説明

電気的開閉装置

電気的開閉装置、例えば遮断器は放電を避けるべく、開放位置において充分な絶縁耐力を持たねばならない。絶縁耐力を高めるため、電気的開閉装置の接触子間に並列にコンデンサを設けることが多い。例えば500kvを超えるような超高圧用では、2つの遮断器を直列に接続して高電圧を遮断する。即ち遮断すべき総電圧を、これら2つの開閉器で等しく配分する。所要の静電容量を得るべく、コンデンサ、それ故電気的開閉装置は、特に直径が大きくなり、かつ費用がかかる。本発明では、シールド(10、11)を設け、両シールド間に寄生コンデンサ(C1"、C1''')を形成し、かつ2つの開閉器(2、3)を接続する接続手段(4)と、閉鎖箱(5)との間にも寄生コンデンサを形成する。その結果開閉装置1の絶縁耐力が高まり、かつその総電圧を、直列に入れた2つの開閉器で等しく配分できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの開閉器が開閉装置の閉鎖箱内に設けられ、かつ直列に電気的に接続された電気的開閉装置であって、これら開閉器が各々第1の接触子と第2の接触子を含み、各開閉器の第1の接触子と第2の接触子の少なくとも1つが可動接触子であり、これら2つの開閉器の第1の接触子が、接続手段を用いて機械的および電気的に接続され、更に、開閉器の第1の接触子が、第1の導電性シールドにより少なくとも一部取り囲まれ、又、開閉器の第2の接触子が、第2の導電性シールドにより少なくとも一部取り囲まれている電気的開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的開閉装置、例えば遮断器は、一般に切り離された接触子間或いは接触子と接地された開閉装置閉鎖箱のような電気的開閉装置の接地部分との間のアーク発生による絶縁破壊を避けるべく、開放位置において充分な絶縁耐力を示さねばならない。絶縁耐力を高めるため、コンデンサを電気的開閉装置の接触子間に並列に設けることが多い。所要の静電容量のためコンデンサが大きく、しかも重くなるので、この開閉装置は、充分なスペースを必要とする。例えば500kvを超えるような超高圧用途では、2つの遮断器を直列に接続し、かかる高電圧を遮断する。即ち、遮断すべき総電圧を、これら2つの開閉器に配分する必要がある。この種複室遮断器で、各遮断器は、絶縁耐力を高めるべく、各開閉器の接触子間に並列に接続したコンデンサを備えている。この種複室遮断器は、米国特許第3786216号明細書に示されている。従来技術の一部の構成は、単室遮断器(特に近距離線路故障が発生するときに、過渡電圧を低下させる)および二室遮断器(2つの室で電圧を等しく配分する)に組み入れられた固体絶縁体製のコンデンサを、絶縁目的で、これらの室の周りに設けた、例えば金属薄板製のシールドを開示している。この種開閉装置は、米国特許5728989号や欧州特許第335338号明細書に例示されている。米国特許3953693号明細書は、集積コンデンサのシールドを持つ真空開閉器を示す。これら統合コンデンサを用いて、そのような真空開閉器を直列に使用すれば、該真空開閉器間での適正な電圧配分を保証できる。集積コンデンサは又、シールドとして効果的であり、かつ、アーク生成物の拡散から保護する迷路として役立つ。この目的のため、幾つかのシールドを迷路状に設け、上記接触子を切り離す際に発生するアーク粒子と効果的に交わる迷路を形成する。迷路を形成するために、このようなシールドが多数必要となり、これは、寸法の大きい、特に直径の大きい費用のかかる設計を余儀なくする。各開閉器は、絶縁材料製の開閉器自体の閉鎖箱の中に配置される。
【0003】
電気的単室開閉器の固有静電容量を大きくし、もって絶縁耐力も高めるべく、中空円筒状で、同心で、かつ部分的に重なり合った2つのシールドでできているコンデンサを、この単室開閉器と並列して使用することも、従来技術、例えば米国特許第3541284号明細書から知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それ故本発明の目的は、絶縁耐力が高く、かつ開閉装置の2つの直列接続された開閉器間での電圧配分が適正な、高圧用のコンパクトな複室開閉装置を提供することである。
【0005】
この目的は、第1のシールドと第2のシールドとの間にシールドコンデンサを生成すべく第1のシールドと第2のシールドを配置し、かつ第2のシールドと接続手段との間に別のコンデンサを生成すべく接続手段を部分的に取り囲む第2のシールドを配置し、更に開閉装置の好ましくは接地された閉鎖箱と接続手段の間に第2のコンデンサを形成することで達成される。このような配置構成は、開閉器の開放接触子間に生ずるコンデンサを大きくすることで、電気的開閉装置の絶縁耐力を高め、それにより、電気的開閉装置が開放位置にあるときに、絶縁破壊や放電の虞が少なくなる。絶縁耐力を高めるのに、嵩張ったコンデンサは不要なので、この開閉装置は、コンパクト設計のものであって、かつ全体寸法が小さくされ、特に閉鎖箱の直径が小さくなる。これは、開閉装置の所要スペースが更に小さくなる利点を持つことを意味している。更に、これらシールドの費用は、標準的なコンデンサと比較して少ないから、この開閉装置は、従来の開閉装置より安価である。このシールドの広い表面は放射面としても働き、このことが、開閉装置の熱性能を向上させ、更に、温度上昇試験にとっても有利である。
【0006】
第2のシールドと接続手段との間に別のコンデンサを生成すべく、第2のシールドが接続手段を少なくとも一部取り囲んでいると、この開閉装置の絶縁耐力は更に高まる。該別のコンデンサは、この開閉器のシールドコンデンサおよび寄生コンデンサに並列であり、従って、この開閉器の静電容量を更に大きくする。実際、以下に述べる例により、第2のシールド11と接続手段4との間に別のコンデンサC1'''が生ずるよう、第2のシールド11が接続手段4を少なくとも一部取り囲んでいるという事実は、本発明にとり非常に当を得たものである。何故なら、このことが、コンデンサC1(C1'+C1''+C1''')を大きくし、かつコンデンサC2を小さくし、従って、これら2つの開閉ユニット間での電圧配分を向上させるが、一方、その電圧比がC1/(C2+2C1)であり、従って、その値が1/2の方に向かうからである。
【0007】
特にコンパクトな設計は、上記接続手段が、少なくとも一部、可動接触子を駆動するための駆動ユニットであるときに実現できる。この結果直径の小さい非常にコンパクトな設計が可能になる。この接続手段は又、少なくとも一部、第1のシールドであってもよい。その場合、この第1のシールドは、有利な実施形態では、第1の開閉器の第1の接触子から第2の開閉器の第1の接触子迄延びる。
【0008】
第2のコンデンサの静電容量と第1のコンデンサの静電容量との比率が、0.5より小さく、好ましくは0.1よりも小さく、特に0.05よりも小さい場合には、遮断すべき総電圧を、これら2つの開閉器でほぼ等分できる。
【0009】
本発明を、模範的な、しかし限定的でない図1〜3の実施例により以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の電気的開閉装置1、例えば遮断器を図1に示す。これは、2つの開閉器2、3を収容した閉鎖箱5を含む。2つの開閉器2、3は、接続手段4を介して、端子T1(例えば高電位)と端子T2(例えば接地)との間に直列に接続されている。開閉動作(開動作又は閉動作)を実行するには、開閉器2と開閉器3を機械的にも電気的にも接続する接続手段4として働く駆動ユニットを用い、開閉器2と開閉器3の双方の可動接触子6(図1中の両頭矢印により示す)を同時に移動させる。駆動ユニット4は、開閉器2と3の間に配置される。駆動ユニット4は、幾つかの梃子と、この例では、図1に示すように閉鎖箱5の外側に設置された駆動機構9に駆動ユニット4を機械的に連結する駆動棒8とを含む。駆動ユニット4は、例えば周知のばね機構、油圧機構或いはモータ駆動装置等の適切な駆動機構9により駆動される。駆動棒8はそれ自体、絶縁材料からなる。駆動ユニット4は、各開閉器2、3の可動接触子6に機械的に連結されており、可動接触子6を駆動する。各開閉器2、3の第2の接触子7は、固定又は可動であって複動遮断器を形成する。しかし基本的には、他のどんな適切な駆動ユニットも、1つ又は複数の駆動ユニットの他のどんな配置構成も、同様に使用できる。例えば双方の接触子が可動接触子であることおよび/又は各開閉器が、それ自体の駆動ユニットを持つことも可能である。
【0011】
開閉装置1の端子T1と端子T2を電気的に接続すべく、第1の開閉器2の第2の接触子7を、端子T1、例えば高圧端子に接続する。閉位置では、開閉器2、3の第1の接触子6と第2の接触子7が接触し、かつ第1の開閉器2の第1の接触子6は、接続手段4、この例では駆動ユニットに電気的に接続しており、更に該接続手段4が第2の開閉器3の第1の接触子6に電気的に接続しており、それ故、第2の開閉器3の第2の接触子7を経て、端子T2、例えば接地端子にも接続している。開閉器2、3の開放位置では、第1の接触子6と第2の接触子7は切り離されており、その電気的な接続を遮断している。
【0012】
開閉器2、3は、開放位置で、第1の接触子6と第2の接触子7の間でのアーク発生を防止すべく、充分な絶縁耐力(即ち電気的絶縁破壊なしに、開閉装置1の最大公称電圧に耐える能力)を持たねばならない。開閉器2、3の絶縁耐力を高め、開閉装置1の更にコンパクトな設計を可能にすべく、閉鎖箱5は、例えばSF6等の絶縁ガスで満たす。従来の遮断器では、通常コンデンサを開閉器の接触子と並列に接続し、もって、周知の如くこの開閉器の絶縁耐力を更に高めていた。
【0013】
以下の説明では、開閉装置1の開閉器2と開閉器3が対称配置である故、開閉器2、3のうちの唯一の開閉器を参照して述べる。
【0014】
第1の接触子6は、第1のシールド10により部分的に取り囲まれている。第1のシールド10は、導電性材料からなり、かつ第1の接触子6に電気的に接続され、それ故接続手段4(この例では駆動ユニット)にも接続されている。その結果、第1のシールド10は、第1の接触子6と同一の電位を持つ。導電性の第2のシールド11は、閉鎖箱5内に配置され、第2の接触子7に電気的に接続され、従って第2の接触子7と同一の電位を持ち、かつ第1の接触子6と第1のシールド10を少なくとも部分的に取り囲む。第2のシールド11は、接続手段4、ここでは図1に示す駆動ユニットを少なくとも部分的に取り囲んでいる。但し、例えば第1の開閉器2の第1の接触子6から第2の開閉器3の第1の接触子6迄延びる唯一のシールド10を形成すれば、第1のシールド10それ自体を、少なくとも一部接続手段4とすることも可能である。この際、開閉器2と開閉器3の間の電気的接続は、シールド10により少なくとも一部形成できる。
【0015】
シールド10、11を配置したため、図2に示す如く、寄生コンデンサが生ずる。第1の接触子6(この例では可動接触子)と第2の接触子7(この例では固定接触子)の間、即ち2つの開放された接触子6、7間に、寄生コンデンサC1'が生ずる。第1のシールド10と第1のシールド11の間に、シールドコンデンサC1''が生じ、かつ第2のシールド11と、接続手段4、例えば駆動ユニットとの間に、コンデンサC1'''が生ずる。これら3つのコンデンサは並列に接続されるから、該コンデンサが合体し、第1のコンデンサC1=C1'+C1''+C1'''になる。それ故第1の開閉器2の寄生静電容量が大きくなり、よって、開放された第1の開閉器2の絶縁耐力も高まる。第1のシールド10と第2のシールド11が長くなればなる程、コンデンサC1''の静電容量が大きくなる。同様に第2のシールド11が接続手段4上に延び出る部分が長ければ長い程、コンデンサC1'''の静電容量が大きくなる。開閉装置1のコンパクトな設計が要望されるから、第1のシールド10と第2のシールド11を互いに、できるだけ近接配置するとよく、その最小距離は、基本的に、開閉装置1の最大電圧と、コンデンサC1およびコンデンサC2において絶縁体として働く閉鎖箱5内の媒体(例えばSF6)とで定まる。
【0016】
更に、接地した閉鎖箱5と、開閉器2、3の第1の接触子6と同一の電位を持つ接続手段4、例えば駆動ユニットとの間に、第2のコンデンサC2が生ずる。第2のシールド11が接続手段4の上に延び出る部分が長ければ長い程、かつ接続手段4が短ければ短い程、第2のコンデンサC2の静電容量は小さくなる。
【0017】
その結果、開閉器2と開閉器3の間に生じる電位は、図3に示す電気的開閉装置1の等価回路図から容易に得られる。この閉じた開閉器は、図3には示さない。基本的な物理的関係を使用すれば、中間電圧UM(即ち、第1の接触子6と端子T2との間の電圧)を、UM=C1/(C2+2C1)×Uとして求め得る。ここで、Uは端子T1とT2の間の電圧である。この式から、C1>>C2の場合、中間電圧UMは、ほぼU/2であると推測できる。それ故、コンデンサC1の静電容量をできるだけ大きくし、かつコンデンサC2の静電容量をできるだけ小さくすれば、開閉器2と開閉器3を直列に接続することで、遮断すべき総電圧を、ほぼ等分できる。
【0018】
一例では、第1のコンデンサC1の静電容量が250pFであり、又接地した閉鎖箱5に対する第2のコンデンサC2の静電容量が20pFであるように、開閉器2、3およびシールド10、11の幾何形状(例えば長さと距離)を選択し得る。この結果、中間電圧UM=0.48×Uが得られる。この式は、開閉器2と開閉器3が、両方ともほぼ同一の電圧を遮断することを意味している。
【0019】
一般的に言えば、適正な電圧配分を達成すべく、C2は0.5×C1より小さく、好適には0.1×C1より小さく、特に0.05×C1より小さくなければならない。
【0020】
以上の説明から、結論として、第2のシールド11をできるだけ長くし、特に第2のシールド11を、接続手段4の上に更に突出させると、C1''とC1'''(それ故C1も)が大きく、かつC2が小さくなることになるから、この方策は有効である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態による電気的開閉装置の略図である。
【図2】本発明により生成されたコンデンサの略図である。
【図3】電気的開閉装置の回路図である。
【符号の説明】
【0022】
1 電気的開閉装置、2、3 開閉器、4 接続手段、5 閉鎖箱、6、7 接触子、10、11 導電性シールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの開閉器(2、3)が開閉装置の閉鎖箱(5)内に設けられ、かつ直列に電気的に接続された電気的開閉装置であって、
前記開閉器(2、3)が各々第1の接触子(6)と第2の接触子(7)を含み、各開閉器(2、3)の第1の接触子(6)と第2の接触子(7)の少なくとも1つが可動接触子(6)であり、前記2つの開閉器(2、3)の第1の接触子(6)が、接続手段(4)を用いて機械的および電気的に接続され、更に前記開閉器(2、3)の第1の接触子(6)が、第1の導電性シールド(10)により少なくとも一部取り囲まれ、かつ前記開閉器(2、3)の第2の接触子(7)が、第2の導電性シールド(11)により少なくとも一部取り囲まれた電気的開閉装置において、
前記第2の導電性シールド(11)が、前記第2の接触子(7)に電気的に接続され、かつ前記第1の接触子(6)に電気的に接続された前記第1の導電性シールド(10)を少なくとも一部取り囲んでいて、前記第1の導電性シールド(10)と第2の導電性シールド(11)の間にシールドコンデンサ(C1''')が生成されたことと、
前記第2の導電性シールド(11)が、前記接続手段(4)を少なくとも一部取り囲んでいて、前記第2の導電性シールド(11)と接続手段(4)との間に、別のコンデンサ(C1''')が生成されたことと、
前記電気的開閉装置(1)の好ましくは接地された閉鎖箱(5)と前記接続手段(4)との間に、第2にコンデンサ(C2)が生成されたことと
を特徴とする電気的開閉装置。
【請求項2】
前記接続手段(4)が、前記可動接触子(6)を駆動する駆動ユニットにより少なくとも一部形成されたことを特徴とする請求項1記載の電気的開閉装置。
【請求項3】
前記接続手段(4)が、前記第1の導電性シールド(10)により少なくとも一部形成されたことを特徴とする請求項1又は2記載の電気的開閉装置。
【請求項4】
前記第1の導電性シールド(10)が、前記第1の開閉器(2)の第1の接触子(6)から、前記第2の開閉器(3)の第1の接触子(6)迄延びることを特徴とする請求項3記載の電気的開閉装置。
【請求項5】
前記第2のコンデンサ(C2)の静電容量と前記第1のコンデンサ(C1)の静電容量との比率が、0.5よりも小さいことを特徴とする請求項1から4の1つに記載の電気的開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−503775(P2009−503775A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523327(P2008−523327)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064445
【国際公開番号】WO2007/014865
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(507123763)ヴァ テク トランスミッション アンド ディストリビューション ソシエテ アノニム (2)
【Fターム(参考)】