アーチファクトからマニュアルで、または自動的に抽出されて再構築されてもよい。これは子宮活動に関する重要な特徴を識別するために64で引き続きパラメータ化されて、66で表示される。
【0051】
同様に、fECGフィルタ54はfECG活動を分離する。これは6個のフィルタタップのハイパスIIRフィルタと、9個のフィルタタップのローパス有限インパルス応答(FIR)フィルタとから成る。ハイパスフィルタは、パスバンド2Hz、ストップバンド0.1Hzおよびストップバンド減衰120dBのIIRバターワースフィルタを使用して設計されており、1Hzの3dBポイントと、0.01dBのパスバンドリップルをもたらす。ローパスフィルタは、バンドエッジ150Hzのブラックマン(Blackman)ウィンドウを使用して設計される。フィルタリングは、ゼロ位相フォワード/リバースディジタルフィルタリング技術を使用して実現される。54でフィルタリングされたディジタル信号が68で処理されて、異なるタイプの信号を分離する。引き続き、70において、分離された信号はfECGまたは母体に分類される。子宮信号と同様に、次いでfECG信号は重要な特徴を識別するために64でパラメータ化されて、66で表示される。子宮信号はfECG信号と共に表示される。
【0052】
60および68でのブラインド信号分離つまりBSSについて次に説明する。「ブラインド」という表現は、信号混合物を形成する信号特徴やプロセスについて何も想定されていないことを示す。これは、到着方向、周波数、波形、タイミングおよび変調などの信号特徴の予知に左右されない。BSSは、信号が統計的に独立しており、また定常性および線形性が広がることを要しているにすぎない。定常性とは、信号およびその混合チャネルが経時的に変化しないことを意味している。線形性とは、信号混合物が異なる信号の線形組み合わせであることを意味している。
【0053】
図4に示された電極配置を使用して子宮およびfECG信号の分離を調べる際に、既知の一般的な形態のBSSである独立成分分析(ICA)は有用なfECG結果を生成したが、それほど有用な子宮結果は生成しなかったことが分かった。これは以下のように調べられた。対象の子宮信号は、電極10から12のレベルで陣痛時に子宮上部により集中しているペースメーカー細胞によってトリガされる子宮収縮より生じる。収縮は2cm/secで子宮の下へ比較的ゆっくりと進行するため、収縮は子宮の上部から開始されると、図4の一番下の電極1および2のレベルに達するのに12秒かかる。従って非定常性である。(他の理由ゆえに好ましい)本例において用いられたICAのバージョンは定常信号に制限される。例えば電極1および12からの信号はそれぞれ子宮信号の非遅延および遅延バージョンを提供してもよく、ICAは遅延信号を、相対的遅延とは異なり、同じ信号ではなく非遅延信号への異なる信号として扱う。同様に、ペースメーカーおよびペースメーカー追従細胞の異なる組み合わせによる子宮筋層全体にわたる活動電位の形態の変化がセンサよりも多数のソースをもたらすことがあり、これは、ICAは完全な信号分離を提供しないことを意味している。
【0054】
陣痛時にリアルタイムで、または可能な限り最短の遅延で結果を得ることができるように、複雑すぎないICAなどのBSSアルゴリズムを使用することは重要である。多くのICAアルゴリズムは、瞬間混合問題と称されるBSS問題の最も単純な形態を目的としている。ここでは信号はアレイの各センサに同期的に到着するものとされる。
【0055】
ICAなどの多数の異なるアルゴリズムは瞬間混合問題を解決するために使用可能である。残念ながら、瞬間混合問題に適したアルゴリズムは、混合信号の相対的遅延を伴い、数学的には畳み込みと表現されるより困難な問題に直面する際に上記結果を経験する。「畳み込み混合」問題は国際公開第03/073612A2号パンフレットに説明されているように対処可能であるが、処理負荷は大きく、リアルタイムの適用でのその使用に対して不利である。
【0056】
子宮信号遅延問題を解決するための別のより簡単なアプローチが発見された。子宮から離れた腹部の表面に電極が置かれて、伝搬時間遅延が母親の体内で発生した関連収縮から経過した後に、電極は子宮信号を受信する。子宮信号の良好な分離は、局所化グループの電極にその収集を制限することによって得られることが分かった。このグループは、十分に類似した子宮信号の受信に対して時間遅延を有し、信号分離プロセスを提供して、子宮負担を同じ信号として扱うように選択された。
【0057】
加えて、局所化グループの電極を使用することは、活動電位の形態を変化させる子宮筋層全体にわたるペースメーカー細胞に起因しうる子宮ソース数を制限する。図4の任意のグループの隣接電極はこれを満たす。しかしながら、今日まで行われてきた試みにおいて、雑音比に対する最強信号と最良信号は、へそNの近く/これと同じレベル以上の図4の電極7、8、10、11および12から得ることができるが、それは、これらの電極が、子宮の収縮波を開始するペースメーカーとして作用する細胞が集中している陣痛時の子宮上部の位置の比較的近くに、また実質的にここから等距離に配置されているからである。従って、電極7、8、10、11および12は相互に対する重大な遅延なくそれぞれの子宮収縮信号を受信する、つまり、相対的遅延は、ICAなどの瞬間アルゴリズムからの結果について妥協するのに十分ではない。これらの電極はまたそれぞれの子宮収縮信号を、子宮筋層にわたる複数のペースメーカー部位ではなく局所グループのペースメーカー細胞から受信する。この局所化グループの電極は、定常信号を刺激させる非定常性子宮信号の効果を制限して、ICAアルゴリズムによる処理のためのソース数を制限する。
【0058】
データの畳み込み性質に起因してソース数を最小化する別のアプローチは、時間遅延が周波数ビンの使用によってモデル化されるような、時間ドメインではなく周波数ドメインについて考慮することである。多数の周波数が各々に必要な順列/振幅補正と共に考慮されなければならないため、これは固有の問題を有する。簡単なアプローチは、Dapena A.およびServiere Cによって、ICA2001「畳み込み混合のブラインド分離のための簡単な周波数ドメインアプローチ(A simplified frequency−domain approach for Blind Separation of Convolutive mixtures)」において論じられている。周波数ドメインアプローチの主な欠点は、子宮筋層全体にわたる非定常性子宮活動の周波数コンテンツの分析においては有用なツールであると証明可能であるが、非常に計算が多いことである。ICAは既知の分析技術である。例えば、Kluwer Academic,Boston(1988)によって発行された、T−W.Leeによる「独立成分分析−理論と応用(Independent Component Analysis−theory and applications)」を参照されたい。本例で使用されるICAアルゴリズムは、EUSIPCO’98、ギリシャのロードス島(Rhodes,Greece)、1998年9月8日から11日に、I.J.Clarkeによって、「判別としての非ガウス的性質の直接活用(Direct Exploitation of non−Gaussianity as a Discriminant)」において開示されているものである。これはとりわけ効果的であると分かった。ICAは、子宮の電気的活動の抽出にはこれまで適用されたことがない。子宮筋電図検査はしばしば1対の腹部電極を使用して調べられていたが、ICAは理想的には、少なくともソースと同数のセンサを必要としており、これは複数のペースメーカー部位と非定常信号によってもたらされる問題につながる。さらに、数分にわたって記録されたデータを具備するICAによる生物信号の分離の成功は、生物信号混合物と、経時的に変化する電磁的干渉とによって困難である。
【0059】
ICAは、信号が統計的に独立していることを保証するのに十分に長いブロックにおいてデータが処理されることを必要とする。Z.MarkowitzおよびH.Szuによって、「区分時系列のブラインド偏析リアルタイムアルゴリズム(Blind Demixing Real−Time Algorithm of Piecewise Time Series)」、神経ネットワークに関する国内合同会議(Internal Joint Conference on Neural Networks)IJCNN’99、pp.1033−1037、1999年において説明されているように、ICAは、それが任意の順序で一時的な独立ソースに割り当てた信号を返すという点において曖昧性を有している。あるいは、これは順列の問題として既知である。分離された信号は、隣接するブロックの信号とは通常異なり、かつ未知の順序でブロックに返されるために、ブロックにおけるデータ処理を困難にしている。これは信号スワッピングと称され、信号がブロック間で追跡不可能であることを意味している。本例では、各データブロックからそれぞれの直後のブロックに先行データを導入することによって対処される。信号スワッピング問題を解決するために、隣接ブロックX1およびX2と、X2およびX3などの対が十分に重複されて、例えばX2はX1のサンプルと相関したサンプルを含むこととなる。そして相関スキームが適用されて、ブロックごとにICAによって判断された独立ソースを再配列して、信号スワッピングを補正する。これは、ICAにおいて生成された混合行列Mを変更して、独立ソースを変化させるX2には重要なアーチファクトは全く導入されず、相関スキームは失敗すると想定している。正確な重複は重要ではなく、経験によって最適化されてもよいが、この発生の確率はブロック長の、例えば50%の重複を使用することによって低下させることができる。結果は、対象信号の単一チャネル上の連続信号である、つまりチャネル間でスワップされない。
【0060】
結果として、子宮信号に対してICAを実行するためには、58から記録されたデータは、500個のサンプル(サンプルウィンドウ)の連続するより小さなブロックにセグメント化された。各サンプルはデータのスナップショットである、つまり5個の同時記録された信号からなっており、このような信号の1つは電極7、8、10から12の各々からのものである。各データブロックは50%の重複つまり冗長性を有する約10sec長であった。つまり各ブロックの前半はその先行ブロックの後半であった。従って、各ブロックは、その前半および後半の250個のサンプルを先行および後続のブロックとそれぞれ共有する。ブロックはコンピュータ36においてICAによって個々に処理された。入ってくるデータストリームはまず500個のサンプルウィンドウを1個のデータブロックで満たして、ICAアルゴリズムは既知の方法で偏析行列(de−mixing matrix)を計算する。そして偏析行列は、コンピュータメモリへの各サンプルストリームとして、一度に各センサから1個のサンプル(スナップショット)ずつ、入ってくるデータに適用される。平均時において、ウィンドウは次のデータブロックによって「ファーストインファーストアウト」で更新され、ここから新たな偏析行列が計算される。新たな更新済み混合行列は、ウィンドウ長の50%が更新されて補正スキームの実現が可能になった場合に計算された。この技術は、少なくとも更新済み混合行列を計算する時間の間は不変のままである偏析行列に左右される。他の値が使用されてもよいが、10secの縮小されたウィンドウ/ブロックサイズおよび50%の重複は有効であると判明した。サンプリングインターバルが計算的制約によってそれを更新するとスライディングウィンドウの混合行列は同じレートで現在は再計算不可能であるために、上記スキームが用いられる。しかしながら、ICAアルゴリズムの計算の改良によって、また信号スワッピングを目的とする更なるアルゴリズムベースのスキームによって、各サンプルの入力に応答して、あるいは少なくとも重要でない時間フレーム、つまり1秒より短い子宮収縮において、ICA導出偏析行列を更新可能になるだろう。これは、新たな偏析行列が計算されるまで偏析行列が不変のままであるという前提に頼る必要性を排除する。この前提の必要性を排除する技術は、2003年11月14日の英国特許出願第GB0236539.4号の主題である。
【0061】
以下においては、この具体的な技術を使用することは必要不可欠ではないが、好都合であると分かったICAアルゴリズムの実現に関する具体例を説明する。これは、EUSIPCO’98、ギリシャのロードス島(Rhodes,Greece)、1998年9月8日から11日に、I.J.Clarkeによって、「判別としての非ガウス的性質の直接活用(Direct Exploitation of non−Gaussianity as a Discriminant)」において説明される。次にICAについて詳細に説明する。これは、子宮監視のための5個の電極7、8、10、11および12からの信号と、fECG監視のための全12個の電極1から12からの信号とを分析するために60で使用される。ICAは、各々は未知の潜在的ソースsjの線形または非線形混合であるという前提に基づいて観察されたコンポジットデータ変数xi(i=1〜n)についての分離方法を定義している。混合プロセスもまた未知であり、ソースは、統計的に相互に独立であり、かつ非ガウス的であると想定される。
【0062】
インデックスiは関連データに関する電極参照番号1から12(図4)によって与えられる。つまり電極iはリードボックス34によって処理される信号を生じ、フロー図50(BSSによるがこれは含まない)に示されるように信号xiを提供する(ここで、本例ではi=1〜nかつn=5(子宮)かつn=12(胎児)である)。各信号xiは34でディジタル化され、そして多数の(例えばm個の)記録データの時間サンプルを備える。総合的にn個の電極の各々と関連した信号のm個の時間サンプルは、処理されたディジタル信号のm×nデータ行列Xを形成する。データ行列Xから、各センサ出力xiがsjの異なる線形組み合わせ、つまり
【数1】
として書き込まれるように、ICAアルゴリズムは混合行列Mと1セットのn個の独立ソースsj(j=1〜n)とを生成する。
【0063】
ここでXは、その列がnセットの処理済み電極信号xiである行列であり、Sは、その列が1セットのn個の独立ソースsjであるm×n行列である。混合行列Mの逆行列である、つまりその積が単位行列である偏析行列Wが次に定義される。このようにしてコンポジットデータXは異なる対象独立ソースsjに分離される。
【0064】
偏析行列Wは、例えば特異値分解(SVD)を使用する正規直交基底の生成と、それらを統計的に独立させるための微調整との2段階で推定可能である。第1の段階において、SVDは(m×n)行列Xに対して実行可能である。SVDは既知の非相関/正規化技術である。行列XのSVDは以下のように表すことができる。
【数2】
【0065】
ここでUおよびVはそれぞれ正規直交(m×m)および(n×n)行列であり、λは正の実数対角要素(SVDの特異値)が降順で配置されている(m×n)対角行列である。
【0066】
Uの列はXの左の正規直交特異(時間)ベクトルであり、これらはソースsjについての情報を含む。Vの行はXの右の正規直交特異ベクトルであり、これらはソースsjの空間分布についての情報(つまり各センサでの大きさ)を含む。特異値λは、個々の時間特異ベクトルと関連した電力レベルに関連している。
【0067】
一般的に、(Uの列に含まれている)推定信号は完全には分離されていない。信号を分離するSVDの失敗の原因は、行列UおよびVの両方にユニタリであることを強制する点である。これは第2の順序非相関方法であるために、SVD方法に固有であり、1セットの信号における信号対間の全類似性を除去することを意図している。数学的には、これは、分解されたベクトルは直交になることを意味している。多数の「現実の(real−life)」信号において、信号の(Vの行に含まれている)空間情報は類似しており(相関しており)、これらを異なるものとする解はこれらの分離に成功しない。
【0068】
欠落している回転行列の判断は高順位統計(HOS)の使用を必要とする。未知の独立信号を分離するためのHOSの使用はしばしば独立成分分析(ICA)と称され、これは分離プロセスの第2段階である。
【0069】
行列Xは以下のように表すことができる。
【数3】
【0070】
ここで、Rは(m×m)回転行列を示しており、RTはその転置行列を示している。RRTが恒等行列Iに等しくなるようにRはユニタリ行列である。回転行列はUに含まれる推定信号を使用して判断される。
【0071】
一般的に、q個の信号について(ここでq≦m)、Rは(q×q)行列を示しており、Uは(m×q)行列を示しており、λは(q×q)行列を示しており、Vは(q×n)行列を示している。式(3)において、推定信号はURに含まれており、推定混合はRTλVによって定義される。
【0072】
分離プロセスは信号の混合プロセスを、回転、伸張および剪断の複雑な組み合わせとして扱ってもよい。非相関は伸張および剪断効果を除去して、信号を分離するためには回転のみが適用されればよい。回転は剪断や伸張を適用できないために、非相関を無効にすることができない。
【0073】
Rの計算方法は、すでに言及されているI.J.Clarkeの参照において説明されており、他の技術もまた既知である。このモデルは、ソースsjはポイントソースであると想定しており、これは明確には、有限である子宮活動電位などの生理ソースの場合ではない。複数の分離ソースが明らかに、より便宜的な単一ソースではなく異なる形態の子宮活動について発見されたことは、これらの環境におけるICA計算の結果である。12個の腹部センサが図4に示されているように子宮の監視に使用された場合、子宮活動のうちの3から7個の明らかなソースはICAによって発見され、その数は、電極/ソースの近接、子宮の収縮の範囲、および表面への電気伝導性などの要因に左右される。追加ソースは、母体ECGと、胎児および電極移動アーチファクトと、電磁干渉とに関連するソースである傾向がある。12個の電極がfECG分離に勧められるのに対して、上記のように5個の電極は本例の子宮活動の分離に使用されてもよい。この電極数を使用することは、腹部全体にわたって見られる非定常性子宮活動に関連する問題を削減し、また子宮活動を単一のソースに縮小する。子宮活動を表していない追加ソースが、母体/胎児ECG、モーションアーチファクトおよび電磁干渉などのアーチファクトから構成可能になる。
【0074】
ICAを使用して子宮活動を監視する際の非局所化電極の使用から生じる問題を示すために、12個の信号は、図4に示されるような電極を使用して、単独の(胎児1人の)妊娠時に、陣痛初期の30分にわたって記録した。信号は、子宮活動の抽出に適した0.3から4Hzの周波数帯域において、52でフィルタリングされた。これらの信号の130秒の拡大は図6に示される。信号は左側に1から12の番号が付されて、各場合の関連電極を示している。全12個の信号において、約45秒の子宮活動は、母体ECG負担によって破損しているが、括弧80の真下の領域には見られる。この負担は信号10で見ることができ、ここでは最強であり、子宮信号の低周波数活動電位の小さなスパイクによって識別される。これはまた多数の他の信号でも見られる。これはまた、80の下の子宮活動や収縮を越えて生じる信号12で示される陣痛と関連した別の筋肉/移動アーチファクトによって破損される。図6は、子宮収縮に関する情報は、異なるソースからの異なるタイプの信号の混合ゆえに解釈が困難でありうることを示している。
【0075】
次に図7を参照すると、ICAは図6の信号1から12に適用されて、結果は(左側にマークされている)個別ソースS1からS12として示されている。これらのソースは正規化垂直スケール(図示せず)で示されており、各ソースは単位電力を有しており、またこれらは水平時間軸(図示せず)に対してプロットされている。子宮信号の形態は既知であり、図2に示されており、これは分離ソースS1からS12の各々と比較される。ソースS2からS6と、S8およびS9はすべて、S2からS9から増加する相対的遅延を有する図2に類似の構成を示している。これは、7個の子宮ソースが存在する(より便宜的には1つだけである)ことをICAが表していることを示す。上記のとおり、これは子宮活動の非定常性によるものである。また、活動電位は子宮筋層の異なるペースメーカー部位から同時にトリガされてもよい。これは、より多くの子宮ソースの作成に関する更なるメカニズムである。これらの効果の両方とも、上記の使用可能な電極1から12のサブセットの使用によって軽減される。
【0076】
S1、S10およびS11は、別個のソースに分離された母体ECG/呼吸アーチファクトである。このアーチファクトは図6に示された信号1から12のすべてで見ることができた。ICAは単一ソースS12に大きなアーチファクトを分離しており、これは子宮信号を生じる子宮収縮の期間より長く持続する。S12は主に図6の信号12に貢献したが、他のこのような信号に干渉もした。
【0077】
図8は、子宮信号に使用される電極の局所性を制限することによって得られた改良を示している。4個のソースのみが示されている点を除いて図7と同じである。5個の信号電極から導き出された信号の使用については上述したが、図8の場合は、4個のこのような信号のみが使用されており、これらは図4の電極7、8、10および11を介して導き出された。十分に局所化されている限り、任意の数の電極をこれに関して使用可能である点が付け加えられるべきである。
【0078】
4個のソースは左側にSS1からSS4と参照番号を付されて示されている。これらのソースと図2との比較は、子宮活動はSS1にのみ現れることを示している。言い換えると、子宮活動は、元々は図6に示されているアーチファクトなしに単一のソースSS1に分離されていた。ソースSS2は母体の心拍および呼吸の周期性を有しており、母体ECGおよび呼吸アーチファクトはまた単一のソースSS2に分離される。残りの未識別アーチファクトは2個の明確なソースSS3およびSS4となる。SS1つまり図2との類似性がないために収縮活動とは関連しておらず、認証のために分娩監視装置と並行して監視された子宮活動つまりSS1の収縮の期間より長く延長する。
【0079】
図6、7および8は、子宮信号の伝搬遅延がICAに関して極めて類似している局所化されたセットの電極を選択して、これらの電極からの子宮信号への負担を1つの信号として扱うことは容易であることを表している。試行錯誤して局所化グループを選択して、幾つの子宮信号が各場合にICAで分離されるかを見ることさえできる。複数の子宮ソースが不要なアーチファクト除去によって各電極位置で選択および再構築されてもよいが、ICAは好ましくは1個の子宮信号のみを分離すべきであるということが基準である。
【0080】
分離されたソースから子宮収縮を抽出するために、各電極の出力は子宮活動からの負担のみを使用して再構築可能である。つまり、各電極跡はまずソースの混合としてモデル化されてから、これらの対象ソースのみを使用して再構築される(
【数4】
jは特定の分離ソースに関連するインデックスに制限されている)。これは、子宮活動が容易に明らかであり、また他のソースが抑圧されていた修正信号を生じる。
【0081】
本発明の本実施形態において、必要なソースの選択はマニュアルで行われて、各分離ソースに隣接するコンピュータ36に表示されたソース選択アイコンを使用して実現される。各アイコンは、ソースの破棄を意味する「いいえ」インジケータと、その使用を意味する「はい」インジケータ間でトグルされてもよい。これを自動化して、オペレータの介入なしに子宮活動を表示することができる。自動化は適応しきい値ピーク検出ルーチンを使用して、子宮活動の活動電位を検出してもよい。これは各分離ソースの統計に適合して、子宮活動のエンベロープを検出する確率を最大化する。妊娠中に監視をする一方で、このプロセスは、収縮ソースが発見されて、かつ全チャネルが監視を必要とするまで数分かかることがある。収縮ソースが識別されると、これはこの技術を使用して監視されて、収縮活動の各バーストは更なる分析用のウィンドウによってマーク可能になる。このような分析は、FastLOWおよびFastHIGHと称される高速波子宮活動の2つのカテゴリを識別するためのスペクトル分析であってもよく、これは陣痛の開始のインジケータとして使用可能である。
【0082】
図5の68においてfECG信号を抽出するために、手順は、全12個の信号電極1から12から導き出された信号が使用される、つまり患者の腹部全体にわたることを除いて、子宮活動の監視に関する。胎児の心臓は小さく、その結果胎児心電図は、均一な伝導媒体によって囲まれたポイントソースとしてモデル化できるために、子宮信号と比較して、fECGにおける信号分離は非定常性によって複雑化されない。従ってfECGはICAのために定常性を有する。
【0083】
子宮活動を、妊娠中に電極信号から容易に抽出できるようにする際に雑音の削減が重要であるが、明らかに雑音を含んだ信号は依然として使用可能であるとわかる。これは、ICA技術が分離可能な雑音を破棄するために分離するからである。しかしながら、分離可能な雑音は必ずしも電極信号の分離不可能な雑音と区別可能であるわけではなく、可能な限り雑音を削減することが重要なのである。
【0084】
腹部表面の強度マップは、各信号電極iの所望のソース番号j(またはソースの組み合わせ)の係数
【数5】
の強度に従って信号電極の幾何学的配置のマップを隠すことによって分離ソースから生成されてもよい。より明るい領域を使用してより高レベルの信号強度を示し、これによって、非定常子宮信号から得ることができたであろう複数の子宮ソースの位置は、腹部のそれぞれの位置で識別可能になる。これは、進行性および非進行性収縮の洞察と、また子宮筋層にわたる伝搬メカニズムの更なる分析とを提供することができる。
【0085】
ICAを使用して信号分離を実行することは必要不可欠なことではないが、この技術と、参照されているそのI J Clarkeバージョンは好ましい。他の信号分離アルゴリズムも既知であり、例えば、1バージョンの畳み込み混合を提供するだけでなく瞬間かつ畳み込み混合に関して従来技術を再検討している国際公開第03/073612A2号パンフレットを参照されたい。標準バンドパス周波数フィルタリングを従来技術で使用して、信号が最強である場合にとりわけ陣痛における子宮活動を観察していた。しかしながら、ICA/Clarke技術は、かなりの不要なアーチファクトがある妊娠および陣痛時の子宮活動の詳細な分析に対して好ましい。実質的な周波数フィルタリングは、所望の信号およびアーチファクトの重複する周波数範囲ゆえに対象信号を除去または劣化させることがある。加えて、ウェーブレット雑音除去スキームが上述のように使用されており、これは(BSSとは異なり)干渉アーチファクトの先行知識に左右される。
【0086】
プロトタイプ装置を使用して、信号電極1から12と、接地および基準電極GおよびRの完全アレイを適用して、監視が開始されるのに約5分かかることがわかった。しかしながら、上記のとおり、子宮活動の取得には、少数の、3個の信号電極がうまく用いられている。さらに、数学的信号処理技術およびハードウェアの改良によって電極数は、fECG取得のための8個よりも少なくなることを可能とし、これはより広い周波数スペクトル、ひいてはより可能なソースを伴う。
【0087】
電気保護電位はスクリーンリード32の遮断に適用されてもよい。これは、リードキャパシタンスの効果と、入力キャパシタンス間の不一致の効果を削減する。これは、差動増幅器37によって拒絶された検出信号の共通モード雑音成分を増大させる。保護電位は対象信号電圧に類似していてもよいが、遮断は、例えば対象信号によって駆動された電圧追従などの低インピーダンスソースから駆動されなければならない。
【0088】
図9は、上記の同時に分離されたソースを表示する際の使用に適したディスプレイモニタ90を概略的に示している。モニタ90は分離された電気的子宮活動92と、fECG96から導き出された瞬間心拍94とを示している。陣痛時に胎児はかなりのストレスを受けるために、このように母体および胎児のパラメータを監視できることは極めて有用である。母親および胎児をリアルタイムで、またはこれに近い状態で監視することによって、ストレスが危険なほどに増加した場合に、医師が介入することができる。上記の例において、結果は1secの処理遅延によって得られた。
【0089】
様々なパラメータが、90などのモニタへの表示および出力のために、図5の64でセットアップされてもよい。例えば、
i)病院の記録に関する患者の詳細
ii)生の、コンポジット、マルチチャネル腹部入力データ(ユニポーラまたはバイポーラ構成)
iii)例えば子宮、胎児、母体の対象ソースのマニュアルまたは自動選択用アイコン
iv)不要な負担を排除するための、選択ソースによってスパンされたサブ空間へのデータチャネルの付与
v)基準マーカーとして使用する子宮活動電位ピークと活動電位のバーストの位置
vi)収縮バーストを表示することによる各収縮イベントに関する活動電位のバーストの周波数スペクトル
vii)胎児の動きのマーキング
viii)瞬間胎児心拍に対する子宮収縮
ix)fECGリズムストリップに対する子宮収縮
x)電気フォーマットまたは分娩監視装置フォーマットのいずれかにおける子宮活動
xi)胎児の状態を示すfECGと胎児の危険を示すアラームについての、Dawes Redmanなどの基準
xii)子宮収縮情報、fECGリズムストリップおよび胎児心拍などの対象パラメータによる患者の記録
xiii)患者データのデータベース
xiv)例えば心音、心拍または波形の構成などの精密な詳細に焦点を当てるズーム機能
xv)心拍変動性、ST上昇、および子宮の収縮と組み合わせて胎児の状態を診断する際に有用であろう他のインターバルなどのパラメータ
【0090】
次に図10を参照すると、本発明の更なる実施形態130が示されている。これは装置30に類似しており、上記の同様のパーツは100で始まる参照番号が付されているが、さらに説明されてはいない。本実施形態130においては、リードボックス134が、149bで示された対応する受信機と通信し、かつコンピュータ136に接続されたアンテナ149aによって概略的に示される送信機に接続される点においてのみ先行実施形態30と異なっている。リードボックス134からコンピュータ136への送信機/受信機リンクによってリードボックス134は、患者の近く、またはその上に置かれることが可能である。このような送信増幅データによってスクリーンリード32は、以前よりも短くなる。これらは近くのリードボックス34に届きさえすればよいのである。このことはさらに、雑音ピックアップおよび信号損失の範囲を縮小する。加えて、長く延びるリードと、リードのコンピュータ136への物理的接続の欠如によって、母親はリードや電極を切断する必要なく歩行可能になり、潜在的には、記録がとられる際に母親をよりリラックスさせることができる。
【0091】
次に図11を参照すると、本発明の更なる実施形態230が示されている。これは装置30に類似しており、上記の同様のパーツは200で始まる参照番号が付されているが、さらに説明されてはいない。各電極201などはまず233にはめ込まれて示されているそれぞれの前置増幅器231に接続されており、各ユニット231はリードボックス234に接続される。適切な前置増幅器は既知であるので説明はしない。前置増幅器231はそれぞれの電極201などに隣接して配置されて、前処理段階を提供する。これらはリード232に沿って伝搬する信号を増幅して、それによって信号はより大きくなり、(装置30と比較して)、リードが暴露されている電気的かつ磁気的雑音ソースに対して比較的免疫がある。
【0092】
本発明を他の用途に使用して、ヒト以外の種を含む他の器官の定常および非定常筋肉活動を監視してもよい。平滑筋は、腸、動脈および静脈、膀胱、分泌腺を含む子宮以外の他の器官の壁を裏打ちする。その主要な役割は、それが取り囲む器官内腔の直径を調整することである。平滑筋は低速の収縮と、低エネルギーコストで長期間収縮を維持できる能力とによって特徴付けられている。これはまたその神経支配(神経分布)と伝搬特徴とによって特徴付けられてもよい。子宮、消化管および膀胱は、小面積の神経支配と、ギャップ結合を介する強力な電気的結合とを示している。従って、本発明を使用して、例えば膀胱の筋電図を検出および分類することによって膀胱機能を監視してもよい。これによって膀胱の排尿筋は、機能障害、不安定性、無反射または過剰反射、および排尿筋と尿道括約筋との連携の欠如について判断されるようになる。この方法は、患者の予備的な非侵襲性排尿水力学的分析を可能にし、または侵襲的な排尿水力学的テストへの非侵襲性フォローアップを実際に提供してもよい。排尿筋および括約筋の活動の特徴付けは、種々のタイプの失禁においてとりわけ有用である。例えば、
目を覚ますように警告する音の聞こえる患者の夜尿、
排尿筋の状態を示して、不随意収縮を予測する急迫性尿失禁、
排尿筋の休止トーンによって膀胱容量のマニュアル表示を提供する溢流性尿失禁、および、
膀胱容量の表示としての妊娠に関連する失禁、である。
【0093】
同様の技術はまた消化管および下部腸管に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の分娩監視装置および装置によってそれぞれ記録された、時間に対する子宮の機械的かつ電気的活動のプロットを提供する図である。
【図2】図1の子宮の電気的活動の単一のバーストを、水平および垂直に拡大して示す図である。
【図3】本発明に従った、子宮活動と、fECGと母体ECGとを同時に記録するための装置の概略図である。
【図4】腹部の電極配置の概略図である。
【図5】コンポジット信号から子宮信号およびfECG信号を同時に分離するためのコンピュータ実現プロセスのフロー図である。
【図6】図4に示されている電極配列を使用して記録されたコンポジット信号を示す図である。
【図7】図5のプロセスを使用してコンポジット信号から分離された独立信号ソースを示す図である。
【図8】図7に相当するが、信号の非定常性に対して処理を鈍らせるように配置されている少数の局所化電極に対応している図である。
【図9】瞬間心拍およびfECGに伴う子宮の電気的活動を示すビジュアルディスプレイユニットを概略的に示す図である。
【図10】処理とは無関係の信号記録を示す図である
【図11】電極搭載バッファ増幅器の使用を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的筋肉活動を非侵襲的に監視するための方法および装置に関する。とりわけ、妊娠および陣痛時の子宮収縮の監視に関する(しかしこれに限定されない)。
【背景技術】
【0002】
子宮筋層活動は妊娠および陣痛を通して変化する。子宮筋層−子宮の筋肉領域−は決して完全には緩和せず、妊娠初期から一定間隔で収縮する。これらの収縮は痛みがなく、ブラクストン・ヒックス(Braxton Hicks)収縮として知られている。妊娠の第2期の終わりまでには、子宮活動は、ほぼ毎分小さな局所的収縮に制限されており、30分から60分ごとに大きな収縮がある。これらの大きな収縮は、陣痛の開始まで第3期を通して頻度および強度が増す。陣痛の開始は、痛みを伴う収縮の頻度と、頸部の進行性開大に基づいた主観的判断である。早期陣痛は依然として新生児の死亡および疾病の主要原因である。Costeloe K、Gibson AT、Marlow N、Wilkinson ARによる現在のEPI治療(EPIcure)研究は、「瀕死の状態で生まれた新生児の退院に対する結果(The outcome to discharge from hospital for babies born at the threshold of viability)」に注目している。これは、イギリスで妊娠23週から25週で生まれた新生児の約50%が、重大な長期にわたる障害を有するということを示唆している。正常な陣痛を通して、収縮の強度、頻度および期間は10分毎に2回から4回の収縮に増え、初期の陣痛では20秒から、陣痛の第1段階の終わりまでには40秒から90秒へと漸進的に長くなる。これは、Llewelyn Jonesによって「産科学および婦人科学の基礎(Fundamentals of Obstetrics and Gynaecology)」に説明されている。従って、早期陣痛の事前警告を与えるために、子宮活動を定期的に監視することは非常に望ましい。
【0003】
子宮の収縮を監視するための既存の方法は主観的であり、原則として陣痛の開始を予測するためには収縮の頻度だけに頼っている。妊娠中、これは一般的に、とりわけ最初の妊娠においては正確さに欠ける症候性自己監視に頼っている。第3期には、分娩監視装置(tocodynamometer)を使用してもよく、これは、子宮が腹壁にかける圧力を監視する圧力トランスデューサである。これは腹部の周りに固定されて、収縮の頻度を示し、収縮の大きさを主観的に測定するものであり、トランスデューサが適用される圧力と場所の影響を受けやすい。
【0004】
子宮内圧力モニタは、子宮圧を判断するための既知の正確なツールである。子宮腔に経頸管的に置かれたカテーテルによって子宮内および羊膜の液圧を検出および測定するように設計されている。これは、子宮の収縮の強度、期間および頻度を監視するために使用される。上記のパラメータを監視する際のその正確さにかかわらず、これは体内への侵襲性手順を伴い、一般的に臨床環境でのみ使用される。確実な非侵襲性技術が使用可能ならば、これは臨床医学者によって容易に受け入れられるであろう。
【0005】
子宮筋電図(EMG)つまり子宮筋電図検査(EHG)は1849年に発見された。長年の研究にもかかわらず、確実な非侵襲性EHG測定を得ることの技術的困難によってこれは他の電気生理学監視技術に比べてかなり実用的でないものになってしまった。多数の研究は既に、侵襲性手段を介してEHGを記録しており、また収縮活動のメカニズムを理解しようと試みていた。Garfieldらの「子宮筋細胞収縮のコントロール:ギャップ結合の役割および調整(Control of Myometrial Contractility:Role and Regulation of Gap Junctions)」Oxford Rev.Reprod.Biol.10:436−490、1988年;Devedeux D、Marque C、Mansour S、Germain G、Duchene J、1992年、子宮、子宮筋電図検査:産科学および婦人科学についてのアメリカン・ジャーナルの批評(Uterine、electromyography:a critical review、American Journal of Obstetrics and Gynecology)、VOL.169、No.6 pp1636−1653。
【0006】
多数の研究は、信号の雑音除去および不要な生物アーチファクトの除去は、良好な解釈に必要であることを認めているが、EHGの非侵襲性経腹壁的記録は、差動対の電極を中心とした信号取得機器を使用して可能であることを示してきた。これらの研究には、Simpson N.A.B.らによる、1998年「ヒトの妊娠の陣痛の開始に関連する子宮の電気的活動の変化(Changes in uterine electrical activity associated with onset of labour in human pregnancy)」、生理学ジャーナル(Journal of physiology)507.P、68P;Lenman H、Marque Cによる「子宮筋電図検査信号における母体心電図の拒絶(Rejection of the Maternal Electrocardiogram in the Electrohysterogram Signal)」、2000年、IEEE Transactions on Biomed.Eng.Vol.47、No.8がある。
【0007】
子宮EMGの抽出の確実性を改良して、その正確な分類を可能にするために、より最近の研究は、早期陣痛の予測を可能にするための収縮性波形の雑音除去および妊娠中の収縮の特徴づけに関している。Carre P、Lenman H、Fernandez C、Marque C、1998年、「非破壊ウェーブレット変換による子宮EHGの雑音除去(Denoising of the Uterine EHG by an Undecimated Wavelet Transform)」、IEEE Transactions on Biomed.Eng.Vol.45,No.9;Khalil M、2000年、子宮EMG分析:変化検出および分類のための動的アプローチ(Uterine EMG Analysis:A Dynamic Approach for Change Detection and Classification)」、IEEE Transactions on Biomed.Eng.Vol.47,No.6を参照されたい。
【0008】
さらなる研究は、子宮EMGに基づいた陣痛の診断に焦点を合わせており、Rosenberg Eによる1996年の米国特許第5483970号明細書「陣痛の診断用の装置および方法(Apparatus and Methods for the Diagnosis of Labour)」を参照されたい。この参照は患者の腹部の子宮EMGを観察している。これは、伝導異常を補償しつつ、収縮波の周りにエンベロープを形成して腹部にわたる収縮の進行を監視する技術を使用している。そして得られた情報は直流オフセット技術と結び付けられて子宮頸管の開大を判断する。この装置は、技術がうまくいくように、電極の具体的な配置と種々の座標システムの選択とに依拠している。この2つは間接的に関連しているが、装置は、胎児の状態よりも陣痛の進行を監視することに焦点を当てている。
【0009】
陣痛の成り行きと胎児の状態を監視するためのツールに加えて、非侵襲性子宮EMGと出生前スクリーニングおよび監視用の非侵襲性胎児心電図(fECG)との組み合わせを提案する研究は少ない。国際公開第02/096288号パンフレット(以下「WO/288号」)は、胎児心電図を抽出するのにいずれの信号およびいずれの方法が特に使用されているのかを抽出するためにいずれの技術が使用されているかは不明ではあるが、母体の子宮と、母体および胎児の心臓活動と、胎児の脳の活動とを検出および分析するための装置を提案している。これは、胎児の脳の活動のための(推定上胎児の)頭皮電極と、完全には非侵襲性でないことを示している経頸管的かつ経膣的ならびに経腹壁的な記録に言及している。心臓QRSTトレースはドップラー超音波とパルス酸素濃度計および/または他の方法で得ることができることを示している。また、fECGについて示されている対象周波数帯域、1Hzから5Hzおよび20Hzから200Hzは0.5Hzから150Hzの想定範囲にないが、経腹壁的電気信号を記録することを示している。この範囲は600人以上の患者に関するPCT国際特許出願第GB2002/004410号明細書(以下「GB4410号」)に関連した研究中に発見され、心電図に関するアメリカ心臓協会スタンダード(American Heart Association Standards for Electrocardiography)によって示されている。しかしながら、GB4410号以前には十分正確にそれを測定することができないために、fECGに具体的に適用されている現在のスタンダードはない。WO/288号において心筋活動電位の大きさは110から140mVと記されている。2KΩの電極の皮膚インピーダンスを有する腹部電極は、約200μVの母体信号を検出する傾向がある。
【0010】
国際公開第00/054650号パンフレットはまた非侵襲性fECGおよび子宮収縮について記している。これは、子宮の収縮によるモーションアーチファクトと母体ECGアーチファクトとが補償されたfECGを生成するために、母体ECGと共に、子宮信号を雑音基準ソースとして使用する適合的信号処理フィルタアルゴリズム(ASPFA)を開示している。表面EMG信号は、子宮の収縮を監視するのに使用可能であることが示されている。電極位置が特定される必要がないということを強調する一方で、電極対は共に配置されて、母体ECG用の基準電極はASPFAを支援するためにそれに応じて配置される必要がある。子宮筋電図の性質、その抽出方法および/またはその臨床的重要性についての説明はないと思われる。
【0011】
EMG信号を生成する母体の腹部電極を使用した子宮活動の監視は、欧州特許出願第1166715A2号明細書に開示されている。受信EMG信号は、アナログフィルタによって、またはマイクロプロセッサによってディジタル的にフィルタリングされて、子宮活動を監視する。
【0012】
子宮の収縮は、卵管と子宮の結合部分にあるペースメーカー細胞の部位で促進(instigate)されると言われている。バースト(burst)と称されるものがこの部位で発生される場合に効果的な収縮が生じる。バーストは子宮の上部に最も集中しているが、毎秒約2cmの割合で子宮にわたって広がり、「産科学および婦人科学の基礎(Fundamentals of Obstetrics and Gynaecology)」においてLlewellyn Jonesによって説明されているように、収縮の最高潮は子宮全体にわたる。
【0013】
上記のように、子宮活動は妊娠期間にわたって生じ、非常に早い段階から活動電位が生じている。種々のタイプの特徴および波形は、DevedeuxらによるAm J Obstet Gynecol,1993年「子宮筋電図検査:批評(Uterine Electromyography:A Critical Review)」に説明されているように、電気的子宮筋活動によるものであり、これらは以下のように説明可能である。低速波、これはインビボ(in vivo)測定ではなく腹部の子宮測定に関連し、従って皮膚のストレッチなどの機械的アーチファクトによって生成されたと考えられ、その周期は通常収縮期間に等しい。高速波について、著者は、妊娠および分娩時の子宮の収縮と関連した低周波数帯域(0.1から0.6Hz)と、分娩時だけの進行性収縮に関連した高周波数帯域(0.6から3Hz)とに分離している。Devedeuxらは、固定的なペースメーカー部位はなく、その代わり、心臓細胞のように、子宮筋細胞は隣接する細胞(ペースメーカー追従細胞)から発生した活動電位によって励起されたり、それ自体のインパルス(ペースメーカー細胞)を生成したりすることができる、と結論付けている。各細胞はこれら2つの機能を交互に行なうことができるとも示されている。これは、すでに始まっている陣痛中に子宮上部におけるペースメーカー活動の集中増大によって説明可能な分娩時の機械的要因に焦点を当てているが、Llewellyn Jonesの「産科学および婦人科学の基礎(Fundamentals of Obstetrics and Gynaecology)」に反するように思われる。
【0014】
Devedeuxらはインビボ技術、つまり子宮に取り付けられた電極によってなされた内部測定について説明しており、また12から25mVの振幅の信号を検出しているが、彼らは、これらの値は腹部の記録について極めて縮小されていることを結論付けている。彼らはまた、収縮の振幅は基準として使用されるべきではないが、子宮筋電図検査のスペクトルドメインをより強調して使用されるすべきであると結論付けている。これは周波数コンテンツを保持しつつ効率的に信号から雑音除去するにはとりわけ好都合である。
【0015】
陣痛中の胎児および母親の両者についての従来の監視はドップラー超音波および分娩監視(cardiotocography、CTG)などのツールに頼っており、これらは感度および特異度に欠ける。CTGは分娩監視装置とドップラー超音波とを組み合わせて、収縮と心拍をそれぞれ同時に監視する装置である。これらの2つの測定の組み合わせによって、胎児の状態の測定が、とりわけ子宮の収縮に応答して、心拍の加速および減速に基づいて形成可能になる。Dawes/Redman基準は、特定の時間基準の下で、加速、減速、胎児の動きおよび心拍変化を見るCTGと共に使用される、胎児の状態の測定の一例である。しかしながら、真性糖尿病などの状態において、この基準は、心拍の大きな変化がないために役に立たない。Tincello DGらによる「真性糖尿病患者における胎児の心拍記録のコンピュータ分析(Computerised analysis of fetal heart rate recordings in patients with diabetes mellitus):Dawes Redman基準は胎児の状態の有効なインジケータとはなりえない」、周産期医学ジャーナル(Journal of Perinatal medicine)、1998年;26(2):102−6を参照されたい。
【0016】
CTGの診断的使用は、リスクの高い妊娠における周産期死亡率や疾病率に対して効果が限定的であるように思われる。Cochraneのデータベースは、CTGによって判断された妊娠において周産期死亡率は増加の傾向にあること(確率比2.85、95%信頼区間0.99から7.12)を示している。リスクの高い妊娠におけるドップラー超音波の使用は多数の産科治療結果を改良しているように思われ、また周産期死亡を減少させる一助となるように思われるが、リスクの低い母集団においては利点があるとは示されていない。分娩監視装置の配置、適用圧力、子宮壁圧、皮下脂肪限界およびデータ解釈などの変数はその有効性について重大な影響を有しているが、CTGには自宅でのリスクの高いグループに対する移動監視が提供されることもある。Dyson Donald Cらは、1998年の「早期陣痛の恐れがある女性の監視(Monitoring Women at Risk for Preterm Labor)」New Eng Journal of Medicine Volume338:15−19において、在宅CTG監視を使用する女性は、看護士の訪問を毎週受けている女性ほど良好な結果を得ていないことを示している。このことは、子宮の収縮の発生、スペクトルコンテンツおよび大きさに関する定量的かつ非侵襲性測定を提供する装置に対する要件があるだろうことを示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、子宮の収縮によって生じるような電気的筋肉活動の非侵襲性検出のための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、電気的筋肉活動を非侵襲的に監視するための方法を提供しており、筋肉活動は定常性または非定常性であり、以下のステップを組み込むことによって特徴付けられている。
a)定常信号を分離するのに適した信号分離方式を提供するステップと、
b)筋肉活動を検出するように、患者の皮膚の外側に複数の低雑音信号電極であって、
i)信号電極の筋肉信号寄与が、筋肉ソースの非定常性にかかわらず、信号分離方式への単一の筋肉ソースを模し、
ii)信号分離方式によって検出されたソース数は電極数以下であるように、十分に局所化されている信号電極を置くステップと、
c)電極から受信した信号に信号分離方式を適用して、筋肉ソースを分離するステップ。
【0019】
本発明は、筋肉活動が非定常性であるにもかかわらず、定常信号を分離するのに適した信号分離方式を使用して筋肉ソースを分離することができるという利点を提供しており、これは後述するような多数のこのような技術を備えている。
【0020】
筋肉活動は子宮活動でもありうる。信号分離方式は以下に定義されるような瞬間アルゴリズムに基づいていてもよく、また独立成分分析(ICA)であってもよい。信号分離方式を適用するステップは、信号電極からの信号より導き出された処理データにICAを適用してもよく、このデータは、隣接するブロックの対において各後続ブロックがそれぞれの先行ブロックの一定割合のデータを組み込むように連続重複ブロックに配置されており、また異なるブロックのICA処理において導き出された独立ソースを再配列して、信号スワッピングについて補正するために補正スキームが適用される。
【0021】
信号電極を置くステップは、ペースメーカー活動の想定部位の近くの位置の直立した患者に対して、へその高さまたはこれより上に4個または5個の信号電極を置くステップを備えていてもよい。信号電極は第1のセットの信号電極であってもよく、信号電極を置くステップは、その筋肉信号寄与に対して十分に局所化されていない位置の患者の皮膚に第2のセットの信号電極を置いて、単一のソースを信号分離方式にシミュレートするステップを含んでいてもよく、そして信号分離方式は非定常性筋肉活動を監視するための第1のセットの信号電極を介して導き出された信号と、定常性筋肉活動を監視するための第1および第2のセットの信号電極を介して導き出された信号とを用いる。
【0022】
信号分離方式は母体および胎児の心臓活動と、子宮活動と、母体の筋肉活動と、胎児ECGおよび母体ECGとを同時に取得することができる。周波数選択的フィルタリングを用いて、センサよりも信号が多い範囲を制限することによって、母体および胎児の心臓活動と、子宮活動との分離を容易にすることができる。
【0023】
別の態様において、本発明は、電気的筋肉活動を非侵襲的に監視するための装置を提供しており、この筋肉活動は定常性または非定常性であり、この装置は
a)定常信号を分離するのに適した信号分離方式を実現するためのコンピュータ装置と、
b)筋肉活動を検出するために、患者の皮膚(40)の外側に置かれた複数の低雑音信号電極であって、
i)電極の筋肉信号寄与が、筋肉ソースの非定常性にもかかわらず、信号分離方式への単一の筋肉ソースを模し、
ii)信号分離方式によって検出されたソース数が電極数以下であるように、十分に局所化されている電極と、
c)電極から受信した信号を、コンピュータ装置による信号分離方式の適用に適したディジタル信号に処理して、筋肉ソースを分離するための処理手段と、を組み込んでいる装置によって特徴づけられている。
【0024】
本発明の装置に関する態様は、方法に関する態様の特徴に必要な変更を加えたものに類似の好ましい特徴を有する。
【0025】
次に、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して例示によって説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1および図2を参照すると、本発明を使用する子宮の電気的活動と、分娩監視装置からの機械的活動の同時記録は患者の陣痛時に行われて、信号処理が電気的な子宮活動を抽出するために適用された。機械的活動は一般に20で示されており、電気的活動は、22a、22bおよび22cなどの電気的な子宮のバースト活動のパルス列によって示される。2つの形態の活動が共通の時間軸に対してプロットされて示される。図2は、子宮の電気的活動の単一のバースト22b内の個々の活動電位を、電圧および時間的尺度を拡張して示している。
【0027】
次に図3を参照すると、本発明を実現するのに適した装置は一般的に30で示されている。これは、母親の皮膚の表面に置いて、そこから生成された電圧信号を監視するのに適した多数の電極1、2、3、GおよびRを備えている。ここでGは接地電極を示しており、Rは基準電極を、1から3は信号電極を示している。便宜上、電極1などの5個のみが示されているが、本発明の本例においては、後述のように14個の電極、つまり1から12と番号が付された12個の信号電極(4から12は図示せず)と共にGおよびR電極が使用された。電極1などはそれぞれのスクリーンリード32aから32e(総称的に32)を介してリードボックス34に接続されており、これはまたコンピュータ36に接続されている。
【0028】
リードボックス34は信号電極1などからの信号用の処理回路を含んでおり、34aに差し込まれて示されている。回路は2つの信号電極1および2について示されており、点Dは他の信号電極に対する同様の回路を示している。回路は信号電極1などごとに、それぞれ低雑音差動増幅器37と、それぞれのハイパスおよびローパスアンチエイリアスフィルタ38とを備えている。フィルタ38は共通のマルチチャネルアナログ/ディジタルコンバータ(ADC)39に接続されている。増幅器37は基準電極Rからの信号を、それぞれの信号電極1などからの信号より減算して、その結果得られた差分信号を増幅する。差分信号はADC39によってディジタル信号に変換されて、そしてコンピュータ36を使用して記録および処理されて、詳細に後述されるように、母体の子宮信号とfECG信号とを分離する。
【0029】
市販の脳波検査(EEG)システムは、原入力コンポジットデータ、つまり30での処理後の電極からの信号を取得および表示するための適合にふさわしい。ここでコンポジットという表現は、電極信号が異なるソースからの信号の混合であるという事実を示している。コンピュータ36はMicromed Electronics UK Ltdから供給されたポータブルEEGシステム(SYS98−Port24−CL)によるコンピュータである。これは、Microsoft Windows(登録商標) NTオペレーティングシステムのバッテリ電源ラップトップコンピュータ実行システム’98のEEG記録/分析ソフトウェア(SYS−98)である。SYS−98ソフトウェアは便宜的なインタフェースを、ボックス34からディスプレイ装置(スクリーン、図示せず)およびデータ記憶媒体(ハードディスク)に提供する。本発明の本例を実現するために、特定用途向けのあつらえて作ったソフトウェアが開発されており、コンピュータ36で実行される。あつらえて作ったソフトウェアによって、EEG固有ソフトウェアによって記録されたデータは、子宮活動および胎児負担を分離するために読み取りおよび処理されることが可能となる。これはまた、このような活動および負担(例えば、子宮活動の期間、強度、頻度スペクトル、およびfECGの胎児心拍、PR、QRS、QTインターバル)から導き出されたパラメータの表示を提供する。あつらえて作ったソフトウェアの動作について以下により詳細に説明する。コンピュータ36のタイプは明確には重要ではないが、記録、処理および表示ソフトウェアを実行するための十分な処理容量と、記録データ、処理結果および表示自体を保存するための十分なメモリとを有していることが必要である。好ましくは、コンピュータはポータブルであるべきである。患者に容易に転送するために提供されるだけではなく、ポータブルコンピュータはメイン電源および関連雑音とは分離されたバッテリで実行されてもよい。
【0030】
(本発明に固有の処理データとは対照的な)原コンポジットデータ用のコンピュータディスプレイスクリーン(図示せず)と記録および表示ソフトウェア、ならびにその接続リードを含む、リードボックス34およびコンピュータ36はすべてポータブルEEGシステムの一部である。
【0031】
電極1などはNeuroline(登録商標)によって製造された市販の使い捨て粘着神経電極(タイプ710 01−K)である。電極1などの最優先事項は、これらが低雑音であり、かつ2kΩ未満の皮膚のインピーダンスとなるように患者に容易に取り付けられるタイプであることである。さらにこれらは、処理ソフトウェアによる効果的な信号分離を可能にするように数において十分でなければならない。それぞれのスクリーンリード32を具備する各電極1などは、それぞれ単一かつ別個のデータチャネルをマルチチャネル記録に与える。
【0032】
市販されている710 01−K電極は10cm長の通常の(未スクリーン)ケーブルを取り付けている。このタイプが選択されたのは、取り付けられたケーブル長が最短で使用可能であるからである。この長さのワイヤが約1cmであること、あるいは、これは電気的雑音をさらに削減するように電極がスクリーンリード32に直接取り付けられていることが好ましい。fECGに固有のより短いケーブルを具備する使い捨て電極が同じ設計で作られてもよい。
【0033】
スクリーンリード32は、生物医学的用途にふさわしいタイプの0.9mmの同軸スクリーンケーブルから作られている。これらは、fECG記録時の雑音レベルを3μV未満に低下させるために十分にスクリーニングされなければならない。電気的スクリーニングのために接地に接続されている外部金属ケースを有するDタイプコネクタ(図示せず)によってリードボックス34に接続される。スクリーンリード32は信号電極1などをリードボックス34に接続する。各スクリーンリード32を備える同軸ケーブルの外部ブレードメッシュ層が、リードボックス34の分離接地と、Dタイプコネクタの金属ケースとに接続される。接地電極Gはまたリードボックス34の分離接地に接続される。これは、増幅器38によって拒絶される共通のモード干渉に対して、母体へのリターンバイアス電流経路を提供する。
【0034】
8個以上の信号電極1などは一般的に、fECG抽出が適切な腹部カバレージを提供して、十分明確なソースへの信号分離を可能にするように十分でなければならない。例えば、GB4410号にあるような信号分離を使用して、2個から3個の明らかに独立したソースは一般的に母体の心臓について検出され、通常は胎児1人につき1個から2個である。子宮の収縮からのアーチファクトの分離は、少数のソースがあるために3個の電極と、狭い対象周波数帯域とにより可能である。追加電極によって、母体の呼吸、不要な電気的干渉などとの関連物などの不要なアーチファクトの分離が可能になる。
【0035】
図4は、子宮活動と胎児心電図(fECG)を同時に監視するのに適した、母親の腹部上への電極1などの可能な配置のある図である。本例において、12個の信号電極1から12と、接地電極Gと共通基準電極Rはすべて、母親の皮膚40の外部表面に取り付けられている。対応する電極の参照番号が付された円によって、配置は図面に示されている。共通の基準電極Rおよび接地電極Gは母親のへそNに隣接して取り付けられて、残りは母親の腹部領域の実質的に全体にわたって分散される。母親の身長に関して、電極1から5はへそNより下に、電極6から9はへそNと同じレベルに、電極10から12は、胸骨の底部と、へそと同じレベルにある電極6から9のラインとの中間より上に置かれる。電極10から12は、妊娠後期および陣痛時に、子宮の上部または基底部の高さと実質的に同じレベルになる位置にある。
【0036】
電極1から12は、電極のほぼ六角形の配置が平らな腹部カバレージに便宜上用いられることを示すネットワークライン42によってリンク付けられて示されている。これは、約10cmの電極分離による12個の腹部電極の定間隔の配置をもたらす。この接続において、子宮の監視について、隣接する電極は最大12cm分離されることが好ましい。この限界は女性により大きな腹部を提供するために設定される。腹部のサイズは、電極の展開を制限することによって限界を示すために、より低い限界を規定する必要はない。良好な子宮およびfECG信号分離を総合的に達成するために、信号電極1から12は好ましくは、近づけすぎて置かれるべきではなく、また腹部の広いカバレージを伴うべきである。図面に示されているような実際の配置は、腹部の一方から他方への、また陰毛から子宮のほぼ上限までの範囲を含んでいる。子宮のほぼ上限は妊娠期間から、あるいは妊娠後期に生じる子宮の最大高さに十分な標準構成に従って判断可能である。電極1などは非侵襲性であるために、子宮活動の取得に必要な少数の電極の場合に助産師や訓練を受けた一般人による適切な配置が容易に達成可能であることは本発明の1つの特徴である。
【0037】
母親およびリードの組み合わせによって形成されたループの磁束リンクを介して電気的および磁気的雑音を削減するために、全リード32は、皮膚40とその全長にわたって相互に、可能な限り近くに維持されるべきである。各リードはカラーバンドの形態のマーカーを組み込んで、隣接する電極間の12cmの制限を示し、迅速かつ適切な電極配置を容易にすることができる。
【0038】
取り付けおよび記録に備えて、理想的には母親は快適にベッドに横たわり、リードボックス34は近くにあるが、患者にもベッドフレームにも触れることはない。母親は、不随意な筋肉活動の減少に役立つように数分間リラックス可能にされるべきである。子宮の対象周波数帯域はfECGに対して狭く、また干渉にそれ程影響を受けやすくないために、これは子宮の監視のためよりもfECGについてより必要である。
【0039】
子宮、心臓および他の活動から生じる電圧信号は、皮膚40に取り付けられた信号電極1から12およびRによってピックアップされる。信号はスクリーンリード32を介してリードボックス34に通される。リードボックス34はSAM 25R「ヘッドボックス」と称されており、Micromed ElectronicsのEEGシステムの一部である。ECGリードボックスとは対照的なEEGヘッドボックスの利点は、前者は優れた低雑音電気回路と、多数の使用可能な入力チャネルとを有しているという点である。入力チャネルはユニポーラ使用向けに構成される。
【0040】
本例に関連するSAM 25Rリードボックスの更なる仕様は、接触防止安全接続、4KHzサンプリング、1kHzのカットオフ周波数を有するローパスアンチエイリアスフィルタ、512Hzにダウンサンプリングされたソフトウェア、0.3Hzから256Hzのパスバンド、および2mVの電圧範囲をカバーする12ビットの解像度である。
【0041】
SAM 25Rリードボックス34は便利な市販の装置であり、この理由で使用されていた。しかしながら、いくつかの点で本発明の目的には非理想的な特徴を有している。その入力においてハイパス/ローパスフィルタと、雑音レベル0.16μV、つまり他のEEGシステムと比較する場合に、またはあつらえたリードボックスの設計による場合に達成可能なほど低くはない(<0.1μV)雑音レベルの増幅器とを有している。ハイパスフィルタは、現在の0.3Hzではなく0.1Hz未満の周波数を拒絶するために有用に再設計されてもよく、またローパスフィルタは、1kHzに対して、200Hzより高い周波数を拒絶する。これは、低周波数の子宮成分の減衰を低下させ、高周波数の雑音を拒絶して、アンチエイリアスを改良する。
【0042】
検出されたソース電圧は、妊娠や陣痛の段階に応じて、0.3Hzから3Hzの周波数範囲で、7μVから250μVに及ぶ。断続的なスパイク活動(40Hzから150Hz)もまた定期的に観察される。これは、後に説明する信号処理によって子宮活動とfECGから分離される。それは腹部の筋肉組織と関連していると考えられる。子宮の収縮の開始と関連がありそうな腹部の筋肉組織と横隔膜の随意収縮以外の断続的なスパイク活動と収縮との間には重要な相関性は見られなかった。
【0043】
リードボックス34への複数のチャネル入力がユニポーラ構成において使用される。つまり、電圧読み取りが各腹部電極1から12と共通の基準電極Rとの間で行われる。従来技術のfECG装置は、ソースの位置の局所化雑音を除去しようとするバイポーラ読み取りを行うことによって、システム雑音の問題を解決しようとした。
【0044】
リードボックス34内で、各信号電極1から12からのアナログ電圧信号はそれぞれの差動増幅器37の一方の入力に供給され、基準電極Rからの電圧信号はもう一方に供給される。従って、各差動増幅器37は、関連信号電極1から12で発生した電圧と、基準電圧(R)で発生した電圧との差に比例する増幅信号を出力する。結果として生じた増幅信号はそれぞれのアンチエイリアスローパスフィルタ38でフィルタリングされて、同時マルチチャネルA/Dコンバータ39によってディジタル化される。マルチチャネルA/Dコンバータ39を使用することの利点は、同時サンプリングが電極1から12からの全チャネルに配置可能であることであり、これは後続の信号処理に対して望ましい特徴である。そしてこれらのディジタル化信号は信号処理のためにコンピュータ36にパスされる。
【0045】
ユニポーラ構成には利点があるが、バイポーラ構成は決して除外されないことに注目すべきである。後者は、このようなバイポーラ構成が必要な場合は、ディジタル化ユニポーラチャネル出力間の差を取ることによって簡単に複製されてもよい。
【0046】
子宮活動およびfECGの記録を行うための機器をセットアップする際に、可能な限り低レベルに環境およびシステム雑音を低下させることが重要である。以下の手順は十分な低雑音記録を生成するために発見された。
i)母親の皮膚40は標準研磨剤配合テープ(例えば、3Mによって製造された「Skinprep」)を使用して軽く擦られてから、アルコールまたは水ベースの綿棒で消毒される。
ii)電極1から12、GおよびRは軽く指で押して皮膚40に取り付けられる。
iii)そして電極1から12、GおよびRは対応するスクリーンリード32に接続される。
iv)スクリーンリード32はDタイプスクリーンコネクタ(図示せず)を介してリードボックス34に接続される。
v)装置30はメイン電源とは別にバッテリ電源が入れられる。
vi)電極1から12、GおよびRの皮膚インピーダンスが測定されて、2kΩを超える皮膚インピーダンスを有する電極が再印加される。
vii)スクリーンリード32は集められて、磁気ピックアップを最小化するために母親の皮膚40の近くに維持される。
viii)装置30は腹部電極1から12から導き出されたリアルタイム信号を表示するように設定される、つまり、これは各電極と関連したそれぞれの記録チャネルを有している。
ix)(メインなどの)電気干渉の考えうるソースは可能ならば切断する。
x)コンピュータ36はボックス34からのコンポジット原データを記録して、これらを更なる分析および処理のためにそのハードディスクに保存し、かつ/またはこのようなデータを連続的に処理および表示してもよい。
【0047】
次に図5を、そして図3および図4をもう一度参照すると、コンピュータ36内の信号処理は一般的に、ソフトウェア実現手順50のフロー図によって示される。コンピュータ36はリードボックス34から、それぞれの信号電極1から12に関連する12個の別個のディジタル信号を受信する。コンピュータ36はこれらのディジタル信号を2個の処理スレッドを介して並行して処理する。ソフトウェアで実現された2個のフィルタ52および54はそれぞれ子宮スレッドおよび心臓スレッドを定義しており、また全12個の信号は両者によって並行してフィルタリングされる。
【0048】
子宮フィルタ52は子宮活動を分離するものであり、減衰が60dBで、パスバンドが0から3Hz、ストップバンドが7Hzである9個のタップのローパス無限インパルス応答(IIR)バターワース(Butterworth)フィルタである。これは3.5Hzの3dBポイントと、0.01dBのパスバンドリップルを有している。子宮活動の低周波数成分を保存する必要があるために、ハイパスフィルタリングを有していない。フィルタリングは、既知の種類のゼロ位相フォワード/リバースディジタルフィルタリング技術を使用して実現される。
【0049】
fECG信号について、信号サンプリングは、子宮信号に必要な周波数の10倍を超える最低512Hzの周波数でなければならず、これは、後者のほうが低い周波数コンテンツを有しているからである。ボックス34からの全信号はfECGに適したレートでコンピュータによってサンプリングされる。子宮フィルタ52によってフィルタリングされた信号は次に56で、約50Hzサンプリングレートまで、因数10(データの90%削減)によって低下させられて、不要な周波数バンドを拒絶することによって計算を少なくし、信号分離を改良する。後続の処理のために異なる局所化グループの電極からの信号の選択を可能にするので、52で全12個の信号をフィルタリングおよび縮小することは便宜的である。
【0050】
58において、一部の信号は、選択された電極からのみの信号に集中するように省略されている。本例において、これらの信号のうちの5個だけが子宮チャネルに保持されている。5個の保持された信号は、34での処理後に図4の電極7、8、10、11および12から得られたものである。60において、ブラインド信号分離(BSS)が(後述のように)実行されて、異なるタイプの信号(またはソース)を分離する。引き続き、62において、分離された信号は子宮またはその他に分類される。(複数の)子宮ソースは他の分離アーチファクトからマニュアルで、または自動的に抽出されて再構築されてもよい。これは子宮活動に関する重要な特徴を識別するために64で引き続きパラメータ化されて、66で表示される。
【0051】
同様に、fECGフィルタ54はfECG活動を分離する。これは6個のフィルタタップのハイパスIIRフィルタと、9個のフィルタタップのローパス有限インパルス応答(FIR)フィルタとから成る。ハイパスフィルタは、パスバンド2Hz、ストップバンド0.1Hzおよびストップバンド減衰120dBのIIRバターワースフィルタを使用して設計されており、1Hzの3dBポイントと、0.01dBのパスバンドリップルをもたらす。ローパスフィルタは、バンドエッジ150Hzのブラックマン(Blackman)ウィンドウを使用して設計される。フィルタリングは、ゼロ位相フォワード/リバースディジタルフィルタリング技術を使用して実現される。54でフィルタリングされたディジタル信号が68で処理されて、異なるタイプの信号を分離する。引き続き、70において、分離された信号はfECGまたは母体に分類される。子宮信号と同様に、次いでfECG信号は重要な特徴を識別するために64でパラメータ化されて、66で表示される。子宮信号はfECG信号と共に表示される。
【0052】
60および68でのブラインド信号分離つまりBSSについて次に説明する。「ブラインド」という表現は、信号混合物を形成する信号特徴やプロセスについて何も想定されていないことを示す。これは、到着方向、周波数、波形、タイミングおよび変調などの信号特徴の予知に左右されない。BSSは、信号が統計的に独立しており、また定常性および線形性が広がることを要しているにすぎない。定常性とは、信号およびその混合チャネルが経時的に変化しないことを意味している。線形性とは、信号混合物が異なる信号の線形組み合わせであることを意味している。
【0053】
図4に示された電極配置を使用して子宮およびfECG信号の分離を調べる際に、既知の一般的な形態のBSSである独立成分分析(ICA)は有用なfECG結果を生成したが、それほど有用な子宮結果は生成しなかったことが分かった。これは以下のように調べられた。対象の子宮信号は、電極10から12のレベルで陣痛時に子宮上部により集中しているペースメーカー細胞によってトリガされる子宮収縮より生じる。収縮は2cm/secで子宮の下へ比較的ゆっくりと進行するため、収縮は子宮の上部から開始されると、図4の一番下の電極1および2のレベルに達するのに12秒かかる。従って非定常性である。(他の理由ゆえに好ましい)本例において用いられたICAのバージョンは定常信号に制限される。例えば電極1および12からの信号はそれぞれ子宮信号の非遅延および遅延バージョンを提供してもよく、ICAは遅延信号を、相対的遅延とは異なり、同じ信号ではなく非遅延信号への異なる信号として扱う。同様に、ペースメーカーおよびペースメーカー追従細胞の異なる組み合わせによる子宮筋層全体にわたる活動電位の形態の変化がセンサよりも多数のソースをもたらすことがあり、これは、ICAは完全な信号分離を提供しないことを意味している。
【0054】
陣痛時にリアルタイムで、または可能な限り最短の遅延で結果を得ることができるように、複雑すぎないICAなどのBSSアルゴリズムを使用することは重要である。多くのICAアルゴリズムは、瞬間混合問題と称されるBSS問題の最も単純な形態を目的としている。ここでは信号はアレイの各センサに同期的に到着するものとされる。
【0055】
ICAなどの多数の異なるアルゴリズムは瞬間混合問題を解決するために使用可能である。残念ながら、瞬間混合問題に適したアルゴリズムは、混合信号の相対的遅延を伴い、数学的には畳み込みと表現されるより困難な問題に直面する際に上記結果を経験する。「畳み込み混合」問題は国際公開第03/073612A2号パンフレットに説明されているように対処可能であるが、処理負荷は大きく、リアルタイムの適用でのその使用に対して不利である。
【0056】
子宮信号遅延問題を解決するための別のより簡単なアプローチが発見された。子宮から離れた腹部の表面に電極が置かれて、伝搬時間遅延が母親の体内で発生した関連収縮から経過した後に、電極は子宮信号を受信する。子宮信号の良好な分離は、局所化グループの電極にその収集を制限することによって得られることが分かった。このグループは、十分に類似した子宮信号の受信に対して時間遅延を有し、信号分離プロセスを提供して、子宮負担を同じ信号として扱うように選択された。
【0057】
加えて、局所化グループの電極を使用することは、活動電位の形態を変化させる子宮筋層全体にわたるペースメーカー細胞に起因しうる子宮ソース数を制限する。図4の任意のグループの隣接電極はこれを満たす。しかしながら、今日まで行われてきた試みにおいて、雑音比に対する最強信号と最良信号は、へそNの近く/これと同じレベル以上の図4の電極7、8、10、11および12から得ることができるが、それは、これらの電極が、子宮の収縮波を開始するペースメーカーとして作用する細胞が集中している陣痛時の子宮上部の位置の比較的近くに、また実質的にここから等距離に配置されているからである。従って、電極7、8、10、11および12は相互に対する重大な遅延なくそれぞれの子宮収縮信号を受信する、つまり、相対的遅延は、ICAなどの瞬間アルゴリズムからの結果について妥協するのに十分ではない。これらの電極はまたそれぞれの子宮収縮信号を、子宮筋層にわたる複数のペースメーカー部位ではなく局所グループのペースメーカー細胞から受信する。この局所化グループの電極は、定常信号を刺激させる非定常性子宮信号の効果を制限して、ICAアルゴリズムによる処理のためのソース数を制限する。
【0058】
データの畳み込み性質に起因してソース数を最小化する別のアプローチは、時間遅延が周波数ビンの使用によってモデル化されるような、時間ドメインではなく周波数ドメインについて考慮することである。多数の周波数が各々に必要な順列/振幅補正と共に考慮されなければならないため、これは固有の問題を有する。簡単なアプローチは、Dapena A.およびServiere Cによって、ICA2001「畳み込み混合のブラインド分離のための簡単な周波数ドメインアプローチ(A simplified frequency−domain approach for Blind Separation of Convolutive mixtures)」において論じられている。周波数ドメインアプローチの主な欠点は、子宮筋層全体にわたる非定常性子宮活動の周波数コンテンツの分析においては有用なツールであると証明可能であるが、非常に計算が多いことである。ICAは既知の分析技術である。例えば、Kluwer Academic,Boston(1988)によって発行された、T−W.Leeによる「独立成分分析−理論と応用(Independent Component Analysis−theory and applications)」を参照されたい。本例で使用されるICAアルゴリズムは、EUSIPCO’98、ギリシャのロードス島(Rhodes,Greece)、1998年9月8日から11日に、I.J.Clarkeによって、「判別としての非ガウス的性質の直接活用(Direct Exploitation of non−Gaussianity as a Discriminant)」において開示されているものである。これはとりわけ効果的であると分かった。ICAは、子宮の電気的活動の抽出にはこれまで適用されたことがない。子宮筋電図検査はしばしば1対の腹部電極を使用して調べられていたが、ICAは理想的には、少なくともソースと同数のセンサを必要としており、これは複数のペースメーカー部位と非定常信号によってもたらされる問題につながる。さらに、数分にわたって記録されたデータを具備するICAによる生物信号の分離の成功は、生物信号混合物と、経時的に変化する電磁的干渉とによって困難である。
【0059】
ICAは、信号が統計的に独立していることを保証するのに十分に長いブロックにおいてデータが処理されることを必要とする。Z.MarkowitzおよびH.Szuによって、「区分時系列のブラインド偏析リアルタイムアルゴリズム(Blind Demixing Real−Time Algorithm of Piecewise Time Series)」、神経ネットワークに関する国内合同会議(Internal Joint Conference on Neural Networks)IJCNN’99、pp.1033−1037、1999年において説明されているように、ICAは、それが任意の順序で一時的な独立ソースに割り当てた信号を返すという点において曖昧性を有している。あるいは、これは順列の問題として既知である。分離された信号は、隣接するブロックの信号とは通常異なり、かつ未知の順序でブロックに返されるために、ブロックにおけるデータ処理を困難にしている。これは信号スワッピングと称され、信号がブロック間で追跡不可能であることを意味している。本例では、各データブロックからそれぞれの直後のブロックに先行データを導入することによって対処される。信号スワッピング問題を解決するために、隣接ブロックX1およびX2と、X2およびX3などの対が十分に重複されて、例えばX2はX1のサンプルと相関したサンプルを含むこととなる。そして相関スキームが適用されて、ブロックごとにICAによって判断された独立ソースを再配列して、信号スワッピングを補正する。これは、ICAにおいて生成された混合行列Mを変更して、独立ソースを変化させるX2には重要なアーチファクトは全く導入されず、相関スキームは失敗すると想定している。正確な重複は重要ではなく、経験によって最適化されてもよいが、この発生の確率はブロック長の、例えば50%の重複を使用することによって低下させることができる。結果は、対象信号の単一チャネル上の連続信号である、つまりチャネル間でスワップされない。
【0060】
結果として、子宮信号に対してICAを実行するためには、58から記録されたデータは、500個のサンプル(サンプルウィンドウ)の連続するより小さなブロックにセグメント化された。各サンプルはデータのスナップショットである、つまり5個の同時記録された信号からなっており、このような信号の1つは電極7、8、10から12の各々からのものである。各データブロックは50%の重複つまり冗長性を有する約10sec長であった。つまり各ブロックの前半はその先行ブロックの後半であった。従って、各ブロックは、その前半および後半の250個のサンプルを先行および後続のブロックとそれぞれ共有する。ブロックはコンピュータ36においてICAによって個々に処理された。入ってくるデータストリームはまず500個のサンプルウィンドウを1個のデータブロックで満たして、ICAアルゴリズムは既知の方法で偏析行列(de−mixing matrix)を計算する。そして偏析行列は、コンピュータメモリへの各サンプルストリームとして、一度に各センサから1個のサンプル(スナップショット)ずつ、入ってくるデータに適用される。平均時において、ウィンドウは次のデータブロックによって「ファーストインファーストアウト」で更新され、ここから新たな偏析行列が計算される。新たな更新済み混合行列は、ウィンドウ長の50%が更新されて補正スキームの実現が可能になった場合に計算された。この技術は、少なくとも更新済み混合行列を計算する時間の間は不変のままである偏析行列に左右される。他の値が使用されてもよいが、10secの縮小されたウィンドウ/ブロックサイズおよび50%の重複は有効であると判明した。サンプリングインターバルが計算的制約によってそれを更新するとスライディングウィンドウの混合行列は同じレートで現在は再計算不可能であるために、上記スキームが用いられる。しかしながら、ICAアルゴリズムの計算の改良によって、また信号スワッピングを目的とする更なるアルゴリズムベースのスキームによって、各サンプルの入力に応答して、あるいは少なくとも重要でない時間フレーム、つまり1秒より短い子宮収縮において、ICA導出偏析行列を更新可能になるだろう。これは、新たな偏析行列が計算されるまで偏析行列が不変のままであるという前提に頼る必要性を排除する。この前提の必要性を排除する技術は、2003年11月14日の英国特許出願第GB0236539.4号の主題である。
【0061】
以下においては、この具体的な技術を使用することは必要不可欠ではないが、好都合であると分かったICAアルゴリズムの実現に関する具体例を説明する。これは、EUSIPCO’98、ギリシャのロードス島(Rhodes,Greece)、1998年9月8日から11日に、I.J.Clarkeによって、「判別としての非ガウス的性質の直接活用(Direct Exploitation of non−Gaussianity as a Discriminant)」において説明される。次にICAについて詳細に説明する。これは、子宮監視のための5個の電極7、8、10、11および12からの信号と、fECG監視のための全12個の電極1から12からの信号とを分析するために60で使用される。ICAは、各々は未知の潜在的ソースsjの線形または非線形混合であるという前提に基づいて観察されたコンポジットデータ変数xi(i=1〜n)についての分離方法を定義している。混合プロセスもまた未知であり、ソースは、統計的に相互に独立であり、かつ非ガウス的であると想定される。
【0062】
インデックスiは関連データに関する電極参照番号1から12(図4)によって与えられる。つまり電極iはリードボックス34によって処理される信号を生じ、フロー図50(BSSによるがこれは含まない)に示されるように信号xiを提供する(ここで、本例ではi=1〜nかつn=5(子宮)かつn=12(胎児)である)。各信号xiは34でディジタル化され、そして多数の(例えばm個の)記録データの時間サンプルを備える。総合的にn個の電極の各々と関連した信号のm個の時間サンプルは、処理されたディジタル信号のm×nデータ行列Xを形成する。データ行列Xから、各センサ出力xiがsjの異なる線形組み合わせ、つまり
【数1】
として書き込まれるように、ICAアルゴリズムは混合行列Mと1セットのn個の独立ソースsj(j=1〜n)とを生成する。
【0063】
ここでXは、その列がnセットの処理済み電極信号xiである行列であり、Sは、その列が1セットのn個の独立ソースsjであるm×n行列である。混合行列Mの逆行列である、つまりその積が単位行列である偏析行列Wが次に定義される。このようにしてコンポジットデータXは異なる対象独立ソースsjに分離される。
【0064】
偏析行列Wは、例えば特異値分解(SVD)を使用する正規直交基底の生成と、それらを統計的に独立させるための微調整との2段階で推定可能である。第1の段階において、SVDは(m×n)行列Xに対して実行可能である。SVDは既知の非相関/正規化技術である。行列XのSVDは以下のように表すことができる。
【数2】
【0065】
ここでUおよびVはそれぞれ正規直交(m×m)および(n×n)行列であり、λは正の実数対角要素(SVDの特異値)が降順で配置されている(m×n)対角行列である。
【0066】
Uの列はXの左の正規直交特異(時間)ベクトルであり、これらはソースsjについての情報を含む。Vの行はXの右の正規直交特異ベクトルであり、これらはソースsjの空間分布についての情報(つまり各センサでの大きさ)を含む。特異値λは、個々の時間特異ベクトルと関連した電力レベルに関連している。
【0067】
一般的に、(Uの列に含まれている)推定信号は完全には分離されていない。信号を分離するSVDの失敗の原因は、行列UおよびVの両方にユニタリであることを強制する点である。これは第2の順序非相関方法であるために、SVD方法に固有であり、1セットの信号における信号対間の全類似性を除去することを意図している。数学的には、これは、分解されたベクトルは直交になることを意味している。多数の「現実の(real−life)」信号において、信号の(Vの行に含まれている)空間情報は類似しており(相関しており)、これらを異なるものとする解はこれらの分離に成功しない。
【0068】
欠落している回転行列の判断は高順位統計(HOS)の使用を必要とする。未知の独立信号を分離するためのHOSの使用はしばしば独立成分分析(ICA)と称され、これは分離プロセスの第2段階である。
【0069】
行列Xは以下のように表すことができる。
【数3】
【0070】
ここで、Rは(m×m)回転行列を示しており、RTはその転置行列を示している。RRTが恒等行列Iに等しくなるようにRはユニタリ行列である。回転行列はUに含まれる推定信号を使用して判断される。
【0071】
一般的に、q個の信号について(ここでq≦m)、Rは(q×q)行列を示しており、Uは(m×q)行列を示しており、λは(q×q)行列を示しており、Vは(q×n)行列を示している。式(3)において、推定信号はURに含まれており、推定混合はRTλVによって定義される。
【0072】
分離プロセスは信号の混合プロセスを、回転、伸張および剪断の複雑な組み合わせとして扱ってもよい。非相関は伸張および剪断効果を除去して、信号を分離するためには回転のみが適用されればよい。回転は剪断や伸張を適用できないために、非相関を無効にすることができない。
【0073】
Rの計算方法は、すでに言及されているI.J.Clarkeの参照において説明されており、他の技術もまた既知である。このモデルは、ソースsjはポイントソースであると想定しており、これは明確には、有限である子宮活動電位などの生理ソースの場合ではない。複数の分離ソースが明らかに、より便宜的な単一ソースではなく異なる形態の子宮活動について発見されたことは、これらの環境におけるICA計算の結果である。12個の腹部センサが図4に示されているように子宮の監視に使用された場合、子宮活動のうちの3から7個の明らかなソースはICAによって発見され、その数は、電極/ソースの近接、子宮の収縮の範囲、および表面への電気伝導性などの要因に左右される。追加ソースは、母体ECGと、胎児および電極移動アーチファクトと、電磁干渉とに関連するソースである傾向がある。12個の電極がfECG分離に勧められるのに対して、上記のように5個の電極は本例の子宮活動の分離に使用されてもよい。この電極数を使用することは、腹部全体にわたって見られる非定常性子宮活動に関連する問題を削減し、また子宮活動を単一のソースに縮小する。子宮活動を表していない追加ソースが、母体/胎児ECG、モーションアーチファクトおよび電磁干渉などのアーチファクトから構成可能になる。
【0074】
ICAを使用して子宮活動を監視する際の非局所化電極の使用から生じる問題を示すために、12個の信号は、図4に示されるような電極を使用して、単独の(胎児1人の)妊娠時に、陣痛初期の30分にわたって記録した。信号は、子宮活動の抽出に適した0.3から4Hzの周波数帯域において、52でフィルタリングされた。これらの信号の130秒の拡大は図6に示される。信号は左側に1から12の番号が付されて、各場合の関連電極を示している。全12個の信号において、約45秒の子宮活動は、母体ECG負担によって破損しているが、括弧80の真下の領域には見られる。この負担は信号10で見ることができ、ここでは最強であり、子宮信号の低周波数活動電位の小さなスパイクによって識別される。これはまた多数の他の信号でも見られる。これはまた、80の下の子宮活動や収縮を越えて生じる信号12で示される陣痛と関連した別の筋肉/移動アーチファクトによって破損される。図6は、子宮収縮に関する情報は、異なるソースからの異なるタイプの信号の混合ゆえに解釈が困難でありうることを示している。
【0075】
次に図7を参照すると、ICAは図6の信号1から12に適用されて、結果は(左側にマークされている)個別ソースS1からS12として示されている。これらのソースは正規化垂直スケール(図示せず)で示されており、各ソースは単位電力を有しており、またこれらは水平時間軸(図示せず)に対してプロットされている。子宮信号の形態は既知であり、図2に示されており、これは分離ソースS1からS12の各々と比較される。ソースS2からS6と、S8およびS9はすべて、S2からS9から増加する相対的遅延を有する図2に類似の構成を示している。これは、7個の子宮ソースが存在する(より便宜的には1つだけである)ことをICAが表していることを示す。上記のとおり、これは子宮活動の非定常性によるものである。また、活動電位は子宮筋層の異なるペースメーカー部位から同時にトリガされてもよい。これは、より多くの子宮ソースの作成に関する更なるメカニズムである。これらの効果の両方とも、上記の使用可能な電極1から12のサブセットの使用によって軽減される。
【0076】
S1、S10およびS11は、別個のソースに分離された母体ECG/呼吸アーチファクトである。このアーチファクトは図6に示された信号1から12のすべてで見ることができた。ICAは単一ソースS12に大きなアーチファクトを分離しており、これは子宮信号を生じる子宮収縮の期間より長く持続する。S12は主に図6の信号12に貢献したが、他のこのような信号に干渉もした。
【0077】
図8は、子宮信号に使用される電極の局所性を制限することによって得られた改良を示している。4個のソースのみが示されている点を除いて図7と同じである。5個の信号電極から導き出された信号の使用については上述したが、図8の場合は、4個のこのような信号のみが使用されており、これらは図4の電極7、8、10および11を介して導き出された。十分に局所化されている限り、任意の数の電極をこれに関して使用可能である点が付け加えられるべきである。
【0078】
4個のソースは左側にSS1からSS4と参照番号を付されて示されている。これらのソースと図2との比較は、子宮活動はSS1にのみ現れることを示している。言い換えると、子宮活動は、元々は図6に示されているアーチファクトなしに単一のソースSS1に分離されていた。ソースSS2は母体の心拍および呼吸の周期性を有しており、母体ECGおよび呼吸アーチファクトはまた単一のソースSS2に分離される。残りの未識別アーチファクトは2個の明確なソースSS3およびSS4となる。SS1つまり図2との類似性がないために収縮活動とは関連しておらず、認証のために分娩監視装置と並行して監視された子宮活動つまりSS1の収縮の期間より長く延長する。
【0079】
図6、7および8は、子宮信号の伝搬遅延がICAに関して極めて類似している局所化されたセットの電極を選択して、これらの電極からの子宮信号への負担を1つの信号として扱うことは容易であることを表している。試行錯誤して局所化グループを選択して、幾つの子宮信号が各場合にICAで分離されるかを見ることさえできる。複数の子宮ソースが不要なアーチファクト除去によって各電極位置で選択および再構築されてもよいが、ICAは好ましくは1個の子宮信号のみを分離すべきであるということが基準である。
【0080】
分離されたソースから子宮収縮を抽出するために、各電極の出力は子宮活動からの負担のみを使用して再構築可能である。つまり、各電極跡はまずソースの混合としてモデル化されてから、これらの対象ソースのみを使用して再構築される(
【数4】
jは特定の分離ソースに関連するインデックスに制限されている)。これは、子宮活動が容易に明らかであり、また他のソースが抑圧されていた修正信号を生じる。
【0081】
本発明の本実施形態において、必要なソースの選択はマニュアルで行われて、各分離ソースに隣接するコンピュータ36に表示されたソース選択アイコンを使用して実現される。各アイコンは、ソースの破棄を意味する「いいえ」インジケータと、その使用を意味する「はい」インジケータ間でトグルされてもよい。これを自動化して、オペレータの介入なしに子宮活動を表示することができる。自動化は適応しきい値ピーク検出ルーチンを使用して、子宮活動の活動電位を検出してもよい。これは各分離ソースの統計に適合して、子宮活動のエンベロープを検出する確率を最大化する。妊娠中に監視をする一方で、このプロセスは、収縮ソースが発見されて、かつ全チャネルが監視を必要とするまで数分かかることがある。収縮ソースが識別されると、これはこの技術を使用して監視されて、収縮活動の各バーストは更なる分析用のウィンドウによってマーク可能になる。このような分析は、FastLOWおよびFastHIGHと称される高速波子宮活動の2つのカテゴリを識別するためのスペクトル分析であってもよく、これは陣痛の開始のインジケータとして使用可能である。
【0082】
図5の68においてfECG信号を抽出するために、手順は、全12個の信号電極1から12から導き出された信号が使用される、つまり患者の腹部全体にわたることを除いて、子宮活動の監視に関する。胎児の心臓は小さく、その結果胎児心電図は、均一な伝導媒体によって囲まれたポイントソースとしてモデル化できるために、子宮信号と比較して、fECGにおける信号分離は非定常性によって複雑化されない。従ってfECGはICAのために定常性を有する。
【0083】
子宮活動を、妊娠中に電極信号から容易に抽出できるようにする際に雑音の削減が重要であるが、明らかに雑音を含んだ信号は依然として使用可能であるとわかる。これは、ICA技術が分離可能な雑音を破棄するために分離するからである。しかしながら、分離可能な雑音は必ずしも電極信号の分離不可能な雑音と区別可能であるわけではなく、可能な限り雑音を削減することが重要なのである。
【0084】
腹部表面の強度マップは、各信号電極iの所望のソース番号j(またはソースの組み合わせ)の係数
【数5】
の強度に従って信号電極の幾何学的配置のマップを隠すことによって分離ソースから生成されてもよい。より明るい領域を使用してより高レベルの信号強度を示し、これによって、非定常子宮信号から得ることができたであろう複数の子宮ソースの位置は、腹部のそれぞれの位置で識別可能になる。これは、進行性および非進行性収縮の洞察と、また子宮筋層にわたる伝搬メカニズムの更なる分析とを提供することができる。
【0085】
ICAを使用して信号分離を実行することは必要不可欠なことではないが、この技術と、参照されているそのI J Clarkeバージョンは好ましい。他の信号分離アルゴリズムも既知であり、例えば、1バージョンの畳み込み混合を提供するだけでなく瞬間かつ畳み込み混合に関して従来技術を再検討している国際公開第03/073612A2号パンフレットを参照されたい。標準バンドパス周波数フィルタリングを従来技術で使用して、信号が最強である場合にとりわけ陣痛における子宮活動を観察していた。しかしながら、ICA/Clarke技術は、かなりの不要なアーチファクトがある妊娠および陣痛時の子宮活動の詳細な分析に対して好ましい。実質的な周波数フィルタリングは、所望の信号およびアーチファクトの重複する周波数範囲ゆえに対象信号を除去または劣化させることがある。加えて、ウェーブレット雑音除去スキームが上述のように使用されており、これは(BSSとは異なり)干渉アーチファクトの先行知識に左右される。
【0086】
プロトタイプ装置を使用して、信号電極1から12と、接地および基準電極GおよびRの完全アレイを適用して、監視が開始されるのに約5分かかることがわかった。しかしながら、上記のとおり、子宮活動の取得には、少数の、3個の信号電極がうまく用いられている。さらに、数学的信号処理技術およびハードウェアの改良によって電極数は、fECG取得のための8個よりも少なくなることを可能とし、これはより広い周波数スペクトル、ひいてはより可能なソースを伴う。
【0087】
電気保護電位はスクリーンリード32の遮断に適用されてもよい。これは、リードキャパシタンスの効果と、入力キャパシタンス間の不一致の効果を削減する。これは、差動増幅器37によって拒絶された検出信号の共通モード雑音成分を増大させる。保護電位は対象信号電圧に類似していてもよいが、遮断は、例えば対象信号によって駆動された電圧追従などの低インピーダンスソースから駆動されなければならない。
【0088】
図9は、上記の同時に分離されたソースを表示する際の使用に適したディスプレイモニタ90を概略的に示している。モニタ90は分離された電気的子宮活動92と、fECG96から導き出された瞬間心拍94とを示している。陣痛時に胎児はかなりのストレスを受けるために、このように母体および胎児のパラメータを監視できることは極めて有用である。母親および胎児をリアルタイムで、またはこれに近い状態で監視することによって、ストレスが危険なほどに増加した場合に、医師が介入することができる。上記の例において、結果は1secの処理遅延によって得られた。
【0089】
様々なパラメータが、90などのモニタへの表示および出力のために、図5の64でセットアップされてもよい。例えば、
i)病院の記録に関する患者の詳細
ii)生の、コンポジット、マルチチャネル腹部入力データ(ユニポーラまたはバイポーラ構成)
iii)例えば子宮、胎児、母体の対象ソースのマニュアルまたは自動選択用アイコン
iv)不要な負担を排除するための、選択ソースによってスパンされたサブ空間へのデータチャネルの付与
v)基準マーカーとして使用する子宮活動電位ピークと活動電位のバーストの位置
vi)収縮バーストを表示することによる各収縮イベントに関する活動電位のバーストの周波数スペクトル
vii)胎児の動きのマーキング
viii)瞬間胎児心拍に対する子宮収縮
ix)fECGリズムストリップに対する子宮収縮
x)電気フォーマットまたは分娩監視装置フォーマットのいずれかにおける子宮活動
xi)胎児の状態を示すfECGと胎児の危険を示すアラームについての、Dawes Redmanなどの基準
xii)子宮収縮情報、fECGリズムストリップおよび胎児心拍などの対象パラメータによる患者の記録
xiii)患者データのデータベース
xiv)例えば心音、心拍または波形の構成などの精密な詳細に焦点を当てるズーム機能
xv)心拍変動性、ST上昇、および子宮の収縮と組み合わせて胎児の状態を診断する際に有用であろう他のインターバルなどのパラメータ
【0090】
次に図10を参照すると、本発明の更なる実施形態130が示されている。これは装置30に類似しており、上記の同様のパーツは100で始まる参照番号が付されているが、さらに説明されてはいない。本実施形態130においては、リードボックス134が、149bで示された対応する受信機と通信し、かつコンピュータ136に接続されたアンテナ149aによって概略的に示される送信機に接続される点においてのみ先行実施形態30と異なっている。リードボックス134からコンピュータ136への送信機/受信機リンクによってリードボックス134は、患者の近く、またはその上に置かれることが可能である。このような送信増幅データによってスクリーンリード32は、以前よりも短くなる。これらは近くのリードボックス34に届きさえすればよいのである。このことはさらに、雑音ピックアップおよび信号損失の範囲を縮小する。加えて、長く延びるリードと、リードのコンピュータ136への物理的接続の欠如によって、母親はリードや電極を切断する必要なく歩行可能になり、潜在的には、記録がとられる際に母親をよりリラックスさせることができる。
【0091】
次に図11を参照すると、本発明の更なる実施形態230が示されている。これは装置30に類似しており、上記の同様のパーツは200で始まる参照番号が付されているが、さらに説明されてはいない。各電極201などはまず233にはめ込まれて示されているそれぞれの前置増幅器231に接続されており、各ユニット231はリードボックス234に接続される。適切な前置増幅器は既知であるので説明はしない。前置増幅器231はそれぞれの電極201などに隣接して配置されて、前処理段階を提供する。これらはリード232に沿って伝搬する信号を増幅して、それによって信号はより大きくなり、(装置30と比較して)、リードが暴露されている電気的かつ磁気的雑音ソースに対して比較的免疫がある。
【0092】
本発明を他の用途に使用して、ヒト以外の種を含む他の器官の定常および非定常筋肉活動を監視してもよい。平滑筋は、腸、動脈および静脈、膀胱、分泌腺を含む子宮以外の他の器官の壁を裏打ちする。その主要な役割は、それが取り囲む器官内腔の直径を調整することである。平滑筋は低速の収縮と、低エネルギーコストで長期間収縮を維持できる能力とによって特徴付けられている。これはまたその神経支配(神経分布)と伝搬特徴とによって特徴付けられてもよい。子宮、消化管および膀胱は、小面積の神経支配と、ギャップ結合を介する強力な電気的結合とを示している。従って、本発明を使用して、例えば膀胱の筋電図を検出および分類することによって膀胱機能を監視してもよい。これによって膀胱の排尿筋は、機能障害、不安定性、無反射または過剰反射、および排尿筋と尿道括約筋との連携の欠如について判断されるようになる。この方法は、患者の予備的な非侵襲性排尿水力学的分析を可能にし、または侵襲的な排尿水力学的テストへの非侵襲性フォローアップを実際に提供してもよい。排尿筋および括約筋の活動の特徴付けは、種々のタイプの失禁においてとりわけ有用である。例えば、
目を覚ますように警告する音の聞こえる患者の夜尿、
排尿筋の状態を示して、不随意収縮を予測する急迫性尿失禁、
排尿筋の休止トーンによって膀胱容量のマニュアル表示を提供する溢流性尿失禁、および、
膀胱容量の表示としての妊娠に関連する失禁、である。
【0093】
同様の技術はまた消化管および下部腸管に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の分娩監視装置および装置によってそれぞれ記録された、時間に対する子宮の機械的かつ電気的活動のプロットを提供する図である。
【図2】図1の子宮の電気的活動の単一のバーストを、水平および垂直に拡大して示す図である。
【図3】本発明に従った、子宮活動と、fECGと母体ECGとを同時に記録するための装置の概略図である。
【図4】腹部の電極配置の概略図である。
【図5】コンポジット信号から子宮信号およびfECG信号を同時に分離するためのコンピュータ実現プロセスのフロー図である。
【図6】図4に示されている電極配列を使用して記録されたコンポジット信号を示す図である。
【図7】図5のプロセスを使用してコンポジット信号から分離された独立信号ソースを示す図である。
【図8】図7に相当するが、信号の非定常性に対して処理を鈍らせるように配置されている少数の局所化電極に対応している図である。
【図9】瞬間心拍およびfECGに伴う子宮の電気的活動を示すビジュアルディスプレイユニットを概略的に示す図である。
【図10】処理とは無関係の信号記録を示す図である
【図11】電極搭載バッファ増幅器の使用を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的筋肉活動を非侵襲的に監視するための方法であって、筋肉活動は定常的または非定常的であり、以下の、
a)定常信号を分離するのに適した信号分離方式(50)を提供するステップと、
b)筋肉活動を検出するように、複数の低雑音信号電極(7、8、10、11、12)であって、
i)信号電極の筋肉信号寄与が、筋肉ソースの非定常性にかかわらず、信号分離方式(50)への単一の筋肉ソースを模して、
ii)信号分離方式(50)によって検出されたソース数が信号電極数以下であるように、十分に局所化される信号電極を患者の皮膚(40)の外側に置くステップと、
c)信号分離方式(50)を信号電極(7、8、10、11、12)から受信した信号に適用して、筋肉ソースを分離するステップと、
を組み込むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
筋肉活動は子宮活動であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
信号分離方式は、ここで定義されるような瞬間アルゴリズムに基づくことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
瞬間アルゴリズムは独立成分分析(ICA)であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
信号分離方式を適用するステップはICAを、信号電極からの信号より導き出された処理データに適用し、隣接するブロックの対において、各後続ブロックがそれぞれの先行ブロックの一定割合のデータを組み込むようにデータは連続する重複ブロックに配置されており、相関スキームを適用して、異なるブロックのICA処理において導き出された独立ソースを再配列して、信号スワッピングを補正することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
信号電極を置くステップは、ペースメーカー活動の想定部位の近くの位置の直立した患者について、へその位置またはこれより上に4個から5個の信号電極(7、8、10、11、12)を置くステップを備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
信号電極は第1のセットの信号電極(7、8、10、11、12)であって、信号電極を置くステップは、その筋肉信号寄与について十分に局所化されていない位置で患者の皮膚(40)の上に第2のセットの信号電極(1、2、3、4、5、6、9)を置いて、単一のソースを信号分離方式(50)にシミュレートするステップを含んでおり、また信号分離方式(50)は、非定常性筋肉活動を監視するための第1のセットの信号電極(7、8、10、11、12)を介して導き出された信号と、定常性筋肉活動を監視するための第1および第2のセットの信号電極(1から12)を介して導き出された信号とを用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
信号分離方式(50)は、母体および胎児の心臓活動を同時に取得することを特徴とする、子宮活動を監視するための、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
信号分離方式(50)は、子宮活動、母体の筋肉活動、胎児ECGおよび母体ECGをさらに取得することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
電気的筋肉活動を非侵襲的に監視するための装置であって、筋肉活動は定常的または非定常的であり、
a)定常信号を分離するのに適した信号分離方式(50)を実現するためのコンピュータ装置(36)と、
b)筋肉活動を検出するように患者の皮膚(40)の外側に配置する複数の低雑音信号電極(7、8、10、11、12)であって、
i)電極の筋肉信号寄与は、筋肉ソースの非定常性にかかわらず、信号分離方式(50)への単一の筋肉ソースを模して、
ii)信号分離方式(50)によって検出されたソース数が信号電極数以下となるように、十分局所化された信号電極と、
c)コンピュータ装置(36)による信号分離方式(50)の適用に適したディジタル信号に、信号電極から受信した信号を処理して、筋肉ソースを分離するための処理手段(34、37から39)と、
を組み込むことを特徴とする、装置。
【請求項11】
筋肉活動は子宮活動であることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
信号分離方式は、ここで定義されるような瞬間アルゴリズムに基づくことを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
瞬間アルゴリズムは独立成分分析(ICA)であることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
隣接するブロックの対において、各後続ブロックがそれぞれの先行ブロックの一定割合のデータを組み込むように連続する重複データブロックにディジタル信号を配置して、異なるブロックのICA処理において導き出された独立ソースを再配列して信号スワッピングを補正するために補正スキームを適用するようにコンピュータ装置(36)はプログラミングされることを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
信号電極(7、8、10、11、12)は、ペースメーカー活動の想定部位の近くの位置の直立した患者について、へその位置またはこれより上に置く4個から5個の信号電極を備えることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項16】
信号電極は第1のセットの信号電極(7、8、10、11、12)であり、装置は、その筋肉信号寄与について十分に局所化されていない位置の患者の皮膚(40)の上に置いて、信号分離方式(50)への単一のソースを模すための第2のセットの信号電極(1、2、3、4、5、6、9)を含んでおり、また信号分離方式(50)は、非定常性筋肉活動を監視するための第1のセットの信号電極(7、8、10、11、12)を介して導き出された信号と、定常性筋肉活動を監視するための第1および第2のセットの信号電極(1から12)を介して導き出された信号とを用いるように配置されることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項17】
信号分離方式(50)は、母体および胎児の心臓活動を同時に取得するように構成されることを特徴とする、子宮活動を監視するための、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
信号分離方式(50)は、子宮活動、母体の筋肉活動、胎児ECGおよび母体ECGを取得するように構成されることを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【請求項1】
電気的筋肉活動を非侵襲的に監視するための方法であって、筋肉活動は定常的または非定常的であり、以下の、
a)定常信号を分離するのに適した信号分離方式(50)を提供するステップと、
b)筋肉活動を検出するように、複数の低雑音信号電極(7、8、10、11、12)であって、
i)信号電極の筋肉信号寄与が、筋肉ソースの非定常性にかかわらず、信号分離方式(50)への単一の筋肉ソースを模して、
ii)信号分離方式(50)によって検出されたソース数が信号電極数以下であるように、十分に局所化される信号電極を患者の皮膚(40)の外側に置くステップと、
c)信号分離方式(50)を信号電極(7、8、10、11、12)から受信した信号に適用して、筋肉ソースを分離するステップと、
を組み込むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
筋肉活動は子宮活動であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
信号分離方式は、ここで定義されるような瞬間アルゴリズムに基づくことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
瞬間アルゴリズムは独立成分分析(ICA)であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
信号分離方式を適用するステップはICAを、信号電極からの信号より導き出された処理データに適用し、隣接するブロックの対において、各後続ブロックがそれぞれの先行ブロックの一定割合のデータを組み込むようにデータは連続する重複ブロックに配置されており、相関スキームを適用して、異なるブロックのICA処理において導き出された独立ソースを再配列して、信号スワッピングを補正することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
信号電極を置くステップは、ペースメーカー活動の想定部位の近くの位置の直立した患者について、へその位置またはこれより上に4個から5個の信号電極(7、8、10、11、12)を置くステップを備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
信号電極は第1のセットの信号電極(7、8、10、11、12)であって、信号電極を置くステップは、その筋肉信号寄与について十分に局所化されていない位置で患者の皮膚(40)の上に第2のセットの信号電極(1、2、3、4、5、6、9)を置いて、単一のソースを信号分離方式(50)にシミュレートするステップを含んでおり、また信号分離方式(50)は、非定常性筋肉活動を監視するための第1のセットの信号電極(7、8、10、11、12)を介して導き出された信号と、定常性筋肉活動を監視するための第1および第2のセットの信号電極(1から12)を介して導き出された信号とを用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
信号分離方式(50)は、母体および胎児の心臓活動を同時に取得することを特徴とする、子宮活動を監視するための、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
信号分離方式(50)は、子宮活動、母体の筋肉活動、胎児ECGおよび母体ECGをさらに取得することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
電気的筋肉活動を非侵襲的に監視するための装置であって、筋肉活動は定常的または非定常的であり、
a)定常信号を分離するのに適した信号分離方式(50)を実現するためのコンピュータ装置(36)と、
b)筋肉活動を検出するように患者の皮膚(40)の外側に配置する複数の低雑音信号電極(7、8、10、11、12)であって、
i)電極の筋肉信号寄与は、筋肉ソースの非定常性にかかわらず、信号分離方式(50)への単一の筋肉ソースを模して、
ii)信号分離方式(50)によって検出されたソース数が信号電極数以下となるように、十分局所化された信号電極と、
c)コンピュータ装置(36)による信号分離方式(50)の適用に適したディジタル信号に、信号電極から受信した信号を処理して、筋肉ソースを分離するための処理手段(34、37から39)と、
を組み込むことを特徴とする、装置。
【請求項11】
筋肉活動は子宮活動であることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
信号分離方式は、ここで定義されるような瞬間アルゴリズムに基づくことを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
瞬間アルゴリズムは独立成分分析(ICA)であることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
隣接するブロックの対において、各後続ブロックがそれぞれの先行ブロックの一定割合のデータを組み込むように連続する重複データブロックにディジタル信号を配置して、異なるブロックのICA処理において導き出された独立ソースを再配列して信号スワッピングを補正するために補正スキームを適用するようにコンピュータ装置(36)はプログラミングされることを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
信号電極(7、8、10、11、12)は、ペースメーカー活動の想定部位の近くの位置の直立した患者について、へその位置またはこれより上に置く4個から5個の信号電極を備えることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項16】
信号電極は第1のセットの信号電極(7、8、10、11、12)であり、装置は、その筋肉信号寄与について十分に局所化されていない位置の患者の皮膚(40)の上に置いて、信号分離方式(50)への単一のソースを模すための第2のセットの信号電極(1、2、3、4、5、6、9)を含んでおり、また信号分離方式(50)は、非定常性筋肉活動を監視するための第1のセットの信号電極(7、8、10、11、12)を介して導き出された信号と、定常性筋肉活動を監視するための第1および第2のセットの信号電極(1から12)を介して導き出された信号とを用いるように配置されることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項17】
信号分離方式(50)は、母体および胎児の心臓活動を同時に取得するように構成されることを特徴とする、子宮活動を監視するための、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
信号分離方式(50)は、子宮活動、母体の筋肉活動、胎児ECGおよび母体ECGを取得するように構成されることを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2006−523112(P2006−523112A)
【公表日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505969(P2006−505969)
【出願日】平成16年3月16日(2004.3.16)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001120
【国際公開番号】WO2004/084087
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(501352882)キネテイツク・リミテツド (93)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月16日(2004.3.16)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001120
【国際公開番号】WO2004/084087
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(501352882)キネテイツク・リミテツド (93)
【Fターム(参考)】
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