説明

電気自動車の電池モジュール

【課題】本発明は、電池監視ユニットの内部部品の耐電圧を上げることなく電池セル数を増やすことのできる電気自動車の電池モジュールを提供する。
【解決手段】複数の電池セル(3)を上位4セル(3a)と下位4セル(3b)に2分割し、下位4セル(3b)には、電源回路(12)、CPU(13)と通信部(14)を接続し、上位4セル(3a)には、上位4セル(3a)と下位4セル(3b)間での消費電圧のバラツキを防止する消費バラツキ調整回路(15)を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の電源装置に関し、詳しくは電池の電圧を監視する電池監視ユニットの回路構成に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の電源装置は、駆動用モータの動力源として大きな出力を得るために、二次電池(例えば、リチウムイオン電池等)からなる複数の充電できる電池セルを直列に接続して高電圧の電力を出力している。複数の電池セルを直列に接続する電源装置は、全ての電池セルを同じ電流で充電し、また放電する。しかしながら、各々の電池セルは、電気特性を同一とすることはできず、充放電を繰り返すにしたがい経時劣化を起こすが、この際、電池セル毎に経時劣化の度合いが異なることとなる。また、製造直後においては、同一な電気特性を有していないことから、電圧と容量のアンバランスが大きくなり、特定の電池セルを加速して劣化させる原因となる。
【0003】
この様なことから、各々の電池セルの電圧等を正確に測定し監視するための電池監視ユニット(電圧検出ブロック)と、それらの監視結果より電源装置を制御する電池制御ユニット(メインMPU)を備えた電気自動車の電源装置が開発されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−189065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、駆動用モータの動力源として大きな出力が必要であることから複数の電池セルを直列で接続し、高電圧の電力を発生させている。これら電池セル全ての電圧を一つの電池監視ユニットで測定するには、耐電圧の高い部品を必要としコストが高くなるため、ここでは複数の電池セルをまとめモジュール単位とした電池モジュール(電源ユニット)とし、各々の電池モジュールに電池監視ユニットを搭載している。
【0006】
ところで、駆動用モータにより大きな出力を得るためには電池セルを増加する必要があり、この際、電池モジュールの数量を増やさない場合には、電池監視ユニットに耐電圧の高い部品を用いる必要があり、一方電池監視ユニットに耐電圧の高い部品を用いない場合には、電池モジュールの数量を増やす必要がある。
しかしながら、耐電圧の高い部品を用いたり電池モジュールを増やしたりすることはコスト増加になり好ましいことではない。
【0007】
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、電池監視ユニットの内部部品の耐電圧を上げることなく電池セル数を増やすことのできる電気自動車の電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1の電気自動車の電池モジュールは、直列に配列された充電のできる複数の電池セルと、前記複数の電池セルの各々の電圧を測定する電圧測定回路と、前記電圧測定回路にて測定した前記複数の電池セルの充電状態を監視する電池監視部と、該電池監視部からの監視信号の通信を行う通信部と、前記電池セルからの電力を前記電池監視部及び前記通信部に適応した電圧に変換し供給する電源回路とを備えた電池監視ユニットを備える電気自動車の電池モジュールにおいて、前記複数の電池セルが複数の電池セル群に分割されるとともに前記電源回路が該分割された所定の電池セル群に接続して電力を前記電池監視部及び前記通信部に供給するものであって、前記電池監視ユニットは、前記所定の電池セル群とその他の電池セル群の充電状態を比較して電力消費を調整する消費バラツキ調整手段を含んでなることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の電気自動車の電池モジュールでは、請求項1の発明において、前記消費バラツキ調整手段は、前記その他の電池セル群に接続し、前記電池監視部により制御されて電力を消費する消費バラツキ調整回路からなることを特徴とする。
また、請求項3の電気自動車の電池モジュールでは、請求項2の発明において、前記消費バラツキ調整回路は、前記電池監視部の負荷状態及び前記電源回路に接続された前記所定の電池セル群の電圧に応じてPWM制御を行うことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4の電気自動車の電池モジュールでは、請求項1の発明において、前記消費バラツキ調整手段は、前記複数の電池セルと前記電源回路との間に設けられ、前記電池監視部により制御され前記複数の電池セル群のうち電圧の最も高い電池セル群に接続を切り換える電源切換手段からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、電池監視ユニットにおいて、複数の電池セルを分割し、所定の電池セル群に電源回路を接続して電源回路に電力の供給をしているが、所定の電池セル群とその他の電池セル群の充電状態を比較して電力消費を調整する消費バラツキ調整手段を有している。
これにより、一部の電池セル群から電源をとることで電源回路の耐電圧を上げることなく、コストを増加することなく電池モジュールの電池セル数を増やすことができる。
【0012】
ところが、所定の電池セル群から電源をとることで、その他の電池セル群よりも所定の電池セル群の電力消費が増加し電圧と容量のアンバランスが大きくなるという問題が起こる。そこで、消費バラツキ調整手段を有することにより、分割した電池セル群間での電力消費バラツキを最小限に抑え、電圧と容量のアンバランスの増大を防止することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、消費バラツキ調整手段を消費バラツキ調整回路とし、電源回路の接続されていないその他の電池セル群に接続し、電池監視部により当該消費バラツキ調整回路での消費電力を制御している。
これにより、簡単な構成にして分割した電池セル群間での電力消費バラツキを最小限にすることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、消費バラツキ調整回路を電池監視部の負荷状態と電源回路に接続した一方の電池セル群の電圧に応じてPWM制御している。
これにより、電力消費バラツキの制御を綿密にでき、効率的に電力消費バラツキを最小限にすることができる。
請求項4の発明によれば、消費バラツキ調整手段を複数の電池セルと電源回路との間に設けた電源切換手段とし、電池監視部により複数の電池セル群のうち電圧の最も高い電池セル群に接続を切り換えるようにしている。
【0015】
これにより、電力消費バラツキを無くすために電圧の最も高い電池セル群の電力を電源回路に供給して複数の電池セルの電力を無駄なく消費し、効率的に電力消費バラツキを最小限にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施例に係る電気自動車の電池モジュールの概略構成図である。
【図2】本発明の第2実施例に係る電気自動車の電池モジュールの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
先ず、第1実施例について説明する。
図1は、本発明の第1実施例に係る電気自動車の電池モジュールの概略構成図であり、以下、当該電気自動車の電池モジュールの構成を説明する。
図1に示すように、電気自動車の電池モジュール1は、セル・モニタリング・ユニット(以下、CMU)(電池監視ユニット)2、複数(例えば8個)の直列に配列された電池セル3及び通信線90により構成される。ここに、電池セル3は、リチウムイオン電池である。
【0018】
CMU2は、電圧測定回路11、電源回路12、中央演算処理装置(以下CPUという)(電池監視部)13、通信部14及び消費バラツキ調整回路15により構成される。
電圧測定回路11は、各々の電池セル3の電圧を測定するものである。
電源回路12は、複数の電池セル3を2等分した下位4セル(所定の電池セル群)3bと接続され、高電圧の電力を後述するCPU13及び通信部14に適応する電圧に変換するものである。
【0019】
CPU13は、電圧測定回路11での各々の電池セル3の電圧測定値の監視及びその電圧測定値から電池セル3の異常を検出するものである。また、CPU13は、電源回路12から電力を供給され作動する。
通信部14は、図示しない上位のコントローラと通信線90で接続をされ、通信線90を介して図示しない上位コントローラと通信をするものである。また、通信部14は、電源回路12から電力を供給され作動する。
【0020】
消費バラツキ調整回路15は、複数の電池セル3を2等分した上位4セル(その他の電池セル群)3aと接続され、上位4セル3aの電力の消費を調整するものである。
以下、このように構成された本発明の第1実施例に係る電気自動車の電池モジュールの作用及び効果について説明する。
上述したように、CPU13及び通信部14は、電池モジュール1内の下位4セル3bに接続される電源回路12によりCPU13及び通信部14に適応する電圧に変換された電力が供給されて作動している。
【0021】
そして、CPU13では、電圧測定回路11での測定結果に基づき、電池セル3の電圧測定値の監視を行うとともに、消費バラツキ調整回路15をPWM制御している。
PWM制御としては、例えば出荷検査時に下位4セル3bの基本消費電流をあらかじめCPU13に記憶させておき、CPU13の負荷状態及びセル電圧(充電状態)に応じてPWMのデューティー比を変更して基本消費電流を補正し、この消費電流分を考慮した電流を消費調整回路15に流し、上位4セル3aの電力を消費させる。
【0022】
これにより、CMU2において電源回路12を耐電圧の高い部品に変更することなく、大きな出力を得るために簡単な構成でコスト増加を抑えながら電池セル3の数量を増加することが可能であるとともに、消費バラツキ調整回路15で上位4セル3aの電力を消費し、電池モジュール1内の上位4セル3aと下位4セル3bの電圧を調整することで、上位4セル3aと下位4セル3b間の消費バラツキを最小限に抑えることができる。
【0023】
次に、第2実施例について説明する。
図2は、本発明の第2実施例に係る電気自動車の電池モジュールの概略構成図である。
図2に示すように第2実施例では、上記第1実施例に対して、CMU2内の消費バラツキ調整回路15に換えて電源切換スイッチ(電源切換手段)16を配設しており、以下に上記第1実施例と異なる点に付いて説明する。
【0024】
図2に示すように、CMU2内に電源切換スイッチ16が配設されている。
電源切換スイッチ16は、複数の電池セル3と電源回路12間に配設され、電源回路12への電源の供給を上位4セル3a或いは下位4セル3bのいずれか一方からの供給に切り換えるものである。
CPU13は、電圧測定回路11での測定結果に基づき上位4セル3aの電圧と下位4セル3bの電圧を比較し、上位4セル3a或いは下位4セル3bのいずれか電圧の最も高い方(電圧の最も高い電池セル群)から電力を供給すべく電源切換スイッチ16を切換制御するものである。
【0025】
以下、このように構成された本発明の第2実施例に係る電気自動車の電池モジュールの作用及び効果について説明する。
上述したように、電源切換スイッチ16が複数の電池セル3と電源回路12との間に配設され、上位4セル3a或いは下位4セル3bのいずれか電圧の最も高い方から電源回路12、CPU13及び通信部14へ電力が供給される。つまり、図2では下位4セル3bより電源の供給を行っているが、電源切換スイッチ16によって上位4セル3aより電源の供給を行うよう切り換えることが可能である。
【0026】
これにより、第1実施例と同様に電源回路12を耐電圧の高い部品に変更することなく、大きな出力を得るために簡単な構成でコスト増加を抑えながら電池セル3の数量を増加することが可能であるとともに、複数の電池セル3の電力を無駄なく消費して電池モジュール1内の上位4セル3aと下位4セル3bの電圧を調整し、上位4セル3aと下位4セル3b間の消費バラツキを効率的に最小限に抑えることができる。
【0027】
以上で発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の形態は実施形態に限定されるものではない。
例えば、第1実施例では、CPU13及び通信部14へ下位4セル3bより電源の供給を行っているが、これに限定されるものではなく上位4セル3aより電源の供給を行っても良い。
【0028】
また、第1実施例では、消費バラツキ調整回路15をトランジスタによるスイッチング回路と抵抗で構成しているが、CPU13で制御されるリレー或いはスイッチと抵抗の組み合わせとしても良い。
また、実施形態では、電池セル3の数量を8本とし、上位セルと下位セルをそれぞれ4本ずつに分割したがこれに限られるものではない。
【符号の説明】
【0029】
1 電池モジュール
2 セル・モニタリング・ユニット(CMU)(電池監視ユニット)
3 電池セル
11 電圧測定回路
12 電源回路
13 中央演算処理装置(CPU)(電池監視部)
14 通信部
15 消費バラツキ調整回路
16 電源切換スイッチ(電源切換手段)
90 通信線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に配列された充電のできる複数の電池セルと、前記複数の電池セルの各々の電圧を測定する電圧測定回路と、前記電圧測定回路にて測定した前記複数の電池セルの充電状態を監視する電池監視部と、該電池監視部からの監視信号の通信を行う通信部と、前記電池セルからの電力を前記電池監視部及び前記通信部に適応した電圧に変換し供給する電源回路とを備えた電池監視ユニットを備える電気自動車の電池モジュールにおいて、
前記複数の電池セルが複数の電池セル群に分割されるとともに前記電源回路が該分割された所定の電池セル群に接続して電力を前記電池監視部及び前記通信部に供給するものであって、
前記電池監視ユニットは、前記所定の電池セル群とその他の電池セル群の充電状態を比較して電力消費を調整する消費バラツキ調整手段を含んでなることを特徴とする電気自動車の電池モジュール。
【請求項2】
前記消費バラツキ調整手段は、前記その他の電池セル群に接続し、前記電池監視部により制御されて電力を消費する消費バラツキ調整回路からなることを特徴とする、請求項1に記載の電気自動車の電池モジュール。
【請求項3】
前記消費バラツキ調整回路は、前記電池監視部の負荷状態及び前記電源回路に接続された前記所定の電池セル群の電圧に応じてPWM制御を行うことを特徴とする、請求項2に記載の電気自動車の電池モジュール。
【請求項4】
前記消費バラツキ調整手段は、前記複数の電池セルと前記電源回路との間に設けられ、前記電池監視部により制御され前記複数の電池セル群のうち電圧の最も高い電池セル群に接続を切り換える電源切換手段からなることを特徴とする、請求項1に記載の電気自動車の電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−283918(P2010−283918A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133008(P2009−133008)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】